特許第6066970号(P6066970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066970
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】バリヤーフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/00 20060101AFI20170116BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20170116BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20170116BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20170116BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20170116BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20170116BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170116BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20170116BHJP
   B29C 49/00 20060101ALI20170116BHJP
   B29C 47/06 20060101ALI20170116BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20170116BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20170116BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20170116BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C08L3/00ZBP
   C08L29/04
   C08L31/04 B
   C08K5/053
   C08K5/10
   C08K5/09
   C08J5/18CEP
   B32B27/30 102
   B29C49/00
   B29C47/06
   B65D65/40 D
   B65D65/46
   B65D1/02 110
   B65D1/00 111
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-178992(P2014-178992)
(22)【出願日】2014年9月3日
(62)【分割の表示】特願2007-537065(P2007-537065)の分割
【原出願日】2005年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-42745(P2015-42745A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年9月10日
(31)【優先権主張番号】2004905987
(32)【優先日】2004年10月18日
(33)【優先権主張国】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502247341
【氏名又は名称】プランティック・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン−ラトガース,ルランデ
(72)【発明者】
【氏名】フィンク,マーク
(72)【発明者】
【氏名】オークリー,ニコラス・ロイ
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−031333(JP,A)
【文献】 特開平07−070205(JP,A)
【文献】 特開平05−230285(JP,A)
【文献】 特表平08−502772(JP,A)
【文献】 特表2002−532600(JP,A)
【文献】 特表2006−503963(JP,A)
【文献】 特開平06−041351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
B29C 49/00−49/46
B29C 47/00−47/96
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライベースで、組成物の総重量に基づいて
a)45〜90重量%の、デンプン、および/または、アセテートもしくはジカルボン酸無水物との反応によって改変されたデンプン、ヒドロキシアルキル基を有するデンプン、デンプングラフト化したスチレンブタジエンからなるデンプンコポリマーからなる群から選択される加工デンプン、;
b)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、およびエチレンとビニルアルコールのコポリマーから選択される、4〜12重量%の水溶性ポリマー、
c)ソルビトールと、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトールから選択される少なくとも1種の他の可塑剤との5〜45重量%の非結晶性混合物;
d)0.3〜2.5重量%のC12〜22脂肪酸または塩;
e)0.25〜3重量%の2〜10の親水性親油性バランス値を有する乳化剤;
の組成を有する、バリヤーフィルム形成用のポリマー組成物。
【請求項2】
成分b)がポリビニルアルコールである請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
酵素的褐変および非酵素的褐変を防止するための熱安定化剤をさらに含む請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
水結合剤またはゲル化剤として、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸カリウム、酸化カルシウムまたはヨウ化ナトリウムをさらに含む請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、グァーガムまたはゼラチンから選択される(共)可塑剤として作用することができる0〜20重量%の保湿剤または水結合剤もしくはゲル化剤をさらに含む請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
最大60%RHの相対湿度で0.1cm mm/m day atm未満、最大90%RHの相対湿度で0.7cmmm/mday atm未満の酸素透過係数を有する請求項1に記載のポリマー組成物から形成されたフィルム。
【請求項7】
最大60%RHの相対湿度で0.5cm mm/m day atm未満、最大90%RHの相対湿度で0.9cmmm/mday atm未満の二酸化炭素透過係数を有する請求項1に記載のポリマー組成物から形成されたフィルム。
【請求項8】
