(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、前記エンジンの出力によって駆動する発電機と、前記発電機からの電力によって駆動するモータと、前記発電機と前記モータとを制御する電機制御ユニットと、前記モータからの回転動力によって車両を走行させる走行装置と、前記エンジンの出力を制御するエンジン制御ユニットと、車両の走行に伴って農作物を収穫する農作業装置と、操作位置に応じた車速を設定するための車速設定操作装置と、前記エンジンのエンジン回転数を取得するエンジン回転数取得部とを備え、
さらに、前記エンジン回転数に基づいて、前記発電機の発電負荷が許容負荷を超えない範囲で、前記モータによって利用可能な動力であるモータ消費可能動力を算定するモータ消費可能動力算定部と、
前記操作位置に基づいて前記モータに対するモータ指令回転数を算定するモータ回転数設定部と、
前記モータ消費可能動力と前記モータ指令回転数とから算定したトルク値を、モータ制御におけるトルク牽制値として前記電機制御ユニットに与えるトルク牽制値算定部とを備え、
前記発電機の発電負荷が許容負荷を超えないように、前記モータの出力トルクが牽制されるシリーズハイブリッドコンバイン。
前記モータ消費可能動力が、前記エンジン回転数を入力パラメータとして前記エンジンのエンジン出力特性から導出されたエンジン出力値に依存する第1値と、前記エンジン回転数を入力パラメータとして前記発電機の発電機出力特性から導出された発電出力値に依存する第2値との小さい方である請求項1に記載のシリーズハイブリッドコンバイン。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるシリーズハイブリッドコンバインの具体的な実施形態を説明する前に、
図1を用いて本発明の基本原理を説明する。
なお、このシリーズハイブリッドコンバインは、バッテリレスのシリアルハイブリッド車両であり、バッテリからの電力で車両を走行させることはできないので、定常的に回転しているエンジンによって発電している発電機からの電力で駆動するモータによって走行する。
【0014】
図1には、本発明のシリーズハイブリッドコンバイン(以下単にコンバインまたは車両と略称される)における動力伝達と動力制御とが模式的に示されている。動力伝達の出発点は、内燃機関、ここではディーゼルエンジン(以下単にエンジンと称する)80である。エンジン80の回転数は、電子ガバナー方式やコモンレール方式などを採用するエンジン制御ユニット86によって制御される。回転動力源としてのエンジン80には、エンジン80から出力される回転動力によって発電する発電機81が連結されている。この発電機81から出力された電力は、電機制御ユニット85によって制御される電力変換部84によって電力変換され、もう1つの回転動力源となるモータ82を駆動する。電力変換部84による電力変換に応じて、モータ82の回転数やトルクが制御される。動力伝達の終点は、農作物を収穫するための機器からなる農作業装置Wとこのコンバインを走行させる走行装置1である。
【0015】
農作業装置Wには、エンジン80から直接動力を受けるエンジン駆動作業装置WEと、モータ82から直接動力を受けるモータ駆動作業装置WMが含まれている。走行装置1は、互いに独立して駆動される左右一対のクローラ走行体、つまり左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとからなる。モータ82と走行装置1との間には、左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとに異なる回転数の変速動力を伝達することができるトランスミッション47を含む動力伝達機構50Aが備えられている。
【0016】
左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bの速度差による車両の旋回(操向)を含む車速の設定は、運転者によって操作される車速設定操作装置ODによって行われる。ここでは、車速設定操作装置ODは、旋回(操向)を設定する旋回設定用レバーと速度設定用レバーとを含む複数の操作具で構成されているが、共通の単一操作具だけで構成してもよい。車速設定操作装置ODの操作位置、動力伝達機構50Aの変速状態、農作業装置Wの駆動状態などは、各種センサや各種スイッチの位置によって検出される。これにより、直進走行、旋回走行、路上走行などの走行に関する走行駆動状態、刈取り作業中、刈取り作業前後、穀粒排出などの作業駆動状態を示す情報は、随時利用可能である。
また、
図1の例では、エンジン80のエンジン回転数を取得するエンジン回転数取得部としてエンジン出力軸の回転を検出するエンジン回転センサS2が設けられており、このエンジン回転センサS2からの信号が実エンジン回転数として取り扱われる。もちろん、エンジン回転数取得部は、エンジン回転センサS2以外、エンジン80に対するエンジン指令回転数をエンジン回転数として取得するなど他の形態を採用してもよい。
【0017】
上述したような本発明のシリーズハイブリッドコンバインでは、モータ82に負荷がかかると、それに応じた電力がモータ82に発電機81から供給されることになるが、発電機81がそのような電力をすべて発電しなければならない。種々の事態を考慮してモータ82が必要となるモータトルクを作り出すための電力を発電しようとすると、非常に大きな発電出力を有する発電機81を搭載しなければならない。この発明では、小出力であって小型の発電機81を搭載することで、そしてその結果小出力の小型のエンジン80を搭載することで、省エネを図っている。このため、モータ82が所定以上のモータトルクを要求しないように、トルク牽制制御を行っている。
