特許第6066832号(P6066832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066832
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20170116BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   B60H3/06 E
   B60H1/00 102E
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-112866(P2013-112866)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231296(P2014-231296A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】佐取 陽介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健二
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−215528(JP,A)
【文献】 特開平11−170840(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0248605(US,A1)
【文献】 特開2006−256427(JP,A)
【文献】 特開平05−238256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 3/06
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置本体の入側に、空調用空気を取込む空気取込部と、
該空気取込部から取込んだ空調用空気を下流側へ送風する送風部と、が上下に設置されると共に、
空調用空気を浄化するフィルタ部材が、前記空気取込部の内部に設置された車両用空調装置において、
前記フィルタ部材の下方に、フィルタ部材の下面側を支持可能なフィルタ支持部が設けられ、
該フィルタ支持部が、少なくともその一部に、側面視で前記フィルタ部材の下面側へ向けて上がり勾配に傾斜する傾斜形状部を有するものとされ
該傾斜形状部は、その頂部が前記フィルタ部材の下面の一箇所を点接触または点接触に近い線接触の状態で支持可能とされると共に、頂部以外の部分が前記フィルタ部材の下面を支持しないように離隔されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記フィルタ部材が、一方向へ延びる凹凸形状部を有するものとされると共に、
前記フィルタ支持部は、前記傾斜形状部の上縁部が、前記フィルタ部材の凹凸形状部の延設方向に対して、直交する方向に並設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記フィルタ支持部が、平面視で格子状のものとされたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記、フィルタ支持部が、前記空気取込部の内部に設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空気取込部が左右に分割され、前記フィルタ支持部も左右に分割されると共に、
フィルタ支持部の分割部分に、互いに当接状態で嵌合可能な補強桟部が設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空気取込部に、前記フィルタ部材の下面を、前記フィルタ支持部から浮かせた状態で保持可能な第二フィルタ支持部を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の温度を調整するために、空調装置(車両用空調装置)が設けられている。
【0003】
このような空調装置は、空調装置本体の入側に、空調用空気を取込むための空気取込部と、この空気取込部から取込んだ空調用空気を下流側へ送るための送風部とを、それぞれ有している。そして、これら(空気取込部および送風部)を上下に配置するようにしたものが存在している。
【0004】
そして、上記した空気取込部の内部に対して、空気取込部から取込んだ空調用空気を浄化するためのフィルタ部材を設置したものなども存在している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このようなフィルタ部材には、経年劣化などによる変形を防止するための手段が必要になるため、フィルタ部材をフィルタケースに収容して保持させるなどの対策を取るようにしていたが、フィルタケースは、重量増加やコストアップなどの要因となるので、特許文献1では、フィルタケースを廃止して、その代りに、上記した送風部の上部に、矩形状をしたフィルタ部材の対角線方向などへ延びる十字状のフィルタ支持部材を設けて、空気取込部内に設けられたフィルタ部材を、送風部に設けられた十字状のフィルタ支持部材によって下面側から支持させるようにしていた。
