特許第6067154号(P6067154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6067154
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】コーティング粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/50 20060101AFI20170116BHJP
   A61K 9/58 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 9/62 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170116BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20170116BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20170116BHJP
   A61J 3/06 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K9/50
   A61K9/58
   A61K9/62
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/34
   A61K47/12
   A61K47/14
   A61K47/44
   A61K47/26
   A61J3/06
【請求項の数】13
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-11784(P2016-11784)
(22)【出願日】2016年1月25日
【審査請求日】2016年1月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501437536
【氏名又は名称】株式会社樋口商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 俊信
(72)【発明者】
【氏名】森実 眞一
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−105705(JP,A)
【文献】 特開2004−148291(JP,A)
【文献】 特表2015−533164(JP,A)
【文献】 特開2012−087073(JP,A)
【文献】 特開2010−200853(JP,A)
【文献】 特開2006−102558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/50
A61J 3/06
A61K 9/58
A61K 9/62
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 47/38
A61K 47/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及びそれを覆うワックス層を有する粒子に乾式でポリマーを付着させるレイアリング工程後に、粒子を解砕することを含む、多層粒子の製造方法。
【請求項2】
更に、キュアリング工程を含み、解砕された粒子全てがキュアリング工程に供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該レイアリング工程が、該ワックス層を構成するワックスの融点を基準として−10℃〜+10℃の範囲の温度で所定の期間保持することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該多層粒子の平均粒径が700μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該粒子が薬物を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該コアが薬物である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該ワックス層の外側に薬物層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該ポリマーがセルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー及び生分解性ポリマーから成る群より選択される一種以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該ワックスが、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸、及びこれらのいずれかの脂肪酸とグリセリンとのモノエステル、カルナバワックス、ビーズワックス、大豆油、ヒマシ油、綿実油及びこれらの硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、並びにポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該レイアリング工程の前に、乾式でワックスをコアにコーティングするコーティング工程を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該ワックスの平均粒径が50μm以上である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該レイアリング工程、薬物レイアリング工程、該キュアリング工程、及び該コーティング工程を一台の装置で行う、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
インライン型整粒機を用いて行われる、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コーティング粒子の製造方法に関する技術等が開示される。
【背景技術】
【0002】
種々の目的で粒子のコーティングが行われる。例えば、薬剤の苦味マスク、薬剤に胃溶性、腸溶性、徐放性などの機能性を付与するため、コーティングが施される。粒子をコーティングする方法は、大きく湿式法と乾式法とに分類されるが、多くは湿式法である。
【0003】
湿式法ではコーティング剤を溶解又は懸濁させた液を薬剤に噴霧した後、液体を蒸発させる方法が代表的である。しかし、コーティング剤の溶媒が水である場合には噴霧後の蒸発に多くのエネルギーが必要となる。また、粒子の核に水又は他の溶媒によって劣化又は変性する成分は使用できない。更に、コーティング剤の溶媒に有機溶媒を使用する場合には、有機溶媒の完全な除去が必要となる。
【0004】
一方、乾式法では、溶媒を使用しないため上記のような問題はない。しかし、溶媒を用いずにコーティング剤を粒子(核)にコーティングすることは必ずしも容易ではない。乾式法では、多くの場合、結合剤の添加が行われるが、依然としてコーティング効率は改善の余地がある。例えば、コア粒子にワックスバインダーとしてラウリン酸を用いて水溶性薬物であるカルバゾクロムスルホン酸ナトリウムの固定コーティングを行い、これにエチルセルロース水懸濁液の凍結乾燥粉末からなるコーティング剤をコーティングすることが提案されているが(非特許文献1参照)、この方法では薬物の固定が十分でなく、製造途中又は製造後に多量の薬物が剥がれてしまうという問題がある。
【0005】
また、薬物をコーティングした後にポリマー等をコーティングする場合、ポリマーのコーティング時に薬物が剥がれてポリマー層に混入するという問題もある。ポリマー層に混入した薬物は、粒子の表面近くに存在するため、溶出するまでの時間が短く、所望の溶出速度の制御等が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−87073号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Preparation of Controlled Release Microcapsules by a High-Speed Elliptical-Rotor Type Mixer(要旨集), Proceedings of the World Congress on Particle Technology 3, No. 121, Brighton, UK, July 7-9, 1998 (英国化学工学協会主催)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような課題を解消することが1つの目的である。また、乾式で効率よく、性質が安定した多層粒子を製造する手段を提供すること等が目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる課題等を解決すべき鋭意研究を重ねたところ、ポリマーのコーティングを2段階(レイアリング工程及びキュアリング工程)に分け、その間に粒子の解砕処理を設けること、及び/又は、レイアリング工程を所定の温度で一定時間維持すること等により、乾式でのコーティング粒子の製造効率が飛躍的に向上することを見出した。また、ワックスは従来粉砕して使用されていたが、必ずしも粉砕しなくても使用できることを見出した。特許文献1には、乾式によるコーティング粒子の製造方法が開示されるが、このような知見に関する記載は一切ない。そこで、これらの知見に基づき、更なる改良と検討を重ね、下記に代表される発明が提供される。
【0010】
項1.
コア及びそれを覆うワックス層を有する粒子に乾式でポリマーを付着させるレイアリング工程後に、粒子を解砕することを含む、多層粒子の製造方法。
項2.
解砕された粒子全てがキュアリング工程に供される、項1に記載の方法。
項3.
該レイアリング工程が、該ワックス層を構成するワックスの融点を基準として−10℃〜+10℃ の範囲の温度で所定の期間保持することを含む、項1又は2に記載の方法。
項4.
該多層粒子の平均粒径が700μm以下である、項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5.
該粒子が薬物を含有する、項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6.
該コアが薬物である、項1〜5のいずれかに記載の方法。
項7.
該ワックス層の外側に薬物層を有する、項1〜6のいずれかに記載の方法。
項8.
該ポリマーがセルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー及び生分解性ポリマーから成る群より選択される一種以上である、項1〜7のいずれかに記載の方法。
項9.
該ワックスが、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸、及びこれらのいずれかの脂肪酸とグリセリンとのモノエステル、カルナバワックス、ビーズワックス、大豆油、ヒマシ油、綿実油及びこれらの硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、並びにポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種である、項1〜8のいずれかに記載の方法。
項10.
