(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067130
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
F03D1/06 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-537232(P2015-537232)
(86)(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公表番号】特表2015-532391(P2015-532391A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2013071574
(87)【国際公開番号】WO2014060446
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】102012020198.2
(32)【優先日】2012年10月16日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013207640.1
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】アルトミクス、アンドレー
(72)【発明者】
【氏名】カムルッツァマン、モハンマド
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−227453(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0028718(US,A1)
【文献】
国際公開第01/016482(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第2098721(EP,A2)
【文献】
国際公開第98/022711(WO,A1)
【文献】
特開平07−179198(JP,A)
【文献】
特開2004−60646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸型風力発電装置のロータブレードであって、
ロータブレード前縁(211)と、ロータブレード後縁(212)と、風力発電装置に結合するためのロータブレード翼根(214)と、ロータブレード翼端(213)と、
吸引側(216)と、与圧側(217)と、
ロータブレードの予め設定される迎角の場合において、ロータブレードの長手方向(L)に沿って該ロータブレード翼根(214)から該ロータブレード翼端(213)に向かうよどみ点ライン(215)と、
該よどみ点ライン(215)の領域における複数の渦発生装置(300)と
を含み、
該よどみ点ライン(215)は該与圧側(217)の領域に存在し、
前記予め設定される迎角は、定格領域における実効迎角を表す、
ロータブレード。
【請求項2】
前記渦発生装置(300)は、前記長手方向(L)に沿ったロータブレードの長さの50%を超える領域にあること
を特徴とする請求項1に記載のロータブレード。
【請求項3】
前記渦発生装置(300)は、平面図で円形、楕円形又は矢形に形成されること
を特徴とする請求項1又は2に記載のロータブレード。
【請求項4】
前記渦発生装置(300)の直径は、100mm未満であること
を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のロータブレード。
【請求項5】
前記渦発生装置(300)の高さは、最大で当該渦発生装置(300)の直径の1/4に相当すること
を特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のロータブレード。
【請求項6】
前記渦発生装置(300)の形状は、実質的に一定の厚みを有するディスク、又は丸い基本形状を有するドームに相当すること
を特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のロータブレード。
【請求項7】
隣り合う渦発生装置(300)間の距離は、当該渦発生装置(300)の直径の1〜10倍に相当すること
を特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のロータブレード。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の風力発電装置のロータブレードを少なくとも1つ含む水平軸型風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置のロータブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置のロータブレードは、ロータブレード翼根領域と、ロータブレード翼端と、ロータブレード前縁と、ロータブレード後縁と、吸引側と、与圧側とを有する。典型的には、ロータブレードは、そのロータブレード翼根領域において風力発電装置のハブに結合する。かくして、ロータブレード(複数)が風力発電装置のロータに結合し、十分な風が存在すれば、ロータを回転させる。この回転は、発電機によって電気的出力(電力)に変換されることができる。
【0003】
ロータブレードは空気力学的揚力の原理によって動かされる。風がロータブレードに当たると、空気はブレードの上側においても下側においてもブレードに沿って案内される。ブレードは、典型的には、空気が下側に沿って案内される場合と比べて、空気がブレードの上側において翼型の周に関してより長い経路をとり、従ってより迅速に流れなければならないように、湾曲される。かくして、ブレードの上側に低圧ないし減圧(吸引側)が、下側に高圧ないし過圧(与圧側)が生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP 1 944 505 A1
【特許文献2】EP 2 484 898 A1
【特許文献3】WO 2013/014080 A2
【特許文献4】WO 2007/140771 A1
【特許文献5】WO 2008/113350 A2
【特許文献6】WO 2006/122547 A1