【0006】
この十字状のフィルタ支持部材は、フィルタ部材の下面と平行な上縁部によって、フィルタ部材の下面を線接触状態で直接当接支持させるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4178992号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の車両用空調装置には、以下のような問題があった。
即ち、送風部に、十字状のフィルタ支持部材を設けた場合、設計上、フィルタ部材から送風部までの距離が大きくなるような状況の時に、フィルタ支持部材が上下方向へ大型化してしまう。
【0009】
また、上記により、送風部は、フィルタ部材との間の距離の影響を受けることになるので、送風部の構成を簡略化することや、送風部の汎用化を図ることが困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決することを、主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、
空調装置本体の入側に、空調用空気を取込む空気取込部と、
該空気取込部から取込んだ空調用空気を下流側へ送風する送風部と、が上下に設置されると共に、
空調用空気を浄化するフィルタ部材が、前記空気取込部の内部に設置された車両用空調装置において、
前記フィルタ部材の下方に、フィルタ部材の下面側を支持可能なフィルタ支持部が設けられ、
該フィルタ支持部が、少なくともその一部に、側面視で前記フィルタ部材の下面側へ向けて上がり勾配に傾斜する傾斜形状部を有するものとされ
該傾斜形状部は、その頂部が前記フィルタ部材の下面の一箇所を点接触または点接触に近い線接触の状態で支持可能とされると共に、頂部以外の部分が前記フィルタ部材の下面を支持しないように離隔されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、フィルタ部材の下方にフィルタ支持部を設けて、フィルタ部材の下面側を支持可能とすることにより、フィルタ部材を収容保持するためのフィルタケースや、フィルタ部材自体の強度を上げるための補強手段(エンドプレート(補強板)やホットメルト(溶かした樹脂による部分補強))などをなくすことができるようになるので、その分、空調装置本体の軽量化や低価格化などを図ることが可能となる。
フィルタ支持部を、少なくともその一部に傾斜形状部を有するものとすることにより、フィルタ支持部の高さ寸法を傾斜形状部の上下方向の長さによって設定することができるため、空気取込部や送風部などの上下方向の寸法に合わせてフィルタ支持部を無理なく設計することが可能となる。そして、フィルタ支持部を簡略化することなども可能となる。
また、フィルタ支持部が傾斜形状部を有することにより、例えば、空気取込部に対してフィルタ部材を着脱する際に、傾斜形状部を、(スムーズに着脱できるようにするための)ガイド部や退避部などとして利用することが可能となる。
更に、フィルタ支持部は、傾斜形状部の上縁部(の頂部)によって、フィルタ部材の下面の一箇所を点接触または点接触に近い線接触の状態で支持可能となるので、フィルタ部材に対するフィルタ支持部の接触面積を小さくして、フィルタ部材の風流れを確保することができるようになり、フィルタ部材の集塵能力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例にかかる車両用空調装置の全体斜視図である。
図2図1の空調装置本体の縦断面図である。
図3図1の空気取込部と送風部との分解斜視図である。
図4図1の空気取込部と送風部との組み合わせ状態の縦断面図である。
図5図4の空気取込部の縦断面図である。
図6図3のフィルタ部材の斜視図である。
図7】空気取込部にフィルタ部材を挿入する状態を示す斜視図である。
図8】空気取込部を底面側から見た斜視図である。
図9図8の空気取込部を異なる角度から見た底面側の斜視図である。
図10】空気取込部を斜め上方から見た分解斜視図である。
図11図10の空気取込部を底面側から見た分解斜視図である。
図12】空気取込部の分解状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態、および、それを具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図12は、この実施の形態の実施例およびその変形例を示すものである。
