(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記X線遮蔽されたパイプの各々は、複数の前記流出用開口を有する単一壁構造のパイプであり、前記X線遮蔽されたパイプを通って注入される前記1つ以上の異なる反応物質にX線照射の遮蔽を提供するように選択された組成と壁厚を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
(a)前記1つ以上の異なる反応物質のうち、前記X線照射空間へ直接導入される任意の反応物質が、ガス、液体、粉体などの固体、プラズマ、又はこれらの組み合わせから構成されており、
(b)前記1つ以上の異なる反応物質のうち、前記X線照射空間へ導入される前に前記原料反応物質と混合される任意の反応物質が、ガス、液体、粉体などの固体、プラズマ、又はこれらの組み合わせから構成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記X線遮蔽されたパイプアセンブリを通って注入される前記1つ以上の異なる反応物質のためのX線遮蔽は、前記X線遮蔽型中間材、及び前記内側パイプと前記外側パイプの何れかによって提供される遮蔽により生じることを特徴とする請求項25に記載の組み合わせ。
前記X線遮蔽されたパイプアセンブリは、更に、複数のX線遮蔽された注入通路を有しており、前記複数のX線遮蔽された注入通路の各々は、前記メインとなるX線遮蔽された通路から外側に向かって延在して、前記少なくとも1つの反応物質が前記X線照射空間の中に供給できるように構成されていることを特徴とする請求項24に記載の組み合わせ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書には、強力パルス型X線発生源、例えば、2009年11月19日付け米国特許公開2009/0285362 A1号及び2009年11月19日付け国際特許公報WO 2009/140697 A1(本明細書では以下「FXI特許公開」と称することにする)で使用されているフラッシュ型X線照射装置(本明細書では以下「FXI」と称する)のX線源などを使用することで化学反応を誘発させる一般的方法が開示されている。FXIについての特許公開公報はその全体が参照により本明細書に含まれる。X線の発生という文脈においては、「パルス」と言う用語は所定の継続時間のイベント、典型的には1秒以下のイベントを意味する。反応物質の全体的イオン化が伴うひとつの例においては、パルス型X線源は、反応させようとする物質の流入ストリーム内のすべての分子結合を、エネルギー的に1.2MeVまでの高エネルギーX線源を使用して、解離することにより反応環境を作出する。これにより物質は高度にイオン化される。反応性化学物質を反応環境に導入することで、イオン化した材料により望ましい反応が選択的に惹起される。反応させようとする物質のイオン化に高エネルギーX線を使用することは物質の全体的又は部分的イオン化を伴うことがある。
【0010】
本明細書全体を通して使用される「イオン」と言う用語は、「完全な」イオン化だけでなく「部分的な」イオン化も含む。「完全な」イオン化と言う用語は原子又は分子からすべての電子を取り除くことを表し、一方、「部分的」イオン化と言う用語は原子又は分子から全部より少ない数の電子を取り除くことを意味する。
【0011】
反応性化学物質は照射空間に投入する前に加えることもできるし、又は照射空間それ自体の内部に導入することもできる。本発明で請求している方法の一つの用途は、産業廃棄物の中の金属の問題解決するに際して、その金属を無害な化合物に変換することで、その問題を解決することである。一例として、六価クロムを含む原料は酸素と反応させて二酸化クロムを形成させることができ、二酸化クロムは不活性であり溶液から析出する。
【0012】
図1のRCP 11は照射空間18へ化学物質を加えるための手段、例えば、インジェクタ・パイプ・アセンブリ24を含み、装置のその領域に存在する物質を反応させることができる。これらの化学物質は反応領域へ導入する際にガス状、液状、プラズマ状、又は固体状の形態とすることができる。これらの化合物の溶解度について、化学の当業者には当然のことであろうが、注意を向ける必要がある。
【0013】
RCP 11は高電圧電源38が必要で、この電源は、カソード46に供給するためコンデンサの充電を処理できるものであるが、このカソードは大容量の電流シンクであるので、RCP 11の所望の反復速度を実現するのに十分なレベルで充電電流を提供する電源である必要がある。そのため、このような電源38は大容量低インダクタンス・コンデンサ型エネルギー貯蔵手段と、パルス形成手段を備える必要があり、約122万ボルトまでの範囲に及ぶことがある要求動作電圧を発生できなければならない。好適な電源はFXIの公開公報などの公開公報から当業者には明らかであろう。本明細書で用いられている「約」と言う用語は、当業者には理解されるように、実験における多少の変動値を考慮に入れたものである。
【0014】
本発明で請求する方法のさらなる目的は、上記で引用したFXIの公開公報で企図している修復用途の種類を超えるものであり、主要な化学物質の製造の領域にまで及ぶ。従って、本発明の方法は、各種の化学化合物の製造に使用することができる。有利なことに、反応状態を作成するためにX線放射を使用することは、多くのプロセスにおいて、既存のプロセスに比べてエネルギー効率が高い。
【0015】
1.22MeVのエネルギーでのX線は好適な最大値であり、ここで1.22MeVは約122万電子ボルトである。「約」と言う用語は、当業者には理解できるように、実験における多少の変動値を考慮したものである。この値より実質的に大きいエネルギー、より具体的には1.22MeV以上のエネルギーを使用する場合、照射を受ける物質は永久的に放射性となる可能性が高い。このことは、放射性物質を作ろうと試みる場合でない限り、大半の場合、望ましいことではない。もっと低い値も成功裏に使用することが可能である。1.22Mevの値は、最大結合エネルギーより実質的に高いものであり、この場合の最大結合エネルギーは天然に存在する最も原子量の大きな元素であるウランの場合でも115.6KeVである。
【0016】
ひとつの実施態様において、本発明で請求しようとする方法は1.22MeVを実質的に超えるエネルギーを有するX線を使用することで、超ウラン元素の組み合わせや元素変換を行うことも可能である。
【0017】
図1を参照すると、システム10を使用して例示的な方法を実施することができるが、これはX線照射を用いて化学反応を誘発させることによる。システム10はX線発生装置12を備える反応誘発型化学処理器(RCP) 11を含む。X線発生装置12は内側パイプ16の壁部分を通過する電子14を生成して高密度X線17を生成し、これがパイプ16の内部に位置する照射空間18を形成する。内側パイプ16は本明細書の以下の説明では「反応容器」と称することもある。図示した実施態様においてX線発生装置12と電子とパイプ16の壁との間の相互作用によって後に発生するX線17の両方がパイプ16内部にある照射空間18を包囲する。
【0018】
システム10は照射空間18へ2種類以上の反応物質を導入するが、これには原料反応物質20と1種類以上の他の反応物質が含まれ、これらは参照番号22aと22bで示されており(破線の箱として示されている)、他の反応物質は2種類に限定されるものではない。反応物質の完全イオン化が伴う一つの実施態様では、システム10は前述したX線17を使用して、し照射空間18内のすべての反応物質及び後続して生成された全ての中間反応物質をイオン化し、これによって選択的反応が起こるように誘発する。
【0019】
好ましくは、システム10や請求しようとする本発明を使用する他のシステムは、原料反応物質20や他の反応物質、例えば、22aと22bなどや、また後続的に生成される任意の中間反応物質についても、部分的から完全まで、X線17の線束とエネルギーの制御を介して、照射空間18内部でのイオン化程度を選択的に制御する能力を保有しており、これによって照射空間内で選択的な反応が発生するように誘発する。RCP 11のサイズに関する検討については後述する。
【0020】
