(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機体の前後方向に延びるトラックフレームと前記トラックフレームの上方に設けられ駆動軸芯廻りに回転駆動する駆動スプロケットとを有し、トラックフレーム及び駆動スプロケットを前記駆動軸芯に沿った方向に移動することによりトレッドを変更可能なクローラ走行装置を備えたトラクタにおいて、前記トレッドを変更する際に前記駆動スプロケットと前記トラックフレームとを連結する連結具であって、
連結具本体と、前記連結具本体の長手方向における一方の端部側に設けられて前記駆動スプロケットに連結される第1連結部と、前記連結具本体の前記長手方向における他端側に設けられて前記トラックフレームに連結される第2連結部とを備え、
前記第1連結部及び前記第2連結部が前記連結具本体の長手方向に沿った移動及び固定が可能に構成され、
前記第1連結部が前記駆動スプロケットに連結され、前記第2連結部が前記トラックフレームに連結された状態において、前記連結具本体は、前記駆動スプロケットより機体横外側に位置する連結具。
前記連結孔が前記駆動軸芯に沿った方向に開口するとともに前記駆動スプロケットの周方向に沿って延びる長孔であり、前記係止部は並列する2つの断面長方形部分と前記断面長方形部分の長手方向の中途部において2つの前記断面長方形部分を連結する連結部分とを有する断面H形状を呈し、前記断面長方形部分長手方向を前記連結孔の延在方向に沿わせて前記係止部を前記連結孔に挿入し、前記連結部分が前記長孔の縁部に位置する状態で前記係止部を回動させることにより、前記係止部と前記駆動スプロケットとの前記駆動軸芯に沿った方向の相対移動が阻止されるように構成され、
前記取付部は前記取付孔に対応して形成された孔部を有し当該孔部及び前記取付孔に亘って締結具が締結されることにより、前記取付部が前記トラックフレームに取付けられるように構成され、
前記係止部と前記駆動スプロケットとの前記駆動軸芯に沿った方向の相対移動が阻止され、且つ、前記取付部が前記トラックフレームに取り付けられた状態で前記第1ボス部の開口方向と前記第2ボス部の開口方向とが一致するように構成されている請求項4に記載の連結具。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を、機体前部を左右一対の前輪FWによって支持し、機体後部を左右一対のクローラ走行装置Rによって支持してあるセミクローラ型のトラクタに適用した例を図面に基づいて説明する。
【0025】
〔トラクタの概要〕
本トラクタは、4輪駆動型のトラクタをセミクローラ型に仕様変更したものであって、
図1に示すごとく、キャビンC付きの機体Mの前部に操向可能な左右一対の前輪FWを備えると共に、機体Mの後部に主推進装置として左右一対のクローラ走行装置Rを備えている。また、機体Mの後部には、不図示の三点リンク機構を介して耕耘装置や収穫装置等の各種の中間管理用の作業装置を連結可能である。
【0026】
〔クローラ走行装置の概要〕
図3に示すごとく、後車軸ケースBCが、ミッションケースMCの後部の右横側部及び左横側部から機体左右方向に夫々延設されている。この左右一対の後車軸ケースBCに機体左右方向向きに後車軸BXを支持してある。
図2及び
図3に示すように、クローラ走行装置Rは、後車軸BXの端部に固定されたハブ1と、ハブ1に取り外し自在に連結された駆動スプロケット2と、後車軸BXを支持する後車軸ケースBCに支持されたトラックフレーム3と、トラックフレーム3の前後端部に夫々配設された前従動輪6及び後従動輪7と、前従動輪6と後従動輪7との間においてトラックフレーム3に配設された複数の遊転輪8と、駆動スプロケット2、及び、前従動輪6、複数の遊転輪8、後従動輪7に亘って巻き回されたクローラベルト9と、を備えている。
【0027】
図2に示すごとく、駆動スプロケット2は、前従動輪6と後従動輪7との中間位置で、かつ、遊転輪8の上方側に配設され、クローラ走行装置Rは側面視で略三角形状に構成されている。前従動輪6は、トラックフレーム3の前端上部に固定支持されたテンション調整機構Tの前側自由端に回転自在に支持され、クローラベルト9のテンションを調整する。後従動輪7は回転自在にトラックフレーム3の後端部に支持されている。なお、テンション調整機構Tは公知のスプリング式のものであるので詳述しない。
【0028】
後述するように、駆動スプロケット2をハブ1上で機体左右方向に移動可能に構成すると共に、トラックフレーム3を機体左右方向にスライド移動可能に構成することにより、クローラベルト9を外す等大掛かりな作業を行うことなく、クローラ走行装置Rのトレッドを変更することができる。本実施形態では、
図3、
図9、及び、
図10に示すごとく、トレッドを、狭い幅の「WS」と中間の幅の「WM」と広い幅の「WL」との三段階に変更可能である。
【0029】
〔駆動スプロケット及びハブの構成〕
図2に示すごとく、駆動スプロケット2は、環状かつフラット形状のディスク2Bと、同じく環状かつフラット形状のスプロケット2Aとを備え、後車軸BXと一体となって駆動軸芯X回りに回転駆動可能である。ディスク2Bは、ハブ1の外周部11に取り外し自在に外装固定されている。スプロケット2Aは、ディスク2Bの外周面にボルト固定され、クローラベルト9と咬み合って後車軸BXの回転駆動力をクローラベルト9に伝達する。スプロケット2Aは、径が大径の鋳鉄製の部材であるが、周方向で三つの部材に等分割可能な構成することにより、金型の大型化を防止すると共に、一つの金型で製作できるようにしてある。
【0030】
ハブ1は、
図6に示すごとく、有底筒状の鋳鉄製の部材であって、その底部分を機体外側にした状態で、後車軸BXの先端部に連結してある。後車軸BXの先端部を鍔状に拡径して、その鍔部分に駆動軸芯X回りに複数のネジを一体的に備えてある。ハブ1の底部分には、後車軸BXのネジに対応する車軸取付孔18を穿孔してある。後車軸BXの鍔部分の表面とハブ1の底部分の内側表面とを合わせ面として、ネジを車軸取付孔18に貫通させ、駆動軸芯X方向外側からナットnを締め付けてハブ1を後車軸BXに固定してある。
ハブ1の底部分を機体外側にしてあるので、圃場の泥土がハブ1の内部に侵入し難い。また、ハブ1の外周部11のうち、後述する多段リブ12を設けていない箇所を切欠いて、ハブ1の軽量化を図ると共に、ハブ1の内部に侵入した泥土を排出し易くしてある。
【0031】
図4乃至
図6に示すごとく、ハブ1の外周部11に、径方向視で階段状に連続する多段リブ12を、駆動スプロケット2の回転方向に沿って、即ち、駆動軸芯Xの周方向に沿って、径外方向に突出するよう、複数箇所に一体形成してある。本実施形態においては、多段リブは五箇所形成してある。多段リブ12は、駆動軸芯Xの径方向面に沿った部分であって、ディスク2Bを固定する取付部13と、駆動軸芯X方向に沿った部分であって、ハブ1への固定を解除したディスク2Bを駆動軸芯X方向に移動可能に案内する案内部14と、を備えている。
