(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066611
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/46 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
B65D1/46
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-173544(P2012-173544)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-31206(P2014-31206A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239138
【氏名又は名称】株式会社エフピコ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】小松 安弘
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0264202(US,A1)
【文献】
特開2009−208808(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0003341(US,A1)
【文献】
実開昭56−075112(JP,U)
【文献】
特開2009−208807(JP,A)
【文献】
特開2004−306193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00− 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡シートを成形した容器において、
被収容物が収容される収容凹部と、該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出したフランジ部とが形成され、該フランジ部は、前記開口縁から外側に延設された上側凸のフランジ主部と該フランジ主部の外縁から外側に延設された端縁部とを有しており、前記フランジ部の端縁部の上面に凹凸形状が形成されているとともに、前記フランジ部の端縁部の下面が平坦に形成されており、前記凹凸形状は、端縁部からフランジ主部の斜面へと連続するように形成されていることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食品容器等として使用される、熱可塑性樹脂発泡シートが用いられてなる容器、詳しくは、該発泡シートを用いて成形することにより、収容凹部と該収容凹部から外側に向けて張り出したフランジ部とが形成されてなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂発泡シートを用いて成形された容器は、優れた断熱性及び軽量性を備え且つ低価格であるといった熱可塑性樹脂発泡シート製容器(例えば、スチレン系樹脂発泡シート製容器)が弁当、惣菜等の食品容器等に使用されている。
【0003】
そして、この種の発泡シートを用いた容器は、通常、シート成形により製造されている。即ち、発泡シートを加熱し、これを雄型と雌型との間に送り、該雄型と雌型とで挟み押圧することにより該シートに凹形状(容器形状)を形成させた後、凹形状が形成されている部位の外側をトリミング刃等による打ち抜き等によって切断して、凹部及び該凹部から外側に向けて張り出したフランジ部からなる容器をシートから分断する。
【0004】
ところで、上記の如き容器に於いては、フランジ部の外側に蓋体が外嵌装着されたり、このフランジ部の外側端部を覆うようにラップフィルムが被せられて使用されたりしており、下記特許文献1には、外側から内側へと凹入させた係合凹所を有する蓋体を容器本体に止着させることが記載されている。すなわち、内側に突出する突起部を蓋体に設けて、該突起部をフランジ部の下面に係合させて蓋体を容器本体に外嵌させることが下記特許文献1に記載されている。
【0005】
上述のごとく、斯かる容器は、トリミング刃等で打ち抜いて製造されるため、熱可塑性樹脂発泡シートのフランジ部の端縁部は、シートの切断により形状が鋭利になりやすく、容器に触れた際にシート切断面で指等を裂傷したり、シート切断面でラップフィルムが切れたりする虞があった。
【0006】
このような問題に対し、下記特許文献2には、フィルム端縁で指等を裂傷するという課題を解決するために、フランジ部の端縁部を熱盤と接触させて又は熱線に曝して熱収縮させ、該フランジ部の外側端面(シート切断面)の上下の角を丸く処理することが開示されている。
【0007】
しかしながら、このように熱収縮させる処理が施された容器は、熱による収縮量の調整が困難であることから、寸法精度の良好なものとは言い難いものである。
【0008】
