特許第6067058号(P6067058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6067058プレキャストセグメント、その積層構造及び減勢柱
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067058
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】プレキャストセグメント、その積層構造及び減勢柱
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/02 20060101AFI20170116BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   E01D19/02
   E01D21/00 B
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-104128(P2015-104128)
(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公開番号】特開2016-169586(P2016-169586A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】104107995
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512107846
【氏名又は名称】財團法人國家實驗研究院
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL APPLIED RESEARCH LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】宋裕祺
(72)【発明者】
【氏名】張國鎮
(72)【発明者】
【氏名】林冠禎
(72)【発明者】
【氏名】洪曉慧
(72)【発明者】
【氏名】江奇融
(72)【発明者】
【氏名】▲らい▼明俊
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−048553(JP,A)
【文献】 特開2003−328375(JP,A)
【文献】 特開平06−341112(JP,A)
【文献】 特開2004−270400(JP,A)
【文献】 特開2007−132054(JP,A)
【文献】 特開平05−009999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造を有する減勢柱であって、
柱体となる複数のセグメント層と、複数の力受け部材と、複数のプレストレス部材を有し、第N層のセグメント層にあるプレキャストセグメントは、複数の雌雄係合部によって第N−1層のセグメント層にある2つ以上のプレキャストセグメントに結合し、Nは2以上の整数であり、前記雌雄係合部はホゾと係合孔とを含み、隣接した前記プレキャストセグメントは前記ホゾと前記係合孔の係合によって結合し、
前記力受け部材は前記セグメント層の積層方向で前記セグメント層に貫設されることで、前記柱体に強度と減勢性能を与えることができ、
前記プレストレス部材は前記セグメント層の積層方向で前記セグメント層に貫設されることで、前記柱体に復元力を与えることができる、
ことを特徴とする積層構造を有する減勢柱。
【請求項2】
前記ホゾと前記係合孔は相補的な突出と凹入を有することを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項3】
前記セグメント層が重なり、中実の柱体あるいは中空の柱体となることを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項4】
前記力受け部材は連続鉄筋であることを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項5】
前記プレストレス部材はプレストレス鋼索であることを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項6】
(i)前記セグメント層は複数のプレキャストセグメントを有し、各々のプレキャストセグメントは、第1表面、前記第1表面に対向する第2表面、複数の貫通孔、及び複数の雌雄係合部を有し、(ii)前記貫通孔は前記第1表面と前記第2表面が連通するように前記第1表面から前記第2表面まで貫通し、(iii)前記雌雄係合部はホゾと係合孔とを有し、前記ホゾは雄係合部として前記第1表面または前記第2表面から突出し、前記係合孔は雌係合部として前記第1表面と前記第2表面のうち、前記ホゾと対向する表面に設けられ、(iv)前記力受け部材と前記プレストレス部材は前記貫通孔に貫設されることを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項7】
