【文献】
花蕾の形がイマイチ,ブログ「farm_ogawaリストラ転職農家の独り言」,2009年10月 9日,(URL:http://farm-ogawa.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-da1e.html(2015年10月20日入手))
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ブロッコリーは、カリフラワーおよびキャベツなどのアブラナ(Brassica)科の一員であり、その植物学名はアブラナ科ブラシカ属ブロッコリー(Brassica oleraceae L.var.italica)である。
【0003】
ブロッコリーは、地中海沿岸地域原産の植物であり、特にイタリアで何世紀にもわたって栽培されている。実際にはこれはローマ人がお気に入りの野菜とみなされ、彼らは最初は調理時に緑色に変わる紫色の発芽ブロッコリーを食べていた。
【0004】
その時以来、ブロッコリーは淘汰と交配によって進化し、カラブリーゼ(カラブリアの地域が起源である)などの品種または益々品質の改良された他のブロッコリー品種が得られた。
【0005】
ブロッコリーはビタミンC、K、およびA、ならびに食物繊維が高く、それはまた有力な抗がん特性を有する多様な栄養素、例えばジインドリルメタンおよび少量のセレンを含有する。一皿で30mgを超えるビタミンCが得られ、また半カップの量で52mgのビタミンCが得られる。ブロッコリー中に見出されるジインドリルメタンは、抗ウィルス、抗菌、および抗がん作用を有する自然免疫反応系の有力な調節因子であると考えられる。ブロッコリーはまた、化合物グルコラファニンを含有し、これは加工処理されて抗がん化合物スルホラファンになることができるが、ブロッコリーのこれら利点はこの野菜を10分を超えて煮沸した場合に減少する恐れがある。ブロッコリーの高摂取は侵襲性の前立腺がんのリスクを減らすことが分かっている。ブロッコリーの消費はまた、心疾患の予防に役立つことも示されている。
【0006】
ブロッコリーは一般に煮沸するか蒸されるが、生で食べることもでき、オードブル皿での生野菜として人気を得ている。煮沸はブロッコリー中の、擬似抗がん化合物のレベルを減少させることが示されているが、蒸し煮、電子レンジ調理、乳酸発酵、および炒め煮などの他の調理方法はこれらの化合物の存在を減少させず、したがってまたブロッコリーのすぐれた代替料理法を構成することが示されている。
【0007】
ブロッコリーは大部分は市場で売買され、加工せずに消費される。実際にはこの植物の食される部分は、多数の極めて小さな蕾の密集を上に有する未熟な頭状花(以下、頭部と呼ぶ)である。
【0008】
頭部は、それらが十分なサイズになり、均一な緑色の花蕾を有する成熟時に収穫される。
【0009】
ブロッコリー植物は、その頭部が密にぎっしり詰まり、できるだけ黄色っぽさが少ない均一な暗緑色を有する場合に品質が良いと見なされる。均一な頭部および花蕾の色は、ブロッコリーにおいてしばしば求められる形質である。しかしながら「緑色」の頭部の色は、頭部および花蕾の冠に到達する日光の量の結果として生じる。実際には、黄色っぽさは葉緑素の減少の結果であり(Deschene等、1991年)、植物に対する不十分な日光暴露の結果である。
【0010】
現在市販されているブロッコリー品種は頭部の部分が多くのかつ背の高い葉冠で隠れており、それが頭部の一部および花蕾の黄色っぽさ(主として収穫されたブロッコリー頭部の外側先端部の周囲、また冠の中心において個々の花蕾まで広がることもある)を引き起こす。この多量の葉はまたブロッコリー頭部の収穫の障害物である。
【0011】
世界中で栽培されている大部分の通常のブロッコリー品種は、一般に平均乃至良好な生長力、地上より上方に約40〜50cmの頭部高さ、および約60〜70cmの葉冠高さを示す。頭部の色は緑色(薄い緑色から濃い緑色まで)であり、頭部の形状は凸状、すなわち円の内面が地面の方向を向いた円形である。ブロッコリーの頭部の茎は、日光に曝されないせいで黄色またはクリーム色である。この植物の主茎は、その先端に派生的な茎を保持し、頭部を形成する凸平面(レンズ形)上に花蕾が整列している。
【0012】
ブロッコリーは、一般にヘクタール当たり約30000〜40000本の密度で植えられるが、ヘクタールあたり80000本までのより高密度で植えられる場合も見られる。しかしながら植え付け密度が高いほど頭部のサイズは小さい。
【0013】
ブロッコリー頭部の収穫は、頭部および花蕾の成熟度および均一性の適切な段階で行われる必要がある。さらに、収穫された頭部および花蕾の適切な取扱いが、感覚器官で感ずる良好な特性(質感および色)および栄養価を維持するために決定的に重要である。実際に、頭部を構成する花蕾の上端に含まれる薄い蕾は圧潰にきわめて敏感であり、花蕾および茎の質感は急速に軟らかくなり、魅力のないものになり、産物の全体の色もまたその魅力を失う恐れがある。
【0014】
植物のこの構造のためにブロッコリーの収穫は、頭部が成熟に達したときに手作業で行われる。主茎を切り取り、こうして得られた頭部を冷却し、生鮮食料品として市場で売る。この手作業による収穫は労働コストの点で高くつき、ブロッコリー生産の全労働コストの最高60%までに相当する。
【0015】
機械収穫の使用による解決策が試みられてきたが、葉の含有量およびそれらの葉内に頭部が深く埋まっていることが重要なために、ブロッコリーを収穫するためのいかなる機械設備の開発においても刈取り設備の故障が問題になる。
【0016】
ブロッコリーは、加工せずに主に新鮮な頭部として市場で売られる。しかしながら利便性に対する需要に応えるために、かつこの野菜をすぐに食べられる状態でまたはすぐに調理できる状態で消費者に提供するために、袋詰めした個別化した花蕾を求める傾向がある。
【0017】
