(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066998
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】二酸化チタン光触媒組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
B01J 23/06 20060101AFI20170116BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20170116BHJP
B01J 23/50 20060101ALI20170116BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20170116BHJP
A01G 13/00 20060101ALI20170116BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20170116BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20170116BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
B01J23/06 M
B01J35/02 J
B01J23/50 M
A01G7/06 A
A01G13/00 A
A01N59/16 Z
A01P21/00
A01P1/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-509443(P2014-509443)
(86)(22)【出願日】2012年5月3日
(65)【公表番号】特表2014-519401(P2014-519401A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012036337
(87)【国際公開番号】WO2012151407
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】61/482,393
(32)【優先日】2011年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513277430
【氏名又は名称】スチュワート・ベンソン・アベレット
【氏名又は名称原語表記】Stewart Benson AVERETT
(73)【特許権者】
【識別番号】513277441
【氏名又は名称】デブロン・アール・アベレット
【氏名又は名称原語表記】Devron R. AVERETT
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート・ベンソン・アベレット
(72)【発明者】
【氏名】デブロン・アール・アベレット
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−084542(JP,A)
【文献】
特開平09−072761(JP,A)
【文献】
特開2002−088485(JP,A)
【文献】
特開2005−255558(JP,A)
【文献】
特開平11−343209(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0104086(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0079977(US,A1)
【文献】
特開2010−069469(JP,A)
【文献】
T.K. GHORAI et al.,Photocatalytic oxidation of organic dyes by nano-sized metal molybdate incorporated titanium dioxide (MxMoxTi1-xO6) (M = Ni, Cu, Zn) photocatalysts,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,Volume 273, Issues 1-2,pp. 224-229
【文献】
Sesha S. SRINIVASAN,Synergistic effects of sulfation and co-doping on the visible light photocatalysis of TiO2,Journal of Alloys and Compounds,2006年,Volume 424, Issues 1-2,pp. 322-326
【文献】
Yin ZHAO et al.,Zn-doped TiO2 nanoparticles with high photocatalytic activity synthesized by hydrogen-oxygen diffusion flame,Applied Catalysis B: Environmental,2008年,Volume 79, Issue 3,pp. 208-215
【文献】
Ji-Jun ZOU et al.,Zn- and La-modified TiO2 photocatalysts for the isomerization of norbornadiene to quadricyclane,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2008年,Volume 286, Issues 1-2,pp. 63-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛(Zn)と、Ag、Si、C、S、Ru、Cu、Os、Re、Rh、Sn、Pt、Li、NaおよびKよりなる群から選択される少なくとも1つの他のドープ剤とでドープされた二酸化チタン(TiO2)ナノ粒子を含む光触媒組成物。