前記ホゾは鉄筋コンクリートで成形されることを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項8】
少なくとも1つの前記貫通孔は前記ホゾに対応し、前記貫通孔の一端は前記ホゾを貫通し、他端は前記係合孔となることを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項9】
前記ホゾは鋼棒であることを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項10】
前記係合孔は鋼製の凹入部材からなることを特徴とする請求項に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項11】
前記プレストレス部材は、コンクリートを注入せず、コンクリート付着なしのプレストレス鋼索であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造を有する減勢柱。
【請求項12】
前記力受け部材はコンクリートと鉄筋が一体となった鉄筋コンクリートであることを特徴とする請求項1に記載の積層構造を有する減勢柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストセグメント、積層構造及び減勢柱に関するものであり、組合せることによる組立に適用できる。
【背景技術】
【0002】
従来の橋梁架設工法として固定式支保工架設工法が採用されている。その従来の工法は、簡単な施工でクレーンなどの大型の機械を用いた架設を有することがないというメリットがあるものの、工期が長く、大量のサポート部材が必要であるため、環境への配慮が不十分だというデメリットがある。近年環境保護の思想が世界に広がっている中、橋梁架設の施工が環境に対する影響は注目を集めている。それによって、今はプレキャスト方式が研究され、環境に対する影響を減少させることが期待できる。
【0003】
図1は従来のセグメント式の橋脚を示す斜視図である。図1に示すように、橋脚は数個のプレキャストセグメント13からなる。プレキャストセグメント13は、あらかじめ工場や現場ヤードで分割して製作されたプレキャスト部材で、架橋地点で接合される。従来のセグメント式の橋脚は、基礎11、複数のプレキャストセグメント13、頂部セグメント15、複数の高張力鋼索17、及びアンカー19を有する。高張力鋼索17は、その一端が基礎11の底部に固定され、プレキャストセグメント13と頂部セグメント15とを貫通する。頂部から突出する高張力鋼索17の他端にはプレストレスが与えられ、アンカー19で固定される。
【0004】
ところで、図1に示すように、従来のセグメント式の橋脚の各セグメント層は一つのプレキャストセグメント13しかない。その故、プレキャストセグメント13の製作にあたって、橋脚の形とサイズをあらかじめ考慮しなければならない。つまり橋脚の断面形状と一致する大型のプレキャストセグメント13を作らなければならない。これによって施工の効率に悪影響を与えかねない。橋脚の断面面積が大きめな場合は、大型のプレキャストセグメントを作る必要がある。これによってセグメントの運搬と接合は、クレーンなどの大型の機械に頼らなければならなくなるため、施工の効率が低下する。それに、従来のプレキャストセグメントには、ポストテンション方式が採用されるため、軸力でセグメント間の摩擦力を維持し、外力による剪断応力に抵抗し、復元力を提供する。しかし、これで橋脚は応力を受ける前に大きな軸力を受け、良い靱性が期待できないだけでなく、プレキャストセグメント自身も過度な応力を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の課題を顧みて、従来の工法より短い工期で施工ができ、セグメントの製作効率が向上し、環境負荷の低減に配慮し、同時に過度なプレストレスを避けることができる、という新しい橋梁架設工法が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、組合せることによる組立に適用できるプレキャストセグメントを提供する。工場や現場ヤードであらかじめ統一仕様のセグメントを製作し、所定の橋脚の断面面積に合わせて、統一仕様のセグメントを適当の数量で組み合わせることだけで、必要とされる断面面積のセグメント層を作ることができる。それにより、従来橋脚の断面と一致する大型のセグメントの製作工程は必要なくなる。それに、隣接のプレキャストセグメントは係合固定で積み重なるため、横方向の移動を制限することが可能になり、従来のように過度なプレストレスを与えなくて済む。
【0007】
