特許第6067164号(P6067164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6067164
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】通線器およびワイヤ部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   H02G1/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-87722(P2016-87722)
(22)【出願日】2016年4月26日
【審査請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】104142942
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】TW
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516125509
【氏名又は名称】▲金▼基塑▲膠▼企業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】陳 政安
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−102599(JP,U)
【文献】 実開平01−078658(JP,U)
【文献】 特開2001−352630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料からなる第一通線ワイヤを複数有するとともに、第一セグメントを具備し、前記複数の第一通線ワイヤは前記第一セグメントにおいて互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第一通線ワイヤが前記第一セグメントから過渡セグメントに延伸する第一通線セグメントと、
前記第一セグメントの前記過渡セグメントと反対の一端に設けられる第一ケーブル固定器と、
樹脂材料からなる第二通線ワイヤを複数有するとともに、第二セグメントを具備し、前記複数の第二通線ワイヤは前記第二セグメントにおいて互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第二通線ワイヤが前記第二セグメントから過渡セグメントに延伸し、かつ、前記過渡セグメントに延伸した第一、第二通線ワイヤは互いに螺旋状に撚り合わさる第二通線セグメントと、
前記過渡セグメントの前記第一、第二通線ワイヤを固定することによって、前記過渡セグメントの前記第一、第二通線ワイヤが相対的に螺旋転動させない固定手段と、を有し、前記固定手段は、第一固定リングおよび第二固定リングを有し、前記第一固定リングは前記第一セグメントと前記過渡セグメントの連結箇所に嵌合され、前記第二固定リングは前記第二セグメントと前記過渡セグメントの連結箇所に嵌合される、
ことを特徴とする通線器。
【請求項2】
前記第一通線ワイヤの本数と前記第二通線ワイヤの本数がともにnであって、前記第一通線セグメントのうちa本の前記第一通線ワイヤが前記第一セグメントから前記過渡セグメントに延伸し、前記第二通線セグメントのうちb本の前記第二通線ワイヤが前記第二セグメントから前記過渡セグメントに延伸し、a、b、nはすべて正整数であり、かつnはaとbの和であること、特徴とする請求項1に記載の通線器。
【請求項3】
樹脂材料からなる第一通線ワイヤを複数有するとともに、第一セグメントを具備し、前記複数の第一通線ワイヤは前記第一セグメントにおいて互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第一通線ワイヤが前記第一セグメントから過渡セグメントに延伸する第一通線セグメントと、