この種のパック入りの新鮮なブロッコリー花蕾は、ブロッコリー頭部をきれいにし、次々に花蕾を切り取り、最後には食べられないブロッコリー部分を処分することを必要とせずに消費者がブロッコリーを調理することを可能にするので便利である。
【0018】
しかしながら、収穫後に個別化した花蕾を作り出すためのブロッコリー頭部の処理コストが大きな問題である。実際に、頭部を形成する花蕾の稠密度および配列、ならびにその頭部の凸状が、花蕾を手作業で切り取り整えることまたはそれらの個別化した花蕾を得るために特別に設計された設備を使用することのいずれかを必要にする。さらに現用の存在するブロッコリー品種においては頭部の処理後に得られる花蕾の均一性は、花蕾を保持する頭部の派生的な茎が同じ長さでもなく同じ幅でもないために常に満足できるとは限らず、したがって得られた花蕾のサイズおよび直径の大きな不均一性が存在する。花蕾を保持する派生的な茎の長さは均一ではなく、それがブロッコリー花蕾の不均一な取り合わせを引き起こす。
【0019】
またブロッコリーは、単独で、またはすぐに調理できる混合物の状態で他の野菜と組み合わせて、主に個別化した花蕾の形態で冷凍したまま市場で売られることがますます増えている。これらの事例ではまた、収穫の後、産物のすべての感覚器官で感ずる質を保存するためにできるだけ迅速にそのブロッコリー頭部を取り扱いまた処理する必要性が存在する。いったん収穫したらそのブロッコリー頭部を冷凍工場に運び、次いでその頭部をきれいにし、特定の装置により花蕾を切り取る。こうして得られた花蕾をそれらのサイズに従って分離し、必要とされる規格に適合しないものを通常は廃棄し、適切なサイズのものを漂白し冷凍するために残す。得られた副産物(不適切なサイズの花蕾)は、一般には例えばピューレ状にされる。しかしながらこの種の副産物の場合、冷凍に使用される等級づけされた花蕾と比べて値下がりする。
【0020】
欧州特許第1597965号明細書は、ブロッコリー植物の頭部が葉冠よりも高いこと、さらにその植物が約30cm
2を超える表面積を有する葉をその冠の25cm以内に含まないことを特徴とする機械収穫に適したブロッコリー植物を開示している。
【0021】
国際公開第2007062009号パンフレットは、離れた花蕾が上記花蕾を支える細長い派生的な茎の先端に整列している頭部を有するブロッコリー植物を開示している。
【0022】
これら両文書は、互いに影響を及ぼすか離れているかどちらかの花蕾を有するブロッコリー植物について記載しているが、これらのブロッコリー植物は、機械収穫および/または個別化した花蕾の処理に完全には適していない。確かに、欧州特許第1597965号明細書に記載のブロッコリー植物は互いに影響を及ぼす頭部の花蕾の密な配列を示すが、個別化した花蕾を容易に得るためには、得られた頭部の追加の機械的または手作業による処理がまだ必要である。
【0023】
国際公開第2007062009号パンフレットに記載のブロッコリー植物に関しては、申し立てによると花蕾は均一な緑色でありかつ個別化できるが、それらは機械的に収穫できず、まだ生鮮カット産業にとってまたは冷凍産業にとって手作業による収穫と、花蕾の分離(収穫した頭部からの花蕾の分離)と、個別化した花蕾の生産に適した植物の栽培に関連したコストの節減に寄与しないトリミングとを必要とする。
【0024】
例として、Tenderstem(登録商標)は細長い茎を有する均一な緑色のブロッコリースプラウト型を指す。これらの産物は、主要部をなす頭部の切り取り後に、それらの上端に発芽によって小さな頭部を有する複数個の派生的な茎を生成するブロッコリー植物の品種によってもたらされる。これらの派生的な茎は、同時には生長せずまた同じ速さでも生長しない。これらのスプラウトは、手でほとんど一つずつ収穫する必要があり、また数日の時間枠にわたって複数回の収穫を行う必要がある。すべてのこれら収穫の制約は、経済的視点から不利であり、この特定のブロッコリー型植物の開発に対する制限要因を構成する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、多花蕾および突出形質を示す栽培ブロッコリー植物に関する。
【0042】
用語「栽培ブロッコリー(Broccoli)植物」は、本発明の範囲内では、もはや天然の状態ではなく、人間の配慮によって、また人間が使用および/または消費するために開発されたブロッコリー植物を指すものと理解される。「栽培ブロッコリー(Broccoli)植物」はさらに、本発明の主題である形質を自然の形質としてかつ/またはそれらの自然の遺伝的性質の一部として含む場合があるそれらの野生型の種を排除するものと理解される。ブロッコリー植物は、アブラナ科ブラシカ属ブロッコリー変種(Brassica oleraceae L convar.Botrytis(L))に属する種を指し、これにはブロッコリー交配種および近交系統もまた含まれる。具体的には栽培ブロッコリー植物は、雄性不稔である植物であり、より具体的には細胞質雄性不稔(CMS)を含むブロッコリー植物である。ある特定の実施形態では栽培ブロッコリー植物は、ブロッコリー植物に悪影響を与える病気に抵抗力があり、在来種および野生種は抵抗力がない、ブロッコリー植物である。例えば、本発明の文脈における栽培ブロッコリー植物はべと病に抵抗力があることができ、あるいはブラインド・アイに抵抗力があり、またさらにこれら両方の病気に抵抗力があることができる。
【0043】
本発明の栽培ブロッコリーに関する表現「収穫可能な段階」とは、育種家によって、または栽培者によって一般に理解されるようなブロッコリー頭部の成熟段階を指す。そのような収穫可能な段階は、一般には蕾が密に配列し、まだ開花しておらず、花蕾が十分かつ均一に発育し、一様に緑色であり、地面に実質上平行な平面内に含まれる段階である。
【0044】
この収穫可能な段階での蕾の密な配列は、蕾密度によって特徴づけることができる。この密度は、平方ミリメートル当たり1蕾(1mm