そこで、本発明はプレキャストセグメントを提供する。プレキャストセグメントは、第1表面、第1表面に対向する第2表面、複数の貫通孔、及び複数の雌雄係合部を含む。貫通孔は、第1表面と第2表面が連通するように第1表面から第2表面まで貫通する。
雌雄係合部はホゾと係合孔とを有する。ホゾは、雄係合部として第1表面または第2表面から突出する。係合孔は雌係合部として第1表面と第2表面のうち、ホゾと対向する表面に設けられている。
【0008】
よって、本発明は統一仕様のセグメントを組み合わせることで、所定の断面面積を有する柱体を製作できる。セグメントは工場や現場ヤードで統一仕様で作られるため、セグメントの生産効率を上げることができ、生産にかかる費用も軽減され、時間的と経済的なメリットが得られる。それに環境負荷の低減にも配慮し、施工品質も向上できる。なお、本発明のプレキャストセグメントは、対向する両面に複数のホゾと係合孔が設けられ、上下隣接のプレキャストセグメントは係合固定で結合されるため、ホゾで外力による剪断応力に抵抗し、横方向の移動を制限することが可能になり、耐震性能を高めることができる。
【0009】
本発明は、プレキャストセグメントのサイズと形状は特に制限がなく、組合せることで柱体を組み立てることができるものであればよい。例えばプレキャストセグメントの断面は矩形であってもいいが、それに限らない。プレキャストセグメントは鉄筋コンクリート(RC)であってもよく、つまりホゾと係合孔はプレキャストセグメントと一体化で成形される。それによって、ホゾと係合孔の応力の受け方は、プレキャストセグメントのと一致する。また、プレキャストセグメントに非RCのホゾと係合孔を設置してもよい。例えば、プレキャストセグメントの対向する両面に、非RCの係合孔とホゾとして、それぞれ複数の凹入部材と突出部材を設置する。凹入部材はプレキャストセグメントの第1表面に開口部を有し、第2表面に向かって延伸する。突出部材は、直接にプレキャストセグメントの第2表面に設置してもいいが、組立の際にプレキャストセグメントの第2表面から突出するように第2表面に螺設してもいい。また、凹入部材の開口部周辺から延伸部を設置してもよい。延伸部にシアコネクターを設置することによって、凹入部材がより安定的にセグメントに固定される。上述した凹入部材、延伸部、シアコネクター、及び突出部材の材料に特別な制限はないが、鋼製のものが望ましい。例えば、本発明の実施形態の一つは鋼製のホゾを採用し、鋼製の凹入部材で係合孔が形成される。
【0010】
本発明では、ホゾと係合孔との数量は限定されなく、実際の需要に応じて種々変更することができる。例えば、本発明の実施例の一つとして、2つのホゾと2つの係合孔とをプレキャストセグメントに設置し、そのプレキャストセグメントを一つの基本ユニットにする。ホゾと係合孔の数量は実施例で示した数量に限らず、プレキャストセグメントに2つ以上のホゾと係合孔を設置してもよい。また、ホゾと係合孔は、プレキャストセグメントの対向する両面に設置することが望ましい。統一仕様のプレキャストセグメント同士がホゾと係合孔とで結合できるように、ホゾと係合孔は相補的な突出と凹入を有することが望ましい。詳しく説明すると、係合孔の内径とホゾの外径が一致し、係合孔の深さはホゾの突出部分の長さと一致し、または若干深いことが望ましい。それによってプレキャストセグメントのホゾは相対する係合孔に安定的に係合される。係合孔とホゾの断面形状は限定されなく、例として円形、矩形、多辺形などであってもよい。
【0011】
本発明では、プレキャストセグメントのホゾに対応する位置で貫通孔を貫通形成する。貫通孔の一端はホゾを貫通し、他端は係合孔となる。本発明の実施例の一つとして、RCのホゾと係合孔を採用する。貫通孔がホゾを貫通するため、後で設置する力受け部材またはプレストレス部材はプレキャストセグメント間の係合部分に貫通設置する。或いは、プレキャストセグメントにおいてホゾと係合孔が設置されていない位置で貫通孔を貫通形成する。即ち、貫通孔はホゾを貫通しないという構成であってもいい。また、プレキャストセグメントの貫通孔の数量と位置は特に限定されなく、実際の需要によって変更可能である。複数のプレキャストセグメントで橋脚を組み立てるとき、所定数量の力受け部材(例えば、連続鉄筋)とプレストレス部材(例えば、プレストレス鋼索)が所定の位置に貫設することができればよい。
【0012】