【0018】
以下にそのトルク牽制制御の基本原理を、
図1を用いながら説明する。
まず、車速設定操作装置ODを構成する、例えば、ストローク式の車速設定用操作レバーの操作位置が検知される。この操作位置に含まれている車速操作位置情報に基づいて、モータ82の制御目標回転数となるモータ指令回転数が算定されるが、ここでは、操作位置を入力パラメータとしてモータ指令回転数を導出する操作位置−モータ指令回転数マップが用いられている。また、車速設定操作装置ODには旋回設定用の操作具もレバーも含まれていることから、車速設定操作装置ODの操作位置に含まれている旋回設定用の旋回操作位置情報に基づいて、左クローラ走行体1a及び右クローラ走行体1bの駆動速度が、操作位置−左右クローラ駆動速度マップを用いて算定されるが、ここでは、その詳しい説明は省略する。
【0019】
算定されたモータ指令回転数は、一方では、電機制御ユニット85に送られ、他方では、トルク牽制値算定部12fに送られる。電機制御ユニット85は、モータ指令回転数に基づいて電力変換部84に対する制御信号を生成し、電力変換部84を介してモータ82を駆動制御する。トルク牽制値算定部12fは、モータ82の負荷増大に伴うモータトルクの増加要求が発電機81の出力を超えることで発電機81が停止してしまうことを避けるためのトルク牽制制御のトルク牽制値を算定する。
【0020】
トルク牽制値算定部12fで算定されたトルク牽制値は、限界モータトルク値として電機制御ユニット85に送られる。電機制御ユニット85は、モータ82が限界モータトルク値以上のモータトルクを出力しないように、モータ82への電力を制限する。その結果、発電機81の発電負荷が許容負荷を超えることが禁止され、発電機81の突然停止が回避される。したがって、モータ82に突発的に大きな負荷がかかった場合には、モータ回転数の自然低下、つまり車速の低下によって、その負荷に対処する。
【0021】
トルク牽制値算定部12fにおけるトルク牽制値の算定には、モータ指令回転数と、エンジン回転数に基づいて算定されるモータ消費可能動力、つまりモータ82が利用することができる動力とが入力パラメータとして用いられ、モータ消費可能動力とモータ指令回転数とからトルク牽制値が算定される。
【0022】
モータ消費可能動力の算定には、ここでは、
図1でも示しているように2つの方法、つまりEモードとGモードとが提案されている。いずれのモードにおいても、ここではエンジン回転センサS2であるエンジン回転数取得部から取得された実エンジン回転数が利用される。
【0023】
Eモードによるトルク牽制値の算定では、マップ化または数式化されたエンジン出力特性に実エンジン回転数を適用して得られたエンジン出力値を演算して、モータ消費可能動力が算定される。エンジン出力特性を示すエンジン出力特性曲線は、エンジン最大出力曲線を燃費効率の良い領域まで引き下げた曲線が用いられている。したがって、このモータ消費可能動力を限度としてモータ82を駆動制御している限り、エンジン80、結果的には発電機81は、負担なくかつ無駄なく駆動する。つまり、Eモードは、前記モータ消費可能動力が、前記エンジン回転数を入力パラメータとして前記エンジンのエンジン出力特性から導出されたエンジン出力値に依存するように構成されている。したがって、エンジンの回転数が取得できれば、搭載されているエンジンのエンジン出力特性からエンジン出力値が導出できる。もちろん、エンジン80とモータ82との間には、機械的動力伝達機構や発電機81が介在しているので、それらの損失動力や総合効力が、上記モータ消費可能動力を求める際に考慮される。このことを、以下に、数式化して説明する。
実エンジン回転数をRE-RPMとし、マップ化されたエンジン出力特性を関数Eで表現すると、エンジン出力値:E0-outは、
E0-out=E(RE-RPM)
となる。さらに、損失動力や効率を考慮する修正関数:Kを適用すると、修正後のエンジン出力値であるモータ82が消費可能な動力、つまりモータ消費可能動力:M-outは、
M-out=K(E0-out)
で表される。
先に算定されているモータ指令回転数をMC-RPMとすると、トルク牽制値:T-limitは、
T-limit=F(MC-RPM,M-out)
となる。ここで用いた関数(演算式)Fは、モータ回転数とトルクとの関係から導くことができる。
【0024】
Gモードによるトルク牽制値の算定でも、基本的にはEモードと同様であり、発電機81の型式によって規定される演算式化(マップ化)された発電機出力特性に実エンジン回転数を適用して得られた発電出力値を演算して、モータ消費可能動力が算定される。ここでも、発電機81とモータ82との間には、機械的動力伝達機構などが介在しているので、それらの損失動力や総合効力が、上記モータ消費可能動力を求める際に考慮される。ここでも、このことを、以下に、数式化して説明する。
実エンジン回転数をRE-RPMとし、マップ化された発電機出力特性を関数Gで表現すると、発電出力値:G0-outは、
G0-out=G(RE-RPM)
となる。さらに、損失動力や効率を考慮する修正関数:Jを適用すると、修正後の発電出力値であるモータ82が消費可能な動力、つまりモータ消費可能動力:M-outは、は、
M-out=J(G0-out)
で表される。
従って、トルク牽制値:T-limitは、
T-limit=F(MC-RPM,M-out)
となる。
【0025】
なお、EモードとGモードのいずれか一方を実装してもよいが、両方実装して、それぞれで得られたトルク牽制値の小さい方を採用するようにしてもよい。あるいは、両者の平均など両者を演算して最終的なトルク牽制値を決定してもよい。
【0026】
次に、図面を用いて、本発明による収穫機の具体的な実施形態の1つを説明する。
