特許第6066598号(P6066598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066598
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/38 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   H01H50/38 H
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-150644(P2012-150644)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-13695(P2014-13695A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】平岩 伸義
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】永峯 一隆
(72)【発明者】
【氏名】栫山 祐騎
(72)【発明者】
【氏名】呉 硯峰
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/060090(WO,A1)
【文献】 特開2002−251934(JP,A)
【文献】 特開2011−204476(JP,A)
【文献】 特開2012−104366(JP,A)
【文献】 特開2009−230921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00−51/36
H01H 9/30− 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、
前記固定接点に対して移動する可動接点と、
前記固定接点及び前記可動接点の側方で、互いに反対の磁極面が互いに離間かつ対向するように配置され、それぞれの該磁極面の間の空間に、前記固定接点と前記可動接点との間に生じるアークを引き込む一対の磁石と、
前記空間に配置され、隙間を介して互いに対向する第一面、及び該第一面の反対側の第二面であって、いずれか一方の前記磁石の前記磁極面に対面する第二面をそれぞれに有する一対のアーク冷却板とを具備し、
前記空間に引き込まれた前記アークが前記隙間に引き込まれて少なくとも一方の前記アーク冷却板の前記第一面に接触するように構成され、
前記隙間が、前記固定接点及び前記可動接点から離れるにつれて狭くなるように、前記一対のアーク冷却板が配置される、
電磁継電器。
【請求項2】
前記一対のアーク冷却板はセラミック製である、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記一対の磁石の各々の、前記磁極面とは反対側の面に、ヨークが設置される、請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や大型直流装置等の高圧バッテリの回路内に使用される電磁継電器では、接点開離時に発生するアーク放電(以下、単にアークと呼ぶ)によって通電状態が維持され、回路が遮断できない場合がある。また、回路が遮断されてもアークにより接点が消耗する、又は接点が溶着するなどの不具合が生じる場合があった。そのため、直流高電圧回路に使用される電磁継電器に要求される性能を確保するためには、アークの遮断性能を向上させることが不可欠である。特許文献1〜4には、接点開離時に発生するアークを消弧する装置を備えた電磁継電器又はアークの消弧方法が開示されている。
【0003】
特許文献1には、可動接点と固定接点とが開離したときに、可動接点が固定接点から離れたときにできる空間(以下、接点ギャップと呼ぶ)に発生するアークに対して永久磁石により、アークの直交方向に磁力を印加し、アークを接点部位から非接点部位まで引き伸ばすことで、アーク長を長くしてアークを円滑に切る方法が開示されている。しかしながら、特許文献1の方法では、永久磁石の磁力のみによりアークを接点部位から非接点部位まで移動させるため、消弧に必要な永久磁石が大きくなり、それに伴い、電磁継電器自体が大型化している。
【0004】
また、特許文献2には、接点ギャップに対面すると共に永久磁石の磁極面に対して直角な位置に存在するハウジングの内壁面を軸方向に凹設したセラミックプレート室を有し、セラミックプレート室にセラミックを素材とする耐アーク板が埋設されたプランジャ型電位継電器が開示されている。特許文献2の方法では、アークが移動した先に耐アーク板が設置されているため、アーク長の充分な引き伸ばしが阻害される。そして、アーク長の充分な引き伸ばしを確保するために、接点ギャップからさらに離して耐アーク板を配置すると、接点部が大型化する。