上述したように、本発明はプレキャストセグメントの積層構造を提供する。その積層構造は柱体となる複数のセグメント層を含む。第N層のセグメント層にあるプレキャストセグメントは、第N−1層のセグメント層にある2つ以上のプレキャストセグメントに、複数の雌雄係合部によって結合する。Nは2以上の整数である。雌雄係合部はホゾと係合孔とを含み、隣接したプレキャストセグメントはホゾと係合孔の係合によって結合する。なお、上述した積層構造を力受け部材とプレストレス部材と組み合わせることで、エネルギー減勢性能と復元力のある減勢柱にすることが可能である。そこで、本発明は積層構造を有する減勢柱を提供する。減勢柱は、柱体となる複数のセグメント層と、複数の力受け部材と、複数のプレストレス部材とを有する。第N層のセグメント層にあるプレキャストセグメントは、第N−1層のセグメント層にある2つ以上のプレキャストセグメントに、複数の雌雄係合部によって結合する。Nは2以上の整数である。雌雄係合部はホゾと係合孔とを含み、隣接したプレキャストセグメントはホゾと係合孔の係合によって結合する。複数の力受け部材は積層の方向でセグメント層に貫設される。複数のプレストレス部材は積層の方向でセグメント層に貫設される。力受け部材の強度と減勢性能、及びプレストレス部材の復元力によって、プレキャストセグメントのホゾは外力による剪断力に抵抗することができる。その故、減勢柱に少しのプレストレスに与えるだけで済み、過度なプレストレスで柱体に過大な軸方向の圧力を受けさせるという従来の工法による課題を解決する。
【0013】
本発明は、それぞれのセグメント層は複数のプレキャストセグメントを含むことが望ましい。複数のプレキャストセグメントは所定の断面積に合わせてXY平面に配列され、一つのセグメント層になる。複数のセグメント層は係合によってZ軸方向で所定高度の柱体となる。例えば、複数のプレキャストセグメントを矩形のセグメント層として組み合わせる。プレキャストセグメントの第1表面にある係合孔と、もうひとつのプレキャストセグメントの第2表面にあるホゾが係合することによって、複数のセグメント層を有する柱体となる。また、上下のセグメント層のプレキャストセグメントは違った配列で重なり、中空の柱体あるいは中実の柱体となる。それによって、上下のプレキャストセグメントに対して横方向の移動を制限することが可能になる。例えば、プレキャストセグメントを二種類の配列方式で奇数層のセグメント層と偶数層のセグメント層として組み合わせる。即ち、奇数層のセグメント層は一種類の配列方式であり、偶数層のセグメント層は別の種類の配列方式である。したがって、隣接したセグメント層にあるプレキャストセグメントは違った配列方向で重なる。一つのプレキャストセグメントは、下の少なくとも2つのプレキャストセグメントと重なり、安定した柱体となる。セグメント層の数量、セグメント層の高さ、一つのセグメント層に含まれたプレキャストセグメントの数量と配列方式、及びセグメント層の断面面積と形状は特に制限がなく、必要に応じて種々変更することができる。
【0014】
本発明では、力受け部材とプレストレス部材の数量は特に制限がなく、必要に応じて適切な数量に変更することができる。力受け部材とプレストレス部材を柱体の外周部に近いところに設置することによって、耐震性能を高めることができる。力受け部材は連続鉄筋であることが望ましい。コンクリートと鉄筋とが一体となった鉄筋コンクリートは、構造の強度と減勢性能に貢献できる。プレストレス部材はプレストレス鋼索であることが望ましい。コンクリートを注入せず、コンクリート付着なしのプレストレス鋼索に小さなプレストレスを与えるだけで、柱体が変形した後の復元力を提供する。
【0015】
したがって、本発明は橋脚の組立に適用できる。セグメントを組合せることによって、基礎と、柱本体と、頂部セグメントとを有する橋脚を組み立てることができる。基礎と頂部セグメントの間に設置された柱本体は複数のセグメント層からなる。セグメント層は力受け部材とプレストレス部材によって結合し、全体として減勢性能と復元力を有する橋脚となる。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明は組合せることによる組立の概念を用い、新型の橋脚施工工法を提供する。セグメントのモジュール化により鋼板の製作コストを抑えるだけでなく、セグメントの製作効率を上げることができる。プレキャストセグメントは小型の統一仕様に作られるため、運搬と架設の利便性向上が図られ、橋梁の建設とメンテナンスに使う工事の時間を短縮することができ、災害時の救難活動で一刻も早く橋梁を建設することが可能になる。また、プレキャストセグメントはホゾの係合によって剪断応力に抵抗し、小さなプレストレスだけで柱体が変形した後の復元力を提供する。柱体が変形した際に鋼索に大きな軸力が発生するが、柱体が復元された時に軸力は減少するため、セグメント式の橋脚が変形する前に過大な軸方向の圧力を受けるという従来の工法による課題を解決する。本発明で提供した柱体構造は、その耐震性能は従来の耐震橋脚に類似するが、より良い復元力を持つため、地震エリアに設置される橋脚構造として応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来のセグメント式の橋脚を示す斜視図。
図2】実施例1においてプレキャストセグメントを示す斜視図。
図3図2のA−A’線断面構造図。
図4】実施例1においてセグメント式の橋脚を示す斜視図。
図5図4に対応した分解斜視図。
