(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066588
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20170116BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03H9/02 A
H03H9/02 K
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-124153(P2012-124153)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-251674(P2013-251674A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】恩田 友治
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/136340(WO,A1)
【文献】
特開2002−176318(JP,A)
【文献】
特開2007−158918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
H03H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側凹部および下側凹部を有しており平面視において長方形状の絶縁基体と、前記絶縁基体の下面の四隅部に設けられた外部端子とを含む素子搭載用部材と、
前記上側凹部内に設けられた圧電振動素子と、
前記下側凹部内に設けられた集積回路素子と、
を備えており、
前記外部端子のうちの一つが出力外部端子であり、
前記素子搭載用部材が、前記上側凹部の底面に設けられており、前記圧電振動素子が接続された圧電振動素子搭載パッドと前記集積回路素子とを電気的に接続する引き回し配線をさらに含んでおり、
平面透視において、前記出力外部端子が、前記絶縁基体の対向する2辺における一方に設けられており、前記引き回し配線が、前記対向する2辺における他方に設けられており、
前記絶縁基体の基板部が、単層の絶縁層からなる
ことを特徴とする圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機などの電子機器には、基準信号源またはクロック信号源などの信号源が搭載されており、かかる信号源として、圧電発振器が知られている。
【0003】
圧電発振器は、素子搭載用部材と、素子搭載用部材に搭載された圧電振動素子および集積回路素子とを含んでいる。圧電発振器において、圧電振動素子は、素子搭載用部材の上側凹部の底面における長辺方向の一端部に設けられた圧電振動素子搭載用パッドに電気的に接続されている。なお圧電発振器においては、モニター用端子が、素子搭載用部材の下側凹部の底面における長辺方向の両端部に設けられている。
【0004】
また、例えばリアルタイムクロック等として用いられる圧電発振器においては、複数の集積回路素子搭載用パッドが、下側凹部の底面における長辺方向の中央部に設けられている場合がある。そこで、圧電振動素子搭載用パッドと集積回路素子とを電気的に接続する引き回し配線は、長辺方向における一端部から他端部へ引き回される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−5088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧電発振器の出力外部端子と引き回し配線との距離が近いと、出力外部端子と引き回し配線との間に生じる浮遊容量により、発振回路の負性抵抗が大きくなり、発振余裕度が小さく発振周波数が安定しない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様による圧電発振器は、上側凹部および下側凹部を有しており平面視において長方形状の絶縁基体と、絶縁基体の下面の四隅部に設けられた外部端子とを含む素子搭載用部材と、上側凹部内に設けられた圧電振動素子と、下側凹部内に設けられた集積回路素子とを含んでいる。素子搭載用部材は、上側凹部の底面に設けられており、圧電振動素子が接続された圧電振動素子搭載パッドと集積回路素子とを電気的に接続する引き回し配線をさらに含んでいる。外部端子のうちの一つが出力外部端子であり、平面透視において、出力外部端子が、絶縁基体の対向する2辺における一方に設けられており、引き回し配線が、対向する2辺における他方に設けられて
おり、絶縁基体の基板部が、単層の絶縁層からなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様による圧電発振器において、平面透視において、出力外部端子が、絶縁基体の対向する2辺における一方に設けられており、引き回し配線が、対向する2辺における他方に設けられていることから、出力外部端子と引き回し配線との距離を十分に確保でき、浮遊容量を低減させることができる。したがって、本発明の一つの態様による圧電発振器は、発振回路の負性抵抗を小さくでき、発振余裕度を十分に確保できることから、安定した発振周波数を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における圧電発振器を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示された圧電発振器において蓋部材を取り外した状態を示す平面図である。
【
図3】
