【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転制御可能な駆動輪を備えた追従台車であって、
先導物を追従対象として検出すると共に、
前記追従台車の正面方向を基準として該先導物が位置する方向を表す方位及び
該先導物までの距離を特定する先導物検出手段と、
該先導物検出手段により先導物の方位が特定されたとき、当該先導物の方位を基準とした方位の
角度的な範囲であるターゲット範囲を設定する範囲設定手段と、
先導物に追従して移動するための追従移動制御を実行する制御手段と、を有し、
前記先導物検出手段は、先導物を新たに検出するに当たって、前記範囲設定手段が設定したターゲット範囲内で先導物を検出する追従台車にある(請求項1)。
【0007】
本発明の追従台車では、前記先導物検出手段によって特定された先導物の方位を基準として前記ターゲット範囲が設定され、新たに先導物を検出するに当たっては、当該ターゲット範囲の中で先導物が検出される。
【0008】
このように先導物を検出する対象範囲を前記ターゲット範囲に限定すれば、検出される先導物の入れ替わりを抑制できるという効果を期待できる。例えば、先導物が他の搬送車両等とすれ違うような場合に、その搬送車両に検出対象が入れ替わるおそれを未然に抑制できる。
また、前記ターゲット範囲を設定すれば、先導物における検出部位の入れ替わりを抑制できるという効果を期待できる。例えば、歩行中の先導者については、右足と左足とが交互に前方に蹴り出されるという特有の動作がある。この動作では、前記追従台車側からの直近の部位が左足と右足とで交互に入れ替わることになる。前記ターゲット範囲を狭く設定すれば、検出部位が左足と右足とで交互に入れ替わるおそれを未然に抑制でき、先導物の方位の変動を抑制できる。先導物の方位の変動を抑制できれば、追従台車を制御する際の制御方位の変動を抑制でき、走行安定性を高めることが可能である。
【0009】
このように、本発明の追従台車は、先導物の種別や周囲環境等に起因して生じるおそれがある走行安定性の低下が抑制された追従台車である。
【0010】
本発明における先導物検出手段を構成するセンサとしては、例えば、レーザー光や赤外光や電波や音波を発射したときの反射成分を利用して先導物の方位や距離を特定可能にするアクティブなセンサや、1次元あるいは2次元領域の撮像画像について画像処理等を施して先導物を検出するパッシブなセンサ等がある。1次元あるいは2次元的な撮像画像では、奥行き方向の成分が失われている一方、撮像カメラの撮像範囲等の仕様がわかっていれば、撮像画像内の先導物の撮像位置等に基づいて距離を推定することも可能である。さらに、ステレオカメラ等を利用すれば、視差を利用して先導物の距離を算出できる。
【0011】
前記先導物検出手段を構成するセンサの検知範囲(検出範囲)としては、前記追従台車の正面側の所定の角度範囲であっても良く、前記追従台車の周囲、全周に渡る角度範囲であっても良い。
先導物である先導者の足は、歩行中、前進と停止とを繰り返すので、特に、膝下等の部位を検出して追従すると、追従台車の速度が増減を繰り返し安定しないおそれがある。センサの設置高さが低い場合には、先導者の膝よりも上側の部位を検出できるように、検知方向に仰角を与えることが良い。
【0012】
本発明の好適な一態様の追従台車が備える範囲設定手段が設定するターゲット範囲は、前記先導物検出手段により特定された先導物の距離が遠くなるほど狭く設定され、当該先導物の距離が近くなるほど広く設定される(請求項2)。
同じ大きさの先導物であっても、遠くの場合と近くの場合とで方位的な横幅(範囲)が相違してくる。遠くの場合には方位の範囲が狭くなり、近くなるほど方位の幅が広くなる。
【0013】
本発明の好適な一態様の追従台車が備える範囲設定手段が設定するターゲット範囲としては、前記先導物検出手段により特定された先導物の距離に人が位置すると仮定したときの体の横幅に相当する方位の範囲を基準とし、この方位の範囲よりも狭い範囲が設定される(請求項3)。
先導物の距離に人の体が位置する場合の横幅に相当する方位の範囲を基準とし、この範囲よりも狭いターゲット範囲を設定すれば、先導者に追従する際にも追従対象が左足と右足とで交互に入れ替わるおそれを抑制できる。当然ながら、先導者とは異なり方位の変動が少ない先導車両の場合、前記ターゲット範囲の設定によって不具合が生じるおそれは極めて少ない。
【0014】
本発明の好適な一態様の追従台車は、先導物の移動パターンが直進移動か否かを判断する移動パターン判断手段を備え、
前記制御手段は、先導物の移動パターンが直進移動のとき、前記先導物検出手段による先導物の方位が変化しても進行方向に関する制御目標値に反映されない方位の範囲である不感帯が設定された直進制御を実行する(請求項4)。
この場合には、先導物が先導者であるか先導車両であるかに依らず、先導物が直進移動する際の追従移動の安定性を向上できる。特に、歩行中の先導者に追従する際、追従対象の検出部位が左足と右足とで交互に入れ替わって方位が変動しても、その影響によって走行安定性が低下するおそれを未然に抑制できる。
【0015】
本発明の好適な一態様の追従台車が備える移動パターン判断手段は、前記先導物検出手段により特定された先導物の方位が所定の角度範囲内であったときに前記先導物の移動パターンを直進移動と判断し、先導物の方位が所定の角度範囲を超えているときに直進移動以外の移動パターンと判断する(請求項5)。
前記所定の角度範囲としては、例えば、±10度の角度範囲等を設定できる。例えば、直進パターンのときには±10度以内の方向に真っ直ぐ移動し、それ以外の移動の際は、10度とは区別し易い20度程度の方向に移動するように先導物の移動を規格化しておくことも良い。この場合には、先導する側の移動のパターンを規格化することで、前記追従台車側の追従制御を容易にできる。
【0016】
本発明の好適な一態様の追従台車は、先導物が人(先導者)であるか車両(先導車両)であるかを識別する種別識別手段を有し、
前記先導物検出手段による方位の特定方法は、先導者であるか先導車両であるかによって異なっている(請求項6)。
先導車両の場合、直近の部位を先導物の方位として特定すれば良い。一方、両足を有する先導者の場合、直近の部位を先導物の方位として特定すると、右足あるいは左足の方位が特定されて、先導者の体の中心からずれるおそれがある。このような点を考慮し、先導者と先導車両とで方位の特定方法を異ならせることが良い。
【0017】
本発明の好適な一態様の追従台車が備える種別識別手段は、先導者の両足の隙間を検出できたときに先導物が先導者であると識別する(請求項7)。
両足の隙間は、人に特有の形状的な特徴である。このような形状的な特徴を利用すれば、先導物の種別を精度高く判断できるようになる。
【0018】
本発明の好適な一態様の追従台車は、個別に回転制御可能な左右一対の駆動輪と、任意方向に向けて転動可能な従動輪と、を備える(請求項8)。
左右一対の駆動輪の個別制御により進行方向を変更可能な追従台車は、その場の回転に近い動作を含む複雑な動作が可能である一方、走行安定性を確保するために制御上の工夫を要する傾向にある。特に、先導物が先導者である場合には、先導物の方位が変動し易くなるため、制御の難易度が高くなる傾向にある。このような追従台車の場合、前記ターゲット範囲の設定によって先導物の方位の変動を抑制できるという本発明の作用効果が一層、有効になる。