【実施例】
【0124】
本発明を以下の実施例でさらに定義する。実施例は、本発明の好ましい実施態様を示唆しながら、例証としてのみ提供されることを理解すべきである。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を見極め得て、その精神と範囲を逸脱することなく本発明に様々な変更と修正を加えて、それを様々な用途と条件に適応させ得る。
【0125】
一般方法
略語の意味は次の通り。「kb」はキロベースを意味し、「bp」は塩基対を意味し、「nt」はヌクレオチドを意味し、「hr」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「sec」は秒を意味し、「d」は日を意味し、「L」はリットルを意味し、「ml」または「mL」はミリリットルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「pmol」はピコモルを意味し、「Cm」はクロラムフェニコールを意味し、「Cm
r」はクロラムフェニコール耐性を意味し、「Cm
s」はクロラムフェニコール感受性を意味し、「Sp
r」はスペクチノマイシン耐性を意味し、「Sp
s」はスペクチノマイシン感受性を意味し、「XI」はキシロースイソメラーゼであり、「XK」はキシルロキナーゼであり、「TAL」はトランスアルドラーゼであり、「TKT」はトランスケトラーゼであり、「RM」は10g/Lの酵母抽出物プラス2g/LのKH
2PO
4を含有する富栄養培地を意味し、「MM」は10g/Lの酵母抽出物、5g/Lのトリプトン、2.5g/Lの(NH
4)
2SO
4、および0.2g/LのKH
2PO
4を含有する交配培地を意味する。
【0126】
実施例で使用する標準組み換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野でよく知られており、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.およびManiatis,T.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989年)(下文において「Maniatis」);およびSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.およびEnquist,L.W.,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984年);およびAusubel,F.M.ら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceによる出版,Hoboken,NJ(1987年)に記載されている。
【0127】
実施例1
キメラキシロースイソメラーゼ遺伝子の構築および二重交叉自殺ベクターのアセンブリー ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)への組み込みおよび発現のために、アクチノプラネス・ミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)(AMxylA)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(LBxylA)、および大腸菌(Escherichia coli)(ECxylA)からのキシロースイソメラーゼのコード領域のコンストラクトを作成した。コード配列は、GenScriptCorporation(Piscataway,NJ)によって、Z.モビリス(Z.mobilis)ZM4のコドンバイアスに従ってZ.モビリス(Z.mobilis)中の発現のために最適され、合成された。それぞれEcoRV部位でpUC57にクローンされ、プラスミドpUC57−AMxylA(コドン最適化AMxylAコーディング領域:配列番号308)、pUC57−LBxylA(コドン最適化LBxylAコーディング領域:配列番号309)、およびpUC57−ECxylA(コドン最適化ECxylAコーディング領域:配列番号310)として提供された。最適化xylAコード配列は、天然キシロースイソメラーゼ(XI)をコードする。
【0128】
Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(P
gap;配列番号311)からの305bpのプロモーターと、大腸菌(E.coli)L−リブロース5リン酸4−エピメラーゼ遺伝子(araD3’UTR;配列番号312)からの166bpのターミネーターとの連結によって、xylAコード配列をP
gap−xylA−araD3’UTR構造があるキメラ遺伝子に構築した。この目的で、P
gapおよびaraD3’UTR重複断片をPCRによって合成した。1つのPCR反応は、50μLのAccuPrime Pfx SuperMix(Invitrogen,Carlsbad,CA)、テンプレート(配列番号313)としての1μLの40ng/μL pARA354、および1μLの10μM順方向および逆方向プライマーからなった。プラスミドpARA354(配列番号313)は、参照によって本明細書に援用する、同一譲受人同時係属米国特許出願第12/796025号明細書に記載され、それはpBS SK(+)ベクターであり、大腸菌(E.coli)からのaraB、araA、およびaraD(それぞれタンパク質L−リブロースキナーゼ、L−アラビノースイソメラーゼ、およびL−リブロース−5−リン酸−4−エピメラーゼをコードする)のコード領域に隣接するP
gapプロモーターであるP
gap−araBADオペロンを含む。オペロンは、araDコーディング領域に対して3’である3’非翻訳領域(UTR)を含む。pARA354については、下でさらに記載される。反応は、エッペンドルフMastercycler(Hemburg,Germany)上で、30サイクルの95℃で30秒間の変性/58℃で30秒間のアニーリング(araD3’UTRでは56℃)/68℃で2分間の伸長のホットスタートPCRプログラムに従って実施された。
【0129】
プライマーara98およびara120(配列番号314および315)は、P
gap−AM重複断片を生成する。プライマーara98およびara121(配列番号314および316)は、P
gap−EC重複断片を生成する。プライマーara98およびara122(配列番号314および317)は、P
gap−LB重複断片を生成する。305bpのP
gap配列に加えて、3つのP
gap重複PCR断片は全て、StuIおよびSpeI部位を付加する17bpの5’配列と、プライマー中に提供されるそれらの対応xylAコード配列の最初の22ヌクレオチドに一致する22bpの3’配列を含んだ。
【0130】
プライマーara96およびara97(配列番号318および319)は、210bpのaraD3’UTR重複断片を生成した。それは166bpのaraD3’UTRの他に、XbaI部位が末端にある24bpの5’配列、およびEcoRI、HindII、およびFseI部位を提供する20bpの3’配列を含んだ。同様のPCRもまた実施されてxylA重複断片が合成されたが、アニーリング温度は55℃に低下された。これらの反応では、プライマーara114およびara115(配列番号320および321)を使用して、1,229bpのAMxylA重複断片がpUC57−AMxylAから増幅された。プライマーara116およびara117(配列番号322および323)を使用して、1,367bpのECxylA重複断片がpUC57−ECxylAから増幅された。プライマーara118およびara119(配列番号324および325)を使用して、1,394bpのLBxylA重複断片がpUC57−LBxylAから増幅された。全てのxylA重複断片は、P