【特許文献7】WO 2012/082324 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EP 1 944 505 A1は、ロータブレードの吸引側に複数の渦発生装置を有する風力発電装置のロータブレードを記載している。
【0006】
EP 2 484 898 A1は、複数の渦発生装置を有する風力発電装置のロータブレードを記載している。渦発生装置は、ロータブレード翼根に近接する領域(翼根近接領域)に設けられている。
【0007】
WO 2013/014080 A2は、複数の渦発生装置を有する風力発電装置のロータブレードを記載している。更に、この文献には、ロータブレードに渦発生装置を追加設置可能である様子が記載されている。この場合、渦発生装置は、ロータブレードの吸引側でかつロータブレード翼根近接領域に設けられる。
【0008】
WO 2007/140771 A1は、ロータブレードの吸引側に複数の渦発生装置を有する風力発電装置のロータブレードを記載している。
【0009】
WO 2008/113350 A2は、同様に、複数の渦発生装置を有する風力発電装置のロータブレードを記載している。渦発生装置は、ロータブレードの吸引側に設けられる。
【0010】
WO 2006/122547 A1は、ロータブレードの吸引側に複数の渦発生装置を有する風力発電装置のロータブレードを記載している。
【0011】
WO 2012/082324 A1は、複数の渦発生装置を有する風力発電装置のロータブレードを記載しており、渦発生装置は、ロータブレード翼根近接領域に設けられている。
【0012】
風力発電装置の運転時には騒音が発生するが、これは、住宅地における風力発電装置の受容性を改善するために、可及的に減少されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1に記載の風力発電装置のロータブレードによって解決される。即ち、上記の課題を解決するために、本発明の一視点により、
水平軸型風力発電装置のロータブレードであって、ロータブレード前縁と、ロータブレード後縁と、風力発電装置に結合するためのロータブレード翼根と、ロータブレード翼端と、吸引側と、与圧側と、ロータブレードの予め設定される迎角の場合において、ロータブレードの長手方向に沿って該ロータブレード翼根から該ロータブレード翼端に向かうよどみ点ラインと、該よどみ点ラインの領域における複数の渦発生装置とを含み、該よどみ点ラインは該与圧側の領域に存在
し、前記予め設定される迎角は、定格領域(Nennbereich)における実効迎角を表す、ロータブレードが提供される(形態1)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
風力発電装置のロータブレードは、吸引側と、与圧側と、翼根近接領域と、ロータブレード翼端と、ロータブレード前縁と、ロータブレード後縁とを有する。ロータブレードは、更に、ロータブレードの長さに沿って複数のよどみ点を有し、これらのよどみ点は一緒によどみ点ラインを形成することができる。複数の渦発生装置はよどみ点ラインの領域に設けられる。よどみ点ラインは、ロータブレードの下側(一般的に、与圧側(Druckseite)と称される)に存在する。
【0015】
よどみ点(stagnation point)は、流れ(流体)の速度が消失し、その結果、運動エネルギが完全に圧力エネルギに変換され得るロータブレードの表面の点である。ピッチ角を変化することにより、よどみ点の位置は変化し得る。よどみ点は、そこで流れが分割される点であり、(分割された)流れの一部はロータブレードの吸引側を介して流れ、(分割された)流れの他の部分はロータブレードの与圧側を介して流れる。
【0016】
本発明の一視点に応じ、渦発生装置(複数)は、長手方向においてロータブレードの長さの50%を超える部分、とりわけ60%を超える部分に設けられる(即ち、よどみ点ラインの領域の、ロータブレード翼端の方向にみてロータブレードの残り50%〜40%の部分に渦発生装置(複数)が設けられる)。
【0017】
渦発生装置の形状は、例えば、半円、楕円形又は平面図において(上から見て)矢形(pfeilfoermig)であり得る。渦発生装置の直径は、100mm未満である。隣り合う渦発生装置間の距離は、少なくとも渦発生装置の直径の1倍であり、最大で渦発生装置の直径の10倍である。
【0018】
渦発生装置の高さは、最大で直径の1/4である。渦発生装置の立体形状は、一定の厚みを有するディスク又は丸い(丸みを帯びた)基本形状を有するドーム(ないし半球状:Kugelkalotte)とすることができる。
【0019】
本発明の更なる実施形態は従属請求項の対象である。以下に、本発明の好ましい実施の形態を示す。
(形態1)上掲。
(形態2)上記のロータブレードにおいて、前記渦発生装置は、前記長手方向に沿ったロータブレードの長さの50%を超える領域にあることが好ましい。
(形態3)上記のロータブレードにおいて、前記渦発生装置は、平面図で円形、楕円形又は矢形に形成されることが好ましい。
(形態4)上記のロータブレードにおいて、前記渦発生装置の直径は、100mm未満であることが好ましい。
(形態5)上記のロータブレードにおいて、前記渦発生装置の高さは、最大で当該渦発生装置の直径の1/4に相当することが好ましい。
(形態6)上記のロータブレードにおいて、前記渦発生装置の形状は、実質的に一定の厚みを有するディスク、又は丸い基本形状を有するドームに相当することが好ましい。
(形態7)上記のロータブレードにおいて、隣り合う渦発生装置間の距離は、当該渦発生装置の直径の1〜10倍に相当することが好ましい。
(形態
8)上記形態1〜
7の何れかの風力発電装置のロータブレードを少なくとも1つ含む
水平軸型風力発電装置も有利に提供される。
【0020】
以下に、本発明の有利な実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
なお、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に応じた風力発電装置の一例の模式図。
【
図2】第1実施例に応じたロータブレードの模式図。
【
図3】第1実施例に応じたロータブレードの一断面の模式図。