【請求項2】
二酸化チタンナノ粒子が約2nm〜約20nmの平均粒子サイズを有する、請求項1記載の光触媒組成物。
【請求項3】
亜鉛(Zn)および二酸化ケイ素(SiO2)でドープされた二酸化チタン(TiO2)ナノ粒子を含む光触媒組成物。
【請求項4】
二酸化チタンナノ粒子が約2nm〜約20nmの平均粒子サイズを有する、請求項3記載の光触媒組成物。
【請求項5】
亜鉛(Zn)と、Ag、Si、C、S、Ru、Cu、Os、Re、Rh、Sn、Pt、Li、NaおよびKよりなる群から選択される少なくとも1つの他のドープ剤とでドープされた二酸化チタン(TiO2)ナノ粒子を含む光触媒組成物を人工光で照明した表面に散布することを含むことを特徴とする、表面上の微生物の感染を処置または予防する方法。
【請求項6】
二酸化チタンナノ粒子が約2nm〜約20nmの平均粒子サイズを有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
表面が無生物対象であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの他のドープ剤が、Siであることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微生物による病気、より詳細には植物における微生物による病気の処置に有用な二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む新規な光触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間、物質の特性の開発および探求は、TiO
2のごとき結晶性金属酸化物の光触媒性質の認識に導いた(Fujishimaら, Nature, vol. 238, pgs. 37-38, 1972)。多くの努力がこの領域で研究するように向けられた結果、センサー、光触媒および太陽光発電のごとき広範囲の潜在的適用を生じた。かかる物質の特性は、それらの化学組成、サイズおよび形状に依存する。特に、物質の粒子サイズが減少するにつれて、新たな物理的および化学的特性が、非常に増加した表面積の結果として出現し得る。しかしながら、物理的特性と光触媒活性との関係は複雑であり、ChenらのTiO
2ナノ粒子の合成方法および物理化学の広範囲の概説(Chemical Reviews, vol. 107, pgs. 2891-2959, 2007)に言及されるように、最適な条件および構造はケース毎に変化し得る。
【0003】
TiO
2による光触媒作用の発見の数年後に、研究は、紫外線(UV)放射(387nm)で60〜120分間照射された場合に、TiO
2が光活性抗菌性コーティングとして作用することを示し;そのコーティングは大腸菌およびラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)に対して高い殺菌作用を有することが示された(Matsunagaら, FEMS Microbiology Letters, vol. 29, pgs. 211-214, 1985)。引き続いての研究は、表面に存在する場合に院内感染の危険性を増加させる生物(Dancer, S.J., Lancet Infectious Diseases, vol. 8, pgs. 101-113, 2008)を含めた、ある範囲の細菌性、真菌性およびウイルス性の生物に対する阻害効果を有し得るナノスケールTiO
2製剤の開発に導いた(例えば、Tsuangら, Artificial Organs, vol. 32, pgs. 167-174, 2008および Choiら, Angle Orthodontist, vol. 79, pgs. 528-532, 2009)。かくして、無生物の表面上の微生物汚染の低減が望まれる場合に、ナノスケールTiO
2コーティングをその表面に散布し、続いてUV照明をすることができる。
【0004】
より最近では、少数の報告書が出現し、TiO
2を植物に散布して、ある種の利点を提供できることを示した。Kawaiは、TiO
2調製物の散布からの光触媒された酸化効果が有機物質を劣化させ、それにより、葉表面での局所CO
2濃度を増加させて、植物の糖含量の増加に導き、また、植物脂質の酸化によって少なくともいくつかの植物において抗菌性条件を創製して、病原性微生物の影響を低減する内因性植物防御機構を誘導することを提唱した(米国特許第6,589,912号)。30nmの平均粒子サイズを持つ商用光触媒ナノスケールTiO
2は、開花および結実を促進し、ある種の病気の発生率を低下させることが報告された(日本特許第2006−632721号)。また、もう一つのグループは、平均30nmのTiO
2粒子がキュウリの葉における2種の細菌からの病気の範囲を低減させ、また、光合成速度を増加させることが報告された(Zhangら, Nanoscience, vol. 12(1), pgs. 1-6, 2007; Zhangら, Journal of Inorganic Materials, vol. 23(1), pgs. 55-60, 2008;およびCui ら, NSTI-Nanotech, vol. 2, pgs. 286-289, 2009)。