【実施例1】
【0015】
<構成>以下、構成について説明する。
図1の全体斜視図、図2の断面図に示すように、自動車などの車両に、車室内の温度を調整するための空調装置1(車両用空調装置)を設ける。
【0016】
この空調装置1は、空調装置本体2の入側に、空調用空気3を取込むための空気取込部4と、この空気取込部4から取込んだ空調用空気3を下流側へ送るための送風部5とを、有するものとする。これら、空気取込部4と送風部5とは、それぞれ別個の構成とされる(あるいは、別ユニットとして構成される)。そして、空気取込部4と送風部5とを上下に配置する(図3の分解斜視図、参照)。
【0017】
そして、図4図5)に示すように、上記した空気取込部4の内部に対して、空気取込部4から取込んだ空調用空気3を浄化するためのフィルタ部材6を設置する。
【0018】
ここで、上記についての補足説明を行う。
上記した「車両用空調装置」は、文字通り、車両に設けられる空調装置1のことである。
【0019】
上記した「空調装置本体2」は、空調装置1の本体部分を構成するものである。空調装置本体2は、図2に示すように、少なくとも、空調用空気3が通るようにした中空の空調ケースの内部に、空調用空気3を冷却するための冷却用熱交換器7(エバポレータなど)と、空調用空気3を加熱するための加熱用熱交換器8(ヒーターコアやPTCヒーターなど)とを有するものとされる。また、車室内の各部に空調用空気3を吹き出すための出口部を適宜有するものとされる。
なお、空調装置本体2については、周知であるため、これ以上の説明を省略する。
【0020】
上記した「空調用空気3」は、空調装置1によって温度調整される空気、または、温度調整された空気のことである。
【0021】
上記した「空気取込部4」は、文字通り、空調装置本体2へ空調用空気3を取込むための部分である。空気取込部4は、外気取入口部4aと内気取入口部4bとを有するケース部4cと、外気取入口部4aおよび内気取入口部4bを切替える入口ドア部4dと、を有するもの(インテークユニット、または、内外気切替ユニットなど)とされる。ケース部4cの下部には、送風部5に対する取付部4eが設けられる。
【0022】
上記した「送風部5」は、文字通り、空気取込部4から取込んだ空調用空気3を空調装置本体2へ向けて送るものであり、図3に示すように、少なくとも、ファン5aと、このファン5aを駆動するモータなどの駆動装置5bと、ファン5aおよび駆動装置5bを収容するケース部5cと、を有するもの(ファンユニットなど)とされる。ケース部5cの上部には、空気取込部4に対する取付部5dが設けられる。この場合、ファン5aは、上下方向に延びる回転中心を有する筒状の遠心式ファンなどとされている。
【0023】
上記した「フィルタ部材6」は、少なくとも、集塵機能を備えたものなどとされる。なお、フィルタ部材6は、脱臭機能や抗菌機能などを備えることもできる。この場合、フィルタ部材6は、他数枚の不織布を重ね合わせて形成された、平面視ほぼ矩形状のものなどとされている。但し、フィルタ部材6は、不織布によるものに限るものではない。このフィルタ部材6は、空気取込部4のケース部4cにおける、取付部4eよりも上側の部分(フィルタ設置部4f)に設置される。これに対し、フィルタ設置部4fは、内部にフィルタ部材6を収容できるように、内周面がフィルタ部材6とほぼ同じ大きさの平面視ほぼ矩形状のものなどとされている。
【0024】
そして、以上のような基本的な構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0025】
(構成1)
上記フィルタ部材6の下方に、フィルタ部材6の下面側を支持可能なフィルタ支持部21が設けられるようにする。
そして、このフィルタ支持部21が、少なくともその一部に、側面視で上記フィルタ部材6の下面側へ向けて上がり勾配に傾斜する傾斜形状部22を有するものとされる。
【0026】
(補足説明1)
ここで、上記した「フィルタ支持部21」は、文字通り、フィルタ部材6の下面側を支持するものである。即ち、フィルタ部材6の上から下へ向かう風流れの中(しかも下流側)に配設されるものである。なお、フィルタ支持部21については、後述する。
【0027】
上記した「少なくともその一部」は、傾斜形状部22が、フィルタ支持部21の全部、または、一部に設けられることである。傾斜形状部22は、フィルタ支持部21に対して、少なくとも1箇所以上設けられる。
【0028】
上記した「支持可能」は、実際に支持すること、および、必要な場合に支持できるようになっていること、を含んでいる。
【0029】
