特許第6066715号(P6066715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066715
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】液封防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   F16F13/10 D
   F16F13/10 K
   F16F13/10 J
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-280161(P2012-280161)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122685(P2014-122685A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】平野 行信
(72)【発明者】
【氏名】佐鳥 和俊
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−256930(JP,A)
【文献】 特開2012−251574(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105404(WO,A1)
【文献】 実開昭61−191542(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源側へ取付けられる第1の取付部材(1)と、振動被伝達側へ取付けられる第2の取付部材(2)と、これらの間に設けられる弾性本体部(3)を備え、この弾性本体部を壁の一部とする液室を形成し、この液室内を仕切部材(11)にて主液室(12)と副液室(13)とに区画するとともに、これら主液室と副液室間を所定の入力振動で第1共振を生じる第1オリフィス(14)で連通し、かつ仕切部材の少なくとも一部に主液室の内圧変化を吸収するべく弾性変形する弾性仕切部材(30)を設け、
前記仕切部材(11)に前記主液室(12)と副液室(13)を連通し、前記第1オリフィス(14)の第1共振と異なる周波数で第2共振する第2オリフィス(50)を設け、この第2オリフィス(50)を前記弾性仕切部材(30)の一部で開閉するとともに、
前記仕切部材(11)は、前記第1オリフィス(14)を外周部に備え、かつその主液室(12)側の開口である第1の開口(24)を備え、
前記第2オリフィス(50)は、前記第1オリフィス(14)と分離して別に形成され、かつその主液室側開口である第2の開口(25)が、前記第1の開口(24)と別に形成されているとともに
前記仕切部材(11)は、前記弾性仕切部材(30)と、この弾性仕切部材(30)を嵌合する枠部材(40)と、前記弾性仕切部材(30)を前記枠部材(40)へ固定するカバー部材(20)とを備え、
前記弾性仕切部材(30)は中央部の受圧部(31)と、この外周部に設けられる支持バネ部(32)と、を備え、
前記枠部材(40)は、外周部にて外周壁(42)と内周壁(43)の間に形成される環状溝(41)と、
内周壁(43)の内側にて前記弾性仕切部材(30)の外周部を支持する支持壁(44)と、
支持壁(44)の内側に開口して前記副液室(13)に連通するとともに前記受圧部(31)にて開閉される中央開口部(47)を備え、
前記第2オリフィス(50)は、一端を前記第2の開口(25)に連通し、他端を前記中央開口部(47)に連通して、前記内周壁(43)と受圧部(31)の間に第3液室(37)が形成されていることを特徴とする液封防振装置。
【請求項2】
前記弾性仕切部材(30)には、前記受圧部(31)の外周を囲むリング状溝(33)が形成され、このリング状溝(33)が前記第3液室(37)を構成することを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
【請求項3】
前記受圧部(31)の外周面全周には、前記リング状溝(33)に向かって開放された環状凹部(36)が形成され、この環状凹部(36)が前記第3液室(37)の一部をなすことを特徴とする請求項2に記載した液封防振装置。
【請求項4】
前記弾性仕切部材(30)は、前記受圧部(31)の周囲に間隔をもって囲む周壁(34)を一体に備え、この周壁(34)と前記受圧部(31)の間に前記リング状溝(33)を形成するとともに、周壁(34)の一部に切り欠き部(38)を設け、リング状溝(33)を周壁(34)の外方空間と連通させたことを特徴とする請求項2又は3に記載した液封防振装置。
【請求項5】
前記内周壁(43)の前記切り欠き部(38)と連続する位置に切り欠き部(48)を設け、
この切り欠き部(48)を前記第2の開口(25)と第3液室(37)へ連通させたことを特徴とする請求項4に記載した液封防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用エンジンマウント等に使用される液封防振装置に係り、特に、内圧吸収用の弾性仕切部材を利用して共振を発生させることにより動特性を向上させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
液室を仕切部材で主液室と副液室に区画し、この仕切部材に設けた第1オリフィスの液柱共振により低周波大振幅振動に対して高減衰とし、仕切部材に設けた弾性仕切部材により高周波小振幅振動を吸収するとともに、弾性仕切部材の周囲に設けた間隙を主液室と副液室に連通させて第2オリフィスとし、この第2オリフィスを弾性仕切部材で開閉するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