【0005】
ナノスケールTiO
2はUV域の光を吸収するが、可視域に吸光度をほとんど有しない;この特性は、UVダメージからの保護が有用である適用においてそれを有用成分にする。しかしながら、いくつかの適用において、より長い波長光で光触媒効果を達成することは好ましいであろう。例えば、一般的に、屋内照明は最小のUVエネルギーを示し、光触媒作用を示すナノスケールTiO
2の能力を非常に低下させる。同様に、農業的適用におけるより大きな光触媒効率は、散布の量および費用を低減でき、また、光触媒によって捕捉された利用可能な日射量の割合を増加させることにより、多数の利点を得ることができる。かくして、より長波長の吸光度の増加は、広範囲の適用にわたる光触媒効果の利点を可能にするであろう。
【0006】
長年にわたる研究は、結晶格子構造を変更するドープ剤の導入によって、TiO
2の吸収スペクトルを変更できることを示した。より最近の報告は、吸収スペクトルが全可視域にわたって広がり、ヒトの眼に対して黒色である物質を生成できることを示す(Chenら, Science Xpress, pgs. 1-10, オンライン公開January 20, 2011, Science.1200448)。しかしながら、かかる広い吸光度スペクトルは、光合成のための日射量に依存する植物に対する使用に望ましくない。
【0007】
植物の光合成効率は、電磁スペクトルにより変化する。ある光合成速度を与えるために必要とされる所与のエネルギーまたは波長の光子数を測定でき、ある範囲の波長にわたり決定される場合、作用スペクトルを得る。詳細な作用スペクトルは、種々の植物種につき広範囲の単色光にわたり報告されている。33種の高等植物についての作用スペクトルの系統的研究が報告されている(Inada, K., Plant and Cell Physiology, vol. 17, pgs. 355-365, 1976)。注目されるのは、すべての草本性植物についての作用スペクトルは一般的に同様であり、500〜680nmの高く広いピークを持ち、これは約435nmでのより低くより狭い肩まで伸び、より短波長で急速に低下するという観察である。435nmの肩のサイズは、草本性植物と比較して低下するが、木本性植物についてのスペクトルは同様である。
【0008】
かくして、約450nm未満の波長について電磁エネルギーを効率的に吸収する効率的な光触媒物質についての必要性が存在する。原料の費用および豊富さ、合成および適用の容易さ、特に、低環境毒性、かくして、その剤を含むいずれの物質についてもよく確立された安全性を含めた、最適化された光触媒作物保護および収量増強剤(yield-enhancing agent)についてのさらなる要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、微生物による病気、より詳細には植物における微生物による病気の処置に有用な二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む新規な光触媒組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、微生物による病気および感染、より詳細には、植物における微生物による病気および感染の処置および予防に有用である、ドープされた二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む光触媒組成物に関する。
【0011】
1つの具体例において、本発明は、亜鉛(Zn)でドープし、約5〜約150の亜鉛に対する二酸化チタンの比率を有する二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む光触媒組成物を提供する。
【0012】
光触媒組成物は、さらに二酸化ケイ素(SiO
2)を含むことができる。二酸化ケイ素に対する二酸化チタンの比率は、約1〜約500である。
【0013】
二酸化チタンナノ粒子は、好ましくは約2nm〜約20nmの平均粒子サイズを有する。
【0014】
光触媒組成物は約200nm〜約500nmの波長範囲において電磁放射を吸収し、約450nmより長波長の光の吸光度は、約350nmより短波長の光の吸光度の50%未満である。
【0015】
さらに、本発明は、本明細書に教示された光触媒組成物を植物表面に散布することを含む、植物中の微生物による病気および感染を予防または処置する方法を提供する。また、本発明は、本明細書に教示された光触媒組成物を植物表面に散布することを含む、植物の作物保護および収量増強する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、種々のTiO
2組成物の太陽エネルギー捕捉の図示である。
【
図2】
図2は、354nmで照射した場合の種々のTiO
2組成物の光触媒活性の図示である。
【
図3】
図3は、UV−A光を用いて種々のTiO
2組成物で処置した表面上のキサントモナス・パーフォランス(Xanthomonas perforans)の光触媒死滅を示す。
【
図4】
図4は、日光中の植物当たりの葉斑病変の数の予防/低減における種々のTiO
2組成物の有効性を示す。
【
図5】
図5は、日光中でオリーブ癌腫病の防除につき選択された処置の有効性を示す。
【
図6】
図6は、日光下で、うどん粉病の真菌原因病原体のスフェロテカ・フリジネア(Sphaerotheca fuliginea)/エリシフェ・シコラセアラム(Erysiphe cichoracearum))の分生子発生に対する種々のTiO