更に、熱盤と接触させたものに於いては、熱盤に樹脂カスが付着し易く、これら樹脂カスがフランジ部の外側端面に付着することもあり、かえって硬い樹脂カスが裂傷などを引き起こすという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−285531号公報
【特許文献2】特開平9−94875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、断熱性に優れた発泡シートを成形してなる容器において、端縁部での切傷などを防止すること、さらには、蓋体を使用した際に、蓋体を容器本体に強固に止着させうる容器の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための容器にかかる本発明は、熱可塑性樹脂発泡シートを成形した容器において、被収容物が収容される収容凹部と、該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出したフランジ部とが形成され、該フランジ部は、前記開口縁から外側に延設された上側凸のフランジ主部と該フランジ主部の外縁から外側に延設された端縁部とを有しており、前記フランジ部の端縁部
の上面に凹凸形状が形成されて
いるとともに、前記フランジ部の端縁部の下面が平坦に形成されており、該凹凸形状は、端縁部からフランジ主部の斜面へと連続するように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の容器は、熱可塑性樹脂発泡シートを成形した容器において、被収容物が収容される収容凹部と、該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出したフランジ部とが形成され、前記フランジ部の端縁部の上下両面のうち少なくとも上面に凹凸形状が形成されている。さらに、フランジ部の端縁部の上面に凹凸形状が形成されるとともにその端縁部の下面が平坦に形成されている。
【0014】
したがって、断熱性に優れており、しかも、フランジ部の端縁部の上下両面のうち少なくとも上面に凹凸形状を形成することにより、シート切断面の少なくとも上側エッジライン(フランジ部の端縁部の上面とシート切断面との境界線)が直線ではなく上下に蛇行することになり、シート切断面で利用者が不用意に切創することが抑制できる。さらに、フランジ部の下面を平坦に形成した態様では、蓋体の突起部(係合突起)をフランジ部の端縁部の下面に係合させるようにして蓋体を外嵌させる際に安定した係合状態を形成できる。
【0015】
すなわち、本発明の容器は、端縁部での不用意な切創などを防止しつつ、蓋体を強固に止着させうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】容器本体の端縁部の構造を詳細に示した
図1のA部拡大斜視図。
【
図3】(a)は
図1のX−X’線矢視断面図、(b)は
図1のY−Y’線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について蓋付容器を例示しつつ説明する。
図1は、本実施形態における蓋付容器を示す斜視図であり、図中の符号1は、蓋付容器を示している。図中の符号10は、容器本体を示しており、20は、該容器本体10とともに蓋付容器1を構成する蓋体である。
図2は、容器本体10の端縁の様子を説明すべく、
図1の丸印“A”部を拡大して示した斜視図である。また、
図3は、
図1における蓋体20のX−X’線矢視断面図ならびに容器本体10のY−Y’線矢視断面図である。
【0018】
以下に、この
図1乃至
図3を参照しつつ蓋付容器1の各部の詳細構造について説明する。まず、容器本体10について説明する。本実施形態の容器本体10は、底部11と、該底部11から立設された側周壁部12と、該側周壁部の上端縁から外側に向けて張り出したフランジ部14とを有している。
【0019】
底部11は、容器本体10に被収容物を収容させるべく設けられた収容凹部の底を形成すべく設けられており、本実施形態においては、角部が丸められた(Rが設けられた)平面視あるいは底面視正方形に形成されている。
【0020】
側周壁部12は、底部11の外周縁からやや外向きに傾斜された状態に立設されており、本実施形態の蓋付容器1においては、該側周壁部12と底部11とにより被収容物を収容するための収容凹部が形成されている。すなわち、本実施形態の容器本体10は、側周壁部12の上端縁がこの収容凹部の開口縁となるように形成されている。
【0021】
フランジ部14は、この側周壁部12の上端縁から外側に張り出すとともに、上方へ向けて円弧状に形成されており、該フランジ部14は、収容凹部の開口縁からの突出長さが該開口縁の全周において略均一となるように形成されるとともに、その外周縁の形状が角部を丸めた平面視正方形となるとなるように形成されている。該フランジ部14は、上面が上側凸の円弧状に形成されて側周壁部12から連続的に形成されたフランジ主部15と、該フランジ主部15の外縁から外側に向けて略水平に延設されてフランジ主部15よりも細幅の端縁部16とを有している。