このような従来例に係る仕切部材の構造例を図14に示す。主液室112と副液室113を仕切る仕切部材111に第1オリフィス114を設け、主液室112と副液室113を連通して低周波大振幅振動時に液柱共振(第1共振)を発生させて高減衰を実現するようにするとともに、
主液室112の内圧変動を吸収するための弾性仕切部材130を設け、弾性仕切部材130の中央部に設けた受圧部131を中央開口121により主液室112に臨ませ、中央開口147により副液室113に臨ませてある。
【0004】
また、弾性仕切部材130に受圧部131の周囲を囲む第3液室137を設け、この第3液室137を第1オリフィス114の第1の開口124近傍にて短絡通路170で連通させ、かつ第3液室137の下方を副液室113に臨ませ、受圧部131の下部に設けたバルブ部135で開閉するようにしてある。
このようにすると、第3液室137における作動液の流動により液柱共振(第2共振)が発生するので、第3液室137を利用した第2オリフィスを形成することができる。
そのうえ、第2オリフィスの主液室112側開口として第1の開口124を利用するので、第2オリフィス専用に特別の開口を形成する必要がなく、かつ弾性仕切部材130の振動を利用してバルブ部135を開閉するため、特別なバルブ機構を省略することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−241926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記構造の場合、第2オリフィスは弾性仕切部材に形成される第3液室137を第1オリフィス114と短絡する構造であり、しかも第1の開口124近傍に短絡させる必要があるため、第2オリフィスの主液室112側開口位置を自由に形成することができない。第2オリフィスの長さを変化させれば、第2共振の周波数をコントロールできるが、第2オリフィスの開口位置が決まっているため、このように長さを自由に変化させることは困難である。
さらに、第2オリフィスは第1オリフィス114と一部を共通化することにより、第1オリフィス114の影響を受けやすくなる。例えば、第1オリフィス114の共振周波数よりも第2オリフィスの共振周波数が高い場合、第2オリフィスの共振時には、第1オリフィス114は目詰まり状態となって作動液が停滞している。このため、第2オリフィスの作動液は、主液室112側の開口部である第1の開口124近傍で第1オリフィス114の停滞した作動液により流動抵抗を受け、期待通りに作動液が流動せず、本来の目的とするような第2共振を発生することができない場合があるので、第2共振を正確かつ微細にコントロールできるようにすることが求められる。
そこで本願は、このような課題の解決を目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本願の液封防振装置に係る請求項1に記載した発明は、
振動源側へ取付けられる第1の取付部材(1)と、振動被伝達側へ取付けられる第2の取付部材(2)と、これらの間に設けられる弾性本体部(3)を備え、この弾性本体部を壁の一部とする液室を形成し、この液室内を仕切部材(11)にて主液室(12)と副液室(13)とに区画するとともに、これら主液室と副液室間を所定の入力振動で第1共振を生じる第1オリフィス(14)で連通し、かつ仕切部材の少なくとも一部に主液室の内圧変化を吸収するべく弾性変形する弾性仕切部材(30)を設け、
前記仕切部材(11)に前記主液室(12)と副液室(13)を連通し、前記第1オリフィス(14)の第1共振と異なる周波数で第2共振する第2オリフィス(50)を設け、この第2オリフィス(50)を前記弾性仕切部材(30)の一部で開閉するとともに、
前記仕切部材(11)は、前記第1オリフィス(14)を外周部に備え、かつその主液室(12)側の開口である第1の開口(24)を備え、
前記第2オリフィス(50)は、前記第1オリフィス(14)と分離して別に形成され、かつその主液室側開口である第2の開口(25)が、前記第1の開口(24)と別に形成されているとともに
前記仕切部材(11)は、前記弾性仕切部材(30)と、この弾性仕切部材(30)を嵌合する枠部材(40)と、前記弾性仕切部材(30)を前記枠部材(40)へ固定するカバー部材(20)とを備え、
前記弾性仕切部材(30)は中央部の受圧部(31)と、この外周部に設けられる支持バネ部(32)と、を備え、
前記枠部材(40)は、外周部にて外周壁(42)と内周壁(43)の間に形成される環状溝(41)と、
内周壁(43)の内側にて前記弾性仕切部材(30)の外周部を支持する支持壁(44)と、
支持壁(44)の内側に開口して前記副液室(13)に連通するとともに前記受圧部(31)にて開閉される中央開口部(47)を備え、
前記第2オリフィス(50)は、一端を前記第2の開口(25)に連通し、他端を前記中央開口部(47)に連通して、前記内周壁(43)と受圧部(31)の間に第3液室(37)が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項に記載した発明は、上記請求項1において、
前記弾性仕切部材(30)には、前記受圧部(31)の外周を囲むリング状溝(33)が形成され、このリング状溝(33)が前記第3液室(37)を構成することを特徴とする。
【0012】
請求項に記載した発明は、上記請求項において、
