(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光束を一方から他方へ伝搬し、記録媒体に照射される近接場光を発生するコアを有し、前記記録媒体を前記近接場光によって加熱するとともに前記記録媒体に対して記録磁界を与える近接場光利用ヘッドにおいて、
前記コアは、
基面と、前記基面に対して傾斜する第1面と、前記第1面に対して傾斜する第2面と、
前記第1面の辺と前記第2面の辺とが交わる交辺と、
前記第1面において前記交辺と反対側の第1端部と、
前記第2面において前記交辺と反対側の第2端部とを有し、
前記交辺は、前記第1端部および前記第2端部より前記基面側に設けられ、
前記基面と前記交辺との距離は、前記一方から前記他方に向けて短くなり、
前記近接場光を発生する光発生部が、前記他方に設けられ、
前記第1面および前記第2面は金属膜が形成され、前記光束の方向と所定の角度をなす近接場光利用ヘッド。
前記第2面は、前記記録磁界を前記記録媒体に与える磁極を介して前記第1面と対向し、前記磁極は前記第1の金属膜を介して前記交辺に隣接している請求項2の近接場光利用ヘッド。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスクドライブ等の情報記録再生装置は、より大量かつ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものを記録媒体として採用することが考えられている。そのため、記録媒体に情報を記録することが困難になっていた。
【0003】
そこで、上述した不具合を解消するために、近接場光を利用して磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間に記録媒体への書き込みを行う熱アシスト磁気記録方式の記録ヘッドおよび情報記録再生装置が考案され開発が進められている。
【0004】
熱アシスト磁気記録方式による記録ヘッドには、近接場光を発生させるための近接場光素子およびそれを駆動させるための光学系が必要となる。これら近接場光素子と光学系は、各種のものが考案されている。
【0005】
例えば特許文献1および特許文献2に示されるように、主磁極に隣接するように近接場光を発生する金等からなる光散乱体を設け、レーザからの光を光散乱体に照射する構成が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近接場光利用ヘッドでは、近接場光を利用しない磁気記録ヘッドに対して、近接場光を発生させるために追加のエネルギーが必要であり、情報記録再生装置の電力消費が増加してしまう。電力消費の増加は近接場光発生素子の効率にかかっている。近接場光発生素子の効率が低いと電力消費は大きく増加し、近接場光強度を十分に確保しようとすると、損失エネルギーにより近接場光素子が熱で損傷してしまう場合もありうる。上述の従来技術による近接場光素子はこの点において必ずしも十分な効率を有するとは言えず、改善が求められていた。
【0008】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、高い光利用効率を有する近接場光素子を有する近接場光利用ヘッドを提案し、それにより低消費電力を実現できる情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、光束を一方から他方へ伝搬し、記録媒体に照射される近接場光を発生するコアを有し、記録媒体を近接場光によって加熱するとともに記録媒体に対して記録磁界を与える近接場光利用ヘッドであって、コアは、基面と、基面に対して傾斜する第1面と、第1面に対して傾斜する第2面と、 第1面の辺と第2面の辺とが交わる交辺と、第1面において交辺と反対側の第1端部と、 第2面において交辺と反対側の第2端部とを有し、交辺は、第1端部および第2端部より基面側に設けられ、基面と交辺との距離は、光束が伝搬される方向である一方から他方に向けて短くなり、近接場光を発生する光発生部が、他方に設けられることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、高い光利用効率で光源からの光束を近接場光に変換することができ、よって効率良く記録媒体の微小領域を加熱することができる。
【0011】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、第1面および第2面には第1の金属膜が形成され、基面には第2の金属膜が形成されることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、第1の金属膜と第2の金属膜とそれらに挟まれたコアとによってアンテナ効果を発現することができるため、高い光利用効率で光源からの光束を近接場光に変換することができ、よって効率良く記録媒体の微小領域を加熱することができる。