ポリエチレンテレフタレートまたはポリ乳酸と請求項1に記載のポリマー組成物との共射出成形積層体。
【請求項9】
飲料用ビンにブロー成形するための予備成形体として使用するための請求項8に記載の共射出成形積層体の予備成形体。
【請求項10】
ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ乳酸と請求項1に記載のポリマー組成物との共押出積層体。
【請求項11】
薄膜包装の用途のための請求項10に記載の共押出積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装された製品、特に固体食料品および液体食料品の中へ、またそこから外
への二酸化炭素、酸素および窒素のガス相移動を阻止するために、包装として用いるバリ
ヤーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料品を新鮮に保つことは、包装産業における重要な課題である。最も一般的な
包装材料は、包装した食品の内外へのガス移動を阻止するのに非常に劣っている。過去3
0年間にわたって、バリヤーフィルム層を提供する産業が発展してきた。これらのフィル
ムは、水蒸気、O、COおよびNなどのガスが食品や飲物の内外へ移動するのを阻
止するために用いられる。これまで60年間、プラスチックは包装材料として用いられて
おり、市場での需要の増大と技術的進展によって発展し続けている。多くのプラスチック
包装の重要な1つの要件は、食品や飲料品を新鮮に保つことである。食品や飲料品におけ
る品質劣化の最も大きな原因は酸化を招く酸素の浸透である。
【0003】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(
PVC)およびポリエチレン(PE)などの汎用性プラスチックはすべてOおよびH
Oへのバリヤー性をある程度有している。このバリヤー性はバリヤー層の厚さに比例する
。3つの要素が、より高いバリヤー性能のプラスチックの必要性を増進させている。第1
に、その重量、コストおよび破損性のためにガラスやスズ/アルミニウムから脱却するこ
と、第2に、それをより経済的なものにするためにプラスチック材料を少なくすること(
down gauging)、および第3に、より多くの食品がより小さい供給サイズで
包装されるように貯蔵寿命を長くする必要性、である。これは、一般消費者向けプラスチ
ック包装のバリヤー特性を大幅に向上させる材料の開発を促している。
【0004】
最初に成功した高性能バリヤー材料はポリ塩化ビニリデン(PVDC)であった。これ
はPVCの誘導体であり、したがって、同じような負の環境プロファイルを有していると
見られている。
【0005】
現在市場に出ているその他の一般的バリヤー材料はエチレンビニルアルコールコポリマ
ー(EVOH)、ナイロン(例えばMXD6)およびニトリルである。これらはすべて、
汎用プラスチックにより提供された構造層のバリヤー層として用いられる。
【0006】
バリヤー材料として使用できる唯一の市販の天然高分子は、プラスチック産業のずっと
前に開発されたセロファンである。酸素に対するそのバリヤー特性は、今日のバリヤー樹
脂と比べて高性能とは見なされておらずコストも高い。
【0007】
PET(ポリエチレンテレフタレート)飲料ボトルの壁の一般的なバリヤー構造は、よ
り高価なバリヤー材料を含む1層または複数のコア層の周りのPET構造層からなる多層
構造である。
【0008】
米国特許第5498662号、同第5621026号、同第5897960号および同
第6143384号は、バリヤー層におけるポリメタクリル酸ポリマーおよび多糖類の使
用を開示している。
【0009】
WO 00/49072は、PETブロー成形したボトルに噴霧コーティングされたモ
ンモリロナイトなどの粘土をベースとしたバリヤーコーティングを開示している。
米国特許出願2004/0087696はPET容器のための水をベースとしたコーテ
ィングを開示している。そこでは、粘土材料は、メラミン、ホルムアルデヒドおよびホウ
酸結合剤ならびに多糖類およびセルロース材料などの有機水溶性結合剤と混合されている
【0010】
バリヤー材料は、様々な多くのプラスチック構造物およびプロセスで用いられており、
そのそれぞれに、それ自体の機能要件が課されている。バリヤー構造の最も一般的な用途
は、菓子類、ベーカリー製品などの食品のラッピング用の薄膜、および過去5年間にわた
って市場に出現している大量の小袋(パウチ;pouch)である。これらのフィルムの
あるものは、12の層を有していても50μm未満の厚さとすることが可能である。これ
らのフィルムは一般に共押出によって製造される。
【0011】
WO90/14938は酸素バリヤー積層体での使用に適した高アミロース加工デンプ
ンを開示している。
米国特許第6569539号および同第6692801号は、分散液から施用したデン
プンまたは加工デンプンの内部バリヤーコーティングを有する紙および/またはプラスチ
ック積層体を開示している。
【0012】
WO04/052646はデンプン層と生分解性ポリエステル層を用いた多層バリヤー
フィルムを開示している。
米国特許出願2002/0187340は、主要な材料がデンプンであり、その材料は
分散液から施用される、ポリビニルアルコールおよびデンプンのガスバリヤーコーティン
グを開示している。
【0013】
バリヤーは、果汁用、場合によっては炭酸清涼飲料用のボトル、および果物や野菜の貯
蔵食料などの様々な熱間充填食品にも用いられる。ボトルは通常、共射出延伸ブロー成形
によって形成される。このことは、材料を、射出成形して予備成形体にすることと、次い
で再溶融しブローしてボトルの形状にすることの両方を必要とする。他の容器は、パリソ
ンを金型壁に対してブローして共押出工程の間にオンラインで所望の形状を実現する共押
出ブロー成形を行うことができる。
【0014】
さらに、いくつかの容器は、射出成形で形成した高いガスバリヤー性クロージャーを必
要とする。
バリヤー材料の他の重要な使用分野は、食肉トレイなどの硬質(剛性)の包装である。
大部分の用途で、硬質(剛性)プラスチック材料は十分なバリヤー性を提供するが、一番
上部の薄膜だけは性能の改善を必要とする。
【0015】
ここで、バリヤー技術の展開を抑えると思われる1つの問題点は、プラスチックの再利
用性に対するその影響であり、これはボトル市場において特に重要である。最近では多く
のPETボトルは、外側のバージン材料と、中間に再生PETおよびバリヤー層を備えた
複雑な構造を有している。バリヤー樹脂が再利用システムに適合しない場合、それは、そ
うした技術に移行する大きな妨げとなる。
【0016】
最近は、持続可能で再生可能な資源をベースとし、かつ/または生分解性である新規な
材料が市場に入ってきている。射出延伸ブロー成形してボトルにすることができるか、ま
たは包装用に薄膜を形成できるそうした材料の例は、とうもろこしから合成したポリ乳酸
である。PLA(ポリ乳酸)はガスバリヤー性が劣っており、また水蒸気バリヤー性も比
較的劣っている。生分解性または持続可能性を保持するためには、再生可能な資源をベー