前記受圧部(31)の外周面全周には、前記リング状溝(33)に向かって開放された環状凹部(36)が形成され、この環状凹部(36)が前記第3液室(37)の一部をなすことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載した発明は、上記請求項2又は3において、
前記弾性仕切部材(30)は、前記受圧部(31)の周囲に間隔をもって囲む周壁(34)を一体に備え、
この周壁(34)と前記受圧部(31)の間に前記リング状溝(33)を形成するとともに、周壁(34)の一部に切り欠き部(38)を設け、リング状溝(33)を周壁(34)の外方空間と連通させたことを特徴とする。
【0014】
請求項記載した発明は、上記請求項において、
前記内周壁(43)の前記切り欠き部(38)と連続する位置に切り欠き部(48)を設け、
この切り欠き部(48)を前記第2の開口(25)と第3液室(37)へ連通させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、第1オリフィス(14)と別の独立した第2オリフィス(50)を設けるとともに、この第2オリフィス(50)を第1オリフィス(14)と分離して別に形成し、かつ主液室(12)側の開口である第2の開口(25)を第1の開口(24)と別に設けたので、第2オリフィス(50)を第1オリフィス(14)に影響されずに設けることができ、オリフィス長等を最適にすることができ、第2オリフィス(50)の形成における自由度が大きくなる。
しかも、第2オリフィス(50)の開口部を第1オリフィス(14)の第1の開口(24)と別にしたので、第1オリフィス(14)による第1共振の影響を排除できるので、第2共振の周波数コントロールを微細にすることができる。
また、受圧部(31)と内周壁(43)の間に第3液室(37)を形成したので、この第3液室(37)を利用して第2オリフィス(50)を容易に形成できる。」
【0019】
請求項の発明によれば、受圧部(31)の周囲を囲むリング状溝(33)を設けたので、このリング状溝(33)を利用して第3液室(37)を容易に形成できる。
【0020】
請求項の発明によれば、受圧部(31)の外周面に環状凹部(36)を設けたので、環状凹部(36)の空間を第3液室(37)に含めることができ、第3液室(37)の容量を大きくすることができる。
【0021】
請求項の発明によれば、リング状溝(33)の外側を囲む周壁(34)を設け、この一部に切り欠き部(38)を設けることにより、切り欠き部(38)を通してリング状溝(33)を周壁(34)の外方空間へ容易に接続できる。
【0022】
請求項の発明によれば、内周壁(43)の一部に切り欠き部(48)を設け、これを切り欠き部(38)と接続することにより切り欠き部(48)による空間を第2の開口(25)及び第3液室(37)と連通させることにより、切り欠き部(48)を第2オリフィス(50)の一部とすることができ、第2オリフィス(50)を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施例に係るエンジンマウントの断面図
図2】第1実施例に係る仕切部材の平面図
図3図2の3−3線断面図
図4】第1実施例に係る構成各部を斜視図にした仕切部材の分解斜視図
図5】第1実施例に係る構成各部を断面にした仕切部材の分解断面図
図6】第1実施例に係る弾性仕切部材の底面図
図7】第1実施例に係る枠部材の平面図
図8】第1実施例に係る作用の説明図
図9】本願の動特性グラフ
図10】第2実施例に係る図8のAと同様部位の断面図
図11】第3実施例に係る同上図
図12】第4実施例に係る同上図
図13】第5実施例に係る同上図
図14】従来例に係る図3と同様部位の断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、3気筒エンジンを搭載した自動車のエンジンマウントとして構成された一実施例を説明する。まず、図1〜9により第1実施例を説明する。図1はこのエンジンマウントの中心線CL(主たる振動の入力方向であるZ方向と平行)に沿う断面図、図2は仕切部材の平面図、図3図2の3−3線に沿う断面図、図4は仕切部材の分解斜視図、図5は仕切部材の分解断面図、図6は弾性仕切部材の底面図、図7は枠部材の平面図、図8は作用の説明図、図9は動特性のグラフである。
【0025】
なお、以下の説明において、液封防振装置及びその各部の上下とは図1の図示状態を基準とし、仕切部材については主液室側を上、副液室側を下とする。
また、本願において低周波数域とは15Hz未満の領域をいい、これより周波数の高い15〜50Hz程度の領域を中周波数域、50Hzより高い周波数域を高周波数域というものとする。この低周波数域において、5Hz近傍の領域を走行時にサスペンションから入る振動域とし、中周波数域において15Hz近傍をアイドル振動域とする。
【0026】
さらに、入力振動の振幅が±0.1mm以下を小振幅、±0.1mm超〜±1.0mm未満程度を中振幅、±1.0mm以上〜±2.0mm以下程度を大振幅、±2.0mmを超えるものを過大振幅ということにする。但し、周波数域の周波数区分及び振幅の大小区分は、エンジンの仕様等により定まる便宜的なものであって、使用対象のエンジンや車両毎に適宜定められる。
【0027】
また、エンジンマウントへ荷重が加わり主液室を加圧する振動を正圧側の振動もしくはプラス(+)振動、逆方向の振動を負圧側の振動もしくはマイナス(−)振動ということにする。
【0028】