【0032】
取付部13は、駆動軸芯X方向において間隔を開けて配設された第一取付面13a、及び、第二取付面13b、第三取付面13cを機体左右方向内側から順に夫々備えている。
第一取付面13a、第二取付面13b、及び、第三取付面13cは、駆動軸芯Xの径方向面に沿って平行または略平行な面に形成されており、即ち、駆動軸芯Xに直交しており、かつ、取付部13の機体左右方向内側に形成されている。
【0033】
第一取付面13a、第二取付面13b、及び、第三取付面13cには、駆動軸芯X方向に沿ったディスク取付孔19を夫々穿孔してある。円板状のディスク2Bの内周面23の五箇所を径内方向に突出させて突出部21を形成し、各突出部21にハブ取付孔22を開口してある。各突出部21の周方向における配設ピッチは、各取付部13の周方向における配設ピッチに一致させてある。
【0034】
案内部14は、取付部13のうち第一取付面13aが形成された部分と第二取付面13bが形成された部分とを連結すると共に、取付部13のうち第二取付面13bが形成された部分と第三取付面13cが形成された部分とを連結している。案内部14を形成することにより、多段リブ12の外周面12aは駆動軸芯X方向において少なくとも第一取付面13aから第三取付面13cに亘って連続している。即ち、外周面12aは、取付部13の外周面でもあり、案内部14の外周面でもある。
【0035】
図4及び
図5に示すごとく、多段リブ12のうち第一取付面13aが形成された部分をさらに駆動軸芯X方向内側に折り曲げ、最内側部分を径外方向に突起させて第一ストッパ16を形成してある。第一取付面13aと第一ストッパ16とは、駆動軸芯X方向において、少なくともディスク2Bの突出部21の厚みよりも広い間隔だけ離間させてある。
【0036】
複数の多段リブ12の外周面12aにおける外径は一律であって、ディスク2Bの内周面23における内径よりも僅かに小さい程度に設定してある。また、ディスク2Bの突出部21の内径は、ハブ1の外周部11の外径よりも大きく設定してある。よって、ディスク2Bの内周面23を多段リブ12(案内部14)の外周面12aに対して摺動させられるので、ディスク2Bを駆動軸芯Xに沿って機体左右方向にスライド移動させることも、駆動軸芯X回りに回転させることも容易である。
【0037】
また、第一取付面13aを挟んで第一ストッパ16の反対側において、ハブ1の外周部11を径外方向にリブ状に突起させ、第二ストッパ17を多段リブ12に連接形成してある。第二ストッパ17は、駆動軸芯X方向に沿った直線状に形成してある。第二ストッパ17の径方向の高さは、ディスク2Bの突出部21における内径とハブ1の外周部11における外径との差よりも大きく設定してある。
【0038】
さらに、各多段リブ12は、周方向で互いに重なり合わない程度に近接して配置してある。また、駆動軸芯X方向において、第三取付面13cと、隣合う多段リブ12に連接された第二ストッパ17とは、ディスク2Bの突出部21の厚みよりも僅かに広い間隔だけ離間させてある。これにより、突出部21が通過できる程度の狭い挿入口15を形成してある。
【0039】
駆動スプロケット2(ディスク2B)をハブ1に取り付けるときは、例えば、
図5に一点鎖線矢印で示すごとく、突出部21を挿入口15を通して、例えば、突出部21の駆動軸芯X方向外側面を第一取付面13aに面合わせし、回り止め付ボルトb2を駆動軸芯X方向内側からハブ取付孔22及びディスク取付孔19に挿入し、駆動軸芯X方向外側からナットnを締め付ける。なお、ハブ取付孔22は四角形状の孔であって、回り止め付ボルトb2の断面四角形状の中途部分が係合される構成となっている。よって、回り止め付ボルトb2が、締付時にナットnと共回りせず、組付け作業性が良い。なお、案内部14の外側面14aは、ナットnを締め付ける回転工具の先端部の回転駆動軌跡をかわせるようにR状に凹入してある。
【0040】
駆動スプロケット2のトレッドを変更する場合は、回り止め付ボルトb2とナットnとを取り外し、ディスク2Bの内周面23を多段リブ12の外周面12a(取付部13の外周面かつ案内部14の外周面)に摺動させながら(
図7参照)、ディスク2Bをハブ1に対して回転させつつ駆動軸芯X方向にスライド移動させる。そして、所望の取付面13a,13b,13cに突出部21を面合わせし、再度回り止め付ボルトb2とナットnとによってディスク2Bをハブ1に固定する。ディスク2Bの突出部21を第一取付面13aに固定したときは、
図3に示すごとく、駆動スプロケット2のトレッドは「WS」となり、突出部21を第二取付面13bに固定したときは、
図9に示すごとく、トレッドは「WM」となり、突出部21を第三取付面13cに固定したときは、
図10に示すごとく、トレッドは「WL」となる。本実施形態においては、機体前後進方向において、前側から第一取付面13a、第二取付面13b、第三取付面13cの順に並ぶように多段リブ12を配設してあるが、逆向きに配設してあっても構わない。
【0041】
なお、各取付面13a,13b,13cが駆動軸芯Xの径方向面に沿って平行または略平行な面に形成されているため、各取付面13a,13b,13cに対して突出部21を面合わせし易く、全ての各取付面13a,13b,13cと突出部21とを平行かつ均一に接触させ易い。この結果、回り止め付ボルトb2またはナットnを均一に締付けることができ、回り止め付ボルトb2またはナットnの緩みが生じにくく、駆動スプロケット2をハブ1に確実に固定することができる。
【0042】
ディスク2Bを駆動軸芯X方向外側から内側にスライドさせる際、過大な力を加えたとしても、ディスク2Bの内周面23が第一ストッパ16に係止し、ディスク2Bがハブ1よりも駆動軸芯X方向内側に落ち込むことはない。なお、上述したように、第一取付面13aと第一ストッパ16とは、駆動軸芯X方向において、ディスク2Bの突出部21の厚みよりも広い間隔を離して配設されているので、突出部21と第一取付面13aとの面合わせが第一ストッパ16によって妨げられることはない。また、ディスク2Bを駆動軸芯X方向内側から外側に抜き出すには、突出部21を狭い挿入口15を通す必要があるため、挿入口15以外の箇所では突出部21が第二ストッパ17に当接する。したがって、ディスク2Bが不測にハブ1から駆動軸芯X方向外側に抜け出すことはない。
【0043】
以上の構成によれば、駆動スプロケット2(ディスク2B)をハブ1に沿って駆動軸芯X方向にスライドさせるだけで、簡単に駆動スプロケット2の駆動軸芯X方向の位置を段階的に変更することができ、トレッドを「WS」と「WM」と「WL」とに変更できる。
また、従来のような駆動スプロケット2を左右反転させるといった大掛かりな作業が不要となり、クローラ走行装置Rのトレッドを変更する作業が大幅に簡素化される。
【0044】