スとした生分解性バリヤーは現状に利益をもたらすことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の1つの目的は、従来技術の材料より安価であり、上記の問題点に対処できる包
装材料で容易に積層化されるバリヤーフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的のために本発明は、ドライベースで、
a)45〜90重量%の、デンプン、および/またはヒドロキシルアルキル基、アセテ
ートもしくはジカルボン酸無水物またはグラフトポリマーとの反応によって改変されたデ
ンプンから選択される加工デンプン;
b)ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、およびエチレンとビニルアルコールのコ
ポリマーから選択され、溶融状態のデンプン成分と適合する融点を有する、4〜12重量
%の水溶性ポリマー;
c)ソルビトールと、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、ト
リオレイン酸グリセロール、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、クエン酸トリブチ
ル、クエン酸アセチルトリエチル、トリ酢酸グリセリル、2,2,4−トリメチル−1,
3−ペンタンジオールジイソブチラート、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリ
コールから選択される少なくとも1種の他の可塑剤との5〜45重量%の非結晶性混合物

d)0.3〜2.5重量%のC12〜22脂肪酸または塩;
e)0.25〜3重量%の2〜10の親水性親油性バランス値を有する乳化剤系;
の組成を有するフィルム形成バリヤーポリマーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
配合物は少量の結合水を含むことができる。ただしその量は、選択したプロセスの加工
条件下で水が蒸発しない程度である。
定義した組成物には、潜在的に積層構造で、薄膜を(共)押出するかまたはキャスティ
ングするのに適した配合物が含まれる。場合によって、ブロー成形を伴う(共)射出成形
(射出−ブロー成形)、潜在的にブロー成形のためのチューブを含む形状物の(共)押出
成形(押出−ブロー成形)、および後続する熱成形のための(共)押出および/または積
層シートを含む他の加工方法を用いることができる。
【0020】
本発明の材料の酸素および二酸化炭素バリヤー特性は、デンプンをベースとした従来技
術や最近の一般的な市販のバリヤー材料より優れている。バリヤー性能は、高い湿度にお
いて、現在の一般的な市販のバリヤー材料と少なくとも同等であるかまたはそれより良好
である。
【0021】
本発明のポリマーは、最大60%RHの相対湿度で0.1cm mm/m day
atm未満、最大90%RHの相対湿度で0.7cm mm/m day atm未満
の酸素透過係数を有する優れた酸素バリヤーである。本発明のポリマーは最大60%RH
の相対湿度で0.5cmmm/m day atm未満、最大90%RHの相対湿度で
0.9cm mm/m day atm未満の二酸化炭素透過係数を有する。
【0022】
この材料は、PET、PE、(BO)PP、LDPEおよびポリ乳酸などの他の包装用
ポリマーを用いて、共押出成形、共射出成形、フィルムブロー成形または熱積層化技術で
積層化することができる。PETおよびポリ乳酸を用いた積層体は、清涼飲料、ビールま
たは調味料のための飲料用ビンの成形における予備成形体としての使用に適している。他
の射出延伸ブロー成形積層製品には、スープ、ジュースおよび加工果物用の高温充填PE
TまたはPP容器が含まれる。この材料は、酸素およびCOバリヤーの用途に射出成形
したPPキャップまたはクロージャーに用いることができる。食品や薬剤用途のための押
出ブロー成形PEボトルも本発明の共押出フィルムを含むことができる。PE、PP、B
O−PPおよびポリ乳酸(PLA)を用いた積層体は、スナック用ラップまたは食肉など
の製品の調整気相包装のための薄膜製リッド(ふた、小袋)などの薄膜包装の用途での使
用に適している。PETなどの極性材料との接着性が優れているが、PPなどの非極性材
料との接着には一般的なタイ層(tie layer)樹脂が必要とされる。適切なタイ層材料に
は、PP、EVA、LDPEまたはLLDPEをベースとしたグラフト化ポリマーが含ま
れる。
【0023】
本発明のバリヤーフィルムは生分解性でありかつ水溶性であるので、再利用可能なプラ
スチックと用いるのに適している。例えば、PETの再利用で用いられる苛性洗浄プロセ
スで溶解するので、PETと使用するのが適切である。コンポスト化可能であり、少なく
ともPLAと同程度に速く生分解するので、PLAと使用するのが適切である。
【0024】
(加工した高アミロースデンプン)
加工デンプンの含量の上限はそのコストによって決定される。この成分は、良好なフィ
ルム形成特性、良好な光学的特性および劣化(後退)作用に対する抵抗性を含んだ、得ら
れる材料の構造的利益に寄与する。ベークド品(baked goods)における老化プロセス(s
taling process)と類似して、デンプンをベースとしたプラスチックは経時的に脆くなる
傾向を有するため、デンプンの劣化(後退)および結晶化は、デンプンをベースとしたプ
ラスチックの最も重要な実際的な問題の1つと関連している可能性がある。
【0025】
典型的な加工デンプンには、ヒドロキシアルキルC2〜6基を有するものまたはジカルボン酸無水物との反応によって改変されたデンプンが含まれる。好ましい成分はヒドロキシプロピル化したアミロースである。他の置換基は、ヒドロキシエーテル置換を形成するためのヒドロキシエチルまたはヒドロキシブチルであってよく、エステル誘導体を生成させるためには、酢酸、マレイン酸、フタル酸またはオクテニルコハク酸の無水物などのアセテートまたは無水物を用いることができる。
【0026】
置換の程度[置換されている単位中のヒドロキシル基の平均個数]は好ましくは0.0
5〜2である。
好ましいデンプンは高アミローストウモロコシデンプンである。好ましい成分は、Pe
nford Australiaから販売されているヒドロキシプロピル化高アミロース
デンプンA939である。用いられるヒドロキシプロピル化の最小レベルは6.0%であ
る。典型的な値は6.1〜6.9%である。コスト削減と特性の最適化の理由から、この
デンプンの一部を以下のもので置換することもできる。すなわち、
1)より高いかまたはより低いレベルにヒドロキシプロピル化したもの
2)より高いレベルの非加工デンプン。これは加工デンプンのヒドロキシプロピル化
のレベルが増大している場合に可能である。
【0027】
3)オクテニルコハク酸無水物(OSA)で改変されたデンプン。これはより高い疎
水性度を有する。この加工デンプンを加えると、置換の程度が進むに従って耐水性が増大
する。これは、相対湿度が最大で90%となるような場合に、デンプンポリマーを、流体
を含む包装用途にバリヤー層として組み込む場合に適している。OSAデンプンのアセチ
