特許第6066698号(P6066698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6066698樹脂部品の締結部構造、およびその成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066698
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】樹脂部品の締結部構造、およびその成形装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20170116BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20170116BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20170116BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   F16B5/02 F
   B29C45/14
   B29C33/12
   B29C33/42
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-264523(P2012-264523)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-109333(P2014-109333A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年11月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】都築 弘明
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 有範
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−036901(JP,U)
【文献】 特開2012−232430(JP,A)
【文献】 特開2007−062040(JP,A)
【文献】 実開平04−136304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00−5/12
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部品に径寸法が一定の円筒形状の筒状部材が一体的に埋設されているとともに、該筒状部材の内側に位置する樹脂に、大きさおよび形状が前記筒状部材とは別個に任意に設定される挿通穴が設けられており、該挿通穴内をねじ部材が挿通させられ、該ねじ部材によって該筒状部材が軸方向から挟圧されることにより、該樹脂部品を所定の部材に固定することができる樹脂部品の締結部構造において、
前記筒状部材の軸方向の一端から中間部までは該筒状部材の内周面が露出しているが、該中間部から他端までは該内周面が全周に亘って樹脂により被覆されており、該内面被覆樹脂に前記挿通穴が設けられることにより、該挿通穴の大きさおよび形状を前記筒状部材とは別個に任意に設定できる一方、
前記筒状部材の前記他端には切欠が設けられており、該切欠を介して該筒状部材の内側および外側の樹脂が一体に繋がっている
ことを特徴とする樹脂部品の締結部構造。
【請求項2】
前記筒状部材には、前記他端に設けられる切欠の他に前記一端にも切欠が設けられているとともに、軸方向の中間部には貫通穴が設けられており、該切欠および該貫通穴の一部を介して該筒状部材の内側および外側の樹脂が一体に繋がっている一方、
前記切欠および前記貫通穴は、前記筒状部材の軸方向の中心に対して対称形状となるように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂部品の締結部構造。
【請求項3】
前記筒状部材の内周面が露出している軸方向長さSは、該筒状部材の全長Lの1/2以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂部品の締結部構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の締結部構造を有する樹脂部品を前記筒状部材と一体的にインサート成形するための成形装置であって、
前記筒状部材の内周形状に対応する外周形状を有し、該筒状部材の内側に相対的に嵌合されて該筒状部材を位置決めする位置決め部と、
該位置決め部から軸方向に突出するように一体に設けられて前記挿通穴を成形する突出成形部と、