樹脂材料からなる第二通線ワイヤを複数有するとともに、第二セグメントを具備し、前記複数の第二通線ワイヤは前記第二セグメントにおいて互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第二通線ワイヤが前記第二セグメントから過渡セグメントに延伸し、かつ、前記過渡セグメントに延伸した第一、第二通線ワイヤは互いに螺旋状に撚り合わさる第二通線セグメントと、
前記過渡セグメントの前記第一、第二通線ワイヤを固定することによって、前記過渡セグメントの前記第一、第二通線ワイヤが相対的に螺旋転動させない固定手段と、を有し、前記固定手段は、第一固定リングおよび第二固定リングを有し、前記第一固定リングは前記第一セグメントと前記過渡セグメントの連結箇所に嵌合され、前記第二固定リングは前記第二セグメントと前記過渡セグメントの連結箇所に嵌合される、
ことを特徴とするワイヤ部材。
【請求項4】
前記第一通線ワイヤの本数と前記第二通線ワイヤの本数がともにnであって、第一通線セグメントのうちa本の前記第一通線ワイヤが前記第一セグメントから前記過渡セグメントに延伸し、前記第二通線セグメントのうちb本の前記第二通線ワイヤが前記第二セグメントから前記過渡セグメントに延伸し、a、b、nはすべて正整数であり、かつnはaとbの和であること、を特徴とする請求項3に記載のワイヤ部材。
【請求項5】
前記第一通線セグメントは1本の第一軸ワイヤをさらに有し、前記複数の第一通線ワイヤは前記第一セグメントにおいて前記第一軸ワイヤの周囲に螺旋状に撚り合せられること、を特徴とする請求項3に記載のワイヤ部材。
【請求項6】
前記第一通線セグメントは1本の第一軸ワイヤをさらに有し、前記複数の前記第一通線ワイヤは前記第一セグメントにおいて前記第一軸ワイヤの周囲に螺旋状に撚り合せられ、前記第二通線ワイヤは1本の第二軸ワイヤをさらに有し、前記複数の第二通線ワイヤは前記第二セグメントにおいて前記第二軸ワイヤの周囲に螺旋状に撚り合せられ、前記第一、第二軸ワイヤのうち少なくとも1つは前記過渡セグメントに延伸し、かつ、前記過渡セグメントに延伸した前記第一、第二通線ワイヤは前記過渡セグメントに延伸した前記第一、第二軸ワイヤの周囲に螺旋状に撚り合わされること、を特徴とする請求項3に記載のワイヤ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の配管またはその他狭窄通路において用いられる通線器およびワイヤ部材に係る。
【背景技術】
【0002】
通線器は、ケーブルやその他類似のものを、建築物の配管またはその他狭窄通路に入線することができる。長い狭窄管路を通す必要がある場合(たとえば30メートル以上)、通線器は、管路による摩擦などの抵抗力に耐えうる十分な耐圧強度、伸張強度が求められるとともに、その自由端は高い屈曲性を保持することが通常好まれる。したがって、通線器の異なるセグメントには異なる物理性能を有することが必要である。たとえば、自由端に近いセグメントでは小さい外径によって高い屈曲性を保有させ、自由端から離れたセグメントでは大きい外径によってより高い強度の構造を保持させる。
【0003】
台湾特許483208号では、図7から図9にネジ山のピッチを変えることによってその自由端の屈曲性を増加させること、または、延伸加工時に延伸量を増やすことによってその自由端の外径を細めることで、異なるセグメントに異なる物理性能を保持させる通線ワイヤを開示している。
【0004】
しかしながら、樹脂製の通線ワイヤの場合、前述の加工方法は求められる押出し成形の技術レベルが高い。一部の通線セグメントの加工パラメータが他の通線セグメントの加工パラメータと異なるが、それぞれの加工パラメータを有する二つのセグメントは連続的に押出しされなけらばならい。