特許第6067162号(P6067162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6067162
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】水系二層型メーキャップ化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20170116BHJP
   A61K 8/03 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20170116BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/03
   A61K8/29
   A61Q1/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-77575(P2016-77575)
(22)【出願日】2016年4月7日
【審査請求日】2016年6月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】木崎 寿美子
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−234994(JP,A)
【文献】 特開2011−236137(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/038724(WO,A1)
【文献】 特開2014−237708(JP,A)
【文献】 特開2008−195659(JP,A)
【文献】 特開2007−119410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)及び(B)を含有することを特徴とする水系二層型メーキャップ化粧料。
(A)疎水化処理粉体
(B)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系二層型メーキャップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水系二層型メーキャップ化粧料は、静置したときに、上層が水層、下層が粉体層の二層に分離する外観の美しい化粧料であり、また、化粧水のような、みずみずしい使用感を有している。しかし、静置したときに、綺麗に二層分離せず、外観上好ましくない、また、長期に保管した場合、粉体同士の凝集や固着が起き、使用時に振とうしても、容易に再分散できないといった問題が生じていた。
【0003】
これらの問題を解決するために、親水性煙霧状無水ケイ酸、セルロース系水溶性高分子、被膜形成剤、水溶性塩及び疎水化処理板状粉体と併用した例(特許文献1)、アクリルシリコーン系グラフト共重合体を被覆した粉体、フッ素系油剤及びエタノールと併用した例(特許文献2)があるが、いずれも不十分で、問題を解決するには至っていない。外観や長期保管上の問題以外にも、特許文献1は、セルロース系水溶性高分子及び被膜形成剤を、特許文献2は、フッ素系の油剤を配合しているため、化粧水のようなみずみずしい使用感が、失われているといった問題が生じていた。
【0004】
一方、メーキャップ化粧料は、一般的に、手やパフ及びブラシ等のアプリケーターで、肌に塗布するものであるが、手が汚れてしまったり、アプリケーターを清潔に保つことが難しいため、使い捨てのコットンでの使用を望むユーザーもいる。しかし、手やアプリケーターでも使用でき、コットンでも使用できるといった、多様な使用方法に耐えうる水系二層型メーキャップ化粧料は、いまだ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−119410号公報
【特許文献2】特開2008−195659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記の課題を解決した、安定性が高く、容易に再分散可能で、手やアプリケーターに加えてコットンでも使用できる、外観の美しい水系二層型メーキャップ化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、下記の(A)及び(B)を含有することを特徴とする水系二層型メーキャップ化粧料を提供する。
(A)疎水化処理粉体
(B)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、安定性が高く、容易に再分散可能で、手やアプリケーターに加えてコットンでも使用でき、外観が美しく、さらに保湿効果のある水系二層型メーキャップ化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いられる成分(A)疎水化処理粉体は、粉体を公知の技術により、疎水化処理したものであり、粉体は、化粧料分野で一般的に用いられているものであれば、種類、形状、粒径、粒子構造等、特に制限されずに使用することができる。粉体の種類として、無機粉体、有機粉体、光輝性粉体、色素粉体、複合粉体等を、形状として、球状、板状等を、粒径として、微粒子、顔料級等を、粒子構造として、無孔質、多孔質等を挙げることができ、具体的には、酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、雲母、合成金雲母、タルク、シリカ、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、コンジョウ、群青、酸化アルミニウム、セリサイト、合成セリサイト、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、カオリン、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー、アシルリジン、シルクパウダー、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ウールパウダー、結晶セルロース、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、アルミニウムパウダー、オキシ塩化ビスマス、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料、シリカ被覆酸化チタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ、酸化チタン被覆雲母チタン、酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等を挙げることができる。
【0010】
粉体を疎水化処理する方法としては、特に制限されずに使用することができ、シリコーン処理、シリル化シリカ処理、脂肪酸処理、アミノ酸処理、レシチン処理、金属石鹸処理、これらの複合処理等を挙げることができる。
【0011】
成分(A)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明の水系二層型メーキャップ化粧料に対し、10〜30質量%の配合量が好ましい。配合量が10質量%未満であると、メーキャップ効果に影響を及ぼす場合があり、30質量%を超えると、安定性に影響を及ぼす場合がある。
【0012】
本発明で用いられる成分(B)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルは、グリセリンのアルキレンオキシド誘導体であり、グリセリンに、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレンが共重合したものである。共重合の順番や形態には、特に制限はなく、形態としては、ブロック共重合、ランダム共重合又はこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの中でもPEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン(化粧品表示名称)を用いるのが好ましい。
【0013】
成分(B)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明の水系二層型メーキャップ化粧料全量に対し、6〜10質量%の配合量が好ましい。配合量が6質量%未満であると、分散状態に影響を及ぼす場合があり、10%を超えると、化粧持ちに影響を及ぼす場合がある。市販品としては、ウィルブライドS−753D(日油株式会社製)等を挙げることができる。
【0014】
本発明の水系二層型メーキャップ化粧料は、成分(A)及び成分(B)に加え、さらに成分(C)グリセリン及び/又は成分(D)エタノールを含有させることが好ましい。
【0015】
成分(C)グリセリンは、化粧料分野で一般的に用いられているものであれば、特に制限されずに使用することができ、本発明の水系二層型メーキャップ化粧料全量に対し、15〜40質量%の配合量が好ましい。
【0016】
成分(D)エタノールは、化粧料分野で一般的に用いられているものであれば、特に制限されずに使用することができ、本発明の水系二層型メーキャップ化粧料全量に対し、5〜10質量%の配合量が好ましく、成分(B)/エタノール=2/3〜3/2の配合比が好ましい。
【0017】
本発明の水系二層型メーキャップ化粧料には、上述の成分の他に、通常の化粧料分野に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、精製水、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0018】
本発明の水系二層型メーキャップ化粧料は、常法により製造することができる。剤型としては、液状、ジェル状等の剤型とすることができ、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ、ハイライト、チーク等として使用することができる。
【0019】
本発明の水系二層型メーキャップ化粧料は、使用時に振とうし、均一に分散して使用するものであり、皮膚に塗布する方法としては、手、パフ等のアプリケーター及びコットンのいずれでの方法でも使用することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は、特に断りのない限り質量%である。
【0021】
表の実施例及び比較例の水系二層型ファンデーションを、下記の製造方法で製造した。
<製造方法>
(1)成分(A)を室温で、均一に混合した。
(2)上記(1)に成分(B)を加え、室温で均一に混練した。
(3)上記(2)に成分(C)を加え、室温で均一に撹拌した。
(4)上記(3)に成分(D)を加え、室温で均一に撹拌した。
(5)上記(4)にその他の成分を加え、室温で均一に撹拌し、表の実施例及び比較例の水系二層型ファンデーションを製造した。
【0022】
そして、表の実施例及び比較例について、下記の方法で、評価を行った。その結果を表に示す。
a)分散状態、二層分離状態
表の化粧料を上下に軽く振り、室温で1日静置したときの粉体層(下層)における粉体の分散状態及び水層(上層)と粉体層の二層分離状態を専門評価員3名で、下記の評価基準に従って、絶対評価をし、更にその3人の評点の平均点を下記判定基準により判定した。