ル結合は、水や生物学的に活性な環境に接する際にその材料が生分解性を保つことを保証
する。
【0028】
4)デンプンコポリマー、好ましくはデンプンとグラフト化スチレンブタジエンから
なるデンプンコポリマー。この材料は製品の耐衝撃性を向上させる。
(デンプン)
組成物中の非加工デンプンの量は、残りを占める他のすべての構成成分の所要添加レベ
ルによって限定され、組成物のバランスをとる(帳尻をあわせる)。これは、コムギ、ト
ウモロコシ、ジャガイモ、イネ、オートムギ、クズウコンおよびエンドウマメ等の供給源
から誘導することができる。非加工デンプンは、最終製品のバリヤー特性に寄与する再生
可能な資源からの安価な生分解性原料であり、したがってこの用途に非常に魅力的である
。しかし、その使用は、劣化(後退)作用(結晶化は脆性をもたらす)の発生によって制
限され、また、生成する産物の限定された光学的透明性、限定されたフィルム形成特性、
延伸のための限定された弾力性、によって制限される。この現象は、調理されたデンプン
のアミロペクチンの結晶化と主に関連していることが分かっているので、高アミロースデ
ンプンは劣化(後退)作用に対してより鈍感である。非加工デンプンの好ましい濃度範囲
は、デンプンの合計量に対する割合で0〜50%である。
【0029】
(水溶性ポリマー)
組成物のポリマー成分b)は、デンプンと相溶性であり、水溶性であり、かつ、デンプ
ンの加工温度に適合した融点を有することが好ましい。ポリビニルアルコールは好ましい
ポリマーであるが、エチレン−ビニルアルコール、エチレン酢酸ビニルのポリマーまたは
ポリビニルアルコールとのブレンドも用いることができる。室温条件下では選択したポリ
マーに溶解しないことが好ましい。PVOHは、優れたフィルム形成および優れた結合剤
の特徴、良好な弾力性の組合せをもたらし、デンプンをベースとした配合物の加工の助け
となる。PVOHは、酢酸ビニルモノマーの重合によって得られるポリ酢酸ビニルの加水
分解によって製造される。完全に加水分解したグレードはあるとしてもほとんど残留アセ
テート基を含まないが、部分的に加水分解したグレードは残留アセテート基をある程度保
持する。完全に加水分解したグレードは温水(93℃(200°F))に溶解し、室温に
冷却しても溶液のままである。好ましいグレードのPVOHには、DuPont Elv
anol71−30およびElvanol70−62が含まれる。その特性を表Aにまと
める。
【0030】
表A:本発明で使用されたPVOHグレードの特性
グレード 71〜30 70〜62
重量平均分子量 93,700 107,000〜112,000
固有粘度(mPa・s) 27〜33 58.0〜68.0
加水分解率(%) 99.0〜99.8 99.4〜99.8
分子量のより高いグレードでは、耐衝撃性が改善され、水感受性が低下するようである
。その最大レベルは主としてコストによって決定される。PVOHのレベルを増大させる
と、破断点伸びが著しく増大しヤング係数が減少する。6%未満ではフィルムの形成が困
難となる。したがって、薄膜バリヤー材料のための好ましい濃度範囲は7〜12%であり
、射出−ブロー成形ボトルで適用されるバリヤー材料のための好ましい濃度範囲は4%〜
12%である。
【0031】
(ポリオール可塑剤)
加工を助け、バリヤー材料の機械的特性を制御し安定化させるために、特に含水率およ
びRHに対する依存性を減らすために、この配合物では、ある範囲の可塑剤および保湿剤
が有用である。望ましい可塑剤含量は、(共)押出または(共)射出成形工程および続く
ブローまたは延伸工程の際の所要の加工挙動、ならびに最終製品の所要の機械的特性に主
に依存する。
【0032】
コストおよび食品との接触は、適切な可塑剤の選択の際の重要な問題である。好ましい
可塑剤は、ポリオール、特にソルビトールと、1種または複数の他のポリオール、具体的
にはグリセロール、マルチトール、マンニトールおよびキシリトールとの混合物であるが
、エリトリトール、エチレングリコールおよびジエチレングリコールも適している。可塑
剤は次の3つの役割を果たす:
1.押出コンパウンディング工程および積層化工程のための適切なレオロジーを提供
する。
【0033】
2.製品の機械的特性に良い影響を及ぼし、
3.抗劣化(後退)剤または抗結晶化剤としても作用することができる。
好ましい可塑剤含量は、具体的な用途および共押出工程または積層化工程にもよるが1
0〜40%である。
【0034】
ソルビトール、グリセロールおよびマルチトールのブレンドは、配合物の機械的特性を
改変するために特に適している。キシリトール、ならびにキシリトールとソルビトールお
よびグリセロールとのブレンドも適している。OH基の数が増加すればするほど、可塑剤
は結晶化を低減させるのにより効果的となる。ソルビトール、マルチトールおよびキシリ
トールは特に良好な保湿剤である。グリセロールは加工の際にPVOHが溶解する助けと
なる。ソルビトールはそれ自体で用いる場合、結晶化が見られる。ある種のポリオール(
特にソルビトールおよびグリセロール)は表面へ移動する可能性がある。そこでは、ソル
ビトールの場合、不透明な結晶性フィルムが形成されるか、あるいは、グリセロールの場
合、油性のフィルムが形成される可能性がある。様々なポリオールをブレンドすると、様
々な程度でこの効果が発揮される。乳化剤としてグリセロールモノステアレートおよびス
テアロイル乳酸ナトリウムを加えると、安定化を向上させることができる。さらに、塩と
の相乗効果によって、機械的特性に対するより強い効果がもたらされる。
【0035】
(他の可塑剤)
PEG化合物は、乳化剤、可塑剤または保湿剤として用いることができる。ポリエチレ
ンオキシドとポリエチレングリコールは、交互にかまたは一緒に、耐水性を増大させ、多
層構造(MLS)における層間剥離をもたらす可能性がある膨張を阻止することもできる
【0036】
代替の可塑剤はエポキシ化アマニ油またはエポキシ化大豆油である。疎水性であるこれ
らの添加剤は材料の感湿性を改善することができる。これらの可塑剤(乳化系で安定化さ
れていることが好ましい(以下の節を参照されたい))は、加工の助けとなるが、ヤング
係数のさらなる低下はさほどもたらさない。クエン酸トリブチル、2,2,4−トリメチ
ル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート(2,2,4-trimethyl-1,3-pentanediol di
isobutyrate)およびクエン酸アセチルトリエチルを含むPVC工業においてより一般に
用いられている他の可塑剤が適している。
【0037】
カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、グァーガムまたはゼラチンなどの(共
)可塑剤として作用することができる0〜20重量%の保湿剤、水結合剤またはゲル化剤
を用いることができる。糖またはグルコースなどの他の保湿剤も用いることができる。一
般に食料製品において増粘剤として用いられ、冷水に部分的に溶解し、熱水に完全に溶解
するカラギーナンなどのバイオポリマーは、機械的特性を調整するのに適している。水と
結合すると、これらの成分は大幅に可塑化機能を有することができる。ゼラチンを加えて