また、鋳物により多段リブ12をハブ1の外周部11から駆動軸芯Xの径外方向に突出形成してあるため、研磨加工するのは各取付面13a,13b,13cと外周面12aとだけで良く、ハブ1を径内方向に削り込んで取付部13や案内部14を形成する場合等に比べて鋳肌を多く残せる。よって、錆の発生を最小限に抑えられる。
【0045】
さらに、取付部13と案内部14とを一体形成して階段状に多段リブ12を形成してあるため、取付部13と案内部14とが互いに補強し合って、多段リブ12全体としての駆動軸芯X方向の剛性及び周方向の剛性が高まる。
【0046】
なお、駆動スプロケット2をハブ1に対して相対回転させる手法及びスライド移動させる手法を以下に示す。まず、ナットnを緩めて、ボルトb2をディスク取付孔19及びハブ取付孔22から抜き出し、ハブ1とディスク2B(駆動スプロケット2)との連結を解除する(
図6参照)。この状態となると、ディスク2B(駆動スプロケット2)はハブに対して、駆動軸芯X回りに相対回転自在かつ駆動軸芯Xに沿ってスライド移動自在となる。
【0047】
トレッドを広げる(例えば、「WS」から「WM」または「WL」にする)場合は、先ず、エンジンの駆動力によって後車軸BCを前進方向(多段リブ12の向きによっては後進方向)に回転させる。ハブ1と駆動スプロケット2とが連結されていないため、駆動スプロケット2は、クローラベルト9と地面との間の静止摩擦によって回転せず、ハブ1がディスク2B(駆動スプロケット2)に対して相対回転する。これにより、ハブ取付孔22と目標とする取付面(13bまたは13c)におけるディスク取付孔19との周方向の位置合わせをする。
【0048】
次に、
図24乃至
図26に示すごとく、連結具によって駆動スプロケット2をトラックフレーム3と一時的に連結し、後述する油圧シリンダ5によるトラックフレーム3のスライド移動を利用して、駆動スプロケット2をハブ1に対して駆動軸芯X方向にスライド移動させる。連結具は、
図26に示すごとく、ディスク2Bに形成した長孔状の連結孔24に取り付ける上部材62と、トラックフレーム3の上部に立設された
リブ部61に取り付ける下部材63と、上部材62と下部材63とを連結する棒部材64と、を備えている。
【0049】
下部材63は、円筒状のボス部63aと、ボス部63aに接合された長板状の軸部63bとを備えている。軸部63bの先端部には、リブ部61に穿孔された二つの取付孔に対応する二つの取付孔が穿孔されている。軸部63bの先端部をリブ部61に面合わせした状態で、リブ部61及び軸部63bの一方の取付孔同士をピンと抜け止めピンとからなる締結具66で連結し、リブ部61及び軸部63bの他方の取付孔同士を蝶ボルトと蝶ナットとからなる締結具67で連結する。これにより、下部材63はトラックフレーム3に固定される。この状態において、ボス部63aの中心軸は、
図24に示すごとく、駆動スプロケット2の中心(駆動軸芯X)方向を向く。締結具66のピンは、締結具67の蝶ボルトに駆動軸芯方向の無理な力が作用するのを防止し、締結具67は、
リブ部61に対する下部材63の前後方向のガタツキを抑える。なお、両締結具66,67を共に、蝶ボルト及び蝶ナットで構成してあっても良い。
【0050】
上部材62は、円筒状のボス部62aと、連結孔24に対して駆動軸芯X方向に係止可能な係止部62cと、ボス部62aと係止部62cとに両端部を接合された棒状の軸部62bとを備えている。係止部62cは、断面H字形状となるように、駆動軸芯X方向に対向する二つの長方形部材を備えた部材である。駆動軸芯X方向における二つの長方形部材の離間距離は、ディスク2Bの厚みよりもやや大きく設定してある。また、側面視において、長方形部材の一方の辺長は連結孔24の径方向の幅よりも大きく、長方形部材の他方の辺長は連結孔24の径方向の幅よりも小さく設定してある。
図25及び
図26に示すごとく、二つのプレートの間にディスク2Bが位置するまで係止部62cを連結孔24に挿入し、上部材62を軸部62b回りに回転させると、係止部62cが連結孔24に係止する。この状態で、蝶ボルト65を外側の長方形部材に締め込んで、蝶ボルト65の先端部と内側の長方形部材とでディスク2Bを挟持する。これにより、上部材62はディスク2bに固定される。
【0051】
棒部材64を取り付けるときは、蝶ボルト65を完全に締め付けずに、上部材62の軸部62b回りの回転と連結孔24に沿った移動とを多少許容する状態として、ボス部62aに上方から棒部材64を挿入する。そして、軸部62b回りに棒部材64を前後に揺動させて、棒部材64の下端をさらにボス部63aに挿入する。最後に、蝶ボルト65を完全に締め付けて上部材62をディスク2Bに固定すると共に、蝶ボルト68をボス部62a及びボス部63aに締め付けて、棒部材64によって上部材62と下部材63とを連結する。なお、棒部材64の上端部には突起部64aを形成してあるので、突起部64aがボス部62aの上端部に係止し、棒部材64がボス部62aから抜け落ちることはない。
【0052】
トレッドを狭める(例えば、「WL」から「WM」または「WS」にする)場合は、トレッドを広げる場合と逆に、駆動スプロケット2をハブ1に対して、先ず駆動軸芯X方向にスライド移動させてから、相対回転させる。
【0053】
図24に示すごとく、側面視において、
連結具は、駆動軸芯Xを挟んで、クローラ走行装置Rの三角形状の頂点付近と、三角形状の底辺付近とを連結するので、トラックフレーム3及び連結具を介して、油圧シリンダ5の押し引き力を効率よく駆動スプロケット2に伝達でき、駆動スプロケット2を円滑にスライド移動させられる。
【0054】
また、ボス部63aの中心軸の向きが一義的に決まるので、連結具を取り付けるためには、ボス部62aもある程度定位置に配置しなければならない。しかし、連結孔24をディスク2Bの周方向に沿った長孔としてあるので、ボス部63aに対するボス部62aの位置を連結孔24の範囲で移動させられ、調整がし易い。
【0055】
なお、ハブ1への連結を解除した駆動スプロケット2は手動でも回転及びスライド移動可能であり、上述の手法において、ディスク取付孔19とハブ取付孔22との周方向における位置の微調整等を手動で行うことや、駆動スプロケット2のハブ1に対する回転及びスライド移動自体を手動で行うことも可能である。
【0056】
〔トラックフレームの構成〕
トラックフレーム3は、
図2、
図7、
図8に示すごとく、後車軸ケースBCに支持され、駆動軸芯Xと平行な揺動軸芯Y回りに揺動自在、かつ、揺動軸芯Y方向にスライド移動自在である。トラックフレーム3の支持構成について、以下に詳述する。
【0057】
後車軸ケースBCの下部に、揺動軸芯Yに沿った筒状の支持筒体41を支持してある。
なお、揺動軸芯Yは、駆動軸芯Xの下方かつやや前方に設定してある。支持筒体41は、後車軸ケースBCから吊り下げ固定した連結部材42等によって支持固定されている。連結部材42の背面側には、ロアリンク用の不図示の振れ止めリンクの端部を連結するリンク取付部材48を取り付けてある。