【0013】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、第2面が記録磁界を記録媒体に与える磁極を介して第1面と対向し、磁極は第1の金属膜を介して交辺に隣接していることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、磁極と光発生部が接近しているため、磁極からの磁束と、光発生部からの近接場光が近接した形で発生する。よって、磁束と近接場光が効率よく協働でき、結果として効率良く記録媒体に微細な磁気情報を記録することができる。
【0015】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、磁極と第1の金属膜との間には保護膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、磁極と第1の金属膜とを離間する保護膜(離間膜)のために、磁極と第1の金属膜が電気的に絶縁されており、第1の金属膜上の自由電子の波である表面プラズモンへの影響を低減し、効率よく近接場光を発生させることができる。また、磁極と第1の金属膜が合金化することで損傷してしまうことも避けることができる。
【0017】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、コアが光発生部に向うにつれて光束のスポットサイズを絞り込むスポットサイズ変換器を構成することを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、大きいスポットサイズを有する光源を用いても、スポットサイズを絞り込むことで光エネルギーの大部分を近接場光に変換させることができ、結果として効率良く記録媒体の微小領域を加熱することができる。
【0019】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、コアが光発生部に向うにつれて光束のスポット形状を変形させるスポット形状変換器を構成することを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドにおいては、楕円状のスポット形状の出射ビームを発生させる半導体レーザを光源として用いても、光利用効率の低下が少ない。
【0021】
また、本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドは、磁極に磁界を発生させるコイルと、コアを保持するスライダとを有することを特徴とするものである。また、本発明に係る情報記録再生装置は近接場光利用ヘッドを記録媒体の直上に支持するヘッドジンバルアセンブリを有するものである。
【0022】
本発明に係る情報記録再生装置においては、本発明の熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドを備えているので、情報記録時の消費電力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る熱アシスト磁気記録のための近接場光利用ヘッドによれば、高い光利用効率で光源からの光束を近接場光に変換することができ、よって効率良く記録媒体の微小領域を加熱することができ、それにより情報記録時の消費電力の小さい情報記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態の基本構成を、
図1から
図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る情報記録再生装置1を示す構成図である。なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、磁気記録層を有する記録媒体Dに対して、熱アシスト磁気記録方式で書き込みを行う装置である。
【0026】
図1に示すように本実施形態の情報記録再生装置1において、スライダ2が固定されたサスペンション3が、キャリッジ11に固定されている。スライダ2とサスペンション3を合わせて、ヘッドジンバルアセンブリ12と呼ぶ。円盤状の記録媒体Dはスピンドルモータ7によって所定の方向に回転する。キャリッジ11はピボット10を中心に回転可能になっており、制御部5からの制御信号によって制御されるアクチュエータ6によって回転し、スライダ2を記録媒体D表面の所定の位置に配置することができる。ハウジング9はアルミニウムなどから成る箱状(