を有する芯金を備えており、該芯金は、前記位置決め部側において一対の成形金型の何れか一方に一体的に固設されている
ことを特徴とする成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂部品の締結部構造に係り、特に、樹脂部品に筒状部材がインサート成形によって埋設されているとともにその筒状部材の内側に挿通穴が設けられてねじ部材が挿通させられる締結部構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂部品に筒状部材がインサート成形により一体的に埋設されているとともに、その筒状部材の内側に挿通穴が設けられており、その挿通穴内をねじ部材が挿通させられ、そのねじ部材によってその筒状部材が軸方向から挟圧されることにより、その樹脂部品を所定の部材に固定することができる樹脂部品の締結部構造が知られている(特許文献1参照)。図12の締結部100はその一例で、樹脂部品102には筒状部材として円筒形状のカラー104がインサート成形によって一体的に埋設されている。カラー104には、複数の貫通穴106が設けられており、その貫通穴106を通ってカラー104の内側まで合成樹脂が流入しているとともに、その流入樹脂108にはカラー104と略同心に挿通穴110が設けられ、ねじ部材である締結ボルト112が挿通させられるようになっている。挿通穴110を挿通させられた締結ボルト112は、所定の取付部材114に設けられたねじ穴116に螺合され、カラー104が締結ボルト112の頭部と取付部材114との間で挟圧されることにより、そのカラー104を介して樹脂部品102が取付部材114に一体的に固定される。挿通穴110の大きさ(径寸法)や形状は、インサート成形時にカラー104とは別個に任意に設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−136304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来の締結部100において、カラー104が樹脂部品102に一体的に埋設されるようにインサート成形する際には、例えば図13に示すように、挿通穴110を成形するための芯金120と同心にカラー104を成形金型122に配置する必要があり、そのカラー104の位置決めが問題になっていた。例えば、カラー104の外径と略等しい径寸法の位置決め穴124を成形金型122に設けることが考えられるが、その分だけ製造コストが高くなるだけでなく、図13に示す横開きタイプの成形装置の場合、カラー104の姿勢が不安定で一点鎖線で示すように傾く可能性がある。位置決め穴124を深くすればカラー104の姿勢が安定するが、その位置決め穴124の深さ分だけカラー104が樹脂部品102から突き出すという別の問題が生じる。なお、図13は固定側の成形金型122を示した図で、図示しない可動側の成形金型と型締めされることにより、樹脂部品102を成形するための製品キャビティがカラー104の周囲に形成される。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、樹脂部品に筒状部材がインサート成形により一体的に埋設されており、その筒状部材の内側に設けられた挿通穴内をねじ部材が挿通させられる締結部構造において、インサート成形する際の筒状部材の位置決めを高い精度で容易に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、樹脂部品に径寸法が一定の円筒形状の筒状部材が一体的に埋設されているとともに、その筒状部材の内側に位置する樹脂に、大きさおよび形状が前記筒状部材とは別個に任意に設定される挿通穴が設けられており、その挿通穴内をねじ部材が挿通させられ、そのねじ部材によってその筒状部材が軸方向から挟圧されることにより、その樹脂部品を所定の部材に固定することができる樹脂部品の締結部構造において、(a) 前記筒状部材の軸方向の一端から中間部まではその筒状部材の内周面が露出しているが、その中間部から他端まではその内周面が全周に亘って樹脂により被覆されており、その内面被覆樹脂に前記挿通穴が設けられることにより、その挿通穴の大きさおよび形状を前記筒状部材とは別個に任意に設定できる一方、(b) 前記筒状部材の前記他端には切欠が設けられており、その切欠を介してその筒状部材の内側および外側の樹脂が一体に繋がっていることを特徴とする。
【0008】
発明は、第1発明の樹脂部品の締結部構造において、(a) 前記筒状部材には、前記他端に設けられる切欠の他に前記一端にも切欠が設けられているとともに、軸方向の中間部には貫通穴が設けられており、それらの切欠および貫通穴の一部を介してその筒状部材の内側および外側の樹脂が一体に繋がっている一方、(b) 前記切欠および前記貫通穴は、前記筒状部材の軸方向の中心に対して対称形状となるように設けられていることを特徴とする。