gapの最後の18ヌクレオチドと一致する18bpの5’配列、XbaI部位を提供してaraD3’UTRの最初の18ヌクレオチドに一致する24bpの3’配列、ならびにその間のxylAコード配列を有する。P
gap、araD3’UTR、およびxylA重複断片は、5μLの各PCRサンプルをアガロースゲル上で泳動し、次にQIAquick PCR精製キット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して精製して確認された。
【0131】
重複断片は、重複PCRによって共に結合された。第1の重複PCRは、以下のようにして、50μLのAccuPrime Pfx SuperMix、1μLの20ng/μL P
gap重複断片、2μLの10ng/μL対応xylA重複断片、および1μLの10μM順方向および逆方向プライマーを含むように構築された。反応は、30サイクルの95℃で30秒間の変性/55℃で30秒間のアニーリング/68℃で2分間の伸長のホットスタートPCRプログラムに従って実施された。その結果、プライマーara98およびara115(配列番号314および321)を使用して、P
gap−AMおよびAMxylA断片からP
gap−AMxylA断片が合成され;プライマーara98およびara117(配列番号314および323)を使用して、P
gap−ECおよびECxylA断片からP
gap−ECxylA断片が合成され;プライマーara98およびara119(配列番号314および325)を使用して、P
gap−LBおよびLBxylA断片からP
gap−LBxylA断片が合成された。これらのP
gap−xylA断片は、5μLの各PCRサンプルをアガロースゲル上で泳動し、次にQIAquick PCR精製キットを使用して精製して確認された。
【0132】
第2の重複PCRを上と同様に構築した。それは、50μLのAccuPrime PfxSuperMix、1μLの20ng/μL araD3’UTR重複断片、2μLの10ng/μL P
gap−xylA断片、1μLの10μMプライマーara97(配列番号319)、および1μLの10μMプライマーara98(配列番号318)を含んだ。反応は、30サイクルの95℃で30秒間の変性/56℃で30秒間のアニーリング/68℃で2.5分間の伸長で実施された。得られたPCR産物の5μLをアガロースゲル上で検査した。P
gap−AMxylAおよびP
gap−LBxylAを含有する反応は、それぞれ1,714bpのキメラAMxylAオペロン断片(P
gap−AMxylA−araD3’UTR)および1,879bpのキメラLBxylAオペロン断片(P
gap−LBxylA−araD3’UTR)を生成した。双方のキメラ遺伝子断片中で、最初の17ヌクレオチドがStuIおよびSpeI部位を提供するのに対し、最後の35ヌクレオチドはFesI、HindIII、およびEcoI部位を含有する。P
gap−ECxylAを含有するPCR反応は、キメラECxylA断片(P
gap−ECxylA−araD3’UTR)を生成できなかった。
【0133】
AMxylAおよびLBxylAを含有するキメラ遺伝子は、同一譲受人同時係属米国特許出願第12/796025号明細書に記載されるpARA354(配列番号313)と称される二重交叉(DCO)ベクターに、それぞれライゲートされた。pARA354は、pBS SK(+)誘導プラスミド(Bluescriptプラスミド;Stratagene)であり、pBSベクターはザイモモナス(Zymomonas)中で自己複製できないので自殺ベクターとして使用され、上述したようなP
gap−araBADオペロンと、DCO相同的組換え断片を含有して、ザイモモナス(Zymomonas)ゲノムのldhA遺伝子座中への境界のある断片(bounded fragment)の組み込みを誘導する。Z.モビリス(Z.mobilis)DNAをテンプレートとして使用し、DCO、LDH−L、およびLDH−Rのための2つのldhA DNA断片をPCRによって合成した。反応はAccuPrime Mixを使用して、標準PCR手順に従った。LDH−L DNA断片は、順方向プライマーara20(配列番号326)および逆方向プライマーara21(配列番号327)を使用して合成された。得られた生成物は、ldhAコード領域に対して5’の配列、およびldhAコード領域のヌクレオチド1〜493を含む895bpのDNA断片であり、5’SacI部位および3’SpeI部位があった(配列番号328)。LDH−R DNA断片は、順方向プライマーara22(配列番号329)および逆方向プライマーara23(配列番号330)を使用して合成された。得られた生成物は、ldhAコード領域のヌクレオチド494〜996、およびldhAコード領域に対して3’の配列を含む1169bpの断片であり、5’EcoRI部位および3’NotI部位があった(配列番号331)。LDH−LおよびLDH−Rは、それぞれldhAコード配列の最初の493塩基対と残りの503塩基対を含有したので、交叉型組み換えによって、ヌクレオチド#493と#494の間でZ.モビリス(Z.mobilis)のldhAコード配列にDNA断片を直接挿入するために、pARA354がデザインされた。
【0134】
pARA354は大腸菌(E.coli)中のプラスミド増殖のためのf1(+)originと、アンピシリン耐性遺伝子とを有する。これに加えて、pARA354中のLDH−LおよびLDH−R相同的組換え断片の間には、野性型LoxP部位(LoxPw−aadA−LoxPw断片;配列番号307)およびP
gap−araBADオペロンと境を接する(スペクチノマイシン耐性のための)aadAマーカーがある。
【0135】
AMxylAおよびLBxylAキメラ遺伝子を含有するPCR断片をそれぞれSpeIおよびEcoRIで消化して、アガロースゲル電気泳動を実施し、QIAquickゲル精製キット(Qiagen)を使用して精製した。同時に、pARA354もまたSpeIおよびEcoRIで消化して、P
gaparaBADオペロンを脱落させた。アガロースゲル電気泳動によってEcoRI−pARA354−SpeIプラスミド主鎖(6,023bp)を単離し、QIAquickゲル精製キットを使用して精製した。キメラAMxylAおよびLBxylA遺伝子は、5μLの消化AMxylAまたはLBxylAキメラ遺伝子断片、2μLの消化pARA354主鎖、3μLの5×リガーゼ緩衝液、および1μLのT4 DNAリガーゼ(Invitrogen)を含む15μLの標準連結反応中で、それぞれpARA354主鎖に構築され、7,714bpのDCOプラスミドpARA355および7,879bpのDCOプラスミドpARA356がそれぞれもたらされた。双方のプラスミドをDH5α大腸菌(E.coli)細胞中で増殖させて、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen)を使用して調製した。
【0136】
DCOベクター中でキメラECxylA遺伝子を構築するために、第1の重複PCR中で生成されたP