【0005】
特許文献3には、可動接点及び固定接点の近傍にそのアーク消弧用グリッドを配設した封止接点装置が開示されている。特許文献3の封止接点装置のアーク消弧用グリッドは、「0.2〜0.3mm程度の金属板を数枚〜十数枚程度重ねたものであり、個々の金属板の間には数mm程度の隙間がある。それぞれの金属板は、図3に示すように、セラミック等からなる支持板38,40(39,41)で支持され、図2に示すように配置される」ものであり、金属板を隙間をあけて重ねるための支持板がさらに必要になるため、接点部が大型化している。
【0006】
特許文献4には、水素ガス等の電気絶縁性ガスを封入し、気密に形成された封止容器内で接点を開閉させる、封止接点装置が開示されている。電気絶縁性ガスの冷却能と封止容器外に配置された永久磁石のアーク吹消し作用によって発生アークを速やかに消弧させる。引用文献4の方法は、水素ガス等の電気絶縁性ガスを封入する設備が必要になり、電気絶縁性ガスを透過させないために、金属又はセラミック等で、容器を密封する必要があるのでコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−334644号公報
【特許文献2】特開平7−235248号公報
【特許文献3】特開平6−22415号公報
【特許文献4】特公平6−22087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
大型化することなく、アーク遮断性能を向上させた電磁継電器が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、固定接点と、前記固定接点に対して移動する可動接点と、前記固定接点及び前記可動接点の側方で、互いに反対の磁極面が互いに離間かつ対向するように配置され、それぞれの該磁極面の間の空間に、前記固定接点と前記可動接点との間に生じるアークを引き込む一対の磁石と、前記空間に配置され、隙間を介して互いに対向する第一面、及び該第一面の反対側の第二面であって、いずれか一方の前記磁石の前記磁極面に対面する第二面をそれぞれに有する一対のアーク冷却板とを具備し、前記空間に引き込まれた前記アークが前記隙間に引き込まれて少なくとも一方の前記アーク冷却板の前記第一面に接触するように構成され、前記隙間が、前記固定接点及び前記可動接点から離れるにつれて狭くなるように、前記一対のアーク冷却板が配置される、電磁継電器を提供する。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の電磁継電器において、前記一対のアーク冷却板はセラミック製である、電磁継電器を提供する。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電磁継電器において、前記一対の磁石の各々の、前記磁極面とは反対側の面に、ヨークが設置される、電磁継電器を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による電磁継電器は、磁極面の間の空間に配置され、隙間を介して互いに対向する第一面、及び該第一面の反対側の第二面であって、いずれか一方の磁石の磁極面に対面する第二面をそれぞれに有する一対のアーク冷却板を具備し、空間に引き込まれたアークが少なくとも一方のアーク冷却板の第一面に接触するよう構成されている。そのため、固定接点と可動接点との間に生じるアークは、アーク冷却板に接触することで冷却され消弧する。磁石のみでアークを消弧する場合、アークを自然消弧させるためにある程度の空間が必要であったが、アーク冷却板を用いることでより磁極面の間の空間を小さくすることができる。また、高温のアークは、引き伸ばされた状態でアーク冷却板と接触して消弧するので、アーク冷却板の負荷が小さくなり、アークによるアーク冷却板の破損を防止することができる。また、本発明による電磁継電器は、アーク冷却効果のある水素ガス等の不活性ガスを使用していないので、電磁継電器の接点部周辺を密閉する必要がなく、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による電磁継電器を示す断面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3図1のIII−III線に沿った断面図である。
図4】電磁継電器の一部を拡大して示す斜視図である。