2組成物の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、植物に対する使用のための広く有用な光触媒製品についての要求を満たし、未改変ナノスケールTiO
2に対する優位性を示す改変された光触媒組成物を提供する。さらに、適当な適用を評価した。組成物は、トマト植物に対する黒色葉斑を予防し、市場性が有る果物の収量を増加させ、カンタロープに対するうどん粉病分生子の形成を低減し、微生物誘発腫瘍からオリーブ植物を保護する。この組成物はよく特徴づけられ安全な物質のみを含み、通常のスプレー機器を用いて、圃場に容易に散布できる。本発明に具体化された改良は、屋内人工照明を含めた低UV照射量の設定における光触媒活性の利点を与える。
【0018】
本発明は、微生物による病気および感染、より詳しくは、植物における微生物による病気の処置および予防に有用である、亜鉛(Zn)をドープした二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む光触媒組成物に関する。
【0019】
1つの具体例において、本発明は、約5〜約150の亜鉛に対する二酸化チタンの比率を有する亜鉛(Zn)でドープされた二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む光触媒組成物を提供する。亜鉛に対する二酸化チタンの比率は、好ましくは約40〜約100である。
【0020】
光触媒組成物は、さらに二酸化ケイ素(SiO
2)を含むことができる。二酸化ケイ素に対する二酸化チタンの比率は、約1〜約500、好ましくは約3〜約20である。
【0021】
二酸化チタンナノ粒子は、好ましくは約2nm〜約20nmの平均粒子サイズを有する。
【0022】
本発明の特に好ましい具体例は、
(A)約5000〜約8000ppmの二酸化チタン、
(B)約50〜約100ppmの亜鉛、および
(C)約500〜約1000ppmの二酸化ケイ素
を含む光触媒組成物を提供する。
【0023】
光触媒組成物は、約200nm〜約500nmの波長範囲の電磁放射を吸収し、約450nmより長波長の光の吸光度は、約350nmより短波長の光の吸光度の50%未満である。
【0024】
本発明のもう一つの具体例は、約5〜約150の亜鉛に対する二酸化チタンの比率を有する亜鉛(Zn)でドープされた二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む光触媒組成物を植物表面に散布することを含む、植物における微生物による病気および感染を処置または予防する方法に提供する。
【0025】
処置される植物として、限定されるものではないが、草本性および木作物植物、例えば、トマト植物、キュウリ植物、柑橘系植物、オリーブおよび他の石果(drupe)植物、リンゴおよびナシ状果(pome)植物、ナッツ植物を含めた作物植物ならびに観賞用植物が挙げられる。
【0026】
微生物による病気として、限定されるものではないが、葉斑病、オリーブ癌腫病、クルミ枯病、チェリー癌腫病(cherry canker)およびうどん粉病が挙げられる。
【0027】
また、本発明は、約5〜約150の亜鉛に対する二酸化チタンの比率を有する亜鉛(Zn)でドープされた二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む光触媒組成物を植物表面に散布することを含む、植物の作物収量を増加させる方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、約5〜約150の亜鉛に対する二酸化チタンの比率を有する亜鉛(Zn)でドープされた二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子を含む光触媒組成物を、人工光によって照明された表面に散布することを含む表面上の微生物による病気または感染を処置または予防する方法を提供する。「表面」なる本明細書における使用は
、無生物
対象および植物を含めた動植物対象を意味する。
【0029】
さらに、本発明は、少なくとも1つのドープ剤でドープされた二酸化チタン(TiO
2)ナノ粒子含む光触媒組成物を植物表面に散布することを含む、植物における微生物による病気または感染を処置または予防する方法を提供し、ここに、ドープ剤の添加は、約200nm〜約500nmの範囲にわたって光の吸光度を増加させ、約450nmより長波長の光の吸光度は、約350nmより短波長の光の吸光度の50%未満である。好ましくは、ドープ剤の添加は、約350nm〜約450nmの範囲にわたって光の吸光度を増加させる。光触媒組成物に有用なドープ剤は、Ag、Zn、Si、C、N、S、Fe、Mo、Ru、Cu、Os、Re、Rh、Sn、Pt、Li、NaおよびKならびにその組合せよりなる群から選択される。特に好ましいドープ剤はZn、SiおよびAgである。
【0030】
さらに、本発明は、約200nm〜約500nmの波長範囲において電磁放射を吸収する光触媒組成物を提供し、約450nmより長波長の光の吸光度は、約350nmより短波長の光の吸光度の50%未満である。組成物は、少なくとも1つのドープ剤によってドープされた二酸化チタンナノ粒子を含み、ここに、ドープ剤は、二酸化チタンナノ粒子の結晶格子構造を崩壊させ、それにより、その組成物の吸光度スペクトルを変化させる。
【0031】