、機械的特性を改善し感湿性を低下させることができる。キサンタンガムは高い水保持能
力を有しており、乳化剤としても作用し、デンプン組成物においては抗劣化(後退)効果
を有する。アラビアゴムは、テクスチャライザー(texturiser)およびフィル
ム形成剤としても用いることができ、親水性炭水化物および疎水性タンパク質は、その親
水コロイド乳化を可能にし、安定化特性を高めることができる。グァーガムはデンプン組
成物において同様の抗結晶化効果を有している。他の適切な保湿剤はトリ酢酸グリセリル
である。
【0038】
(塩)
塩化ナトリウムや水酸化ナトリウムなどの塩を用いると、可塑化および保湿効果を得る
かまたはそれを向上させることができる。カリウム塩、酢酸カリウム、酸化カルシウムお
よびヨウ化ナトリウムも適している。カルシウム塩は押し出したデンプン材料の剛性(硬
質性)およびサイズ安定性を改善し、さらにカラギーナンと一緒に用いてゲル化を助ける
ことができる。
【0039】
(脂肪酸類および脂肪酸類の塩類)
ステアリン酸は、例えばワックス類よりもデンプンと相溶性があるので、滑剤として用
いられる。ステアリン酸は疎水性であり、したがって、デンプンをベースとした材料の感
湿性を改善することができる。ステアリン酸と同様に、ステアリン酸カルシウムなどの塩
も用いることができる。ステアリン酸はデンプンをベースとしたポリマーの表面に移動す
る。デンプンは、脂肪酸と複合体を形成することができると考えられている。デンプング
ルコピラノシド(グルコース)は「チェア」構造の6員環である。環の周りは親水性であ
るが、その面は疎水性である。デンプン鎖は、一周当たり約6個の残基の螺旋体を形成し
ている。結果として親水性の外面と疎水性の内面を備えた中空シリンダーが得られる。内
部空間は直径が約4.5オングストロームであり、ステアリン酸のような直鎖アルキル分
子はその中にはまり込むことができる。同様に、GMSなどの乳化剤の脂肪酸部分はゼラ
チン化デンプンと複合体を形成し、デンプン結晶化を遅延させ、それによって老化の過程
を遅延させることができる。アミロース(デンプン中の直鎖成分)およびアミロペクチン
(デンプン中の分岐成分)と複合体を形成するモノグリセリドの量は、乳化剤の脂肪酸部
分の飽和の度合いに依存する。不飽和脂肪酸は、脂肪酸鎖中の二重結合によってもたらさ
れる屈曲を有しており、これは複合体を形成する能力を制限する。
【0040】
ステアリン酸は加工助剤として特に有用であるが、PEOまたはPEGの存在下では必
ずしもそうではない。ステアリン酸の好ましいレベルは0.5%〜1.5%である。ステ
アリン酸のナトリウムおよびカリウム塩も用いることができる。コストがやはりこの成分
の選択おける要素となるが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸およ
びベヘン酸はいずれも適している。適切な加工助剤の選択は、MLSにおける層間剥離に
対する必要な抵抗性によって主に限定される。
【0041】
(熱安定化剤)
亜硫酸塩剤(二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリ
ウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム)は多くの食品に加えられて、酵
素的および非酵素的褐変を防止し、酸化防止剤または還元剤として作用する。亜硫酸塩は
、カルボニル中間体と反応することによって非酵素的褐変を防止し、それによってさらに
反応して褐色色素を生成するのを阻止する。クエン酸は、しばしばアスコルビン酸または
亜硫酸水素ナトリウムと一緒に、酵素的褐変の化学的防止剤として長い間用いられてきた
。褐変を望まない用途のための好ましい亜硫酸水素カリウムの濃度は、最大で2%であり
、最大2%のアスコルビン酸と一緒にすることも可能である。クエン酸は1%を超えるレ
ベルでは有益でないことが分かっている。
【0042】
(乳化剤)
乳化剤は好ましくは食品グレード乳化剤であり、脂質や親水性成分の組成物中への均一
な分散を維持する助けとなる。その選択は一般にHLB(親水性親油性バランス)値によ
って決まる。好ましい乳化剤は、2〜10のHLB数を有する食品グレード乳化剤から選
択され、それにはプロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノオレエート
、トリオレイン酸グリセロール、グリセロールモノステアレート、アセチル化モノグリセ
リド(ステアレート)、ソルビタンモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレー
ト、ソルビタンモノステアレート、カルシウムステアロキシル−2−ラクチレート、グリ
セロールモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、大豆レシチン、モノグリセリド
のジアセチル化酒石酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム(sodium stearoyl lactyl
ate;SSL)、ソルビタンモノラウレートが含まれる。デンプン系では通常、ステアロイル
乳酸ナトリウムおよびグリセロールモノステアレートが用いられる。
【0043】
表B−いくつかの乳化剤の疎水性/親水性バランス(HLB)値
乳化剤 HLB値
ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL) 21.0
ポリソルベート80(ソルビタンモノオレエート) 15.4
ポリソルベート60(ソルビタンモノステアレート) 14.4
スクロースモノステアレート 12.0
ポリソルベート65(ソルビタントリステアレート) 10.5
モノグリセリドのジアセチル化酒石酸エステル(DATEM) 9.2
スクロースジステアレート 8.9
トリグリセロールモノステアレート 7.2
ソルビタンモノステアレート 5.9
スクシニル化モノグリセリド(SMG) 5.3
グリセロールモノステアレート(GMS) 3.7
プロピレングリコールモノエステル(PGME) 1.8
グリセロールモノステアレートは親油性の非イオン性界面活性剤であり、デンプン組成
物において消泡効果と抗劣化(後退)効果を有しているので、この用途に特に適している
。1〜1.5%の範囲のレベルで加えられたグリセロールモノステアレートは、乳化剤と
して作用して機械的特性を安定化させ、ブレンドの均一性を向上させる。0.25%〜1
.5%のステアロイル乳酸ナトリウムを可塑剤系に加えて機械的特性を安定化させ、ブレ
ンドの均一性を向上させることができる。ステアロイル乳酸塩(ナトリウムまたはカルシ
ウム塩として)は、生地強化剤(dough strengthener)としても一般
に使用され、したがって抗劣化(後退)剤として作用することができる。グリセロールモ
ノステアレートとステアロイル乳酸ナトリウムの組合せは特性のより速い安定化をもたら
す。HLB値は添加剤の規定に従うものであり、SSLとGMSの適切な混合物のために
は4〜10のオーダーである。
【0044】
(水)