図1において、このエンジンマウントは振動発生源側であるエンジン側へ取付けられる第1の取付部材1と、振動被伝達側である車体側へ取付けられる第2の取付部材2と、これらを連結して一体的に設けられる弾性本体部3を備える。弾性本体部3は公知のゴム等からなる適宜弾性材料から構成される略円錐状の部材であり、この円錐状部4の頂部に第1の取付部材1が埋設一体化されている。
【0029】
円錐状部4の内側表面5は後述する液室に臨む内壁面をなす。円錐状部4の裾部周囲はフランジ6をなし、このフランジ6から下方部分はさらに下方へ延びて内張部7をなしている。フランジ6は第2の取付部材2の一部を構成して円筒状をなす側壁部8のフランジ9上へ一体化され、かつ内張部7は側壁部8の内面を覆っている。
【0030】
弾性本体部3の内側は下方へ開放された空間をなし、この開放部はダイアフラム10で覆われ、これらによって内側に液室を形成する。この液室内は仕切部材11により弾性本体部3側の主液室12とダイアフラム10側の副液室13に区画され、両液室は仕切部材11の外周部に形成された、低周波大振幅振動を吸収するための第1オリフィス14によって連通される。液室内には水等公知の非圧縮性作動液が充填されている。
【0031】
第1オリフィス14は入力振動が所定の低周波数(例えば、約15Hz程度)のとき液柱共振(第1共振)を生じるようにチューニングされている。
主たる振動の入力方向Zは、第1の取付部材1からその軸心線であってエンジンマウントの中心線CLと平行に主液室12内へ向かい、仕切部材11の主液室12に臨む表面と略直交している。
【0032】
以下、仕切部材11の詳細構造を説明する。
図2〜5に示すように、仕切部材11は、カバー部材20と、ゴム等の適宜弾性材料からなる弾性仕切部材30と、これを支持する略カップ状の枠部材40との3部材で構成されている。すなわち、枠部材40に弾性仕切部材30を上方から嵌合し、さらにその上にカバー部材20を被せ、ビス等の結合部材29(図2)でカバー部材20と枠部材40を締結等で結合することにより、3部材が一体化された仕切部材11が構成されている。
【0033】
なお、図4はカバー部材20、弾性仕切部材30及び枠部材40を分解してそれぞれを斜視図で示したものであり、図中のABCが、カバー部材20、弾性仕切部材30及び枠部材40をそれぞれ斜め下方から示す斜視図であり、Dは枠部材40を斜め上方から示す斜視図である。
【0034】
カバー部材20は弾性仕切部材30上に被せられ、枠部材40の開口部を覆う蓋として機能する。
カバー部材20の中央部にはカバー部材の中央開口部21が形成され、その周囲は段部22となっている。段部22はその外周側部分である外周部23(図3参照)より一段低くなっている。段部22と外周部23は同心のリング状をなして内外に配置され、カバー部材20の径方向にて、段部22が外周部23の内側に位置している。
【0035】
外周部23には第1オリフィス14における主液室12側の開口である第1の開口24が設けられている。また、この第1の開口24近傍かつその内側となる段部22に第2の開口25が設けられている。第2の開口25は後述する第2オリフィス50における主液室12側の開口をなしている。第2オリフィス50は、アイドル振動の周波数(例えば、約20Hz程度)にて第2共振するようにチューニングされている。
【0036】
図2〜5に示すように、弾性仕切部材30はゴム等の適宜弾性部材からなる平面視円形で仕切部材11の中心線CL方向における厚みに近い比較的厚肉のブロック状をなす部材である。この弾性仕切部材30の中央部は、主液室12の液圧を受ける受圧部31をなし、その周囲部分は薄肉の支持バネ部32をなす。
【0037】
受圧部31はカバー部材20の中央開口部21を通して主液室12に臨み、弾性本体部3の弾性変形に伴う主液室12の内圧変化を受けて、支持バネ部32を弾性変形させることによりこの内圧変化を吸収するための部分であり、十分な肉厚を有し、想定される大振幅振動以下の振動入力では容易に弾性変形しない程度の高剛性になっている。
受圧部31の上面は略平坦面状をなし、下面側は周囲をバルブ部35に囲まれて上方へ凸に凹入した凹部をなしている。
【0038】
支持バネ部32は、受圧部31の周囲を下面側から彫り込んでリング状溝33を形成することによりその残肉部として形成され、薄肉で容易に弾性変形するようになっており、受圧部31が主液室12の液圧変化に応じて上下動することを許容し、かつ受圧部31が上下動するとき所定のバネにより弾性変形して主液室12の液圧変化を吸収できる。支持バネ部32と受圧部31の上面はほぼ面一になっている。
【0039】
リング状溝33は、受圧部31の周囲を環状に囲みかつ下方へ開放された溝である。このリング状溝33を挟んで外周側に周壁34が設けられている。周壁34は支持バネ部32の外周部から連続して下方へ延び、リング状溝33の周囲を囲む環状壁をなすとともに、枠部材40に対する弾性仕切部材30の固定部をなしている。
なお、周壁34の上端部は支持バネ部32の上端部よりも上方へ突出しており、支持バネ部32及び受圧部31は一段低くなって、主液室12へ臨んでいる。
【0040】
図3〜5に示すように、受圧部31の下部外周でリング状溝33に臨む部分はバルブ部35をなしている。バルブ部35は、受圧部31が下方へ移動して、その下面35aが枠部材40の底部46におけるバルブシート部46aへ密接することにより、枠部材40の底部46中央に形成されている中央開口部47と第3液室37との連通部を閉じるようになっている(以下、単に中央開口部47を閉じるという)。
【0041】