図6図4に対応した一部分解斜視図。
図7】実施例1においてプレキャストセグメントの配列方式を示す図。
図8】実施例1においてプレキャストセグメントの配列方式を示す図。
図9】実施例2においてプレキャストセグメントを示す斜視図。
図10図9のB−B’線断面構造図。
図11】実施例2においてプレキャストセグメントの配列方式を示す図。
図12】実施例2においてプレキャストセグメントの配列方式を示す図。
図13】実施例3においてプレキャストセグメントを示す斜視図。
図14図13のC−C’線断面構造図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明の実施形態を説明する。当業者はこの明細書の記載によって本発明のメリットと効果を理解することができる。以下の図面は簡略化した図面であり、部材の数量と、形状と、サイズとは必要に応じて種々変更することができ、実際の構造は図面より複雑な場合もある。また、複数の実施例を組合せ、必要に応じて種々変更することができる。
【実施例】
【0019】
<実施例1>
本発明の実施例1について、先ず図2図3を用いて説明する。図2は実施例1においてプレキャストセグメントを示す斜視図である。図3図2のA−A’線断面構造図である。プレキャストセグメント21は、第1表面21aと、第1表面21aに対向する第2表面21bと、複数の貫通孔211、及び複数の雌雄係合部212を有する。貫通孔211は、第1表面21aと第2表面21bが連通するように第1表面21aから第2表面21bまで貫通する。
【0020】
雌雄係合部212は係合孔214とホゾ217とを有する。係合孔214は雌係合部として第1表面21aに設けられている。ホゾ217は雄係合部として第2表面21bから突出するように第2表面21bに設けられている。この実施例で、プレキャストセグメント21は鉄筋コンクリート(RC)である。貫通孔211は、プレキャストセグメント21と一体化したホゾ217に対応している。貫通孔211は、力受け部材とプレストレス部材が貫設できるように、その一端はホゾ217を貫通し、他端は第1表面21aで係合孔214として形成される。ここで貫通孔211がホゾ217を貫通する部分を第一部A1とし、貫通孔211がセグメントを貫通している部分を第二部A2及び第三部A3とする。貫通孔211の第三部A3は係合孔214である。図3に示すように、第一部A1と第二部A2の内径は第三部A3の内径より小さい。第三部A3は係合孔214であるため、第三部A3の内径はホゾ217の外径と一致する。第三部A3の深さH1はホゾ217の突出した高さH2とほぼ一致すること望ましい。また、係合孔214の深さH1はホゾ217の高さH2よりやや大きくてもいい。統一仕様のプレキャストセグメント同士はホゾ217と係合孔214との係合で結合し、振動による剪断応力に抵抗することができる。簡単に言うと、係合孔214とホゾ217は相補的な凹入と突出を有することが望ましい。係合孔214とホゾ217は緊密に係合し、振動による横方向の移動を制限することが可能になる。また、係合孔214とホゾ217の断面形状は円形に限らず、正方形、六角形などであってもよい。
【0021】
続いて、図4図6を用いて説明する。図4は実施例1においてセグメント式の橋脚を示す斜視図である。図5図4に対応した分解斜視図であり、図6図4に対応した一部分解斜視図である。Z軸方向で第1セグメント層S1、第2セグメント層S2、第3セグメント層S3、第4セグメント層S4、第5セグメント層S5、及び第6セグメント層S6を基礎30の上で積み重ねる。力受け部材23とプレストレス部材25はZ軸方向で第1〜第6セグメント層S1〜S6に貫設され、構造全体が中実の柱状である減勢柱20となる。第6セグメント層S6の上に頂部セグメント22を設置し、本実施例のセグメント式の橋脚を完成させる。第1〜第6セグメント層S1〜S6は図2図3に示されたプレキャストセグメント21からなり、頂部セグメント22の表面にもホゾ227がある。そのホゾ227の形状はプレキャストセグメントのホゾ217のと同じく、力受け部材23とプレストレス部材25が貫設できるように貫通孔(図示せず)が設けられている。この実施例に示した6層の構造はただ一例を示しただけであり、層の数は必要に応じて種々変更することができる。
【0022】
図4図5に示すように、基礎30は減勢柱20をサポートする土台であり、基礎30の断面面積は第1〜第6セグメント層S1〜S6の断面面積より大きい。基礎30は係合孔304を有し、係合孔304の形状はプレキャストセグメント21にあるホゾ217の形状に対応し、ホゾ217は係合孔304に係合される。それと同時に、図5図6に示すように、第2〜第6セグメント層S2〜S6にあるプレキャストセグメント21のホゾ217は、それぞれ下のセグメント層にある2つのプレキャストセグメント21の係合孔214に係合される。頂部セグメント22のホゾ227は第6セグメント層S6にあるすべてのプレキャストセグメント21の係合孔214に係合されることによって、頂部セグメント22は安定的に減勢柱20の頂部に固定される。上のセグメント層にあるプレキャストセグメント21は、下のセグメント層にある2つのプレキャストセグメント21にまたがっているため、プレキャストセグメント21の横方向の移動を制限することができる。
