【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である締結部構造を説明する図で、樹脂部品10に設けられた締結部12の縦断面図であり、
図2におけるI−I矢視部分の縦断面図である。
図2は
図1の締結部12付近を軸方向の上方から見た平面図で、
図3は
図1における III−III 矢視部分の横断面図である。また、
図4は、締結部12に用いられているカラー14を単独で示す図で、
図5におけるIV−IV矢視部分の縦断面図であり、
図5は
図4のカラー14を軸方向から見た平面図である。カラー14は筒状部材に相当するもので、本実施例では円筒形状の鋼管である。
【0023】
上記締結部12には、樹脂部品10にカラー14がインサート成形により一体的に埋設されている。カラー14の軸方向の一端および他端にはそれぞれ切欠16、18が設けられているとともに、軸方向の中間部には貫通穴20が設けられている。切欠16、18は何れも断面が半円形状を成しているとともに、それぞれ軸心Oまわりにおいて等角度間隔で3箇所に設けられている。3つずつの切欠16、18は、軸心Oまわりおいて互いに同じ位置に設けられている。貫通穴20は、軸方向に長い長円形状を成しているとともに、軸心Oまわりにおいて等角度間隔で3箇所に設けられている。本実施例では、切欠16、18に対して軸心Oまわりに60°ずれた中間位置に貫通穴20が設けられている。3つの貫通穴20は、何れも軸方向の中央部分に設けられており、カラー14は軸方向の中心に対して対称形状に構成されている。
【0024】
上記切欠16、18、および貫通穴20内には、総て樹脂部品10を構成している合成樹脂が充填されているとともに、一方の切欠18および貫通穴20からはカラー14の内側へ合成樹脂が流入し、そのカラー14の内周面14fを覆蓋するように円筒形状の内面被覆樹脂22が設けられている。この内面被覆樹脂22は、切欠18および貫通穴20を介してカラー14の外側の合成樹脂と一体に繋がっており、内面被覆樹脂22の内側には、カラー14と略同心に断面円形の挿通穴24が設けられている。内面被覆樹脂22は、切欠18側の端部から軸方向の途中まで設けられているだけで、反対側(一端側)の軸方向長さSの領域ではカラー14の内周面14fが露出している。内面被覆樹脂22の肉厚tは、合成樹脂が流動して内面被覆樹脂22を成形できる範囲でできるだけ薄く、本実施例では1mm程度である。また、内面被覆樹脂22の端部すなわち貫通穴20側の段差部26は、内周面14fの露出部側へ向かうに従って内周側への突出量が徐々に小さくなるテーパ面とされている。
【0025】
このような締結部12を有する樹脂部品10は、例えば
図7〜
図9に示す成形装置50によってカラー14と一体的にインサート成形される。成形装置50は固定側の成形金型52および可動側の成形金型54を有する横開きタイプのもので、固定側の成形金型52は、前記カラー14を位置決めして支持するとともに前記挿通穴24を成形するための芯金56を備えている。芯金56は、カラー14の内周形状に対応する外周形状すなわち大径の円柱形状で、そのカラー14の内側に相対的に嵌合されてカラー14を位置決めする位置決め部58と、その位置決め部58から軸方向に突出するように一体に設けられて挿通穴24を成形する小径円柱形状の突出成形部60とを有し、位置決め部58側において成形金型52に一体的に固設されている。位置決め部58の軸方向長さは、前記内周面14fの露出部の軸方向長さSと同じで、その軸方向長さSは、カラー14の全長Lの1/2以上であり、
図7に示すようにカラー14の半分以上が位置決め部58に嵌合されて安定して支持される。また、位置決め部58の径寸法D1は、カラー14の内径dと同じか僅かに小さい寸法で、カラー14を略同心に位置決めできる。突出成形部60の径寸法D2は前記挿通穴24と同じで、位置決め部58と突出成形部60との境界部分には、径寸法が徐々に小さくなるテーパ部62が設けられている。
図7は、芯金56にカラー14を配置した状態を示す正面図である。
【0026】
図8は、上記固定側の成形金型52に対して可動側の成形金型54が接近させられ、型締めされた状態を示す正面図で、これによりそれ等の成形金型52、54の間には樹脂部品10に対応する製品キャビティ64が形成される。この型締め状態において、締結部12を成形する部分の型間距離Kは、芯金56の軸方向長さと同じで、カラー14の全長Lと同じか僅かに小さく、カラー14は一対の成形金型52、54の双方に当接させられる。型間距離Kは、例えばカラー14の全長Lの公差のミニマム寸法を狙い値として設定され、型締め力でカラー14が圧縮されることにより、全長Lが型間距離Kとされる。そして、成形金型52に設けられたゲート66から溶融樹脂を射出することにより、