本発明は、実質的に光合成に干渉しないように選択された波長範囲において利用可能な電磁エネルギーの割合の増加を吸収する光触媒物質を提供する。しかしながら、500nm未満の波長の光のエネルギーの改善された利用が、種々の設定における利益を与えるので、本発明の有用性は農業的使用に限定されないことが認識されるであろう。光触媒作用が多数の機序によって利点を与え得るので、本発明はいずれの特定の理論または機序の光触媒の利益にも限定されず、発明者らは本発明を特定の組成またはタイプの光触媒に限定しない。また、かかる物質を製造するために用いた合成方法は変更でき、発明者らは特定モードの製造に関して本発明を限定しない。
【0032】
さらに、本明細書に挙げられた実施例はTiO
2に基づいているが、Fe
2O
3のごとき種々の他の光触媒を、例えば、異なるレベルのSnO
2の包含によって同様に最適化でき、前記の他の光触媒が本発明において考えられる。本発明は、広範囲の表面への便利な散布のために水中で分散した本発明の製剤の使用によって説明されるが、本発明において考えられる調製物は、他の溶剤中で分散でき、選択された設定での使用または一様な散布の容易さを促進するために着色剤、分散剤、担体および両親媒性剤もまた利用し得る。
【0033】
操作例における以外、または特記されない場合には、すべての数を表現する成分量は、「約」なる用語によりすべての例において修飾されていると理解されるべきである。
【0034】
本明細書に用いた「少なくとも1つ」は、1またはそれを超えることを意味し、かくして、個々の成分ならびに混合物/組合せを含む。
【0035】
本明細書に用いた「含む」なる用語(およびその文法の変化)は、「有する」または「含む」という包括的な意味に用い、「のみよりなる」という排他的な意味において用いない。
【0036】
本明細書に用いた「ある(a)」および「その(the)」なる用語は、複数ならびに単数を包含すると理解される。
【0037】
本明細書に用いた「ドープされた」または「ドープ(doping)」なる用語は、物質の特性を改変する目的で1またはそれを超える不純物(例えば、ドーパント、ドープ剤)の物質への導入を包含すると理解される。
【0038】
「処置」および「処置する」なる用語は、先に存在する微生物による病気または感染の緩和を含む。
【0039】
「予防」および「予防処置」なる用語は、個々または集団のいずれかにおける病気または感染の発生または重症度の低下を含む。
【0040】
本発明は、以下の実施例によってさらに理解され、これは本発明の例示であり、その限定を意図するものではない。
【0041】
実施例
実施例1:
350nm〜500nmの波長範囲にわたって、ナノスケールTiO
2の吸収特性を2つの異なる亜鉛レベルおよびSiO
2でドープしたナノスケールTiO
2と比較した。ナノ粒子組成物を改変したゾルゲル法によって製造して、その平均サイズが6〜7nmであるアナターゼTiO
2のナノ粒子を含有する製剤を生成した。亜鉛をドープ剤として組み込み、低亜鉛含量(TiO
2に対して0.125%)または高亜鉛含量(TiO
2に対して1.25%)のいずれかを提供した。SiO
2がさらなるドーパントであった場合、それはTiO
2に対して10%にて存在した。その調製物を乾燥し、吸光度を粉末の拡散反射スペクトル(DRS)を得るための標準方法を用いて測定した。このスペクトル範囲にわたるASTM G173−03からの日射量(半球、37度の傾斜)を参考のために示す。(
図1参照)。
【0042】
スペクトルの近UVおよび紫領域において、ヘテロ原子でドープしたTiO
2調製物が同様の非ドープTiO
2よりも強力に吸収することは検査において明らかである。ドープした調製物は、日射量が比較的高いが、依然として植物の主な光合成作用スペクトル外である領域の400〜450nmで利用可能なエネルギーの25〜35パーセント多く吸収した。
【0043】
実施例2:UV照明下のZnおよびSiO
2でドープしたTiO
2の種々の製剤の光触媒活性
実施例1に記載の4種の製剤を標準化システムにおける光触媒活性についてテストした。各調製物を約8000ppmで水に懸濁し、ロボット高体積低圧噴霧器を用いて、ガラスパネルに散布し、24時間乾燥させた。これらのパネルを各々ガラス管に取り付けて容器を形成し、その中に664nmにて2.3の最適密度を提供する濃度にて30mlのメチレンブルー水溶液を入れた。管をガラスパネルで覆い、354nmにて紫外線照明を与えるランプ(GE item F18T8/BLB)から約0.5mW/cm
2のエネルギー密度の照明に付した。このランプは、300nm未満または400nmを超える波長の光を提供しない。各試料中のメチレンブルー溶液の光学密度は、48時間モニターし、
図2に示す。
【0044】
図2は、ナノコーティングが光学密度の低下を引き起こしたことを示し、これは有機色素メチレンブルーの光触媒分解に起因する。より高い量のドーパントを有したコーティングは最も急速な低下を与え、UV域(354nm)のランプからの光のより大きな吸光度と一致した。
【0045】
実施例3:可視光線照明下のZnおよびSiO
2でドープしたTiO
2の種々の製剤の光触媒活性
実施例1に記載の4種の製剤を第2の系におけるそれらの光触媒活性についてテストし、ここに、実施例2に用いた紫外線エネルギーにおいて不足した、実験の照明を日光または室内灯のごときより近接した模倣の関連照明に変更した。また、この実施例について、ナノ粒子製剤は、静的表面上よりはむしろ、pH7.2の20mMリン酸緩衝液中のコロイド懸濁液として評価した。実験は、96ウェルプレート形式において行い、ここに、各ウェルは、最終容量の200マイクロメーター中のメチレンブルー(0.05〜0.5の範囲で観察されたOD