図1に示された圧電発振器における集積回路素子を取り外した状態を示す下面図である。
【
図4】
図1に示された圧電発振器における集積回路素子を取り付けた状態を示す下面面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態の圧電発振器の一例として、リアルタイムクロックについて図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示されているように、本発明の実施形態における圧電発振器100は、素子搭載用部材110と、素子搭載用部材110に搭載された集積回路素子120と、素子搭載用部材110に搭載されており集積回路素子120に電気的に接続された圧電振動素子130とを含んでいる。なお、
図1は、
図2に示されている圧電発振器100に蓋部材140を取り付けた状態でのA―Aにおける縦断面図を示している。
【0012】
素子搭載用部材110は、
図1〜
図3に示されているように、基板部111aと基板部111aの上面に設けられた第1の枠部111bと基板部111aの下面に設けられた第2の枠部111cとからなる絶縁基体111と、基板部111aの上面に設けられた一対の圧電振動素子搭載パッド112aおよび112bと、圧電振動素子搭載パッド112bに接続された引き回し配線115と、基板部111aの下面に設けられた複数の集積回路素子搭載パッド113と、一対のモニター用端子114aおよび114bと、第2の枠部111cの下面に設けられた複数の外部端子116とを含んでいる。ここで、素子搭載用部材110の上面の凹部を上側凹部K1、下面の凹部を下側凹部K2とする。
【0013】
なお、
図3において、複数の集積回路素子搭載パッド113は、符号113の後にアルファベットのa〜jを付して113a〜113jとして示されている。複数の集積回路素子搭載パッド113a〜113jは、例えば、出力パッド113a、接地パッド113b、制御パッド113c、電源パッド113d、クロック入力パッド113e、オープンパッド113f、割り込み信号パッド113g、データ入出力パッド113h、第一の入力パッド113iおよび第2の入力パッド113jである。
【0014】
また、
図4において、外部端子116は、符号116の後にアルファベットのa〜hを付して116a〜116hとして示されている。複数の外部端子116a〜116hは、例えば、出力外部端子116a、接地外部端子116b、制御外部端子116c、電源外部端子116d、クロック入力外部端子116e、オープン外部端子116f、割り込み信号外部端子116g、データ入出力外部端子116hである。
【0015】
複数の外部端子116a〜116hは、
図4に示されているように、第2の枠部111cの下面の四隅部に例えば、出力外部端子116a、接地外部端子116b、制御外部端子116c、電源外部端子116dが設けられ、第2の枠部111cの長辺側の2辺に、例えば、クロック入力外部端子116e、オープン外部端子116f、割り込み信号外部端子116g、データ入出力外部端子116hが設けられている。
【0016】
基板部111aと第1の枠部111bと第2の枠部111cとは、例えば、アルミナセラミックスまたはガラス−セラミックス等のセラミック材料からなる。また、基板部111aは、例えば、
図1および
図2に示されているように、平面視において矩形状の平板状である。第1の枠部111bは、基板部111aの上面の縁部に沿って設けられている。また、第2の枠部111cは、基板部111aの下面の縁部に沿って設けられている。
【0017】
基板部111aの上面に設けられた圧電振動素子搭載パッド112aは、
図2および
図3に示されているように、第1のビア導体117aを介して基板部111aの下面に設けられたモニター用端子114aに電気的に接続されている。また、基板部111aの上面に設けられた圧電振動素子搭載パッド112bは、
図2および
図3に示されているように、第2のビア導体117bを介して基板部111aの下面に設けられた第2の入力パッド113jに電気的に接続されている。
【0018】
また、基板部111aの上面に設けられた圧電振動素子搭載パッド112bに接続された引き回し配線115は、
図2および
図3に示されているように、第3のビア導体117cを介して基板部111aの下面に設けられたモニター用端子114bに電気的に接続されている。基板部111aの下面に設けられた複数の集積回路素子搭載パッド113a〜113jのうち第1の入力パッド113iは、
図3に示されているように、モニター用端子114aに電気的に接続されている。
【0019】
出力パッド113aは、集積回路素子120から出力された信号が印加され、出力外部端子116aに電気的に接続されている。接地パッド113bは、接地外部端子116bに電気的に接続されており、接地電圧が印加される。制御パッド113cは、制御外部端子116cに電気的に接続されており、集積回路素子120の出力状態を制御するための信号(すなわち、制御信号)が印加される。電源パッド113dは、電源外部端子116dに電気的に接続されており、電源電圧が印加される。クロック入力パッド113eは、インターフェース通信用の信号が印加され、クロック入力外部端子116eに電気的に接続されている。オープンパッド113fは、電気的にオープンであり、オープン外部端子116fに電気的に接続されている。割り込み信号パッド113gは、アラーム信号、タイマー信号、時刻更新信号などの割り込み信号が印加され、割り込み信号外部端子116gに電気的に接続されている。データ入出力パッド113hは、クロック信号に同期して、アドレス信号、データビット信号などの入出力信号が印加され、データ入出力外部端子116hに電気的に接続されている。第1の入力パッド113iおよび第2の入力パッド113jは、圧電振動素子130に電気的に接続されており、集積回路素子120に入力される圧電振動素子130の出力信号が印加される。
