(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067187
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】薬物注入用レギュレータ装置及びそれを備えた薬物注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
A61M5/168 502
A61M5/168 506
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-523625(P2016-523625)
(86)(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公表番号】特表2016-523169(P2016-523169A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】KR2014004689
(87)【国際公開番号】WO2015005581
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年1月4日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0080050
(32)【優先日】2013年7月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516005119
【氏名又は名称】キム ヨンム
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンム
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0207636(US,A1)
【文献】
特表2009−525822(JP,A)
【文献】
特開昭53−049886(JP,A)
【文献】
特表平11−510404(JP,A)
【文献】
特表2012−500035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物保存空間と連通するように延びた上流側導管と連通する流入口、下流側導管と連通する流出口、及び前記流入口及び前記流出口と連通する内部空間を備えるハウジングと、
前記ハウジングの内部空間に位置し、前記流入口と前記流出口との間の薬物流動通路を形成し、前記流入口から前記薬物流動通路を介して前記流出口に排出される薬物の圧力が伝達され、前記流入口から前記薬物流動通路を介して前記流出口に排出される薬物の流量に応じて変形される膜状部材と、
前記膜状部材の下側に位置して回転軸を中心に互いに対向する流入口側延長部及び流出口側延長部を有するテコであって、前記流入口側延長部は、前記膜状部材の下面に接触しながら、前記薬物の流量に応じて回転軸を中心に回動して、前記膜状部材が前記流入口を遮断又は開放するように、前記膜状部材を変形させるテコと、
前記膜状部材と前記テコとの間に密着して位置する弾性プレートであって、前記薬物の流量が患者に必要な流量を超過する際にのみ、前記膜状部材を介して伝達される薬物の圧力が前記テコの流出口側延長部に伝達されるように弾性が調整されている弾性プレートと、を含む薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項2】
前記膜状部材は、流入口側部分と流出口側部分とに分割されて形成され、前記膜状部材の流入口側部分と前記膜状部材の流出口側部分との間には境界突出部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項3】
前記テコの流出口側延長部に薬物の圧力が偏って作用するようにするために、前記膜状部材の流出口側部分の面積を前記膜状部材の流入口側部分の面積より大きく形成することを特徴とする請求項2に記載の薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項4】
前記テコの流出口側延長部に薬物の圧力が偏って作用するようにするために、前記膜状部材の流出口側部分の厚さを前記膜状部材の流入口側部分の厚さより厚く形成することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、結合分離可能な上部ハウジングと下部ハウジングから構成され、前記上部ハウジングは、前記流入口と前記薬物流動通路との間に流入通路を形成し、前記流出口と前記薬物流動通路との間に流出通路を形成するように構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかの一項に記載の薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項6】