-2)、より好ましくは2mm
-2、より好ましくは3mm
-2、より好ましくは4mm
-2、最も好ましくは5mm
-2であることができる。
【0045】
用語「地面に実質上平行な平面内に含まれる」とは、本発明の植物上で生長する全ての花蕾の基線が地面の高さから見てほとんど等しい距離であることを意味する。上記距離が全く同じであることは起こりそうもない。距離の実測差の範囲の変動は、地面の高さから好ましくは5cm以下、より好ましくは4cm以下、より好ましくは3cm以下、より好ましくは2cm以下、より好ましくは1cm以下、最も好ましくは0.5cm以下であるはずである。例えば本発明の植物上で生長させた場合、最も低い位置にある花蕾の基線の高さは地面の高さより45cm上方であることができ、また最も高い位置にある花蕾の基線の高さは地面の高さより50cm上方であることができる。
【0046】
したがって本発明による植物のブロッコリー頭部は、収穫可能な段階で約18cm〜約30cm、具体的には約20〜30cm、より具体的には約20〜約26cm、約20〜約24cm、約20〜約23cmの頭部直径を有する。上から見た場合、個々の植物の頭部は完全な円形ではないことが分かるはずである。したがって個々の植物の頭部直径は、上から見たときに頭部の最も幅広の点で測定される直径を意味すると解釈されるべきである。
【0047】
質量、重量、長さ、時間、または割合の値または量に言及する場合、本明細書中で使用される用語「約」は、幾つかの実施形態では規定値から±20%、幾つかの実施形態では±15%、幾つかの実施形態では±10%、また幾つかの実施形態では±5%の変動を包含することを意味する。
【0048】
収穫可能な段階は、約25000〜約50000本/ヘクタール、具体的には約30000〜約40000本/ヘクタールの密度で植え付けた場合、本発明による植物のブロッコリー頭部が、約200〜約500g、具体的には約250〜約500g、より具体的には約300〜約450g、さらに一層具体的には約300〜約400gの重量を有する段階に当たる。赤道直径で測定される花蕾サイズの点から見てこの収穫可能な段階は、約30〜約70%の花蕾について花蕾直径が約30から約60mmの間に含まれること、具体的には約40〜約60%の花蕾について花蕾直径が約30から約60mmの間に含まれることに対応する。一般にブロッコリーの収穫可能な段階は、例えばブルターニュなどの西ヨーロッパの大陸性気候の下で約30000〜約50000本/ヘクタール、具体的には約30000〜約40000本/ヘクタールの密度で植え付けた場合、植え付け後約60〜約70日、具体的には約63〜約70日に当たる。
【0049】
本発明の一実施形態では頭部直径および花蕾直径は、平均頭部直径および平均花蕾直径に対応する。平均直径は、その同じ交配種から得られる子孫植物の統計的に有意なグループの全実測直径の平均を意味するものと解釈される。この場合、前記植物は同時にかつ同一条件下で生長させる。
【0050】
本明細書中で使用される「形質」は、特性または所与の表現型、例えば病気に対する抵抗力または任意の表現型の性質を指す。形質は、優性または劣性の形で遺伝によって受け継ぐこともでき、単一遺伝子性または多遺伝子性であることもできる。
【0051】
「植物」は、任意の発育段階の任意の植物、具体的には種子植物である。
【0052】
本明細書中で使用される表現「植物部分」は、細胞、細胞培養物、花、種子、葉、根、組織、器官、花粉、小胞子、胚珠、あるいは本発明のブロッコリーの種子または植物の細胞由来の組織培養物を含む。
【0053】
表現「頭部」は、栽培ブロッコリー植物の収穫部分に当たる。それは派生的な茎に付着した花蕾の集まりを指し、これらの派生的な茎はそのブロッコリー植物の主茎の末端に配列している。頭部は主茎の一部、すなわち収穫時に切断点よりも上方にあるその部分を含む。切断点は、好ましくは土壌の高さと、最も低い枝分れした派生的な茎の間のどこか、より好ましくは最も低い枝分れした派生的な茎に近いどこかである。頭部の重量を決定する目的では切断点は、好ましくは最も低い枝分れした派生的な茎よりも下方にある。
【0054】
本明細書中で使用される表現「主茎」とは、その先端で派生的な茎が始まるブロッコリー植物の主茎または主柄を意味する。切断によってブロッコリー頭部を得るとき、それは派生的な茎が枝分かれする主茎の一部を含む。
【0055】
本明細書中で使用される表現「派生的な茎」とは、ブロッコリー植物の主茎から枝分かれする、また個々の花蕾を支える(またその一部を形成する)茎を意味する。頭部は、それらの上端に花蕾を有する複数個の派生的な茎を含む。
【0056】
「花蕾」とは、派生的な茎の上端での蕾の房を指し、それは蕾の房を支えるその派生的な茎の一部を含んでいる。花蕾の集合体が頭部の中に含まれている。花蕾は、開いていない密なブロッコリーの蕾の密度の高い房を提供する。
【0057】
本明細書中で使用される語句「形質」または「表現型形質」は、個体のゲノム、プロテオーム、および/またはメタボロームと環境の相互作用から生ずるその外観または他の検出可能な特性を指す。
【0058】
本発明の一態様においてブロッコリー植物の頭部は、葉冠内に深く配置され埋まった花蕾を有していない。これに反して花蕾は、葉冠の高さまたはそれより上方で水平面内に含まれており、こうして日光が花蕾および派生的な茎の束全体に到達することを可能にし、またこうして一様な緑色をその花蕾および派生的な茎に与える。
【0059】