<評価基準>
3点:分散状態が非常に良い/二層の分離状態が非常に良い
2点:分散状態が良い/二層の分離状態が良い
1点:分散状態が少し悪い/二層の分離状態が少し悪い
0点:分散状態が悪い/二層の分離状態が悪い又は二層分離しない

<判定基準>
◎:2.5点以上
○:1.8点以上2.5点未満
△:1.0点以上1.8点未満
×:1.0点未満

【0023】
b)再分散性
表の化粧料を室温で1週間静置した後、10回軽く振とうした時の粉体の分散状態を専門評価員3名で、下記の評価基準に従って、絶対評価をし、更にその3人の評点の平均点をa)と同様の判定基準により判定した。

<評価基準>
3点:分散状態が非常に良い
2点:分散状態が良い
1点:分散状態が少し悪い
0点:分散状態が悪い
【0024】
c)安定性
専門評価員3名で、表の化粧料を5℃、25℃、40℃で3カ月保管した際の外観の状態を下記の判定基準により判定した。表の判定結果は、専門評価員3名で合議して、決定した。

<判定基準>
◎:変化がない
○:変化がほとんどない
△:やや粉体層が固着(ケーキング)している
×:粉体層が固着(ケーキング)している
【0025】
d)メイクのムラ、化粧持ち、清涼感(みずみずしい使用感)、保湿効果
表の化粧料を振とうし、均一に分散したものを、手、パフ及びコットンのそれぞれで顔に塗布し、専門パネラー6名による使用テストを行い、下記の評価基準に従って、絶対評価をし、更にその6人の評点の平均点をa)と同様の判定基準により判定した。

<評価基準>
3点:メイクのムラがない/化粧持ちが非常に良い/清涼感を非常に感じる/保湿効果を非常に感じる
2点:メイクのムラがほとんどない/化粧持ちが良い/清涼感を感じる/保湿効果を感じる
1点:メイクのムラが少しある/化粧持ちが少し悪い/清涼感をほとんど感じない/保湿効果をほとんど感じない
0点:メイクのムラがある/化粧持ちが悪い/清涼感を感じない/保湿効果を感じない
【0026】
e)コットンでの使用性
表の化粧料を振とうし、均一に分散したものを、コットンに適量取り、顔に塗布する専門パネラー6名による使用テストを行い、下記の評価基準に従って、絶対評価をし、更にその6人の評点の平均点をa)と同様の判定基準により判定した。

<評価基準>
3点:コットンに均一に浸透し、非常に塗布しやすい
2点:コットンにほぼ均一に浸透し、塗布しやすい
1点:コットンに均一に浸透せず、塗布しにくい
0点:化粧料がコットンの上で粉体状になり、塗布できない
【0027】
表に示された結果から明らかなように、各実施例の水系二層型ファンデーションは、比較例に比べ、分散状態、二層分離状態、再分散性、安定性、メイクのムラ、化粧持ち、清涼感、保湿効果及びコットンでの使用性すべての面で優れていた。
【0028】
【表1】
【要約】
【課題】
安定性が高く、容易に再分散可能で、手やアプリケーターに加えてコットンでも使用できる、外観の美しい水系二層型メーキャップ化粧料を提供する。
【解決手段】
下記の(A)及び(B)を含有することを特徴とする水系二層型メーキャップ化粧料。
(A)疎水化処理粉体
(B)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
【選択図】なし