デンプンを「ゼラチン化(gelatinising)」(ゲル化または溶融(destructurising)
とも称される)してポリマー状のゲル構造にするために水を加える。水は、最終製品にお
いて可塑剤のような働きもする。そこで水は材料を軟化させるかまたはモジュラスを小さ
くする。バリヤー材料の含水率は30%未満かまたは75%を超える水分活性度または相
対湿度(RH)で変えることができる。多くのバリヤーフィルムおよびバリヤーボトル用
途において、バリヤー材料が曝される局部的なRHは最大で90%の値に達してよい。安
定した機械的積層化およびバリヤー特性のため、またすべての温度での加工を容易にする
ためには、非揮発性可塑剤が好ましい。したがって、コンパウンディング段階の間かその
後で、および/または続く射出成形またはフィルム形成の供給段階において、水の一部ま
たはすべてを乾燥除去することができる。これは、押出機バレルをベントするか、および
/またはペレットをオンライン乾燥させて実施することができる。その工程の間の発泡ま
たは使用の際の機械的特性の著しい変化を回避するために、保湿剤の助けを得て残留する
水をすべて適切に結合させなければならない。可塑化していない配合物の押出加工は10
%の低さの自由水分濃度で可能であり、ポリオール可塑剤との配合物は、射出成形前に0
%の自由水分まで乾燥することができる。好ましい自由水分率は、水分脱離実験により測
定して、最終製品の使用時のRH範囲での配合物の平衡含水率である。配合物の具体的組
成によって変わるが、これは0〜3%の範囲である。
【実施例】
【0045】
本発明のバリヤー材料(薄膜用か共射出成形用のいずれか)は表1に示した処方のデン
プンポリマー組成で調製することが好ましい。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例1)
48.3%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、27.4%ソル
ビトール、9.6%ポリビニルアルコール、7.7%マルチトール、5.1%グリセロー
ル、1%GMS、0.6%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる
配合物。
【0048】
比較例2
64.1%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、12.8%ポリビニルアルコール、11.7%ソルビトール、5%グリセロール、3.3%マルチトール、1%GMS、0.8%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0049】
比較例3
52.0%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、35.1%グリセロール、11.0%ポリビニルアルコール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0050】
比較例4
53.0%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、34%キシリトール、11.2%ポリビニルアルコール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0051】
比較例5
52.0%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、35.0%ソルビトール、11.0%ポリビニルアルコール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0052】
比較例6
52.0%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、35.0%エリトリトール、11.0%ポリビニルアルコール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0053】
(実施例7)
51.9%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20.2%グリ
セロール、10.8%ポリビニルアルコール、10.1%マルチトール、5.0%ソルビ
トール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムから
なる配合物。
【0054】
比較例8
53.3%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、18.4%グリセロール、12.5%ポリビニルアルコール、8.1%マルチトール、5.4%ソルビトール、1.1%GMS、0.8%ステアリン酸、0.3%ステアロイル乳酸ナトリウムからなる配合物。
【0055】
(実施例9)
54.9%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、18.7%グリ
セロール、10.0%ポリビニルアルコール、8.3%マルチトール、5.5%ソルビト
ール、0.9%GMS、0.5%ステアリン酸、0.23%ステアロイル乳酸ナトリウム
からなる配合物。
【0056】
(実施例10)
66.5%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、13.1%グリ
セロール、7.6%ポリビニルアルコール、5.8%マルチトール、3.9%ソルビトー
ル、1.7%GMS、1.1%PEO、0.5%ステアリン酸からなる配合物。
【0057】
(実施例11)
66.5%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、11.0%グリ
セロール、7.6%ポリビニルアルコール、9.2%ソルビトール、2.6%マルチトー
ル、1.7%GMS、1.1%PEO、0.5%ステアリン酸からなる配合物。
【0058】
(実施例12)
50%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20%グリセロール
、10.3%ポリビニルアルコール、10%マルチトール、5%ソルビトール、1%GM
S、0.26%ステアロイル乳酸ナトリウム、1.1%亜硫酸水素カリウム、1.1%ア
スコルビン酸、0.7%ステアリン酸、0.5%クエン酸からなる配合物。
【0059】
(実施例13)
47.2%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20%グリセロ
ール、10%ポリビニルアルコール、10%マルチトール、5%ソルビトール、5%クエ
ン酸、0.9%GMS、0.23%ステアロイル乳酸ナトリウム、1%亜硫酸水素カリウ
ム、0.1%アスコルビン酸、0.6%ステアリン酸からなる配合物。
【0060】
(実施例14)
50.9%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20.5%グリ
セロール、10.8%ポリビニルアルコール、10.3%マルチトール、5.1%ソルビ
トール、1%GMS、0.7%ステアリン酸、0.5%クエン酸、0.24%ステアロイ
