特許第6067140号(P6067140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067140
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/42 20060101AFI20170116BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20170116BHJP
   F02M 55/00 20060101ALI20170116BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20170116BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   F16K1/42 G
   F02M63/00 R
   F02M55/00 D
   F02M55/02 350Z
   F16K1/42 F
   F16K31/06 385A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-554219(P2015-554219)
(86)(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公表番号】特表2016-505791(P2016-505791A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2014071687
(87)【国際公開番号】WO2015055512
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2015年7月27日
(31)【優先権主張番号】102013220913.4
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ブレーク
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−022668(JP,U)
【文献】 米国特許第03511470(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/42
F16K 31/06
F02M 55/00−55/02
F02M 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁であって、
流体出口(102)を包囲しているケーシング(101)と、
縦軸線(104)を有する弁部材(103)と、
流体入口(106)を包囲していて、シール座(107)を有し、かつケーシング(101)に連結されている弁座ボディ(105)であって、前記シール座(107)に前記弁部材(103)が当接しているときには当該弁(100)が閉じられている、弁座ボディ(105)と、
を備える弁において、
前記弁部材(103)は、前記縦軸線(104)の方向で前記弁座ボディ(105)に対して相対的に可動であり、これにより前記流体入口(106)から前記流体出口(102)に向かう流体の流れが解放され、
前記弁座ボディ(105)は、前記弁部材(103)が接続されているガイド面(108)を包囲しており、これにより前記弁部材(103)の移動が案内され、
前記弁座ボディ(105)は、前記ケーシング(101)よりも硬質の材料から形成されており、
前記弁座ボディ(105)は、壁(112)を有する、前記シール座(107)に設けられた流体室(111)を包囲していて、前記流体入口(106)から前記流体出口(102)に向かう流体の流れが解放されているときには流体のジェットが前記壁(112)に衝突することを特徴とする弁。
【請求項2】
前記ガイド面(108)と前記弁部材(103)との間を流体が進入するように、前記ガイド面(108)と前記弁部材(103)との間に接続部が形成されている、請求項1記載の弁。
【請求項3】
前記弁部材(103)は、前記流体入口(106)から前記流体出口(102)に向かう流体の流れのために、前記縦軸線(104)に沿って、少なくとも前記ガイド面(108)の領域に切欠(109)を有する、請求項1又は2記載の弁。
【請求項4】
前記弁座ボディ(105)は、流体路(110)を有し、該流体路(110)は、前記流体入口(106)から前記流体出口(102)に向かう流体の流れのために、前記縦軸線(104)に対して横方向に方向付けされている、請求項1又は2項記載の弁。
【請求項5】
電磁アクチュエータ(113)を備え、該電磁アクチュエータ(113)は、前記ケーシング(101)に配置されており、前記アクチュエータ(113)は、前記弁部材(103)に連結されていて、これにより前記弁部材(103)は前記縦軸線(104)の方向で移動させられる、請求項1からまでのいずれか1項記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁、特に自動車の内燃機関用の燃料噴射系に用いられる弁に関する。
【0002】
燃料噴射系における弁は、強い負荷に曝されている。というのも弁は、例えば2000bar又はそれ以上の圧力に曝されているからである。電磁アクチュエータを備える弁では、大抵、磁性に関する理由から、比較的軟質の材料が用いられる。この軟質の材料は、追加的な構成要素により、高い圧力及び摩耗に対して防護されている。
【0003】
信頼性の高い運転を可能にし、特に低コストで製造可能である弁を提供することが所望される。
【0004】