該レイアリング工程の前に、乾式でワックスをコアにコーティングするワックスコーティング工程を含む、項1〜9のいずれかに記載の方法。
項11.
該ワックスの平均粒径が50μm以上である、項10に記載の方法。
項12.
該レイアリング工程、該キュアリング工程、薬物レイアリング工程、及び該ワックスコーティング工程を一台の装置で行う、項10又は11に記載の方法。
項13.
インライン型整粒機を用いて行われる、項10〜12のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
コーティング粒子の効率的な製造方法が提供される。一実施形態において、効率的であるとは、所望の粒子の回収率が95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上であることを意味する。一実施形態において、効率的であるとは、所望の粒子のレイアリング率が95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上であることを意味する。一実施形態において、効率的であるとは、所望の粒子の凝集率が5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、又は0.5%以下であることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多層粒子(又はコーティング粒子)を製造する方法は、コア及びそれを覆うワックス層を有する粒子に乾式でポリマーを付着させるレイアリング工程後に、粒子を解砕することを含むことが好ましい。粒子にポリマーをコーティングする途中で粒子を解砕することにより、粒子同士の凝集を回避し、効率的にコーティング粒子を得ることができる。
【0013】
粒子の解砕は任意の手段で行うことができ、特に制限されない。例えば、解砕は、篩、パワーミル、ブレードミル、又は他の解砕(粉砕)機を用いて行うことができる。粉砕機の様式は特に制限されず、例えば、円板式、ローラー式、シリンダー式、衝撃式、ジェット式、および高速回転式等を挙げることができる。粉砕手段は、薬剤の粉砕手段として後述するものであってもよい。一実施形態において、解砕手段は、ポリマーのレイアリング工程及びキュアリング工程が実施できる装置に内蔵されていることが好ましい。
【0014】
一実施形態において、解砕は、所望の粒径を有する粒子が得られるように設計されることが好ましい。所望の粒径は、使用する材料及び得られる多層粒子の使用目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、粒径(直径)の下限値は、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、又は500μmであり得る。例えば、粒径(直径)の上限値は、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μ、250μm又は200μmであり得る。これらの粒径の下限及び上限は任意に組み合わせて任意の範囲を構成することが想定される。
【0015】
解砕処理は、粒子へのポリマーの付着を開始した後、任意のタイミングで行うことができ、特に制限されない。一実施形態において、解砕処理は、ポリマーがコーティングされた粒子同士の凝集が生じた後に行うことが好ましい。
【0016】
一実施形態において、解砕処理は、キュアリング工程の固定温度が粒子にコーティングされたワックスの融点を基準として一定の範囲に達した後に行うことが好ましい。ここで、一定の範囲とは、任意であり特に制限されないが、例えば、ワックスの融点を基準として−15℃以上、−10℃以上、−9℃以上、−8℃以上、−7℃以上、−6℃以上、−5℃以上、−4℃以上、−3℃以上、−2℃以上、−1℃以上であり得、+10℃以下、+9℃以下、+8℃以下、+7℃以下、+6℃以下、+5℃以下、+4℃以下、+3℃以下、+2℃以下、+1℃以下であり得る。これらの温度範囲の下限及び上限は任意に組み合わせることが想定される。
【0017】
一実施形態において、解砕処理は、キュアリング工程の固定温度がワックスの融点を基準として一定の範囲に達した後、一定期間該温度範囲で維持した後に行うことが好ましい。一定期間とは任意であり、特に制限されないが、例えば、その下限は1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、25分、又は30分であり得、上限は60分、55分、50分、45分、40分、35分、30分、25分、又は20分であり得る。これらの上限及び下限は任意に組み合わせることが想定される。
【0018】
一実施形態において、解砕された粒子は、その全てがキュアリング工程に供されることが好ましい。キュアリング工程には、レイアリング工程において未固定のポリマーの全てが使用されることが好ましい。こうすることにより、回収率を向上させ、効率的なコーティング粒子の製造が可能となる。
【0019】
コアの素材は任意であり特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、コアは、有機物粒子(例えば、糖類、薬剤、ポリマー粒子)、無機物粒子(例えば、金属粒子、酸化物粒子)等を用いることができる。一実施形態において、コアは糖類又は薬剤であることが好ましい。
【0020】
コアがポリマー粒子である場合、それを形成するポリマーは任意であり特に制限されない。一実施形態において、ポリマーは、ビニル系ポリマーが好ましい。ビニル系ポリマーの製造に使用するビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、及びジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、及びエチレングリコールジメタクリレート等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル等を例示できる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記モノマーと、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジアリルフタレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート等の共重合可能なモノマーとの共重合体も使用できる。
【0021】
コアに用いる無機物粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の金属粒子、並びにマグネタイト等の磁性粒子を挙げることができる。また、アルミナ、含水二酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、薬用炭、及び硫酸カルシウム等を用いることもできる。
【0022】
コアに用いることができる他の物質としては、例えば、結晶セルロース、小麦粉、部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、可溶性デンプン、タピオカデンプン等を挙げることができる。
【0023】