ル乳酸ナトリウム、0.1%アスコルビン酸、0.01%亜硫酸水素カリウムからなる配
合物。
【0061】
(実施例15)
47.2%ヒドロキシプロピル化高アミローストウモロコシデンプン、20.2%グリ
セロール、9.7%ポリビニルアルコール、10.1%マルチトール、5%ソルビトール
、4.96%クエン酸、1%アスコルビン酸、0.9%GMS、0.6%ステアリン酸、
0.22%ステアロイル乳酸ナトリウム、0.01%亜硫酸水素カリウムからなる配合物
【0062】
(バリヤー特性)
【0063】
【表2】
【0064】
本発明の選択された配合物の酸素透過度を、包装用の一般包装材料およびバリヤー材料
と比較して表2に示す。
本発明の配合物の相対湿度に対する依存性を図2にグラフで示す。本発明の配合物はE
VOHと同等であり、高い湿度ではEVOHやMXD6の両方より優れている。これは、
ボトル壁の内側で局所湿度が80〜90%のオーダーである飲料品の用途に特に適してい
る。
【0065】
本発明のバリヤー性能に寄与する主成分はデンプン、特に化学的に加工された高アミロ
ースデンプンおよびPVOHである。ポリオール可塑剤もそのバリヤー特性に寄与する。
表2および図3は、本発明の配合物がWO90/14938に記載されている高アミロ
ースデンプンフィルムで得られている酸素バリヤーより著しく優れていることを示してい
る。この成分、ならびに押出工程においてこれらの成分によって形成され得る任意の複合
体の相乗効果は、本発明のポリマー材料の酸素バリヤー性を大幅に向上させる助けとなる
ことができる。
【0066】
【表3】
【0067】
表3は本発明の配合物の二酸化炭素バリヤーを示し、図4は性能の湿度依存性を示す。
バリヤー性能は、市販の包装用途において通常用いられるEVOHグレードと同等である
【0068】
(光学的特性)
本発明のバリヤー層は透明であり、理想的には製品の視認性を可能にする多層包装品目
に適している。
【0069】
本発明のバリヤー材料の光学的特性は250マイクロメートルのシートで測定し、結果
は8〜10%のヘイズ(ASTM D1003−00)、85〜95%の光透過率(AS
TM D1746−92)、および84.7%の60°鏡面光沢度(ASTM D245
7−97)であった。試験したフィルムは、施用したバリヤー層の10倍の厚さであった
ので、このバリヤー材料は、PET清涼飲料品ボトルにおける20〜40マイクロメート
ル厚さのバリヤー層のための所要の光学的特性、すなわち90%を超える光透過率、3%
未満のヘイズおよびlab b*の読みによる評価で2未満の黄変を達成している。15
マイクロメートル厚の層のEVOH−Fは1.5%のヘイズを有し、12〜14マイクロ
メートル厚のPETは2.5〜3.9%のヘイズを有する。20〜22マイクロメートル
厚のPPは2.2〜3.5%のヘイズを有する。
【0070】
(製造方法)
材料は、同方向回転または逆方向回転2軸押出機または選択された設計の単軸押出機を
用いて、押出コンパウンディングによって作製される。好ましい方法は、少なくとも10
バールの押出圧力と少なくとも100RPMのスクリュー速度での2軸同方向回転コンパ
ウンディングである。他の可塑剤のレベルや特性に応じてプロセスに水を加えることがで
きる(可塑剤と一緒での液体注入によって)。水の除去は、押出物ストランドのための対
流乾燥、接触加熱、IR加熱もしくはマイクロ波乾燥、顆粒のための遠心分離法および流
動床法またはバレルガス抜き法(venting)あるいはこれらの組合せによって実施
することができる。顆粒は、水中でのペレット化、ダイフェース切断、またはストランド
冷却および切断によって得ることができる。
【0071】
(単層または多層の転換プロセス(conversion process)における加工性)
多層用途のためのレオロジー適合性
薄膜グレードポリプロピレンおよびボトルグレードPETと比較して、それぞれの加工
温度での、本発明の複数の配合物の剪断速度に対する粘度依存性を図1に示す。粘度曲線
は、可塑剤の種類やレベルを変えることによって、共押出法において他のポリマーとの相
溶性を達成するように調整することができる。これは、実施例10と11との粘度曲線の
差で示されている。処方の違いはソルビトールとマルチトールの割合だけであるが、これ
ら2つの実施例の粘度曲線はまったく異なっている。さらに、実施例10について図1
130℃のバレル温度対200℃バレル温度で示すように、異なるバレル温度は、粘度を
変える助けとなることができる。実施例11の粘度曲線はPPの曲線と特に適合しており
、それは、供給ブロックを用いたフィルム共押出に適したものになっている。
【0072】
(PETでの共射出(co-injection)延伸ブロー成形)
熱安定性
乾燥した配合物の耐熱性を、DSCならびに配合物の発泡および/または褐変を評価す
るための対流型オーブン実験によって試験した。表4に本発明のある範囲の配合物の熱安
定性の結果を示す。より高いレベルのソルビトールまたはキシリトールを有する配合物は
最も熱的に安定であり、高いレベルのグリセロールを有する配合物がそれに続くことが分
かった。高いマルチトールレベルを有する配合物は熱的安定性がより劣る。亜硫酸水素カ
リウムとアスコルビン酸を一緒に加えると熱劣化(熱分解)を著しく遅延させ、他方、ク
エン酸にアスコルビン酸を加えると、室温でも時間とともに褐変を引き起こした。亜硫酸
水素カリウムの存在下のクエン酸も、いずれかが存在しない配合物の場合より低温で褐変
を引き起こした。しかし、それはアスコルビンの存在下ほど早くはなく、また激しくもな
かった。保湿性可塑剤を用いると、これらの未乾燥処方物の水の蒸発の抑制の助けとなる
。したがって、保湿性可塑剤で可塑化された部分乾燥配合物は、PET共射出成形で用い
られる高いノズル温度でもまったく発泡が見られない。
【0073】
【表4】
【0074】
共射出(co-injection)
材料は、高温または冷却ランナーシステムを用いた従来のスクリュー駆動法または射出駆動法で射出成形することができる。本発明の配合物は、高温での共射出成形のためにPETと相溶性であるように設計されている。本発明のある範囲の配合物は、99トンのクランプ力と、28gの予備成形体を作製する4つのキャビティモールドを有するHusky IN−90予備成形インデックス装置で首尾よく共射出成形された。本発明のバリヤー材料に用いた「A」押出機は標準45mmのRS PETスクリューであり、「B」スクリューは18mmのRSスクリューであり、締切りノズルを備えていた。予備成形体の鋳型のコールドハーフは標準設計であった。ホットハーフは特別設計であった。2つの材料を別個のマニホールドに送り、ノズル中で一緒にして環状(annular)流れパターンを形成させた。それぞれのマニホールドは別個に温度制御されており、良好に熱分離されていた。マニホールド系の中で、ノズルだけは両方の材料流れが同一温度でなければならない部分である。この温度は一般に、PETの要件に適合するように、おおよそ250〜280℃である。材料は、標準的な工業用除湿乾燥機で所定の乾燥を行った。高レベルのソルビトール、低レベルのマルチトールまたは亜硫酸水素カリウムを有する配合物は、PETを用いて共射出するのに熱的に十分安定である。表5は、実施例1、7および9と比較例8に用いた共射出法のための典型的な加工条件を示す。