本発明の態様によれば、弁は、流体入口を包囲しているケーシングを備える。弁は、縦軸線を有する弁部材を備える。更に、弁は、弁座ボディを備える。弁座ボディは、流体入口を包囲していて、シール座を備え、これにより弁部材がシール座に当接しているときには弁が閉じられている。弁座ボディは、ケーシングに連結されている。弁部材は、縦軸線の方向で弁座ボディに対して相対的に可動であり、これにより流体入口から流体出口に向かう流体の流れが解放される。弁座ボディは、弁部材が接続されているガイド面を備え、これにより弁部材の移動が案内される。弁座ボディは、ケーシングよりも硬質の材料から形成されている。
【0005】
弁は、特に内燃機関の燃焼噴射系に用いられる弁として利用可能である。例えば、弁は、圧力制限弁として利用される。弁は、予め設定された特定の圧力まで閉じたままで、この圧力を上回ると開くので、流体は、流体入口から弁座ボディを通して流体出口に達することができる。そこから、流体は、例えば再び流体タンクに向けて流れる。
【0006】
例えばピン又は弁ニードルの構成を有する弁部材は、特に電磁アクチュエータに連結されている。電磁アクチュエータは、弁部材を縦軸線に沿って弁座ボディに対して相対的に移動させるように調整されているので、弁部材は、シール座から離反する。電磁アクチュエータは、ケーシングに連結されている。ケーシングは、特に電磁アクチュエータの信頼性の高い運転を可能にするために、比較的軟質の材料から形成されている。ケーシングは、流体を低圧側で案内する。ケーシングは、2000bar又はそれ以上の高圧が掛けられた流体を案内しない。
【0007】
弁座ボディは、ケーシングに対して比較的硬質の材料から形成されている。弁座ボディは、2000barまで又はそれ以上の圧力を有する流体を案内することができる流体入口を包囲している。更に、弁座ボディは、弁部材の移動を案内するために、弁部材に接触している。従って、弁部材は、より硬質の材料から形成された弁座ボディにより案内される。特に、ケーシングの材料は、弁座ボディよりも低い硬さ値を有する。弁部材は、硬質の材料において案内され、これによりガイドの摩耗が低減される。これにより弁の精度及び信頼性がより長期の運転期間にわたっても高められる。更に、シール座及びガイドが同一の弁座ボディに形成されているので、生じる製造誤差が僅かである。これにより製造精度が高まる。というのも長さを高い精度で維持しなければならない複数の構成要素が、1本の共通の軸線上に組み込まれて、配置されているからである。
【0008】
硬質の材料とは、特に機械的に硬質の材料、つまり比較的軟質の材料よりも変形しにくい材料と解される。これに応じて、軟質の材料とは、比較的硬質の材料よりも比較的変形しやすい材料と解される。軟質の材料は、特に軟磁性材料を含む。
【0009】
より硬質の材料は、例えばマルテンサイト鋼であってよく、特に以下の元素:Cr、C、Mn、Si、P、S及びMoを含む。この場合、材料組成は、特に以下の通りであってよい:16〜18%Cr、0.6〜1.2%C、≦1%Mn、≦1%Si、≦0.04%P、≦0.03%S、≦0.75%Mo。より硬質の材料は、例えば記号SAE440の鋼であってよい。より硬質の鋼は、例えばロックウェル硬さC50又はそれ以上、例えばC50〜C70、特にC55〜C66(極値を含む)を有する。
【0010】
好適には、より軟質の材料は、磁性材料である。より硬質の材料は、非磁性材料であってよい。
【0011】
特に、より軟質の材料は、フェライト鋼であってよく、特に以下の元素:Cr、C、Mn、Si、P及びS、場合により追加的にNi又はMoを含む。この場合、材料組成は、特に以下の通りであってよい:16〜18%Cr、≦0.75%Ni、≦0.12%C、≦1%Mn、≦1%Si、≦0.04%P及び≦0.03%S。より軟質の材料は、例えば記号SAE430の鋼であってよい。軟質の材料は、例えばB100又はそれ以下のロックウェル硬さを有し、例えばB70〜B100、特にB80〜B90(極値を含む)を有する。
【0012】
別の態様によれば、ガイド面と弁部材との間の接続は、弁部材及びガイド面に沿った流体の進入を可能にする。弁座ボディにおける弁部材のガイドは、緊密ではない。
【0013】
本発明の態様によれば、弁部材は、流体入口から流体出口に向かう流体の流れのために、縦軸線に沿って、少なくともガイド面の領域に切欠を有する。この切欠により、流体を、開弁時に、縦軸線に沿って、ガイド面に設けられたガイド領域を通して案内することができる。切欠は、シール座から離反する方向で、特にシール座ボディを越えて延在している。これにより、流体出口に向かう信頼性の高い迅速な流体の導出が可能である。
【0014】
別の態様によれば、弁座ボディは、流体入口から流体出口に向かう流体の流れのために、縦軸線に対して横方向に方向付けされた流体路を有する。開弁時には、流体は、流体入口から流体路を通して流体出口に達することができる。実施の態様によれば、弁は、弁部材に切欠を有するか、又は、弁座ボディに流体路を有するが、但し、両方は存在しない。別の態様によれば、弁は、弁部材に切欠を有するだけでなく、弁座ボディに流体路を有する。
【0015】
別の態様によれば、弁座ボディは、壁を有するシール座に流体室を備える。流体入口から流体出口に向かう流体の流れが解放されているときには、流体のジェットが壁に衝突する。開弁時には、強い液体のジェットが高圧側から低圧側に向けて形成される。ジェットは、より硬質の材料から成る弁座ボディの壁に衝突する。より軟質の材料と比較して、弁座ボディは、より僅かな摩耗に曝される。更に、液体のジェットに対する防護のための別の構成要素を省略することができる。従って、簡単で低コストの製造並びに摩耗が僅かで信頼性の高い運転が可能である。
【0016】
以下に、図面につき、幾つかの例示的な実施の態様を説明する。同一、同種又は同一作用の構成要素には、同一の符号を設けてある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の態様による弁の概略図である。