このため、押出し成形作業の歩留まりが低く、コストも高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、それぞれ異なる物理性能を有するセグメントを有し、加工が容易な通線器およびワイヤ部材の提供を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記およびその他の目的を達成するため、本発明は第一通線セグメントと、第一ケーブル固定器と、第二通線セグメントと、を有する通線器を提案する;第一通線セグメントは、複数の第一通線ワイヤを有し、第一通線セグメントは第一セグメントを具備し、当該複数の第一通線ワイヤは第一セグメントで互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第一通線ワイヤは第一セグメントから過渡セグメントに延伸する;第一ケーブル固定器は、第一セグメントの過渡セグメントと反対の一端に設けられ;第二通線セグメントは、複数の第二通線ワイヤを有し、第二通線セグメントは第二セグメントを具備し、当該複数の第二通線ワイヤは第二セグメントで互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第二通線ワイヤは第二セグメントから過渡セグメントに延伸し、かつ過渡セグメントに延伸した第一、第二通線ワイヤは互いに螺旋状に撚り合わさる。
【0007】
なお、前記通線器は、第二セグメントの過渡セグメントと反対の一端に設けられる第二ケーブル固定器をさらに有する。
【0008】
前記およびその他の目的を達成するため、本発明は、第一通線セグメントと、第二通線セグメントと、を有するワイヤ部材を提案する;第一通線セグメントは、複数の第一通線ワイヤを有し、第一通線セグメントは第一セグメントを具備し、当該複数の第一通線ワイヤは第一セグメントで互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第一通線ワイヤは第一セグメントから過渡セグメントに延伸する;第二通線セグメントは、複数の第二通線ワイヤを有し、第二通線セグメントは第二セグメントを具備し、当該複数の第二通線ワイヤは第二セグメントで互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第二通線ワイヤは第二セグメントから過渡セグメントに延伸し、かつ過渡セグメントに延伸した第一、第二通線ワイヤは互いに螺旋状に撚り合わさる。
【0009】
なお、前記通線器およびワイヤ部材の第一通線ワイヤの本数は、第二通線ワイヤの本数と同様にnであって、第一通線セグメントのうちa本の第一通線ワイヤが前記第一セグメントから前記過渡セグメントに延伸し、前記第二通線セグメントのうちb本の第二通線ワイヤが前記第二セグメントから前記過渡セグメントに延伸し、a、b、nはすべて正整数であり、かつnはaとbの和である。
【0010】
なお、前記通線器およびワイヤ部材は、固定手段をさらに有し、過渡セグメントの第一、第二通線ワイヤを固定することによって過渡セグメントの第一、第二通線ワイヤが相対的に螺旋転動させない。
【0011】
なお、前記通線器およびワイヤ部材の固定手段は、第一固定リングおよび第二固定リングを有し、第一固定リングは第一セグメントと過渡セグメントの連結箇所に嵌合され、第二固定リングは第二セグメントと過渡セグメントの連結箇所に嵌合される。
【発明の効果】
【0012】
前記設計によって、加工業者は求められる性能によって適した第一、第二通線セグメントを選択することができる。たとえば、プラスチック製の第一、第二通線セグメントにおいて、第一、第二通線セグメントをそれぞれ押出し成形してから、第一、第二通線セグメントを局部的に捻じ合わせることができる。このような構造設計は、求められる押出し成形の技術レベルが低く、高い歩留まりと低いコストが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかるワイヤ部材の第一実施例の分解側面図。
【0014】
図2】本発明にかかるワイヤ部材の第一実施例の側面図。
【0015】
図3】本発明にかかるワイヤ部材の第二実施例の分解側面図。
【0016】
図4】本発明にかかるワイヤ部材の第二実施例の側面図。
【0017】
図5】本発明にかかる通線器の好ましい実施例の側面図。
【0018】
図6】本発明にかかる通線器の好ましい実施例の局部拡大側面図、固定リングは断面で示す。
【0019】
図7】本発明にかかるワイヤ部材の好ましい実施例の局部拡大側面図、ワイヤ部材が彎曲された状態を示す。
【0020】