用語「一様に緑色の花蕾」は、実質上黄色っぽさのない花蕾球または花蕾を指す。一様に緑色の花蕾は、ほぼ緑色またはむらなく緑色である。花蕾を記述するために使用される色分類は、王立園芸協会(Royal Horticultural Society)の色見本(RHS Color Chart)に基づいている。本発明の植物の花蕾は緑色に類別され、この色(例えば137A/B、138A/B)に関して一様である。在来のブロッコリー品種の花蕾は、「黄緑色」(例えば144B/C、149D〜150D、および154/B/C/B)に類別されるかなりの部分、多くの場合、平均して花蕾球上の個々の花蕾の少なくとも15%を有する。在来のブロッコリー品種の個々の花蕾は10%の黄色っぽさしかない。この色の差は、花蕾球から分離した後に側面から見た場合の花蕾(茎を含めた)の色に基づく。在来のブロッコリー品種の蕾球の茎もまた、多くの場合、「黄緑色」(144B/Cおよび145B/C/D)として類別される。本発明の花蕾球の派生的な茎は緑色(137A/B、138A/B/C、および139D)に類別することができる。この色の用語法は、The Royal Horticultural Society Color Chart(R.H.S.C.C)に則り、また色の記述は上記色見本中のプレート・ナンバーを指す。色の呼称、色の記述、および他の表現型の記述は、環境、季節、気候、および栽培の条件の変動に応じて規定の値および記述からそれる場合がある。カラーリファレンスが所与の場合、それらはRHS Color Chart,The Royal Horticultural Society,London(2001年版)を指す。
【0060】
「黄色っぽさ」または変色は、遮光の結果として花蕾中の黄色の蕾の存在(一般には縁における)を意味する。実質上黄色っぽさのない花蕾とは、黄色い外見を有する花蕾全体の被覆面積の割合によって測定される黄色っぽさが15%未満の花蕾を指す。黄色っぽさの存在しない花蕾とは、緑色よりも黄色の多い外見を有する花蕾全体の被覆面積の割合によって測定される黄色っぽさが約5%未満の花蕾を指す。別の態様においては花蕾球上の花蕾は、緑色よりも黄色の多い外見を有する花蕾全体の被覆面積の割合によって測定される黄色っぽさが約10%未満、または約5%未満の平均を有し、黄色っぽさは、花蕾の生長の間に、収穫時に、または収穫後の保管期間の後にいつでも測定することができる。好ましい態様においては黄色っぽさは、緑色よりも黄色の多い外見を有する花蕾全体の被覆面積の割合によって測定される収穫時の花蕾の成熟度で測定される。好ましい態様においては黄色っぽさは、花蕾球由来の花蕾の集団の平均の黄色っぽさとして測定される。好ましい態様において本発明のブロッコリー植物は、緑色よりも黄色の多い外見を有する花蕾全体の被覆面積の割合によって測定される黄色っぽさが約15%未満、または約10%未満、または約5%未満の平均を有する花蕾球を含む。
【0061】
本発明の一態様は、ブロッコリー植物の多花蕾形質である。この形質は、ブロッコリー植物の花蕾が頭部内部の水平面に配列されることを可能にする。このような性質は、最少量の処理および/または取扱いで個別化した花蕾を得ることを可能にする。事実、それら花蕾が湾曲した面内に密に配列するのではなくて水平面内にあるので、花蕾の高さより下方での1回の切り取りにより、最少の労力および最少の労働力で個別化した花蕾を得ることが可能になる。したがって個別化した花蕾を、それらの花蕾を含有する平面より下方の選ばれた高さで切り取ることによって圃場内で直接に得ることができる。別法では、別の実施形態において頭部を主茎の高さで切断することにより圃場内で収穫し、工場に運び、次いでそれらの花蕾を含有する平面の高さより下方での1回の切り取りにより個別化した花蕾を得るために後に処理することができる。本発明によるブロッコリー頭部は、個別化した花蕾を得るためのずっと簡単でかつ迅速な処理を可能にする。さらにこれらの花蕾の実質上同一平面内の配置により、これらの花蕾は、派生的な茎を含めてそれらのサイズおよび緑色に関してより均一である。これは、個別化した花蕾の生産の点でより高収率を得ることを可能にする。したがって本発明によるブロッコリー頭部は、手または機械のどちらかによる最低限の処理入力を必要とし、本発明によるブロッコリーのこのような頭部から花蕾を切り取るように設計されたいかなる特殊な設備も必要としない。
【0062】
したがって、本発明によるブロッコリー植物を植え付け、収穫可能な段階まで生長させるステップと、主茎を切断することによってブロッコリー植物を収穫するステップとを含むブロッコリー頭部の収穫方法が提供される。
【0063】
本発明はさらに、ブロッコリー頭部の製造のための本発明によるブロッコリー植物の使用を提供する。一実施形態ではブロッコリー頭部は包装される。したがって本発明によるブロッコリー植物を植え、頭部が形成されるまで生長させることができ、またその主茎を切断することによって頭部を収穫することができる。
【0064】
本発明はさらに、個別化した花蕾の製造のための本発明によるブロッコリー植物の使用を提供する。一実施形態では個別化した花蕾は包装される。したがって本発明によるブロッコリー植物を植え、頭部が形成されるまで生長させることができ、その派生的な茎を切断することによって花蕾を収穫することができる。別法では花蕾は、本発明による分離したブロッコリー頭部から派生的な茎を切断することによって得ることもできる。分離した花蕾を得るための派生的な茎の切断は、そのブロッコリー植物が生長する圃場で達成することも、またそのブロッコリーが更なる処理のために運ばれる任意の他の場所で達成することもできる。
【0065】
赤道直径で測定した本発明によるブロッコリー植物の花蕾のサイズは、約30mm未満から約60mm超の間に含まれる範囲で変わり得る。
【0066】
したがって、
− 約30mm未満の直径を有する花蕾が、頭部の花蕾の総数の約30〜45%、具体的には35%〜約45%であり、
− 約30から約45mmの間に含まれる直径を有する花蕾が、頭部の花蕾の総数の約20〜40%、具体的には約25〜30%であり、
− 約45から60mmの間に含まれる直径を有する花蕾が、頭部の花蕾の総数の10〜30%、具体的には約15〜35%であり、