本明細書で用いているように、原料を含むすべての化学物質は「反応物質」と称される。「原料物質」は、一般に当業者によって理解されるように、主たる又は出発化学物質又は反応物質で照射空間内に供給されるものである。「原料」及び「原料反応物質」と言う用語は相互に交換可能な用語であり同義語である。「反応物質」と言う用語は、当該分野で慣習となっているように、非反応性溶媒、希釈剤、担体その他を含むことも意味している。1つ以上の触媒127(
図1)はこれらの反応の促進に好適に関与しうるものである。
【0021】
RCP 11の外部表面の放射線遮蔽材は
図1では簡略化のために省略してある。こうした遮蔽材の必要性は当業者には明らかであろうし、詳細については後述する。
図1に図示してある放射線遮蔽された唯一のコンポーネントは遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24で、これについての詳細は後述する。
【0022】
反応物の同時照射と混合
照射と混合を同時に行えるようにするため、
図1のシステム10は注入及び混合操作を実行するのに必要なハードウェアを装備している。
【0023】
図1において、少なくとも1個の放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24が図示してあり、RCP 11の内径に対して小さな直径で図示してある。パイプ・アセンブリ24は連続溶接処理を用いて装着するのが望ましく、放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリは流入部28の領域で内側パイプ16の側壁を通過する。パイプ・アセンブリ24は次に望ましくはスポット溶接を用いてRCP 11の内壁に装着される。しかし、スポット溶接に代わる方法は当業者には明らかであろう。インジェクタ・パイプ・アセンブリ24はパーフォレーション状に穿孔されその全長に亘って複数の開口を含む。
【0024】
インジェクタ・パイプ・アセンブリ24の開口の目的は円筒状のRCP 11を通って流れる原料ストリーム中に反応材料の注入を行うことである。端部キャップ66bがあり(
図2)、これは遮蔽されてインジェクタ・パイプの端部を封止して前記反応に注入するため照射空間18全体に亘って好適な分布と成るように反応物質を注入するためのものである。1本以上の放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24が照射空間18に入る直前の流入部28の壁を貫通して取り付けられる。1本以上の放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24が用いられる場合、これらのアセンブリはマニホールド(図示していない)を用いてシステムの外部で相互に接続することができる。
【0025】
放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24には
図1に図示してあるように一端から反応物質を供給でき、この場合、アセンブリ24のインジェクタ・パイプは左側に図示した上流側でRCP 11に入る。又は、アセンブリ24のインジェクタ・パイプは両端から供給し(図示していない)インジェクタ・パイプ内部での静圧損失のため単一エンド型供給システムで可能な場合より高い注入率を実現することができる。アセンブリ24のインジェクタ・パイプが両端から供給される場合、すべての流入部を通ってアセンブリ24のパイプへ入る反応物質22aのフローをモニターする必要があり、望ましくは流量計30aにより、照射空間18へ注入される反応物質22aの正確な測定値を保証する必要がある。
【0026】
インジェクタ・パイプ・アセンブリ24の開口は照射空間18での最大量の乱流型混合が発生するような方向に向けるのが望ましい。これらの開口については許容可能な方向が多く存在する。方向の選択は、注入しようとする特定の反応物質と注入しようとする特定の原材料20によって決定される。インジェクタ・パイプ・アセンブリ24は、照射の開始時に化学物質が適切に混合されているようにするために、注入プロセスが照射空間18の上流側で開始されるように物理的に配設することが望ましい。注入用開口の分布は照射空間18の流入側に向かって注入率が高くなるように調節し照射空間の下流側に向かって開口数が少なくなるようにすることも出来る。
【0027】
反応物質の照射前の予備混合
反応物質20と22bの、照射空間18へ導入する前の時点での予備混合は、これらの反応物質が通常は相互に反応しない場合であって、照射空間18で発生するようなイオン化が発生しない限り、又は、標準的ではない温度、圧力、触媒条件のいずれか又は全部に置かれないのであれば、適切である。このアプローチにより、放射線遮蔽型パイプアセンブリ24を除外する結果、より単純で低コストのRCP 11が実現できる。
【0028】
反応物質20及び22bの混合が望ましい場合、当業者には容易に明らかになるように、混合弁32bを用いて適切な比率で反応物質を混合する。瞬間時の混合比は流量計30bと30cからのデータの使用で決定され、これはホストコンピュータ34へ送信されてシステムオペレータがプログラムした所望の処理条件と比較される。ホストコンピュータ34はこのデータについての計算を実行し、これを用いて制御線36b上に出力信号を生成し混合弁32bを制御する。
【0029】
個々の反応物質20、22a、又は22b、又は出力フロー40を形成するこれらの合成生成物の任意の分子は、RCP 11を通過する間に、1回以上照射を受けることになる。出力フロー40を形成する合成生成物について言えば、1回以上又は相当の長時間にわたって照射しても合成生成物の化学的性質に対する有害性はない。
【0030】
当業者には容易に理解されるように、同時混合と予備混合は、状況によって必要とされる場合、RCP 11で有利に使用することができる。
【0031】
フィードバックを用いる制御システム
大半の化学プロセス反応の場合と同様に、原料反応物20と他の反応物質22a及び22bとの間の適切な比率を維持することが必須である。混合比を制御する動的手段が望まれる場合、少なくとも以下の二つの機能を提供する制御システムであってフィードバックを用いる制御システムを含めることが好ましい:
1.原料と反応物質の正確な量の測定、及び
2.原料と反応物質との間の混合比を制御する手段。
【0032】
プロセスの制御のさらなるレベルのものはプロセスから出てくるものの化学的性質の測定によって実現できる。このステップにより、
図1に図示してある出力フロー40は、所望の化学的性質を有し何らかの望ましくない化合物が存在しないことが保証される。
【0033】
原料反応物質20と何らかの他の反応物質22a及び22bの正確な量の測定を保証するため、最も正確な流量計の使用などのような計測技術と流量計30a〜30dとして
図1に図示してある装置などの従来の流量計を使用する。これらの流量計30a〜30dの出力は、矢印で示してあるように、ホストコンピュータ34へ入力され、コンピュータがデータを分析して混合比が正確かどうかを判定する。混合比が正しくない場合、ホストコンピュータは、制御ライン36a、36bに、比率の不均衡な程度に比例した出力信号を出して、混合弁32aと32bを制御し正しい混合比を実現するようにする。
【0034】
反応物質22a用には流量計30aが、反応物質22b用には流量計30bが、さらに、原料反応物質20用には流量計30cが存在し、出力フロー40を測定する流量計30dも存在する。流量計のそれぞれは、例えば、
図1に図示してあるようにこれと連携する弁、例えば、32aや32bが含まれる。しかし、
図1に図示してあるような、出力フローを測定する流量計30dは、弁を含む必要がない。
【0035】
流量計30a〜30dは動的データを利用してリアルタイムで処理の調節ができるようにする能力があり、反応物質20、22a、また22bの流速を動的に変化させるための要件に適合することができる。
【0036】