gap−ECxylA重複断片をSpeIおよびXbaIで消化してアガロースゲル電気泳動を実施し、QIAquickゲル精製キットを使用して精製した。同時に、pARA355をSpecIおよびXbaIで消化した。XbaI−pARA355−SpeIプラスミド主鎖(6,220bp)をアガロースゲル電気泳動によって単離し、QIAquickゲル精製キットを使用して精製した。5μLの消化P
gap−ECxylA断片および2μLの消化pARA355主鎖断片を含む、上述したような15μL標準連結反応中で、P
gap−ECxylA断片をpARA355主鎖に組み立てた。得られた7,852bpのDCOプラスミドpARA357をDH5α大腸菌(E.coli)細胞中で増殖させて、QIAprep Spin Miniprepキットを使用して調製した。
【0137】
実施例2
キメラAMxylA、LBxylA、およびECxylA遺伝子のザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ZW641株への組み込み
ZW641株を使用して、キシロース利用ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)中における、A.ミズーリエンシス(A.missouriensis)、L.ブレビス(L.brevis)または大腸菌(E.coli)XIの発現の効果をアッセイした。ZW641株の調製は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,741,119号明細書の実施例1に記載される。その中に記載されるX13L3株は、後にZW641と改称された。ZW641は、クロラムフェニコール耐性選択可能マーカーと共に、2つのオペロンP
gapxylABおよびP
gaptaltktをザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)をZW1(ATCC#31821)ゲノムに逐次組み込むことで、調製された。キシロース含有培地中で成長させることで、形質転換体をキシロース利用にさらに適応させた。
【0138】
ZW641中で、組み込まれたP
gapxylABおよびP
gaptaltktオペロン、xylA、xylB、tal、およびtktコード領域は大腸菌(E.coli)遺伝子からのものであった。ZW641は、キシロース代謝に必要な4つの遺伝子を全て有したが、キシロース利用は最適でない。したがってZW641中のキシロース利用のバックグラウンドレベルは、さらなるXI遺伝子の発現によって潜在的に改善され得る。
【0139】
種細胞をMRM3G5(1%の酵母抽出物、15mMのKH
2PO
4、4mMのMgSO
4、および50g/Lのグルコース)中で、150rpmで振盪しながら30℃で一晩、OD
600値が5に近くなるまで成長させて、ZW641−1A株(ZW641分離株)のコンピテント細胞を調製した。OD
600値は、島津UV−1200分光光度計(日本国京都市)を使用して測定した。細胞を収集して、新鮮培地に0.05のOD
600値に再懸濁した。初期から中期対数期(0.5に近いOD
600)と同一条件下で、細胞を培養した。細胞を収集して、氷冷水で2回、次に氷冷10%グリセロールで1回洗浄した。得られたコンピテント細胞を収集し、氷冷10%グリセロールにOD
600値100近くに再懸濁した。Z.モビリス(Z.mobilis)の形質転換には、非メチル化DNAが必要であるため、DCOプラスミドpARA355、pARA356、およびpARA357を大腸菌(E.coli)SCS110コンピテント細胞(Stratagene,La Jolla,CA)にそれぞれ形質転換した。各形質転換では、1個の形質転換細胞コロニーを10mLのLB−Amp100(100mg/Lアンピシリンを含有するLBブロス)中で一晩37℃で培養した。QIAprep Spin DNA Miniprepキット(Qiagen)を使用して、10mLの培養物からDNAを調製した。
【0140】
1MM電気穿孔キュベット(VWR,West Chester,PA)内で、およそ1μgの非メチル化プラスミドDNAを50μLのZW641−1Aコンピテント細胞と混合した。BT720 Transporater Plus(BTX−Genetronics,San Diego,CA)を使用して、プラスミドDNAを2.0KVで細胞中に電気穿孔した。1mLのMMG5培地(10g/Lのグルコース、10g/Lの酵母抽出物、5g/Lのトリプトン、2.5g/Lの(NH
4)
2SO
4、2g/LのK
2HPO
4、および1mMのMgSO
4)中で、4時間にわたり30℃で形質転換細胞を回収し、嫌気ジャー内でAnaeroPack(MitsubishiGasChemical,NewYork,NY)と共に、MMG5−Spec250プレート(250mg/Lのスペクチノマイシンおよび15g/Lの寒天添加MMG5)上で3日間にわたり30℃で培養した。各形質転換で、約20個のスペクチノマイシン耐性コロニーが得られた。これらのコロニーは新鮮MMG5−Spec250プレート上に画線塗抹され、上述したのと同一条件下でのそれらの成長は、キメラxylA遺伝子/Spec−RコンストラクトがZW641のゲノムに組み込まれたことを示唆した。組み込みはPCRによって分析した。1つの反応は、25μLのPCR SuperMix(Invitrogen)、(下で指定されるような)0.5μLの10μM順方向プライマーおよび逆方向プライマー、およびコロニーからの少量のZ.モビリス(Z.mobilis)細胞を含んだ。反応は、エッペンドルフMastercycler上で、35サイクルの94℃で45秒間の変性/55℃で45秒間のアニーリング/72℃で1.5分間の伸長のハードスタートPCRプログラムに従って実施された。5μLをアガロースゲル上で泳動して、反応を検査した。ara46およびara43プライマー(配列番号332および333)を第1の検査で使用すると、1,521bpのPCR産物がほとんどのコロニーから増幅された。この生成物は、プラスミド中のSpec−RマーカーのaadAコーディング領域から、LDH−R断片下流のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノム配列に及び、LDH−R断片によって媒介される組み込み事象が実証される。第2の検査中で、順方向−逆方向プライマー対が、ara45−ara120(配列番号334および315)、ara45−ara122(配列番号334および317)、およびara45−ara121(配列番号334および316)である場合、1,289bpのPCR産物が、ZW641−ara355、ZW641−ara356、およびZW641−ara357のコロニーからそれぞれ増幅された。これらの生成物は、LDH−L断片上流のZ.モビリス(Z.mobilis)ゲノム配列から、pARA355中のAMxylA、pARA356中のLBxylA、またはpARA357中のECxylAに及ぶ。これらは、LDH−L断片によって媒介される組み込み事象を実証した。したがって、PCRの証拠は、キメラxylAオペロン/Spec−RコンストラクトがZW641−1Aのゲノムに組み込まれたことを立証した。pARA355、pARA356、およびpARA357で形質転換されたZW641−1A細胞は、それぞれZW641−ara355、ZW641−ara356、およびZW641−ara357と命名された。