【0020】
一対のモニター用端子114aおよび114bは、
図3に示されているように、上側凹部K1の短辺と長辺に平行な四角形状である。一対のモニター用端子114aおよび114bは、圧電振動素子130の出力信号を測定するための端子である。
【0021】
集積回路素子120は、
図4に示されているように、下側凹部K2内に設けられており、半田バンプ122によって素子搭載用部材110の複数の集積回路素子搭載パッド113に電気的に接続されている。
【0022】
圧電振動素子130は、
図2に示されているように、上側凹部K1内に設けられており、導電性接着剤132によって、素子搭載用部材110の圧電振動素子搭載パッド112aおよび112bに電気的に接続されている。圧電振動素子130は、所定の結晶軸でカットされた圧電素板と、圧電素板に形成された接続用電極および励振用電極とを含んでいる。圧電振動素子130は、接続用電極および励振用電極を介して外部からの変動電圧が圧電素板に印加されると、所定の周波数で音叉振動を起こすようになっている。なお、圧電素板としては、例えば音叉型の水晶が用いられる。また、圧電振動素子130が収容されている素子搭載用部材110の上側凹部K1は、蓋部材140によって気密封止されている。
【0023】
ここで、本実施形態の圧電発振器100における出力外部端子116aと引き回し配線115と位置関係について
図2〜
図4を参照して説明する。
【0024】
第2の枠部111cの下面の四隅部に形成されている複数の外部端子116a〜116dのうち、出力外部端子116aは、
図4に示されているように、絶縁基体111の短辺方向における一端側に設けられている。ここで、絶縁基板111の短辺方向とは、
図4において、仮想のY軸方向であり、一端側とは、
図4において、仮想のY軸方向の上方向である。
【0025】
引き回し配線115は、
図2に示されているように、基板部111aの上面に設けられている圧電振動素子搭載パッド112bに接続されており、絶縁基体111の仮想の軸の長辺方向における一端部から他端部へ引き回されている。また、引き回し配線115は、圧電振動素子搭載パッド112aおよび112bに接続される圧電振動素子130と上下方向で重ならない位置の絶縁基体111の仮想の軸の短辺方向における他端側に設けられている。また、絶縁基板111の短辺方向とは、
図2において、仮想のY軸方向であり、他端側とは、
図2において、仮想のY軸方向の下方向である。
【0026】
以上のように、本実施形態の圧電発振器100は、出力外部端子116aを絶縁基体111の短辺方向における一端側に設け、引き回し配線115を絶縁基体111の短辺方向における他端側に設けていることから、出力外部端子116aと引き回し配線115との距離を十分に確保できる。これにより、本実施形態の圧電発振器100は、集積回路素子120から出力された信号が出力される出力外部端子116aと圧電振動素子搭載パッド112bに接続される引き回し配線115との間に生じる浮遊容量を低減することができる。よって、本発明の圧電発振器100は、発振回路の負性抵抗を小さくでき、発振余裕度を十分に確保できることから、安定した発振周波数を得ることができる。
【0027】
なお、本実施形態の圧電発振器100の引き回し配線115に接続される第3のビア導体117cは、基板部111aの下面に設けられた集積回路素子搭載パッド113a〜113Jが集積回路素子120の搭載される領域に配置されるために、集積回路素子120が搭載される領域に配置するスペースがなく、集積回路素子120と上下方向で重ならない位置に配置されている。
【0028】
また、本発明の圧電発振器の引き回し配線115は、
図2に示されているように、基板部111aの上面に設けられている圧電振動素子搭載パッド112aおよび112bに接続される圧電振動素子130と上下方向で重ならない位置に形成できることから、圧電振動素子130と引き回し配線115が接触する虞がないため、引き回し配線115を基板部111aの内層に設ける必要がなく、絶縁基体111の基板部111aを単層の絶縁層にすることができる。よって、圧電発振器100の低背化が可能となる。
【0029】
なお、上述の実施形態において、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、上述の実施形態において圧電発振器100の下側凹部空間K2に搭載される圧電素板として音叉型の圧電振動素子130を示したが、これに限定することなく、例えばATカット振動素子または弾性表面波素子を用いても構わない。
【符号の説明】
【0030】
100・・・圧電発振器
110・・・素子搭載用部材
111・・・絶縁基体
111a・・・基板部
111b・・・第1の枠部
111c・・・第2の枠部
112・・・圧電振動素子搭載パッド
113・・・集積回路素子搭載パッド
114・・・モニター用端子
115・・・引き回し配線
116・・・外部端子
117・・・ビア導体
120・・・集積回路素子
122・・・半田バンプ
130・・・圧電振動素子
132・・・導電性接着剤
140・・・蓋部材
K1・・・上側凹部
K2・・・下側凹部