図5】電磁継電器の消弧部の別例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示し、理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。また、本願発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明とその均等物におよぶ点に留意されたい。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による電磁継電器10の構成を示す断面図であり、図2は、図1のII−II線に沿った断面図、図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。本実施形態の電磁継電器10は、ベース11と、電磁石ブロック12と、二つの固定接点16a、16b(以下まとめて固定接点16と称する場合がある)、及び固定接点16a、16bに対して移動して、固定接点16a、16bのそれぞれと接触する可動接点15a、15b(以下まとめて可動接点15と称する場合がある)を含む接点部13a、13b(以下まとめて接点部13と称する場合がある)と、接点部13a、13bに発生したアークを消弧する消弧部30a、30bと、電磁石ブロック12、接点部13及び消弧部30a、30bを収容するカバー17と、により構成されている。
【0017】
電磁石ブロック12は、ベース11上に配置された継鉄22と、電磁石20と、ヒンジばね23と、ヒンジばね23の先端に設けられたアマチュア24と、アマチュア24上に配置された絶縁体26と、から構成されている。電磁石20は、ボビン21と、ボビン21の外周に巻かれたコイル19と、ボビン21の内周に配置された鉄心18とからなる。また、ベース11の図中下方には、コイル19から延びるコイル端子28a、28bが設けられている。なお、図示電磁石ブロック12の構成は一例であり、電磁石ブロックは他の構成であってもよい。
【0018】
接点部13は、上述のように二つの可動接点15a、15b及び固定接点16a、16bを含み、可動接点15a、15bは、アマチュア24と連動する可動ばね25に固着されている。また、ベース11の図中下方には、固定接点16a、16bと連結する固定端子29a、29bが設けられている(図2参照)。
【0019】
電磁石ブロック12の電磁石20が励磁又は消磁してアマチュア24が移動することにより、可動ばね25が連動して、可動接点15と固定接点16とが接触又は開離する。アマチュア24が下がり、可動接点15と固定接点16とが接触したとき、例えば電流は図2の矢印F方向に、固定端子29aから、接触した固定接点16a及び可動接点15aを通り、可動ばね25を経由して、接触した可動接点15b及び固定接点16bを通り、固定端子29bに流れる。
【0020】
可動ばね25が図2において上方向に上がることで、可動接点15a、15bが上方に移動して、可動接点15a、15bと固定接点16a、16bとが開離する。それにより、図2に示すように、それぞれの接点の間に接点ギャップ27a、27bが形成され、矢印F方向に流れる電流が遮断される。しかしながら、可動接点15と固定接点16とが離間する際に、接点ギャップ27a、27bにおいてアーク40a、40b(以下、まとめてアーク40と呼ぶ場合がある)が発生する場合がある。
【0021】
本実施形態の電磁継電器10が備える消弧部30a、30bについて、図1図3及び図4を参照して説明する。図4は、図2の点線で囲んだ部分Cを拡大して、消弧部30a、30bを示す斜視図であるが、消弧部30a、30bの構造を示すため一部の構成要素を省略している。
【0022】
本実施形態の電磁継電器10は、二箇所の接点ギャップ27a、27bに発生するアーク40a、40bを消弧するために、二つの消弧部30a、30bが備えられている。消弧部30a、30bは、アーク40が磁界により引き伸ばされる方向が異なるだけで、他の構成は実質的に同じである。
【0023】
消弧部30aは、図に示すように、可動接点15aと固定接点16aとの側方で、接点ギャップ27aを挟んで、互いに磁極面311a、321aの極性が反対となるように(N極の面とS極の面とが対向するように)互いに離間かつ対向するよう配置された板状の一対の永久磁石31a、32aを備えている。
【0024】
一対の永久磁石31a、32aの、互いに反対の磁極面が、一定の間隔W1をあけて対向配置されることで、磁界が発生する空間36aが形成される。空間36aには磁界が発生しているため、電流が固定接点16aから可動接点15aに流れるアーク40aに対して、ローレンツ力が作用し、アーク40aが矢印A方向に引き伸ばされ、アーク40aは空間36aに引き込まれる。
【0025】