上記した「傾斜形状部22」は、文字通り、傾斜した形状の部分のことである。この場合、傾斜形状部22は、側面視でほぼ一定の幅を有して、全体として斜めに傾けられたような一様の傾斜を有するものを指している。また、傾斜形状部22の傾斜形状は、側面視で、直線的なものであっても、曲線的なものであっても良い。また、傾斜形状部22は、その途中に傾斜角度が変更される部分などがあっても良い。この場合には、傾斜角度が一定の直線的な傾斜形状とされている。
【0030】
より具体的には、この場合、フィルタ支持部21は、2つの傾斜形状部22を山型(あるいは、逆V字状)に組合せたものとされている。これにより、フィルタ支持部21は、側面視で、山型の頂部の一箇所でフィルタ支持部21の下面を支持可能なものとなる。この山型のフィルタ支持部21は、その上縁部21aがフィルタ部材6の下面の中央部(例えば、車両前後方向に二等分した位置)に位置するような均等な傾斜を有するものとされている。また、この山型のフィルタ支持部21は、傾斜形状部22が、水平線に対して15度程度の緩い傾斜を有するものなどとされている。但し、上記した2つの傾斜形状部22は、不均等なものとしても良い。なお、フィルタ支持部21の上縁部21a(頂部)は、(後述するような、点接触や線接触の状態に近いといえる程度であれば)横方向に僅かに延ばすようにしても良い。なお、頂部以外の部分は、フィルタ部材6の下面を支持しないように離隔されるようにしている。
【0031】
また、特に図示しないが、上記したフィルタ支持部21は、例えば、4つの傾斜形状部22を二重の山型(あるいは、逆W字状)に組合せたものなどとしても良い。これにより、フィルタ支持部21は、側面視で、2つの山型の二箇所の頂部でフィルタ部材6の下面を支持可能なものとなる。この二重山型のフィルタ支持部21は、その上縁部21aがフィルタ部材6の下面を(車両前後方向に)三等分した位置に存在するような均等な傾斜を有するものなどとする。但し、上記した4つの傾斜形状部22は、不均等なものとしても良い。
【0032】
(構成2)
図6に示すように、上記フィルタ部材6が、一方向へ延びる凹凸形状部6aを有するものとされる。
これに対し、図5に示すように(図7図9も併せて参照のこと)、上記フィルタ支持部21は、上記傾斜形状部22の上縁部21aが、上記フィルタ部材6の凹凸形状部6aの延設方向に対して、直交する方向に並設されるようにする。
【0033】
(補足説明2)
ここで、上記した「凹凸形状部6a」は、文字通り、凹凸形状をした部分のことである。この凹凸形状部6aにより、フィルタ部材6は、複数本の凹溝部を並設した形状のものなどとされる。この場合には、凹凸形状部6aは、上記した不織布を波形に折り曲げたようなものとされている。この凹凸形状部6aは、フィルタ部材6の下面側および上面側に車両前後方向へ延びるように設けられており、車幅方向に並設されている。
【0034】
上記した「直交」は、この場合、傾斜形状部22の上縁部21aが車幅方向に沿って位置するよう並べられること、または、車幅方向に沿って延設されることである。但し、凹凸形状部6aの延設方向と、傾斜形状部22の上縁部21aの並設方向とは、上記に限るものではなく、例えば、逆であっても良い(凹凸形状部6aが車幅方向へ延び、傾斜形状部22の上縁部21aが車両前後方向に並設されるようにしても良い)。なお、直交は、正確な90度に限るものではなく、若干のズレが有っても許容できる。
【0035】
(構成3)
図8図9に示すように、上記フィルタ支持部21が、平面視(または底面視)で格子状のものとされる(格子状フィルタ支持部)。
【0036】
(補足説明3)
ここで、上記した「格子状」は、文字通り、縦桟部21bと横桟部21cとを交差させて組み合わせたような面状のものとされる(面状格子部)。この場合、格子の向きは、車両前後方向へ延びる縦桟部21bと、車幅方向へ延びる横桟部21cとを組み合わせたものとされている。但し、格子の向きは、これに限るものではない。また、縦桟部21bと横桟部21cとは、最低限の数だけ設けるようにしている。
【0037】
そして、上記した傾斜形状部22は、縦桟部21bに対して設けられている。即ち、縦桟部21bは、側面視、山型のものとされている。また、上記した傾斜形状部22の上縁部21aに対し、横桟部21cを設けるようにしても良いが、この場合には、上縁部21aには、横桟部21cを設けないようにしている。
【0038】
(構成4)
図5に示すように、上記フィルタ支持部21が、上記空気取込部4の内部に設けられる。
【0039】
(補足説明4)
ここで、上記した「空気取込部4の内部に設けられ」は、フィルタ支持部21が、空気取込部4の内部に、空気取込部4と一体的に形成された固定のものとされることである。この場合、フィルタ支持部21は、空気取込部4における、フィルタ設置部4fの下部に設けられる。