ある種の反応は、前述した混合比が正確でない場合に、望ましくない副生成物を生成してしまう可能性がある。このような副生成物は有毒であったり、爆発性であったり、又は他の形態での危険性を有したりするため、本発明で請求している方法の好適実施態様では、出力の測定手段を含めることにより、望ましくない副生成物が形成されていないかを判定する。この測定を実行する好適な手段は化学センサー42の使用によるもので、これは、例えば、スペクトロスコープ又はクロマトグラフなどである。多くの形態のスペクトログラフ装置又はクロマトグラフ装置を本発明で請求している方法と共に使用することができる。好適な技術は質量スペクトロスコープを使用して、存在している望ましくない副生成物の量の表示を含む完全な化学分析を生成することである。この化学分析データを、前述したような流量計30a〜30dからのデータに加えてホストコンピュータ34で使用し、原料反応物質20と他の反応物質22a及び22bの比率のバランスをさらに正確に調整する。当業者には日常的であるように、出力フロー40の化学的性質を判定するための他のリアルタイム技術、又はフィードバックシステムにおける変化、を使用することができる。
【0037】
前述のタイプのフィードバックを用いる制御システムの利点には、化学センサー42を含めて、反応を制御するための冗長的な能力が含まれている。このアプローチは、制御線36aと36bに出力される訂正信号を調整して混合比において可能性のあるあらゆる過剰振幅を最小限に抑えて、出力フロー40の化学的性質の一貫性と連続性を保証するものである。さらに、制御システムは、制御ライン36aと36bの制御信号における制御ループにより生成された過剰振幅を防止して、望ましくない副生成物の潜在的に壊滅的な放出を防止する必要がある。
【0038】
本発明の方法の基本的物理学
図1を参照すると、反応誘発型化学処理器(RCP)11の基本的プロセスは、原料反応物質20の一部又は全部と他のすべての反応物質22a及び22bの全体的又は部分的なイオン化、及びこれに続いて、得られた原子核種の混合物の最低エネルギー準位への再組み換えを含む。得られた原子核種の混合物は出力フロー40を生成する。
図1を参照すると、RCP 11において、化学的反応プロセスには、例えば、原料反応物質20と他の反応性化学物質22a及び22bの全部又は一部の完全な又は部分的なイオン化が含まれている。
【0039】
放射線照射に暴露された場合、「全面的な」イオン化が生じた場合、反応性化学物質の分子結合が全部破壊され、周期律表上のすべての元素の分子結合のエネルギーより好ましくは実質的に高い光子エネルギーのため、構成原子の全部が完全にイオン化される。この実施態様では、自由原子はこの照射プロセスにより完全に又は部分的にイオン化される。自然界で見られる最大の原子番号を持つ元素はウランであり、これの最大結合エネルギーは115.6KeVである。100万電子ボルト([MeV])までのエネルギーを持つX線を用いることで、何らかの衝突がすべての結合を切断し、結合を破壊するのに必要なエネルギーに相当する量だけX線光子のエネルギーを減衰させる。こうして得られたX線光子のエネルギーは、自然界で見られる元素の何らかの原子又は分子結合のエネルギーより実質的に高いため、2次的に結合を破壊する活動に利用可能なエネルギーの実質的な量がまだ存在している。RCP 11(
図1参照)は数十万アンペアの線束(fluence)を持つX線ビームを発生することが可能であり、つまり、結合を破壊する活動に利用可能な量の光子が確保されている。この強力なビームの流れは、本発明にかかる方法で使用されている特殊カソードによるもので、本発明の発明者が米国特許第4670894号において開示しているとおりである。一度イオン化状態になってしまうと、元素構成要素は、その時点で存在している元素の混合物によって決定されたとおりにエネルギー準位が最低の分子に再構成される。1アンペア中には約6.24×10の18乗個の電子が存在しているため、RCP 11からの1回のパルスは10の23乗個を超える個数のX線光子を高度に均一で分散した状態で照射空間に導入することが出来る。
【0040】
電子がアノードを直撃すると、制動放射(Bremsstrahlung)X線放射の領域を形成する。制動放射は、ドイツ語で「破壊放射」を意味し、約23キロボルトを超える電位(ポテンシャル)の電子が突然停止又は減速された場合に発生するが、この場合はアノードに衝突することによるものである。照射空間内には非常に多数の2次電子も存在している。RCP 11のアノードの内部の中空の空間は、本明細書では「照射空間18」と呼称されているが、反応させようとする反応物質を含む。
【0041】
制動放射の光子は、アノードの内部空間で、又は照射空間で、材料の原子に衝突し、原子のK殻のイオン化電位より有意に高いエネルギーを有していることの結果として、存在するすべての原子をイオン化する。場合によっては、完全イオン化が達成される。他の場合では、所望されれば、「部分的」イオン化を制御可能に誘発させることができる。X線による原子の最初の衝突がイオン化を惹起するだけではなく、エネルギーレベルが十分である限りは、その結果放出された光子がまだイオン化していない原子と衝突することでもイオン化が惹起される。こうして得られた電子の再生カスケードにより、原子のそれぞれの電子殻が充填されるときに、光子の放出が惹起される。電子は過剰になっているので、このプロセスが非常に高速で実施されることが保証される。光子のエネルギーは、K殻結合エネルギーより実質的に高いので、前述のプロセスが反復される。
【0042】
X線光子は正確な量のエネルギーを放出し、これによって、制動放射X線光子の一つによるイオン化が可能なイベント個数が決定される。最終的に光子のエネルギーが完全イオン化を起こすには低すぎるようになるまでイオン化のイベントが多数存在しうるが、特定の化学反応においては、「部分的」イオン化で十分であることもある。イベントのこれとは別の可能性のある順序としては、光子とアノード壁の内側表面と衝突がある。X線光子が十分なエネルギーを有していれば、この衝突によっても制限放射と二次電子の解放が起こる。制限放射又は二次電子のどちらか一方が、これらの衝突する照射空間内にある原子のK殻結合エネルギーより高いエネルギーを有しているとすると、完全イオン化が起こる。
【0043】
制動放射の光子エネルギーがアノード内部の空間内にある原子をもはやイオン化することができないほど低い値にまで低下するまで、このプロセスは継続する。光子エネルギーは1.8eVまで低下することがあるが、これでも衝突する原子が水素であればまだ有効である。
【0044】
状況によっては、原料反応物質や他の反応物質の完全イオン化が望ましくない場合があり、そのときは、前述した方法を用いた部分的イオン化を使用して、ある種の特定の反応を誘発させることができる。既知の線束とエネルギーを有するX線放射の選択的応用による部分的イオン化を使用して、本発明の方法の教示を適用することにより、分子量を増加又は減少いずれかさせることができ、X線ビームの線束とエネルギーの適切な選択により、分子鎖の長さを制御可能に調節することができ、これは当業者には明らかなように、照射空間と処理量の勘案と組み合わせることでなしうる。
【0045】
所望のプロセスの要件に応じて、当業者は、原料反応物質及び1種類以上の別の反応物質の「部分的」又は「完全」イオン化のいずれかを選択的に惹起することができる。ある種の化学反応においては、「部分的」イオン化だけを行うのが適切であることがある。他の反応物質では、「完全」イオン化が要求されることがある。
【0046】
本発明の方法でも反応物質の部分的重合が可能である。これは本発明の方法を用いることにより重合を開始させ、次いで選択的に電圧、電流、波形パルス特性を制御して所望のX線エネルギースペクトル及びフラックスを実現することで、重合を停止させることが望ましい場合がある。従って、本発明の方法により、従前の公知の方法より部分的重合のプロセスにおいて、高いレベルの制御が可能になる。
【0047】
部分的重合は、強い粘度が望まれるような用途、例えば、コーティング剤などで特に望ましい。ひとつの例として、反応性モノマーを重合させてそれから得られる最終製品を形成することができるが、最終製品の一部は重合させ、他の部分は重合しないまま残しておくといったことができる。
【0048】
分子量の減少