図8】本発明にかかるワイヤ部材の第三実施例の分解側面図。
【0021】
図9】本発明にかかるワイヤ部材の第三実施例の側面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
図1図2に本発明にかかるワイヤ部材の第一の実施例を示す。当該ワイヤ部材は、第一通線セグメント10および第二通線セグメント20を有する。
【0023】
第一通線セグメント10は、3本の第一通線ワイヤ11を有し、かつ、第一セグメントAを有する。ここで、3本の第一通線ワイヤ11は第一セグメントAのなかで互いに互いに螺旋状に撚り合い、そのうち1本の第一通線ワイヤ11は第一セグメントAから過渡セグメントBに延伸し、他の2本の第一通線ワイヤ11は過渡セグメントBに延伸しない。
【0024】
第二通線セグメント20は、3本の第二通線ワイヤ21を有し、かつ、第二セグメントCを有する。ここで、3本の第二通線ワイヤ21は第二セグメントCのなかで互いに撚り合い、そのうち2本の第二通線ワイヤ21は第二セグメントCから過渡セグメントBに延伸し、他の1本の第二通線ワイヤ21は過渡セグメントBに延伸しない。
【0025】
このように、第一、第二通線セグメントは同じように3本の通線ワイヤからなり、両者から過渡セグメントに延伸する通線ワイヤの合計も同じく3本となる。また、過渡セグメントの第一、第二通線ワイヤは互いに螺旋状に撚り合わさっているため、通線ワイヤ間の摩擦力および軸方向に重なり合う構造が、当該ワイヤ部材が過渡セグメントでも良好な軸方向の耐圧強度、伸張強度を保てる。
【0026】
第一、第二通線ワイヤは、樹脂材料からなってもよい。選択可能な樹脂材料は、ポリエステル樹脂、PP、PE等ポリオレフィン系樹脂、PA等ポリアミド系樹脂およびその共重合体などを含むが、これに限られない。通常、第一、第二通線ワイヤは高い耐圧強度と伸張強度を有し、径方向に屈曲性を有する。さらに、外力が消えた際にもとの位置、状態に回復する潜在エネルギーを有することが好ましい。また、各通線ワイヤもより細い複数の通線ワイヤが互いに撚り合わさってなる実施例も考えうる。
【0027】
異なる工作の必要に応じて、第一、第二通線セグメントの材質、長さ、ネジ山のピッチ、太さ、通線ワイヤの本数、屈曲性などの設計が同一である必要はなく、たとえば第一の実施例において、第一通線セグメント10の外径D1は第二通線セグメント20の外径D2と異なる。
【0028】
図3および図4に本発明にかかるワイヤ部材の第二の実施例を示す。前記ワイヤ部材は同様に第一通線セグメント10および第二通線セグメント20を具備するが、第一の実施例と異なり第二の実施例の第二通線セグメント20は2本の第二通線ワイヤ21のみ有し、そのうち1本の第二通線ワイヤ21のみが過渡セグメントBへ延伸する。したがって、過渡セグメントBは、1本の第一通線ワイヤ11および1本の第二通線ワイヤ21が互いに螺旋状に撚り合わさってなる。このため、過渡セグメントBの性能は過渡セグメントBに延伸した通線ワイヤの本数を調整することによって第一の実施例と異なるように成すことができる。同じように、第一通線セグメント10、第二通線セグメント20の外径D1、D2および通線本数がそれぞれ異なるため、両者は屈曲性、硬度などの物理性能が異なる。
【0029】
前述の実施例において、第一、第二通線セグメントからは一部の第一、第二通線ワイヤが過渡セグメントまで延伸し螺旋状に捻り合わさっている。なお、第一通線セグメントのすべての第一通線ワイヤが過渡セグメントに延伸して第二通線ワイヤと螺旋状に捻り合わさる実施例も考えうる。また、第二通線セグメントのすべての第二通線ワイヤが過渡セグメントに延伸して第一通線ワイヤと螺旋状に捻り合わさる実施例も考えうる。
【0030】
