(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の放射能汚染土壌用袋は、
図1に示すように、放射性物質により汚染した土壌を収容するための収容部19を形成する矩形状の底壁部13及び4つの矩形状の側壁部12を有する直方箱型に形成している。
各側壁部12にクレーンのフック部やフォークリフト等に掛けられる吊り帯部50を設けている。また、4つの側壁部12の上辺部12aに全周に渡って縫着され収容部19を閉塞するための蓋布9を備えている。
【0011】
図2に示すように、4つの側壁部12は、主として複数枚の矩形状の側壁用シート体2で形成され、底壁部13は、主として1枚の矩形状(正方形状)の底壁用シート体3で形成している。
【0012】
側壁用シート体2は、8枚であって、同一寸法(同形状)かつ同一材質であり、放射性物質を除去しつつ(ろ物として残しつつ)水を通過可能なものである。
底壁用シート体3は、正方形状であって、側壁用シート体2と同一材質であり、放射性物質を除去しつつ水を通過可能なものである。
【0013】
8枚の側壁用シート体2の縦辺部21を、順次、縦縫着継目部81をもって、連設すると共に、側壁用シート体2の下辺部と底壁用シート体3の側辺部とを縫着して、8枚の側壁用シート体2を横断面(平面視)正方形状の角筒型に形成している。
【0014】
そして、側壁用シート体2と底壁用シート体3を縫着する際に、形成すべき各側壁部12の横幅方向中間域Mに、2つの縦縫着継目部81,81が対応するように配設し、縦縫着継目部81が側壁部12,12同士が接する縦稜線部11に配設されるのを避けている。
【0015】
さらに、
図2の実施の形態に於ては、各側壁部12の横幅寸法をWとすると、側壁部12の横幅方向中心線S12から、縦縫着継目部81の横幅方向中心線S81までの長さを、略W/4に設定している。略W/4に設定とは、側壁部12の横幅寸法(W)を100%とすると、22%〜28%に設定している。
即ち、4つの側壁部12で形成する外周壁の外周長(4×W)に対して、縦縫着継目部81を、外周壁に沿って、所定周長毎(略W/2の所定間隔毎)に配設している(外周壁周りに略均等に配設している)。
【0016】
8枚の側壁用シート体2は、言い換えると、側壁部12の横幅方向中央部を形成するための中央用の4枚の側壁用シート体2Dと、縦稜線部11と側壁部12の側端部を形成するための角用の4枚の側壁用シート体2Eと、有し、中央用の側壁用シート体2Dと角用の側壁用シート体2Eと交互に連設している。
なお、
図2と
図3及び
図4に於て、中央用の側壁用シート体2Dと角用の側壁用シート体2Eとは同一寸法(同一形状)かつ同一材質であるが、異なるハッチングで図示している。
なお、前記中間域Mとしては、前記横幅寸法(W)の80%以下であれば良い。
【0017】
図3及び
図4に示すように、縦縫着継目部81は、シートベルトウエビングからなる帯状の芯材70を内部に有している。
一方の側壁用シート体2(2A)の縦辺部21(21A)を側壁厚み方向Tに折り返した第1折り返し帯部71Aを形成して芯材70を挟んでいる。
一方の側壁用シート体2(2A)と隣り合う他方の側壁用シート体2(2B)の縦辺部21(21B)を、一方の側壁用シート体2と異なる側壁厚み方向Tに折り返した第2折り返し帯部71Bを形成して芯材70を挟んでいる。
【0018】
さらに、第1折り返し帯部71Aを形成して第2折り返し帯部71Bを挟むと共に、芯材70の裏面70bに第1折り返し帯部71Aを当接させている。そして、第2折り返し帯部71Bを形成して第1折り返し帯部71Aを挟むと共に芯材70の表面(表て面)70aに第2折り返し帯部71Bを当接させている。
【0019】
言い換えると、一方の側壁用シート体2Aと他方の側壁用シート体2Bとが、横断面視で相互にフック状に横幅方向に引っ掛り合う(相互に係合する)と共に側壁厚み方向Tに挟み合っている。
縦縫着継目部81において、一方の側壁用シート体2A及び他方の側壁用シート体2Bが、夫々、二重になり、側壁厚み方向Tに、一方の側壁用シート2Aと他方の側壁用シート2Bとが交互に配設される。
【0020】