【0141】
実施例3
ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ZW641株中のAMxylA、LBxylA、およびECxylA発現の特性解析
ZW641は、低レベルで発現される天然大腸菌(E.coli)xylAコーディング領域のコピーを有する。ZW641株−ara355、ZW641−ara356、およびZW641−ara357は、コドン最適化xylAコーディング領域、すなわちAMxylA、LBxylA、およびECxylAの追加的コピーをそれぞれ含有する。株について、キシロース中におけるキシロース利用、エタノール産生、および成長の改善をアッセイした。
【0142】
キシロース含有培地中におけるこれらの新しい株の成長を調べ、それらを親株ZW641−1A株と比較するために、先の実施例に記載されるMMG5−Spec250プレートからのZW641−ara355、ZW641−ara356、およびZW641−ara357のそれぞれの2つの株(#1および#2)をMMX5プレート上に再度画線塗抹した(グルコースをキシロースで置き換えたこと以外は同一培地)。ZW641もまた、対照としてプレート上に画線塗抹した。プレート上の細胞は、嫌気ジャー内でAnaeroPackと共に30℃で6日間培養した。3組の新しい株の全てで成長が観察されたが、ZW641対照では観察されなかった。AMxylAの追加的なコピーを含有する、ZW641−ara355の#1および#2株は、キシロース培地上で、ZW641−ara356およびZW641−ara357株よりも顕著により高い成長を示した。
【0143】
キシロース中の成長を定量的に測定するために、これらの7株に96時間成長アッセイを実施した。アッセイでは、各株からの細胞を30℃の150rpm振盪機内において、3mLのMRM3G5中で一晩培養した。細胞を収集して、MRM3X10(MRM3G5と同一であるが、50g/Lグルコースを100g/Lキシロースで置き換えた)で洗浄し、MRM3X10に再懸濁して出発OD
600値を0.1近くにした。25mLの懸濁液を50mLねじ蓋付きVWR遠心管に入れて150rpmで振盪しながら30℃で96時間にわたって培養した。時間経過中、0、4、24、48、72、および96時間目にOD
600値を測定した。
図4に成長曲線としてプロットされた結果は、xylAの第2のコピーが、キシロース含有培地中における遺伝子改変株の成長を実際改善することを示す。xylAの第2のコピーを含有する株間で比較すると、ZW641−ara355は、ZW641−ara357よりも顕著により早く成長した。それは96時間の成長後に、ZW641−ara357のほぼ2倍の細胞密度を有した。この結果は、AMxylAによってコードされるキシロースイソメラーゼが、ECxylAによってコードされるキシロースイソメラーゼよりもはるかに良好に機能し得ることを示す。ZW641−ara356は、ZW641−ara357と同様にまたはわずかにより遅く成長し、LBxylAによってコードされるキシロースイソメラーゼが、ECxylAによってコードされるキシロースイソメラーゼよりも良好に機能し得ないことを示唆する。
【0144】
時間経過中、ZW641、ZW641−ara355−1、ZW641−ara356−2、およびZW641−ara357−2培養物の1mLのサンプルを72時間目に収集した。それらを10,000×gで遠心分離して、細胞を除去した。0.22μmのCostar Spin−X遠心管フィルターを通して上清を濾過し、Agilent 1100 HPLCシステム上で、0.01NのH
2SO
4と共に、55℃速度0.6mL/分でBioRad Aminex HPX−A7Hイオン排除カラムを通過させて分析し、エタノールおよびキシロース濃度を判定した。表5に示す結果は、ZW641における基底レベルのキシロース利用およびエタノール産生と比較して、ZW641−ara355中のAMxylAがキシロース消費を顕著に促進し、エタノール産生を3.5倍以上増大させたことを示す。ZW641−ara357中のECxylAが、キシロース代謝およびエタノール産生をわずかに増大させたのに対し、ZW641−ara356中のLBxylAはキシロース利用の最も小さい増大を提供し、エタノール産生に検出可能な変化を引き起こさなかった。これらの結果は、以前の成長の観察と一致し、株間の成長の差違が、キシロースイソメラーゼ活性の差違から帰結してもよい、キシロース代謝の差違によって引き起こされたことを示唆する。
【0145】
【表11】
【0146】
AMxylA、LBxylA、およびECxylAによってコードされるキシロースイソメラーゼ酵素が、異なる活性を有するかどうかを判定するために、ZW641、ZW641−ara355−1、ZW641−ara356−2、およびZW641−ara357−2を30℃の150rpm振盪機上において、MRM3G5中で一晩培養した。細胞を10,000×gの遠心分離によって2mLの培養物から収集し、氷冷タンパク質抽出緩衝液(10mMのトリエタノールアミン塩酸塩、pH8.0、10mMのMgSO
4、1mMのDTT、および5%のグリセロール)で洗浄して、500μLの氷冷タンパク質抽出緩衝液に再懸濁し、マイクロプレートホーン付きMisonix超音波処理器4000(Qsonica,Newtown,CT)を使用して、設定7で3分間の超音波処理に3回曝露させた。10,000×gの遠心分離によって、細胞残骸を除去した。上清をタンパク質抽出物として保存した。クーマシープラスタンパク質アッセイ試薬(Pierce,Rockford,IL)を使用してそれらのタンパク質濃度を測定し、キシロースイソメラーゼ活性は修正システイン−カルバゾール法によって測定した。100μLのシステイン−カルバゾールアッセイ反応は、10mMのトリエタノールアミン塩酸塩緩衝液、pH7.0、10mMのMgSO
4、25mMのD−キシロース、および30μgの抽出タンパク質を含有した。32℃で15分間の培養後、25μlの50%トリクロロ酢酸の添加によって反応を停止した。次に、3mlの氷冷75%硫酸、100μlの2.4%システイン塩酸塩溶液、および100μlの0.12%カルバゾールエタノール溶液を逐次反応に添加した。混合物を室温に10分間保った。OD
540値を島津UV−1200分光光度計上で測定した。D−キシルロース濃度対OD
540値の標準曲線に基づいて、対応するD−キシルロース濃度を判定した。標準曲線は、様々な量のD−キシルロースを含有するがD−キシロースおよびタンパク質は含有しない、システイン−カルバゾールアッセイを実行して開発された。最終的に、1単位のキシロースイソメラーゼ酵素は、反応中で1マイクロモルのD−キシルロースを生じるのに必要な活性として定義された。比活性度は、タンパク質1ミリグラムあたりの単位として計算した。アッセイでは、タンパク質なしのブランク反応中で、D−キシロースのバックグラウンドOD
540を測定した。活性計算に先だって、このバックグラウンドを最初のOD
540読み取りから差し引いた。各アッセイを3回繰り返した。システイン−カルバゾールアッセイの結果は
