特許第6066799号(P6066799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066799
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】火炎検出センサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20170116BHJP
   H01J 40/04 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   G01J1/02 J
   G01J1/02 G
   H01J40/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-70026(P2013-70026)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-194354(P2014-194354A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中島 有紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏治
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0131869(US,A1)
【文献】 特開2013−019719(JP,A)
【文献】 特開2000−040487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
11/00
H01J 40/00−49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が紫外線透過物質からなるガラス管と、前記ガラス管内部には紫外線検出部が設置され、前記紫外線検出部は、網目状の平板アノード電極と、前記アノード電極と対向して設置した平板カソード電極とから構成するとともに、前記平板アノード電極および前記平板カソード電極からガラス管の外部に導電性導体を備える火炎検出センサにおいて、紫外線検出部は、網目状の穴を有するSi基盤の上蓋と、Si基盤の下蓋の接合面を平行となる様に加工して、前記上蓋と前記下蓋を直接接合、ないし陽極接合により接合して一体化するとともに、前記Si基盤の上蓋にアノード電極を、また前記Si基盤の下蓋にカソード電極を有し、前記アノード電極および前記カソード電極から前記ガラス管の外部に電気信号を導く導電性導体を備えることを特徴とする火炎検出センサ。
【請求項2】
請求項1において、
前記紫外線検出部の前記上蓋の前記アノード電極は、前記上蓋の片面に金属電極を蒸着して形成したこと、および、凹部形状にした前記下蓋の凹部の底面の前記カソード電極は、金属電極を蒸着して形成したことを特徴とする火炎検出センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼装置の火炎に含まれる紫外線を検出する火炎検出センサの紫外線検出部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火炎中に含まれる紫外線を検出することで燃焼装置内の火炎の検知とモニタを行い燃焼安全の確保を担う火炎検出センサとして、UVチューブがある。
前記UVチューブの内部に設置している紫外線検出部は、紫外線を受けて放電を生起する一対の金属性の放電電極であり、前記一対の放電電極それぞれのリード線は前記UVチューブのガラス管の一端部から導出している(例えば、特許文献1参照)。
図1は、従来のUVチューブの構造を示す模式図である。ガスが封入されているガラス管10の中に、網目状のアノード電極11と、カソード電極12とが、リード線13,14によってそれぞれ支持されている。前記アノード電極11と前記カソード電極12とは、平行平板構造であり、両電極間は約0.5mmの距離を保って配置されている。そして、前記ガラス管10の端部(図1の上端部)から入射した紫外線は、前記アノード電極11の網目を抜けて前記カソード電極12に当たって2次電子を放出するとともに前記2次電子の雪崩現象を生ずることにより、放電が発生する。前記UVチューブは、特定な放電性能を備えるため、前記UVチューブ内部に任意成分の特定ガスを封入している。
【0003】
本願と同出願人による特許文献2における発明は、一対の金属電極をそなえたガラス素材で作成した一体型の火炎検出センサである。本願における図2(a)は、火炎検出センサの構成部を示す断面図である。紫外線透過性を持つガラス板21と、凹部構造を備えたガラス板22とが火炎検出センサの構成要素である。
前記ガラス板21、および前記ガラス板22の凹部にはそれぞれ金属を蒸着したアノード電極24とカソード電極28を作成している。紫外線が前記ガラス板21を透過して前記カソード電極28に到達できるため前記アノード電極24は網目模様のパターンにした電極として作成している。前記火炎検出センサの外部から各電極に任意の電圧を印加するために導体部25、29を備えている。図2(b)は、図2(a)で示した構成要素を一体化した前記火炎検出センサを示す断面図である。前記ガラス板21と前記ガラス板22の凹部で形成される空間は、従来のUVチューブの紫外線検出部に相当しており、紫外線が当たると電極間で放電する。炎に含まれる紫外線が当たったことで電極に生じた放電現象の検出は前記電極24、25間の電圧ないし電流の変化を観察することで判断する。特許文献1のUVチューブと同様に、前記UVチューブ内部に任意成分の特定ガスを封入して特定な放電性能を持たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭44−1039号公報