また、バルブ部35の下面35aが底部46のバルブシート部46aから離れると、バルブ部35が中央開口部47と第3液室37との連通部を開く(以下、単に中央開口部47を開くという)状態になる。バルブシート部46aは下面35aの押し当て部をなし、下面35aは略水平の平坦面になっている。
なお、中央開口部47の開閉は、後述する第2オリフィスの開閉でもある。
【0042】
バルブ部35は、過大振幅振動を含む大振幅振動以上の振動入力時に中央開口部47を閉じ、小振幅振動及び中振幅振動では中央開口部47を開いた状態に維持するように設定されている。具体的には、振動が入力しない中立状態におけるバルブ部35の下面35aと底部46のバルブシート部46aとの間隙を、例えば、1.6mm程度とし、サスペンション振動のような±1.0mm以上の大振幅振動が入力したとき閉じ、アイドル振動や一般走行中における振動のような、±0.1mm以下程度の小振幅振動が入力したときは、ある程度の間隙を維持して開いているように設定する。
【0043】
リング状溝33に臨む受圧部31の下部外周部はバルブ部35をなし、受圧部31の外周面31aは、周壁34を支持するための支持壁44と平行する垂直面になっている。
【0044】
リング状溝33により、受圧部31の周囲全周を囲む環状空間からなる第3液室37が形成されている。
この第3液室37は、主液室12及び副液室13を第1及び第2の液室としたとき、これらに続く3番目の液室を意味する。
第3液室37には作動液が満たされ、バルブ部35が中央開口部47を開閉することにより、副液室13と連通又は遮断される。
【0045】
弾性仕切部材30の底面図である図6に示すように、周壁34は周方向の一部が切り欠かれており、この切り欠き部38にてリング状溝33が周壁34の径方向外側における切り欠き空間48a(詳細後述)と連通しているため、切り欠き空間48aと第3液室37が連通している。また、切り欠き部38と反対側における周壁34の外周部には回り止め用の位置決め突起39が一体に形成されている。
【0046】
図3に示すように、切り欠き空間48aは第2の開口25を介して主液室12と連通し、切り欠き空間48aの内部には作動液が満たされている。したがって、バルブ部35が底部46から離れた中央開口部47を開いた状態では、切り欠き空間48aが中央開口部47を介して副液室13と連通するため、主液室12の作動液は、第2の開口25、切り欠き空間48a、第3液室37、中央開口部47を介して副液室13との間を矢示する流線のように流動する。
【0047】
この第2の開口25−切り欠き空間48a−第3液室37−中央開口部47からなる作動液の流動経路が第2オリフィス50を構成し、この第2オリフィス50を流れる作動液により所定の周波数にて液柱共振を発生する。これを第1オリフィス14による第1共振に対して第2共振ということにする。なお、図中における第2オリフィス50は便宜的に流線にて指示するものとする(他の図も同様)。
【0048】
第2共振の共振周波数は、第2オリフィス50の通路断面積や長さにより自由に設定でき、本実施形態ではアイドル振動の周波数に設定されている。
第2オリフィス50がアイドル振動の周波数にて第2共振することにより、アイドル振動の伝達を減少させるようになっている。この意味において第2オリフィス50はアイドルオリフィスでもある。
【0049】
図3〜5及び7等に示すように、枠部材40は、軽合金等の金属や樹脂等の適宜剛性材料で構成され、外周部に上向きに開放された環状溝41が外周壁42とこれに対向する内周壁43の間に形成され、カバー部材20とともに第1オリフィス14を構成する。
内周壁43の内側には間隔をもって環状の支持壁44が形成され、この支持壁44と内周壁43との間に上方に開放された支持溝45が環状に形成されている。
【0050】
支持溝45には周壁34が嵌合されるようになっており、支持溝45の深さは周壁34の高さ(外周部における軸方向寸法)よりも若干浅くなっている。
支持壁44の上端は、ほぼ支持バネ部32の厚さ程度だけ内周壁43の上端部内周側に形成された段部43aよりも低くなっている。段部43aは内周壁43の内側に連続して形成される比較的幅広の部分である。
【0051】
支持壁44より内側は底部46をなし、外周側より一段低く形成され、中央部には枠部材側の中央開口部47が設けられている。底部46の上面で中央開口部47の周囲部分はバルブシート部46aをなす。
バルブシート部46aはバルブ部35の下面35aが押し当てられる被押し当て面であり、略平坦な面として形成され、略垂直方向(Z方向と平行)からバルブ部35の下面35aが押し当てられる。
【0052】
図7に示すように、支持壁44と段部43aは周方向にて一部が切り欠かれ、この切り欠き部48によって形成される切り欠き空間48aが支持壁44の内周側と連通する。切り欠き空間48aの底部は枠部材40の底部46である。
切り欠き部48の略反対側となる支持溝45に臨む段部43aの内周壁には位置決め溝49が形成されている。この位置決め溝49は支持溝45から段部43aの肉厚内へ彫り込まれるように形成され、上方及び支持溝45内へ開放されている。
【0053】
位置決め溝49には、弾性仕切部材30の位置決め突起39(図6)が嵌合することにより、弾性仕切部材30が枠部材40に対して回り止めされる。
【0054】
環状溝41は全周に形成されず、周方向両端部は外周壁42と内周壁43間を部分的につなぐ連結部40aにて分離されている。連結部40aを挟む環状溝41の周方向両端部のうち、一方の端部は副液室側の開口41aを介して副液室13と連通している。副液室側の開口41aは図4に示すように、環状溝41の底部から、その内側に形成される枠部材40の底部46にかけて、径方向内側へ入り込むように形成されている。