【0009】
発明は、第1発明または第2発明の樹脂部品の締結部構造において、前記筒状部材の内周面が露出している軸方向長さSは、その筒状部材の全長Lの1/2以上であることを特徴とする。
【0010】
発明は、第1発明〜第発明の何れかの締結部構造を有する樹脂部品を前記筒状部材と一体的にインサート成形するための成形装置であって、(a) 前記筒状部材の内周形状に対応する外周形状を有し、その筒状部材の内側に相対的に嵌合されてその筒状部材を位置決めする位置決め部と、(b) その位置決め部から軸方向に突出するように一体に設けられて前記挿通穴を成形する突出成形部と、を有する芯金を備えており、(c) その芯金は、前記位置決め部側において一対の成形金型の何れか一方に一体的に固設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような樹脂部品の締結部構造においては、筒状部材の軸方向の一端から中間部までは内周面が露出しているため、例えばインサート成形の際に挿通穴を成形するための芯金に、上記筒状部材に嵌合される位置決め部を設けることにより、成形金型に位置決め穴を設けることなく筒状部材を芯金に対して高い精度で容易に位置決めすることができる。また、中間部から他端までは内周面が樹脂によって被覆されており、その内面被覆樹脂に芯金によって挿通穴が設けられるため、その挿通穴の大きさや形状を筒状部材とは別個に芯金によって任意に設定することができる。すなわち、内周面が露出している一端から中間部までで筒状部材の位置決め性を確保しつつ、内面被覆樹脂が設けられた中間部から他端までで従来と同様に挿通穴の大きさや形状を任意に設定することができるのである。
【0012】
また、筒状部材の他端に切欠が設けられ、その切欠を介して筒状部材の内側および外側の樹脂が一体に繋がっているため、その他端における内面被覆樹脂が筒状部材に密着する状態に良好に維持され、挿通穴の形状や寸法精度が適切に確保される。すなわち、前記図12に示すようにカラー104の中間部に貫通穴106を設けただけの締結部100の場合、その軸方向の端部では樹脂の接着力でカラー104に接着されているだけであるため、図12のXIV 部を拡大して示す図14のように、流入樹脂(本願の内面被覆樹脂に相当)108の端部がカラー104から剥がれて内側へ変形し、挿通穴110の形状や寸法精度が損なわれる可能性があった。
【0013】
発明では、筒状部材の軸方向の両端にそれぞれ切欠が設けられるとともに軸方向の中間部には貫通穴が設けられており、それらの切欠および貫通穴を介して筒状部材の内側および外側の樹脂が一体に繋がっているため、インサート成形の際の樹脂の流動性が向上し、挿通穴を有する内面被覆樹脂を良好に成形できる。また、切欠および貫通穴が軸方向の中心に対して対称形状となるように設けられているため、インサート成形の際に筒状部材を成形金型に配置する際に軸方向の向きを考慮する必要がなく、誤組付が防止されるとともに作業性が向上する。
【0014】
発明では、筒状部材の内周面が露出している部分の軸方向長さSが全長Lの1/2以上であるため、インサート成形する際に例えば芯金の位置決め部に嵌合した時に、筒状部材の半分以上がその位置決め部によって支持され、横開きタイプの成形装置においても筒状部材の姿勢が安定する。これにより、筒状部材の位置精度を含めて樹脂部品の締結部を高い精度で成形できるとともに、筒状部材と位置決め部との間に隙間があっても良いことから筒状部材の寸法要件が緩和されて製造コストを低減できる。
【0015】
発明は、上記第1発明〜第発明の締結部構造を有する樹脂部品を筒状部材と一体的にインサート成形するための成形装置に関するもので、実質的に第1発明〜第発明と同様の効果が得られる。加えて、筒状部材の内側に嵌合されて位置決めする位置決め部と挿通穴を成形する突出成形部とを一体に有する芯金が用いられるため、装置が簡単で且つ安価に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例である締結部構造を説明する図で、図2におけるI−I矢視部分の縦断面図である。
図2図1の締結部付近を軸方向から見た平面図である。
図3図1における III−III 矢視部分の横断面図である。
図4図1の締結部に用いられているカラーを単独で示す図で、図5におけるIV−IV矢視部分の縦断面図である。
図5図4のカラーを軸方向から見た平面図である。
図6図1の締結部を介して樹脂部品が所定の取付部材に固定された状態を示す縦断面図である。