図5にグラフ表示され、ZW641、ZW641−ara355−1、ZW641−ara356−2、およびZW641−ara357−2のタンパク質抽出物中のキシロースイソメラーゼの比活性が示される。各活性バーは3つの平行反応の平均に相当し、標準偏差はそれらに基づいて計算される。この結果はZW641中のxylAの第2のコピーの発現が、追加的なキシロースイソメラーゼ活性を細胞に導入することを実証する。ZW641−ara355中のAMxylA、ZW641−ara356中のLBxylA、およびZW641−ara357中のECxylAは、XI活性をそれぞれおよそ20倍、3倍、および4倍に増大させた。これらの3つのxylA遺伝子は同一アプローチによってZW641中で構築されたので、細胞抽出物中のキシロースイソメラーゼ比活性の差違は、A.ミズーリエンシス(A.missouriensis) からのキシロースイソメラーゼが、L.ブレビス(L.brevis)および大腸菌(E.coli)からのキシロースイソメラーゼよりもはるかに良好に機能することを提案する。事実上、A.ミズーリエンシス(A.missouriensis)XIは約2.3の比活性を提示し、これはL.ブレビス(L.brevis)XIの6倍、大腸菌(E.coli)XIの5倍である。したがって、細胞成長、キシロース代謝、およびXI活性を調べることで、本実施例は、キシロース利用Z.モビリス(Z.mobilis)株中のキシロース利用を改善する優れたキシロースイソメラーゼとして、A.ミズーリエンシス(A.missouriensis)XIを同定した。
【0147】
実施例4
キシロースイソメラーゼ酵素の構造的解析
キシロースイソメラーゼ(XI)活性を有することが知られているシード配列セットを最初に同定することで、潜在的キシロースイソメラーゼである、利用できるタンパク質配列のコレクションを作成した。シード配列は、高信頼度機能注解を有するタンパク質配列を含有する、SWISSPROTデータベースからのキシロースイソメラーゼとして取得した。SWISSPROT(Swiss Institute of Bioinformatics)から取得された180個のXIシード配列、配列番号2、24、32、34、42、54、66、68、78、96、100、106、108、122、126、128、130、132、135、137、142、および148〜306があった。次に、BLASTのblastallラッパー中の1群の複数クエリー配列として、これらのシード配列を使用してNCBI(National Center for Biotechnology Information, Bethesda,MD)非重複性(nr)包括的タンパク質データベースを検索した。合計444配列が、XI活性タンパク質の配列空間として記載し得るセットを形成すると同定された。
【0148】
配列同一性に基づくクラスター形成、および(PHYLIP(Phylogeny Inference Package)バージョン3.5cに実装されるような(Felsenstein(1989) Cladistics 5:164−166)PHYLIP近隣結合アルゴリズムを使用した分子系統学的解析は、上で作成されたXI活性のための配列空間が、
図2に示されるようなI群およびII群と称される2群に分離されることを示した。I群セットは、82個の配列(2〜130の偶数および131〜147の配列番号)からなり、その内21個がシードであった(配列番号2、24、32、34、42、54、66、68、78、96、100、106、108、122、126、128、130、132、135、137、および142)。同様に、I群セットは351個のメンバーからなり、その内159個がシードであった(配列番号148〜306)。
図2に示されるように、L.ブレビス(L.brevis)および大腸菌(E.coli)XIタンパク質がII群に属するのに対し、A.ミズーリエンシス(A.missouriensis)XIタンパク質はI群に属する。
【0149】
系統学的グループの形成に際しては、以下のプロセスに従った。
444個のXI配列から出発する:
ステップ1 70%同一性群を確立する:
444個の配列からの最長配列を第1のマスターと称した。第1のマスターと70%以上の配列同一性を有する444個の配列のその他の配列をグループ分けして、第1のref70クラスター(A)を形成した。残りの配列から、最長配列を第2のマスターに指定して使用し、同様に第2のref70クラスターを作り出した(B)。全ての配列がクラスターに入るまで、分類過程を継続した。クラスターのいくつかは、単集合であった。
【0150】
ステップ2 70%閾値でのマージ:
クラスターAとBの全ての対で、Aの配列の3分の1が70%以上の配列同一性でBの配列に関連している場合、そして逆の場合も、クラスターAとBをマージさせた。70%の一致度の閾値を使用してマージし得る対がなくなるまで、この過程を継続した。
【0151】
ステップ3 50%閾値でのマージ:
ステップ2と同一過程に従ったが、50%の配列一致度の閾値を使用した。
【0152】
ステップ4 30%閾値でのマージ:
ステップ2と同一過程に従ったが、30%の配列一致度の閾値を使用した。
【0153】
I群は、50%の一致度の閾値クラスターに相当する。II群は、別個の50%の一致度の閾値クラスターに相当する。
【0154】
50%の同一性の閾値で、どちらの群ともクラスターしなかったため、I群またはII群に明白に割り当てられなかった11個の配列があった。
【0155】
図3は、特定の属が標識されたI群XIの系統樹を示す。I群は、アルスロバクター(Arthrobacter)、ストレプトミセス(Streptomyces)、サーマス(Thermus)、サーモバキュラム(Thermobaculum)、ヘルペトシフォン(Herpetosiphon)、アシドバクテリア(Acidobacteria)、ロゼイフレクサス(Roseiflexus)、メイオサーマス(Meiothermus)、デイノコッカス(Deinococcus)、メイオサーマス(Meiothermus)、スタッケブランドチア(Stackebrandtia)、クリベラ(Kribbella)、キシラニモナス(Xylanimonas)、ノカルジオプシス(Nocardiopsis)、カテヌリスポラ(Catenulispora)、ストレプトスポランギウム(Streptosporangium)、ゲオデルマトフィルス(Geodermatophilus)、アクチノシネマ(Actinosynnema)、サッカロモノスポラ(Saccharomonospora)、アシドサーマス(Acidothermus)、サーモビフィダ(Thermobifida)、ノカルジオイデス(Nocardioides)、ジャニバクター(Janibacter)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、レイフソニア(Leifsonia)、クラビバクター(Clavibacter)、ミクロモノスポラ(Micromonospora)、サリニスポラ(Salinispora)、セルロモナス(Cellulomonas)、ジョネシア(Jonesia)、ナカムレラ(Nakamurella)、アクチノミセス(Actinomyces)、モビルンカス(Mobiluncus)、ブラキバクテリウム(Brachybacterium)、ボイテンベルギア(Beutenbergia)、フランキア(Frankia)、およびアクチノバクテリウム(Actinobacterium)からのXIタンパク質を含む。
【0156】
I群とII群を区別する:
方法1