消弧部30aは、一対のアーク冷却板33a、34aを備えている。一対のアーク冷却板33a、34aは、隙間37aを介して互いに対向する第一面331a、341a、及び第一面331a、341aの反対側の第二面332a、342aを有する。そして、アーク冷却板33aの第二面332aが、永久磁石31aの磁極面311aに対面し、アーク冷却板34aの第二面342aが永久磁石32aの磁極面321aに対面している。
【0026】
図1及び図3に示すように、一対のアーク冷却板33a、34aは、永久磁石31a、32aとの間の空間36a内に、接点ギャップ27aに発生して一対の永久磁石31a、32aの磁力により引き伸ばされたアーク40aを挟み込むように、一定間隔W2の隙間37aをあけて対向配置されている。永久磁石31a、32aにより引き伸ばされ、空間36aに引き込まれたアーク40aは、一対のアーク冷却板33a、34aの隙間37a内に引き込まれるよう構成されている。
【0027】
図示実施形態では、一対のアーク冷却板33a、34aは、永久磁石31a、32aに対して略平行になるよう配置されている。アーク冷却板33a、34aは、引き伸ばされるアーク40aを挟むように、隙間37aを介して配置されているので、アーク40aの引き伸ばしは阻害され難い。隙間37aに引き込まれたアーク40aは、アーク冷却板33a、34aの互いに対向する第一面331a、341aのうち少なくとも一方に接触することにより、冷却され消弧する。アーク40aは高熱であるため、アーク冷却板33a、34aに衝突させると、アーク冷却板33a、34aは、アーク40aの熱により破損する場合がある。本実施形態の構成では、アーク40aが、空間36a内にある程度引き伸ばされて冷却された後に、隙間37a内でアーク冷却板33a、34aに接触するため、アーク冷却板33a、34aの破損を防止することができる。図示実施形態のアーク冷却板33a、34aはセラミック製であり、空間36a内の磁界に与える影響は小さく、アーク40aはアーク冷却板33a、34aの隙間37aに引き込まれた後も、磁界により引き伸ばされる。
【0028】
また、永久磁石31a、32aの磁極面311a、321aとは反対側の面312a、322aには、図1及び図3に示すようにヨーク35a、35bが設置されている。ヨーク35a、35bを永久磁石31a、32aの面312a、322aに設置することにより、空間36aに一様磁界が得られるようになる。図示実施形態では、接点ギャップ27aの位置が空間36aの中心部よりずれているが、ヨーク35a、35bを配置することで、接点ギャップ27の位置においても空間36aの中心部と同じように一様磁界が得られるようになり、接点ギャップ27aで発生したアーク40aに対して印加する磁力の強さが増大し、より安定してアーク40aを引き伸ばすことができる。
【0029】
なお、一対の永久磁石31a、32aは、空間36aにアーク40aが引き込むことができるならば、接点ギャップ27aに近接して配置されていればよく、必ずしも接点ギャップ27aを挟むように配置していなくてよい。しかしながら、一対の永久磁石31a、32aは、接点ギャップ27を挟むように配置した方が、磁界が強くなり、安定してアーク40aを空間36aに引き込むことができるので望ましい。また、永久磁石31a、32aは磁石の一例であり、例えば電磁石を用いて磁界を発生させてよい。
【0030】
もう一方の消弧部30bは、図3に示すように、可動接点15bと固定接点16bとの側方で、接点ギャップ27aを挟んで、互いに磁極面311b、321bの極性が反対となるように(N極の面とS極の面とが対向するように)互いに離間かつ対向するよう配置された板状の一対の永久磁石31b、32bを備えている。
【0031】
一対の永久磁石31b、32bの、互いに反対の磁極面311b、321bが、一定の間隔W1をあけて対向配置されることで、磁界が発生する空間36bが形成される。空間36aには磁界が発生しているため、接点ギャップ27bに発生した、電流が可動接点15bから固定接点16bに流れるアーク40bにローレンツ力が作用し、アーク40bが矢印B方向に引き伸ばされ、アーク40bは空間36bに引き込まれる。
【0032】
消弧部30bは、一対のアーク冷却板33b、34bを備えていて、一対のアーク冷却板33b、34bは、隙間37bを介して互いに対向する第一面331b、341b、及び第一面331b、341bの反対側の第二面332b、342bを有する。そして、アーク冷却板33bの第二面332bが、永久磁石31bの磁極面311bに対面し、アーク冷却板34bの第二面342bが永久磁石32bの磁極面321bに対面している。
【0033】