【0023】
続いて、図7図8を用いて説明する。図7は実施例1において第1セグメント層S1、第3セグメント層S3、及び第5セグメント層S5にあるプレキャストセグメント21の配列方式を示す図である。図8は実施例1において第2セグメント層S2、第4セグメント層S4、及び第6セグメント層S6にあるプレキャストセグメント21の配列方式を示す図である。「
」は貫通孔内に力受け部材23が設けられていることを示す符号である。「◎」は貫通孔内にプレストレス部材25が設けられていることを示す符号である。「○」は貫通孔内に力受け部材23とプレストレス部材25のいずれも設けられていないことを示す符号である。図5図8に示すように、本実施例において第1セグメント層S1〜第6セグメント層S6はそれぞれ8個のプレキャストセグメント21を有する。力受け部材23とプレストレス部材25はそれぞれ外周のプレキャストセグメント21の貫通孔211に貫設されている。即ち、力受け部材23とプレストレス部材25は、第1セグメント層S1〜第6セグメント層S6がZ軸方向で重なるように、基礎30の係合孔304と頂部セグメント22のホゾ227に貫設されている。力受け部材23は連続鉄筋であることが望ましい。コンクリートと鉄筋とが一体となった鉄筋コンクリートは、構造の強度と減勢性能に貢献できる。プレストレス部材25は小さなプレストレスが与えられたプレストレス鋼索であり、その一端はプレストレスアンカー(図示せず)で基礎30に固定される。柱体の頂部にあるプレストレス部材25の他端はプレストレスが与えられた後、図4図5に示すように、アンカー26で固定される。コンクリートを注入しないことで、柱体が変形した後の復元力が得られる。この実施例において、図2図8に示したプレキャストセグメントのホゾと係合孔と貫通孔との数量と位置、セグメント層の数量、セグメント層にあるプレキャストセグメントの数量と配列方式、及び力受け部材とプレストレス部材の設置方法は、図面に示したものに限らず、必要に応じて種々変更することができる。
【0024】
<実施例2>
図9は実施例2においてプレキャストセグメントを示す斜視図である。図9に示すように、プレキャストセグメント41は第1表面41aと、第1表面41aに対向する第2表面41bと、複数の貫通孔411、及び複数の雌雄係合部412を含む。雌雄係合部412は係合孔414とホゾ417とを有する。係合孔414は雌係合部として第1表面41aに設けられている。ホゾ417は雄係合部として第2表面41bから突出するように第2表面41bに設けられている。貫通孔411は、第1表面41aから第2表面41bまで貫通し、係合孔414とホゾ417とは別に設けられる(即ち、貫通孔411はホゾ417を貫通しない)。この実施例において、プレキャストセグメント41に雌雄係合部として非RCの係合孔414とホゾ417を設置する。なお、この実施例の変化例として、プレキャストセグメント41に鉄筋コンクリート(RC)形式の係合孔414とホゾ417を設置してもいい。つまり係合孔414とホゾ417はプレキャストセグメント41と一体化で成形される。以下は非RCの係合孔414とホゾ417を用いて説明する。
【0025】
図10図9のB−B’線断面構造図である。図10に示すように、係合孔414は、第1表面41aに凹入部材413を設置することによって設けられている。凹入部材413は第1表面41aに開口部41cを有し、第1表面41aから第2表面41bに向かって深さH1まで延伸する。ホゾ417は第2表面41bからH2の高さで突出し、その一端はセグメントの本体に固定される。係合孔414の内径はホゾ417の外径と一致し、係合孔414の深さH1はホゾ417の突出部分の高さH2とほぼ一致する。あるいは、係合孔414の深さH1は突出部分の高さH2よりやや大きい。それによってホゾ417は相対する係合孔414に安定的に係合され、振動による剪断応力に抵抗することが可能になる。また、凹入部材413の開口部41cの周辺から延伸部415を設置する。延伸部415にシアコネクター416を設置することによって、凹入部材413をより安定的にセグメントに固定する。この実施例において、上述した凹入部材413、延伸部415、シアコネクター416、及びホゾ417は鋼製のものが望ましい。例えば、係合孔414は鋼製の凹入部材からなり、ホゾ417は鋼棒である。以上に挙げたものは一例に過ぎず、必要に応じて種々変更することができる。
【0026】