【0022】
このフランジ部14の端縁部16の上面16aには凹凸形状が形成されている。フランジ部14の端面はシート成形時に抜刃でカットされたシート切断面17であるが、
図2にも示されているように、端縁部16の上面16aに凹凸形状されることによりシート切断面17の上側エッジライン17a(輪郭線)は端縁部16の上面16aの凹凸形状に対応して上下に蛇行した波形となっている。一方、フランジ部14の端縁部16の下面は平坦面となっており、従って、シート切断面17の下側エッジライン17bは直線となっている。
【0023】
すなわち、フランジ部14の端縁部16の上面16aには、頂上部が内外方向に延びる筋状の突部18が形成されている。該突部18は端縁部16の上面16aの全幅に亘って形成されており、従って、突部18はシート切断面17まで達している。但し、突部18が端縁部16の上面16aの全幅ではなく外側部分のみに形成されていてもよい。また、突部18が端縁部16からフランジ主部15の斜面へと連続するように形成されていてもよい。突部18は、フランジ部14の端縁に沿って適宜の間隔を空けて(間隔は任意でよい)複数列設されている。突部18をフランジ部14の周方向に沿って切断したときの断面形状は上側凸の波形となる。このように端縁部16の上面16aに内外方向に延びる筋状の突部18を周方向に間隔をあけて列設することにより、端縁部16の上面16aに凹凸形状が形成されている。一方、端縁部16の下面は平坦に形成されているが、この平坦面の幅は端縁部16の幅すなわち端縁部16の上面16aの幅よりも幅広であり、上面16aの幅が例えば1.5mm程度であるのに対して下面の平坦面の幅は例えば3mm程度と幅広であって上面16aの幅の略二倍程度となっている。従って、下面の平坦面の内側の一部はフランジ主部15の下面の一部を構成している。但し、端縁部16の下面の平坦面が上面16aと同幅であってもよい。
【0024】
容器本体10は、熱可塑性樹脂発泡シート単層のものが用いられて形成されている。容器本体10は、フランジ部14の端縁部16において、熱可塑性樹脂発泡シートに凹凸形状を形成するために圧縮された状態となっており、上述の突部18の高さは、成形に使用する発泡シートの厚みと同じか、もしくはそれより低く形成されてよく、隣り合う突部18の間隔が0.2〜3mm程度となるように形成されていることが切創抑制の観点から好ましく、隣り合う突部18間の凹部19はシート成形時に圧縮されて形成されており、従って、凹部19においては成形前の発泡シートの厚みよりも薄くなっている。本実施形態では端縁部16の下面が平坦面となっているので、端縁部16においては、突部18において厚く、突部18間の凹部19において薄くなっている。
【0025】
そして、端縁部16の上面16aに形成された突部18の頂上部が丸みを帯びた形状とされることによって、シート切断面17の上側エッジライン17aも丸みを帯びることとなって、いっそう切創などを抑制できることから好ましい。
【0026】
このように、フランジ部14の端縁部16の上面16aに凹凸形状が形成されるとともに端縁部16の下面が平坦に形成された態様において、蓋体20を外嵌させる際に、端縁部16の下面を平坦に形成することによって、端縁部16の下面と外嵌させる蓋体20とを安定した係合状態に形成させることができる。なお、図示しないが、端縁部16の下面にも、前述のような凹凸形状が形成されていてよく、この態様では、ラップフィルムなどで容器を包装した際に、フィルムが不用意に切断することを防止できる。
【0027】
この容器本体10の形成に用いられる発泡シートは、特に限定されるものではなく、従来公知の合成樹脂(例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂やポリスチレンなどのスチレン系樹脂、さらにはポリプロピレンなどのオレフィン樹脂など)を使用することができる。これらの合成樹脂に、ブタンやペンタンなどの物理的発泡剤や、アゾジカルボンアミドなどの化学的発泡剤とともに押出機で混練して押出し発泡させることによって、熱可塑性樹脂発泡シートを製造することができる。
【0028】
また、これらの中でも、スチレン系樹脂発泡シートは剛性が高く、軽量化に好適であるので特に好ましく、中でも電子レンジなどにて加熱して使用できることを目的に、容器本体10に耐熱性を付与したものが好ましい。耐熱性を付与するために有効となるポリマーである、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させる、もしくは共重合させたものや、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、ポリパラメチルスチレン樹脂などを含有させたものが好ましい。
【0029】
