【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係る振動吸収装置の概略構成図である。
図1に示す振動吸収装置1は、振動体5の振動を吸収する装置であり、動吸振器10と、動吸振器10に接続される制御部11とを備えている。
【0019】
動吸振器10は、質量部21と、支持部22と、フレーム23と、変位検出部24と、張力調整部25とを有している。質量部21は、いわゆる錘であり、支持部22を介してフレーム23に連結されている。支持部22は、板状(プレート状)に形成されており、長手方向の中央に質量部21が固定されている。ここで、支持部22は、板状に形成されているが、この形状に限定されず、例えば、棒状に形成されていてもよい。この支持部22は、弾性変形可能に構成され、所定のバネ定数となっている。つまり、実施例1では、支持部22に質量部21を固定することで、弾性部として機能させている。なお、実施例1では、支持部22に質量部21を固定しているが、この構成に限定されない。つまり、支持部22のみの構成で、弾性部として機能させることが可能であれば、質量部21を省いた構成であってもよい。
【0020】
フレーム23は、基部23aと、基部23aの両側から突出する一対の腕部23bとを含んで一体に構成されている。そして、一対の腕部23bの間には、支持部22が配置されている。支持部22の長手方向の一端は、一対の腕部23bの一方に連結され、支持部22の長手方向の他端は、一対の腕部23bの他方に連結されている。
【0021】
変形検出部24は、支持部22に取り付けられている。具体的に、変形検出部24は、一方の腕部23bと質量部21との間の支持部22に取り付けられると共に、腕部23bに寄せて取り付けられている。変形検出部24としては、例えば、圧電素子であるピエゾ素子が用いられている。この変形検出部24は、制御部11に接続されている。このため、変形検出部24は、支持部22が変形すると、支持部22の変形量を電気信号に変換して、制御部11に出力する。なお、変形検出部24としてピエゾ素子を適用したが、支持部22の変形量を検出可能なものであれば、特に限定されず、例えば、歪みゲージを適用してもよい。
【0022】
張力調整部25は、支持部22の張力、つまり、支持部22の長手方向における軸圧縮力を調整するものである。張力調整部25は、他方の腕部23bと支持部22との間に設けられている。張力調整部25は、ピエゾ素子を用いたアクチュエータとして構成されており、支持部22の長手方向に伸縮可能に設けられている。この張力調整部25は、制御部11に接続されている。このため、張力調整部25は、制御部11から所定の電圧が印加されることで伸縮することにより、支持部22の張力(軸圧縮力)を調整している。具体的に、張力調整部25は、制御部11から基準電圧が印加されている。張力調整部25は、基準電圧よりも大きな電圧が印加されることで伸張し、支持部22を長手方向に圧縮する。一方で、張力調整部25は、基準電圧よりも小さな電圧が印加されることで圧縮し、支持部22を長手方向に伸張する。
【0023】
上記のように構成される動吸振器10は、振動吸収の対象となる振動体5に取り付けられる。このとき、動吸振器10は、支持部22の長手方向と、振動体5の振動方向とが直交するように、振動体5に取り付けられる。そして、動吸振器10は、振動体5が振動すると、質量部21が、支持部22とフレーム23との接続点を節として、振動体5の振動方向と同方向に振動する。
【0024】
制御部11は、変形検出部24と、張力調整部25とに接続されている。制御部11は、変形検出部24から入力される電気信号に基づいて、支持部22の変形量を取得している。また、制御部11は、張力調整部25に向けて所定の電圧を印加することで、張力調整部25を支持部22の長手方向に伸縮させる。
【0025】
次に、
図2を参照して、動吸振器10の軸圧縮力(張力)Pと固有振動数f
0との関係について説明する。
図2は、軸圧縮力と固有振動数との関係を示すグラフである。
図2のグラフにおいて、その横軸は、固有振動数f
0となっており、その縦軸は軸圧縮力Pとなっている。支持部22は、伸張も圧縮もしておらず、長手方向における変位が0である場合、軸圧縮力Pが0となる。軸圧縮力Pが0となる点を基準点Cとする。基準点Cでは、上記したように張力調整部25への印加電圧が基準電圧となっている。
【0026】
張力調整部25により支持部22が長手方向に圧縮されると、長手方向における変位は、マイナス側の変位となる。このため、軸圧縮力Pが縦軸の図示上側に大きくなる。支持部22が長手方向に圧縮されると、支持部22が緩む。支持部22が緩むと、支持部22の剛性が低くなり、固有振動数f
0が低下する。
【0027】
一方で、張力調整部25により支持部22が長手方向に伸張されると、長手方向における変位は、プラス側の変位となる。このため、軸圧縮力Pが縦軸の図示下側に大きくなる。支持部22が長手方向に伸張されると、支持部22が引っ張られる。支持部22が引っ張られると、支持部22の剛性が高くなり、固有振動数f
0が高くなる。なお、
図2に示すグラフは、予め実験等により求められる。このグラフは、制御部11に予め記憶されていてもよいし、別体の記憶装置から取得してもよい。
【0028】
続いて、
図3を参照し、上記の動吸振器10の質量部21の固有振動数f