そして、縦縫着継目部81は、袋外部側に、芯材70と同等の幅寸法をもった帯状の補強当て生地73を配設し、袋内部側に、その補強当て生地73よりも幅広の帯状の側壁用裏当て生地74を配設して、補強当て生地73と、一方の側壁用シート2Aと、芯材70と、他方の側壁用シート2Bと、側壁用裏当て生地74とを縫着して形成している。
なお、
図2に於て、補強当て生地73、側壁用裏当て生地74、は図示省略している。
【0021】
次に、
図1に示すように、側壁部12に縫着される複数の帯体5,5を備えている。
図3及び
図4に於て、帯体5は、側壁部12の上部に縫着される上縫着部52を有している。
上縫着部52は、側壁用裏当て生地74と同等の横幅寸法をもった側壁縫着用押さえ生地75に、袋外部側から押さえられ、その側壁縫着用押さえ生地75と共に縦縫着継目部81の上部に縫着されている。
【0022】
図4及び
図5に示すように、帯体5は、底壁部13の下面13dに縫着される底縫着部53を有している。
帯体5の底縫着部53は、その底縫着部53を袋外部側から押さえる底壁縫着用押さえ生地76と、袋内部側に配設され底壁縫着用押さえ生地76と同等の横幅寸法をもった底壁用裏当て生地77と、共に、底壁用シート3に縫着されている。
【0023】
さらに、帯体5は、上縫着部52と底縫着部53の間で縦縫着継目部81に対面状に余長をもって(余裕代をもって)配設される。そして、側壁用シート体2の下辺部と底壁用シート体3の側辺部とを縫着した底縁縫着部10を余長をもって周り込む。このように、底縁縫着部10に対して間隙Gが形成され、周り込む帯体5は、底縁縫着部10及びその近傍に対して非縫着状である。
そして、土壌未投入状態で非縫着状周り込み部は、土壌投入に伴って側壁部12が袋外方側へ膨張した際に、縦縫着継目部81を袋外方側から覆うように沿って接触して、縦縫着継目部81を支持すると共に底縁縫着部10を支持する補強支持帯部54としている。
【0024】
また、
図1及び
図5に示すように、帯体5は、各側壁部12に2本平行状に縫着され、相互に向かい合う側壁部12,12の一方から、底壁部13の下面13d側を通って、相互に向かい合う側壁部12,12の他方に渡って設けている。底壁部13の下面13dに、帯体5が格子状に配設され、底壁用シート体3を下方から支持している。
【0025】
図1及び
図6に示すように、帯体5は、クレーン等のフック部やフォークリフト等に吊り上げられた使用状態で倒立U字状となる吊り帯部50を有している。
吊り帯部50は、一方の帯状端部と、他方の帯状端部とを、積層状に重ね合わせて、連結用生地59,59を縫製にて巻着させて連結した連結部を有している。
【0026】
また、吊り帯部50及び補強支持帯部54を形成する帯体5は、8つ全ての縦縫着継目部81の各々に対応させているので、帯体5を、十分な強度をもった縦縫着継目部81(補強当て生地73)に縫着できる。また、材料の無駄がなく、4つの側壁部12を、均等に支持でき、負荷が集中するのを防止できる。
【0027】
2本の帯体5,5は、言い換えると、吊り用ベルトであって、吊り上げられた使用状態で倒立U字状となる吊り帯部50と、側壁部12の上部に縫着される上縫着部52,52と、側壁部12の上部近傍(上下中間部)から底縁縫着部10を周り込むように余長をもって配設される非縫着状周り込み部から成る補強支持帯部54、54と、底壁部13の下面13dに縫着される底縫着部53,53と、を有し、土壌投入に伴って袋外方側へ弯曲凸状に変形した際に、側壁部12と、底縁縫着部10近傍の底壁部13と、を袋外方側から支持する。特に、縦縫着継目部81の破損を、この縦縫着継目部81に沿って配設した帯体5が外面から当接支持して、十分に補強しつつ、防止する役目をなす。
【0028】
また、
図1に示すように、蓋布9は、蓋布9の外面側に縫着された細帯体91と、細帯体91が挿通可能なベルト通し部92と、が付設され、細帯体91で蓋布9の外周を絞るようにして縛ることで、収容部19を(きんちゃく状に)閉塞する。
【0029】