前記流入通路及び前記流出通路は、前記薬物流動通路と垂直方向に距離を置いており、前記流入通路と前記薬物流動通路とを垂直方向に貫通して連結する薬物流入孔と、前記流出通路と前記薬物流動通路とを垂直方向に貫通して連結する薬物流出孔が互いに対向して前記上部ハウジングに形成されたことを特徴とする請求項5に記載の薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項7】
前記弾性プレートは、周辺部と中央部、そしてこれらを連結するリブから構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかの一項に記載の薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項8】
前記流入口から前記薬物流動通路を介して前記流出口に排出される薬物の流量及び圧力を調節するために、前記弾性プレートの材質、厚さ及びリブの太さのうち少なくとも一つにより、前記弾性プレートの弾性が調整されたり、前記膜状部材の流出口側部分の厚さにより前記膜状部材の弾性が調整されることを特徴とする請求項7に記載の薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項9】
前記膜状部材はシリコーン材質で構成され、前記弾性プレートはプラスチック材質又はバネ鋼で構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかの一項に記載の薬物注入用レギュレータ装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかの一項に定義された薬物注入用レギュレータ装置を備える薬物注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物注入用レギュレータ装置及びそれを備えた薬物注入装置に関するものであって、より詳細には、患者に注入される薬物の流量が患者に必要な流量を超過することを防止し、薬物の流量が一定に維持されるように調節する薬物注入用レギュレータ装置及びそれを備えた薬物注入装置に関するものである。
【0002】
また、本発明は、患者に注入される薬物の流量が一定に維持されるように調節するが、リンゲルびんや様々な薬物注入装置に適用可能でありながら設置が簡単な薬物注入用レギュレータ装置及びそれを備えた薬物注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般的に、リンゲルびん等に保存された薬物を患者の血管に注入する場合、薬物の保存量に応じて可変される流量で薬物を患者の血管に注入するようになる。また、患者に抗がん剤、抗生剤等の特殊注射剤医薬品の薬物を注入する際には、患者の状態に応じて必要な量だけ一定に持続的に注入する必要がある。特殊注射剤医薬品が患者の必要量に合わせて持続的に一定に注入されなければ、ショックを起こし、事故が発生するおそれがある。
【0004】
一般的に、薬物の流量を調節する装置は、上下に回転させて薬物が流動するチューブの断面積を変化させることにより注射針に流れる薬物の量を調節する。このような従来の調節装置は、薬物の流量を微調節することが困難な問題がある。
【0005】
このような問題点を勘案して、国際公開特許公報WO03/066138A1号では、シリンダ内の薬物をピストンで押し出して患者に注入する薬剤注入装置を提供している。前記薬物注入装置は、気体を発生させ、ピストンに対して一定の圧力を加えることにより、ピストンを徐々に押すようになる気体供給装置と、このような気体供給装置から一時的に発生されうる高い圧力を外部に排出して気体供給装置から発生する気体の圧力を一定に調節する圧力調節弁を備えることにより、薬物を一定に持続的に患者に注入している。
【0006】
しかし、前記薬物注入装置が優れた技術であるにもかかわらず、他の優れた技術と同様に、絶え間なく改善がなされうるものである。つまり、前記従来の薬物注入装置は、圧力調節弁を気体供給装置内に設けなければならない煩わしさと、圧力調節弁の構造が複雑であり、これにより製造単価が高くなる観点から改善される余地がある。また、前記圧力調節弁は、気体を発生させる気体供給装置を備えた薬物注入装置にのみ適用可能であり、様々な薬物注入装置への適用には制限がある。
【0007】
したがって、本発明が属する技術分野においては、患者に注入される薬物の流量が患者に必要な流量を超過することを防止し、薬物の流量が一定に維持されるように調節するが、リンゲルびんや様々な薬物注入装置に適用可能でありながら設置が簡単な薬物流量調節装置の開発に対する要求が絶えず続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10−2007−0027675号公報
【特許文献2】特表2012−500035号公報
【特許文献3】韓国公開特許公報第10−2012−0025673号公報
【特許文献4】特表平11−505753号公報