本発明で請求している方法は、主としてパルス状X線発生源からのX線による照射によりポリマーの分子量を減少させる手段を提供する。この例としては、本発明の方法を使用してタールサンド中に存在する炭化水素分子を処理して鎖の切断による分子量の減少を行わせるようにすることが含まれる。分子量の減少、即ち分子鎖長の減少により、粘度を減少させ、容易な分離に向けた大幅な改善を可能にする。本発明の方法は、反応物質を注入する、又は照射空間18内部に、分子鎖の切断点を決定するか又は最終製品に他の望ましい特性を付与することができる触媒を配置するかのいずれか又は両方のときに好適に使用できる。低分子量分画はポリマーを可塑化させる傾向があり、残りの高分子量分画はポリマーを硬化させる傾向があるので、必ずしも均一に分子量を減少させる必要はない。分子量の分布の結果として発生する前述の特性の組み合わせは好適なものであり、これによって得られる最終製品の品質が改善される。
【0049】
選択的X線照射は、同様な大きさの分子鎖からなるポリマーのグループから、広範囲の分子量を得るために鎖切断反応のランダムな性質を用いる。分子量範囲のこの広範囲化は、このようなポリマーを最終製品にするときの処理の容易さを増加させつつ、これらの望ましい物性の大半を維持する。本発明の方法の能力を使用して分子量を減少させる価値の例としては、ポリマーを製造するために使用する有用な触媒の範囲を拡大することである。その重合速度と高効率の観点から見て望ましい触媒の多くのものは、これらが制御できず、また有用なものとするには分子量が大きすぎるポリマーを作成してしまう点で有用ではない。本発明の方法に係る照射又は同等の線束とエネルギーを有する別の照射線源でもって続いて処理することにより、分子量を所望のレベルにまで減少させることができる。
【0050】
本発明の方法を用いて反応物質を部分的にイオン化し、反応物質の分子量を最終的に減少させるか又は反応物質の分子長/分子量を制御可能な状態で増加させるかのいずれかを行うことができる。ひとつの例として、2種類の反応物質を部分的にイオン化して、これらを再結合させて反応物質の結合分子量より低い分子量を持つ結果的な最終生成物を形成する。この場合、反応物質は、原料反応物質と1種類以上の他の反応物質を表している。
【0051】
本発明で請求する方法は、1種類以上の化学物質の分子量を、中間ステップとして一時的に減少させる、又は永久的に減少させるために有利に使用できる。
【0052】
例えば、石油は高い分子密度を有することがある。石油の粘度を下げるためには、石油を連続的に加熱するのが一般的方法になっているが、このような物の粘度を減少させるには高価であり非効率な手段である。連続加熱を停止すると、石油は高粘度になる。これと対照的に、本発明の方法では、石油物質の分子量(及び粘度)を選択的に減少させることができ、石油物質は選択的に低分子量のものに永久的に変化するようになる。
【0053】
完全イオン化が要求されないような場合では、特定の選択された部分的イオン化状態を実現する意図で、X線照射ビームのエネルギーを部分的イオン化が可能なエネルギー及び線束へと減少させることができる。このような部分的イオン化状態を実現するためには、ひとつの例において、照射空間18の直径を減少させて原料反応物質と他の反応物質の実質的に全部が所望の状態にイオン化されるようにすることが必要になる。この状況において、照射空間18の全長を延長するのが望ましいことがある。
【0054】
照射空間18の直径を減少することについての前述の議論に関連して、完全イオン化される照射空間18の場合、X線照射のエネルギー(電子ボルト[eV]で)は、原料反応物質と他の反応物質の体積と平均原子番号によって支配されることが理解されるべきである。このエネルギーが十分に高ければ、そのときのX線は照射空間18の軸中心に伝搬し通過するのに十分な出力を持っていない。
【0055】
正確な量の出力を照射空間内部の特定の領域へ供給するという課題を認識し、また反応物質の一部だけをイオン化することが所望であるような場合では、照射空間18の直径を調節して、十分なエネルギーが軸中心に到達することを保証しつつ、所望のレベルを超えるイオン化が発生しないよう値が高くなり過ぎないようにすることが必要になる。このような値は当業者には容易に実現できる。
【0056】
同様に、すべての反応物質のイオン化が所望の場合に、X線光子のエネルギーが低すぎると、X線は照射空間18の軸中心に伝搬せず、原料反応物質及び他の反応物質のある部分が所望の反応を実現するには十分にイオン化されないことになる。本明細書では、所望の選択された分子状態が信頼性をもって高能率でかつ従来技術より低い環境負荷をもって実現できるところまで反応を制御するにはどうするかを教示する。
【0057】
例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリマーは、同じモノマーユニットの反復鎖又は構造を有する一方で、他のポリマーはひとつ以上のモノマーユニットの混合鎖を有している。一つの例として、本発明の方法を用いることでポリマーを選択的に部分的に重合させて、可塑剤などの添加物を使用することなく、LDPE(低密度ポリエチレン)などの硬質ポリマーの弾力性と柔軟性を増加させることができる。本発明の方法を部分的重合モードで使用する他の用途は当業者には明らかであろう。
【0058】
触媒の存在下に起こる重合反応は最大限可能な範囲まで重合が進行することは周知である。これは従来技術における重要な制限要因である。本発明の方法では、分子長の制御可能な中間的な長さの分子から成る分子鎖の製造が可能である。これは従来の触媒を用いた反応、例えば、重合に対する明らかな利点である。
【0059】
分子量の増加
本発明の方法では、従来の照射重合と幾分類似した技術を用いて、ただし本発明の方法による効率の増加を利用して、分子量を増加させることも可能である。
【0060】
処理条件及び構成
RCP 11(
図1)は本発明の方法のための好適実施態様であるが、同等の線束を有する他のX線源を使用することもできる。特定の用途に十分なビームの流れを生成することが可能であれば、使用可能なX線源の他の構成も存在する。システムが実現できる生成量はビームの流れの強度に直接比例する。
【0061】
各種の照射方式に対応するために、RCP 11のX線源は、
1.
図1に図示してあるような円筒形、
2.平面状、
3.弧状、とすることができる。
反応性化学物質(原料反応物質又は他の反応物質)は幾つかの状態のうちの1つ以上とすることができる:
1.ガス状、
2.液状、
3.固体状、
4.プラズマ状。
【0062】
反応性化学物質(即ち、反応物質)を導入するには、反応させようとする材料が照射空間に導入される前とするか、又は照射空間それ自体に導入するか、又はこれらのステップの両方とすることができる。これは化学反応と、その化学反応を行わせるために使用される反応物質とに基づいて決定される。
【0063】
反応させようとする材料は以下のいずれか又はその組み合わせである:
1.ガス状、
2.液状、
3.固体状、
4.プラズマ状。
【0064】
処理は様々な圧力下で行うことができる、例えば、
1.大気圧、
2.大気圧以下(部分的又は高真空)、
3.大気圧以上
【0065】
処理は様々な温度で行うことができる、例えば、
1.周囲の温度、
2.周囲の温度以上、又は
3.周囲の温度以下。
【0066】
反応処理の後に、得られた生成物の分離が必要になることがある。場合によっては沈殿を形成する。
【0067】
本発明にかかる方法は、触媒と制御された雰囲気のいずれか一方又は両方との関連で前述した処理条件に加えて有利に使用することができる。
【0068】
反応プロセスのための放射レベルは1.8電子ボルト[eV]と122万eVの間とする。ウランは、115.6KeVのところに自然に存在する最高の結合を有することが認識されている。しかし、もっと低いエネルギーでの結合も存在する。水素の結合エネルギーは1.892 eVである。本発明の方法にとって好適な最大動作電圧は約122万電子ボルト[MeV]に設定されている。これの理由は、わずかに高めのエネルギーの1.22 MeVでは、ペアを生成する閾値を越えることとなり、材料が放射性を帯びることになりうるためである。例えば、既存の放射性物質や放射性廃棄物の核種変換などといった幾つかの場合を除けば、これは一般に望ましくないことである。RCPの構造は、必要に応じて、100万ボルトまで及びこれを超える電圧で動作するように製造する。