図2は、収穫機の一例であるコンバインの側面図であり、
図3は側面図である。
【0027】
次に、図面を用いて、本発明によるシリーズハイブリッドコンバイン(以下コンバインと略称する)の具体的な実施形態の1つを説明する。
図2は、コンバインの側面図であり、
図3は側面図である。
【0028】
このコンバインは、左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとを含むクローラ式走行装置1と、この走行装置1によって対地支持されている機体2とを備えている。機体2の前部には、刈取処理部3が配置されている。機体2の後部には、脱穀装置4と、穀粒タンク5とが、それぞれ機体前進方向で左側と右側に、機体横断方向に並んで、配置されている。さらに、穀粒タンク5の前方に搭乗運転部7が配置されている。
【0029】
刈取処理部3は、油圧シリンダCYの操作により横軸芯P1周りに昇降揺動自在である。刈取処理部3にて刈り取られた農作物は脱穀装置4によって脱穀処理され、脱穀装置4にて得られた穀粒は穀粒タンク5に貯留される。刈取処理部3、脱穀装置4、搭乗運転部7は、機体2を構成する機体フレーム6に取り付けられている。
【0030】
刈取処理部3は、車体前部に位置する刈取部8と、その刈取部8にて刈り取った農作物を車体後方上方側に向けて搬送する農作物搬送部としての縦搬送装置9とを含む。縦搬送装置9は、刈取穀稈を後方へ搬送し、フィードチェーン18に受け渡す。刈取部8は、刈取対象穀稈を分草する分草具10、倒伏姿勢の植立穀稈を立姿勢に引起す引起し装置11、引起された植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置12を有する。
【0031】
又、刈取処理部3は、横軸芯P1周りに昇降揺動自在に機体フレーム6に支持され、機体2の前部に位置する通常作業姿勢と機体2の車体前方側を開放するように車体横外方に退避するメンテナンス用姿勢とに亘って縦向き軸芯Y1(
図3参照)周りで姿勢変更可能である。
【0032】
さらに、刈取処理部3に備えられる刈取部フレーム13が、機体フレーム6から立設された左右両側の支持体14R,14Lにより受止め支持されている中継用支持部材15にて横軸芯P1周りに昇降揺動自在に支持されている。刈取部フレーム13を支持する中継用支持部材15は、左側に位置する支持体14Lに縦向き軸芯Y1周りで回動自在に機体2に支持されている。つまり結果的には、刈取処理部3全体が縦向き軸芯Y1周りで揺動自在に機体2に支持されている。
図3に示すように、刈取処理部3が姿勢変更のために回動操作される縦向き軸芯Y1は、縦搬送装置9における搭乗運転部7とは反対側の車体横幅方向外端側箇所に位置する。
【0033】
図4に示すように、脱穀装置4は、刈り取った穀稈を脱穀処理する脱穀部16と、脱穀部16で脱穀処理された処理物を穀粒と塵埃とに選別する選別部17とを含む。
【0034】
脱穀部16では、刈取穀稈がその株元側をフィードチェーン18により挟持された横向きの姿勢で搬送される。さらに、刈取穀稈の穂先側が通過する扱室19には、機体前後向き軸芯周りで回転駆動されることで刈取穀稈の穂先側に扱き処理を施す扱胴20、及び、この扱き処理で得られた処理物を下方に向けて漏下させる受網21が配置されている。又、受網21の処理物移送方向下手側には、受網21を通じて漏下しなかった処理物を選別部17の選別方向下手側(後部側)に向けて流下させる送塵口22が形成されている。
【0035】
選別部17は、脱穀部16の下方に位置して受網21から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別機構23、駆動軸24aを有するとともに選別風を生起する唐箕24、1番回収部27、2番回収部30等を備えている。1番回収部27は、選別された穀粒(1番物)を回収するとともに、回収した1番物をその底部に車体横幅方向(左右方向)に沿って配備した1番スクリュー25によってその右端に連通接続した揚送スクリューコンベア26に向けて搬送する。2番回収部30は、枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物(2番物)を回収するとともに、回収した2番物をその底部に車体横幅方向に沿って配備した2番スクリュー28によって、その右端に連通接続した2番還元装置29に向けて搬送する。
【0036】
揺動選別機構23には、揺動選別ケース33と、この揺動選別ケース33の内部に配置された精選別用のチャフシーブ34と、グレンシーブ35と、ストローラック36等が配置されている。揺動選別ケース33は、その機体前部側が揺動アーム31にて吊り下げ支持され、かつその機体後部側が回転駆動される偏芯クランク機構32によって駆動される。これにより、揺動選別ケース33は前後揺動する。グレンシーブ35は、漏下した処理物から穀粒を選別する。ストローラック36はワラ屑を後方に向けて揺動移送する。
【0037】
1番スクリュー25によって搬送された1番物は、揚送スクリューコンベア26により揚送されて穀粒タンク5に供給されて貯留される。又、2番スクリュー28によって搬送された2番物は、2番還元装置29により再脱穀処理を施した後に揚送して揺動選別機構23に還元される。
【0038】
図2と
図3とに示すように、穀粒タンク5に貯留される穀粒を外部に排出させる穀粒排出装置37が備えられている。この穀粒排出装置37は、底部スクリュー38と、縦スクリューコンベア39と、横スクリューコンベア41とを備えている。底部スクリュー38は、穀粒タンク5下部における凹溝状の底部5aに沿って設けられている。縦スクリューコンベア39は、底部スクリュー38の搬送終端部から上方に向けて穀粒を搬送する。横スクリューコンベア41は、縦スクリューコンベア39の上部から穀粒を横方向に搬送して先端の排出口40からトラックの荷台等(図示せず)に排出する。