図3に示すように、一対のアーク冷却板33b、34bは、永久磁石31b、32bとの間の空間36b内に、接点ギャップ27bに発生して一対の永久磁石31a、32aの磁力により引き伸ばされたアーク40bを挟み込むように、所定間隔W2を開けて対向配置されている。また、一対のアーク冷却板33b、34bは、永久磁石31b、32bに対して略平行になるよう配置されている。永久磁石31b、32bの磁界により引き伸ばされて、空間36bに引き込まれ、アーク冷却板33bの第一面331b、アーク冷却板34bの隙間37bに引き込まれたアーク40bは、アーク冷却板33bの第一面331b、アーク冷却板34bの第一面341bのうち少なくとも一方に接触することにより、冷却され消弧する。
【0034】
永久磁石31b、32bの空間36bの反対側のそれぞれの面312b、322bには、図3に示すようにヨーク35a、35bが配置されている。ヨーク35a、35bを永久磁石31b、32bの外側の面312b、322bに配置することにより、空間36bに一様磁界が得られるようになる。ヨーク35a、35bを配置することで、接点ギャップ27bにおいても空間36bの中心部と同じように一様磁界が得られ、接点ギャップ27bで発生したアーク40bに対して印加する磁力の強さが増大し、より安定してアーク40bを引き伸ばすことができる。なお、図示実施形態では消弧部30aと消弧部30bとはヨーク35a、35bを共有しているが、別体のヨークをそれぞれが備えていてもよい。
【0035】
なお、図示実施形態の電磁継電器10は、二つの接点ギャップ27a、27bに発生するそれぞれのアーク40a、40bを消弧するよう構成されているが、いずれか一方の接点ギャップに、アークを消弧する消弧部を設ける構成としてもよい。
【0036】
アーク冷却板の材質は、絶縁性及び耐熱性を考慮してセラミック製が望ましい。しかしながら、アーク冷却用の材質は、これに限定されず、アークが接触した場合の耐熱性が充分確保される場合は、他の材料、例えば耐熱性のプラスチックにより形成されてよい。
【0037】
図1〜4に示す消弧部30a、30bでは、一対のアーク冷却板33a、34a、及びアーク冷却板33b、34bを、一定の間隔W2をあけて、互いに平行になるよう配置していた。しかしながら、一対のアーク冷却板33a、34a及びアーク冷却板33b、34bの配置方法は、これに限らず、例えば図5に示すように、互いに対向する一対のアーク冷却板の間隔の幅が、接点ギャップ27a、27bから離れるに従って狭くなるように、換言すれば、例えば接点ギャップ27aの近位におけるアーク冷却板33aとアーク冷却板34aとの間隔の大きさW3よりも、接点ギャップ27aから最も遠位に位置するアーク冷却板33aとアーク冷却板34aとの間隔の大きさW4が小さくなるように、配置してもよい。空間36a、36bでは、アーク40a、40bが発生する際の熱により、接点ギャップ27a、27b周辺の空気が暖められ、空間36a、36bの外側38a、38bの空気と比較して温度差ができることで圧力差が生じ、空間36a、36b内の空気が図5の矢印D方向又は矢印E方向に流れる。さらに、一対のアーク冷却板33a、34a又は一対のアーク冷却板33b、34bの隙間を狭めることでこの空気の流れが速くなり、アーク40a、40bをより一層引き伸ばして消弧させることができる。すなわち、接点ギャップ27a、27bに発生したアーク40a、40bをより幅の狭い空間(外側38a、38b)へ引き伸ばすことで、ベンチュリー効果(圧力差で広い空間から細い管に空気、液体等の流体を通過させると周囲の流体が細い管に引き込まれて細い管の外へ流体を噴出させる効果)により、周囲の空気の流速が増加し、アーク40a、40bをより一層引き伸ばすことができる。
【0038】
以上、図を用いて本実施形態による電磁継電器について説明した。本実施形態の電磁継電器が備える消弧部は、引き伸ばされたアークを挟むようにアーク冷却板が対向配置されているので、アークの引き伸ばしを阻害することなく、アークを消弧させることができる。磁石により形成された磁場の空間に、一対のアーク冷却板を設けることにより、アーク消弧のための空間をより小さくすることができ、電磁継電器を大型化させることがない。また、アークを冷却するガスを使用しないため、ガスを密閉するための構成が不要であり、安価にアークの遮断性能を向上させた電磁継電器を製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0039】
10 電磁継電器
12 電磁石ブロック
13a、13b 接点部
15a、15b 可動接点
16a、16b 固定接点
30a、30b 消弧部
31a、32a、31b、32b 永久磁石
33a、34a、33b、34b アーク冷却板
35a、35b ヨーク
図1
図2
図3
図4
図5