【0069】
例示的な反応
例示的な反応としては、水で希釈された硫酸ナトリウムの形で実質的に相当量のナトリウムを含む廃棄物流がある。この物質を環境中に放出するのは通常違法であるから、硫酸ナトリウムを反応させて処分及び廃棄の一方又は両方に対してもっと好適な形態へと硫酸ナトリウムを変換するのが望ましい。硫酸ナトリウムが完全にイオン化されると、潜在的な問題としては、水の存在下で自由ナトリウムを放出し得るので、種々の濃度によっては爆発反応を惹起する可能性があることである。
【0070】
しかし、ひとつの実施態様において、本発明に係る方法は経済的な方法で硫酸ナトリウムを分解する安全な手段を提供することによりこの問題を解決する。この例では、1.22 MeVよりわずかに低いエネルギーレベルでのイオン化放射が提供される。これは硫酸ナトリウムを完全にイオン化するのに必要とされるよりも大きさが数桁高い。要求されるビームの流れの量は照射空間の寸法と、照射空間18からの生成量によって決定される。ビームの最小の流れは任意の瞬間にRCP 11の照射空間18の中に存在する分子の個数によって決定される。
【0071】
伝統的には、化学反応においては、温度、圧力、触媒、消費可能な反応物質のいずれか一つ又はこれらの組み合わせを用いて反応の反応速度を誘発又は増大させる。本発明に係る方法では、温度は以下の理由から無関係である。エネルギーの尺度として、電子ボルトは直接的に温度と等価である。1 MeVの光子は10億℃以上の温度と等価な温度を有する。このエネルギーレベルは、化学業界で通常使用されているような従来の加熱技術によって達成可能な任意の温度を遥かに超えているので、温度は、本発明に係る方法に鑑みると、反応速度を増加又は減少させるための要因にはならない。本発明の発明者が行った実験によって明らかになったところでは、この種のシステムにおいて、10
−2Torr(1.33パスカル)から100 psig(619,000パスカル)までの圧力範囲にわたって反応速度における何らかの有意な変化は認められなかった。
【0072】
例示的な反応では、RCP 11の照射空間18内において、X線放射は最初に硫酸ナトリウムをナトリウムと硫黄と酸素に分解し、同時に水を水素と酸素に分解する。塩素を添加すると、この混合物は以下のように希硫酸、塩化ナトリウム、水に再結合する:
2Na
2SO
4+4Cl+2H
2O>2H
2SO
4+4NaCl
この反応においては、塩化ナトリウム(NaCl)と水(H
2O)が結合し、飽和レベルを超えた量が沈殿を形成する。硫酸ナトリウムに塩素をただ混和しただけではこの反応は起こらないことに注意することが重要である。しかし、十分高いエネルギーの照射の下では、所望すれば、この反応の構成要素が完全にイオン化して再結合するので、好適な最低エネルギー状態でこのような反応を起こす。
【0073】
この反応に注入する塩素の量を制御することにより、すべてのナトリウムがこれに対応するモル量の塩素に結合される平衡に達することが可能である。過剰な塩素は有毒ガスであるため排気するのは望ましくないが、不十分な量の塩素ではナトリウム結合反応の制御が失われる結果を招来しかねない。塩化ナトリウム沈殿の生成はしたがって好ましいことである。
【0074】
上記の例では、注入される塩素の量が前述したフィードバック方式の制御システムを使用して制御可能であり、システムは化学センサー42、例えば、スペクトロスコープ又はクロマトグラフなど、塩素の自由ガスの存在を検出可能なセンサーを含むものである。塩素の自由ガスの存在は多すぎる量の塩素が注入されたことを示す。これがフィードバック・プロセッサに自由塩素が放出される点の直前まで塩素注入レベルを減少させる。これは硫酸ナトリウム溶液への塩素の最適注入比を表している。
【0075】
上述の例では、反応の最終生成物は硫酸と塩化ナトリウムで、塩化ナトリウムは一般的な食卓塩である。硫酸は廃棄物流内に存在している過剰量の水によってすぐに希釈される。濃度が許容できないレベルまで上昇するような場合、溶液を緩衝するか又は中和するかしてpHを中性まで下げる。塩化ナトリウムは、飽和溶液を形成するまで自由水と混合し、この飽和に達した点で塩化ナトリウムは溶液から析出する。
【0076】
この反応は他の多くの化学反応へと容易に応用することができるものでありここに提示した反応は単なる例示であることは当業者には明らかであろう。
【0077】
もっと複雑な反応は、中間生成物を有する反応を含め、本発明に係る方法によって等しく容易に対応出来る。これらの化学反応が起こる時間的スケールはX線照射パルスよりも実質的に短く、当該パルスの持続時間内で連続的に多数の反応を起こさせることができる。
【0078】
X線生成装置
図2は反応誘発型化学処理器(RCP)11を図示している。RCP 11は、例えば、
図1に関連して前述したような反応物質測定システム、制御システム、噴射システムと共に透過型X線源を使用する。RCP 11のX線源は電子銃を有する。
図2に図示してあるように、RCP 11は好ましく冷陰極電界放射型カソード46とグリッド48を含む。このような冷陰極電界放射線源での動作条件は、熱電子放出の発生点未満の温度である必要があり、これは華氏約1600度又は摂氏約871.1度である。摂氏約871.1度の温度以上では、冷陰極電界放射型線源は熱電子エミッタとなり、このような動作温度はX線源を動作不能にする。
【0079】
このような電子銃はパルスモードで理論的最大電流密度である約80,000アンペア/cm
2に達することがあり、最終的にX線ビームを作成するために使用される大量の電子によって作成された高い線束密度のため高い放射レベルを可能にする。具体的応用において、カソード46は理論的最大まで負荷されることはなく、むしろそれより幾らか低い値の負荷がかかる。例えば、RCP 11は典型的には0.1〜5 MeVのX線光子高エネルギーを実現可能で、典型的にはキロアンペア単位から数十メグアンペアの範囲に亘る大ビーム電流を実現できる。システムはもっと少ない電流レベルで動作可能で、これは特定の反応の線束についての要件に依存する。
【0080】
図2を参照すると、動作において、カソード46は
図1の電源38、又は電圧、電流、立ち上がり時間、パルス反復速度の要件に適合する他の何らかの電源により充電される。バイアス抵抗(図示していない)は、カソード46とグリッド48の間に接続され、電子管は通常スタンドオフ条件になる(導通しない状態になる)ようにグリッド48に電圧を発生させるために使用するものである。接地電位の制御信号がグリッド48に印加されると、グリッドはカソード46の制御を開放しカソードが放電する。次に電子14がカソード46からアノード50に向かって移動する。電子がアノード50に衝突した時点で、電子は制動放射X線放射17を発生させる。電子がアノード50に衝突すると、X線放射17と二次電子(図示していない)の混合がアノード50のX線放射表面50bから等方的に放出される。制動放射スペクトルと入射電子14の侵入深度を制御するには、アノードの厚みをカソード電圧に対して制御する。照射空間18の領域におけるアノードの厚みは、入射電子の侵入深度に対して制御され、アノード50の電子受け入れ表面50aからアノード50を通りアノード50の先にある照射空間18へ向かって放出されるエネルギーの優位性がX線照射17の態様であるようにするのが望ましい。したがって、図示してあるように、アノード50は典型的には照射空間18の領域において、
図2に図示してあるように流入部分28や流出部分29と比較して肉薄の壁部分を有し、所望の投下制動放射スペクトルに対するある程度の制御を実現するようになっている。
【0081】
カソード電圧は、カソード用の電気的に絶縁された真空フィードスルー52を介してカソードへ供給され、グリッド電圧は、グリッド用の電気的に絶縁された真空フィードスルー54を介してグリッドへ供給される。フィードスルー52と54は共に電気的に絶縁されており高真空に封止されており、また生物学的放射線遮蔽56及び筐体58の中に侵入している。
【0082】