0を調整する動吸振器10の振動調整方法について説明する。
図3は、動吸振器の振動調整方法に関するフローチャートである。
【0029】
振動吸収装置1の制御部11は、振動体5に動吸振器10が取り付けられた後、変形検出部24から入力される電気信号に基づいて、支持部22の変形量を取得する。そして、制御部11は、取得した支持部22の変形量から質量部21(より具体的には、質量部21及び支持部22を含む弾性部)の振動数を取得し、取得した振動数を、振動体5の振動数として取得する(振動数取得工程:ステップS1)。
【0030】
制御部11は、ステップS1の後、質量部21(弾性部)の固有振動数f
0が、取得した振動体5の振動数となるように、張力調整部25により張力を調整する(固有振動数合致工程:ステップS2)。具体的に、制御部11は、取得した振動体5の振動数を、質量部21の目標固有振動数とし、
図2に示すグラフに基づいて、目標固有振動数に対応する軸圧縮力Pを取得する。そして、制御部11は、目標固有振動数に対応する軸圧縮力Pとなる所定の電圧を、張力調整部25に印加する。これにより、制御部11は、質量部21(弾性部)の固有振動数f
0を、振動体5の振動数に合致させる。
【0031】
以上のように、実施例1の構成によれば、制御部11は、張力調整部25により、支持部22の張力(軸圧縮力P)を調整することで、支持部22の剛性を変更することができる。このため、質量部21及び支持部22を含む弾性部の固有振動数f
0を変化させることができる。これにより、制御部11は、動吸振器10の弾性部の固有振動数f
0を変化させ、弾性部の固有振動数f
0と振動体5の振動数とを合致させることができる。以上から、振動体5の振動数が変化する場合であっても、動吸振器10において弾性部の固有振動数f
0を、振動体5の振動数に、容易に合致させることができることから、振動体5の振動を好適に吸収することができる。
【0032】
また、実施例1の構成によれば、張力調整部25を、ピエゾ素子を用いたアクチュエータで構成することができる。このため、制御部11は、張力調整部25を制御することで、支持部22の張力を調整することができる。以上から、例えば、動吸振器10が、人の立入りが制限されている空間に設けられている場合、その空間に立ち入ることなく、動吸振器10の弾性部の固有振動数f
0を容易に調整することが可能となる。
【実施例2】
【0033】
次に、
図4を参照して、実施例2に係る振動吸収装置50について説明する。
図4は、実施例2に係る振動吸収装置の概略構成図である。なお、実施例2では、実施例1と重複する記載を避けるべく、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。実施例2では、実施例1の動吸振器10に、発電部55及び蓄電部56を設けている。
【0034】
図4に示すように、実施例2に係る振動吸収装置50は、動吸振器51と、動吸振器51に接続される制御部11とを備えている。動吸振器51は、実施例1の動吸振器10に、支持部22の変形によって発電可能な発電部55と、発電部55に接続される蓄電部56とを設けた構成である。つまり、動吸振器51は、質量部21と、支持部22と、フレーム23と、変形検出部24と、張力調整部25と、発電部55と、蓄電部56とを有している。なお、質量部21、支持部22、フレーム23、変形検出部24及び張力調整部25は、実施例1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0035】
発電部55は、支持部22に取り付けられている。具体的に、発電部55は、一方の腕部23bと質量部21との間の支持部22に取り付けられると共に、一方の腕部23bに寄せて取り付けられている。このとき、発電部55は、支持部22に設けられる。発電部55としては、例えば、圧電素子であるピエゾ素子が用いられている。この発電部55は、制御部11及び蓄電部56にそれぞれ接続されている。発電部55は、その形状が支持部22の変形によって周期的に変化することで、電気を発生させる。
【0036】
蓄電部56は、フレーム23の内部に設置されている。蓄電部56は、発電部55において発生した電気を蓄える。この蓄電部56は、制御部11及び発電部55にそれぞれ接続されている。蓄電部56は、制御部11へ向けて給電を行うことが可能となっている。このため、制御部11を動吸振器51に取り付ける構成とすることで、振動吸収装置50は、外部電源を必要としない独立した構成にすることができる。
【0037】
以上のように、実施例2の構成によれば、実施例1の動吸振器10に、発電部55と蓄電部56とを設けることで、発電部55により発電を行うことができ、発電部55により発生した電気を、蓄電部56に蓄電することができる。これにより、振動吸収装置50を、外部電源を必要としない独立した構成にすることができる。
【0038】
なお、実施例1及び2の動吸振器10,51を、共振型の加速度センサとして機能させてもよい。この構成によれば、振動体5の振動を吸収しつつ、振動体5の加速度を検出することが可能となる。
【0039】
また、フレーム23の内部に減衰材を充填してもよい。この構成によれば、減衰材により質量部21及び支持部22を含む弾性部の振動を吸収することができるため、振動体5の振動をより吸収することができる。