【0055】
この仕切部材11を組立てるには、図4及び5に示すように、弾性仕切部材30を枠部材40の上に乗せ、周壁34を支持溝45へ嵌合し、さらに弾性仕切部材30の上にカバー部材20を被せ、結合部材29(図2)でカバー部材20を枠部材40へ結合する。これにより、図2及び3に示すように、これらの3部材が一体化された仕切部材11が組立てられる。
【0056】
この組立状態では、図3に示すように、カバー部材20の外周部23が外周壁42と内周壁43の上端面に重なり、カバー部材20の段部22が内周壁43の上部内周側に嵌合し、枠部材40の段部43aに重なる。
【0057】
また、環状溝41は上方をカバー部材20の外周部23で閉じられて第1オリフィス14を形成する。環状溝41の周方向一端部に第1の開口24が重なり、他端部には他方の開口41a(図4参照)が設けられているため、この第1オリフィス14は、第1の開口24で主液室12と連通し、他方の開口41aで副液室13と連通している。
【0058】
受圧部31はカバー部材20の中央開口部21で主液室12へ臨み、枠部材40の中央開口部47で副液室13へ臨んでいる。
バルブ部35は支持壁44の内周側に位置し、下面35aがバルブシート部46aから離れて中央開口部47を開いている。
【0059】
さらに、位置決め突起39が位置決め溝49へ嵌合することにより、枠部材40に対して位置決めされた弾性仕切部材30は、その切り欠き部38が枠部材40の切り欠き部48に接続することによって、第3液室37が切り欠き空間48aと連通し、第2オリフィス50を形成する。この状態で第2オリフィス50は第2の開口25を介して主液室12へ連通し、バルブ部35とバルブシート部46aとの間隙を通して副液室13へ連通している。
【0060】
なお、支持溝45へ嵌合されている弾性仕切部材30の周壁34は、上端をカバー部材20の段部22で押さえられることにより固定され、支持バネ部32は支持壁44の上端部で支持される。
このとき、周壁34の高さ寸法を支持溝45の深さよりも若干大きくして締め代を設けてあるため、カバー部材20の取付けにより周壁34を圧縮する。この圧縮量は周壁34の高さと支持溝45の深さを調整することにより変化させて締め代調整できる。同時に支持バネ部32の支持壁44による支持の強さを調整して支持バネ部32のバネを調整できる。
【0061】
次に、図8により本実施例の作用を説明する。図8図3の断面において、左側のバルブ部35及びその周囲部分を拡大して示す断面図であり、Aは中立位置、Bは大振幅以上のプラス振動入力時における中央開口部47が閉じられた状態をそれぞれ示す。
【0062】
まず、バルブ部35が図8のAに示す中立位置にある状態において、第1の取付部材1から低周波大振幅振動が入力すると、プラス振動のとき、受圧部31が大きな内圧で下方へ押されるため、支持バネ部32を弾性変形させて下方へ移動し、図8のBに示すように、バルブ部35の下面35aが底部46のバルブシート部46aへ押しつけられて、中央開口部47を閉じる。
【0063】
この状態では、第2オリフィス50が中央開口部47において副液室13側を閉じられるため、第2オリフィス50における作動液の流動は生じない。また、受圧部31は底部46側へ押しつけられたままとなる。
このため、作動液は第1オリフィス14を流れて第1共振を発生させる。この第1共振により動特性は高減衰になり、低周波大振幅振動を吸収する。
【0064】
なお、マイナス振動では、受圧部31が主液室12側すなわち図の上方へ移動し、図8のAに示す状態に戻り、中央開口部47が開くため、作動液は副液室13から第2オリフィス50を通って主液室12へ移動する。
【0065】
しかし、第2オリフィス50のチューニング周波数(第2共振周波数)は、第1共振周波数よりも高いため、第2オリフィス50において液柱共振を発生せずに、速やかに副液室13から主液室12へ流れる。
また、第1オリフィス14は、第2オリフィス50よりも流動抵抗が大きくなるため、第1オリフィス14へも作動液が流動せず、第1オリフィス14における液柱共振も発生しない。
【0066】
その後、入力振動が周波数の高いアイドル振動になると、中周波中振幅もしくは小振幅振動のため、受圧部31のそれほど上下動は大きくなく、プラス振動並びにマイナス振動のいずれでも、バルブ部35が底部46から離れて図8のAに示す状態(すなわち中央開口部47を開いた状態)になり、作動液は第2オリフィス50を通って流動する。
このとき、第1オリフィス14はアイドル振動の周波数で目詰まりしているため、作動液は第2オリフィス50のみを通って第2共振を発生し、アイドル振動を吸収する。
【0067】
さらに入力振動の周波数が高くなって高周波小振幅振動になると、受圧部31はプラス振動並びにマイナス振動のいずれでも図8のAにおける状態を維持するが、第1オリフィス14及び第2オリフィス50は共に目詰まり状態となり、第1オリフィス14及び第2オリフィス50を通した作動液の流動が生じない。
このため、受圧部31は支持バネ部32を弾性変形させて上下動することにより、主液室12の内圧変動を吸収する。
【0068】
なお、過大振幅振動の入力時には、プラス振動のとき図8のBに示す状態となり、第1オリフィス14を通して主液室12から副液室13へ作動液が流動する。
その後マイナス振動に転じると、主液室12は急速に拡大して一時的に負圧状態になる。