図1では説明を分かりやすくするため、ハウジング9の周囲を取り囲む周壁を省略している)ものであり、上記の部品をその内部に格納している。スピンドルモータ7はハウジング9の底面に固定されている。スライダ2は記録媒体Dに向けて磁場を発生させる記録素子(図示略)と、近接場光を発生する導光部(図示略)と、記録媒体Dに記録された情報を再生する再生素子(図示略)を有している。記録素子と再生素子は、サスペンション3およびキャリッジ11に沿って敷設されたフレキシブル配線13、キャリッジ11側面に設けられたターミナル14およびフラットケーブル4を介して制御部5に接続されている。
【0027】
記録媒体Dは1枚でも良いが、
図1に示すように複数枚設けても良い。記録媒体Dの枚数が増えれば、ヘッドジンバルアセンブリ12の個数も増加する。
図1では記録媒体Dの片面側のみにヘッドジンバルアセンブリ12を配置した構成を示しているが、両面に配置しても良い。よって、ヘッドジンバルアセンブリ12の個数は、最大で記録媒体Dの枚数の倍になる。これにより、情報記録再生装置1台当たりの記録容量の増加を図ることができる。
【0028】
図2は本実施形態に係るヘッドジンバルアセンブリ12の拡大図である。サスペンション3は、ステンレス薄板を材料とするベースプレート201、ヒンジ202、ロードビーム203、フレクシャ204からなる。ベースプレート201は、その一部に設けられた取り付け穴201aにより、キャリッジ11に固定されている。ヒンジ202はベースプレート201とロードビーム203を接続している。ヒンジ202はベースプレート201とロードビーム203よりも薄くなっており、ヒンジ202を中心としてサスペンション3がたわむようになっている。フレクシャ204はロードビーム203、ヒンジ202に固定された細長い部材であり、ロードビーム203やベースプレート201よりも薄くなっており、たわみやすく出来ている。フレクシャ204の先端には略直方体形状のスライダ2が固定されている。
【0029】
スライダ2の表面のうちフレクシャ204に固定された面の反対面は、記録媒体Dに対向する面である。この面は回転する記録媒体Dによって生じた空気流の粘性から、スライダ2が浮上するための圧力を発生させる面であり、ABS(Air Bearing Surface)と呼ばれている。ABS上には図示を略した凹凸形状が設けられており、スライダ2と記録媒体D間に所望の圧力分布を発生させている。スライダ2を記録媒体Dから離そうとする正圧とスライダ2を記録媒体Dに引き付けようとする負圧と、サスペンション3による押しつけ力の釣り合いで、スライダ2は所望の状態で浮上している。記録媒体Dとスライダ2のすきまの最低値は10nm以下となっている。サスペンション3による押しつけ力は主にヒンジ202の弾性により発生している。また、記録媒体D表面のうねりに対して、ヒンジ202およびフレクシャ204がたわむことで、所望の浮上状態を維持することが出来る。
【0030】
フレクシャ204上にはフレキシブル配線13が設けられている。フレクシャ204は略コ字状の開口部を有しており、この開口部に囲まれて舌状となったパッド部204a上にスライダ2が固定されている。スライダ2の端部のうち、サスペンション3の根本側(キャリッジ11側)は流入端と呼ばれている。その反対のサスペンション3の先端側は、スライダ2の流出端と呼ばれている。これらは、前述の記録媒体Dによる空気流の方向に基づいて名付けられている。サスペンション3の根本側から延設されたフレキシブル配線13は途中から2本に分岐し、前述の開口部およびスライダ2の両側を回り込むように、スライダ2の流出端側に接続されている。
【0031】
図3は
図2のA−A’断面を示す図である。スライダ2はスライダ基部301、記録素子、導光部、再生素子304、レーザユニット501から構成される。スライダ基部301の流出端側の側面に、再生素子304、記録素子および導光部が積層されている。また、スライダ基部301とパッド部204aの間にはレーザユニット501が設けられている。レーザユニット501はレーザ基板502とレーザ503から構成されており、レーザ503はレーザ基板502に固定されている。レーザ基板502はスライダ基部301およびパッド部204aに固定されている。レーザ503は端面発光型レーザであり、レーザ光が出射する端面はABSと略平行をなし、レーザ503と導光部が光学的に接続されている。レーザ503はレーザ基板502およびフレキシブル配線13等を介して制御部5に接続されている。制御部5の電気信号に基づいてレーザ503が発光動作するようになっている。スライダ基部301は略直方体状の部材であり、AlTiC材等からなる。