コアに薬剤を用いる場合、コアは薬理活性成分のみからなる粒子であっても、薬理活性成分及び薬学的に許容される担体との混合物からなる粒子であっても、担体を薬理活性成分で覆った粒子等でもよい。薬剤を含むコアは、速放性製剤及び徐放性製剤などの放出制御型製剤であってもよい。コアは適当な添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、徐放化剤、安定化剤、酸味料、香料、及び流動化剤など例示できる。これら添加剤は、医薬の製剤分野において適当な量を適宜設定して用いることができる。一実施形態において、丸剤、顆粒剤、散剤、薬物の単結晶、薬物粉末の凝集物、乳糖、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、イソマルト、結晶セルロース、D−マンニトール等をコアとして好ましく使用できる。一実施形態において、好ましいコアは、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、銀、アルミナ、結晶セルロース、マンニトール、乳糖、薬物結晶粒子(例えば、アセトアミノフェン)等である。
【0024】
コアの粒径は任意であり、使用するコア粒子に種類等に応じて適宜設計することができる。例えば、コアの粒径(直径)の下限は、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、又は500μmであり得る。例えば、コアの粒径(直径)の上限値は、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μ、250μm又は200μmであり得る。これらの粒径の下限及び上限は任意に組み合わせて任意の範囲を構成することが想定される。
【0025】
コア粒子の平均粒子径は、ふるい分け法(ロータップシェイカー;飯田製作所製)により求めた重量平均粒子径である。但し、当該方法により求めた値が30μmより小さい場合は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定により、メジアン径(d50)を求め、当該メジアン径を平均粒子径とする。当該測定には、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定機器(LDSA−2400A,:東日コンピュータアプリケーション)を用いることができる。
【0026】
コアを覆うワックスは、任意であり、粒子の使用目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、有機脂肪酸、有機脂肪酸のエステル誘導体、高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、天然ワックス
等をワックスとして使用することができる。
【0027】
一実施形態において、ワックスは有機脂肪酸であることが好ましい。有機脂肪酸は、高級脂肪酸が好ましく、炭素数8〜20の脂肪酸がより好ましく、炭素数10〜18の脂肪酸がさらに好ましい。一実施形態において、脂肪酸は、炭素−炭素二重結合(C=C)を0、1、又は2個有するものが好ましく、0個有するもの(すなわち飽和脂肪酸)がより好ましい。脂肪酸は、直鎖構造でも分岐鎖構造でも良い。一実施形態において、脂肪酸は、直鎖脂肪酸であることが好ましい。一実施形態において、脂肪酸は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸等から成る群から選択される一種以上であり得、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から成る群より選択される一種以上であることが好ましい。脂肪酸は、そのエステル誘導体であってもよい。
【0028】
一実施形態において、ワックスは高級アルコールであることが好ましい。高級アルコールは、例えば、炭素数8〜18のアルコールであり得る。一実施形態において、高級アルコールは、炭素−炭素二重結合(C=C)を0、1、又は2個有するものが好ましく、0個有するもの(即ち該二重結合を有さないもの)がより好ましい。高級アルコールは、直鎖又は分岐鎖構造であり得、好ましくは直鎖アルコールである。一実施形態において好ましい高級アルコールは、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ス
テアリルアルコール、オレイルアルコール、及びリノリルアルコール等から成る群より選択される一種以上であり、より好ましくはセチルアルコール、又はステアリルアルコールである。
【0029】
一実施形態において、ワックスは、グリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。グリセリン脂肪酸エステルは、上述の脂肪酸とグリセリンのモノエステル、ジエステル、又はトリエステルであり得る。一実施形態において、好ましいグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリルモノステアレートである。
【0030】
一実施形態において、ワックスはポリエチレングリコールであることが好ましい。PEGは、例えば、重量平均分子量が1500〜10000程度、又は4000〜8000程度のものが好ましい。一実施形態において、PEGは、マクロゴール6000(重量平均分子量約6000)が好ましい。
【0031】
一実施形態において、ワックスは、油脂硬化油(例えば、植物油又は魚油に水素付加を行って得られるもの)或いは天然ワックス(例えば、カルナバワックス、又はライスワックス等)であることが好ましい。ワックスは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
一実施形態において、ワックスは、ワックス粒子としてコーティングに用いるのが好ましい。ワックス粒子の製造は、公知の方法で行うことができる。例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル等を用いてワックスを粉砕及び造粒してワックス粒子を製造することができる。また、ワックスが常温で液体である場合などは、適宜冷却し、固体にして粉砕すればよい。ワックス粒子の平均粒径は、例えば、約2〜100μmであることが好ましく、約3〜50μmであることがより好ましく、約3〜30μmであることがさらに好ましい。
【0033】
一実施系他において、ワックスの平均粒径は50μm以上であることが好ましい。即ち、一実施形態において、粉砕等によりワックス粒子を製造せずに使用されることが効率性の観点から好ましい。この場合、ワックスの平均粒径は、例えば、75μm以上、100μm以上、150μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上、400μm以上、450μm以上、500μm以上である。上限は特に制限されないが、例えば、2000μm、1500μm、1000μmとすることができる。
【0034】
ワックスをコアにコーティングする方法は任意であり特に制限されない。例えば、コアとワックス粒子を加熱しながら混合することにより、ワックスをコアにコーティングすることができる。例えば、撹拌羽根付き恒温混合機にコア粒子及びワックスを仕込み、加熱しながら撹拌して混合することによりワックスをコアにコーティングできる。加熱は、例えば、ワックス粒子の融点より数℃(例えば1〜5℃)高い程度(例えば、50℃〜90℃、好ましくは55℃〜80℃)まで熱することができる。加熱後は撹拌しながら冷却することが好ましい。コア粒子及びワックス粒子の使用量は特に制限されない。例えば、コア粒子に対しワックス粒子を過剰量用いてもよい。混合は、公知の混練機を用いて行うことができる。