【特許文献5】米国特許第5697153号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、前記従来の薬物流量調節装置の問題点を解決するのに、その目的がある発明であって、より詳細には、患者に注入される薬物の流量が患者に必要な流量を超過することを防止し、薬物の流量が一定に維持されるように調節する薬物注入用レギュレータ装置及びそれを備えた薬物注入装置を提供するのにその目的がある。
【0010】
また、本発明は、患者に注入される薬物の流量が一定に維持されるように調節するが、リンゲルびんや様々な薬物注入装置に適用可能でありながら設置が簡単な薬物注入用レギュレータ装置及びそれを備えた薬物注入装置を提供するのにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明の薬物注入用レギュレータ装置は、薬物保存空間と連通するように延びた上流側導管と連通する流入口、下流側導管と連通する流出口、及び前記流入口と前記流出口と連通する内部空間を備えるハウジングと、前記ハウジングの内部空間に位置し、前記流入口と前記流出口との間の薬物流動通路を形成して、前記流入口から前記薬物流動通路を介して前記流出口に排出される薬物の圧力が伝達され、前記流入口から前記薬物流動通路を介して前記流出口に排出される薬物の流量に応じて変形される膜状部材と、前記膜状部材の下側に位置して回転軸を中心に互いに対向する流入口側延長部及び流出口側延長部を有するテコであって、前記流入口側延長部は、前記膜状部材の下面に接触しながら、前記薬物の流量に応じて回転軸を中心に回動して、前記膜状部材が前記流入口を遮断又は開放するように、前記膜状部材を変形させるテコと、前記膜状部材と前記テコとの間に密着して位置する弾性プレートであって、前記薬物の流量が患者に必要な流量を超過する際にのみ、前記膜状部材を介して伝達される薬物の圧力が前記テコの流出口側延長部に伝達されるように弾性が調整されている弾性プレートとを含む。
【0012】
本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置において、前記薬物の流量が患者に必要な流量を超えるときは、前記膜状部材を介して伝達される薬物の圧力が前記弾性プレートの調整された弾性に勝ち、前記テコの流出口側延長部を下方に移動させ、これにより前記テコの流入口側延長部は上方に移動させることにより、前記膜状部材が前記流入口を遮断するように、前記膜状部材の流入口側を圧迫して変形させるようになる。
【0013】
一方、前記流入口の遮断後、薬物が前記薬物流動通路に流入されなくなると、前記膜状部材には、前記薬物の圧力が伝達されなくなり、前記弾性プレートは、弾性復元力により前記膜状部材に対して上方に力が作用しながら前記テコの流出口側延長部に加えられた力も解除される。これにより、テコのシーソーの原理により、前記テコの流出口側延長部は上方に、そして前記テコの流入口側延長部は下方に移動するようになり、前記膜状部材の流入口側を圧迫する力も解除され、前記流入口から薬物が流入されれば、前記膜状部材の変形された流入口側は薬物が流入される力によって元の位置及び形状に復帰するようになる。
【0014】
本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置において、前記ハウジングは、結合分離可能な上部ハウジングと下部ハウジングから構成されうる。たとえば、前記下部ハウジングは前記上部ハウジングの下側垂直方向に延びた下部壁体によって形成された空間に嵌合方式で結合されうる。前記上部ハウジングと前記下部ハウジングとの間の空間に下から前記テコ、前記弾性プレート及び前記膜状部材が位置する。
【0015】
前記上部ハウジングは、前記流入口と前記薬物流動通路との間に別途の流入通路を形成し、前記流出口と前記薬物流動通路との間に別途の流出通路を形成するように構成されうる。この場合、前記上部ハウジングの流入通路及び流出通路の形成により、これら流入通路及び流出通路にそれぞれ対応する上部ハウジング部分は、上に突出した形状を取ることができる。前記流入通路及び前記流出通路には、前述した上流側導管及び下流側導管がそれぞれ挿入されうる。また、前記流入通路及び前記流出通路は、前記薬物流動通路と垂直方向に距離を置いており、前記流入通路と前記薬物流動通路とを垂直方向に貫通して連結する薬物流入孔と、前記流出通路と前記薬物流動流路とを垂直方向に貫通して連結する薬物流出孔が互いに対向して前記上部ハウジングに形成される。
【0016】
本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置において、前記膜状部材は、前記下部ハウジングの周辺部上に安着された後、前記下部ハウジングが前記上部ハウジングの下側垂直方向に延びた下部壁体により形成された空間に嵌合方式で結合されるとき、前記上部ハウジングと前記下部ハウジングとの間で、前記膜状部材の周辺部が挟まれて結合される。前記膜状部材の形状は、前記下部ハウジングの形状に対応するように形成され、前記膜状部材の周辺部は上下に突出されることにより、前記下部ハウジングの周辺部と前記上部ハウジングの下面との間の空間に挟まれ、しっかりと固定される。