【0040】
なお、空気取込部4の(後側などの)側面には、フィルタ支持部21の上側に、フィルタ部材6を出し入れするための出入用開口部31が形成され、この出入用開口部31には、閉止板32(フィルタカバー)が着脱可能に設けられている。なお、フィルタ部材6は、メンテナンスなどのために、1年に1回程度の頻度で、この出入用開口部31から出し入れすることが想定されている。
【0041】
(構成5)
図10(〜図12)に示すように、上記空気取込部4が左右に分割されるようにする。これに応じて、上記フィルタ支持部21も左右に分割されるようにする。
そして、フィルタ支持部21の分割部分に、互いに当接状態で嵌合可能な補強桟部35が設けられるようにする。
【0042】
(補足説明5)
ここで、上記した「左右に分割され」は、文字通り、空気取込部4やフィルタ支持部21が、左右の分割片(左分割片を(L)で、右分割片を(R)で示す)を組合せた構造を有することである。左右の分割片の分割部分の合せ部には、嵌合部36aや、固定用の爪固定部36bなどが適宜設けられる。
【0043】
上記した「補強桟部35」は、左右の分割片の分割部分の合せ部に沿ってそれぞれ車両前後方向へ延び、互いに当接されるものとされる。この場合、各補強桟部35は、格子状のフィルタ支持部21を構成する各桟部と断面積が同じか、または、それよりも断面積が大きなものとされる。
【0044】
そして、補強桟部35どうしの合せ部には、互いに嵌合可能な嵌合部35aが設けられる。この嵌合部35aは、特に明確には図示しないが、補強桟部35の対向面に沿って形成された凹凸部などとされる。
【0045】
(構成6)
図12に示すように、上記空気取込部4に、上記フィルタ部材6の下面を、上記フィルタ支持部21から浮かせた状態で保持可能な第二フィルタ支持部38を設ける。
【0046】
(補足説明6)
ここで、上記した「浮かせた状態」は、文字通り、フィルタ部材6の下面が、フィルタ支持部21の傾斜形状部22の上縁部21aと、上下方向に対して僅かに離れることにより、互いにギリギリ接触しない状態などとなっていることである。
【0047】
上記した「第二フィルタ支持部38」は、特に、フィルタ部材6の風流れと無関係な位置に設けられるようにする。例えば、フィルタ部材6の側面などを支持するものなどとされる(フィルタ側面支持部)。この場合には、フィルタ部材6の上面側の周縁部に沿って、横方向へ向け張出形成された、耳部6bを支持するものとされる(耳部支持部)。この場合、この耳部6bは、全周に亘って張出すフランジ状のものとされている。また、第二フィルタ支持部38は、耳部6bの4つのコーナー部分を下側から支持するようなものとされている。但し、第二フィルタ支持部38は、耳部6bのコーナー部分を支持するもののみに限るものではない。
【0048】
<作用>この実施例によれば、以下のような作用を得ることができる。
駆動装置5bによって送風部5のファン5aを回転駆動すると、車外の空気(外気)は、外気取入口部4aから、また、車内の空気(内気)は、空気取込部4から、空気取込部4へ取り込まれる。この外気と内気との選択は、入口ドア部4dの切替えによって行われる。また、空気取込部4の内部では、フィルタ部材6によって取込んだ空調用空気3の浄化が行われる。
【0049】
そして、空気取込部4に取り込まれた空調用空気3は、送風部5を介して、空調装置本体2へと送られ、空調装置本体2の内部で、冷却用熱交換器7によって冷却される。
【0050】
冷却用熱交換器7によって冷却された空調用空気3は、そのまま車室内の各部へ吹き出されるか、加熱用熱交換器8で加熱された後に車室内の各部へ吹き出されるか、あるいは、冷却用熱交換器7によって冷却された空調用空気3と加熱用熱交換器8で加熱された空調用空気3とが混合されることにより、温度調整を行った後に、車室内の各部へ吹き出されるかする。
【0051】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
(効果1)
フィルタ部材6の下方にフィルタ支持部21を設けて、フィルタ部材6の下面側を支持可能とすることにより、フィルタ部材6を収容保持するためのフィルタケースや、フィルタ部材6自体の強度を上げるための補強手段(エンドプレート(補強板)やホットメルト(溶かした樹脂による部分補強))などをなくすことができるようになるので、その分、空調装置本体2の軽量化や低価格化などを図ることが可能となる。
【0052】
フィルタ支持部21を、少なくともその一部に傾斜形状部22を有するものとすることにより、フィルタ支持部21の高さ寸法を傾斜形状部22の上下方向の長さによって設定することができるため、空気取込部4や送風部5などの上下方向の寸法に合わせてフィルタ支持部21を無理なく設計することが可能となる。そして、フィルタ支持部21を簡略化することなども可能となる。