【
図4】第2実施例に応じた風力発電装置のロータブレードの一部分の斜視図。
【
図5】風力発電装置のロータブレードの一例についての実効仰角に対する揚力係数の推移(変化)を示す極線図(Polardiagramm)。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明に応じた風力発電装置の一例の模式図である。風力発電装置100は、タワー102とナセル(ゴンドラ)104とを有する。ナセル104には、3つのロータブレード200とスピナ110とを有するロータ106が設けられている。ロータ106は、運転時、風によって回転運動し、それによってナセル内の発電機の回転を引き起こし、発電機はその回転から電気的出力(電力)を生成する。ロータブレードのピッチないしロータブレード200の仰角は、各ロータブレード200のロータブレード翼根領域のピッチ駆動装置によって変化することができる。
【0023】
図2は、第1実施例に応じた風力発電装置のロータブレードの模式図である。ロータブレード200は、ロータブレード前縁211と、ロータブレード後縁212と、ロータブレード翼端213と、ロータブレード翼根領域214とを有する。更に、ロータブレードは、ロータブレード翼根領域214からロータブレード翼端213に向かって延伸する長手方向Lを有する。ロータブレードは、更に、ロータブレードの与圧側に延在するよどみ点ライン215(stagnation point line)を有する。ロータブレードの断面は長手方向Lにおいて変化するため、よどみ点(stagnation point)もロータブレードの部分毎に変化する。かくして、複数のよどみ点から、1つのよどみ点ライン215を形成することができる。よどみ点ライン215の領域には、複数の渦発生装置300が設けられる。ロータブレード200は、ロータブレード翼根領域214を介して、風力発電装置のロータ106に分離可能に結合される。ロータ106に例えばロータハブに結合されるロータブレード翼根領域214の端部は丸型に形成され、複数の螺着装置によってロータ106のハブに分離可能に結合することができる。
【0024】
渦発生装置300は、予め設定される仰角、例えば定格仰角(Nenn-Anstellwinkel)の場合におけるよどみ点ライン215の領域に設けられる。
【0025】
選択的に、渦発生装置300は、ロータブレード翼根領域214から見てロータブレードの長さの50%から100%までのところに形成することができる。とりわけ、渦発生装置300は、ロータブレード翼根領域214から見てロータブレードの長さの60%〜100%のところに設けることができる。
【0026】
ロータブレードのよどみ点の領域に渦発生装置を設けることにより、ロータブレード後縁における流れの剥離に対しポジティブな影響を与えることができる。
【0027】
渦発生装置300は、平面図において(上から見て)円形、楕円形又は矢形に形成することができる。渦発生装置の直径は100mm未満(例えば20mm)である。隣り合う渦発生装置300間の距離(間隔)は、少なくとも渦発生装置の直径の1倍であり、最大で渦発生装置の直径の10倍である。渦発生装置の高さは、最大で渦発生装置の直径の1/4である。(渦発生装置の)立体形状は、厚みが一定のディスク又は丸い基本形状のドームに相当することができる。矢形の場合の平面図(底面輪郭:Grundriss)は角錐面の形状(Pyramidenform)とすることができる。丸い基本構造の場合、流れの方向に対する配向は重要ではないのに対し、角錐体の場合は、その頂部が流れの方向に配向される(向けられる)。
【0028】
図3は、第1実施例に応じた風力発電装置のロータブレードの一断面の模式図である。ロータブレード200は、ロータブレード前縁211と、ロータブレード後縁212と、吸引側216と、与圧側217とを有する。渦発生装置300は、与圧側217の領域かつよどみ点ないしよどみ点ライン215の領域に設けられる。
【0029】
図4は、第2実施例に応じたロータブレードの一部分の斜視図である。ロータブレード200は、この部分に、よどみ点ライン215の領域に設けられた2つの渦発生装置300を有する。或いは、渦発生装置300は、定格運転時によどみ点ラインの領域に存在するよう、よどみ点ライン215の領域に設けることもできる。(例えば突風によって又は剪断風における運転時において)変化する風条件によって実効仰角がグローバルに(ロータブレード全長について同じ態様で)又はローカルに(ロータブレード全長について少なくとも部分的に異なる態様で)増加すると、よどみ点は渦発生装置の後方に移動し、渦発生装置に渦糸が発生するが、これにより、吸引側においてより大きな剥離領域が安定化され、かくして、不都合な流れ条件下においてもなお、流れの接触と揚力の維持が確保される。
図4には、吸引側と与圧側の間の中心線215bと、定格速度(定格領域)の場合の実効仰角α
effの場合のよどみ点ライン215aと、失速(ストール)領域の場合の実効仰角α
effの場合のよどみ点ライン215cが示されている。
【0030】
図5は、レイノルズ数が6百万(6 Mio)の場合における実効仰角ないしピッチ角に対する揚力係数の推移(変化)を表す曲線図である。これに関し、渦発生装置を有しないロータブレードについての実効流れ角α
effに対する揚力係数C
Lの推移(変化)600と渦発生装置を有するロータブレードについての実効流れ角α
effに対する揚力係数C
Lの推移(変化)500が図示されている。かくして、本発明の渦発生装置を使用することにより空気流の剥離開始が遅延されることが
図5から認識できる。揚力係数C
Lは増加される。即ち、本発明の渦発生装置を有するロータブレードは、より大きな揚力係数を達成することができ、より大きな実効仰角α
effを達成することができる。従って、最大揚力係数C
Lは、ロータブレードの仰角のより大きい値にシフトされる。このことは、運転中の風力発電装置にとっては、翼型の定常的な(定常状態における)剥離挙動(特性)が改善されると同時に、不都合な抵抗増大が最小化されることを意味する。このため、定常的な(定常状態における)流れ条件下にあるロータブレードについて騒音が低減され、かくして、本発明の風力発電装置では音響(騒音)発生が低減される。