【0032】
記録素子は、再生素子304の流出端側の側面に固定された副磁極306と、ヨーク307を介して副磁極306に接続され記録媒体Dに対して垂直な記録磁界を印加する主磁極310と、ヨーク307を中心としてヨーク307の周囲を螺旋状に巻回するコイル308とを備えている。主磁極310、副磁極306及びヨーク307は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)により形成されている。また、コイル308は、ショートしないように、隣り合うコイル線間、ヨーク307、主磁極310、副磁極306との間に隙間が空くように配置されており、この状態で絶縁性を有するクラッド312(後述)によってモールドされている。そして、コイル308は、フレキシブル配線13を介して制御部5に接続されており、情報に応じて変調された電流が制御部5から供給されるようになっている。よって、主磁極310、副磁極306、ヨーク307及びコイル308は、全体として電磁石を構成している。なお、主磁極310及び副磁極306は、記録媒体Dに対向する端面がスライダ2のABSと面一となるように設計されている。
【0033】
導光部は、多面体のコア311と、コア311を内部に閉じ込めるクラッド312と、後述の第1の金属膜313と第2の金属膜314から構成されており、全体として略板状に形成されている。コア311は、一端側がフレクシャ204側に向くと共に、他端側が記録媒体D側に向いた状態で、主磁極310と副磁極306に挟まれるように、かつヨーク307を貫通するように配置されている。ヨーク307がコア311を貫通する構成でも良い。コア311は光学的に透明でクラッド312よりも屈折率が大きい材料で構成されている。例えばコア311にゲルマニウムをドープしたSiO2を用い、クラッド312に純SiO2を用いることができる。また、コア311にTa2O5を用い、クラッド312にアルミナを用いることもできる。レーザ503からのレーザ光が赤外光であればコア311にシリコンを用いることもできる。コア311の一端側の一部はクラッド312から露出しており、レーザ503の出射端面と対向しており、前述の導光部とレーザ503との光学的接続を実現している。
【0034】
再生素子304は、記録媒体Dから漏れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変化する磁気抵抗効果膜である。この再生素子304には、図示しないリード膜等およびフレキシブル基板13を介して制御部5からバイアス電流が供給されている。これにより制御部5は、記録媒体Dから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行うことができるようになっている。
【0035】
コア311の詳細形状について
図4を参照して説明する。コア311の一端側は、一端側から他端側(コア311の先端側)に向かう長手方向に直交する断面が、台形形状を有している。また、一端側と他端側の中間付近は三角断面となっており、よってコア311は三角断面の稜線311aを有している。他端側近傍では稜線311aが二股に分かれた稜線311bとなっており、この稜線311b間は2つの傾斜したコア311の側面が交わる傾斜V溝311cとなっている。今後、コア311のうち稜線が二股に分かれたところから他端までをコア先端311dと呼ぶ。コア311の一端側はフレクシャ204が存在する側であり、他端側はABSが存在する側である。この一端側をコア311の一方、他端側をコア311の他方と呼ぶこともある。近接場光に変換される光束はコア311の一方から他方に向かって伝搬される。また、2つの傾斜したコア311の側面が交わる傾斜V溝311cの底を交辺311eと呼ぶ。傾斜V溝311cは、交辺311eを中心として互いに傾斜する第1面311fと第2面311gを有する。コア311の稜線311aと二股の稜線311bが設けられる反対側の面を基面311hと呼ぶ。基面311hに傾斜して形成される第1面311fは、第2面311gとも傾斜して形成されている。稜線311aと二股の稜線311bは他端側に近づくにつれて基面311hに近づくように形成されている。二股の稜線311bの二股の一方は第1端部であり、二股の他方は第2端部である。第1端部は第1面311fの一辺を構成している。第2端部は第2面311gの一辺を構成している。これら第1端部と第2端部とが平面視において略V字型を構成している。第1端部と第2端部に稜線311aを合せて平面視で略Y字型となっている。第1面311fは、交辺311e、第1端部、およびコア311の先端で囲まれる三角形の形状となっている。第2面311gは、交辺311e、第2端部、およびコア311の先端で囲まれる三角形の形状となっている。第1端部と第2端部は、交辺311eと交わっており、その交わる点で稜線311aとも交わっている。かかる位置関係においては、第1端部は、交辺311eと交点を共有しつつ、第1面311fにおいて交辺311eの反対側に設けられている。また、第2端部は、交辺311eと交点を共有しつつ、第2面311gにおいて交辺311eの反対側に設けられている。