【0075】
【表5】
【0076】
ボトルブロー成形
本発明の配合物は、従来の延伸ブロー成形ラインで容易にボトルにブロー成形すること
ができる。実施例1および実施例9で作製したバリヤー層を有する予備成形体を、市販の
PET延伸ブロー成形機で赤外線加熱ランプおよび機械的延伸ロッドを用いて、ボトルに
ブロー成形した。予備成形温度は100〜120℃の範囲であり、35〜45バールのブ
ロー成形圧力を用いた。出力速度はキャビティ当たり1000ボトル/時であった。
接着性
>50ダイン/cmの表面張力を有するこのバリヤー材料の極性の特徴と結晶性関連収
縮の欠如のため、PETとの接着性は非常に良好であり、したがって、MXD6およびE
VOHより著しく優れていることがわかった。
機械的特性
バリヤー層は典型的には、多層構造の合計層厚さの約5〜20%を占める。したがって
、その機械的特性は最終特性の機械的特性にある程度寄与することになる。バリヤー材料
の機械的特性がより低い場合、容器の壁の厚みを若干増大させていくらかの補正が必要と
なることがあるが、それはバリヤー層厚さを超えることはない。したがって、せいぜい1
0%の増加であり、従来のバリヤー材料と比較して削減されたコストで、優れたバリヤー
特性の利点によって埋め合わされる。ボトルブロー成形法の場合と同様に伸び挙動も重要
であり、軸方向延伸は約1.5X〜3.5Xであり、フープ(hoop)延伸は約3.5
X〜5Xである。この延伸は加熱した形態で行い、バリヤー層はマトリックスで支持する
【0077】
このバリヤー材料の機械的特性を、表6に射出延伸ブロー成形について市販の材料と比
較する。
【0078】
【表6】
【0079】
(キャストフィルム押出)
最後にこのバリヤー材料は、任意選択の印刷およびワニスを施した単層製品として用い
ることもできる。この材料が理想的には熱成形加工にも適しているので、得られるフィル
ムは、菓子類バーまたはパウチ用には薄くすることができ、熱成形用途には厚くすること
ができる。
【0080】
本発明の配合物は薄膜の押出注型に適している。当業者は、必要な用途のために、必要
な溶融強度と機械的特性が得られるように、適切な可塑剤レベルを選択することができる
。本発明の選択した配合物を、90mm単軸押出機を用いて、90〜200℃バレル温度
の範囲で1050mm広幅シートダイを通して70〜200kg/hの処理速度で単層薄
膜注型した。10〜50m/分の範囲のロール速度で10〜30のオーダーの引取り比(
Haul off ratio)用いて、強い単軸配向性が得られた。
【0081】
この材料の単層薄膜の機械的特性を表7にまとめる。
【0082】
【表7】
【0083】
本発明で用いる好ましい組成物はコールドシール可能であり、またホットシール可能で
ある。
(2軸延伸フィルム押出成形)
このバリヤー材料は、共押出して積層体にするか、または別個の積層化ステップで従来
のフィルムポリマー(例えば2軸延伸PP)と一緒にすることができる。他の材料は、ポ
リプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)
、あるいはポリ乳酸(PLA)などの生分解性ポリマーまたは他のポリエステルなどの任
意の適切な包装用ポリマーであってよい。追加のタイ層および保護コーティングが必要と
考えられる場合、本発明のバリヤー材料は、3層の積層体または5層〜7層製品の中間層
として使用することが好ましい。
【0084】
さらに、一方の側だけに耐水性が必要であるか、または包装製品に水蒸気バリヤーが必
要でない場合、それは2つの層の包装用ラップのうちの内層であっても外層であってもよ
い。
【0085】
当業者は、所望のポリマーの組合せに必要な粘度適合性が得られるように適切な可塑剤
レベルを選択することができる。ほとんどの場合、供給ブロックは種々の材料層を制御す
るのに十分であり、他の場合複数のマニホールドダイがより望ましい。
多層適合性
接着性は、PETなどの極性材料とは非常に優れており、BO−PPなどの非極性材料
との接着性については通常のタイ層樹脂が必要とされる。適切なタイ層材料にはPP、E
VA、LDPEまたはLLDPEをベースとしたグラフト化ポリマーが含まれる。PPへ
の接着のためには、透明な用途にはAtofinaからのOrevac PPCが適して
おり、不透明な用途にはAtofinaからのOrevac18729または18910
が適している。他の適切なタイ層には、EVAコポリマー、アクリル酸コポリマーおよび
ターポリマー、アイオノマー、メタロセンPE、エチレンアクリル酸エステルターポリマ
ーおよびエチレン酢酸ビニルターポリマーが含まれる。無水物改変ポリマーは本発明の乾
燥配合物にも適している。バリヤー材料は本質的に帯電防止性であり、すべての標準的印
刷技術で印刷するかまたはコーティングすることができる。溶媒をベースとしたインクに
ついては、テープ剥離試験で測定して、インクやコーティング材との接着性が非常に優れ
ている。引き裂き抵抗(ASTM D1938)は200〜400Nmであり、摩擦運動
係数(ASTM D 1434)は0.1〜0.3である。
フィルムブロー成形
このバリヤー材料は、多くは多層2軸延伸フィルム押出について上記した原理によって
、望むなら同様のタイ層の原理を用いて、共押出を行ってブロー成形フィルムにすること
ができる。
【0086】
本発明の処方は、層の厚さとコンパウンド価格の両方のコスト削減を可能にする、大幅
に少ないコストで、ごく一般に用いられる材料(例えばMXD6)より良好なバリヤー特
性を提供するという点で、バリヤー材料の中では非常に独特である。
【0087】
このバリヤー材料の構成成分の特性は、オイルをベースとしたポリマーと比較してその
価格を確実に安定させ、また、それらがMXD6の価格の80%の利益性を備え得ること
ができるので、MXD6と比較して価格競争力を確実にする。
【0088】
さらにその水への溶解性が、このバリヤーをそれと混合するマトリックス材料への再利
用性を優れたものにしている。単層構造バリヤー包装材として用いる場合、この材料はさ
らにコンポスト化可能でかつ生分解性であり、環境温度でゴミとして分解し生分解する。
この独特の特性は処方における化合物の組合せによるものである。
【0089】
当業者は、本発明の本質的な教示から逸脱することなく、本発明を様々な仕方で実施で
きることを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】本発明の選択された配合物の粘度の剪断速度依存性を、ボトルグレードPETおよびフィルムグレードPPと比較して示す図である。
図2】本発明のバリヤー材料の酸素透過度の相対湿度依存性を、EVOHおよびMXD6と比較して示す図である。
図3】本発明のバリヤー材料の酸素透過度の相対湿度依存性を、特許WO90/14938のデンプンフィルムと比較して示す図である。
図4】本発明のバリヤー材料の二酸化炭素透過度の相対湿度依存性を、EVOHおよびMXD6と比較して示す図である。
図1
図2
図3
図4