図9図10に示したプレキャストセグメント41で、複数のセグメント層を有する柱体を組み立てる。図11図12は実施例2においてプレキャストセグメントの二種類の配列方式を示す図である。「
」は貫通孔内に力受け部材43が設けられていることを示す符号である。「◎」は貫通孔内にプレストレス部材45が設けられていることを示す符号である。「○」は貫通孔内に力受け部材とプレストレス部材のいずれも設けられていないことを示す符号である。「●」はホゾ417を示す符号である。奇数層のセグメント層(第1層、第3層、第5層、及び第7層等)は図11に示したXY平面での配列方式であり、偶数層のセグメント層(第2層、第4層、及び第6層等)は図12に示したXY平面での配列方式である。また、それとは逆の方式でも構わない。つまり、偶数層のセグメント層(第2層、第4層、及び第6層等)は図11に示したXY平面での配列方式であり、奇数層のセグメント層(第1層、第3層、第5層、及び第7層等)は図12に示したXY平面での配列方式であるという構成でも構わない。偶数層のセグメント層41にあるホゾ417は、下の奇数層のセグメント層41にある係合孔414に係合され、構造全体が中空の柱体となる。上下隣接したセグメント層のプレキャストセグメントは違った配列方向で重なるため、より強固な結合力が得られる。また、図11、12に示すように、力受け部材43とプレストレス部材45は、すべてのセグメント層が重なるようにプレキャストセグメント41にある貫通孔411に貫設されている。力受け部材43は連続鉄筋であり、コンクリートと鉄筋とが一体となった鉄筋コンクリートは、構造の強度と減勢性能に貢献できる。柱体が変形した後の復元力を提供できるように、プレストレス部材25には小さなプレストレスを与え、コンクリートを注入しない。図9〜12に示したプレキャストセグメントにあるホゾ、係合孔、及び貫通孔の数量と位置、セグメントの数量と配列方式、並びにプレストレス鋼索と連続鉄筋の設置方法は特に制限がなく、必要に応じて種々変更することができる。
【0027】
<実施例3>
図13は実施例3においてプレキャストセグメントを示す斜視図である。図14図13のC−C’線断面構造図である。この実施例において、プレキャストセグメント51は実施例2に示したプレキャストセグメント41とほぼ同じであるが、実施例3でホゾ517は組み立てる際に別の方式でプレキャストセグメント51の第2表面51bに固定される。ホゾ517は下にあるプレキャストセグメント(図示せず)の係合孔に係合される。
【0028】
詳しく説明すると、図14に示すように、プレキャストセグメント51の第1表面51aと第2表面51bに凹入部材513が設けられている。プレキャストセグメント51を組み立てる際に、ホゾ517はねじ山で(図示せず)プレキャストセグメント51の第2表面51bにある凹入部材513に固定される。この実施例において、プレキャストセグメント51の第1表面51aにある凹入部材513は係合孔514となり、第2表面51bにある凹入部材513にはホゾ517が固定されている。実施例3のプレキャストセグメント51とその他の部分(即ち貫通孔511、延伸部515、及びシアコネクター516)は実施例2に示したものとほぼ同じであるため、それらについての説明は省略する。
【0029】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その他種々の変更が可能である。特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の実施の形態を含むことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明では新型の柱体施工工法が開発された。以上の実施例をまとめて言うと、本発明は橋脚に適用できるだけでなく、建築物の柱体にも適用できる。モジュール化、便利性、施工の効率、環境への配慮等には大きなメリットがある。
【符号の説明】
【0031】
11、30 基礎
13、21、41、51 プレキャストセグメント
15、22 頂部セグメント
17 高張力鋼索
19、26 アンカー
20 減勢柱
21a、41a、51a 第1表面
21b、41b、51b 第2表面
211、411、511 貫通孔
212、412 雌雄係合部
214、224、304、414、514 係合孔
217、227、417、517 ホゾ
23、43 力受け部材
25、45 プレストレス部材
41C 開口部
413、513 凹入部材
415、515 延伸部
416、516 シアコネクター
A1 第一部
A2 第二部
A3 第三部
H1 深さ
H2 高さ
S1 第1セグメント層
S2 第2セグメント層
S3 第3セグメント層
S4 第4セグメント層
S5 第5セグメント層
S6 第6セグメント層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14