RCP 11のグリッドを設計する際に適合していなければならない幾つかの必須条件が存在し、これは以下のようなものである:
1.グリッド−カソード間隔はグリッドの全長に亘って一定でなければならない。これは通常グリッドを高張力下に配置するか又は剛構造体で作成することによって達成される。
2.グリッドの構成要素の数は、グリッド−カソード間の領域で一定かつ均一な電場を保証できるように十分に多くしなければならない。
3.グリッド構造体にはどこにも鋭利なエッジやバリがないこと;個々の要素は丸、平坦、又はアスペクト比の高い楕円形状とすることができる。
すべてのエッジは完全に丸めておくのが望ましい。この意味では、完全に丸めてあるというのは、問題となるエッジが材料の厚みの半分に等しい半径を有するということである。これらの設計ルールの現実の実装は組み込まれるグリッドのサイズによって決定される。
【0083】
冷陰極電界放射X線源の代わりに他の放射線源を使用出来ることは当業者には明らかであろう。冷陰極電界放射X線源として構成されたRCP 11を用いる代わりとしては、複数の従来型X線源を使用して前述の冷陰極電界放射X線源を置き換えることがある。核ラジオアイソトープ線源を使用することも可能である。
【0084】
放射線遮蔽型インジェクタ・サブシステム
もう一度
図1を参照すると、注入前の反応物質22aの分子構造を維持するために、X線照射遮蔽型注入手段を提供することが必要である。これにより原料反応物質20を照射空間18へ導入する前及び反応物質22aを1種類以上の他の反応物質へ導入する前の、注入された反応物質22aの時期尚早の解離、又は時期尚早の部分的イオン化を防止する。
図1〜
図4Eに図示してあるように、遮蔽型注入手段に求められる要件は、X線遮蔽材料による同心円状パイプ60aと60bを提供することにより充足するのが望ましく、遮蔽材料は典型的には鉛又はそれ以外の原子数の大きい元素がよく、パイプ間の間隙を充填する。このようなアセンブリが
図1及び
図2で参照番号24として図示してある。パイプ60aと60bは典型的には、反応物質20、22a、22b、又は照射空間18内の放射線環境に適合性があり影響を受けないような、ステンレス鋼又は他の何らかの非反応性材料である。
【0085】
放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ24の遮蔽設計を考える際に、内側と外側のパイプ壁60aと60bにより提供されるX線の減衰を考慮するのが望ましいが、多くの場合、全体の遮蔽に対するこれらの影響はごく僅かである。
【0086】
図3は
図2のRCP 11の端面図を示したもので、複数の放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24がRCP 11の共通の中心軸の周囲に均等に配置されて照射空間18の外側領域に配置されている。
図3の略図は、RCP 11の流入部の端部を示しており、これは
図2の左側に相当する。
【0087】
図4Aから
図4Eは放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24の構造の詳細を示す。
図4Aは内側パイプ60a、外側パイプ60b、中間の遮蔽材料61にみられる一連の開口25で、インジェクタの開口インサート26が開口25に導入されている。
図4Eに図示してあるように、各インジェクタの開口インサート26は反応物質を供給するための反応物質供給用開口27である。パイプ60aと60bはステンレス鋼などの非反応性材料から形成される。反応性材料が反応を汚染することから、非反応性材料はインジェクタ・パイプ・アセンブリ24の製造に使用するべきものである。
図4Bと
図4Cを参照すると、インジェクタ開口インサート26のための開口は、両方のパイプ60aと60bを貫通し相互に対して同軸的アライメントで、穴を穿孔し、これらのパイプの開口に螺子切りする。ひとつの実施態様において、インジェクタ開口インサート26はパイプ60aと60bと同じ非反応性材料から作成するのが典型的である。インジェクタ開口インサート26は内側と外側のパイプの開口25の(
図4B)それぞれネジ切りしてある内側と外側のネジ穴25aと25bを貫通してそれぞれ導入される。インジェクタ開口インサート26を製造する好適な方法、及びインサートを内外のパイプ60aと60bの両方に対して密封する好適な方法について以下で説明する。
【0088】
図4Bに図示してあるように、内側パイプ60a上のそれぞれのネジ穴25aはピッチの細かいテーパー付きネジ山63aが設けられている。外側のパイプ60bのそれぞれのネジ穴25bにも同様のピッチの細かいネジ山63bが設けてあるが、この場合は直壁式ネジ山である。内側と外側のネジ穴25aと25bの各対がそれぞれのインジェクタ開口インサート26を受け入れる。
図4Eに図示してあるように、インジェクタ開口インサート26は外側表面上にネジ山62aと62bが形成されている。インジェクタ開口インサートのネジ山62aは内側パイプ60aのネジ山63aと嵌合し同一ピッチの直壁式ネジ山とすることができ、一方でネジ山62bは外側パイプのネジ山63bと係合し
図4Bと
図4Eに図示してあるようにテーパー付きにすることができる。
【0089】
二重ネジ式インジェクタ開口インサート26の目的はインジェクタ開口インサート26のそれぞれの雄ネジ山62aと62bがこれに対応する内外のパイプ60aと60bの雌ネジ山63aと63bを詰まらせることにより両方のパイプ60aと60bに同時に封止を作成することである。テーパー付きネジ山が好適なのは、これが実現する封止が従来のパイプのテーパー付きネジ山による封止で実現される封止と同等である(たとえば米国ナショナルパイプスレッド[NPT])ことで、一般的に配管や他のシステムで使用される。インジェクタ開口インサートの製造においては、すべての関係するネジ山についてネジ切り操作の開始点を制御することが重要である。これは最適な封止を得られるように保証することを目的としたものである。
【0090】
図4Dと
図4Eで最もよく示されているように、前述したインジェクタ開口インサート26の外側端部にあるスロットはインジェクタ開口インサート26を締め付けるためと、前述の封止を形成するためのマイナスドライバー又はスパナ・レンチ用のアクセスを提供する。トルクレンチを使用して、正確な締め付け力を用いて封止条件をさらに最適化していることを保証するのが望ましい。反応物質20、22a、22bや他のプロセス条件との適合性がある場合には、ネジ山封止材とネジ山ロック用化合物を使用することが可能である。
【0091】
図4B、
図4Eを参照すると、直壁式ネジ山62a、63b及びテーパー付きネジ山62b、63aを使用する代わりに、直壁式ネジ山とテーパー付きネジ山の他の組み合わせあるいは可変ピッチ式ネジ山を使用して内側パイプ60aと外側パイプ60b及びインジェクタ開口インサート26の間で要求される封止を提供することが可能である。ネジ山を全然使用しない方法としては、周知の技術を使用して開口インジェクタインサート26を内側パイプ及び外側パイプ60a、60bにろう付け又はハンダ付けすることが可能である。
【0092】
図2において、各々内側パイプ60aと外側パイプ60bの右手に図示してある端部は封止端部キャップ66a、66bと嵌合し、端部キャップは反応物質20、22a、22bからX線遮蔽材料61を隔離する。前述したように、X線遮蔽材料61は鉛や他の原子番号が大きい元素を含むことがある。端部キャップ66aと66bはそれぞれ内側パイプ60aと外側パイプ60bにTIG溶接するのが望ましい。ここでいうTIGとはタングステン不活性ガスの略称である。
【0093】
内側パイプ60aと外側パイプ60bをインジェクタ開口インサート26で接続してしまえば、放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24の製造の次のステップはX線遮蔽材料61を負荷することである。こうして作成されたアセンブリは垂直に配向されて、パイプ60aとパイプ60bの間の間隙空間に溶融シールド材料をゆっくりと注入し、間隙空間を完全に充填する。このプロセスの間に、パイプとインジェクタ開口インサートの2次加熱を使用し間隙空間が完全に充填されるまで溶融遮蔽材料が溶融したままの状態であるように保証するのが望ましい。また一般的に重要な鋳造プロセスで行われているように、間隙空間に低真空を適用して気泡や空胞が遮蔽材料61内部に存在しないように保証するのがさらに望ましい。振動もまた有利に使用して遮蔽材料61内部に空隙が残らないように保証することができる。