【0039】
縦スクリューコンベア39と横スクリューコンベア41とに亘って設けた油圧シリンダ42の伸縮により、横スクリューコンベア41の昇降位置が変更される。さらに、縦スクリューコンベア39は、その下部に設けられた旋回モータ43によって縦軸芯Y2周りで旋回可能である。
【0040】
底部スクリュー38と縦スクリューコンベア39との間、及び、縦スクリューコンベア39と横スクリューコンベア41との間が、夫々、ベベルギア機構44,45により連動連結されている。従って、これらのコンベアは、底部スクリュー38の前部側端部に設けられた入力プーリ46に動力が供給されると、一体的に回転駆動される。その結果、穀粒タンク5内の穀粒が外部に搬出される。
【0041】
次に、このシリーズハイブリッドコンバインに搭載されている2つの動力伝達機構について説明する。
図5には、エンジン80からの回転動力を、扱胴20や選別部17等に供給する第1動力伝達機構が示されている。
図6には、電動モータ(以下単にモータと略称する)82からの回転動力を、車体横幅方向の左と右に配置された左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとからなる走行装置1と刈取処理部3とに供給する第2動力伝達機構が示されている。
【0042】
なお、図では明らかにされていないが、第2動力伝達機構によって動力をうける走行用トランスミッション47は、車体横幅方向中央部であって且つ搭乗運転部7の横幅方向で偏在配置され、左右一対の走行装置1に動力を伝達する。
図2及び
図3から明らかなように、走行用トランスミッション47に動力を供給する走行刈取用のモータ82が搭乗運転部7における運転部ステップ48の下方側箇所に配置されている。モータ82の出力軸49aと走行用トランスミッション47の入力軸49bとは継手を介して連動連結されている。
【0043】
図6に示すように、走行用トランスミッション47のミッションケース52内に、ギア式の減速機構53や油圧操作式かつギア咬み合い式の副変速装置54、及び、左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとの速度差による旋回走行のための旋回用伝動機構55等が備えられている。さらに、この走行用トランスミッション47から刈取処理部3に動力が伝達される。この動力伝達経路に、前進走行のための動力のみを伝達するワンウェイクラッチ63及び動力伝達を断続するベルトテンション式の刈取クラッチ64が介装されている。
【0044】
つまり、モータ82が、左右一対の走行装置1,1と刈取処理部3との動力源である。モータ82の出力制御については後述するが、基本的には、車速設定操作装置ODの操作位置に基づいてモータ82に対する指令回転数が算定される。この実施形態では、車速設定操作装置ODには、搭乗運転部7に備えられた、車速設定用レバーとして機能するストローク操作式の主変速レバー(第1操作具)66及び、旋回設定用レバーとして機能する操作レバー61が含まれている。ストローク操作式の主変速レバー66が中立位置にあれば停止状態となり、主変速レバー66の前側への操作変位が大きいほど前進走行速度が大きくなり、主変速レバー66の後側への操作変位が大きいほど後進走行速度が大きくなるように構成されている。主変速レバー66の操作位置は、ストロークセンサS4によって検出される。
【0045】
モータ82の駆動停止状態で制動作用するネガティブブレーキ67が、走行用トランスミッション47の入力軸49bにおけるモータ82の接続箇所とは反対側の端部に配置されている。ネガティブブレーキ67は、図示しないバネにより制動状態に付勢され、且つ、電気式あるいは油圧式アクチュエータにてバネの付勢力に抗して制動状態を解除する。ネガティブブレーキ67は、メイン電子ユニット100によって、モータ82が作動停止状態(走行用トルクが発生していない状態)であるときは制動状態に、モータ82が作動状態になると制動解除状態に制御される。ネガティブブレーキ67を制動解除状態から制動状態に切り換える際は、制動力が漸増され、制動時の衝撃が抑制される。
【0046】
図7に示されている副変速装置54は、後述するモータ82の速度切替との組み合わせで、高速、中速、低速の3段の速度状態を作り出すために、2つの変速段(高速段、低速段)を有する。モータ82の速度切替と副変速装置54の2つの変速段により、標準的な圃場で刈取作業する場合には中速状態が採用可能で、作物が倒伏しているときや深い湿田で走行負荷が大きいときは低速状態が採用可能で、路上走行する場合には高速状態が採用可能である。
【0047】
副変速装置54の変速段は、搭乗運転部7に備えられた、車速設定操作具の1つである第2操作具57と第3操作具56とにより選択できる(
図3参照)。つまり、上記3つの速度状態は、第2操作具57及び第3操作具56の操作状態によって選択される。この実施形態では、第2操作具57と第3操作具56とはともに操作スイッチとして形成されている。コンバインにおいては、第2操作具57は刈取変速スイッチ、第3操作具56は副変速スイッチとも呼ばれる。
【0048】
旋回用伝動機構55は、左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとのどちらか一方に減速動力を伝えるための緩旋回用クラッチ58、どちらか一方に制動力を付与する減速用ブレーキ59、どちらか一方に対する動力伝達状態を直進状態と旋回状態(減速状態や制動状態)に切り換える操向クラッチ60等を含む。