【特許文献2】特開2013−19719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明では、レーザ溶接で電極端を溶融するときリード線を同じ長さ、同じ温度で加熱するのは容易ではないため、結果的にリード線に載せた電極板は傾いてしまう恐れがある。
電極板が平坦にならないことから、2枚の電極間の距離および電界は電極の中心部と周辺と異なる。このことで電極間の電界分布は平坦な分布ではなくなる。この様に電界分布に偏りが生じると、電界強度が大きい領域では紫外線が当たらなくても放電を発生してしまう場合がある。また電界強度が小さい領域では、紫外線が当たっても放電を起こさない場合がある。この様な放電異常が発生すると、紫外線を正確に検出するのが困難になり燃焼装置の燃焼検出が正常に働かないという問題が生じる。
【0006】
特許文献2はUVチューブを小型にするとともに、電極間を平行にしてゆがみを生じないUVチューブを実現するためになされた発明である。紫外線照射時、電極間で放電を発生させるために、従来のUVチューブと同じようにUVチューブの内部空間に低い圧力にするとともに特定ガスを封入する。そのためガスチャンバーを備えた製造設備と、ガス圧制御装置の導入が必要となり、このことから製造設備導入時と設備運用時にコスト、手間が掛かかる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、電極板にゆがみが生じない平行度が高いUVチューブの紫外線検出部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、紫外線を貫通する穴を設けた、Si基盤であって、前記Si基盤の内側の平面を金属で蒸着してアノード電極を作り込んだ上蓋と電気的絶縁体の円筒形ガラスと、凹部形状に削り込んだSi基盤であって、前記凹部の内側の平面を金属で蒸着してカソード電極を作り込んだ下蓋を接合して一体化した電極部としたことを特徴とする紫外線検出部を持つUVチューブを提供する。前記上蓋Sに紫外線を貫通したことから、前記アノード電極は網目パターンを持つ金属平面となっている。一方前記カ ソード電極は穴が無い金属平面とした。さらに前記アノード電極、および前記カソード電極のSi基盤の反対側の表面に導電性素材 を介して接続した電極端子部を作成することで、前記UVチューブの外部から前記アノード電極、および前記カソード電極に任意の電圧を印加することが出来る。 前記紫外線検出部は従来の従来型UVチューブの一対の金属電極と置き換える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ゆがみのない、互いに平行なアノード電極、およびカソード電極を備える紫外線検出部を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】火炎検出センサである従来型UVチューブの構造を示す模式図である。
図2】特許文献2のUVチューブの構造を示す模式図である。(a)はアノード電極部とカソード電極部の断面図であり、(b)はUVチューブの断面図である。
図3】本発明の実施の形態1と、実施の形態2に係るUVチューブの紫外線検出部の構成要素(アノード電極部)を説明する図である。
図4】本発明の実施の形態1と、実施の形態2に係るUVチューブの紫外線検出部の構成要素(カソード電極部)を説明する図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るUVチューブの紫外線検出部を示す模式図である。
図6】本発明の実施の形態2に係るUVチューブの紫外線検出部を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0012】
この発明の実施の形態1を図3図4図5を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
【0013】
図3(a)は、UVチューブ全体、ないし一部が紫外線を透過する前記UVチューブに対向して置かれるアノード電極を備えた上蓋31の平面図である。図3(b)は前記上蓋31の断面図である。前記上蓋31はSiの基盤である。紫外線が前記Si基盤を通過して、下蓋41のカソード電極42に到達するように穴をあけている。この穴はドライエッチングないしウエットエッチングプロセス技術により作成する。Si基盤の表面層の酸化Si膜を除いた後、W(タングステン)を蒸着させて前記アノード電極32を作る。蒸着後、前記W(タングステン)表面を除いたSi基盤の表面は任意の厚さの酸化Si膜で覆う。前記Si基盤に穴をあけているの、前記アノード電極32は網目状のパターンになる。前記上蓋31において、前記W(タングステン)を蒸着していない場所が、外周部33である。図には記入していないが、前記アノード電極32と反対側の上蓋31のSi基盤表面に電極端子部を設けており、前記電極端子は前記アノード電極32と前記導体部を介して繋げている。前記電極端子部は前記UVチューブの外部に張り出すリード線と繋げる。図3(b)に記すA方向を向いて前記カソード電極部41が位置する。