【0035】
ワックスがコーティングされた粒子は、コア粒子表面にワックス層を有する。ワックスがコーティングされた粒子におけるワックスの含有量は任意であり特に制限されないが、例えば、約3〜40質量%が好ましく、約5〜30質量%がより好ましい。一実施形態において、ワックスがコーティングされた粒子の平均粒子径は、例えば、コア粒子の平均粒子径の1.2〜2倍であり、好ましくは1.2〜1.5倍である。一実施形態において、ワックスがコーティングされた粒子の平均粒径の下限は、例えば、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、又は500μmであり得る。また、平均粒径の上限は例えば、コアの粒径(直径)の上限値は、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μ、250μm又は200μmであり得る。これらの粒径の下限及び上限は任意に組み合わせて任意の範囲を構成することが想定される。
【0036】
ワックスコーティングした粒子に薬物及び/又はポリマーをレイアリングする際、レイアリング助剤を用いることができる。このようなレイアリング助剤としては、例えば、医薬製剤分野において油状のバインダーとして知られるものを使用することができる。このような油状のバインダーは公知であり、例えば、医薬品添加物辞典2000(日本医薬品添加剤協会編集:薬事日報社)等に記載されているものを使用することができる。一実施形態において、レイアリング助剤は、常温で油状のものが好ましく、例えば、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ジブチルセバケート、ポリエチレングリコール(重量平均分子量100〜1000程度、特に200〜800程度が好ましい(例えばマクロゴール400))、プロピレングリコール、中鎖脂肪酸(例えば炭素数4〜8の脂肪酸)トリグリセリド(例えばミグリオール;カプリン酸トリグリセリド)、及びグリセリン等を挙げることができる。一実施形態において好ましいポリマーは、クエン酸トリエチル、トリアセチン、及びポリエチレングリコール等である。これらのポリマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
一実施形態において、ワックスがコーティングされた粒子に、ポリマーをコーティングする前に、任意の化合物をコーティングすることができる。そのような化合物の種類は特に制限されないが、例えば、薬物(例えば医薬、農薬)、食品、香料、染料、顔料、金属、トナー等の粒子が例示できる。一実施形態において、化合物は、薬物であることが好ましい。薬物としては、特に制限されず、例えば次を例示することができる:中枢神経系用薬(アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナックナトリウム、塩酸メクロフェノキサート、クロルプロマジン、トルメチンナトリウム、塩酸ミルナシプラン、フェノバルビタール等)、末梢神経系用薬(エトミドリン、塩酸トルペリゾン、臭化エチルピペタナート、臭化メチルベナクチジウム、フロプロピオン等)、循環器官用薬(アミノフィリン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、ジギトキシン、カプトプリル等)、呼吸器官用薬(塩酸エフェドリン、塩酸クロルプレナリン、クエン酸オキセラジン、クロペラスチン、クロモグリク酸ナトリウム等)、消化器官用薬(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジン等)、冠血管拡張薬(ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミル等)、ビタミン剤(アスコルビン酸、塩酸チアミン、パントテン酸カルシウム、酪酸リボフラビン等)、代謝性製剤(メシル酸カモスタット、ミゾリビン、塩化リゾチーム等)、アレルギー用薬(塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、トシル酸スプラタスト、マレイン酸ジフェンヒドラミン等)、化学療法剤(アシクロビル、エノキサシン、オフロキサシン、ピペミド酸三水和物、レボフロキサシン等)、抗生物質(エリスロマイシン、塩酸セフカペンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシムプロキセチル、セファクロル、セファレキシン、クラリスロマイシン、ロキタマイシン等)など。これらの化合物は、1種又は2種以上を組み合わせ使用することができる。これらの化合物は、上述するコア粒子(薬剤)として使用することもできる。
【0038】
一実施形態において、上記化合物の平均粒径は、コア粒子の平均粒径の1/5以下が好ましく、1/10以下がより好ましい。例えば、該化合物の平均粒径は、0.005〜50μm程度が好ましく、0.01〜50μm程度がより好ましく、0.1〜10μm程度がさらに好ましい。
【0039】
該化合物は、公知の方法により粉砕及び造粒することにより、その粒径を調整することができる。粉砕手段としては、例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、ボールミル、遊星ボールミル等を挙げることができる。また、パルスジェット及びスプレードライ等の方法により得られる薬物粉末を用いることもできる。更に、マイクロフルイダイザーを用いて薬物を微細化したナノクリスタルを、粉末化して用いることもできる。凍結粉砕により得られた薬物粉末を用いることもできる。該化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
ワックスコーティング粒子へポリマー及び/又は上記化合物を付着させる方法は任意であり特に制限されない。例えば、ワックスコーティング粒子とバインダー及び/又は化合物粒子を加熱しながら混合する方法を挙げることができる。これらの物質を一度に混合してもよく、まずワックスコーティング粒子及び該化合物を混合し、その後、ポリマーを混合してもよい。つまり、ワックスコーティング粒子にポリマー及び該化合物を一度に付着させてもよいし、ワックスコーティング粒子に該化合物を付着させた後、ポリマーをさらに付着させてもよい。
【0041】
上記の混合は、任意の装置を用いて行うことができる。例えば、圧縮力又は剪断力を作用させ得る公知の混合機を用いて行い得る。例えば、乳鉢;傾斜円筒型タンブラー、V型タンブラー、二重円錐型タンブラー等の回転容器式固体混合機;リボン型混合機、回転円盤型混合機、等の機械攪拌式混合機;内部羽根付V型タンブラー、内部羽根付二重円錐型タンブラー、万能混合機、ブラブレンダー型混合機、高速攪拌造粒機、高速楕円ロータ型混合機等の複合型固体混合機;ニーダーミキサー、インターナルミキサー、ミューラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ロールミル等の混合機;タービン型攪拌機、プルマージュ型攪拌機等の機械攪拌機;メカノミル、ハイブリダイザー等の、高速気流による衝撃力またはそれと機械攪拌とを用いる攪拌機、等が例示できる。より具体的には、例えば、撹拌羽根つき恒温混合機を用いて混合することができる。撹拌羽根を、例えば100〜300rpm程度で回転させて混合することができる。当該混合は例えば1〜60分程度行えばよい。