交辺311eは、稜線311aが存在する一方から、コア先端311dの他端である他方に向かって、基面311hに近づくように勾配を持って形成されている。つまり、傾斜V溝311cは、コア先端311dの他端に向かうにつれて、V溝の彫りが徐々に深くなるように形成されている。コア先端311dの他端、つまり、コア311の先端である記録媒体に対向して面する面(ABS)、には光発生部である微小ギャップ315が形成されている。微小ギャップ315は、コア先端311dの他端に近づくにつれて、交辺311eと基面311hとが徐々に近づいていき、交辺311eと基面311hとが最も近づいた位置、つまり、交辺311e、基面311hおよびコア先端311dの他端とがほぼ交わる位置に形成されている。第1面311fと第2面311gが交辺311eを挟んでなす角度は20度から60度が良い。また、交辺311eの曲率半径は小さいほど良く、100nmから数nmである。これらにより、高い光利用効率で光源からの光束を近接場光に変換することができ、効率的に記録媒体の微小領域を加熱することができる。
コア311は、一端側からコア先端311d手前までにおいて、その断面積が他端側に向かって漸次減少するように絞り成形されている。例えば、稜線311aが他端側に近づくにつれて基面311hに近づくように形成されている。また、断面形状が台形から三角形に変化することも合わせて、コア311とクラッド312は、導入された光束のスポット形状を変換させるスポット形状変換器と、スポットサイズを絞るスポットサイズ変換器とを兼ねて構成している。つまり、コア311の一端側からコア先端311d手前までにおいて、その断面積が他端側に向かって漸次減少するように絞り成形されているスポットサイズ変換器と、コア311の断面形状が台形から三角形に変化するスポット形状変換器を有している。一般に楕円状のスポット形状の出射ビームを発生させる半導体レーザをレーザ503として用いた場合、スポット形状変換器を有することは光利用効率の面で有利となる。
【0036】
コア先端311dと主磁極310近傍の詳細構造について
図5および
図6を用いて説明する。
図5はスライダ2のうちコア先端311d近傍を拡大した断面図である。
図6は
図5をスライダ2のABS側から見た下面図である。傾斜V溝311cは第1の金属膜313によって覆われている。つまり、第1面311fと第2面311gは、第1の金属膜313によって覆われている。また、コア先端311dの側面のうち傾斜V溝311cに対向する側面は第2の金属膜314によって覆われている。つまり、基面311hは、第2の金属膜314によって覆われている。コア311内部を伝搬する光束の方向と第2の金属膜314は略平行に配置され、第1の金属膜313は光束の方向と所定の角度をなす。よって、第1の金属膜313は、第2の金属膜314に対して斜めに備えられており、つまりコア311の記録媒体側に向うにつれて第1の金属膜313と第2の金属膜314との間隔が狭くなるように備えられている。第1の金属膜313と第2の金属膜314は、傾斜V溝311cの交辺311eにおいて、両者が最も接近した箇所が微小ギャップ315を構成しており、そのギャップ間隔は100nmから数nm程度である。また、微小ギャップ315はABSと面一となって記録媒体Dに向けて露出している。第1の金属膜313と第2の金属膜314は金、銀、プラチナ等の材料からなっている。レーザ503から出射した光は、コア311内部にて伝搬され、第1の金属膜313と第2の金属膜314間で表面プラズモンに変換され、表面プラズモンの状態で微小ギャップ315まで伝搬され、記録媒体Dに向けて露出した微小ギャップ315にて表面プラズモンが近接場光に変換されることで、記録媒体Dの微小部位に照射される。第1の金属膜313、第2の金属膜314およびこれらに挟まれたコア311はいわゆるMIM(Metal−Insulator−Metal)構造を構成しており、電磁波に対するアンテナ効果を有する。よって、レーザ503から出射した光を集めて、微小ギャップ315にて強力な近接場光を発生させることができる。主磁極310は、記録媒体D近傍では主磁極先端310aを有している。主磁極先端310aの記録媒体Dに対向する端面がスライダ2のABSと面一となっている。