655)およびナノ粒子製剤または適当な対照を含有した。2つのSylvania Gro-Luxランプ(F20 T12 GRO/AQ)からの光で20cmの距離からプレートを照射した。これらのランプは、400nm未満にてそれらの合計の放射エネルギーの2%しか放射せず、一方、それらの合計エネルギーの約36%は、380〜500nmの間で放射され、436nmのピークを有した(参考資料:Technical Information Bulletin “Spectral Power Distributions of Sylvania Fluorescent Lamps”, Osram Sylvania, www.sylvania.com)。
【0046】
この実験においてテストした4種の調製物の組成は、ICP−AES(誘導結合プラズマ原子発光分析)として知られた分析技術によって独立して確認され、それは実施例1に記載したSiおよびZn組成物におけるそれらの等価なTiO
2含量および変化を示した。ナノ粒子調製物を緩衝液で希釈して、各製剤の20連のウェルで、各製剤の75ppmの最終濃度の二酸化チタンを提供した。暗所における短期間の平衡後、各プレートを振盪しつつ照明に曝露し、Molecular Devices SpectraMax Plus分光光度計を用いて複数の時点にて655nmの光学密度を測定した。各製剤による光学密度において観察した直線低下を測定して、表1に要約した割合を得た:
【0047】
【表1】
* 報告した全ての値は、1分間当たり655nmの光学密度における低下である。
【0048】
非ドープTiO
2製剤と比較して、ドープTiO
2製剤のすべてがかなり増加した割合(25%〜50%)を示すことが明らかである。光触媒活性の割合における増加の大きさは、実施例1に記載したスペクトルにおいて明らかである400nm〜450nmの範囲における光エネルギーの吸収の増加と高度に一致している。
【0049】
実施例4:白熱光を用いた、表面上の植物病原体キサントモナス・パーフォランスの光触媒死滅
無菌ガラスカバーガラスを0.5ml体積のいくつかのタイプのナノ粒子懸濁液(TiO
2、TiO
2/AgまたはTiO
2/Zn)の1つで別々にコーティングした。実施例2におけるものに相当するナノ粒子組成物を改変したゾルゲル法によって製造して、その平均サイズが6〜7nmであり、約400:1および約800:1のTiO
2−対−ドーパントの比率を用いて、各々、AgまたはZnのいずれかでドープしたアナターゼ型TiO
2のナノ粒子を含有する製剤を生成した。カバーグラスは滅菌状態下で乾燥した。10
7個の銅抵抗性キサントモナス・パーフォランスを含む0.1mlの水の標準化接種菌液を適用して、未処理カバーグラスを処理するかまたは処理しなかった。次いで、カバーグラスを3×10
4luxの照明密度にて白熱光で照明するかまたは暗所環境に維持した。複数の間隔にて、カバーグラスを10mlの滅菌水を含む無菌遠心分離管に入れ、ボルテックスした。回収した細菌を遠心分離(14000×g、3分間)によって集め、1mlの滅菌水中に懸濁させた。得られた懸濁液中の生菌数を標準プレート希釈法によって計数した。結果を
図3に示す。
【0050】
図3の試験は、ナノ粒子処置の結果、未処置カバーグラス上で観察されない細菌の時間依存性および光依存性の死滅が生じることを示す。死滅速度は、非ドープTiO
2よりドープ調製物についてより速かった。注目されるのは、非照明のTiO
2/ZnおよびTiO
2によって死滅する細菌の不存在であるが、非照明の場合でさえTiO
2/Agはいくらかの死滅を示し、これはAgを含有する物質のより大きな天然毒性および照射が光触媒抗菌効果のためのエネルギーを供すという必要性の双方を示す。
【0051】
実施例5:葉斑の原因病原体のキサントモナス・パーフォランスによるトマト植物の感染を光触媒物質での処置によって低減する。
植物の多数の細菌性の病気が先に存在する集団の細菌の非防除の増殖により生じ、これは低い数では病気を引き起こさない。かくして、農業におけるこれらの病気を防除する主な方法は、植物の損害および病気に導く細菌の過剰な増殖を防止するためにその集団の生菌を低減することである。トマトの細菌性葉斑は、かかる予防的アプローチが一般的に求められる場合の病気系である。
【0052】
トマト栽培品種BHN602の種子ロットをキサントモナス・パーフォランス株Xp1−7に自然に感染させた。感染した植物は、非希釈または10倍希釈後のいずれでナノ粒子(TiO
2、TiO
2/AgおよびTiO
2/Zn)で第3〜4葉段階で処置した。実施例4におけるものに相当するナノ粒子組成物を改変したゾルゲル法によって製造して、その平均サイズが6〜7nmであり、約400:1および約800:1のTiO
2−対−ドーパントの比率を用いて、各々、AgまたはZnのいずれかでドープしたアナターゼ型TiO
2のナノ粒子を含む製剤を生成した。
図4に示したごとく、7,500〜10,000ppmまたは5,000〜8,000ppmの濃度にてナノ粒子を水に懸濁した。植物を毎日潅漑して、土壌水分レベルを85〜95%に保ち、1日当たり2回、各々15分間水でミストして、病原体増殖を増強した。3種の植物を各処理につきテストし、試行を無作為化完全ブロック計画(randomized complete block design)にて設定した。細菌斑病変を処置前および処置後2週間記録した。結果を
図4に示す。そのエラーバーは、平均の標準誤差を表す。