【0042】
混合する比率は任意であり特に制限されない。一実施形態において、例えば、ワックスコーティング粒子100質量部に対して、ポリマー3〜60質量部が好ましく、4〜50質量部がより好ましく、5〜40質量部がさらに好ましい。また、ワックスコーティング粒子100質量部に対して、上記化合物30〜200質量部が好ましく、40〜150質量部がより好ましい。
【0043】
ワックスコーティングされた粒子に上記化合物及び/又はポリマーをコーティングさせるための加熱は、ワックスの融点以上の温度まで行うことが好ましい。ワックスが融点以上まで加熱されることで、ワックスが溶解する。その後冷却(ワックスの融点以下まで)すれば、ワックスは再度固まる。当該加熱冷却操作により、該化合物粒子が粒子に固定される。このように、加熱温度はワックスの融点が目安となるため、加熱温度は用いるワックスの種類に応じて適宜設定することができる。例えば、35〜85℃程度、好ましくは45〜75℃程度が例示できる。また、加熱時間も適宜設定できる。例えば10分〜2時間程度、20分〜90分、又は30分〜60分が例示できる。
【0044】
このようにして得られる上記化合物がコーティングされた粒子の平均粒径は任意であるが、例えば、その下限は、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、又は500μmであり得る。また、その上限は、例えば、コアの粒径(直径)の上限値は、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μ、250μm又は200μmであり得る。これらの粒径の下限及び上限は任意に組み合わせて任意の範囲を構成することが想定される。
【0045】
コーティング用のポリマーとしては、例えば、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、生体内分解性ポリマー等が例示できる。セルロース系ポリマーとしては、具体的には、エチルセルロース(例えば、信越化学社製EC N-10F、日本カラコン社製Surerease)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(例えば、信越化学社製AQOAT)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等が例示できる。一実施形態において好ましいポリマーは、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートである。
【0046】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E100、EPO)、メタアクリル酸−メチルメタアクリレートコポリマー(L100、L100-55)メタアクリル酸−メチルメタクリレートコポリマー(S-100)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(RL100、RLPO)アミノアルキルメタクリレートコポリマー(RS100、RSPO)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(FS30)などを挙げることができる。一実施形態において、オイドラギットシリーズを好ましく用いることができる。これらポリマー名の後の括弧内の記載はオイドラギットシリーズの名称である。好ましくは、オイドラギットEPO、L100、L100-55、S-100、RLPO、RSPOである。
【0047】
生体内分解性ポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸(ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−DL−乳酸)、グリコール酸、ε−カプロラクトン、N−メチルピロリドンなどのホモポリマー、コポリマー又はこれらポリマーの混合物、ポリカプロラクタム、キチン、キトサン等が挙げられる。ポリマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
一実施形態において、粒子状のポリマーを用いることが好ましい。ポリマー粒子は、例えば、市販品のポリマーを粉砕する、液状ポリマーであれば乾燥させて粉砕する、等の処理で得ることができる。また、ポリ乳酸等のエマルジョン粒子は、乾燥してからジェットミル等で処理して粒子状にすることができる。
【0049】
ポリマーを造粒する方法は特に制限されず、公知の方法を用い得る。例えば、上述の化合物の粉砕及び造粒について例示したのと同様にして、ポリマーを造粒することができる。ポリマー粒子は、特に制限はされないが、平均粒子径が好ましくは0.05〜10μm程度、より好ましくは0.1〜10μm程度である。
【0050】
ポリマーのコーティングは、これをワックスでコーティングされた粒子(又はそれに上記化合物がコーティングされた粒子)に付着(レイアリング)させ、これを溶解して造膜(キュアリング)させることで行うことができる。ポリマーを粒子にレイアリングする方法も特に制限されない。例えば、混合機を用いて、粒子及びポリマーを混合することでレイアリングを行い得る。混合機としては、例えば、傾斜円筒型タンブラー、V型タンブラー、二重円錐外タンブラー等の回転容器式固体混合機を好適に用い得る。一実施形態において、混合は加熱を行いながら行うことが好ましい。加熱は、使用するポリマーの融点(ガラス転移が起きるポリマーの場合はガラス転移温度)以上、好ましくは当該温度+1〜10℃の温度で行うことが好ましい。加熱温度は使用するポリマーの種類等に応じて適宜設定できる。例えば、加熱温度は、50〜90℃程度が例示できる。
【0051】
一実施形態において、多層粒子は、コアにワックスをコーティングする工程、上記化合物(例えば、薬剤)をコーティングする工程、ポリマーのレイアリング工程、及びキュアリング工程の全てを1つの装置で連続的に行う手法によって製造されることが好ましい。
【0052】
一実施形態において、ポリマーのコーティング処理(レイアリング及びキュアリングを含む)において、凝集防止剤(コーティングポリマー粒子が凝集するのを防止する)を用いることが好ましい。凝集防止剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、タルク、酸化チタン、及びステアリン酸マグネシウム等が例示できる。
【0053】
該コーティングを混合により行う好適な一態様として、例えば、粒子、ポリマー、及び凝集防止剤を恒温円錐型回転混合機に入れ、60〜80℃程度の熱を加えながら、0.5〜6時間程度混合する方法が挙げられる。
【0054】