【0017】
前記膜状部材は、流入口側部分と流出口側部分に分割されて形成され得、略円形の流入口側部分が略円形の流出口側部分と部分的に重畳されうる。この場合、前記膜状部材の流入口側部分と前記膜状部材の流出口側部分との間には、境界突出部が形成されるが、この境界突出部は面積と厚さが異なる前記膜状部材の流入口側部分と前記膜状部材の流出口側部分を区分する境界線となって薬物注入時に膜状部材が流入薬物圧力によって変形されるとき、力を受けるようになる変形ポイントとなる。特に、本発明では、前記テコの流出口側延長部に薬物の圧力が偏って作用させるようにするために、前記膜状部材の流出口側部分の面積を前記膜状部材の流入口側部分の面積より大きく形成し、前記膜状部材の流出口側部分の厚さを前記膜状部材の流入口側部分の厚さより厚く形成する。
【0018】
本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置において、前記テコの回転軸は、前記下部ハウジング底面に設置された互いに対向する一対のテコ支持台にかけられて結合される。前記テコ支持台の両側に前記テコの回転軸がかけられて結合された後、回転軸を中心に前記テコの流入口側延長部と流出口側延長部が上下方向に移動するようになる。前記流入口側延長部の末端には、上方に突出した突出部が形成され、前記膜状部材の流入口側部分の下面に接触時に効率的に力を伝達することができる。また、前記流出口側延長部の末端付近にも上方に突出した突出部が形成され、前記膜状部材の流出口側部分及び弾性プレートを介して効果的に薬物の圧力の伝達を受けられる。
【0019】
本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置において、前記弾性プレートは板バネでありうる。前記弾性プレートは、周辺部と中央部、そしてこれらを連結するリブから構成されうる。前記弾性プレートは、一般的な板バネのように、前記中央部が緩慢な状態で上に凸状に突き出すようにできるが、平らに構成することもできる。前記流入口から前記薬物流動通路を介して前記流出口に排出される薬物の流量及び圧力を調節するために、前記弾性プレートの弾性は調整されるが、前記弾性プレートの材質、厚さ、及びリブの太さのうち少なくとも一つにより弾性が調整されうる。また、前記膜状部材の流出口側部分の厚さ調整により、前記膜状部材の弾性が調整され、これにより前記流出口に排出される薬物の流量及び圧力をさらに調節することができる。
【0020】
たとえば、前記薬物の圧力を低圧に調整する場合には、前記弾性プレートの材質としてプラスチック材質を使用し、高圧に調整する場合には、前記弾性プレートの材質としてバネ鋼を使用することができる。また、前記弾性プレートの厚さ、前記弾性プレートのリブの太さ及び/又は前記膜状部材の流出口側部分の厚さを調整して前記弾性プレートの弾性及び/又は前記膜状部材の弾性を調整することにより、前記薬物の流量及び圧力を調整することができる。前記薬物の圧力を高圧に調整する場合には、前記弾性プレート及び/又は前記膜状部材の流出口側部分の厚さを厚くしたり、前記弾性プレートのリブの太さを太くすることができる。一方、前記薬物の圧力を低圧に調整する場合には、前記弾性プレート及び/又は前記膜状部材の流出口側部分の厚さを薄くしたり、前記弾性プレートのリブの太さを細くすることができる。
【0021】
したがって、本発明の薬物注入用レギュレータ装置は、前記膜状部材、前記弾性プレート及び前記テコの組み合わせ構成と、前記弾性プレートの弾性調整によって薬物の流入遮断及び流入再開を可能にし、前記弾性プレート及び/又は前記膜状部材の弾性調整によって薬物が一定の流量で流れるようにすることができる。
【0022】
一方、本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置において、前記膜状部材は、シリコーン材質で構成され得、前記弾性プレートは、プラスチック材質又はバネ鋼で構成され得、その他の構成要素である上部ハウジング、下部ハウジング及びテコなどは、プラスチック材質で構成されうる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的に符合する当業界に知られる様々な材料を用いて、前記構成要素を構成できることを、本発明が属する技術分野の当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0023】
また、本発明の薬物注入装置は、前述したような薬物注入用レギュレータ装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上述した構成を有する本発明の薬物注入用レギュレータ装置は、患者に注入される薬物の流量が患者に必要な流量を超過することを防止し、薬物の流量が一定に維持されるように調節することができる。