しかし、この負圧により、受圧部31は上方へ吸引移動されるため、図8のAに示す状態となり、中央開口部47が開かれる。これにより、副液室13の作動液は、第2オリフィス50を通って迅速に主液室12へ流入し、主液室12の負圧を急速に解消する。
このため、過大振幅振動入力時において、主液室12が一時的に負圧になることによって生じる気泡の破裂に伴う異音を発生するキャビテーション現象を抑制することができる。
【0069】
図9はこのエンジンマウントにおける動特性を示すグラフであり、縦軸に減衰、横軸に入力振動周波数を示した減衰特性図である。この減衰特性曲線は、山形をなし、そのピーク部分が共振の発生を示し、ピークにおける周波数が共振周波数となる。
ベースの特性曲線は、図14に示した従来例に係るものであり、第2オリフィスを第1オリフィスと、その主液室側開口近傍にて短絡させたものである。
【0070】
本発明1の特性曲線は、図3において実線で示す第1オリフィス14の主液室側開口である第1の開口24内側かつ近傍に、第2オリフィス50の主液室側開口である第2の開口25を開口させた例である。
この場合、第2オリフィス50は最短となり、共振周波数は、例えば、ベースの20Hzに対して約22Hzと高くなる。
【0071】
本発明2の特性曲線は、第2の開口25の位置を、図2において仮想線で示す第2の開口25Aとしたものであり、本発明1に対して周方向へ略45°程度ずらした例である。
すなわち、第2の開口25を図2の仮想線25Aで示すように、切り欠き部38の位置から周方向へ例えば約45°程度ずらすことで容易に長くすることができる。
ただし、切り欠き部48は移動した第2の開口25Aへ連通するように、周方向へ拡幅するか、延長路51を形成する。この延長路51は、切り欠き部48と第2の開口25Aを連通するように段部43aを周方向へ形成された溝である。
【0072】
このように第2の開口25を周方向へずらすことは、第1の開口24の内側となる段部22上を利用するため、自由度が大きくなる。しかも、延長路51によって第2オリフィス50のオリフィス長が長くなり、共振周波数は、例えば、ベースの20Hzに対して約18Hzと低くなる。このように、第2オリフィス50のオリフィス長を長くすると、第2共振の共振周波数を低くするように調整できる。
【0073】
本発明3の特性曲線は、第2の開口25の位置を、図2において仮想線で示す第2の開口25Bとして周方向へ略90°程度ずらした例である。
第2の開口25の開口位置を周方向へずらす程度は自由であり、第2オリフィス50のオリフィス長が所望のものになるようにすればよい。図中の第2の開口25Bは約90°程度ずらし、この開口位置に応じてより長い延長路52が延長路51を延長して形成されている。このようにすると、第2オリフィス50のオリフィス長がさらに長くなるため、共振周波数は、例えば、ベースの20Hzに対して約16Hzとさらに低くなる。
【0074】
すなわち、第2共振の共振周波数コントロールは、第2オリフィス50の長さを長短に調整することで自由に行うことができ、第2オリフィス50を第1オリフィス14と独立させたことにより、第2共振の共振周波数コントロールにおける自由度が高くなる。
しかも、第2の開口25は、第1の開口24に対して周方向任意位置へ形成できるから、第2の開口25の設置に関する自由度が高くなるとともに、第2オリフィス50のオリフィス長を自由に調整できるようになる。
特に、第2の開口25を第1の開口24の内側に設けることにより、第2オリフィス50を短くして第2共振周波数をより高くすることが容易になる。
【0075】
また、第1オリフィス14と一部を共通化させないため、第2共振時に目詰まりしている第1オリフィス14により作動液の流動を阻害されることなく、正確に第2共振を発生させることができ、第2共振における共振周波数を精細にコントロールすることができる。
このように、第2オリフィス50を第1オリフィス14と別に設けることにより、第2オリフィス50による第2共振の共振周波数を正確にコントロールできるようになる。
【0076】
このため、弾性仕切部材30の受圧部31周囲に環状の第2オリフィス50を形成する形式において、第2オリフィス50が第1オリフィス14の内側に近接して配置されるにもかかわらず、第1オリフィス14の影響を受けずに第2共振における共振周波数を精細にコントロールすることができるようになり、かつ第2オリフィス50の調整における自由度が大きくなる。
【0077】
そのうえ、受圧部31と内周壁43の間に第3液室37を形成したので、この第3液室37を利用して第2オリフィス50を容易に形成できる。
しかも、受圧部31の周囲を囲むリング状溝33を設けることにより、このリング状溝33を利用して第3液室37を容易に形成できる。
【0078】
また、リング状溝33の外側を囲む周壁34を設け、この一部に切り欠き部38を設けることにより、切り欠き部38を通してリング状溝33を周壁34の外方空間へ容易に接続できる。
【0079】
さらに、内周壁43の一部に切り欠き部48を設け、これを切り欠き部38と接続することにより切り欠き部48による空間を第2の開口25及び第3液室37と連通させることにより、切り欠き部48を第2オリフィス50の一部とすることができ、第2オリフィス50を容易に形成することができる。
【0080】
また、エンジンマウントとして構成し、第2共振をアイドル振動域で発生するようにチューニングしたので、特別にアイドルオリフィス及びその開閉機構を設けることなく、従来の弾性仕切部材を利用して第2オリフィスを設けることにより第2共振を実現できるとともにアイドル振動を有効に遮断できる。
【0081】