コーティングポリマーの使用量は、例えば、ワックスコーティングされた粒子を100質量部用いる場合、例えば、5〜250質量部程度、好ましくは10〜200質量部程度である。このようにして得られるコーティング粒子の平均粒子径は、例えば、その下限は、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、又は500μmであり得る。また、その上限は、例えば、コアの粒径(直径)の上限値は、1000μm、950μm、900μm、850μm、800μm、750μm、700μm、650μm、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μ、250μm又は200μmであり得る。これらの粒径の下限及び上限は任意に組み合わせて任意の範囲を構成することが想定される。
【0055】
上述の方法によって得られる多層粒子は、例えば、医薬、農薬、化粧品、食品、トナー、塗料、衛生用品(トイレタリー)、又は触媒等として使用することができる。例えば、多層粒子を医薬として用いる場合は、放出制御性又はマスキングに優れた医薬製剤とすることができるため、好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0057】
製造例1
74〜106μm(直径)に分級された乳糖(D50;89.0μm)10gをコア粒子として使用し、モノステアリングリセリド(MS;ジェットミル粉砕品平均粒子径(D50:3.8μm)とポリエチレングリコール6000(PEG6000;ジェットミル粉砕品、平均粒子径(D50;5.9μm)の1:1(重量比)の混合ワックス1.36gをレイアリングした。レイアリングしたワックスの割合は12重量%である。ワックスの前記平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LDSA-2400A:東日コンピュータアプリケーション社)にて測定したメジアン径である。レイアリングは下記の装置及び条件で行った。冷却工程を除く全操作時間は63分であった。
装置:恒温循環ジャケット付き、横型二軸混合装置(Mixer Torque Rheometer;MTR Caleva UK)(内容量;150mL)
条件:回転数100rpm、試料を装置投入後、順次昇温して設定最高温度58℃、その保持時間は18分である。
回収率(%)、凝集率(粗粒発生率)、及びレイアリング率を評価した。回収率は、次の式で求めた:[回収した粒子(重量)/投入した原材料(重量)]×100(%)。凝集率は、コア粒子サイズ(106μm)の一段階上の目開きサイズ(149μm)以上の粒子サイズの画分を秤量し、次の式で求めた:[凝集粒子量(重量)/全粒子重量] ×100(%)。 レイアリング率は、コア粒子サイズ下限の74μm以下の粒子量を未レイアリングワックス量として秤量し、次式に従って、投入ワックスの何パーセントがコア粒子に固定(レイアリング)されたのか求めた:[未レイアリングワックス量(重量)/レイアリング仕込みワックス量(重量)] ×100(%)。製造条件及び評価結果を下記の表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
製造例2
コア粒子に25〜250μmに分級された乳糖(D50;80.6μm)30gを用い、ワックスとして市販のモノステアリングリセリド(MS、片山化学工業社製、平均粒子径D50;308.6μm)と市販のポリエチレングリコール6000(三洋化成工業社製、平均粒子径 D50;132.2μm)の1:1(重量比)の混合物4.1gを用い、下記の表2の条件を採用した以外は、製造例1と同様にして、レイアリングした。評価結果を表2に示す。意外にも市販の粒子径の大きいワックスであっても同程度の凝集率及びレイアリング率が得られる操作が可能であることがわかった。
【0060】
【表2】
【0061】
製造例3(解砕処理を介したレイアリング工程及びキュアリング工程)
分級した乳糖にラウリン酸(LA,ジェットミル粉砕品、D50:5.5μm、融点;44℃)をレイアリングした。得られたラウリン酸レイアリング乳糖に、モデル薬物としてカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(CCSS;ジェットミル粉砕品;D50;5.0μm)を8重量%の割合でレイアリングし、乳糖/LA/CCSS粒子(106〜210μm)を得た。この粒子に下記のコーティング装置を用いてオイドラギットRSPO(エボニック社)(ジェットミル粉砕品、D50;5.5μm)を30重量%コーティングした。コーティングは下記のレイアリング工程及びキュアリング工程の2ステップで行った。
コーティング装置:恒温循環ジャケット付き横型二軸混合装置(Mixer Torque Rheometer;MTR Caleva UK;内容量150mL)。
レイアリング工程は、次の昇温条件で行った:恒温槽設定最高温度45℃、最高温度での保持時間22分、全操作時間(冷却時間を除く)72分。レイアリング工程の凝集率(RC:250μm以上)は1.7%であり、レイアリング率(53μm 以下)は81.1%であり、コーティングされていないRSPOは18.9% であった。このようにして得られた粒子を直径300JISふるい297μmを用いて解砕し、キュアリング工程に供した。
キュアリング工程は、次の昇温条件で行った:恒温槽設定最高温度60℃、最高温度での保持時間24分、全操作時間(冷却時間を除く)87分。その結果、凝集率(RC)は0.5%であり、レイアリング率(53μm 以下)は99.8%であった。なお、凝集防止剤として軽質無水ケイ酸(Aerosil; エボニック社)をそれぞれの工程で1%添加してコーティング操作を行った。以上の条件及び結果を下記の表3及び4に示す。回収率、凝集率、及び回収率は、製造例1と同様にして測定した。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
製造例4(解砕処理なし)
製造例3における、解砕処理を介したレイアリング工程及びキュアリング工程を含むコーティングを下記の昇温条件で解砕処理を介さずに行った以外は、製造例3と同様にしてコーティング粒子を得た。
昇温条件:恒温槽設定最高温度61℃、その保持時間20分、及び全操作時間124分(冷却工程時間を省く)
その結果を表5に示す。装置への付着は無いものの、凝集率(RC;250μm以上)は17.6%と高く、この結果から解砕処理を介したレイアリング工程及びキュアリング工程の有用性が示された。
【0065】
【表5】
【0066】
製造例5(解砕処理を介したレイアリング工程及びキュアリング工程)
以下の工程でコア粒子に薬物がコーティングされた粒子を調製した。全ての工程を恒温水循環ジャケット付き横型二軸混合装置(Mixer Torque Rheometer;MTR Caleva UK;内容量150)を用いて連続的に行った。
ワックスコーティング工程:分級乳糖(25-250μm、D50;80.6μm)に粒子径の大きい市販のモノステアリングリセリド(MS:片山化学D50;308.6μm;融点;61℃)及び市販のマクロゴール6000(PEG6000、三洋化成、D50;132.2 μm 融点58℃)の1対1混合物を12wt%コーティングした。ワックスコーティングは次の昇温条件で行った;循環水設定最高温度59℃、最高温度の保持時間10分、全操作時間(冷却工程時間は除く)35分。その結果、下記の表6に示す通り、凝集率1.8%、レイアリング率99.6%、回収率99.9%であった。