ここで、側壁用シート体2及び底壁用シート体3は、厚さが約1mmであり、例えば、樹脂繊維から成る不織布に樹脂を含浸させて形成した人工皮革に、プルシアンブルー(紺青の顔料)を塗布した又は含浸させたものである。或いは、プルシアンブルー(プルシャンブルー)を塗布又は含浸させた布であっても良い。また、不織布や織布や編布を形成する樹脂繊維にバインダー樹脂を用いてプルシアンブルーを付着させたものであっても良い。なお、放射性物質を残渣(ろ物)として、袋内部及びシート体内部にとどめて、水をろ液として袋外部へ排出可能(放射性物質と水を分離可能なろ過性能を有するもの)であれば、人工皮革や布であっても良い。除去される(残渣となる)放射性物質は、例えば、セシウムである。
【0030】
芯材70(シートベルトウエビング)は、ポリエステルやポリアミド等の合成樹脂繊維から成る織物で、引っ張り強さ、伸び率、エネルギー吸収率がJIS D 4604の規格に適合するものであり、例えば、伸び率が10%以下で、引っ張り強さが30kN以上である(試験方法はJIS D 4604に準拠)。
【0031】
また、帯体5、補強当て生地73、側壁用裏当て生地74、側壁縫着用押さえ生地75、底壁縫着用押さえ生地76、底壁用裏当て生地77は、ポリエステル等の合成樹脂繊維から成るベルト(織物)であって、芯材70(シートベルトウエビング)と比べて伸び率が大きく厚いものである。
例えば、帯体5は、引っ張り強さが40〜60kNで、伸び率が11〜20%である。補強当て生地73は、引っ張り強さが25〜45kNで、伸び率が11〜20%である。側壁用裏当て生地74、側壁縫着用押さえ生地75、底壁縫着用押さえ生地76、底壁用裏当て生地77は、引っ張り強さが55〜75kNで、伸び率が11〜20%である(試験方法はJIS L 1096に準拠)。
【0032】
また、蓋布9は、防水性を有するターポリンであって、合成樹脂繊維(長繊維)の基布にEVAシートを両側から一体状に貼り付けたものである。細帯体91は、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維から成るベルト(織物)である。
【0033】
次に、本発明の放射能汚染土壌用袋の作用について説明する。
図7に示すように、汚染土壌を収容後に積み上げて貯蔵する際に、最下位置の放射能汚染土壌用袋は、上方からの荷重を受けて、
図8に示すように、平面視で側壁部12に直交状の側外方への押し力Faや、隣り合う側壁部12,12で形成される内隅部(縦稜線部11)を押し広げるような力Fcが作用するが、縦稜線部11には縦縫着継目部81が無く(継ぎ目の無い1枚のシート体であるため)、縫着糸通し穴やその近傍からの破れや裂けが発生せず、安全に保管される。
【0034】
例えば、
図9に示す比較例のように、縦稜線部99に縦縫着継目部98を配設した場合は、縦稜線部99を形成する側壁部97と側壁部97に夫々直交状の側外方への押し力Faが働く。また、内隅部(縦稜線部99)で、一方の側壁用シート体96Aと他方の側壁用シート体96Bを夫々、横幅方向に分離させるような大きな引っ張り力Fbが縦縫着継目部98に作用すると共に、内隅部(縦稜線部11)を押し広げるような力Fcが作用して、縫着糸通し穴やその近傍から破れや裂けが発生する。
【0035】
しかし、本発明は、側壁部12の横幅方向中間域Mに縦縫着継目部81があるため、縦縫着継目部81には平面視直交状の力Faは働くが、縦縫着継目部81を横幅方向に分離するような力は比較例に比べて非常に小さく、破れや裂けが防止される。
さらに、
図3に示すように、縦縫着継目部81において、一方の側壁用シート体2Aと他方の側壁用シート体2Bとが、横断面視で相互にフック状に横幅方向に引っ掛り合うと共に側壁厚み方向Tに挟み合っているので、十分な強度を発揮して破損を防止する。
しかも、補強支持帯部54が、投入した土壌の重量を受けて側壁部12が側外方に膨張した際に、縦縫着継目部81に接触して支持するので、縦縫着継目部81からの破れや裂けをより確実に防止できる。
【0036】
ここで、側壁用シート体2及び底壁用シート体3を、人工皮革にプルシアンブルーを塗布したものとし、側壁部12の裏面(袋内部側の面)の高さを1030mmとし、側壁部12の裏面の横幅寸法を1000mmとした放射能汚染土壌用袋(以下、実施例の袋と呼ぶ)を用いて試験を行った。
先ず、汚染土壌の代わりに樹脂性ペレット(模擬収容物)を、側壁部12の裏面の高さの80%以上に充填した。