GroupSim分析(Capra and Singh(2008)Bioinformatics 24:1473−1480)によって、I群メンバーとII群メンバーの区別を実施した。GroupSim法は、タンパク質の機能的特異性を決定するアミノ酸残基を同定する。その配列が複数群に分けられる、タンパク質ファミリーの複数配列アラインメント(MSA)において、配列の官能基を区別するアミノ酸残基を同定し得る。方法は、複数配列アラインメント(MSA)を採用し、公知の特異性分類を入力して、MSA中の各アミノ酸位置にスコアを割り当てる。より高いスコアは、アミノ酸位置が特異性決定位置(SDP)であるより大きな可能性を示唆する。
【0157】
上の系統学的解析によってI群とII群に分けられたXI配列のMSA上で実施されたGroupSim分析は、高度に判別的な位置を同定した。表6に列挙されるのは、0.9以上のスコアを有する位置(Pos)であり、1.0の完全スコアは、群内の全てのタンパク質が指定位置で列挙されるアミノ酸を有し、群間ではアミノ酸が常に異なることを示す。「残基」の列は、I群タンパク質とII群タンパク質中の位置(縦線|で区切られる)で対比させて、一文字コードでアミノ酸を示す。2列目のアミノ酸位置番号は、アクチノプラネス・ミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)からのXIである代表的I群タンパク質P12581のものである。3列目のアミノ酸位置番号は、XIサーモアナエロバクテリウム・サーモスルフリゲネス(Thermoanaerobacterium thermosulfurigenes)(配列番号267)である代表的II群タンパク質P19148のものである。
【0158】
【表12】
【0159】
I群とII群を区別する:
方法2
酵素のキシロースイソメラーゼファミリー群の代案の構造/機能特性解析は、HMMER(Janelia Farm Research Campus,Ashburn,VA)から入手できる利用者用ガイドに従って、HMMERソフトウェアパッケージを使用して実施された(プロファイルHMMの背後にある理論は、R.Durbin,S.Eddy,A.Krogh,and G.Mitchison,Biological sequence analysis:probabilistic models of proteins and nucleic acids,Cambridge University Press,1998;Krogh et al.,1994;J.Mol.Biol.235:1501−1531に記載される)。
【0160】
I群中の21個のシード配列(配列番号2、24、32、34、42、54、66、68、78、96、100、106、108、122、126、128、130、132、135、137、および142)の多配列アラインメントを使用して、I群メンバーを表すためのプロファイル隠れマルコフモデル(HMM)を作成した。利用者用ガイドに述べられるように、プロファイルHMMは多配列アラインメントの統計学的モデルである。それらは、配列比較の各カラムがどの程度保存されているか、そして各位置でどのアミノ酸残基が現れる見込みが高いかに関する、位置特異的情報を捕捉する。したがってHMMは、形式的確率論的基準を有する。PFAMデータベース(Janelia Farm Research Campus,Ashburn,VA)において、多数のタンパク質ファミリーのためのプロファイルHMMが公的に入手可能である。
【0161】
プロファイルHMMは以下のように構築された:
ステップ1.配列アラインメントを構築する
Clustal Wをデフォルトパラメータで使用して、I群中の21個のシード配列(高信頼度注釈がある配列)を配列比較した。
ステップ2.プロファイルHMMを構築する
整合配列セット上で、デフォルトパラメータを使用してhmmbuildプログラムを実行した。hmmbuildは複数配列アラインメントファイルを読み取って、新しいプロファイルHMMを構築し、プロファイルHMMをファイルに保存する。このプログラムを使用して、上述のシード配列セットのために、多重アラインメントから未較正プロファイルを作成した。
【0162】
HMMERソフトウェアの利用者用ガイドに基づく以下の情報は、hmmbuildプログラムがプロファイルHMMを作成する方法のいくらかの説明を与える。プロファイルHMMは、例えば挿入および欠失を含むギャップありアラインメントをモデル化でき、それはソフトウェアが(単なる小さなギャップなしモチーフでなく)完全保存ドメインを記述できるようにする。挿入および欠失は、挿入(I)状態および欠失(D)状態を使用してモデル化される。ギャップ文字が特定割合xを上回る全てのカラムは、挿入カラムとして割り当てられる。デフォルトで、xは0.5に設定される。各一致状態は、それに関連付けられているIおよびD状態を有する。HMMERでは、配列比較中の同一コンセンサス位置にある1群の3つの状態(M/D/I)を「ノード」と称する。これらの状態は、状態遷移確率と称される矢印で相互連結される。MおよびI状態がエミッターであるのに対し、D状態はサイレントである。遷移は、各ノードで、M状態が使用され(そして残基が整列されスコアされる)、またはD状態が使用される(そして整列される残基はなく、欠失ギャップ文字「−」がもたらされる)ように、アレンジされる。挿入はノード間で起きて、I状態は自己遷移を有して、コンセンサスカラムの間で、1つまたは複数の挿入残基が発生できるようにする。
【0163】
一致状態(すなわち一致状態エミッションスコア)にある、または挿入状態(すなわち挿入状態エミッションスコア)にある残基のスコアは、Log_2(p_x)/(null_x)に比例する。p_xは、プロファイルHMMに準じた、配列比較における特定位置のアミノ酸残基の確率であり、Null_xはNullモデルに準じた確率である。Nullモデルは、SWISSPROTリリース24のアミノ酸分布から誘導された、20個の各アミノ酸の事前に計算されたエミッション確率セットを有する単純な1状態確率モデルである。
【0164】
状態遷移スコアは対数オッズパラメータとしても計算され、Log_2(t_x)に比例する。_xは、エミッターまたは非エミッター状態に遷移する確率である。
【0165】
ステップ3.プロファイルHMMを較正する
プロファイル(使用される合成配列のデフォルト数は5,000である)を有する多数の合成ランダム配列をスコアするhmmcalibrateを使用して、プロファイルHMMを読み取り、これらのスコアに対するヒストグラムに極値分布(EVD)を適合させ、この時点でEVDパラメータを含むHMMファイルを再度保存する。タンパク質配列データベースに対してプロファイルを検索する際に、これらのEVDパラメータ(μおよびλ)を使用して、ビットスコアのE値が計算される。hmmcalibrateは、HMMファイル中の「EVD」と標識された行に、2つのパラメータを書き出す。これらのパラメータは、SWISS−PROTとほぼ同じ長さおよび残基組成の無作為に生成された配列に対して計算されたスコアのヒストグラムに最も適合する、極値分布(EVD)のμ(位置)およびλ(尺度)パラメータである。この較正を各プロファイルHMMに対して1回行った。
【0166】
I群セットの較正プロファイルHMMは、I群プロファイルHMMエクセルチャートとして、添付の表1に提供される。プロファイルHMMは、アミノ酸配列の各位置に現れる各アミノ酸の確率を与える、チャート内に提供される。最高確率は、各位置で強調表示される。表7は、I群プロファイルHMMの数行を示す。