− 約60mmを超える直径を有する花蕾が、頭部の花蕾の総数の約5〜30%、具体的には約5〜25%である。
【0067】
前述のように頭部の花蕾の総数は、前記花蕾を含む水平な植物より下方で前記頭部の派生的な茎を切り取った後に得られる花蕾の量に相当する。本明細書中で以前に使用した用語「より下方」とは、例として、花蕾を含む平面と主茎上への派生的な茎の付着点との間に含まれる高さに対応する。一般には、花蕾より下方の切取り点は、
図1中の灰色の長方形のゾーン中に示したものなどの花蕾の基線の低い方の高さより下方の約1から20cmの間、具体的には約1から15cmの間、より具体的には約1から10cmの間、より具体的には約1から5cmの間、さらに一層具体的には約1から3cmの間に含まれる。こうして得られる花蕾は、
図3、4、および5に示すように様々な長さを有する茎を示すことができる。
【0068】
図1から、また
図3から本発明によるブロッコリー頭部上の派生的な茎の色は、彩度および均一性の点で一様かつ深い緑色であると推測することができる。比較のために
図3上に在来のブロッコリー頭部を左側に示す。茎は白色/クリーム色であり、かつ花蕾もまた一様な緑色でなく、少なくとも50%の黄色っぽさを示すと推測することができる。
【0069】
ある実施形態では本発明はまた、本発明による植物から栽培した分離ブロッコリー頭部または複数個のブロッコリー頭部の任意の集合体に関する。このようなブロッコリー頭部は主軸を含み、上端に花蕾を有する枝分れした派生的な茎がその上にあり、その頭部は、頭部が上向きの姿勢で立っている場合、花蕾が地面に実質上平行な平面内に含まれることを特徴とする。
【0070】
本発明はまた、収穫可能な段階まで本発明による複数本のブロッコリー植物を生長させるステップと、その植物の主茎を切断することによってブロッコリー植物の頭部を収穫するステップとを含むブロッコリー頭部の生産方法を提供する。頭部の収穫は、手作業によってまたは機械的手段によって行うことができる。ブロッコリー頭部を回収し、保存し、包装する手段が提供される。この方法により得られるブロッコリー頭部は、すぐに販売することができる新鮮な収穫ブロッコリー頭部であることができる。代替実施形態ではまた、この方法により得られるブロッコリー頭部をさらに処理することもできる。
【0071】
ある実施形態では本発明はまた、収穫可能な段階まで本発明による複数本のブロッコリー植物を生長させるステップと、その植物の派生的な茎を切断することによってブロッコリー植物の花蕾を収穫するステップとを含むブロッコリーの花蕾の生産方法を提供する。一実施形態では派生的な茎の切断を機械的手段によって圃場内で行うことができる。これは、花蕾が地面に実質上平行な平面内に含まれるせいで可能になる。したがってブロッコリーの花蕾を圃場で直接に得ることができ、したがってブロッコリー頭部の追加の処理または取扱いを必要としない。実際に、本発明による植物の多花蕾形質のおかげで、このブロッコリー植物は派生的な茎の予め決められた高さでの1回の切り取りで個別化したブロッコリー花蕾を得ることを可能にするので、ブロッコリーの花蕾を圃場で直接に得ることができる。これは、花蕾を圃場で直接に得ることができ、また更なる処理のために工場に引き渡すか、あるいはただ包装し生鮮食料品としていつでも販売できる状態になっているので、ブロッコリー頭部および花蕾の栽培者および加工業者の両方にとって大きな節約を可能にする。
【0072】
本発明はまた、多花蕾形質および突出形質を任意の他のブロッコリー植物、品種、または栽培変種に伝える方法を提供する。したがって本発明は、一つの特定のブロッコリー栽培変種または品種に限定されず、すべてのブロッコリー品種に応用可能である。実際に、本発明のこの発明の形質、すなわち多花蕾形質および突出形質は、寄託された材料のいずれかから任意の他のブロッコリー植物へ通常の育種によってまたはマーカー支援育種によって遺伝子移入することができる。したがって多花蕾形質および突出形質を有する本発明によるブロッコリー植物がまた提供される。突出形質を有する本発明によるブロッコリー植物がまた提供される。多花蕾形質および突出形質を有する本発明によるブロッコリー植物がまた提供される。
【0073】
したがって本発明は、本発明によるブロッコリー植物の種子、ならびにBR51512と呼ばれ、その代表的な種子が、ブタペスト条約に従ってChina General Microbiological Culture Collection Center(CGMCC−No.1 West Beichen Road−Chaoyang District−Beijing 100 101−China)に寄託日2010年10月19日の受託番号CGMCC No.4245で寄託されている寄託ブロッコリー植物から誘導、生長、または獲得される任意の植物または植物の一部、あるいは子孫を提供する。
【0074】
本願中に開示されている多花蕾形質および突出形質は、BR51512と呼ばれるブロッコリー植物(この代表的な種子は受託番号CGMCC 4245で寄託されている)から得ることもでき、またBR51512と呼ばれるブロッコリー植物(この代表的な種子は受託番号CGMCC 4245で寄託されている)から獲得または誘導される多花蕾形質および突出形質を含有する植物の子孫から得ることもできる。
【0075】
したがって本発明の記述に基づいて、またBR51512と呼ばれるブロッコリー植物(これらの代表的な種子は受託番号CGMCC 4245で寄託されている)を入手して当業者が、本発明の多花蕾形質および突出形質を、当業界でよく知られている任意の育種技術を使用して様々な種類の任意の他のブロッコリー植物に伝えるのに何の困難もない。
【0076】
本発明の多花蕾形質および突出形質は、多花蕾形質を欠く任意のブロッコリー植物、または突出形質を欠く任意のブロッコリー植物、または多花蕾形質および突出形質を欠く任意のブロッコリー植物に伝えることができる。