そして、模擬収容物の頂部に平らな圧力盤を設置して、クレーン等の吊り具で実施例の袋を吊り上げて、圧力盤による荷重の負荷と除荷及び休止を交互に繰り返す試験(繰り返し頂部つり上げ試験)を行った。
29400Nの荷重を70回サイクルで行ったが、安全性を損なうような収容物の漏洩及び破損といった異常は発生しなかった。しかも、最後に、73500Nの荷重を1回、負荷したが、同様に上記異常は発生しなかった。
【0037】
また、平らな面に実施例の袋を載置し、79380Nの荷重を負荷して6時間保持する試験(圧縮及び積み重ね試験)を行ったが、上記異常は発生しなかった。
また、実施例の袋に、模擬収容物を1.5トン収容して、0.8mの高さから、硬く平らな水平面へ1回落下させる試験(落下衝撃試験)を行ったが、上記異常は発生しなかった。
つまり、JIS Z 1651の、繰り返し頂部つり上げ試験、圧縮試験及び積み重ね試験、落下衝撃試験、に合格する(規格に適合する)性能を有していた。
【0038】
なお、本発明は設計変更可能であって、側壁用シート体2を、8枚以上とするも良い。複数枚の側壁用シート体2は、同一寸法でなくとも良い。帯体5、補強当て生地73、側壁用裏当て生地74、側壁縫着用押さえ生地75、底壁縫着用押さえ生地76、底壁用裏当て生地77、蓋布9、細帯体91等の材質は自由である。
なお、
図1乃至
図5の太い一点鎖線は、主要箇所の縫製(縫着)部のミシン目やミシン糸を、簡略して図示したものであり、実際は、図例よりも密に縫製される。
また、本発明に於て土壌とは、土のみに限らず、木材や木の枝、土砂や砂利、泥、焼却灰、ゴミ等を含む。
【0039】
以上のように、本発明の放射能汚染土壌用袋は、矩形状の底壁部13と4つの側壁部12とを有する直方箱型の放射能汚染土壌用袋に於て、放射性物質を除去しつつ水を通過可能な複数枚の矩形状の側壁用シート体2と、放射性物質を除去しつつ水を通過可能な1枚の矩形状の底壁用シート体3と、を備え、上記側壁用シート体2の縦辺部21を、順次、縦縫着継目部81をもって連設し、かつ、縦縫着継目部81を各側壁部12の横幅方向中間域Mに配設して、側壁部12,12同士が接する縦稜線部11に縦縫着継目部81が配設されるのを避けたので、放射性物質が水と共に袋外部に流出することを防止できると共に、十分な強度を得ることができる。例えば、放射能汚染土壌を収容して吊り上げと吊り下ろしを繰り返しても破れや裂け等の破損が無く、安全に搬送できる。また、多段(3段)に積み重ねても、最下位置の放射能汚染土壌用袋に破れや裂け等の破損が発生せず、安全に貯蔵することができる。また、万が一、搬送中に落下しても、安全性を損なうような収容物の漏洩が無い。
【0040】
また、縦縫着継目部81は、シートベルトウエビングから成る帯状の芯材70を内部に有し、隣り合う一方の側壁用シート体2の縦辺部21を折り返した第1折り返し帯部71Aを形成して芯材70を挟み、さらに、隣り合う他方の側壁用シート体2の縦辺部21を折り返した第2折り返し帯部71Bを形成して芯材70を挟み、芯材70の表裏各面70a,70bに第1折り返し帯部71Aと第2折り返し帯部71Bを当接させたので、縦縫着継目部81が引っ張り力に強く、破れや裂け等の破損を確実に防止できる。
【0041】
また、吊り下げ用の吊り帯部50を有する帯体5を備え、帯体5は、上縫着部52をもって側壁部12の上部に縫着され、かつ、底縫着部53をもって底壁部13の下面13dに縫着され、上縫着部52と底縫着部53の間を非縫着状として、かつ、余長をもって、底縁縫着部10を周り込み、土壌投入に伴って側壁部12が側外方に膨張した際に縦縫着継目部81に沿って接触して縦縫着継目部81を支持する補強支持帯部54を一体状に有するので、縦縫着継目部81が内部からの大きな力を受けた際に、十分に補強され破損を防止できる。
【0042】
また、帯体5は、相互に向かい合う側壁部12,12の一方から底壁部13の下面13d側を通って側壁部12,12の他方に渡って設けているので、帯体5で、底壁部13を下方から支持して、底壁用シート体3にかかる負荷(荷重)を軽減し、底縁縫着部10及び底壁部13の破損を防止できると共に耐久性を向上できる。