【0025】
具体的には、本発明の薬物注入用レギュレータ装置は、膜状部材、弾性プレート及びテコの組み合わせ構成と、弾性プレートの弾性調整によって薬物の流入遮断及び流入再開を可能にし、弾性プレート及び/又は膜状部材の弾性調整によって薬物が一定の流量で流れるようにすることができる利点を提供する。
【0026】
また、本発明の薬物注入用レギュレータ装置は、患者に注入される薬物の流量が一定に維持されるように調節するが、リンゲルびんや様々な薬物注入装置に適用可能でありながら設置が簡単な利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)が結合された状態の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)が分解された状態の分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)が結合された状態の縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)の動作過程を説明する使用状態図である。
【
図5】本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)の動作過程を説明する使用状態図である。
【
図6】本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)の動作過程を説明する使用状態図である。
【
図7】本発明の一実施例による薬物注入用レギュレータ装置(10)が適用された薬物注入装置の一実施例を示す概略的な構成図である。
【
図8】本発明の一実施例による薬物注入用レギュレータ装置(10)が適用された薬物注入装置の他の実施例を示す概略的な構成図である。
【
図9】本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)のうち上部ハウジング(12)のみを分離して示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明すると次の通りである。本発明の下記実施例は、本発明を具体化するためだけのものであって、本発明の権利範囲を制限したり限定したりするものでないのはもちろんのことである。本発明の詳細な説明及び実施例から、本発明が属する技術分野の専門家が容易に類推できることは、本発明の権利範囲に属するものと解釈される。本発明に引用された参考文献は、本発明の参考として統合される。
【0029】
図1ないし
図3に示すように、本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)は、大きく上部ハウジング(12)と、下部ハウジング(14)と、膜状部材(15)と、弾性プレート(16)と、テコ(17)から構成されている。
【0030】
上部ハウジング(12)と下部ハウジング(14)は、結合分離可能であり、例えば、下部ハウジング(14)は、上部ハウジング(12)の下側垂直方向に延びた下部壁体(122)により形成された空間に嵌合方式で結合されうる。このように上部ハウジング(12)と下部ハウジング(14)とが結合されると、薬物注入用レギュレータ装置(10)の全体ハウジングが形成され、上部ハウジング(12)と下部ハウジング(14)との間の空間に下からテコ(17)、弾性プレート(16)及び膜状部材(15)が位置するようになる。
【0031】
図3に示すように、前記のように構成された上・下部ハウジング(12,14)は、薬物保存空間(図示せず)と連通するように延びた上流側導管(図示せず)と連通する流入口(18)と、下流側導管(図示せず)と連通する流出口(19)とを備える。上・下部ハウジング(12,14)は、後述する膜状部材(15)とともに流入口(18)と流出口(19)との間の薬物流動通路(186)を区画する。
【0032】
また、
図3及び
図9に示すように、上部ハウジング(12)の上板(126)と下板(124)は、流入口(18)と薬物流動通路(186)との間に流入通路(182)を区画すると同時に流出口(19)と薬物流動通路(186)との間に流出通路(192)を区画する。この場合、上部ハウジング(12)の流入通路(182)及び流出通路(192)の区画により、これら流入通路(182)及び流出通路(192)にそれぞれ対応する上部ハウジング部分は、上に突出した形状を取ることができる。図示はしなかったが、流入通路(182)及び流出通路(192)には、上流側導管(図示せず)及び下流側導管(図示せず)がそれぞれ挿入されうる。また、流入通路(182)及び流出通路(192)は、薬物流動通路(186)と垂直方向に距離を置いており、上部ハウジング(12)には流入通路(182)と薬物流動通路(186)とを垂直方向に貫通して連結する薬物流入孔(184)と、流出通路(192)と薬物流動通路(186)とを垂直方向に貫通して連結する薬物流出孔(194)が互いに対向して形成されている。