薬物コーティング工程:上記で得られたワックスコーティング粒子(297μm以下)にアセトアミノフェン(APAP)粉砕品(ワンダーブレンダーWB-1;大阪ケミカル社)(D50;;62.5μm) を25wt%コーティングした。薬物コーティングは次の昇温条件で行った;循環水設定最高温度61℃、最高温度の保持時間10分、全操作時間(冷却工程時間は除く)40分。その結果、下記表7に示す通り、凝収率0.2%、レイアリング率99.9%、回収率99.8%であった。
ポリマーコーティング工程:オイドラギットEPO(エボニック社;D50、9.9μm)を用いて30wt%のコーティングを行った。ポリマーコーティング工程はレイアリング工程、解砕処理、及びキュアリング工程を含み、レイアリング工程及びキュアリング工程では、凝集防止剤として軽質無水ケイ酸(Aerosil; エボニック社)を1%添加して操作を行った。レイアリング工程は次の昇温条件で行った;循環水設定最高温度60℃、最高温度での保持時間5分、全操作時間(冷却工程時間は除く)75分。その結果、下記表8に示す通り、凝収率6.0%、レイアリング率82.9%、回収率99.9%であった。
得られた粒子を直径300JISのふるい355μmによる解砕処理に供し、得られた粒子をキュアリング工程に供した。キュアリング工程は、次の昇温条件で行った;循環水設定最高温度63.5℃、最高温度での保持時間30分、全操作時間(冷却工程時間は除く)90分。その結果、下記の表9に示す通り、凝収率0.4%、レイアリング率99.9%、及び回収率98.8%であった。表10は各工程における粒度分布の推移を示す。この結果は、工程が進むに従って想定通り順調に粒子径が大きくなったこと示す。
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
【0072】
得られた粒子の精製水(37℃)溶出率を、日本薬局方のパドル法(100rpm)に従って分光光度計(285nm)を用いて測定した結果を下記表11に示す。APAPの苦味マスクができていることが確認された。
【0073】
【表11】
【0074】
製造例6(解砕処理なし)
製造例5における、コーティング工程に代えて、オイドラギットEPOを下記の昇温条件で解砕処理を介さずにコーティングした以外は、製造例5と同様にしてコーティング粒子を得た。
昇温条件:恒温槽設定最高温度63.5℃、最高温度での保持時間30分、及び全操作時間(冷却工程時間を省く)90分
その結果、下記の表12に示す通り、回収率99.8%、凝集率(RC;250μm以上)28.3%、レイアリング率96.4%であった。
【0075】
【表12】
【0076】
製造例7:分級薬物をコアに採用
以下の工程で薬物(コア粒子)にワックス及びポリマーをコーティングした粒子を得た。全ての工程を恒温水循環ジャケット付き横型二軸混合装置(Mixer Torque Rheometer;MTR Caleva UK)(内容量;150mL)を用いて連続的に行った。
ワックスコーティング工程:アセトアミノフェン(APAP)分級品(25-149μm, D50;89.6μm)に粒子径の大きい市販のモノステアリングリセリド(MS:片山化学D50;308.6μm) 融点;61℃)及び市販のマクロゴール6000(PEG6000, 三洋化成、D50;132.2 μm、融点58℃)の1対1混合物を12wt%コーティングした。昇温条件は次の通りである:循環水設定最高温度58℃、最高温度での保持時間5分、全操作時間(冷却工程時間は除く)25分。結果は、表13に示す通り、RC;0.5%, RL; 99.9%であった。
ポリマーコーティング工程:ポリマーコーティング工程はレイアリング工程、解砕処理、及びキュアリング工程を含み、それぞれの工程では、凝集防止剤として軽質無水ケイ酸(Aerosil; エボニック社)を1%添加して操作を行った。レイアリング工程では、オイドラギットEPO(エボニック社;D50、9.9μm)市販品をそのまま用いて30wt%のコーティングを行った。昇温条件は次の通りである:循環水設定最高温度56℃、最高温度での保持時間10分、全操作時間(冷却工程時間は除く)45分。結果は、表14に示す通り、RC; 1.1%、RL;90.0%であった。
次に解砕処理(直径300JISふるい355μm)を介して、キュアリングを次の昇温条件で行った。循環水設定最高温度60℃、最高温度での保持時間15分、全操作時間(冷却工程時間は除く)35分。結果は表15に示す通り、良好であった。得られた粒子の精製水(37℃)における溶出率を表16に示す。
【0077】
【表13】
【0078】
【表14】
【0079】
【表15】
【0080】
【表16】
【0081】
製造例8:薬物(分級なし)をコアに採用
以下の工程で薬物(コア粒子)にワックス及びポリマーをコーティングした粒子を得た。全ての工程を恒温水循環ジャケット付き横型二軸混合装置(Mixer Torque Rheometer;MTR Caleva UK)(内容量;150mL)を用いて連続的に行った。
ワックスコーティング工程:アセトアミノフェン(APAP)(八代薬品製、分級なし、D50;76.4μm)に粒子径の大きい市販のモノステアリングリセリド(MS:理研ビタミン製D50;398.8μm)を12wt%コーティングした。昇温条件は次の通り;循環水設定最高温度75℃、最高温度での保持時間33分、全操作時間(冷却工程時間は除く)45分。結果は表17に示す通り、RC;0.9%、RL; 99.8%と良好であった。
ポリマーコーティング工程;ポリマーコーティング工程はレイアリング工程、解砕処理、及びキュアリング工程を含み、それぞれの工程では、凝集防止剤として軽質無水ケイ酸(Aerosil; エボニック社)を1%添加して操作を行った。それぞれの工程では、APAP/WAXレイアリング粒子は355μmの分級品を使用した。レイアリング工程では、オイドラギットEPO(エボニック社,D50; 9.9μm)市販品をそのまま用いて30wt%のコーティングを行った。昇温条件は次の通り;循環水設定最高温度57℃、最高温度での保持時間15分、全操作時間(冷却工程時間は除く)25分。結果は表18に示す通り、RC;1.1%、RL;87.2%であった。
次に解砕処理(直径300JISふるい355μm)を介してキュアリングを次の昇温条件で行った:循環水設定最高温度65℃、最高温度での保持時間20分、全操作時間(冷却工程時間は除く)70分。結果は、表19に示す通りであり、良好であった。各工程における粒度分布の推移を表20に示し、得られた粒子の精製水(37℃)における溶出率を表21に示す。
【0082】
【表17】
【0083】
【表18】
【0084】
【表19】
【0085】
【表20】
【0086】
【表21】
【0087】
製造例9:スケールアップ
上述の製造例のスケールアップ性を2つの装置(MTR容量;150mL)及びベンチニーダ(BKN;入江商会、容量;5L)を用いて検討した。APAP(25〜149μm)を用いてMS(理研ビタミン;D50;398.8μm)をBKNにてコーティングしたワックス粒子(250μm以下)を用いて、オイドラギットEPO(エボニック社、D50: 9.9μm) 30wt%コーティングした。各工程の条件及び結果を下記の表22〜29に示す。その結果、いずれの装置を用いても結果に有意な差はなく、スケールアップ可能であることが確認された。
【0088】
【表22】
【0089】
【表23】
【0090】
【表24】
【0091】
【表25】
【0092】
【表26】
【0093】
【表27】
【0094】
【表28】
【0095】
【表29】