【0094】
作成されたアセンブリ24を仕上げる段階で、内側パイプ60a及び外側パイプ60bの流入部の端部に端部キャップ70(
図2)を付加し、端部キャップ70には内側パイプを貫通して通過可能になるように穴が開けてある。前述の端部キャップ70はX線遮蔽材料61をインジェクタ・アセンブリ内に封入する。
【0095】
完成した放射線遮蔽型インジェクタ・アセンブリ24はRCPアノード50(
図2)の内壁にスポット溶接するのが望ましいが、他の取り付け手段も当業者には明らかであろう。
【0096】
インジェクタ開口インサート26のサイズと位置は所望の注入パターンによって決定される。例えば、流入部からパイプ内部の距離が延伸することによる内側パイプ60aの内部圧力の減少を補償するのが望ましいことがある。このような補償はパイプの各単位長からの反応物質の更に均一な噴射を保証する。補償はパイプアセンブリ24の長さにそって流出用インジェクタインサート26によって提供され増加的に大きくなる合計面積の形を取ることができる。例えば、パイプアセンブリ24に沿った単位長あたりの流出用インジェクタインサート26の本数を増加させる、又はパイプアセンブリ24に沿った流出用インジェクタインサート26のそれぞれのサイズを増加させる、又はその両方を行うことが可能である。これ以外では、又は前述の技術に追加するものとして、パイプアセンブリ24はその両方の端部から反応物質を注入して内側パイプ60a内部の圧力減少を保証することが考えられる。これは、好ましくは、反応物質22a供給ラインに2ポートスプリッタ(図示していない)を使用する必要があり、こうすることで単一の流量計30aが有効になる。
【0097】
もう一度
図1を参照すると、放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24を経由して反応物質20、22b、22aの注入並びにX線照射パルスの印加を分散点在させるための手段を提供することが必要である。これを実現するために、
図5ではそれぞれの反応物質注入パルス72がそれぞれの各X線パルス74に先行し、注入された反応物質20、22a、22bが望ましくは完全に混和される時間がありそののちRCP 11内のX線パルス74を受けるように保証している。反応物質注入パルス72のパルス幅は調節可能で、これは双頭矢印73で示されているように、前述のプロセスを容易にしている。反応物質注入パルス72の幅は調節可能である一方で、X線パルス74の幅は固定である。
【0098】
前述したパルス幅の関連性は注入された反応物質22aの時期尚早な解離を防止する。好適実施態様では
図5に図示してあるように反応物質とX線放射のパルスをオーバーラップがないように使用して、反応物質の混和に最大限の時間をとってから、解離及び後続の所望する反応又は反応連鎖が行われるようにしている。
【0099】
直上で説明したようにX線照射パルスにおいて、X線照射は単一パルスとしてではなくX線パルスのバーストとして供給することができる。これが行われるのはRCP 11の電気的効率を増加させるためである。
【0100】
ある種の条件下においては、特に部分的イオン化を使用する場合、放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24を改変して、
図4Fに図示してあるような単一層の固体壁パイプ24aとすることができる。ここで壁厚と組成は改変したインジェクタ・パイプから照射空間18へ注入される反応物質の適切なX線遮蔽が提供されるように選択する。改変されたパイプと反応物質又は原料との間での潜在的な化学反応姓について考慮すべきである。適切な壁厚と組成の選択は当業者には明らかであろう。
【0101】
単層壁インジェクタ・パイプ24aを選択した場合、パイプアセンブリ24のインジェクタ開口インサート26はもはや必要とされない。
図4Fは壁圧31を有する単双璧インジェクタ・パイプ24の一例を示す。本例では、パイプは複数の開口37と端部キャップ33を含む。壁材料及び壁厚は注入される反応物質に対して遮蔽を提供するように選択される。単層壁インジェクタ・パイプで十分な遮蔽効果が得られない場合、中間遮蔽材料61を用いる二重壁設計24(例えば
図4Aから
図4E)を用いるべきである。
【0102】
反応物質の混和促進
図6に図示してあるように、
図1から
図4Eで参照番号24としてこれまで図示した又は
図4Fで参照番号24aとしてこれまでに図示した、放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリは、今回は参照番号71で図示される螺旋形状となっており、これは放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24又は24aと同様の構造だが、
図1、
図2、
図4Fに図示してあるような直線状ではなく螺旋形状とする点で異なったものである。螺旋形状の目的は注入される反応物質22aに螺旋状の流れを与えることである。このような螺旋状の流れにより原料反応物質20と反応物質22aの混和が促進される。他の種類の螺旋形状、例えば、螺旋状フィン(図示していない)など、原材料反応物質20及び反応物質22aと22bのいずれか一方又は両方に螺旋状の動きを付与する形状は許容可能で、当業者には容易に理解されるであろう。
【0103】
出力フロー再注入ループ
図7はシステム100を図示したもので、これは
図1のシステム10から変化したもので出力フロー再注入ループ102とこれに関連する制御ラインを含んでいる。したがって、出力フロー再注入ループ102とこれに関連する制御ラインについてのみここでは説明し、これらの追加パーツは
図1に対応する図面の残りの部分で同様なパーツより幾分太めの線で図示してあり、追加されたパーツの識別を容易にしてある。
【0104】
図7を参照すると、幾つかのプロセスにおいて、RCP 11の出力40の幾らかの部分をRCP 11の主入力104へ戻るように再循環させるのが望ましい。出力フロー再注入ループ102は最循環パイプ106を含み、これの内容は出力フロー廃棄弁108と出力フロー再注入混合弁110によって制御される。2個の弁108と110を備える理由は、隔離するため、及び再注入ループ102内の出力フロー40の幾らかが内部に停留するのを防止するためである。これらの弁108と110は通常は同期して作動して前述した対流条件を防止する。再注入ループ106は流量計112を含み、これの出力データはホストコンピュータ34へ送信される。再注入は弁110経由で主入力104を介して、又は1本又はそれ以上の放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24を介して、又はこれらの何らかの組み合わせを介してのいずれかとすることができる。前述の変更はシステム10の配管に幾らかの仔細な変更を必要とすることがあり、当該変更は当業者には容易に理解されるであろう。
【0105】
再循環ループ106はブローダウン弁114も含み、ブローダウン弁114は出力フロー廃棄弁108に対して物理的に直接隣接した位置に配置されるのが望ましい。前述したブローダウン弁114の目的は出力フロー再注入ループ102のすべての内容が綺麗に排出されるようにすることである。これは出力フロー廃棄弁108を閉じてブローダウン弁114を開き、流入用開口114a経由で適当な圧搾ガスを噴射してすべての内容を出力フロー再注入ループ102から吹き飛ばし、最後に出力フロー再注入弁110を閉じてブローダウンサイクルを完了する。ブローダウンに使用される圧搾ガスは再注入ループ106に存在しているすべての化学物質に対して非反応性であるように選択する。ブローダウンサイクル全体はホストコンピュータ34によって制御され、通常は全プロセスの完了時に行われる。
【0106】
バッチ処理