【0053】
全てのナノ粒子処置が細菌斑病変の数を低減したことは明らかである。各調製物の有効性は、この実験において10倍希釈によってかなりには影響されなかった。特に、TiO
2ナノ粒子へのドープ剤の添加は、非ドープTiO
2と比較して、有効性を改善し、増加した光触媒活性と一致している。
【0054】
実施例6:シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)病原型サバストノイ(savastonoi)によって惹起されたオリーブ癌腫病からの保護
オリーブ癌腫病は、オリーブに癌腫病を創製する運動性グラム陰性細菌であるP.シュードモナス・シリンゲ病原型サバストノイによって引き起こされたオリーブ木の病気である。この生物は、これらの癌腫病において生き残り、湿潤期間中に分散し、それは、葉および花の器官脱離傷跡を含めた傷、および風、剪定または凍結からの機械的損傷によって誘導されたものを介して新しい部位に入る。これらの癌腫病は、適当な植物成長を抑制し、果実生成を低減する。植物の多数の他の細菌性の病気において、病気が明らかになる前のその細菌集団における低下は、オリーブ癌腫病の発生を予防または低減し、かくして、その細菌集団を低減する方法は農業における一般的なアプローチである。
【0055】
温室研究において、10
5または10
8個のP.シリンゲ細菌のいずれかを葉痕傷に接種し、次いで、実施例1に記載したTiO
2/低Zn調製物の50倍の希釈で噴霧し、かくして、手噴霧器を用いて、250ppmの水性懸濁液を供した。いくつかの他の剤を対照としてテストした。これらの対照剤は、Arch Chemicals, Inc.、現在はLonza Goup Ltd, Basel Switzerlandの一部)からのVantocil B(ポリ(ヘキサメチレンビグアニドHClとアルキルジメチルアンモニウムクロリドとの組合せ);Deccosan 321(Decco Cerrexagri Inc, Monrovia CA USAからのいくつかの第4級アンモニウム塩の混合物);Kasumin (Arysta Lifescience N.A. LLC, Cary NC USA からのカスガマイシン塩酸塩) ;Citrox (Misco Products Corporation, Reading PA, USA により製造された、柑橘油、界面活性剤および過酸化水素の専売混合物) ;ならびにKocide 3000 (DuPont Crop Protection, USAからの水酸化銅)を含む。たとえこれが接種サイトでの光量を低減したとしても、接種部位を、1日間パラフィルムの単層でラップして、十分な湿気を維持し、高感染率を保証した。
【0056】
癌腫病形成の第1の証拠は1か月後に観察され、第1の定量評価を7週後に行った。より低い誘発接種にて、大部分の他剤と同様に、ナノ粒子TiO
2/低Zn処置(
図5においてAgriTitanという)は、完全に有効であった(
図5)。より高い誘発接種では、1000ppmの水酸化銅の現在の標準処置と同様に、250ppmのTiO
2/低Znでの噴霧処理は十分に有効で有り続けた。すべてのテストした他剤は、余り有効ではなかった(
図5)。
【0057】
実施例7:トマト圃場実験
温室実験に用いたZnでドープしたTiO
2調製物を圃場試験での使用に選択した。Znは、潜在的な他のドープ剤で与えられない状態の最小リスクの殺虫剤として米国環境保護局によるその承認により、さらなる調査のためのドーパントとして選択した。圃場試験を行い、トマト植物に対する葉斑の予防または防除についての標準的処置に対して、(H
2O中の0.7%のコロイド懸濁液として処方した)800:1の比率で亜鉛でドープしたTiO
2の有効性を比較した。各処置群は、48の植物(プロット当たり12種、4連)を含み、試験は無作為化完全ブロック計画を用いた。TiO
2/Znを水に希釈して、ある範囲の散布量を供した。対照は、硫酸銅製剤を単独でまたはマンゼート(manzate)と共に、および未処置を含んだ。
【0058】
移植後の第1週から開始して毎週の間隔(8回)でテスト物質を植物に噴霧した。病気重症度は、非次元12ポイントスケール(non-dimensional 12-point scale)を用いて毎月の間隔で見積り、細菌葉斑により影響されたキャノピー(canopy)のパーセンテージを評価した(Horsfallら, Phytopathology, vol. 35, 655, Abstract, 1945)。これらの値を中央パーセンテージに変換し、病気進行曲線下面積(Area Under Disease Progression Curve、AUDPC)を生成するために用いた。また、USDA等級に基づいた市場性収量データをその圃場試験から得て、ナノスケール製剤がトマト植物に対していずれかの除草作用を有するかどうかを決定した。その結果を表2および表3に示す。
【0059】
【表2】
xXは、TiO
2/Znの無希釈製剤を表す。
y病気重症度を非次元12ポイントスケールのHorsfall-Barrattスケールを用いて見積もり、細菌斑によって影響されたキャノピーパーセンテージを評価した。値は中央パーセンテージに変換し、これを用いてAUDPCを生成した。
Z同一文字で示したカラム平均は、スチューデント・ニューマン・クールズ検定法(Student Newman Keuls test)に基づいて有意には異ならない(P≦0.05)。
【0060】
表1に要約された圃場試験の結果は、TiO