さらにまた、受圧部31が厚肉の高剛性構造をなし、想定される大振幅振動以下の振動入力では容易に弾性変形しないようになっているため、弾性仕切部材30において主液室12の内圧変化を吸収するためのバネ部を支持バネ部32に限定でき、内圧吸収のためのバネを正確にコントロールできる。また、受圧部31は第2オリフィス50の開閉弁として機能するが、この際における開閉を正確にすることができる。
【0082】
次に、バルブ部35の構造を変更した別実施例を説明する。なお、以下の各例は、それぞれ図8のAにおいて、バルブ部35又はその近傍部を変更したものである。これらはいずれも、第1実施例と共通部分には共通の符号を用い、重複部分の説明を原則として省略する。
【0083】
図10は、第2実施例に係り、リング状溝33に臨む受圧部31の外周部側面に環状凹部36を設けた例である。この環状凹部36は、図10の断面にて受圧部31の径方向内側へ凹入し、受圧部31の側部全周に環状をなしている。また、リング状溝33へ向かって開放されており、この環状凹部36とリング状溝33により、受圧部31の周囲全周を囲む環状空間からなる第3液室37が形成されている。
【0084】
環状凹部36の下方にはバルブ部35が形成されている。バルブ部35は外側方へ突出する環状凸部として形成されている。
このように、受圧部31の外周面に環状凹部36を設けると、環状凹部36の空間を第3液室37に含めることができ、第3液室37の容量を大きくすることができる。
【0085】
この第3液室37は、主液室12及び副液室13を第1及び第2の液室としたとき、これらに続く3番目の液室を意味する。
第3液室37には作動液が満たされ、バルブ部35が中央開口部47を開閉することにより、副液室13と連通又は遮断される。
【0086】
図11は、第3実施例に係り、受圧部31の中央部を最も薄肉の可動膜部31bとし、外周部を厚肉とし、バルブ部35を受圧部31の外周下部にて外側方へ突出させ、支持壁44の内壁44aへ若干離して位置させたものである。
このようにすると、受圧部31が主液室12の内圧を受けると、可動膜部31bが最も大きく下方へ変形するため、バルブ部35は外側方へ押し出され、仮想線で示すように、内壁44aへ押し当てられる。
これにより、第2オリフィス50が閉じられるとともに、バルブ部35は受圧部31の変形量に応じて、受圧部31のバネを非線形的に増大させることができる。
【0087】
図12は、第4実施例に係り、図11と同様に可動膜部31bを設けるとともに、バルブ部35を下方へ突出させたものであり、受圧部31が下方へ移動すると、バルブ部35の下面がバルブシート部46aへ押し当てられて第2オリフィス50を閉じるとともに、バルブ部35が突起状をなすため、受圧部31がさらに下方へ移動すると、バルブシート部46aにより圧縮され、図11と同様に、受圧部31の移動量に応じて受圧部31のバネを変化させることができる。
【0088】
図13は、第5実施例に係り、図12におけるバルブ部35と同一構造のバルブ部35を用いるが、側方にて底部46側へ押し当てられるようにしたものである。
図13のAは、バルブ部35の移動する上下方向と斜交するよう斜面部60を設けたものであり、Aは斜面部60を外周側、Bは内周側にそれぞれ設けた例である。
【0089】
このように、斜面部60を設けると、受圧部31が下方へ移動したとき、バルブ部35の角部が斜面部60と接触することにより第2オリフィス50を閉じるとともに、受圧部31がさらに下方へ移動すると、バルブ部35と斜面部60の接触量が大きくなり、バルブ部35の圧縮量が増大するため、図11と同様に、受圧部31の移動量に応じて受圧部31のバネを変化させることができる。
【0090】
なお、このように斜面部60を設けることで、受圧部31のバネを変化させる構成は、他の形式のバルブ部35にも応用でき、例えば、図11のバルブ部35を斜面部60へ押し当てるようにしてもよい。
また、図5図10に示す厚肉の受圧部31に対して適用してもよい。この場合、図5図10のバルブ部35を斜面部60へ押し当てるようにすると、受圧部31のバネ変化を期待できないが、主液室12側の液圧に押されたバルブ部35が斜面部60へ強く押し当てられるため、閉弁時の密着を高めることができる。
【0091】
なお、本願発明は上記各実施例に限定されず、種々に変形等が可能であり、例えば、本願発明をエンジンマウント以外のサスペンションマウントなど、各種の車両用液封防振装置に適用できる。また、第2の開口25を、主液室に臨む少なくとも1以上の開口、すなわち1又は複数の開口で形成することができる。このようにすると、第2の開口25における形状の自由度が大きくすることができ、形成場所に応じて最適形状にすることができる。
さらに、第2の開口25位置は、第1の開口24の内側位置に限定されるものではなく、例えば、第1の開口24と周方向へ並んで配置したり、第1の開口24よりも外側へ配置することもできる。
【符号の説明】
【0092】
1:第1の取付部材、2:第2の取付部材、3:弾性本体部、11:仕切部材、12:主液室、13:副液室、14:第1オリフィス、20:カバー部材、24:第1の開口、25:第2の開口、30:弾性仕切部材、31:受圧部、33:リング状溝、35:バルブ部、36:環状凹部、37:第3液室、38:切り欠き部、40:枠部材、43a:段部、44:支持壁、48:切り欠き部、48a:切り欠き空間、50:第2オリフィス
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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