図7図1の締結部を有する樹脂部品をカラーと一体的にインサート成形する成形装置を説明する図で、固定側の成形金型に設けられた芯金にカラーを配置した状態を示す正面図である。
図8図7の成形金型に可動側の成形金型が接近させられて型締めされた状態を示す正面図である。
図9図8の製品キャビティ内に溶融樹脂が射出されて樹脂部品が成形された状態を示す正面図である。
図10】本発明の他の実施例を説明する図で、筒状部材の別の例を示す斜視図である。
図11】挿通穴の形状が異なる本発明の更に別の実施例を説明する図で、図2に対応する平面図である。
図12】従来の締結部構造の一例を説明する図で、図6に対応する縦断面図である。
図13図12の締結部を有する樹脂部品をカラーと一体的にインサート成形する成形装置を説明する図で、固定側の成形金型に設けられた芯金の周囲にカラーを配置した状態を示す正面図である。
図14図12におけるXIV 部を拡大して示した断面図で、カラーの内側の樹脂が剥がれて変形した場合を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
樹脂部品に埋設される筒状部材は、鋼管等の金属製の円筒形状の部材が好適に用いられるが、鋼板を丸めたものでも良い。また、完全に閉断面である必要はなく、例えば鋼板を丸めた場合に軸方向の全長に亘って隙間がある開き断面でも良く、その隙間から樹脂が筒状部材の内部へ流入して内面被覆樹脂が成形されても良い。
【0018】
筒状部材の内周面を被覆する内面被覆樹脂には挿通穴が設けられるが、この挿通穴の大きさや形状は、筒状部材とは別個に任意に設定できる。例えば円形が一般的であるが、楕円形や長円形、トラック型など、種々の形状を採用できる。内面被覆樹脂の肉厚は、できるだけ小径の筒状部材を採用する上で、挿通穴を設けることが可能で且つ成形時に樹脂が流動できる範囲でできるだけ薄い方が良く、樹脂の種類によっても異なるが例えば1mm程度が適当である。すなわち、内面被覆樹脂の肉厚を1mm程度確保できる範囲で、挿通穴の大きさに応じて筒状部材の径寸法が適宜設定される。
【0019】
筒状部材の内周面が露出している軸方向長さSは、筒状部材の全長Lの1/2以上が望ましいが、1/2より短い場合でも、例えば内周面に略密着するように位置決め部を設けることにより筒状部材を適切に位置決めできる。内周面を露出させるのは、インサート成形する際に筒状部材を内周側から位置決めするためで、所定の位置決め精度が得られる範囲で軸方向長さSや位置決め部の寸法要件が適宜定められる。寸法要件により、内周面の露出部分に樹脂が薄く付着することがあっても差し支えない。
【0020】
状部材の他端に設けられる切欠は、端縁の一箇所に設けるだけでも良いが、例えば軸心まわりに等角度間隔で複数設けることが望ましい。第発明の切欠および貫通穴についても同様である。また、切欠の断面形状としては、半円形状やV字形状、U字形状、或いは軸方向に所定の長さを有するスリット形状など、種々の態様が可能である。
【0021】
発明では切欠および貫通穴が軸方向の中心に対して対称形状となるように設けられているが、他の発明の実施に際しては、内面被覆樹脂が設けられる他端部側に設けるだけでも良い。貫通穴は、円形穴や角穴、軸方向に長い長円形穴など、種々の形状を採用できるし、周方向に離間して複数設けたり、軸方向に離間して複数設けたりすることもできる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である締結部構造を説明する図で、樹脂部品10に設けられた締結部12の縦断面図であり、図2におけるI−I矢視部分の縦断面図である。図2図1の締結部12付近を軸方向の上方から見た平面図で、図3図1における III−III 矢視部分の横断面図である。また、図4は、締結部12に用いられているカラー14を単独で示す図で、図5におけるIV−IV矢視部分の縦断面図であり、図5図4のカラー14を軸方向から見た平面図である。カラー14は筒状部材に相当するもので、本実施例では円筒形状の鋼管である。
【0023】
上記締結部12には、樹脂部品10にカラー14がインサート成形により一体的に埋設されている。カラー14の軸方向の一端および他端にはそれぞれ切欠16、18が設けられているとともに、軸方向の中間部には貫通穴20が設けられている。切欠16、18は何れも断面が半円形状を成しているとともに、それぞれ軸心Oまわりにおいて等角度間隔で3箇所に設けられている。3つずつの切欠16、18は、軸心Oまわりおいて互いに同じ位置に設けられている。貫通穴20は、軸方向に長い長円形状を成しているとともに、軸心Oまわりにおいて等角度間隔で3箇所に設けられている。本実施例では、切欠16、18に対して軸心Oまわりに60°ずれた中間位置に貫通穴20が設けられている。3つの貫通穴20は、何れも軸方向の中央部分に設けられており、カラー14は軸方向の中心に対して対称形状に構成されている。