【0058】
トラックフレーム3の上部に、揺動軸芯Y方向内側に向けて平行に延出する二つの延設台31を、片持ち状態かつ前後に間隔をおいて並列に固定支持してある。延設台31の揺動軸芯Y方向外側端部付近と揺動軸芯Y方向内側端部付近とにおいて、延設台31の上部に、略三角形状かつ板状の支持板32を、前後の延設台31に亘るよう、かつ、揺動軸芯Yに直交するよう、夫々立設してある。二つの支持板32の間隔は、支持筒体41の揺動軸芯Y方向の長さよりも広く設定してある。
【0059】
トラックフレーム3を後車軸ケースBCに支持する手順としては、
図8に示すごとく、先ず、二つの支持板32の間に支持筒体41を配置した状態で、支持筒体41よりも揺動軸芯Y方向に長い円柱状の揺動軸4を、揺動軸芯Y方向外側から、支持板32に形成した円形の孔及び支持筒体41に挿通する。支持板32の孔と支持筒体41との内径は、揺動軸4の外径よりも僅かに大きく設定してある。揺動軸4は、支持筒体41に対して、揺動軸芯Y回りに回転自在かつ揺動軸芯Y方向にスライド移動自在である。揺動軸4の揺動軸芯Y方向外側端部に、板状の固定板43を、少なくとも揺動軸芯Y方向に移動できない状態で支持してある。固定板43と揺動軸芯Y方向外側の支持板32とをボルト固定して、延設台31と支持板32とを介してトラックフレーム3を揺動軸4に支持する。
【0060】
以上の構成により、トラックフレーム3は、揺動軸芯Y回りに揺動自在であると共に、支持筒体41の長さと二つの支持板32の離間距離との差の分だけ、揺動軸4と一体となって揺動軸芯Yに沿ってスライド移動自在である。
【0061】
上述の駆動スプロケット2の駆動軸芯X方向の移動可能距離と整合するように、支持筒体41の長さと二つの支持板32の離間距離との差は、トレッド「WS」と「WL」との差に等しく設定してある。
【0062】
なお、トラックフレーム3の過度の揺動を規制するために、
図3、
図8、
図12、及び、
図13に示すごとく、リブ部材39とブロック部材49とを備えている。リブ部材39は、揺動軸芯Yの前側と後側とに夫々設けられ(
図12参照)、二つの支持板32の前下側部分同士と後下側部分同士に亘って取り付けられている(
図3及び
図8参照)。夫々のリブ部材39は、トラックフレーム3が水平のときに、水平面に対して前下がりまたは後下がりにやや傾斜するような状態で取り付けてある(
図12参照)。ブロック部材49は、揺動軸芯Yの前側と後側とに夫々設けられ(
図12参照)、支持筒体41の揺動軸芯Y方向外側の前側部及び後側部に取り付けられている(
図3及び
図8参照)。夫々のブロック部材49は、水平面と平行な状態で取り付けてある(
図12参照)。
【0063】
トラックフレーム3が揺動軸芯Y回りに揺動すると、リブ部材39はトラックフレーム3と共に揺動軸芯Y回りに機体Mに対して相対的に揺動するが、ブロック部材49は後車軸ケースBCの側の部材であるので、機体Mに対して相対的に移動しない。したがって、
図13(a)に示すごとく、トラックフレーム3が後方に揺動すると、後側のリブ部材39が後側のブロック部材49に接近する。後側のリブ部材39の上面が後側のブロック部材49の下面に接触すると、トラックフレーム3のそれ以上の後方への揺動は規制される。同様に、トラックフレーム3が前方に揺動して、前側のリブ部材39の上面が前側のブロック部材49の下面に接触すると、トラックフレーム3のそれ以上の前方への揺動は規制される(
図13(b)参照)。
【0064】
トラックフレーム3が水平な状態(
図12参照)におけるリブ部材39の水平面に対する傾きは、リブ部材39がブロック部材49と接触するときに、リブ部材39の上面が水平となってブロック部材49の下面に面接触するように設定してある。即ち、リブ部材39の水平面に対する傾きは、トラックフレーム3の前方または後方への揺動角と等しい。
このように、広い面積でリブ部材39とブロック部材49とが接触するので、両部材の磨耗や欠損を軽減でき、揺動可能な範囲を一定に保つことができる。なお、リブ部材39は支持板32の揺動軸芯Y方向の剛性を高める作用も奏する。
【0065】
図7に示すごとく、左右のトラックフレーム3の間に油圧シリンダ5を配設してあり、油圧シリンダ5の伸縮によってトラックフレーム3をスライド操作する。ただし、油圧シリンダ5の作用のみによって、トラックフレーム3をトレッド「WS」、「WM」、「WL」の夫々に対応する位置に精度良く位置合わせするには、フィードバック制御を行ったり、位置センサを設けたりする必要があり、構造が複雑になる。また、油圧シリンダ5の作用のみによって、トラックフレーム3の揺動軸芯Y方向の位置を保持するには、油圧を送り続ける必要があり、効率が悪い。
【0066】
そこで、トラックフレーム3の揺動軸芯Y方向の位置合わせ及び位置固定の手段として、揺動軸4に外装可能な第一カラー44及び第二カラー45を備えている。第一カラー44の揺動軸芯Y方向の長さは、トレッド「WM」と「WL」との差に等しく設定してある。第二カラー45の揺動軸芯Y方向の長さは、トレッド「WS」と「WM」との差に等しく設定してある。即ち、第一カラー44と第二カラー45との揺動軸芯Y方向の長さの合計は、支持筒体41の長さと二つの支持板32の離間距離との差に等しい。
【0067】
例えば、トレッドを「WL(
図10参照)」から「WS(
図3参照)」に変更する場合は、第一カラー44及び第二カラー45を揺動軸4から取り外して、揺動軸芯Y方向外側の支持板32が支持筒体41に当接するまで、トラックフレーム3をスライド操作する。
すると、
図3に示すごとく、トレッドは「WS」となって、支持筒体41と揺動軸芯Y方向内側の支持板32との間には第一カラー44及び第二カラー45の長さの合計分の隙間が空く。よって、この隙間において、第一カラー44及び第二カラー45を揺動軸4に外装すると、支持筒体41に対する揺動軸4の揺動軸芯Y方向の移動が規制される。この結果、トラックフレーム3の揺動軸芯Y方向の位置も固定され、トレッドは「WS」に維持される。
【0068】
トレッドを「WS(
図3参照)」から「WM(
図9参照)」に変更する場合は、第二カラー45のみを揺動軸4から取り外して、第一カラー44が支持筒体41に当接するまで、トラックフレーム3をスライド操作する。すると、
図9に示すごとく、トレッドは「WM」となって、支持筒体41と揺動軸芯Y方向外側の支持板32との間には第二カラー45の長さ分の隙間が空く。よって、この隙間において、第二カラー45を揺動軸4に外装すると、支持筒体41に対する揺動軸4の揺動軸芯Y方向の移動が規制される。この結果、トラックフレーム3の揺動軸芯Y方向の位置も固定され、トレッドは「WM」に維持される。
【0069】
トレッドを「WM(
図9参照)」から「WL(