【0014】
図4(a)と図4(b)は、前記カソード電極部42を備えた下蓋41を示す図である。図4(a)は前記下蓋41の平面図であり、図4(b)はその断面図である。前記下蓋41はSiの基盤である。前記下蓋41はその中央部を凹部の形状で穿つ。前記凹部の構造に形成するため、Si基盤の中心部をドライエッチングないしウエットエッチングプロセス技術を採用する。物理的研磨により中心部を削って凹部の形状にしても良い。前記凹部の製作時、前記凹部の表面層の酸化Si膜を除く。次のステップで、前記凹部の底面にW(タングステン)を蒸着させて前記カソード電極42を作る。蒸着後、前記W(タングステン)表面を除いたSi基盤の表面は任意の厚さの酸化Si膜で覆う。前記カソード電極42は穴の無いパターンになっている。前記下蓋41において、前記凹部の周辺部で前記W(タングステン)が蒸着していない場所が43である。図には記入していないが前記カソード電極42と反対側の下蓋41のSi基盤表面に電極端子部を設けており、前記電極端子部は前記カソード電極42と導体部を介して繋がっている。前記電極端子部は前記UVチューブの外部に張り出すリード線と繋げる。
図4(b)に記すA方向からアノード電極部が接合されることになる。
【0015】
前記アノード電極32を付けた前記上蓋31の素材と、前記カソード電極42を付けた前記下蓋41の素材にSiを活用している理由は、安価で入手性が良いことと、半導体産業で確立したSi微細加工技術を活用できるからである。
【0016】
図5(a)は、図3(a)の前記上蓋31と図4(a)の前記下蓋41を直接接合により接合して一体化した紫外線検出部を示す断面図である。図5(b)は前記紫外線検出部の側面図である。
【0017】
前記上蓋31の外周部33と、前記下蓋41の凹部の周辺部43において機械研磨により、前記酸化Si膜を除くとともに、前記アノード電極32と前記カソード電極42が平行となる様に表面を滑らかに加工する。次のステップで前記上蓋31と前記下蓋41を直接接合する。
【0018】
組みあがった前記紫外線検出部は、図1の11と12に示す従来の前記UVチューブの紫外線検出部を構成する一対の金属製電極版と置き換える。
【0019】
この発明の実施の形態2を、図3図4図6を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態2.
【0020】
図6(a)は、図3(a)の前記上蓋31と図4(a)の前記下蓋41を、絶縁のための円筒形ガラス51を挟んで陽極接合により接合して一体化した紫外線検出部の側面図であり、図6(b)は断面図である。
【0021】
前記上蓋31の外周部33と、前記下蓋41の凹部の周辺部43は、絶縁用の円筒ガラス51と接合する場所である。この箇所は機械研磨により酸化Si膜を除去するとともに、表面を滑らかに加工している。同時に凹部の周辺部と前記カソード電極42が平行となる様に、前記凹部の周辺部は研磨加工する。また前記円筒ガラスの上下の接合部も表面を滑らかにするとともに、接合部となる平面は互いに平行になる様に研磨している。このことで陽極接合時、隙間無く表面が密着できるとともに、前記アノード電極32と前記カソード電極42の平行度が高く保たれる。
【0022】
その後、前記W(タングステン)電極の表面を除いて、前記紫外線検出部の表面を任意の厚さの酸化Siの膜で覆う。
【0023】
組みあがった前記紫外線検出部は、図1の11と12に示す従来の前記UVチューブの紫外線検出部を構成する一対の金属製電極版と置き換える。
【0024】
尚、前記陽極接合技術で前記上蓋31と前記円筒ガラス51を接合する、また前記円筒ガラス51と前記下蓋41を接合するとしているが、直接接合ないし接着剤を用いて接合しても良い。
【0025】
本発明において、従来のUVチューブの製造方法の様にレーザ溶接によるリード線と電極板の接合による電極の平行度を保つ方法を採用せず、2枚のSi基盤にW(タングステン)を蒸着して作成するので、2枚の電極は高い精度の平行度で作製することが出来る。
【0026】
本発明のUVチューブの内部空間は、特許文献2のUVチューブの内部空間より大きいため、前記特定ガス漏れによる放電特性の変化があっても紫外線検出性能に与える影響は少ない。
【0027】
前記紫外線検出部に前記W(タングステン)を蒸着するとき、Si基盤の表面は酸化Si膜を付けた状態で蒸着してもかまわない。但し、蒸着後の前記W(タングステン)表面は、金属のままであって、酸化Si膜などの絶縁体で覆わない。
【0028】
炎に含まれる紫外線が前記紫外線検出部に入射したとき、前記アノード電極32と前記カソード電極42の間で放電現象が生じる。前記放電による電圧ないし電流の変化をもって火炎を検出するアルゴリズム、回路は従来技術を採用するものでよい。
【符号の説明】
【0029】
10 ガラス管
11,24,32 アノード電極
12,28,42 カソード電極
13,14 リード線
21 UVチューブの上蓋
22 UVチューブの下蓋
23,26 ガラス板
25 導電性リード(貫通電極)
27 キャビティ
29 導電性リード(貫通電極)
31 紫外線検出部のSi基盤上蓋
33 下蓋との接合部
41 紫外線検出部のSi基盤下蓋
43 上蓋との接合部
51 絶縁用ガラス
図1
図2
図5
図3
図4
図6