【0096】
製造例10:スケールアップ
全ての工程をBKN装置(恒温水循環ジャケット付き横型二軸混合装置(BKN ;入江商会)(内容量;5L))を用いてスケールアップを検討した。各工程の操作条件と結果は、下記及び下記表30〜35の通りである。
ワックスコーティング工程;マンニトール100SD (ロケット社、D50;124.4μm) に市販のモノステアリングリセリド(MS:理研ビタミンD50;398.8μm)を12wt%コーティングした。昇温条件は次の通りである;循環水設定最高温度76℃、最高温度での保持時間12分、全操作時間60分、冷却10分。回収したワックスレイアリング粒子をパワーミル(ダルトン社、直径1mm)にて処理して得られたワックスレイアリング粒子の結果を表30に示す。
薬物コーティング工程;得られたWAXコーティング粒子を用いて、アセトアミノフェン (APAP)粉砕品(ワンダーブレンダー WB-1; 大阪ケミカル社)D50;62.5μm) 25wt%のコーティングを行った。昇温条件は次の通りである;循環水設定最高温度73℃、最高温度での保持時間10分、全操作時間60分、冷却10分。APAPレイアリング粒子を回収してパワーミル(ダルトン社、直径1mm)にて処理して得られたAPAPレイアリング粒子の結果を表31に示す。
ポリマーコーティング工程;APAPをコーティングした粒子とオイドラギットEPO(エボニック社,D50;9.9μm)市販品をそのまま用いて30wt%のコーティングを行った。それぞれの工程では、凝集防止剤として軽質無水ケイ酸(Aerosil; エボニック社)を1%添加して操作を行った。
1次のレイアリング工程は、循環水設定最高温度57℃、最高温度での保持時間20分、全操作時間30分、その後の冷却10分で行った。回収したEPO一次処理品(EPOレイアリング品)をパワーミル(ダルトン社、直径1mm)にて解砕して得たEPOレイアリング品の結果は、を表32に示す。
2次のキュアリング工程は、循環水設定最高温度65℃、その保持時間18分、全操作時間45分、その後の冷却10分で行った。EPOキュアリング粒子を回収して、パワーミル(ダルトン社、直径1mm)にて処理して得られた最終のEPOコーティング品の結果を表33に示す。
表34は各工程における粒度分布の推移を示し、表35はEPOコーティング粒子からのAPAPの溶出試験結果を示す。この結果から苦味が効果的にマスキングされていることがわかる。
【0097】
【表30】
【0098】
【表31】
【0099】
【表32】
【0100】
【表33】
【0101】
【表34】
【0102】
【表35】
【0103】
製造例11:スケールアップ
恒温水循環ジャケット付き縦型らせん羽根付き混合装置(リボコーン RM-10D(内容量;10L); 大川原製作所)を用いて、スケールアップの検討をした。
ワックスコーティング工程;アセトアミノフェン(APAP;D50;76.4μm)(八代薬品製)を分級しないで用い、市販のモノステアリングリセリド(MS:理研ビタミン製D50;398.8μm)を12wt%コーティングした。昇温条件は次の通りである:循環水設定最高温度76℃、最高温度での保持時間25分、全操作時間85分、その後の冷却10分。得られたワックスレイアリング粒子を解砕装置;フィオーレ(F-0 型、徳寿工作所、孔径;直径1mm)に通してワックスレイアリング粒子を得た。結果を表36に示す。
ポリマーコーティング工程;市販品のオイドラギットEPO(エボニック社、D50; 9.9μm)をそのまま用いて30wt%のコーティングを行った。それぞれの工程では、凝集防止剤として軽質無水ケイ酸(Aerosil; エボニック社)を1%添加して操作を行った。
1次のレイアリング工程は、循環水設定最高温度55℃、その保持時間5分を含む全操作時間25分操作した後、10分で冷却後、EPOレイアリング粒子を回収してフィオーレ(F-0 型、徳寿工作所、孔径;直径1mm)にて解砕処理を行った。その結果を表37に示す。
2次のキュアリング工程は、循環水設定最高温度65℃、その保持時間10分、全操作時間65 分、その後の冷却10分で行い、キュアリング粒子をリボコーンから回収した。その後フィオーレ(F-0 型、徳寿工作所、孔径;直径1mm)を通して最終品を得た。表38に示す結果から良好な結果がえられたことが確認された。
表39に各工程における粒度分布の推移を示し、表40に溶出試験の結果を示す。
【0104】
【表36】
【0105】
【表37】
【0106】
【表38】
【0107】
【表39】
【0108】
【表40】
【0109】
製造例12:スケールアップ
ペアリトール160C(結晶D-マンニトール) (ロケット社製、D50;140.0μm)を核粒子とする3工程通し実験を行った。すべての工程を恒温水循環ジャケット付き縦型らせん羽根付き混合装置(リボコーンRM-10D(内容量;10L) 大川原製作所製)で行った。
ワックスコーティング工程;ペアリトール160Cを分級しないで用い、モノステアリングリセリド(MS:理研ビタミン製D50;398.8μm)を12wt%コーティングした。昇温条件は次の通りである:循環水設定最高温度76℃、最高温度での保持時間13分、全操作時間75分、その後の冷却10。得られたワックスレイアリング粒子を解砕装置;フィオーレ(F-0 型、徳寿工作所、孔径;直径1mm)を通してワックスレアリング粒子を得た。結果を表41に示す。
APAPレイアリング工程;得られたワックスレイアリング粒子にアセトアミノフェン(APAP)粉砕品(ワンダーブレンダー WB-1; 大阪ケミカル社、D50;62.5μm) を25wt%コーティングした。昇温条件は次の通りである:循環水設定最高温度70℃、最高温度での保持時間17分、全操作時間47分、その後の冷却10分。得られたAPAPレイアリング粒子を解砕装置;フィオーレ(F-0 型、徳寿工作所、孔径;直径1mm)を通してAPAPレイアリング粒子を得た。結果を表42に示す。
ポリマーコーティング工程;オイドラギットEPO(エボニック社、D50;9.9μm)をそのまま用いて30wt%のコーティングを行った。それぞれの工程では、凝集防止剤として軽質無水ケイ酸(Aerosil; エボニック社)を1%添加して操作を行った。
1次のレイアリング工程は循環水設定最高温度50℃、その保持時間20分を含む全操作時間25分操作した後、冷却10分で行った。EPOレイアリング粒子を回収し、フィオーレ(F-0型、徳寿工作所、孔径;直径1mmにて解砕処理を行った。結果を表43に示す。
次に2次のキュアリング工程を循環水設定最高温度65℃、その保持時間10分を含む全操作時間65 分の後、冷却10分で行った。キュアリング粒子をリボコーンから回収し、フィオーレ(F-0 型、徳寿工作所、孔径;直径1mm)を通し最終品を得た。表44に示す結果から良好な結果が得られたことが分かる。
表45は各工程における粒度分布の推移を示し、表46は溶出試験の結果を示す。
【0110】
【表41】
【0111】
【表42】
【0112】
【表43】
【0113】
【表44】
【0114】
【表45】
【0115】
【表46】
【要約】
【課題】乾式で効率よく、性質が安定した多層粒子を製造する手段を提供すること。
【解決手段】コア及びそれを覆うワックス層を有する粒子に乾式でポリマーを付着させるレイアリング工程において、粒子を解砕することを含む、多層粒子の製造方法。
【選択図】なし