【0033】
図2ないし
図6に示すように、膜状部材(15)は、下部ハウジング(14)の流入口側周辺部(144)及び流出口側周辺部(146)上に安着された後、下部ハウジング(14)が上部ハウジング(12)の下側垂直方向に延びた下部壁体(122)によって形成された空間に嵌合方式で結合されるとき、上部ハウジング(12)と下部ハウジング(14)との間で膜状部材(15)の周辺部(156)が挟まれて結合される。膜状部材(15)の形状は、下部ハウジング(14)の形状に対応するように形成され、膜状部材(15)の周辺部(156)は、上下に突出されることにより下部ハウジング(14)の周辺部(144,146)と上部ハウジング(12)の下板(124)との間の空間に挟まれて、しっかりと固定される。
【0034】
また、膜状部材(15)には、流入口(18)から薬物流動通路(186)を介して流出口(19)に排出される薬物の圧力が伝達されるが、膜状部材(15)は、流入口(18)から薬物流動通路(186)を介して流出口(19)に排出される薬物の流量及び圧力に応じて変形されうる伸縮性と柔軟性を有する材料であることが望ましい。たとえば、膜状部材(15)はシリコーン材質で構成されうる。さらに好ましくは、膜状部材(15)は薄膜のシリコーン材質で構成されるものである。
【0035】
膜状部材(15)は、流入口側部分(153)と流出口側部分(154)に分割されて形成され得、略円形の流入口側部分(153)が略円形の流出口側部分(154)と部分的に重畳されうる。この場合、膜状部材(15)の流入口側部分(153)と流出口側部分(154)との間には、境界突出部(158)が形成されるが、この境界突出部(158)は、面積と厚さが異なる流入口側部分(153)と流出口側部分(154)を区分する境界線となり薬物注入時に膜状部材(15)が流入薬物の圧力によって変形されるとき、力を受けるようになる変形ポイントとなる。
【0036】
特に、本発明では、後述するテコ(17)の流出口側延長部(176)に薬物の圧力が偏って作用させるため、膜状部材(15)の流出口側部分(154)の面積を流入口側部分(153)の面積より大きく形成し、膜状部材(15)の流出口側部分(154)の厚さを流入口側部分(153)の厚さより厚く形成する。そして、膜状部材(15)の流入口側部分(153)は、相対的に流出口側部分(154)より薄いため、下部ハウジング(14)の周辺部のうち流入口側周辺部(144)から段差をつけて上方に延びた部分(145)によって支持され、膜状部材(15)の突出した周辺部(156)は、流入口側周辺部(144)と上方延長部分(145)によって形成された段差にかかり、安定的に下部ハウジング(14)に安着される。このとき、膜状部材(15)の流出口側部分(154)の厚さと流入口側部分(153)の厚さの差だけ上方延長部分(145)は流入口側周辺部(144)から段差をつけて突出している。
【0037】
図2ないし
図6に示すように、テコ(17)は、膜状部材(15)の下側に位置して回転軸(172)を中心に互いに対向する流入口側延長部(174)及び流出口側延長部(176)を備え、流入口側延長部(174)は膜状部材(15)の下面に接触しながら薬物の流量に応じて回転軸(172)を中心に回動し、膜状部材(15)が薬物流入孔(184)を遮断又は開放するように膜状部材(15)を変形させる。
【0038】
具体的には、テコ(17)の回転軸(172)は、下部ハウジング(14)の底面(142)に設置された互いに対向する一対のテコ支持台(148)にかけられて結合される。テコ支持台(148)の両側にテコの回転軸(172)がかけられて結合された後、回転軸(172)を中心にテコの流入口側延長部(174)及び流出口側延長部(176)が上下方向に移動するようになる。流入口側延長部(174)の末端には、上方に突出した突出部(175)が形成されており、膜状部材(15)の流入口側部分(153)の下面に接触時、効率的に力を伝達することができる。また、流出口側延長部(176)の末端付近にも上方に突出した突出部(177)が形成されて膜状部材(15)の流出口側部分(154)及び後述する弾性プレート(16)を介して効果的に薬物の圧力の伝達を受けられる。
【0039】
図2ないし
図6に示すように、弾性プレート(16)は、膜状部材(15)とテコ(17)との間に密着して位置するが、テコ(17)の流入口側延長部(174)は、一部のみ覆い、流出口側延長部(176)を完全に覆いながら下部ハウジング(14)の流出口側周辺部(146)上にかけられて安着されている。そして、弾性プレート(16)は、周辺部(162)と中央部(166)、そしてこれらを連結するリブ(164)から構成されうる。弾性プレート(16)は、一般的な板バネのように中央部(166)が緩慢な状態で上に凸状に突き出すようにできるが、平らに構成することもできる。本発明を制限するものではないが、弾性プレート(16)は板バネであることが望ましい。