図10参照)」に変更する場合は、第一カラー44のみを揺動軸4から取り外して、揺動軸芯Y方向内側の支持板32が支持筒体41に当接するまで、トラックフレーム3をスライド操作する。すると、
図10に示すごとく、トレッドは「WL」となって、支持筒体41と揺動軸芯Y方向外側の支持板32との間には第一カラー44の長さ分の隙間が空く。よって、この隙間において、第一カラー44を揺動軸4に外装すると、支持筒体41に対する揺動軸4の揺動軸芯Y方向の移動が規制される。この結果、トラックフレーム3の揺動軸芯Y方向の位置も固定され、トレッドは「WL」に維持される。
【0070】
以上の構成によれば、油圧シリンダ5の伸縮操作と第一カラー44及び第二カラー45の着脱とだけで、簡単にトラックフレーム3の揺動軸芯Y方向の位置を段階的に変更することができると共に、その位置を簡単に固定できる。また、従来のようにクローラベルト9を取り外して左右反転させるといった大掛かりな作業が不要となり、クローラ走行装置Rのトレッドを変更する作業が大幅に簡素化される。なお、支持板32が、本発明に係る「規制板」に相当し、また、第一カラー44及び第二カラー45が、本発明に係る「規制部材」に相当する。
【0071】
なお、第一カラー44と第二カラー45とは、
図8に示すごとく、夫々、半割カラー44a及び半割カラー44c、半割カラー45a及び半割カラー45cに分割可能である。
よって、揺動軸4を支持筒体41から抜き出すことなく、カラー及びカラーを自由に揺動軸4に着脱できる。第一カラー44及び第二カラー45の分割構成については後述する。
【0072】
また、第一カラー44と第二カラー45との長さが異なる場合は、トレッドを「WM」とする手順において、両者を内外反対に配置すると、「WM」とは別の中間トレッドを設定することが可能である。この場合、駆動スプロケット2の側においては、突出部21と取付部13との間にスペーサを介装することにより、駆動スプロケット2を中間トレッドに対応する位置に固定できる。即ち、様々な長さのカラーとハブ1における上述のスペーサとの組合せによれば、ハブ1を同じものとしながらも、トレッドを各種幅に変更できる。
【0073】
〔油圧シリンダの支持構成〕
油圧シリンダ5の支持構成について、
図7、及び、
図8、
図11乃至
図13に基づいて詳述する。油圧シリンダ5は、複動式の油圧シリンダ5であって、
図8及び
図11に示すごとく、シリンダチューブ51と、シリンダチューブ51に内挿されたロッド52とを備えている。ボトム側ポート53からシリンダチューブ51内のオイルを排出しつつ、ロッド側ポート54からシリンダチューブ51内にオイルを供給すると、油圧シリンダ5は収縮する。ロッド側ポート54からシリンダチューブ51内のオイルを排出しつつ、ボトム側ポート53からシリンダチューブ51内にオイルを供給すると、油圧シリンダ5は伸長する。
【0074】
ボトム側ポート53及びロッド側ポート54は、機体Mの後部に備えられた不図示の補助コントロール用のバルブとホースHによって夫々接続可能である。このバルブには、不図示のエンジンにより駆動される不図示のポンプからのオイルが給排される構成となっており、キャビンCの内部に設けた不図示の専用のレバーを操作することによってこの油圧制御を行う。なお、既存の補助コントロールバルブのオイルを使用するので、油圧回路を変更する必要はない。
【0075】
油圧シリンダ5は、
図7に示すごとく、右側の揺動軸4と左側の揺動軸4との間に入り込んだミッションケースMCの下方突出部分をかわして、ミッションケースMCの下方突出部分と油圧シリンダ5との間にホースH等の配置用空間を形成できるように、ミッションケースMCの下側において、揺動軸芯Yとは異なる軸芯Zに沿って配設してある。油圧シリンダ5は、左右のトラックフレーム3の間に亘って配設され、一方の端部であるボトム51aを左側の延設台31に、また、他方の端部であるロッドヘッド52aを右側の延設台31に、トラックフレーム3の揺動軸芯Y回りの揺動を許容する融通機構33を介して夫々接続してある。なお、油圧シリンダ5は保護カバー5aで覆ってある。保護カバー5aは、側面視での断面形状がU字形状に形成され、ミッションケースMCの下側に固定してある。
【0076】
融通機構33は、油圧シリンダ5のボトム51a及びロッドヘッド52aに取り付けられた頭付ピン35と、トラックフレーム3に固定された二つの板状の取付部材34とを備えている。二つの取付部材34は、
図7及び
図11に示すごとく、前後の延設台31の軸芯Z方向内側部分の上面に夫々立設され、軸芯Z方向外側の部分を軸芯Z方向内側の支持板32に接合してある。このように、二つの取付部材34は、互いに機体前後方向に対向した状態でトラックフレーム3に固定されている。夫々の取付部材34には、
図7及び
図12に示すごとく、機体上下方向に沿った長孔34aを形成してある。
【0077】
左側の延設台31の側においては、
図8及び
図11に示すごとく、前後の取付部材34の間に、油圧シリンダ5のボトム51a及び位置決めリング38を配置し、抜け止めリング36と長孔34aと位置決めリング38とボトム51aと長孔34aと抜け止めリング36との順に頭付ピン35を貫通させ、頭付ピン35の端部に抜け止めピン37を取り付けてある。頭付ピン35の両端部は、油圧シリンダの両端部において、径方向に凸設された状態となっている。
【0078】
抜け止めピン37は、頭付ピン35の頭部分から、前側の取付部材34の前面と後側の取付部材34の後面との離間距離よりも大きな距離を空けて取り付けられている。よって、頭付ピン35の前後端は、長孔34aに沿って摺動し、取付部材34に対して各別に上下方向に移動自在である。頭付ピン35全体としては、取付部材34に対して軸芯Z方向に移動不能、かつ、前後方向及び上下方向に移動可能である。ボトム51a及び位置決めリング38は、前後の取付部材34の間に略隙間のない状態で配設されている。
【0079】
これにより、ボトム51aは、頭付ピン35と長孔34aとを介して、取付部材34に対して軸芯Z回りに長孔34aの範囲内で相対回転自在である。左側のトラックフレーム3が機体Mに対して揺動軸芯Y回りに揺動しても、ボトム51aは機体Mに対して回転しない。
【0080】
右側の延設台31の側においても、同様に、
図11及び
図12に示すごとく、前後の取付部材34の間に、油圧シリンダ5のロッドヘッド52aと位置決めリング38とを配置し、抜け止めリング36と長孔34aと位置決めリング38とロッドヘッド52aと長孔34aと抜け止めリング36とに頭付ピン35を貫通させ、頭付ピン35の端部に抜け止めピン37を取り付けてある。なお、右側の延設台31の側においては、ロッドヘッド52a及び位置決めリング38は、前後の取付部材34の間に一定の隙間を有する状態で配設されている。
【0081】
これにより、ロッドヘッド52aも、ボトム51aと同様に、頭付ピン35と長孔34aを介して、取付部材34に対して軸芯Z回りに長孔34aの範囲内で相対回転自在である。