【0049】
旋回用伝動機構55は、搭乗運転部7に備えられた操作レバー61と連動連係されている。操作レバー61(
図2、
図3図参照)の中立位置から左右方向への傾斜角に応じて、走行機体2の直進状態から右方向又は左方向への旋回が作り出される。操作レバー61の中立位置から左右への傾斜角の大きさを検出するために旋回レバーセンサS3が設けられている。つまり、この操作レバー61の操作変位によりこのコンバインの旋回度が算定されるが、この旋回度の算定のために旋回レバーセンサS3の検出信号が利用される。従って、この旋回レバーセンサS3の操作位置信号は、メイン電子ユニット100に入力され、操向制御などに用いられる。尚、詳述はしないが、操作レバー61は、前後方向へも揺動操作自在であり、この前後方向の搖動操作により刈取処理部3の上昇操作及び下降操作が実現する。
【0050】
この走行用トランスミッション47では、副変速装置54の変速段の切り替えと、モータ82の変速とを通じて、標準的な圃場で刈取作業する場合利用される中速状態とし、農作物が倒伏しているときや深い湿田で走行負荷が大きいときに利用される低速状態、路上走行する場合に利用される高速状態とを作り出すことができる。副変速装置54の切り替えは、第3操作具56によって行われる。また、刈取作業時において、一時的に車速を変更するために、第2操作具57も備えられている。特定条件においては、この第2操作具57の操作に伴って副変速装置54の切り替えも行われる。
【0051】
図3及び
図7に示すように、第3操作具56及び第2操作具57は、この実施形態ではスイッチであり、好ましくは運転者の指によって操作されるモメンタリスイッチとして形成され、押し込み操作でスイッチONとなり、再度の押し込み操作でスイッチOFFとなる。この実施形態では、第3操作具56は、モータ82の速度設定操作具の1つである主変速レバー66のグリップ部に設けられており、第2操作具57は、操作レバー61のグリップ部に設けられている。もちろん、第3操作具56や第2操作具57は、その他の位置、例えば、操縦パネルなどに設けることも可能である。第3操作具56と第2操作具57との操作状態信号(スイッチ信号)、及びストロークセンサS4による主変速レバー66の操作位置信号は、メイン電子ユニット100に入力され、後述するように、モータ82や副変速装置54の制御に利用される。
【0052】
次に、エンジン80からの回転動力を直接、扱胴20や選別部17等に供給する第1動力伝達機構について説明する。
図4と
図5とから理解できるように、選別部17のための動力系は、エンジン80から直接回転動力を受ける。その際、一方では、エンジン80からの動力は、ベルトテンション式の選別入切用クラッチ71を介して選別部17、具体的には、唐箕24の駆動軸24aに伝達される。さらに、唐箕24の駆動軸24aから、伝動ベルト72を介して、1番スクリュー25、2番スクリュー28、揺動選別機構23、フィードチェーン18等に動力が伝達される。
【0053】
他方では、エンジン80からの動力は、ベルトテンション式の排出入切用クラッチ73、ベベルギア機構74、及び、ベルト伝動機構75を介して、穀粒排出装置37、具体的には、底部スクリュー38の前部側端部に設けられた入力プーリ46に伝達される。入力プーリ46に供給された動力により、底部スクリュー38、縦スクリューコンベア39、及び、横スクリューコンベア41(第1横スクリューコンベア41aと第2横スクリューコンベア41bに分割されている)が回転駆動され、その結果、穀粒タンク5内の穀粒が外部に搬出される。選別入切用クラッチ71は、図示されていない選別用クラッチモータにより入り状態と切り状態とに切り換えられる。排出入切用クラッチ73は、図示されていない排出用クラッチモータにより入り状態と切り状態とに切り換えられる。
【0054】
図7に、模式的に示されているように、エンジン80の出力軸80aは、脱穀部16や穀粒排出装置37への動力供給機構として機能する動力伝達機構50Bに連結されるともに、発電機81の発電用回転軸81aとも連結されている。発電機81とモータ82とは電力変換部84を介して電機制御ユニット85に接続されている。モータ82は、この実施形態では、車両の走行駆動用のモータとして用いられる周知の三相交流式誘導電動モータである。電力変換部84には、発電機81にて発電された交流電力を直流電力に変換する発電用インバータや当該発電用インバータで変換された直流電力をモータ82に適した交流電力に変換するコンバータなどのパワーエレクトロニクス機器が含まれている。このパワーエレクトロニクス機器を適切に制御するための制御アルゴリズムを内部に構築しているメイン電子ユニット100からの指令に基づいて、電機制御ユニット85は、電力変換部84に制御信号を与える。
【0055】
エンジン制御ユニット86は、メイン電子ユニット100からの指令に基づいて、エンジン80に対する燃料供給量を変更することによりエンジン80の出力(回転数及びトルク)を制御する。エンジン回転数を検出するエンジン回転センサS2からの信号は、この実施形態では車両状態検出ユニット90を介してエンジン制御ユニット86またはメイン電子ユニット100あるいはその両方に送られる。もちろん、エンジン回転センサS2からの信号は、その他の信号も含めて、車両状態検出ユニット90を介さずに直接送られてもよい。
【0056】