主磁極先端310aは第1の金属膜313に沿うように、その結果として傾斜V溝311cに埋め込まれるように配置される。つまり、主磁極先端310aは、コア311の第1面311fと第2面311gに挟まれ、交辺311eに対向する位置まで埋め込まれており、傾斜V溝311cと相対する三角錐形状となっている。ただし、主磁極先端310aと第1の金属膜313は直接接触しないように保護膜としての離間膜316で離間されている。主磁極先端310aと微小ギャップ315は、膜厚が数nm程度の離間膜316のみを挟んで接近しているため、主磁極先端310aからの磁束と、微小ギャップ315からの近接場光が、近接した形で発生する。離間膜316のために、主磁極先端310aと第1の金属膜313が電気的に絶縁されており、第1の金属膜313上の自由電子の波である表面プラズモンへの影響を低減し、効率よく近接場光を発生させることができる。また、主磁極先端310aと第1の金属膜313が合金化することで損傷してしまうことも避けることができる。
【0037】
コア311、微小ギャップ315の製造方法について
図7を用いて説明する。
図7の左列は平面図、右列はB−B’断面を示す。左列の平面図はコア311の基面311hと反対側の面が見える側からの図である。
まず
図7(a)に示すように、スライダ基部301上に、クラッド313の一部を構成する上部クラッド312a、金属膜母材膜901およびコア母材膜902を形成する。再生素子306やコイル308も適宜スライダ基部301上に形成するが、ここでは説明を省略する。ここでは素子1つの加工を図示するが、スライダ基部301が複数個接続された基板を用いることで複数の素子を一括して加工することができる。コア母材膜902上に平面視Y字状のレジストパターン903を形成する。レジストパターン903はフォトレジストをコア母材膜902全面に塗布し、Y字状のマスクパターンにて露光、現像することで形成する。
次に
図7(b)に示すように、レジストパターン903をコア母材膜902にエッチングにより転写する。コア母材膜902の材料がSiO2であれば、CF系ガスを用いたRIE(反応性イオンエッチング)によりエッチングすることができる。その後、残ったレジストパターン903を有機溶剤や酸を用いて除去する。これによりコア母材膜902表面には平面視Y字状かつ矩形断面のパターン902aが形成される。
次に
図7(c)に示すように、矩形断面のパターン902aを三角断面および台形断面を有するコア311に加工する。これにはArガスを用いたスパッタエッチングを用いる。これによりパターン902aの矩形断面の角が選択的にエッチングされて、傾斜側面を有する三角断面もしくは台形断面に加工される。三角断面の頂点に第1端部と第2端部を有する二股の稜線311bが形成される。この傾斜側面のうち第1面311fと第2面311gは互いに傾斜し対向するように加工される。これにより、コア311のうちY字の二股部の付け根はこの傾斜側面から構成される傾斜V溝311cとなる。この傾斜V溝311cは第1面311fと第2面311gに囲まれており、第1面311fと第2面311gとが交わる交辺311eは傾斜V溝311cの底となっている。交辺311eは、コア311の一方から他方に向かって、つまり、第1端部と第2端部を有する二股の稜線311bのY字が二股部から広がる方向(左列図において左側に向かう方向)にむかって基面311hに近づくように形成される。このとき金属膜母材膜901もエッチングされて第2の金属膜314が基面311hに形成される。
次に
図7(d)に示すように、傾斜V溝311c上の第1面311fと第2面311gとに第1の金属膜313、主磁極先端310aおよびクラッド313の一部を構成する上部クラッド312bを形成し、表面を研磨により平坦化する。上部クラッド312bの形成にはCVD(化学的気相成長)法などの成膜法を用いることができる。この後、コア311の長軸を横切るように切断、および切断面の研磨をおこない、光発生部である微小ギャップ315を形成する。
上記の製造方法は一般的な半導体製造技術を応用することで、微細かつ3次元的な構造を形成することができる。第1面311fと基面311h、第2面311gと基面311h、交辺311eと基面311hとが1点に集中する位置に微小ギャップ315が設けられるので、多方向から集中した光が拡散する間もなく記録媒体Dに照射されるようにすることができ、高い光利用効率を有する近接場光利用ヘッドを容易に製造することができる。
【0038】
図8は本実施形態のバリエーションを示す図であり、