RCP 11はまたバッチ処理装置として使用することも可能で、それには、上記の連続型タイプとは対照的にRCP 11を垂直方向に配向して
図8で参照番号116として図示した方向を実現し、以下の変更を提供することによる。この構成においては、RCP 116の全体が反応容器となり、パイプ117の底部を円錐形の底板により封止し材料がRCP 116を通って流れるのを防止する。底板118は望ましくは浅い円錐形の構造を有し、排出ポート119が下向きに尖った頂点に位置してバッチ処理RCP 116の排出を促進するようにするのが望ましい。排出ポート119は通常弁122を有し、弁はシリンダとして模式的に図示してある。排出ポート119と弁122の間の接合部は、未反応材料の蓄積する空間を最小限に抑えるように設計されるのが望ましく、照射空間124の内部にあって、バッチ処理RCP 116内のすべての材料が正しく反応することを保証するようにする。バッチ処理RCP 116はまた流入用開口121からの吸引により排出することも可能である。
【0107】
放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24の流入部の端部を、
図8に図示したように、得られた反応容器の底部に有するのが好ましい。反応容器は反応物質と反応生成物が軸に沿って照射空間を通る正味の移動がないように構成する。流入経路128と130及び流出経路129は
図1で同じ参照番号を付与した経路に対応しているので、これらの経路に関連するコンポーネントの説明は
図1の上記説明に含まれている。
【0108】
RCP 116は流入部123、照射空間124、流出部125を含む。1種類以上の他の反応物質例えば、反応物質22aは参照番号130でインジェクタ・パイプ・アセンブリ24を通って流入する。
【0109】
バッチ処理RCP 116は必要に応じてバッチ間で内部表面のクリーニングが出来るようにウオッシュダウンシステム(図示していない)を備えた構成とすることができる。これは、1回以上の処理が装置の同じ部分で実行される場合に特に重要である。
【0110】
RCPのエネルギー貯蔵の強化
図9は構造自体に直接一体化されたエネルギー貯蔵コンデンサ120で強化された反応誘発型化学処理器(RCP) 11を示す。コンデンサ120はRCP 11が非常に短い時間間隔の間に照射空間18(
図1及び
図2参照)に十分な量のエネルギーを得ることが出来るように保証するために設けてある。電気が光速又はそれに近い速度、即ち、約1フィート(30.48cm)/ナノ秒で移動することを考慮すると、またこれに利用可能な時間が僅か数ナノ秒しかないことを考慮すると、エネルギー貯蔵コンデンサ120はRCP 11のX線源の電子銃に接近して配置すべきことが明らかになる。
【0111】
非常に高速でエネルギーを供給するというこの問題は、
図2及び
図5に図示してあるようにカソード46の外部表面に対して同軸のコンデンサを追加することにより、
図2のRCP 11で解決される。カソード46の外部表面はコンデンサを接続するための非常に大きな低インダクタンス手段を提供する。コンデンサ120の最初の巻回の内側表面全体が電気的、化学的、機械的に接着されカソード46と密接に電気的接触した状態になるようにする。コンデンサは要求されたキャパシタンスを提供するのに適当な直径になるまでカソード46の周囲に巻きつけられて所望量のエネルギーを貯蔵する。
【0112】
留意すべきこととして、カソード−グリッドの電極間の空間はそれ自体がコンデンサであり相当量のエネルギーを貯蔵する。カソード46とグリッド48の並置により形成される直径3インチ(75mm)の構造体は1フィート(30.48cm)あたり約200ピコファラッドを蓄電する。直径2フィート(61cm)の装置では500,000ボルトで運転した場合1フィート(30.48cm)あたり1.6ナノファラッドを蓄電することになり、カソード−グリッド電極間空間で1フィートあたり約4キロジュールを蓄電する。エネルギーは公知の公式によって決定される:
J = CV
2/2
【0113】
外部に対する生物学的放射線遮蔽
本明細書から当業者には明らかなように、本発明の方法を実施する際に適切な外部に対する生物学的放射線遮蔽56(
図2)が必要になりうる。こうした遮蔽の設計は医療用放射線施設で使用されて定評のある慣行に従うことができる。典型的には、100 KeVあたり0.25インチ(6.35mm)の鉛シールドに加えて、一般的に30%の厚さを追加する任意の安全係数が使用される。安全係数に起因する厚み付加は必要でないものの、本装置から放射される放射線レベルが常に実質的に背景放射限界以下であることを保証する。本発明で使用される装置の形状寸法は通常細長いアスペクト比の高い設計で、これはこうした設計が一般に軸上で発生する放射線の最大限の捕捉を提供する。
【0114】
当業者には明らかなように、生物学的放射線遮蔽材56は生物学的安全の目的でRCP 11(
図1)の外側全体の周囲に必要である。しかし、前述したように、本発明の各種実施態様は照射空間18(
図1)内部へ反応物質22aを導入するための1つ以上の放射線遮蔽型インジェクタ・パイプ・アセンブリ24が必要で、照射及び早期イオン化で得られたマイナスの結果からこれらの反応物質が保護されるようにする。
【0115】
一般的な実施においては、放射線遮蔽材は鉛に限定されない。広範囲の材料が放射線遮蔽材として使用されており、遮蔽材料の選択に関する標準的慣行を使用することができる。遮蔽材料として鉛を選択した場合、この材料の仕様に関する様々な国際的規制に準拠するべく周囲の環境との接触が起こらないように不浸透性の筐体内部にカプセル化する必要がある。グラスファイバーやアルミニウムなどの材料はこの用途に好適な材料である。こうしたカプセル化材料は遮蔽の外側に配置するので、放射線暴露の結果として劣化することはない。場合によっては、空間が問題にならない場合、例えば、コンクリートやセメントなどの遮蔽材料を使用可能である。これは工業及び自治体用途で使用されるような超大型システムでは最も有用である。
【0116】
連続モード
RCP 11のX線源としてはパルスモード動作が好適であるが、X線源はカソード電流負荷を定格外とすることで連続モードでの運転が可能である。パルスモードでは、カソード46は約75,000アンペア/平方センチメートルまでの電流負荷で動作可能である。連続モードでは、カソード電流負荷は約400アンペア/平方センチメートルを超えないように制限されるべきである。ここで、「電流負荷」と言う用語は実用的最大カソード電流負荷を表すもので、カソードの理論的最大負荷ではない。また、電源出力電流を変更することにより同一システムがどちらのモードでも実行可能であることに注意されたい。
【0117】
反応物質はいずれのモードでもX線発生装置のアノード50の冷却を補助できる。
【0118】
本発明の方法は多くの用途で使用可能で、以下を含むがこれに限定されない:
1.化学製品の製造、
2.環境廃棄物の無害化、
3.放射性廃棄物の処理、及び
4.化学兵器の破壊。
【0119】
本発明の方法のユニークな特徴はこれの汎用性にある。本方法は固体、液体、ガス、プラズマの組み合わせで事実上変更なしに使用可能である。補助的な材料取り扱い装置、ポンプその他が、処理しようとする材料の状態によって異なり専用のものになるだけである。これらのユニットは小型にすることができ、一方では実質的に1インチ(25.4mm)未満の内腔、他方で内径が10フィート(3メートル)以上となることがある。公称ステンレス鋼構造(他の材料も使用可能である)では工業環境に好適な高強度で堅牢な装置が可能になる。
【0120】
図面参照番号についての以下のリストは読者の利便性のために提供される。
【0121】
本発明は例示のために特定の実施態様について説明してきたが、多くの変更及び変化が当業者にはなしうるものであろう。化学反応は反応物質の全体的又は部分的イオン化を必要とするが、本明細書において「反応物質」と呼ぶものの数パーセントは反応せず、特にプロセスの最初の起動時に発生しやすいことが当業者には理解されよう。したがって特許請求の範囲は本発明の心の範囲及び精神に含まれるようなすべての修正及び変更を包含することを意図していることを理解すべきである。