このコンバインでは、発電機81とモータ82との間の給電ラインには、バッテリ(大型コンデンサを含む)が備えられていないので、モータ82は発電機81によって生み出された電力を直接利用する。このため、エンジン停止は、直接発電機81の停止、結果的にはモータ82の停止を導くので、不用意なエンジン停止が発生しないように、省エネとエンジン負荷との両者をバランスよく考慮して、エンジン制御を実行する必要がある。この実施形態では、エンジン制御は、エンジン制御ユニット86によって電子ガバナー方式で制御される。エンジン制御ユニット86は、エンジン80の負荷が増加するにつれてエンジン回転数をわずかに減少させていくドループ制御と、エンジン80の負荷にかかわらずエンジン回転数を一定に維持しようとするアイソクロナス制御のいずれかでエンジン80を制御することが可能である。
【0057】
作業装置制御ユニット87は、メイン電子ユニット100からの指令に基づいて、エンジン80の回転動力をそのまま利用するエンジン駆動作業装置W1及びモータ82の回転動力を利用するモータ駆動作業装置W2に組み込まれたクラッチ操作機器や油圧シリンダなどの動作機器に制御信号を与える。車両状態検出ユニット90は、各種スイッチやセンサから入力される信号に対して、必要に応じて変換処理等の前処理を施し、メイン電子ユニット100に転送する。
【0058】
メイン電子ユニット100は、エンジン制御ユニット86、電機制御ユニット85、作業装置制御ユニット87、車両状態検出ユニット90などの他のECUと車載LANを通じて接続されている。なお、このメイン電子ユニット100だけでなく、他のECUも含め、その構成は、説明目的のためにわかりやすく区分けされている。したがって、実際においては、各ECUは適当に統合化されてもよいし、適当に分割化されてもよい。この実施形態では、メイン電子ユニット100は、ハードウエア及びソフトウエア(コンピュータプログラム)によって、特に本発明に関係するものとして、エンジン管理モジュール110、電機管理モジュール120、車両管理モジュール130などを構築している。
【0059】
エンジン管理モジュール110は、他の管理モジュールと相互連携し、エンジン80の出力を調整するために、エンジン制御ユニット86に種々のエンジン制御指令を送る。電機管理モジュール120も、他の管理モジュールと相互連携し、電力変換部84を介して発電機81とモータ82とが適切に駆動されるように、電機制御ユニット85に電機機器制御指令を送る。車両管理モジュール130は、エンジン制御ユニット86、電機制御ユニット85、作業装置制御ユニット87、車両状態検出ユニット90から送られてくる情報(信号・データ)に基づいて、このコンバインの走行状態や作業状態を確認して管理する。
【0060】
図7の車両管理モジュール130には、車両状態決定部13aと速度状態決定部13bとが構築されている。車両状態決定部13aは、車両状態検出ユニット90から取得した各種の状態検出信号に基づいて、左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bの駆動状態及び、刈取処理部3や脱穀装置4や穀粒排出装置37などの農作業装置Wの駆動状態を決定する。速度状態決定部13bは、車両状態検出ユニット90から取得した車速に関する各種状態検出信号、あるいは電機管理モジュール120や電機制御ユニット85で取り扱われているモータ82に対する回転数の指令情報などに基づいて車速を示す速度状態を決定する。
【0061】
メイン電子ユニット100の電機管理モジュール120と電機制御ユニット85とによるモータ82の制御について具体的に説明する。
【0062】
運転者によって操作される主変速レバー66の前後方向のストローク操作位置は、速度設定用信号としてストロークセンサS4によって検出され、メイン電子ユニット100に送られる。同様に、運転者によって操作される操作レバー61の左右方向の傾斜角は、機体2の旋回(操向)を示す旋回度算定用信号として旋回レバーセンサS3によって検出され、メイン電子ユニット100に送られる。電機管理モジュール120は、主変速レバー66と操作レバー61との操作位置に基づいて、つまりストロークセンサS4及び旋回レバーセンサS3からの検出信号に基づいて、モータ82の回転数、結果的には左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとの駆動速度を制御するための指令を電機制御ユニット85に与える。
【0063】
電機制御ユニット85は、電機管理モジュール120からの指令に基づいて、電力変換部84に含まれているインバータやコンバータなどのパワーエレクトロニクス機器を制御する。その際、三相(u相,v相,w相)の各相に設けられているスイッチングトランジスタをオンオフ制御することで発電機81及びモータ82の出力を変更調整する。
【0064】
本発明では、この電機管理モジュール120によるモータ82の制御では、モータ82の出力トルクは、発電機81の発電負荷が許容負荷を超えないように牽制される。このトルク牽制制御のアルゴリズムには、
図1を用いて説明された基本原理が採用されている。このため、電機管理モジュール120には、本発明に特に関係する機能部として、モータ回転数設定部12cとモータ消費可能動力算定部12dとトルク牽制値算定部12fとがコンピュータプログラムで構築されている。
【0065】
モータ回転数設定部12cは、主変速レバー66と操作レバー61との操作位置に基づいて、モータ82の制御目標回転数となるモータ指令回転数を算定して、電機制御ユニット85に出力する。モータ指令回転数の算定は、主変速レバーの操作位置からモータ指令回転数を導出するモータ指令回転数制御マップが用いられる。なお、この実施形態では、操作レバー61の操作位置によって設定される旋回によってモータ指令回転数を調整しているので、モータ指令回転数制御マップは主変速レバーの操作位置及び操作レバー61の操作位置を入力パラメータとする多次元マップが用いられるとよい。あるいは、主変速レバーの操作位置からモータ指令回転数を導出するモータ指令回転数制御マップを操作レバー61の操作位置によって変更される構成を採用してもよい。