図6に対応する。コア先端311dの側面のうち、第1の金属膜313と第2の金属膜314に覆われていない側面が遮光膜317に覆われている。本実施形態では、第1面311f、第2面311g、および基面311hが形成されておらず、傾斜V溝311cが形成されていない側の面に遮光膜317が形成される。なお、遮光膜317は第1の金属膜313、第2の金属膜314、主磁極先端310aの少なくとも一部が覆われていても良い。遮光膜317には反射率の大きい金属材料、例えばアルミニウムを用いると良い。遮光膜317表面の金属反射によって光をコア先端311d内部に閉じこめることができるため、微小ギャップ315に光がより集中しやすくなり、さらに光利用効率が向上できる。
【0039】
図9は本実施形態の別のバリエーションを示す図であり、
図6に対応する。
図6と比べて離間膜316を廃した構造になっており、第1面311f、第2面311gに第1の金属膜313が直接接触し、主磁極先端310aと第1の金属膜313が直接接触する。
図6と比べて単純な構造であるため製造が容易になる。また、主磁極先端310aと微小ギャップ315とをさらに接近させることができるので、磁束と近接場光がさらに効率よく協働できるようになり、記録媒体への微細磁気情報の記録効率をさらに向上することができる。
【0040】
図10は本実施形態のさらに別のバリエーションを示す図であり、
図6に対応する。
図6においてはW字型の断面となっているコア311であるが、このようにM字型の断面となっていても良い。この構造により基面311hに形成される第2の金属膜314の幅を調整することができる。MIM構造のアンテナ効果は共鳴現象に由来するものであるから、その効果は各部の寸法に依存する。
図6と比べて、第2の金属膜314の幅を調整することで第1の金属膜313、第2の金属膜314およびこれらに挟まれたコア311からなるMIM構造のアンテナ効果を高めることができる。よって、レーザ503から出射した光を集めて、微小ギャップ315にてより強力な近接場光を発生させることができる。
【0041】
図11は本実施形態のさらに別のバリエーションを示す図であり、
図6に対応する。
図6においては、主磁極先端310aが第1面311fと第2面311gが張る三角形を満たすような三角形断面を有しているが、
図11に示すような五角形断面としても良い。第1の金属膜313および離間膜316も、必ずしも第1面311fおよび第2面311gの全体を覆う必要はなく、五角形断面の主磁極先端310aと同じ幅で第1面311fおよび第2面311gを覆っても良い。主磁極先端を五角形にすることで、上述の実施形態よりも幅(図中の上下方向)を狭くすることが出来る。よって、主磁極先端から出る磁束がより狭い断面で、かつ密度がより大きくなった状態となる。よって、情報記録時の近接場光との協働がより効率的となり、微細な領域へのデータ記録の精度をさらに向上することができるようになる。
【0042】
本実施形態によって、レーザ503からコア311により伝搬された光束は、一度第1の金属膜313と第2の金属膜314間の第1面311f、第2面311g、基面311h、および交辺311eにおける表面プラズモンを介して、微小ギャップ315から近接場光として初めてスライダ2表面に発生し、記録媒体Dの微小領域を加熱する。本構成により、高い光利用効率でレーザ503からの光束を近接場光に変換することができ、よって効率良く記録媒体Dの微小領域を加熱することができる。ひいては情報記録再生装置1の消費電力を低減させることができる。
【0043】
(第2実施形態)
図12は本発明に係る第2実施形態を示す図であり、第1実施形態における
図3に対応する。この場合、スライダ基部301、記録素子302、導光素子、再生素子304が、単純に積層されている。主磁極310が第2の金属膜314側に配置される。本実施形態においては、第1実施形態と同様な効果を有し、かつ第1実施形態に比べて単純な構造であるため製造が容易になる。
【0044】
(第3実施形態)
図13は本発明に係る第3実施形態を示す図であり、第1実施形態における
図4に対応する。この場合、コア311のうちコア先端311d以外の部分では断面の変化しない単純な三角柱となっており、断面変化を必要とするスポット形状変換器、スポットサイズ変換器の機能は有さず、クラッド312と合わせて単なる光導波路となっている。レーザ503からの光束のスポット形状が真円であり、スポットサイズが十分小さければ、このような構成でも光利用効率は低下しない。また、三角柱の代わりに四角柱等どのような多面体形状でも良い。本実施形態においては、第1実施形態と同様な効果を有し、かつ第1実施形態に比べて単純な構造であるため製造が容易になる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせて採用することも可能である。