【0053】
また、フィルタ支持部21が傾斜形状部22を有することにより、例えば、空気取込部4に対してフィルタ部材6を着脱する際に、傾斜形状部22を、(スムーズに着脱できるようにするための)ガイド部や退避部などとして利用することが可能となる。
【0054】
更に、フィルタ支持部21は、傾斜形状部22の上縁部21aによって、フィルタ部材6の下面側を支持可能となるので、フィルタ部材6に対するフィルタ支持部21の接触面積を小さくして、フィルタ部材6の風流れを確保することができるようになり、フィルタ部材6の集塵能力の低下を防止することができる。
【0055】
(効果2)
フィルタ支持部21における傾斜形状部22の上縁部21aの並設方向とフィルタ部材6の凹凸形状部6aの延設方向とが直交することにより、フィルタ部材6が変形する方向に対して、傾斜形状部22の上縁部21aが最も効果的にフィルタ部材6の変形を抑制するように設置されることになる。しかも、傾斜形状部22の上縁部21aは、上記したように、より少ない面積でフィルタ部材6を支持することが可能であるため、フィルタ部材6の変形を抑制しつつ、フィルタ部材6の風流れを確保することができるようになり、効果的である。
【0056】
特に、傾斜形状部22を、山型のものとすることにより、フィルタ部材6に対するフィルタ支持部21の接触面積が最小限になるので、より効果的にフィルタ部材6の集塵能力の低下を防止することが可能となる。
【0057】
(効果3)
フィルタ支持部21を格子状のものとしたことにより、フィルタ部材6を設置しない仕様にする場合でも、格子状のフィルタ支持部21が有ることによって、例えば、枯葉などの大きな異物を捕集して送風部5よりも下流側へ侵入させないようにすることができる(異物侵入防止機能)。また、格子状とすることにより、フィルタ支持部21の軽量化を図ることができる。
【0058】
(効果4)
フィルタ支持部21を、空気取込部4の内部に設けることにより、同じく空気取込部4内に設置されるフィルタ部材6に対し、最も近い位置にフィルタ支持部21を設置することができるので、フィルタ部材6から、その下側に設置される送風部5までの距離が大きくなるような場合であっても、傾斜形状部22の高さ寸法を抑えることができるようになり、フィルタ支持部21の大型化を招くことがない。
【0059】
また、上記により、送風部5は、フィルタ部材6との距離の影響を受けなくなるので、また、フィルタ支持部21の影響をほとんど受けることがなくなるので、送風部5の構成を小型化したり簡略化したりすることが可能となると共に、送風部5の汎用化(多車種共用化)を図ることなどが可能となる。
【0060】
(効果5)
フィルタ支持部21の分割部分に設けられた一対の補強桟部35を互いに当接嵌合させることによって、フィルタ支持部21の強度向上(フィルタ支持部21自体の強度向上や、フィルタ部材6に対する支持強度向上など)を図ることができる。これにより、上記したように、フィルタ支持部21を、傾斜形状部22を有するものとしたり、格子状のものとしたりしても、必要な強度を確保することが可能となる。
【0061】
(効果6)
空気取込部4に、上記フィルタ部材6の下面を、上記フィルタ支持部21から浮かせた状態で保持可能な第二フィルタ支持部38を設けたことにより、フィルタ部材6が経年劣化などで変形される前には、フィルタ部材6の下面側がフィルタ支持部21によって支持されないようにすると共に、フィルタ部材6が経年劣化などである程度変形した時に、フィルタ部材6の下面側がフィルタ支持部21によって支持されるようにすることができる。即ち、フィルタ部材6の下面側を支持しなくても良い間は、支持させずに、支持が必要になった時に確実に支持させる構造とすることができる。
【0062】
これにより、変形前のフィルタ部材6に対するフィルタ支持部21の接触をなくして、上記したフィルタ部材6の風流れを確保し、フィルタ部材6の集塵能力の低下をほとんどなくすことが可能となる。また、フィルタ支持部21の設置精度を下げて空気取込部4やフィルタ支持部21の設計を容易化することも可能となる。
【0063】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0064】
1 車両用空調装置
2 空調装置本体
3 空調用空気
4 空気取込部
5 送風部
6 フィルタ部材
6a 凹凸形状部
21 フィルタ支持部
21a 上縁部
22 傾斜形状部
35 補強桟部
38 第二フィルタ支持部
図1
図2
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