図2】実施の態様による弁の概略図である。
図3】実施の態様による弁部材の横断面図である。
【0018】
図1には、弁100が横断面図で示されている。弁100は、ケーシング101並びに弁座ボディ105を備える。弁座ボディ105は、ケーシング101に連結されている。弁座ボディ105は、特にケーシング101の凹部内に配置されている。例えば、弁100は、燃料噴射系に設けられた圧力制限弁である。
【0019】
弁座ボディ105は、流体入口106を包囲している。例えば、流体入口106は、高圧を案内する燃料路又はアキュムレータに液圧的に接続されている。高圧側で、特に2000barを超える圧力が生じる。弁座ボディ105は、シール座107を備える。シール座107は、流体入口106の1端部に配置されている。弁座ボディ105は、流体入口106から離反する側の領域にガイド面108を備える。ガイド面108は、特に円筒形である。弁座ボディ105は、更に、流体室111を包囲している。流体室111は、シール座107とガイド面108との間に配置されている。実施の態様によれば、弁座ボディ105は、流体路110を包囲している。流体路110は、特に1つ又は複数の孔である。流体路110は、ガイド面108とシール座107との間に配置されている。
【0020】
ケーシング101は、流体路110の下流側に配置された流体出口102を包囲している。
【0021】
弁100は、更に、弁部材103を備える。弁部材103は、特に縦長に伸張された弁ピンもしくは縦長に伸張された弁ニードルであり、弁ピンもしくは弁ニードルは、縦軸線104に沿って延在している。
【0022】
弁部材103は、弁座ボディ105に接続されている。弁部材103は、部分的に、弁座ボディ105の内側に配置されている。弁部材103は、弁座ボディ105に対して相対的に縦軸線104に沿って可動である。弁座ボディ105に対して相対的な弁部材103の移動は、ガイド面108により案内される。弁部材103の1端部は、閉弁状態でシール座107に接触している。反対側の端部でもって、弁部材103は、アクチュエータ113に連結されている。アクチュエータ113は、特に電磁アクチュエータである。アクチュエータ113は、特に磁石コイル1132と可動子1131とを備える。アクチュエータ113は、特にケーシング101に取り付けられている。アクチュエータ113は、弁部材103が縦軸線104に沿ってシール座107から離れる方向に移動するように調整されている。特に、可動子1131は、磁石コイル1132の通電時に磁石コイル1132に向かって変位することができる。
【0023】
弁座ボディ105は、ケーシング101を形成している材料よりも硬質の材料から成っている。特に、弁座ボディ105は、ケーシング101よりも硬質の材料から成っている。特に、弁座ボディ105は、ケーシング101よりも高い硬さを有する。弁座ボディ105用の材料の選択時には、特に磁性を考慮しなくてよい。材料は、優先的に、僅かな摩耗に基づいて選択される。ケーシング101の材料は、その磁性に基づいて選択される。というのも、電磁アクチュエータ113がケーシング101に連結されているからである。
【0024】
弁部材103のガイド面108は、より硬質の材料から成る弁座ボディ105の一部である。弁座ボディ105には、弁部材103の案内時に僅かなガイドの摩耗しか生じない。
【0025】
運転中、流体入口106に、高い圧力を有する流体が存在する。圧力が予め設定された値を超える又はアクチュエータが作動させられると、弁部材103は、シール座107から持ち上げられる。従って、流体入口106から流体出口102に向かう流体の流れが解放される。この場合、弁部材103の先端部とシール座107との間に流体のジェットが形成される。高い圧力を有するこのジェットは、流体室111の壁112に衝突する。流体室111は硬質の材料から形成された弁座ボディ105に形成されているので、壁112に対するジェットの衝突による摩耗が僅かしか発生しない。流体室111から、流体は、流体路110を通して流体出口102に至る。
【0026】
弁100において、シール座107及び壁112は、単一の共通の構成要素で実現されている。流体のジェットに対する防護のための別の構成要素は省略してよい。ガイド面108及びシール座107は、単一の共通の構成要素で実現されている。従って、生じる製造誤差が僅かである。特に、ガイド面108、シール座107及び壁112は、単一の共通の構成要素で実現されている。これにより、弁100の割安で正確な製造が可能である。高圧に対する防護のための追加的な構成要素の省略により、弁は、低コストである。弁100は、流体室111において、流体のジェットに関して僅かな摩耗にしか曝されない。更に、弁座ボディ105は、弁部材103のガイドに関して僅かな摩耗にしか曝されない。
【0027】
図2には、別の実施の態様による弁100が示されている。図3による弁100は、図1に関して説明した実施の態様にほぼ一致している。図1の実施の態様との違いによれば、図2の実施の態様による弁100は、流体路110を有しない。その代わりに、弁部材103に1つの又は複数の切欠109が設けられている。
【0028】
図3には、図2の弁部材103の縦軸線104に対する横方向の横断面が示されている。切欠109は、縦軸線104の方向に側方で弁部材103に形成されている。切欠109を通して、開弁時に、流体は、流体室111から流体出口102に向けて案内される。従って、弁座ボディ105における孔110を省略してよい。切欠109は、特に、シール座107から離反する側で、ガイド面108を越えて延在している。これにより、切欠109によって、信頼性の高い流体の流れが実現されている。
図1
図2
図3