図5に、本発明にかかる通線器の好ましい実施例を示す。当該通線器の中間部分は前述した第1の実施例と近いワイヤ部材、すなわち第一通線セグメント10および第二通線セグメント20を有し、かつ、当該ワイヤ部材は過渡セグメントの第一、第二通線ワイヤ11、21を固定する固定手段をさらに有することで、過渡セグメントの第一、第二通線ワイヤ11、21が相対的に螺旋転動することを防ぐ。本実施例において、固定手段は第一固定リング31および第二固定リング32を有し、第一固定リング31は第一セグメントAおよび過渡セグメントBの連結箇所に嵌合され、第二固定リング32は過渡セグメントCおよび第二セグメントBの連結箇所に嵌合される。図6に示すように、第一固定リング31の内表面には嵌合力を増強するための溝模様が形成されており、第一固定リング31の一部は第一セグメントAの第一通線ワイヤ11に嵌合し、第一固定リング31のさらに一部は過渡セグメントBの第一、第二通線ワイヤ11、21に嵌合する。第一固定リング31の両端の異なる内径が第一セグメントAおよび過渡セグメントBの異なる外径に適合する。第二固定リング32は内径が変化することが異なるのみで、内部構造は第一固定リング31に似ている。
【0031】
他の実施例において、固定手段は単一の固定リングを有してもよい。固定リングの設置位置は、過渡セグメントの両端に限られず、過渡セグメントの両端の間に設けられても良い。また他の実施例において、固定手段はパッキング部品であってもよい。たとえば、本体と、締付け爪/締付けリングおよび当該締付け爪/締付けリングをパッキングするためのパッキングヘッドと、を用いて、過渡セグメントの第一、第二通線ワイヤをパッキング方式によって固定する。その他の固定手段は、たとえば、過渡セグメントに接着剤を塗布する、粘着テープまたはその類似物を巻きつける、釘付ける、あるいは過渡セグメントの少なくとも一部の第一、第二通線ワイヤ上に互いに呼応する構造を形成することなどが考えうるが、これらに限られない。たとえば第一、第二通線ワイヤ上に凹凸を有する構造をそれぞれ形成し、凸構造と凹構造の延伸方向が第一、第二通線ワイヤが撚り合わさる螺旋方向と異なることが好ましい。
【0032】
本実施例において、2つの固定リングを用いてそれぞれ過渡セグメントの両端を固定し、かつ各固定リングは第一、第二通線セグメントが互いに固定される嵌合力を提供する方法を採用したため、各固定リングの長さは短縮してもよい。このメリットは、固定リングによる屈曲性の低下を軽減できる。たとえば図7に示すように、ワイヤ部材が曲げられたとき、固定リングの両側の通線セグメントは屈曲性を比較的保持している;固定リング自体の長さが増加すると、固定リングに近接する通線セグメントの屈曲性は低下する。このように、過渡セグメント上により多くの固定リングを設置することができ、単一の固定リングの長さをさらに低下することで第一、第二通線ワイヤが彎曲に必要となる屈曲性を保つとともに、互いの定位置を固定できることが分かる。
【0033】
通線器にケーブルを通線させる機能を持たせるために、通線器は第一ケーブル固定器40および第二ケーブル固定器50をさらに有してもよい。第一ケーブル固定器40は第一セグメントAの過渡セグメントBと反対の一端に設けられ、第二ケーブル固定器50は第二セグメントCの過渡セグメントBと反対の一端に設けられる。第一、第二ケーブル固定器40、50は同一または異なる形態であってもよい。本実施例においては、第一ケーブル固定器40は、第一セグメントAの端部に嵌合する固定部41と、当該固定部41に形成され、ケーブルと連結することが可能なリング42を具備する;第二ケーブル固定器50は、第二セグメントCの端部に嵌合する固定部51と、もう1つの固定部52と、固定部51および固定部52の間に設けられるワイヤ部材53(たとえばスチールケーブル)、および固定部52に形成されるリング54を具備する。第二ケーブル固定器50は第一ケーブル固定器40に比べてよりよい屈曲性を有する。その他の実施可能な形態として、通線器は1つのケーブル固定器のみ有することも考えうる。
【0034】
ところで、本発明にかかるワイヤ部材は前述の通線器に用いられる以外に、たとえば狭窄管路のなかの異物を探測したり取り除くなどといった用途も考えられるが、用途はこれらの例に限らない。この場合、ケーブル固定器は必須ではなく省略してもよい。さらに、本発明にかかるワイヤ部材は2つ以上の通線セグメントを有してもよく、たとえば1つのワイヤ部材3つの通線セグメントを有し、少なくとも両隣の通線セグメントの間に上述の過渡セグメントが形成される実施形態も考えうる。