なお、本発明では容器に用いる熱可塑性樹脂発泡シートは、その厚みが1〜3mmとされることが好ましく、単位面積当たりのシート重量である坪量が、80〜250g/m
3とされることが好適であるが、特別に大きな容器を製造するに当たっては、このような範囲を超えたものも適宜採用することが可能である。
【0030】
本発明の容器1には、蓋体20を用いて外嵌合することができる。この実施形態は、蓋付容器1であって、蓋体20には、該蓋体20の天井部を形成する天井壁部21と、該天井壁部21の外周縁から垂設された側周壁部22とが形成されている。
【0031】
また、蓋体20には、側周壁部22の下端縁から外方に向けて張り出した状態に形成されて、容器本体10におけるフランジ部14のフランジ主部15に上方から対峙する略水平の内側対峙面部24と、該内側対峙面部24の外周縁から略垂直あるいは斜め下方に垂下して容器本体10におけるフランジ部14のフランジ主部15を側方から覆う下部側周壁部25と、該下部側周壁部25の下端縁から外側に向けて略水平に延設されて、容器本体10におけるフランジ部14の端縁部16の上面16aに上方から対峙する外側対峙面部26と、該外側対峙面部26の外周縁から略垂直に垂下して端縁部16のシート切断面17の側方を覆いつつ下方に延びるスカート部27とが形成されている。さらに、スカート部27の下端縁から外方に向けて略水平に張り出した鍔部28が形成され、スカート部27の内面にはその一部を他部よりも内側に向けて突出させて形成された係合突起29が設けられている。
【0032】
天井壁部21は、容器本体10の底部11と略同形に形成されている。側周壁部22は、外方に広がった状態に形成されて、その下端縁が容器本体10の収容凹部の開口縁の近傍あるいはそれよりも内側に位置するように形成されている。内側対峙面部24は、容器本体10の収容凹部の開口縁あるいはその内側の位置からフランジ部14の端縁部16までの突出長さとほぼ同じ長さかあるいはそれよりも長い長さで側周壁部22の下端縁から外方に向けて張り出して形成されている。また、この内側対峙面部24の外周縁の形状は、容器本体10のフランジ部14の外周縁と略同形となるように形成されている。すなわち、外周縁が、角部が丸められた正方形となるよう形成されている。
【0033】
下部側周壁部25は、内側対峙面部24の外周縁から下方に垂設された状態に形成されている。すなわち、この下部側周壁部25は、平面視の形状が容器本体10のフランジ部14の外周縁と略同形となる角部に丸みを有する四角枠形状となるように形成されている。
【0034】
係合突起29は、
図3にも示されているように、縦断面が内側に向けて突出した円弧状となる形状を有しており、スカート部27の下端近傍に形成されている。また、係合突起29は、容器本体10のフランジ部14の四つの角部あるいはその近傍において端縁部16の下面と係合されるべく、スカート部27の四つの角部あるいはその近傍に設けられている。
【0035】
この蓋体20は、その素材が特に限定されるものではないが、通常、透明な樹脂シートなどを用いて形成しうる。
【0036】
なお、本実施形態においては、本発明の効果をより顕著に発揮させ得る点において蓋付容器1を例示しているが、本発明は蓋付容器1に限定されるものではない。例えば、ラップフィルムなどによって収容凹部の開口部が覆われて用いられるような容器も本発明の意図する範囲である。
【0037】
また、上記実施形態においては、断面形状が波形となる突部18がフランジ部14の端縁部16の上面16aに列設されている場合を例示しているが、このような突部18に代えて、端縁部16の上面16aに内外方向に延びる溝を列設させることによりフランジ部14の端縁部16の上面16aに凹凸形状を形成させてもよく、その形状も、波形に限定されるものではない。例えば、形成させる突部18や溝の横断面形状としては、上記例示の波形の他に、鋸歯形、半円形のいずれかであることが好ましい態様である。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0038】
さらには、上記実施形態においては、線状の突部18を外側に向けて延在させている場合を例示しているが、その延在方向も内外方向に限定されるものではない。例えば、線状の突部18や線状の溝を、容器1の中心部から外方に向けた方向に対して傾斜する方向に延在させたり、互いに交差させたりして凹凸形状を形成させることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 蓋付容器
10 容器本体
11 底部
12 側周壁部
14 フランジ部
15 フランジ主部
16 端縁部
16a 上面
17 シート切断面
17a 上側エッジライン
17b 下側エッジライン
18 突部
19 凹部
20 蓋体
21 天井壁部
22 側周壁部
24 内側対峙面部
25 下部側周壁部
26 外側対峙面部
27 スカート部
28 鍔部
29 係合突起