図9に示すように製品キャビティ64内に溶融樹脂が充填されるとともに、カラー14に設けられた切欠18および貫通穴20からカラー14の内側へ溶融樹脂が流入し、カラー14が埋設されるとともにカラー14の内側に内面被覆樹脂22が設けられた締結部12を有する樹脂部品10が成形される。芯金56にはテーパ部62が設けられているため、貫通穴20からカラー14の内部へ流入した溶融樹脂が更に突出成形部60とカラー14との間の環状の空間内に良好に流入させられ、内面被覆樹脂22が良好に成形される。カラー14の両端は一対の成形金型52、54の双方に当接させられているため、樹脂部品10の状態においてカラー14の両端面は外部に露出している。
【0027】
そして、このような樹脂部品10は、締結部12を介して例えば
図6に示すように前記取付部材114に一体的に固定される。ねじ部材である締結ボルト112は、カラー14の内側に挿入されるとともに、そのカラー14の内部に設けられた内面被覆樹脂22の挿通穴24内を挿通させられ、前記ねじ穴116に螺合される。挿通穴24の段差部26はテーパ面とされているため、締結ボルト112の先端がその段差部26に案内されつつ挿通穴24内に挿入される。そして、このように締結ボルト112がねじ穴116に螺合されて締め付けられることにより、カラー14が締結ボルト112の頭部と取付部材114との間で挟圧され、そのカラー14を介して樹脂部品10が取付部材114に一体的に固定される。
【0028】
このような本実施例の樹脂部品10の締結部構造においては、カラー14の軸方向の一端から中間部までは内周面14fが露出しているため、
図7〜
図9に示すように樹脂部品10をインサート成形する際に、挿通穴24を成形するための芯金56に設けられた位置決め部58によりカラー14を内側から位置決めすることが可能で、
図13に示す位置決め穴124を設けることなくカラー14を高い精度で容易に位置決めすることができる。また、中間部から他端までは内周面14fが内面被覆樹脂22によって被覆されており、その内面被覆樹脂22に芯金56によって挿通穴24が設けられるため、その挿通穴24の大きさや形状をカラー14とは別個に任意に設定することができる。すなわち、内周面14fが露出している一端から中間部まででカラー14の位置決め性を確保しつつ、内面被覆樹脂22が設けられた中間部から他端までで従来と同様に挿通穴24の大きさや形状を任意に設定することができるのである。
【0029】
また、カラー14の端部に切欠18が設けられ、その切欠18を介してカラー14の内側および外側の合成樹脂が互いに一体に繋がっているため、例えば前記
図14に示すように樹脂108の端部がカラー104から剥がれて内側へ変形する恐れが無く、内面被覆樹脂22がカラー14に密着する状態に良好に維持され、挿通穴24の形状や寸法精度が適切に確保される。
【0030】
また、カラー14の軸方向の両端にそれぞれ切欠16、18が設けられるとともに軸方向の中間部には貫通穴20が設けられており、本実施例では切欠18および貫通穴20を介してカラー14の内側および外側の合成樹脂が互いに一体に繋がっているため、インサート成形の際の溶融樹脂の流動性が向上し、挿通穴24を有する内面被覆樹脂22を良好に成形できる。また、切欠16、18、および貫通穴20が軸方向の中心に対して対称形状となるように設けられているため、インサート成形の際にカラー14を成形金型52の芯金56に配置する際に軸方向の向きを考慮する必要がなく、誤組付が防止されるとともに作業性が向上する。
【0031】
また、カラー14の内周面14fが露出している部分の軸方向長さSが全長Lの1/2以上であるため、そのカラー14を芯金56の位置決め部58に嵌合した時に、カラー14の半分以上がその位置決め部58によって支持され、横開きタイプの成形装置50においてもカラー14の姿勢が安定する。これにより、カラー14の位置精度を含めて樹脂部品10の締結部12を高い精度で成形できるとともに、カラー14と位置決め部58との間に隙間があっても良いことからカラー14の寸法要件が緩和されて製造コストを低減できる。
【0032】
また、本実施例の成形装置50は、カラー14の内側に嵌合されて位置決めする位置決め部58と挿通穴24を成形する突出成形部60とを一体に有する芯金56が用いられているため、成形装置50が簡単で且つ安価に構成される。
【0033】
なお、上記実施例では閉断面の鋼管製のカラー14が用いられていたが、例えば
図10に示すように、鋼板を円筒状に丸めるとともに軸方向の全長に亘って隙間72を有する開き断面の筒状部材70を、カラー14の代わりに用いて締結部12を構成することもできる。この場合にも、前記切欠16、18、および貫通穴20を設けることが可能
で、切欠18を設けた場合が本発明の実施例である。
【0034】
また、前記実施例では内面被覆樹脂22に円形の挿通穴24が設けられていたが、例えば
図11に示すように内面被覆樹脂22にトラック型の挿通穴80を設けることも可能である。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。