【0167】
【表13】
【0168】
各位置の1行目は、一致エミッションスコア、すなわち各アミノ酸がその状態にある確率を報告する(最高スコアが強調表示される)。2行目は挿入エミッションスコアを報告し、3行目は状態遷移スコア、すなわちM→M、M→I、M→D;I→M、I→I;D→M、D→D;B→M;M→Eを報告する。表7はI群プロファイルHMM中で、メチオニンが最高確率で第1の位置に存在する、4620の確率を有することを示す。
【0169】
ステップ4.構築したプロファイルHMMの特異性および感度を試験する
Zパラメータを10億に設定したhmmsearchを使用して、II群からI群メンバーを識別する能力について、I群プロファイルHMMを評価した。hmmsearchプログラムは、I群プロファイルHMMのためのhmmファイル、および双方の群からの全配列を取って、各配列にE値スコアを割り当てる。このE値スコアはプロファイルHMMの適合の尺度であり、スコアが低いほどより良く適合する。得られたスコア割り当て一覧は、添付中で表2として提供される。最悪得点のI群メンバー(2.2e−181)と最良得点のII群メンバー(1.5e−07)の間に、E値の差違の大きなマージンがあったので、プロファイルHMMはII群メンバーからI群メンバーを明らかに区別する。
【0170】
この分析は、I群XIタンパク質のために作成されたプロファイルHMMが、I群XIタンパク質をII群から区別することを示す。I群プロファイルHMMは、A.ミズーリエンシス(A.missouriensis)XIと機能的に類似した、XIタンパク質に関連する構造を提供する。
【0171】
実施例5
1群XIのキメラP
gapS−xylA遺伝子の構築および二重交叉自殺ベクターのアセンブリー
ゲオデルマトフィルス・オブスクルス(Geodermatophilus obscurus)DSM43160(GOxylA;配列番号64)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)str.MC2155(MSxylA;配列番号10)、サリニスポラ・アレニコーラ(Salinispora arenicola)CNS−205(SAxylA;配列番号18)、およびキシラニモナス・セルシリティカ(Xylanimonas cellulosilytica)DSM15894(XCxylA;配列番号40)からのキシロースイソメラーゼは全て、実施例4に記載されるアミノ酸配列分析に基づいて、1群キシロースイソメラーゼに属する。これらのタンパク質をコードする配列(それぞれ配列番号335、336、337、および338)は、GenScript Corporation(Piscataway,NJ)によって、Z.モビリス(Z.mobilis)ZM4のコドンバイアスに従って、Z.モビリス(Z.mobilis)中での発現のためにそれぞれ最適化され、SpeIおよびXhoI部位と境を接するDNA断片として新規に合成されて、コーディング領域は変異Z.モビリス(Z.mobilis)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(P
gapS;配列番号339)に隣接する。P
gapSは、米国特許出願公開第2009−0246876号明細書で開示されるように、プロモーターからの発現を増大させる、天然プロモーター断片(P
gap)の位置116における「G」から「T」への変化の突然変異がある、改善されたP
gapである。SpeI−P
gapS−xylA−XhoI断片は、GenScript Corporation(Piscataway,NJ)によってEcoRV部位でpUC57にクローンされた。得られた中間体プラスミドは、pUC57−P
gapSGOxylA、pUC57−P
gapSMSxylA、pUC57−P
gapSSAxylA、およびpUC57−P
gapSXCxylAと称された。最適化xylAコード配列は、GOxylA(配列番号335)、MSxylA(配列番号336)、SAxylA(配列番号337)、およびXCxylA(配列番号338)である。
【0172】
一般的分子クローニング法を使用して、DCO自殺ベクターを構築した。最初に、次のようにして、プラスミドpARA356(実施例1に記載される)を改変してLBxylAとaraD3’UTR配列の間にXhoI部位を付加した。最初に、順方向プライマーara368(配列番号345)および逆方向プライマーara97(配列番号319)を使用して、pARA356からaraD3’UTR断片をPCR増幅した。ara368プライマーはaraD3’UTRの5’末端にSpeIおよびXhoI部位を付加し、ara97はaraD3’UTRの3’末端にHindIII、FseI、およびEcoRI部位を付加した。PCR産物をSpeIおよびEcoRIで消化した。pARA356中のPgap−LBxylA−araD3’UTR断片は、5’SpeI部位および3’EcoRI部位を有する。この断片をSpeIおよびEcoRIで消化にして除去し、上記のSpeI−XhoI−araD3’UTR−HindIII−FseI−HindIII−EcoRI PCR産物によって置き換えた。得られた中間体プラスミドpARA356Dは、P
gap−LBxylAがXhoI部位によって置き換えられていること以外は、pARA356と同じ配列を有する。
【0173】
上述の4つのP
gapS−xylA断片は、SpeIおよびXhoI消化に続いてpUC57ベースのプラスミドから単離され、SpeIとXhoI部位の間でXhoI−改変pARA356Dにクローンされて、P
gap−LBxylA断片を置き換えた。得られた4つのDCO自殺ベクターは、pARA356−GOxylA、pARA356−MSxylA、pARA356−SAxylA、およびpARA356−XCxylAであった。これらのベクターは、それらのキメラxylA遺伝子がP
gapSから発現されたこと以外は、pARA356と同一である。
【0174】
対照として、pARA355中のAMxylAおよびpARA357中のECxylAをそれぞれI群およびII群xylAsの代表として使用した。しかし、4つの新しい1群xylA遺伝子を発現させるのにP
gapSを用いたので、pARA355中のAMxylAおよびpARA357中のECxylAを制御するP
gapプロモーターをP
gapSに変更した。この目的で、順方向プライマーara10(配列番号340)および逆方向プライマーara401(配列番号341)を使用して、PCRによってpARA356−XCxylAから319bpのP
gapSOLE−PCR断片を合成し;順方向プライマーara402(配列番号342)および逆方向プライマーara403(配列番号343)を使用して、PCRによってpARA355から1,229bpのP
gapS−AMxylA OLE−PCR断片を合成し;順方向プライマーara402および逆方向プライマーara404(配列番号344)を使用して、PCRによってpARA357から1,367bpのP
gapS−ECxylA OLE−PCR断片を合成した。1つのPCR反応は、50μLのAccuPrime Pfx SuperMix(Invitrogen,Carlsbad,CA)、1μLの40ng/μL DNAテンプレート、および1μLの10μM順方向および逆方向プライマーからなった。反応は、エッペンドルフMastercycler(Hemburg,Germany)上で、35サイクルの94℃で1分間の変性/56℃で1分間のアニーリング/72℃で2分間の伸長のホットスタートPCRプログラムに従って実施された。P