【0024】
上記切欠16、18、および貫通穴20内には、総て樹脂部品10を構成している合成樹脂が充填されているとともに、一方の切欠18および貫通穴20からはカラー14の内側へ合成樹脂が流入し、そのカラー14の内周面14fを覆蓋するように円筒形状の内面被覆樹脂22が設けられている。この内面被覆樹脂22は、切欠18および貫通穴20を介してカラー14の外側の合成樹脂と一体に繋がっており、内面被覆樹脂22の内側には、カラー14と略同心に断面円形の挿通穴24が設けられている。内面被覆樹脂22は、切欠18側の端部から軸方向の途中まで設けられているだけで、反対側(一端側)の軸方向長さSの領域ではカラー14の内周面14fが露出している。内面被覆樹脂22の肉厚tは、合成樹脂が流動して内面被覆樹脂22を成形できる範囲でできるだけ薄く、本実施例では1mm程度である。また、内面被覆樹脂22の端部すなわち貫通穴20側の段差部26は、内周面14fの露出部側へ向かうに従って内周側への突出量が徐々に小さくなるテーパ面とされている。
【0025】
このような締結部12を有する樹脂部品10は、例えば図7図9に示す成形装置50によってカラー14と一体的にインサート成形される。成形装置50は固定側の成形金型52および可動側の成形金型54を有する横開きタイプのもので、固定側の成形金型52は、前記カラー14を位置決めして支持するとともに前記挿通穴24を成形するための芯金56を備えている。芯金56は、カラー14の内周形状に対応する外周形状すなわち大径の円柱形状で、そのカラー14の内側に相対的に嵌合されてカラー14を位置決めする位置決め部58と、その位置決め部58から軸方向に突出するように一体に設けられて挿通穴24を成形する小径円柱形状の突出成形部60とを有し、位置決め部58側において成形金型52に一体的に固設されている。位置決め部58の軸方向長さは、前記内周面14fの露出部の軸方向長さSと同じで、その軸方向長さSは、カラー14の全長Lの1/2以上であり、図7に示すようにカラー14の半分以上が位置決め部58に嵌合されて安定して支持される。また、位置決め部58の径寸法D1は、カラー14の内径dと同じか僅かに小さい寸法で、カラー14を略同心に位置決めできる。突出成形部60の径寸法D2は前記挿通穴24と同じで、位置決め部58と突出成形部60との境界部分には、径寸法が徐々に小さくなるテーパ部62が設けられている。図7は、芯金56にカラー14を配置した状態を示す正面図である。
【0026】
図8は、上記固定側の成形金型52に対して可動側の成形金型54が接近させられ、型締めされた状態を示す正面図で、これによりそれ等の成形金型52、54の間には樹脂部品10に対応する製品キャビティ64が形成される。この型締め状態において、締結部12を成形する部分の型間距離Kは、芯金56の軸方向長さと同じで、カラー14の全長Lと同じか僅かに小さく、カラー14は一対の成形金型52、54の双方に当接させられる。型間距離Kは、例えばカラー14の全長Lの公差のミニマム寸法を狙い値として設定され、型締め力でカラー14が圧縮されることにより、全長Lが型間距離Kとされる。そして、成形金型52に設けられたゲート66から溶融樹脂を射出することにより、図9に示すように製品キャビティ64内に溶融樹脂が充填されるとともに、カラー14に設けられた切欠18および貫通穴20からカラー14の内側へ溶融樹脂が流入し、カラー14が埋設されるとともにカラー14の内側に内面被覆樹脂22が設けられた締結部12を有する樹脂部品10が成形される。芯金56にはテーパ部62が設けられているため、貫通穴20からカラー14の内部へ流入した溶融樹脂が更に突出成形部60とカラー14との間の環状の空間内に良好に流入させられ、内面被覆樹脂22が良好に成形される。カラー14の両端は一対の成形金型52、54の双方に当接させられているため、樹脂部品10の状態においてカラー14の両端面は外部に露出している。
【0027】
そして、このような樹脂部品10は、締結部12を介して例えば図6に示すように前記取付部材114に一体的に固定される。ねじ部材である締結ボルト112は、カラー14の内側に挿入されるとともに、そのカラー14の内部に設けられた内面被覆樹脂22の挿通穴24内を挿通させられ、前記ねじ穴116に螺合される。挿通穴24の段差部26はテーパ面とされているため、締結ボルト112の先端がその段差部26に案内されつつ挿通穴24内に挿入される。そして、このように締結ボルト112がねじ穴116に螺合されて締め付けられることにより、カラー14が締結ボルト112の頭部と取付部材114との間で挟圧され、そのカラー14を介して樹脂部品10が取付部材114に一体的に固定される。