【0077】
多花蕾形質を決定する遺伝情報は、BR51512と呼ばれるブロッコリー植物(これらの代表的な種子は受託番号CGMCC 4245で寄託されている)から、またはこの形質を含有する植物の子孫から得ることができる。
【0078】
突出形質を決定する遺伝情報は、BR51512と呼ばれるブロッコリー植物(これらの代表的な種子は受託番号CGMCC 4245で寄託されている)から、またはこの形質を含有する植物の子孫から得ることができる。
【0079】
本明細書中で開示されている教示を使用して、突出の形質を決定する遺伝情報および多花蕾の形質を決定する遺伝情報を、別の植物に、例えば前記植物をBR51512と呼ばれるブロッコリー植物(これらの代表的な種子は受託番号CGMCC 4245で寄託されている)と交配させることによって伝えることもでき、あるいはこれら両方の形質を含み、その交配種の子孫中のこれら形質の存在を決めるこの寄託植物の子孫から別の植物に伝えることもできる。
【0080】
この多花蕾形質および突出形質の定義を受けて、当業者がこれらの形質の1つまたは複数を有する植物を識別するのに、また交配を介してこれらの形質を継ぐのに何の困難もない。これら形質の分離もまた、それら交配の結果として生ずる子孫中で獲得することができる。
【0081】
例えば多花蕾形質に関して当業者が、地面に実質上平行な平面内の花蕾の配列を考察することによって、その形質を有するブロッコリー植物を識別し選別するのに何の困難もない。
【0082】
また突出形質に関して当業者が、ブロッコリー植物を評価し、こうして頭部の上端が葉冠の上端と比べて同じ高さにあるもの、または頭部の上端がその植物の葉冠の上端より上方にあるものを選別することによってその形質を有する植物を識別するのに何の困難もない。
【0083】
本発明の一実施形態では、従来の育種技術を使用することによって、またその多花蕾形質および/または突出形質を含有するその子孫を選別することによって本発明による多花蕾形質および突出形質を他のブロッコリー植物に伝える方法が提供される。親植物としては、例えばこのCGMCCで寄託されているものの遺伝的背景を有するブロッコリー植物を使用することができ、あるいはそれが多花蕾形質および/または突出形質を含有するという条件でその植物由来の任意の子孫を使用することもできる。このような方法は、
− 多花蕾形質、および任意選択で突出形質を有するブロッコリー植物または種子を準備するステップ、
− 開花するまで上記植物または種子を生長させるステップ、
− その得られた植物を、多花蕾形質を含有しない、また任意選択で突出形質を含有しないブロッコリー植物と交配させるステップ、
− 任意選択で上記交配種の子孫とさらに交配させるステップ、
− 多花蕾形質、および任意選択で突出形質を有する植物を選別するステップ
を含む。
【0084】
この選別のステップは、突出形質が伝えられた場合には頭部の突出を測定によって評価し、一方では、また他方では多花蕾形質が伝えられた場合には頭部の花蕾の分布を評価する技術的ステップを伴う。
【0085】
本発明はまた、本発明による植物の雑種種子を生産するための方法を提供する。このような方法は、圃場に本発明によるブロッコリー植物の雄親および雌親の列を植え付けるステップ、開花するまでその植物を生長させるステップ、雄花からの花粉によって雌花の受粉を行うステップ、および雌植物の列から雑種種子を収穫するステップを含む。
【0086】
この方法は、手による受粉を伴うこともできる。ある実施形態ではこの方法は、雌系統の自家受粉を妨げ、こうして100%純粋な雑種種子を得るために雄性不稔、具体的には細胞質雄性不稔雌近交系統の使用を含む。
【0087】
市販のブロッコリー雑種の開発は、当業界でよく知られている技術による同型接合近交系親系統の開発を伴う。望ましい近交系または親系を、連続淘汰によって、続いてその系統が十分に均一になるまで数世代の自殖により徹底させることによって開発する。別法では、葯または小胞子の培養(続いて「DH」系統とも呼ばれる倍加半数体系統を産生させるための染色体倍加)を使用し、続いて最良の育種系統を選択し、様々な雑種の組合せでの子孫を試験することができる。
【0088】
いったん最良の雑種性能を与える近交系統が識別されたら、それら近交系親の等質性および同型接合性が維持される限り雑種種子を無制限に生産することができる。用語「近交系ブロッコリー植物」にはまた、その近交系の任意の単一遺伝子変換物が含まれる。本明細書中で使用される用語「単一遺伝子変換植物」は、戻し交配と呼ばれる植物育種技術によって開発されるブロッコリー植物を指し、この戻し交配技術により単一遺伝子が供与親から近交系中へ移入されるのに加えて、近交系の本質的にすべての望ましい形態学的および生理学的特性が回復される。
【0089】
大規模な雑種種子生産の場合、自家不和合性に基づく交配受粉の様々なシステム、または別法では細胞質雄性不稔(CMS)を使用することができる。それらの技術は当業界でよく知られている。
【0090】
ブロッコリー雑種種子生産の場合、モデム(modem)システムは、ハツカダイコンからキャベツ(Brassica oleracea)中へ遺伝子移入されたCMSを使用する(Ogura,H.の論文(1968)、ダイコンにおける新規な雄性不稔に関する研究:特に雑種種子の実地栽培へのこの不稔性の利用について(Studies on the new male sterility in Japanese radish,with special reference to the utilization of this sterility towards practical raising of hybrid seed)(Mem Fac Agric Kagoshima Univ.6:39〜78))。
【0091】