2/Znが従来の処置のいずれよりも自発的葉斑病に対するより良好な保護を提供したことを示す。対での比較において、1:10で希釈したTiO
2/Znは、対照処置のいずれよりも統計的に有意により良好であり、AUDPCにおける20%を超える低下を示した。また、群としての対照に対する、群としての全希釈のTiO
2/Znについての結果比較は、統計的有意性(p<0.05)を示した。
【0061】
【表3】
xXは、TiO
2/Znの無希釈製剤を表す。
Z同一文字で示したカラム平均は、スチューデント・ニューマン・クールズ検定法に基づいて有意には異ならない(P≦0.05)。
【0062】
表3に要約された圃場試験の結果は、TiO
2/Znが市場性を有するトマトの収量に悪影響しないことを示す。実際、収量増加は、TiO
2/Zn処置群につき観察され;10倍に希釈したTiO
2/Zn物質で処置した植物からの合計の市場性を有する収量は、いずれの対照からの収量よりも20%以上大きかった。この差は、各群内の収量における変化に起因する個々の対の比較において統計的に有意ではないが、群としての3種の対照処置に対する、群としてのTiO
2/Znの6種の希釈についての「合計 市場性有り」の結果を比較する統計検定法は、統計的に有意であった(P<0.05)。
【0063】
実施例8
実施例7の再現を次の成長期に行った。そのプロトコールは実施例7と同一であり、ここに、種々の希釈のナノスケールTiO
2/低Zn水性調製物を適当な対照を用いて無作為ブロック計画における圃場内でトマトに通常の高体積の低圧縮空気噴霧により毎週散布した。病気進行についての結果を以下の表4に示し、病気の濃度依存性防除を示す。あいにく、果物収穫に先立ち嵐からのひどい被害により、収量データはこの実験につき入手できなかった。
【0064】
【表4】
xXは、TiO
2/Znの無希釈製剤を表す。
y病気重症度を非次元12ポイントスケールのHorsfall-Barrattスケールを用いて見積もり、細菌斑によって影響されたキャノピーパーセンテージを評価した。値は中央パーセンテージに変換し、AUDPCを生成するために用いた。
Z同一文字で示したカラム平均はスチューデント・ニューマン・クールズ検定に基づいて、有意には異ならない(P≦0.05)。収量データは、第1の収穫日の1週間前のひょう被害により採用できなかった。
【0065】
実施例9
トマト斑病気系での第3の圃場試験は、次の成長期に行った。実施例7および実施例8の結果に基づいて、発明者らは、TiO
2/Znのより薄い散布率を試験せず、かくして、散布率に対する明確な関係を検出する能力を低下させた。しかしながら、全般的な結果は同じであった(表5)。
【0066】
【表5】
xXは、TiO
2/Znの無希釈製剤を表す。
y病気重症度を非次元12ポイントスケールのHorsfall-Barrattスケールを用いて見積もり、細菌斑によって影響されたキャノピーパーセンテージを評価した。値は中央パーセンテージに変換し、AUDPCを生成するために用いた。
Z同一文字で示したカラム平均は、スチューデント・ニューマン・クールズ検定法に基づいて有意には異ならない(P≦0.05)。
【0067】
かくして、この第3の圃場試験において、TiO
2/低Znのナノ粒子の散布は、病気重症度および果実収量に基づいて、再度、トマトの細菌斑の防除における活性を示した。1:10の希釈では、TiO
2/Znは、単一剤の銅または未処置対照のいずれよりも統計的に優れていた。
【0068】
実施例10:うどん粉病の真菌性原因病原体のスファエロテカ・フリギニア(Sphaerotheca fuliginea)/エリシフェ・チコラセアルム(Erysiphe cichoracearum)の分生子の発生に対する実施例7および8において処方されたTiO
2/Znの効果
葉にほぼ等しい数の病変を持つキュウリ植物に、温室条件の実験のために標識札を付けた。3枚の葉を各処置に用いた。
図6において、「n」は、これらの葉の平均病変数を表す。その病変は、その範囲(0.1〜0.6cm)にあった。植物に手噴霧器を用いて、1/50および1/100×濃度にて処方1のTiO
2/Znを植物に噴霧した。滅菌蒸留水を未処置植物に噴霧した。植物を48時間温室に維持した。葉を植物から取り出し、病変を分生子の存在または不存在につき顕微鏡下で観察した。(
図6を参照)。
【0069】
これらの結果は、光触媒調製物の散布が、その再生に必須である分生子を生成するためのうどん粉病の能力を有意に低下させたことを示す。
【0070】
典型的な具体例に示された方法および工程の構造および配置が、単に例示的であることに注目することは重要である。本開示のほんの少数の具体例が詳細に記載されたが、当業者ならば、多数の変更が、特許請求の範囲に引用された主題の新規な教示および有利さから実質的に逸脱することなく可能であることを容易に認識するであろう。したがって、かかる改良のすべては、添付された特許請求の範囲に規定された本開示の範囲内に含まれることを意図される。いずれのプロセスまたは方法工程の順序もしくは配列も代替的な具体例によって変更または再配列し得る。他の置換、改変、変更および省略を設計においてなすことができ、添付されたクレームに表現された本開示の精神から逸脱することなく、具体例の条件および配置を操作し得る。
【0071】
本明細書に引用したすべての出版物、特許および特許出願をここに出典明示して本明細書の一部とみなし、いずれかおよび全ての目的のために、個々の刊行物、特許および特許出願の各々を具体的かつ個々に示して、出典明示して組み込む。矛盾がある場合には、本開示が優先する。