【0035】
なお、図8および図9に、本発明にかかるワイヤ部材の第三の実施例において、第一通線セグメント10が第一通線セグメント10の軸芯で線形に延伸する1本の第一軸ワイヤ12をさらに有し、第二通線セグメント20が第二通線セグメント20の軸芯で線形に延伸する1本の第二軸ワイヤ22をさらに有し、第一通線ワイヤ11は第一セグメントAで互いに螺旋状に撚り合わさるとともに、前記第一軸ワイヤ12の周囲に螺旋状に撚り合わされる。すなわち、第一軸ワイヤ12はこの3本の第一通線ワイヤ11の幾何学的中心に位置する。同様に、第二通線ワイヤ21は第二セグメントCで互いに螺旋状に撚り合わさるとともに、第二軸ワイヤ22の周囲に螺旋状に撚り合わされる。さらに、第一、第二軸ワイヤ12、22の少なくとも一が過渡セグメントBに延伸することがより好ましい。たとえば本実施例において、第一、第二軸ワイヤ12、22はどちらも過渡セグメントBに延伸しており、過渡セグメントBの第一、第二通線ワイヤ11、21が過渡セグメントBの第一、第二軸ワイヤ12、22の周囲に螺旋状に縒り合わされている。その他の考えうる実施形態では、第一、第二軸ワイヤが過渡セグメントに延伸せず、過渡セグメントの第一、第二軸ワイヤのみが互いに螺旋状に縒り合わされていてもよい。その他の考えうる実施形態では、第一、第二軸ワイヤのうち1つのみが過渡セグメントに延伸してもよい。第一、第二軸ワイヤは、樹脂材料からなってもよく、樹脂材料は、ポリエステル樹脂、PP、PE等ポリオレフィン系樹脂、PA等ポリアミド系樹脂およびその共重合体などを選択可能であるが、これに限られない。また、第一、第二軸ワイヤは金属製のスチールワイヤ、スチールロープ、またはガラス繊維であってもよい。
【0036】
前述の設計によって、加工業者は求められる性能によって適した第一、第二通線セグメントを選択し、たとえば樹脂材料からなる第一、第二通線ワイヤであれば、第一、第二通線セグメントを個別に押出成形してから第一、第二通線セグメントの一部を撚り合せることができる。このような設計は、求められる押出成形の技術レベルが低く、より高い歩留まり率と低いコストが期待できる。さらに、ユーザにとって異なる状況で異なるワイヤ部材を選択可能であり、第一、第二通線セグメントが異なる物理性能を有するため、操作上の利便性が増し、ワイヤ部材の断裂、構造上の損傷または管路の損傷の可能性を軽減することが期待できる。
【符号の説明】
【0037】
第一通線セグメント10、第一通線ワイヤ11、第一軸ワイヤ12、第二通線セグメント20、第二通線ワイヤ21、第二軸ワイヤ22、第一固定リング31、第二固定リング32、第一ケーブル固定器40、固定部41、リング42、第二ケーブル固定器50、固定部51、固定部52、ワイヤ部材53、リング54、第一セグメントA、過渡セグメントB、第二セグメントC、外径D1、D2
【要約】
【課題】加工が容易な通線器およびワイヤ部材の提供。
【解決手段】本発明は、建築物の配管またはその他狭窄通路において用いられる通線器およびワイヤ部材を開示する。当該ワイヤ部材は、第一通線セグメントと、第二通線セグメントと、を有する;第一通線セグメントは、複数の第一通線ワイヤを有し、第一通線セグメントは第一セグメントを具備し、当該複数の第一通線ワイヤは第一セグメントで互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第一通線ワイヤは第一セグメントから過渡セグメントに延伸する;第二通線セグメントは、複数の第二通線ワイヤを有し、第二通線セグメントは第二セグメントを具備し、当該複数の第二通線ワイヤは第二セグメントで互いに螺旋状に撚り合わさり、少なくとも一部の前記第二通線ワイヤは第二セグメントから過渡セグメントに延伸し、かつ過渡セグメントに延伸した第一、第二通線ワイヤは互いに螺旋状に撚り合わさる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9