【0028】
このような本実施例の樹脂部品10の締結部構造においては、カラー14の軸方向の一端から中間部までは内周面14fが露出しているため、図7図9に示すように樹脂部品10をインサート成形する際に、挿通穴24を成形するための芯金56に設けられた位置決め部58によりカラー14を内側から位置決めすることが可能で、図13に示す位置決め穴124を設けることなくカラー14を高い精度で容易に位置決めすることができる。また、中間部から他端までは内周面14fが内面被覆樹脂22によって被覆されており、その内面被覆樹脂22に芯金56によって挿通穴24が設けられるため、その挿通穴24の大きさや形状をカラー14とは別個に任意に設定することができる。すなわち、内周面14fが露出している一端から中間部まででカラー14の位置決め性を確保しつつ、内面被覆樹脂22が設けられた中間部から他端までで従来と同様に挿通穴24の大きさや形状を任意に設定することができるのである。
【0029】
また、カラー14の端部に切欠18が設けられ、その切欠18を介してカラー14の内側および外側の合成樹脂が互いに一体に繋がっているため、例えば前記図14に示すように樹脂108の端部がカラー104から剥がれて内側へ変形する恐れが無く、内面被覆樹脂22がカラー14に密着する状態に良好に維持され、挿通穴24の形状や寸法精度が適切に確保される。
【0030】
また、カラー14の軸方向の両端にそれぞれ切欠16、18が設けられるとともに軸方向の中間部には貫通穴20が設けられており、本実施例では切欠18および貫通穴20を介してカラー14の内側および外側の合成樹脂が互いに一体に繋がっているため、インサート成形の際の溶融樹脂の流動性が向上し、挿通穴24を有する内面被覆樹脂22を良好に成形できる。また、切欠16、18、および貫通穴20が軸方向の中心に対して対称形状となるように設けられているため、インサート成形の際にカラー14を成形金型52の芯金56に配置する際に軸方向の向きを考慮する必要がなく、誤組付が防止されるとともに作業性が向上する。
【0031】
また、カラー14の内周面14fが露出している部分の軸方向長さSが全長Lの1/2以上であるため、そのカラー14を芯金56の位置決め部58に嵌合した時に、カラー14の半分以上がその位置決め部58によって支持され、横開きタイプの成形装置50においてもカラー14の姿勢が安定する。これにより、カラー14の位置精度を含めて樹脂部品10の締結部12を高い精度で成形できるとともに、カラー14と位置決め部58との間に隙間があっても良いことからカラー14の寸法要件が緩和されて製造コストを低減できる。
【0032】
また、本実施例の成形装置50は、カラー14の内側に嵌合されて位置決めする位置決め部58と挿通穴24を成形する突出成形部60とを一体に有する芯金56が用いられているため、成形装置50が簡単で且つ安価に構成される。
【0033】
なお、上記実施例では閉断面の鋼管製のカラー14が用いられていたが、例えば図10に示すように、鋼板を円筒状に丸めるとともに軸方向の全長に亘って隙間72を有する開き断面の筒状部材70を、カラー14の代わりに用いて締結部12を構成することもできる。この場合にも、前記切欠16、18、および貫通穴20を設けることが可能で、切欠18を設けた場合が本発明の実施例である。
【0034】
また、前記実施例では内面被覆樹脂22に円形の挿通穴24が設けられていたが、例えば図11に示すように内面被覆樹脂22にトラック型の挿通穴80を設けることも可能である。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10:樹脂部品 12:締結部 14:カラー(筒状部材) 14f:内周面 16、18:切欠 20:貫通穴 22:内面被覆樹脂 24、80:挿通穴 50:成形装置 52、54:成形金型 56:芯金 58:位置決め部 60:突出成形部 70:筒状部材 112:締結ボルト(ねじ部材) 114:取付部材(部材)
図1
図2
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図5
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図9
図10
図11
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図14