図13(a)及び(b)に示すごとく、右側のトラックフレーム3が機体Mに対して揺動軸芯Y回りに揺動しても、ロッドヘッド52aは機体Mに対して回転しない。さらに、ロッドヘッド52aは、頭付ピン35に沿って、取付部材34に対して上述の一定の隙間の分だけ機体前後方向にスライド移動自在である。
【0082】
左右のトラックフレーム3が各別に前後揺動すると、油圧シリンダ5には、軸芯Z回りの捻り力と、前後方向へのせん断力とが作用する。しかし、本構成であると、ボトム51a及びロッドヘッド52aは、取付部材34に対して軸芯Z回りで回転して、上述の軸芯Z回りの捻り力を吸収する。さらに、ロッドヘッド52aは、取付部材34に対して機体前後方向に移動して、上述のせん断力を吸収する。このように、融通機構33がトラックフレーム3の自由な揺動を許容するので、油圧シリンダ5を揺動軸芯Yとは別の軸芯Zに沿って配設しても、油圧シリンダ5にこじれが生じることはない。
【0083】
〔カラーの分割構成〕
第一カラー44と第二カラー45との分割構成について、
図8及び
図14Dに基づいて詳述する。上述したように、第一カラー44は、揺動軸芯Yに沿った面を分割面として、半円弧状の半割カラー44a及び半割カラー44cの二つの部材に分割されている。即ち、半割カラー44a,44cが、本発明に係る「二つの部材」に相当する。半割カラー44aの周方向の両端部には、分割面に沿った鍔部44bを備えている。なお、一方の鍔部44bの径外方向の長さは、他方の鍔部44bの径外方向の長さよりも長く設定してある。同様に、半割カラー44cの周方向の両端部にも、分割面に沿った鍔部44dを備えているが、鍔部44dは二つとも、長さの短い鍔部44bと同じ長さに設定してある。長い方の鍔部44bには、「締結具」としてのボルト46を挿入する長孔47を設けてある。
長孔47は、揺動軸芯Yに対して垂直な方向に沿うように形成してある。その他の鍔部44b,44dには、ボルト46や後述するボルトb1の断面と同程度の大きさの孔を設けてある。鍔部44dに設けた孔には、ボルト46やボルトb1と対応する雌ネジを形成してあり、締結にはナットが不要である。なお、ボルト46の長さは、揺動軸4の半径程度の長さに設定してある。
【0084】
この構成により、長い方(長孔47の側)の鍔部44bと鍔部44dとは、ボルト46の締結によって連結し、短い方(長孔47とは反対側)の鍔部44bと鍔部44dとは、ボルトb1の締結によって連結する。
【0085】
続いて、第一カラー44を揺動軸4に外装する手順を、
図14A乃至
図14Dに基づいて説明する。なお、
図14A乃至
図14Dにおいて、紙面右側が機体後方である。
【0086】
図14Aに示すごとく、先ず、長孔47の側の鍔部44bと鍔部44dとをボルト46で連結する。この際、ボルト46は、ボルト46の先端が鍔部44dに軽く引っ掛かる程度に締結する。よって、ボルト46は、長孔47の範囲内において、ボルト46の延びる方向と長孔47の延びる方向に移動可能な状態である。この結果、半割カラー44cは半割カラー44aに対して、ボルト46を支点として、揺動軸芯Yと平行な方向回り及び垂直な方向回りに回転可能に連結されている。
【0087】
次に、
図14A及び14Bに示すごとく、ボルト46を長孔47に沿って傾けながら(一方の鍔部44b,44d同士を揺動軸芯Yと平行な方向回りに回転)、ボルト46を軸芯として半割カラー44cを半割カラー44aに対して90度程度回転させ(一方の鍔部44b,44d同士を揺動軸芯Yと垂直な方向回りに回転)、半割カラー44cがリブ部材39に干渉するのを避けつつ、半割カラー44aを揺動軸4と後車軸ケースBCとの間を通して揺動軸4に嵌め込む。そして、半割カラー44aを揺動軸4に沿って機体前方に回転させながら、
図14Bに示すごとく、半割カラー44cを、ボルト46を軸芯として回転させて、揺動軸4とリブ部材39との間に入れ込む。
【0088】
その後、
図14Cに示すごとく、半割カラー44a,44cを揺動軸4回りに機体後方に回転させると、長い方の鍔部44bが「当接部」としてのリブ部材40に当接し、それ以上は機体後方側には回転できなくなる。リブ部材40は、
図8に示すごとく、左右の支持板32,32の間において、リブ部材39の内側に隣り合わせに配設されており、延設台31の上面から上方に向けて立設されている。リブ部材40は、延設台31の剛性を高める役割も果たしている。そして、機体後方から、長い方の鍔部44bをリブ部材40の上面に押付けるようにしながらレンチ等の治具によってボルト46を締め上げる。このように、ボルト46の締め上げ時に、治具を持っていない手を規制部材に添えて回り止めをする必要がないので、治具を持つ片手のみで楽に作業を行うことができる。なお、長い方の鍔部44bが、本発明に係る「凸部」に相当する。
【0089】
ボルト46の締め上げにより、半割カラー44a及び半割カラー44cは、ある程度の締結力で揺動軸4に固定され、揺動軸4回りには回転しなくなる。そして、機体後方から揺動軸4越しに、短い方の鍔部44bと鍔部44dとをボルトb1で締結する。
【0090】
以上の手順により、効率よく簡単に半割カラー44aと半割カラー44cとを連結し、第一カラー44を揺動軸4に外装することができる。なお、長孔47は、揺動軸芯Yに対して垂直な方向に沿うように形成したが、完全な垂直でなくとも、多少傾いていても構わない。また、鍔部44bを長く形成して「凸部」としたが、半割カラー44aの外周部の一部を突起させて「凸部」としても良い。
【0091】
〔第一別実施形態〕
上述の実施形態においては、第一カラー44(第二カラー45)において、半割カラー44a,44c(45a,45c)の一方の端部同士をボルト46と長孔47とによって連結する例を示したが、これに限られるものではない。以下に、別の実施形態に係る第一カラー144と第二カラー145との分割構成について、
図15及び
図16に基づいて詳述する。上述の実施形態と同様に、第一カラー144は、揺動軸芯Yに沿った面を分割面として、半円弧状の半割カラー144a及び半割カラー144cの二つの部材に分割されている。即ち、半割カラー144a,144cが、本発明に係る「二つの部材」に相当する。半割カラー144aの周方向の両端部には、分割面に沿った鍔部144bを備えている。同様に、半割カラー144cの周方向の両端部にも、分割面に沿った鍔部144dを備えている。鍔部144bと鍔部144dとには、組付け用の孔を夫々設けてある。
【0092】