gapSOLE−PCR断片は、P
gapS全体、5’SpeI部位、および3’開始コドンを含んだ。P
gapS−AMxylAおよびP
gapS−ECxylA OLE−PCR断片は、それぞれAMxylAおよびECxylAコード配列を含有した。それぞれP
gapSの最後の36ntと一致する36ntの5’配列と、3’XhoI部位とを有した。さらに、重複PCR(OLE−PCR)によって、SpeI−P
gapS−AMxylA−XhoIおよびSpeI−P
gapS−ECxylA−XhoI断片を合成した。PCR反応を上述したように設定したが、2つのテンプレートが含まれた。SpeI−P
gapS−AMxylA−XhoIが、順方向プライマーara10および逆方向プライマーara403を使用して、P
gapSおよびP
gapS−AMxylA OLE−PCR断片から増幅されたのに対し、SpeI−P
gapS−ECxylA−XhoIは、順方向プライマーara10および逆方向プライマーara404を使用して、P
gapSおよびP
gapS−ECxylA OLE−PCR断片から増幅された。SpeI−P
gapS−AMxylA−XhoIおよびSpeI−P
gapS−ECxylA−XhoIの双方をSpeIおよびXhoIで消化して、アガロースゲル電気泳動を実施してQIAquickゲル精製キット(Qiagen)を使用して精製した。DNA断片をSpeIとXhoI部位の間で改変pARA356(上述)にクローンして、P
gap−LBxylA断片を置き換えた。得られた2つのDCO自殺ベクターは、pARA356−AMxylAおよびpARA356−ECxylAと称された。全てのベクターをDH5α大腸菌(E.coli)細胞中で増殖させ、QIAprep Spin Miniprepキットを使用して調製した。
【0175】
実施例6
ZW641へのキメラP
gapS−xylA遺伝子の組み込みおよびそれらの発現の特性解析
本実施例は、実施例2に記載されるZW641株中のP
gapS−xylAキメラ遺伝子の組み込みおよび発現について記載し、4つの試験されたI群XIが、Z.モビリス(Z.mobilis)中でII群XIよりも実際により良く機能することを実証する。
【0176】
pARA356−AMxylA、pARA356−ECxylA、pARA356−GOxylA、pARA356−MSxylA、pARA356−SAxylA、またはpARA356−XCxylAを用いて、ZW641−1A株のコンピテント細胞を別々に作成して形質転換した。先に記載されているようにして(実施例2参照)、形質転換体をMMG5−Spec250プレート上で選択し、導入P
gapS−xylA遺伝子の組み込みについてPCRによって分析した。得られた株をZW641−ara356−AMxylA、ZW641−ara356−ECxylA、ZW641−ara356−GOxylA、ZW641−ara356−MSxylA、ZW641−ara356−ASxylA、およびZW641−ara356−XCxylA株と命名した。実施例3によって、AMxylA 1群キシロースイソメラーゼがZ.モビリス(Z.mobilis)中で高度に活性であることが実証された一方、2つの試験されたII群キシロースイソメラーゼの中でECxylAがより良い酵素であったので、これらの株の内、ZW641−ara356−AMxylAおよびZW641−ara356−ECxylAを対照株にした。
【0177】
キシロース中のこれらの6つの新しい株の成長を調べて、それらを親株ZW641−1Aと比較するために、全ての株をキシロース中で96時間振盪フラスコ発酵させた。アッセイでは、各株を3mLのMRM3G5中で150rpmで振盪しながら30℃で一晩培養した。細胞を収集して、MRM3X10(MRM3G5と同一であるが、50g/Lグルコースを100g/Lキシロースで置き換えた)で洗浄し、約0.1のOD
600でMRM3X10に再懸濁した。25mLの懸濁液を50mLねじ蓋付きVWR遠心管に入れて、150rpmで振盪しながら30℃で96時間にわたって培養した。時間経過中、0、24、48、72、および96時間目にOD
600を測定した。得られた成長曲線を
図6に示す。実施例3で分析されたZW1−ara355およびZW1−ara357株と同様に、ZW641−ara356−AMxylAは、発酵終了時にZW641−ara356−ECxylAのおよそ3倍の細胞密度に成長することが示される。ZW641−ara356−AMxylAが3.43のOD
600を有したのに対し、ZW641−ara356−ECxylAは1.18に達した。どちらの株もZW641より早く成長した。他の4つの株は、全てZW641−ara356−ECxylAよりも早く成長した。発酵終了時におけるそれらの細胞密度は、ZW641−ara356−AMxylAとZW641−ara356−ECxylAの間であった。
【0178】
各株の代謝プロファイルを測定するために、各培養物の1mLサンプルを72時間目に収集した。それらを10,000xgで遠心分離して、細胞を除去した。0.22μmのCostar Spin−X遠心管フィルターを通して上清を濾過し、Agilent 1100 HPLCシステム上で、0.01NのH
2SO
4と共に、55℃速度0.6mL/分でBioRad Aminex HPX−A7Hイオン排除カラムを通過させて分析し、エタノールおよびキシロース濃度を判定した。表8に示される結果は、より早い成長が、より高いキシロース利用とより多くのエタノール産生に相関することを示す。これらの結果は、成長の差違がXI活性の差違に起因することを示唆する。全ての株が、ZW641対照よりもより良い成長、エタノール産生、およびキシロース利用を有し、1群XIがある全ての株は、II群大腸菌(E.coli)XIがある株よりもより良く機能した。
【0179】
【表14】
【0180】
これらの6つの株が、それらの成長および代謝プロファイルに対応するXI活性レベルをそれぞれ有することをさらに立証するために、タンパク質抽出物を作成し、実施例3と同様に、タンパク質濃度およびキシロースイソメラーゼ活性についてアッセイした。活性の計算に先だって、D−キシロースのバックグラウンドOD
540を最初のOD
540読み取りから差し引いて、比活性度をタンパク質1ミリグラムあたりの単位として計算した。各アッセイを3回繰り返した。
図7は、各タンパク質抽出物中の得られた平均XI比活性を示す。絶対比活性は実施例3よりも低く、これは異なる反応条件に起因する可能性が高い。しかし相対比活性の比較は、XI活性が、株の増殖率に対応することを明らかに示す。より早い成長は、より高いXI活性によって支援され、AMxylAは最高活性を有し、ECsylAは最低活性を有する。I群XIは全てII群ECxylAよりも高い平均活性を有する。
【0181】
【表15】
【0182】
【表16】
【0183】
【表17】
【0184】
【表18】
【0185】
【表19】
【0186】
【表20】
【0187】
【表21】
【0188】
【表22】
【0189】
【表23】
【0190】
【表24】
【0191】
【表25】
【0192】
【表26】
【0193】
【表27】
【0194】
【表28】
【0195】
【表29】
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