【0066】
モータ消費可能動力算定部12dは、エンジン回転センサS2の検出信号から算定された実際のエンジン回転数に基づいて、発電機81の発電負荷が許容負荷を超えない範囲で、モータ82が利用可能な動力をモータ消費可能動力として算定する。トルク牽制値算定部12fは、モータ消費可能動力算定部12dで算定されたモータ消費可能動力と、モータ回転数設定部12cで算定されたモータ指令回転数とから算定したトルク値を、モータ制御におけるトルク牽制値を算定する。算定されたトルク牽制値は、電機制御ユニット85に与えられ、モータ82に対するモータ制御に利用される。
【0067】
この実施形態では、トルク牽制値を算定するために、上述したEモードとGモードの両方が実装され、それぞれで得られたトルク牽制値の小さい方が選択されるように構成されている。両モードにおける、モータ回転数設定部12cとモータ消費可能動力算定部12dとトルク牽制値算定部12fの機能は、
図1を用いて説明した通りであるが、ここでは、その説明に用いられた式を、実施例の1つとして具体的に示す。なお、この実施例は、エンジン80として、定格出力21KWで2800rpmのエンジンが使用されている。
【0068】
Eモードで、エンジン出力値:E0-outを求める式は、
E0-out=E(RE-RPM)
=85[Nm]×RE-RPM[rpm]×2π/60[W]
であるが、これはエンジン回転数が1850[rpm]未満の時に用いられ、エンジン回転数が1850[rpm]以上では、16500[W]の固定値とする。
さらに、モータ消費可能動力:M-outを求める式は、
M-out=K(E0-out)
=(E0-out−L)×η
であり、ここで、Lは損失動力で3000[W]とし、ηは総合効率で85[%]である。
トルク牽制値:T-limitを求める式は、モータ回転数設定部12cで算定されたモータ指令回転数をMC-RPMとすると、
T-limit=F(MC-RPM,M-out)
=M-out/( MC-RPM×2π/60)
である。
【0069】
Gモードでは、発電出力値:G0-outを求める式は、
G0-out=G(RE-RPM)
=78[Nm]×RE-RPM[rpm]×2π/60[W]
である。
モータ消費可能動力:M-outを求める式は、
M-out=J(G0-out)
=G0-out×η
である。
トルク牽制値:T-limitは、Eモードと同様に、
T-limit=F(MC-RPM,M-out)
=M-out/( MC-RPM×2π/60)
である。
【0070】
このコンバインは、バッテリレスのシリアルハイブリッド車両であり、バッテリからの電力で車両を走行させることはできないので、通常は、定常的に回転しているエンジンによって発電している発電機からの電力で駆動するモータによって走行する。したがって、エンジン80の過負荷などで停止することを避けなければならないが、必要以上の出力でエンジン80を運転することは燃費の悪化を導く。このことから、エンジン管理モジュール110は、エンジン負荷を考慮して、適切にエンジン80の運転を管理する。エンジン管理モジュール110に構築された負荷推定部11dは、車両状態決定部13aによって決定された左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bの駆動状態及び農作業装置Wの駆動状態から推定されるエンジン負荷も推定負荷として算定する。その際、左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bの速度差から推定されるエンジン負荷も考慮される。同様にエンジン管理モジュール110に構築されたエンジン指令回転数算定部11bは、負荷推定部11dによって算定された推定負荷に基づいてエンジン指令回転数を算定するとともに当該エンジン指令回転数に基づくエンジン制御指令をエンジン制御ユニット86に出力する。
【0071】
この負荷推定部11dとエンジン制御ユニット86とによる、エンジン負荷に応じたエンジン回転数制御(パワーオンデマンド制御)の簡単なアルゴリズムの具体例の1つを、
図8を用いて、説明する。この具体例では、負荷推定部11dとエンジン制御ユニット86とは一体的に動作するが、まず、車両状態決定部13aからの上方に基づいて、エンジン負荷に影響を与える運転モードとして、次の8つのモードを規定する。
(1)停止モード:作業も走行も行われていない。
(2)刈取り作業前後+直進モード:刈取作業に入る直前の所定時間、または刈取作業が終了した後の所定時間で、機体2は直進している。
(3)刈取り作業前後+旋回モード:刈取作業に入る直前の所定時間、または刈取作業が終了した後の所定時間で、機体2は旋回している(左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとの速度が異なっている)。
(4)刈取り作業中+直進モード:刈取作業中で、機体2は直進している。
(5)刈取り作業中+旋回モード:刈取作業中で、機体2は旋回している。
(6)路上走行+直進モード:副変速装置54を高速段にしての走行で、機体2は直進している。
(7)路上走行+旋回モード:副変速装置54を高速段にしての走行で、機体2は旋回している。
(8)穀粒排出モード:穀粒排出装置37を用いて穀粒タンク5から穀粒を排出している。
エンジン制御ユニット86は、上記運転モードに応じてエンジン指令回転数を算定する。この実施形態では、
図8で模式的に示されたようなエンジン性能曲線が規定されているので、これに基づいたエンジン指令回転数が算定される。このエンジン80の最大出力が18.5KWで、最高回転数が2500rpmであり、