第一カラー144を揺動軸4に装着するときは、先ず、半割カラー144aと半割カラー144cとを揺動軸4に外装して、鍔部144bと鍔部144dとを面合わせする。その状態で、一方の鍔部144bと鍔部144dとの組付け用の孔に、頭付ピン146を貫通させ、頭付ピン146のうち貫通方向側の端部に、貫通方向と直交する方向に抜け止めピン147を挿入する。これにより、頭付ピン146が抜け止めされ、半割カラー144aと半割カラー144cとは、一方の端部同士が頭付ピン146を支点として揺動軸芯Yと垂直な方向回りに互いに回転可能ながらも、揺動軸4から外れ落ちることはない。そして、他方の鍔部144bと鍔部144dとの組付け用の孔にボルトb1を締め込んで、半割カラー144aと半割カラー144cとをカラー144として一体化する。したがって、頭付ピン146の軸部分が本発明に係る「ピン」に相当し、頭付ピン146の頭部分と抜け止めピン147とが本発明に係る「抜け止め手段」に相当する。なお、頭付ピン146でなくとも、頭なしのピンの両端部を抜け止めピン147で抜け止めするような構成であっても良い。
【0093】
また、第二カラー145も、揺動軸芯Yに沿った面を分割面として、半割カラー145a及び半割カラー145cの二つの部材に分割されている。半割カラー145aに鍔部145bを備え、半割カラー145cに鍔部145dを備え、第二カラー145も、第一カラー144と同様の構成で揺動軸4に対して着脱する。第二カラー145の場合は、半割カラー145a,145cが、本発明に係る「二つの部材」に相当する。
【0094】
本実施形態においては、鍔部144b,144d及び鍔部145b,145dが、本発明に係る「二つの部材の端部」に夫々相当する。
【0095】
本構成であると、半割カラー144a(145a)と半割カラー144c(145c)とを連結するときは、鍔部144b(145b)と鍔部144d(145d)とを連結した状態で第一カラー144(第二カラー145)を片手で支持して、もう一方の手で他方の鍔部144b(145b)と鍔部144d(145d)とのみをボルト締め(締結)するだけで良く、迅速な作業が可能となる。
【0096】
また、第一カラー144(第二カラー145)は、一方の端部同士を固定しても、一方の端部同士を先ず完全にボルト締め(締結)する場合とは異なって仮止めのような状態であるので、揺動軸4回りに多少のガタがある。即ち、第一カラー144(第二カラー145)は揺動軸芯Y回りに回転可能であるので、作業者の好みの位置まで第一カラー144(第二カラー145)を回転させれば、他方の端部同士のボルト締め(締結)作業を好適な状況で行える。したがって、例えば、揺動軸4が機体Mの下側の入り組んだ場所に配設されていても、片手で第一カラー144(第二カラー145)を保持し、近い位置で他方の手でボルト締め(締結)作業が行え、作業性が良い。
【0097】
〔第二別実施形態〕
第一カラー44及び第二カラー45のさらに別の実施形態として、例えば、
図17(a)及び(b)に示すごとく、任意のカラー244において、半割カラー244aの鍔部244dに備えた孔部244eに、他方の半割カラー244cのうち「係止部」としてのフック形状の鍔部244bを係止させて、半割カラー244aと半割カラー244cとを連結しても良い。
【0098】
この場合、半割カラー244aと半割カラー244cとは、一方の端部同士が係止部分を支点として揺動軸芯Yと平行な方向回りに互い回転可能であって、一方の端部同士を先ず完全にボルト締め(締結)する場合とは異なって、仮止めのような状態となる。したがって、作業者の好みの位置までカラーを回転させれば、他方の鍔部244bと鍔部244dとを好適な状況でボルト締め(締結)できる。
【0099】
本実施形態においては、半割カラー244a,244cが、本発明に係る「二つの部材」に相当し、また、鍔部244b及び鍔部244dが、本発明に係る「二つの部材の端部」に夫々相当する。
【0100】
〔第三別実施形態〕
上述の実施形態においては、取付部13と案内部14とを一体的に多段リブ12としたが、これに限られるものではない。例えば、
図18及び
図19に示すごとく、取付部110を、第一取付面111aを備えた第一リブ111と、第二取付面112aを備えた第二リブ112と、第三取付面113aを備えた第三リブ113とによって構成すると共に、案内部114を、駆動軸芯Xに沿った直線リブ状に構成しても良い。
【0101】
この場合、案内部114の駆動軸芯X方向の最内側部分を径外方向に突起させて第一ストッパ116を形成する。したがって、第一ストッパ116によって、ディスク2Bがハブ1よりも駆動軸芯X方向内側に落ち込むことはない。また、案内部114によって、第一リブ111と、隣合う取付部110の第三リブ113とにおける駆動軸芯X方向の隙間が塞がれて、突出部21を挿入する挿入口115が限定され、ディスク2Bが不測にハブ1から駆動軸芯X方向外側に抜け出すことはない。即ち、案内部114が上述の実施形態における「第二ストッパ」として作用する。
【0102】
〔第四別実施形態〕
上述の実施形態においては、融通機構33が、ボトム51aとロッドヘッド52aとを取付部材34に対して軸芯Z回りに回転可能とし、かつ、ロッドヘッド52aを取付部材34に対して機体前後方向にスライド移動可能にする例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、融通機構133に、揺動軸4に対して揺動軸芯Y回りに回転自在に支持された取付部材136を備え、油圧シリンダ5のボトム51aとロッドヘッド52aを取付部材136に支持してあっても良い。この例について、
図20乃至
図23に基づいて説明する。
【0103】
融通機構133は、
図20及び
図21に示すごとく、外側筒体134と内側筒体135と二つの取付部材136とを備えている。取付部材136は、機体前後方向に対向する状態で、外側筒体134の外周部の前側やや下部と後側やや下部とに固定してある。そして、前後の取付部材136の揺動軸芯Y方向外側の部分同士を当接部材137で連結してある。外側筒体134には、内側筒体135を摺動可能に内挿してある。この状態で、揺動軸4の内側面に揺動軸芯Y方向に沿って融通機構133をボルトb3によって固定してある。ボルトb3は内側筒体135のみを揺動軸4に押付け固定する。したがって、外側筒体134と取付部材136と当接部材137とは、外側筒体134の内周面が内側筒体135の外周面に沿って摺動することにより、ボルトb3を軸として揺動軸芯Y回りに回転自在となる。なお、外側筒体には、グリスを外側筒体と内側筒体との間に注入するためのグリス注入バルブ139を備えてある。
【0104】
図20に示すごとく、右側の延設台31の側において、前後の取付部材136の間にボトム51aを配置すると共に、
図20及び
図22に示すごとく、左側の延設台31の側において、前後の取付部材136の間にロッドヘッド52aを配置し、ボトム51a及びロッドヘッド52aをピン138によって夫々の取付部材136に支持してある。この結果、ボトム51a及びロッドヘッド52aは、揺動軸芯Y回りに揺動自在となって、
図23(a)及び(b)に示すごとく、左右のトラックフレーム3が機体Mに対して揺動軸芯Y回りに揺動しても、機体Mに対して殆ど揺動しない。
【0105】