したがってまた、雄性不稔でありかつ雑種種子生産に雌親として使用するのに適した本発明による近交系ブロッコリー植物を提供する。一実施形態ではその近交系ブロッコリー植物は細胞質雄性不稔、例えばoguraのcmsまたはpolimaのcmsによる雄性不稔である。このような植物は、当業界で知られている方法で作ることができる。
【0092】
本発明はまた、本発明によるブロッコリー植物の子孫と、本発明によるこの発明の植物の形態学的特徴、すなわち多花蕾形質また任意選択で突出形質を有する寄託植物の子孫(自殖により、戻し交配により、または他の植物との交配により得られた)とを含む。
【0093】
本発明はまた、包装されたブロッコリー頭部の製造のためのこのブロッコリー植物および/またはその頭部の使用に関する。実際に、本発明によるブロッコリー植物から得られる頭部は、幾つかの利益および利点を含む。上記頭部は茎から花蕾まで一様な緑色であり、その花蕾はそれらが平面内に配列しているおかげで十分に個別化され、その結果、消費者にとって利便性が非常に高い。具体的には煮沸、蒸し煮、または炒め煮のいずれかによってブロッコリーを調理する場合、頭部から花蕾を切り取り、個別化することが必要である。一般にこの手順は、それが数回の切取りおよび調理場での処理を必要とするのでブロッコリー消費者の大部分にとって面倒である。本発明による植物のブロッコリー頭部に関しては調理のためのブロッコリーの花蕾の準備が劇的に簡単になる。消費者は、1回の切取りで派生的な茎を切断し、次いで最少の処理および切取りで個体の花蕾を得ることだけが必要である。こうして得られた個体の花蕾を、例えば直接に食し、煮沸し、蒸し煮し、炒め煮することができる。
【0094】
本発明はまた、包装されたブロッコリーの花蕾の製造のためのそのブロッコリー頭部の使用に関する。したがってその処理産業に対して本発明によるブロッコリー植物は多くの利益および利点を提供する。本発明のブロッコリー頭部の多花蕾形質は、個別化した花蕾を得るための迅速かつ簡単な方法を可能にする。次いでその花蕾を冷蔵または冷凍状態で市場に出荷するのに適した包装にまとめることができる。
【0095】
したがって本発明は、
− 本発明によるブロッコリー頭部を準備するステップ、
− そのブロッコリー頭部の派生的な茎を切断するステップ、
− 個別化した花蕾を得るステップ、
− その花蕾を包装するステップ
を含む個別化されて包装された花蕾を製造するための方法に関する。
【0096】
花蕾の包装は、軟質または硬質の任意の食料品に適した包装材料で行うことができる。包装されるブロッコリー花蕾は、それらの花蕾の保存寿命を保証または向上させるために調整雰囲気で包装することもでき、また無調整雰囲気で包装することもできる。
【0097】
次いでその包装した花蕾を、例えば約2〜5℃の適切な冷蔵温度まで冷却することができる。
【0098】
任意選択で、包装のステップの前に食料品加工の当業者によく知られている方法により花蕾を部分的に調理および/または冷凍してから零下の温度、好ましくは例えば約−18℃で包装し冷凍保存することもできる。
【実施例】
【0099】
下記実施例は、本発明の幾つかの実施形態を非限定的な態様において例示することを意図している。
【0100】
独自開発および公的研究のブロッコリー系統を使用した。
【0101】
例えば、オレゴン州立大学(OSU)ブロッコリー育種プログラムは、中程度の突き出た頭部と、分離した個々の花蕾とを有する系統を所有する。このOSU育種プログラムから幾つかの系統種が得られた。これらの系統は、OSU 399およびOSU 428として設計された。これらの系統種は、多花蕾形質ではなく(個別化された花蕾だが整列しておらずまだ凸状頭部である)、処理の低収率または花蕾分離の低品質と、貧弱な蕾の品質と、軟らかな個々の花蕾とを生じさせた。より良好な個々の花蕾を分離するための淘汰は、粒の貧弱な品質および低い処理収率につながった。本発明はこの問題の解決策を見出し、理想的な植物の型、すなわち突き出た頭部と、多花蕾頭部と、満足のいく収率を有する処理後の良質の小さな花蕾とを構築した。
【0102】
OSU系統および他の利用可能な公的系統の欠点を補償して100%多花蕾形質および突出形質のブロッコリー植物を得るために、交配設計を行い、突出形質および多花蕾形質のどちらかの植物を選別して除くために大きな母集団を準備した。
【0103】
ふるい分けは、例えば冠の高さまたはそれより上方で頭部の突出の手作業または目測による測定、植物の頭部の場合は凸性の測定、ブロッコリー頭部の直径および重量の測定、頭部当たりの花蕾の重量および数の測定を行うなどのより多くの技術的ステップを伴う。この方法は、頭部および花蕾のサイズおよび高さを測定するなどのふるい分けのステップをさらに含む。
【0104】
実施例1:植物BR51512(01−7111−1/01−7229−1 × 00G028)の簡単な育種履歴
雌の選択育種
01−7111(357A/91A005(S))Gen2 X 01−7229(China Long F2//Sultan F8/099)Gen1 2001
F1 2002年、一回植物選別
F2 2003年、一回植物選別
F3 2004年、一回植物選別
F4 2005年、一回植物選別
F5 2006年、植物の選別(01−7111−1/01−7229−1)
【0105】
植物01−7111−1/01−7229−1は、01−7111(独自開発の系統種)と01−7229(China Long F2とSultan F8の交配によって得られた独自開発の系統種)の交配の結果として生じた。
【0106】
この目的は、01−7111の多花蕾形質を01−7229の突出形質と組み合わせた植物を得ることであった。
【0107】
数世代にわたる淘汰および自殖の後に、花蕾が地面に平行な平面に正しく整列して平坦な頭部を生じさせる適切なきわめて良好な多花蕾形質を有する植物01−7111−1/01−7229−1を選び出した。
【0108】
雄の選択育種