図8で模式的に示されたエンジン制御特性は、3つの線で表されている。つまり、高負荷時には高回転数Nh(例えば、2500rpmより少し低い回転数)が設定され、中負荷時には中回転数Nm(例えば、2000rpmより少し低い回転数)が設定され、低負荷時には低回転数Nl(例えば、1500rpmより少し高い低回転数)が設定され、ドループ制御される。またこのエンジン80のアイドリング回転数は1000rpmより少し高い回転数となっている。
このことから、実際的には、
(1)停止モードでは、アイドリング回転数が設定され、
(2)刈取り作業前後+直進モードでは、アイドリング回転数から低回転数までの領域が設定され、
(3)刈取り作業前後+旋回モードでは、高回転数よりやや低い回転数が設定され、
(4)刈取り作業中+直進モードでは、低回転数から最高回転数までの領域が設定され、
(5)刈取り作業中+旋回モードでは、最高回転数が設定され、
(6)路上走行+直進モードでは、低回転数から中回転数までの領域が設定され、
(7)路上走行+旋回モードでは、最高回転数が設定され、
(8)穀粒排出モードでは、アイドリング回転数よりやや高い回転数が設定される。
【0072】
従来のシリーズハイブリッドでは、エンジンの高効率運転による省エネを図るため、負荷にかかわらず最高回転数に設定していたが、低負荷でも最高回転数が設定されることになるので、低負荷が続く場合には、省エネが不充分となる。また、負荷変動に合わせて、常にエンジン回転数の設定を調整する場合、負荷が細かく変動する状況では、エンジンのふかしが繰り返されるという、省エネや騒音に関する不都合が生じる。このようなことを考慮し、上記の具体例では、高負荷で高回転数、中負荷で宙回転数、低負荷で低回転数というように負荷に応じてエンジン回転数を設定している。その際、刈取り作業中+旋回モード及び路上走行+旋回モードは最も大きな負荷が生じる運転状態なので最大回転数が設定されている。
【0073】
コンバインには、上述した、刈取処理部3を昇降揺動させる油圧シリンダCY(
図2参照)や横スクリューコンベア41を昇降揺動させる油圧シリンダ42(
図2参照)以外にも、種々の油圧シリンダSLが装備されており、それらに油圧を供給するための油圧回路が
図9に示されている。油圧源としての油圧ポンプP1は、この実施形態ではエンジン80によって駆動される。省エネのために小出力のエンジン80が使用されているので、この油圧回路では、できるだけ油圧ポンプP1が無駄な動力を消費しないように、以下に示すような工夫がなされている。
【0074】
油圧ポンプP1は、刈取昇降弁V4を介して油圧シリンダCYと連結している。油圧ポンプP1と刈取昇降弁V4とは油路R1で接続され、刈取昇降弁V4と油圧シリンダCYとは油路R2で接続されている。油路R2にはパイロットチェック弁V2が介装され、油路R1にはシーケンス弁V7と、リリーフ弁V9が介装されている。刈取昇降弁V4は、システム減圧弁V8によって減圧されたパイロット圧を有するパイロット油路PRに設けられた、刈取下降ソレノイド弁V5と刈取上昇ソレノイド弁V6とによってパイロット圧制御される。パイロットチェック弁V2は、シーケンス弁V7とシャトルチェック弁V3とによってパイロット圧制御される。油路R1からシーケンス弁V7によって油路R3が分岐しており、油路R3によって供給される油圧によって、油圧シリンダ42やその他の油圧シリンダSLが駆動する。
【0075】
油路R3から分岐してリリーフ弁V9の排油側とつながる油路R4にアンロード弁V11が介装さている。このアンロード弁V11は、システムソレノイド弁V12からのパイロット圧によって制御される。システムソレノイド弁V12は、デューティ制御されるように構成されている。このシステムソレノイド弁V12をデューティ制御することで、アンロード弁V11を所定の開度に制御することができ、この油圧回路の駆動圧を最適に調整することができる。つまり、従来では、アンロード弁V11を単純に閉鎖し、リリーフ弁V9で規定される駆動圧を維持しているので、この油圧回路の駆動圧は常に一定となり、機種によって要求される駆動圧が異なる場合、無駄が生じる。このような無駄は、システムソレノイド弁V12のデューティ制御によって、アンロード弁V11の通過流量を最適化することで、解消することができる。
【0076】
また、この油圧回路を、各油圧シリンダSY,42、SLのサブ油圧回路として区分けし、デューティ制御されるシステムソレノイド弁V12とアンロード弁V11とを用いて区分けされたサブ油圧回路毎に必要最小限の駆動圧が得られるような構成を採用してもよい。あるいは、油圧シリンダSY,42、SLうちの複数の組み合わせからサブ油圧回路を構成して、サブ油圧回路を必要最小限の駆動圧とする制御を採用してもよい。
〔別実施形態〕
【0077】
(1)上述した実施形態では走行装置1は左クローラ走行体1aと右クローラ走行体1bとから構成されていたが、車輪とクローラ走行体の複合構成、あるいは車輪のみの構成を採用してもよい。
(2)第3操作具56及び第2操作具57は、運転者によって操作される操作レバーと当該操作レバーの操作変位を検出するセンサとから構成してもよい。
(3)上述した実施形態では、エンジン指令回転数は、負荷推定部11dの負荷に基づいてエンジン指令回転数算定部11bで算定された。しかしながら、電機管理モジュール120によるモータ指令回転数の算定にもモータ負荷、結果的にはエンジン負荷がされていることから、エンジン指令回転数算定部11bがこのモータ指令回転数からエンジン指令回転数を導出するようにしてもよい。その際には、エンジン管理モジュール110と電機管理モジュール120を一体化すると好都合である。