このように、融通機構133がトラックフレーム3の自由な揺動を許容するので、油圧シリンダ5を揺動軸芯Yとは別の軸芯に沿って配設しても、油圧シリンダ5にこじれが生じることはない。
【0106】
なお、油圧シリンダ5が伸縮したとき、当接部材137を介して油圧シリンダ5の押し引き力がトラックフレーム3に伝達されるように構成してある。詳述すると、
図21に示すごとく、当接部材137に揺動軸芯Y方向外側に向けてボルトb4を固定し、かつ、支持板32にトラックフレーム3が揺動軸芯Y回りに揺動したときのボルトb4の軌跡に沿った揺動用長孔132aを形成してある。そして、ボルトb4の揺動用長孔132aに沿った移動は許容し、かつ、ボルトb4の揺動軸芯Y方向に沿った移動は規制するよう、ボルトb4を揺動用長孔132aに挿通して、当接リング140を介装した状態でナットn締めしてある。
【0107】
この結果、油圧シリンダ5が伸張したときは、当接部材137が支持板32に当接して油圧シリンダ5の押し力がトラックフレーム3に伝達される。また、油圧シリンダ5が収縮したときは、当接リング140が支持板32に当接して油圧シリンダ5の引き力がトラックフレーム3に伝達される。この結果、ボルトb3には油圧シリンダ5の押し引き力が殆ど作用せず、ボルトb3が曲がる等の虞がない。よって、ボトム51a及びロッドヘッド52aは、揺動軸芯Y回りに揺動自在な状態を維持し続けられる。
【0108】
〔その他の別実施形態〕
(1)上述の実施形態においては、ハブ1の底部分を機体外側にした状態で、ハブ1を後車軸BXに取り付けた例を示したが、これに限られるものではない。特に図示はしないが、例えば、ハブ1の底部分を機体内側にした状態で、ハブ1を後車軸BXに取り付けても良い。また、ハブ1の底部分をハブ1の駆動軸芯X方向中間部に備えてあっても良い。
【0109】
(2)上述の実施形態においては、ディスク2Bの突出部21を取付部13のうち駆動軸芯X方向内側の面に面合わせする構成としたが、これに限られるものではない。特に図示はしないが、例えば、ディスク2Bの突出部21を取付部13のうち駆動軸芯X方向外側の面に面合わせする構成としても良い。
【0110】
(3)上述の実施形態においては、取付部13が三段の取付面13a,13b,13cを備える構成としたが、二段以上であれば何段の取付面を備えていても良い。また、上述の実施形態においては、取付部13(多段リブ12)及び取付部110を五箇所形成してあるが、これらは四箇所以下または六箇所以上形成してあっても良い。
【0111】
(4)上述の実施形態においては、取付部13はハブ1の外周部11から径外方向に突出させた例を示したが、これに限られるものではない。特に図示はしないが、例えば、ハブ1の外周部11を径内方向に凹入させて取付部を構成しても良い。
【0112】
(5)上述の実施形態においては、ミッションケースMC(後車軸ケースBC)の側に支持筒体41を備え、トラックフレーム3の側に揺動軸4を備えたが、これに限られるものではない。特に図示はしないが、例えば、ミッションケースの側(ミッションケースMCや、ミッションケースMCに固定された後車軸ケースBC等のその他の部材)に揺動軸4に相当する支持軸(4)を備え、トラックフレーム3の側に支持筒体41に相当する揺動筒体(41)を備えてあっても良い。この場合は、例えば、支持軸(4)の両端を、支持板(32)を介して、後車軸ケースBCに支持し、連結部材(42)を介して揺動筒体(4)を延設台31に支持する。
【0113】
即ち、ミッションケースMCの右横側部及び左横側部に設けられた左右一対の支持軸(4)と、クローラ走行装置Rを支持するトラックフレーム3と、支持軸(4)に対して機体左右方向向きの揺動軸芯Y回りに揺動自在かつ機体左右方向にスライド移動自在に支持されると共に、トラックフレーム3を支持する揺動筒体(41)と、揺動筒体(41)の両側において支持軸(4)に装着され、かつ、ミッションケースMCに固定された一対の規制板(32,32)と、一対の規制板(32,32)のうち一方の規制板(32)と揺動筒体(41)との間、及び、一対の規制板(32,32)のうち他方の規制板(32)と揺動筒体(41)との間のうち少なくとも何れか一方に介装されて、支持軸(4)に対する揺動筒体(41)の機体左右方向の移動を規制して、クローラ走行装置のトレッドを変更可能にする規制部材(44,45/144,145/244)と、を備えたトラクタとしてあっても良い。
【0114】
(6)上述の実施形態においては、支持筒体41及び揺動軸4(支持軸4及び揺動筒体41)を介して、トラックフレーム3を後車軸ケースBCに支持した例を示したが、これに限られるものではない。特に図示はしないが、例えば、トラックフレーム3を、後車軸ケースBCやミッションケースMCに直接、揺動軸芯Y回りに揺動自在かつ揺動軸芯Yに沿ってスライド移動自在に支持してあっても良い。当然、駆動軸芯Xと揺動軸芯Yとを一致させることも可能である。これらの場合は、車軸ケースBCもしくはミッションケースMCまたはこれらの一部が、本発明に係る「支持軸」または「揺動軸」となる。
【0115】
(7)上述の実施形態において、内側筒体135を揺動軸4に取り付けた例を示したが、これに限られるものではない。特に図示はしないが、例えば、取付部材136が揺動軸芯Y回りに揺動自在であるのならば、トラックフレーム3から立設した部材に内側筒体135を取付けてあっても構わない。
【0116】
(8)上述の実施形態においては、第一カラー44等は、揺動軸芯Yに沿った面を分割面とし、分割面に沿った鍔部44b,44d,144b,144d,244b,244dを備えた例を示したが、これに限られるものではない。特に図示はしないが、例えば、分割面と直交する面(揺動軸芯Y方向に直交する面)に沿った鍔部を備えてあっても良い。また、半割カラーの一方の端部同士をヒンジで連結した構成としてあっても良い。
【0117】
(9)上述の実施形態においては、油圧シリンダ5によってトラックフレーム3を揺動軸芯Y方向にスライド移動させる例を示したが、これに限られず、電気的構成によって伸縮する駆動装置によってトラックフレーム3をスライド移動させても良い。また、上述の油圧シリンダ3とは別に、同じ支持構成の油圧シリンダを備え、スライド力を補強しても良い。
【0118】
(10)上述の実施形態では、軸芯Zを揺動軸芯Yのほぼ真下に設定したが、これに限られるものではない。軸芯Zは、揺動軸芯Yと異なる軸芯であれば、揺動軸芯Yとの前後関係、上下関係は何れの関係であっても良い。
【0119】
(11)上述の実施形態では、カラー44/45/144/145/244において、他方の鍔部44b・44d/45b・45d/144b・144d/145b・145d/244b・244d同士をボルト締めする構成を示したが、これに限られず、締め付けによって他方の鍔部44b・44d/45b・45d/144b・144d/145b・145d/244b・244d同士を締結する構成であれば、他の構成であっても良い。