OSU 428 × (RB20)1−7−3/92−2684−1 2000
F1 2001年、一回植物選別
F2 2002年、一回植物選別
F3 2003年、一回植物選別
F4 2004年、一回植物選別
F5 2005年、植物の選別(00G028)
【0109】
植物00G028は、OSU 428(オレゴン州立大学によって提供された)と(RBR20)1−7−3/92−2684−1(独自開発の系統種)の交配の結果として生じた。対象となっている育種の目的は、OSU 428由来の突出形質を後者の材料由来の特別な形質と組み合わせて、良好な稠密度と突出形質とを実現する新規な植物を得ることであった。
【0110】
数世代にわたる淘汰および自殖の後に、中程度の突出形質と良好な稠密度とを有する植物00G028を選び出した。
【0111】
両方の親に対して使用された育種法は、一回植物選別および集団選別の方法を用いた系統選別であった。
【0112】
植物BR51512交配種形成
2006年に01−7111−1/01−7229−1と00G028の間で交配を行った。その得られた植物は、頭部が葉冠より上方に位置を定められる突出形質と、適切な「平坦な頭部」を有する多花蕾、すなわち地面に平行な水平面内に含まれる花蕾(
図2参照)とを作る性質を与える。それはまた、すぐれた全身のべと病抵抗性およびブラインド・アイ抵抗性を与える。
【0113】
これは、本発明によるブロッコリー植物を得るために本発明による多花蕾形質を、それを欠く遺伝的背景中に伝え、遺伝子移入することができることを明白に示している。
【0114】
寄託植物BR51512は、本発明による更なるブロッコリー植物を開発するために、在来の育種またはマーカー支援育種により任意のブロッコリー生殖質中に遺伝子移入するための多花蕾形質(また同様に突出頭部の形質)の供給源として使用することができる(実施例2参照)。
【0115】
実施例2:新規なMF雑種を構築するためのMF育種スキーム
この寄託系統由来の多花蕾(MF)形質を2つ以上の遺伝的背景に移入することが可能であることを示した。伝統的な冠型系統から新規なMF雑種を得るために2種類の新規なMF系統(その一方は冠型系統Aの良好な形質を有し、他方は冠型系統Bの良好な形質を有する)の間で交配を行った。
【0116】
冠型系統Aから新規なMF系統を開発するために寄託MF系統と冠型系統Aの植物との間で交配を行った。次いでその得られた3元雑種を寄託MF系統と戻し交配させた。BC1ではMF形質および系統Aの良好な農業形質に関して植物を選択し、自殖させた。この過程をさらに3回繰り返した。この過程の終わりに系統Aの良好な形質を有する新規な固定性MF系統が得られた(BC1Fn)。各交配のステップの後、突き出た頭部を有し、かつ地面に実質上平行な平面内に含まれる花蕾を有するブロッコリー植物をさらなる交配のために選択した。この突き出る頭部の形質と、花蕾が地面に実質上平行な平面内に含まれる形質とは単純なメンデルの様式で受け継がれることは明白であった。
【0117】
冠型系統Bから新規なMF系統を開発するために同じ過程がたどられた。
【0118】
次いで、これら2つの新規なMF系統を交配して、本発明による植物のすべての特徴を有する新規なMF雑種を得た。
【0119】
実施例3:収穫された頭部および花蕾の特徴
植物BR51512を、ブルターニュで夏に40000本/ヘクタールの密度で植え付けた。この植物は、葉冠より上方に頭部を有する良好な突出形質と、花蕾が水平面内に満足の行くように含まれたきわめて良好な多花蕾形質とを示す(
図1および2参照)。これら頭部は良好な稠密度を示し、茎および花蕾は極度の緑色であり、かつ機械収穫に十分に適合する。
【0120】
植え付け後61日と68日の間の収穫枠内でブロッコリー頭部を収穫した。頭部の平均直径は23cmであり、また頭部の平均重量は350gであった。頭部当たりの花蕾の平均数は30個であり、またサイズによる再区分は、
30mm未満の直径の花蕾が45%、
30から45mmの間に含まれる直径の花蕾が30%、
45から60mmの間に含まれる直径の花蕾が20%、
60mmを超える直径の花蕾が5%
であった。
【0121】
ブロッコリー植物BR51512から生長させたブロッコリー頭部から、派生的な茎を切断することによって花蕾を得た。短い茎の花蕾は、それらの花蕾を含む水平面よりほんの少し下方の高さで派生的な茎を切り取ることによって得た(
図3の右側)。より長い茎は、花蕾より下方で、派生的な茎の主茎上への挿入点までに得られる様々な高さで頭部の派生的な茎を切り取ることによって得た(
図4)。
【0122】
こうして、この得られた個別化した花蕾をプラスチックの袋に詰め(
図5)、最長9日間までのあいだ+4℃の冷蔵保存状態で維持した。品質はきわめて良好〜良好として格付けされる状態であり、切断面にきわめてわずかな乾燥が見えるが色はまだ非常に鮮やかであった。本発明による花蕾のサイズおよび緑色はきわめて均一かつ等質であった。これと比較して、ブロッコリー品種Parthenon由来のブロッコリー花蕾を同じ条件に従って入手、包装、保管した。全体的な品質は保管の間ずっと本発明によるブロッコリー花蕾と同等の状態に保たれたが、Parthenonの花蕾の色およびサイズは、本発明によるブロッコリー植物の花蕾と比べて大幅に異なり、サイズおよび色がきわめて異質であり、またずっと魅力がないことを
図5から容易に知ることができる。
【0123】
本明細書中で開示された本発明によるSyngentaブロッコリー植物BR51512の寄託は、ブタペスト条約に従ってChina General Microbiological Culture Collection Center(CGMCC−No.1 West Beichen Road−Chaoyang District−Beijing 100 101−China)に寄託日2010年10月19日の受託番号CGMCC No.4245で行われた。