【0040】
流入口(18)から薬物流動通路(186)を介して流出口(19)に排出される薬物の流量及び圧力を調節するために、弾性プレート(16)の弾性は調整されるが、弾性プレート(16)の材質、厚さ及びリブの太さのうち少なくとも一つによって弾性が調整されうる。また、膜状部材(15)の流出口側部分(154)の厚さ調整により膜状部材(15)の弾性が調整され、これにより流出口(19)に排出される薬物の流量及び圧力をさらに調節することができる。
【0041】
たとえば、薬物の圧力を低圧に調整する場合には、弾性プレート(16)の材質としてプラスチック材質を使用し、高圧に調整する場合には、弾性プレート(16)の材質としてバネ鋼を使用することができる。また、弾性プレート(16)の厚さ、弾性プレートのリブ(164)の太さ及び/又は膜状部材(15)の流出口側部分(154)の厚さを調整して弾性プレート(16)及び/又は膜状部材(15)の弾性を調整することにより薬物の流量及び圧力を調整することができる。薬物の圧力を高圧に調整する場合には、弾性プレート(16)の厚さ及び/又は膜状部材(15)の流出口側部分(154)の厚さを厚くしたり、弾性プレートのリブ(164)の太さを太くすることができる。一方、薬物の圧力を低圧に調整する場合には、弾性プレート(16)の厚さ及び/又は膜状部材(15)の流出口側部分(154)の厚さを薄くしたり、弾性プレートのリブ(164)の太さを細くすることができる。
【0042】
一方、本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)において、膜状部材(15)及び弾性プレート(16)以外の他の構成要素は、プラスチック材質で構成されうる。しかし、本発明はこれに制限されるものではなく、本発明の目的に符合する当業界に知られている様々な材料を使用して、前記構成要素を構成できることを、本発明が属する技術分野の当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0043】
前記したように構成された本発明の一実施例の薬物注入用レギュレータ装置(10)の作動を
図4ないし
図6を参照して説明すると、次の通りである。
【0044】
まず、
図4には、薬物の流量が患者に必要な流量を超過した状態、すなわち、弾性プレート(16)及び/又は膜状部材(15)の弾性によって設定された調整圧力以上に該当する過剰の流量を有する薬物が流入した後、流出する状態が示されている(薬物の過多注入状態)。流入口(18)、流入通路(182)及び薬物流入孔(184)を介して流入された薬物は、上部ハウジング(12)の下面と膜状部材(15)の流入口側部分(153)の上面との間の薬物流動通路(186)を通過した後、膜状部材(15)の境界突出部(158)にぶつかりながら流れる圧力によって境界突出部(158)と上部ハウジング(12)の下面との間に狭い空間を形成しながら通過する。次に、流入された薬物は、上部ハウジング(12)の下面と膜状部材(15)の流出口側部分(154)の上面との間の薬物流動通路(186)に流入され、薬物流出孔(194)を介して流出される(
図4の“a”状態)。このとき、膜状部材(15)の流出口側部分(154)の厚さが流入口側部分(153)の厚さより厚いため、上部ハウジング(12)の下面と、膜状部材(15)の流出口側部分(154)の上面との間に形成された空間は、上部ハウジング(12)の下面と、膜状部材(15)の流入口側部分(153)の上面との間に形成された空間より狭く、このような狭い空間を通過する薬物は、薬物流出孔(194)を介して流出通路(192)及び流出口(19)に排出されるとき、膜状部材(15)の流出口側部分(154)に、さらに大きな圧力をかけるようになる(膜状部材の流入口側圧力より膜状部材の流出口側圧力が大きい)。さらに、膜状部材(15)の流出口側部分(154)の面積が流入口側部分(153)の面積より広いので、膜状部材(15)に加わる圧力の総和は、流出口側部分(154)が流入口側部分(153)より大きくなる。
【0045】
前述したような、膜状部材(15)の構成的特徴によって、膜状部材(15)の流出口側部分(154)と流入口側部分(153)に加わる薬物の圧力の不均衡が発生して膜状部材(15)の流出口側部分(154)に対して薬物の圧力が集中されることにより、膜状部材(15)の流出口側部分(154)及びその下に位置する弾性プレート(16)に圧力が加えられる(
図4の“b”状態)。このとき、弾性プレート(16)の材質、厚さ及び/又はリブの太さなどで調整された弾性に勝てなければ弾性プレート(16)の下に位置するテコ(17)の流出口側延長部(176)を動かすことができないが、患者に必要な薬物流量より過量の薬物が入ってくると弾性プレート(16)の弾性に勝って薬物の流出圧力がテコ(17)の流出口側延長部(176)に及ぼされる。実際の動作では、弾性プレート(16)が、薬物の流出圧力によって下方に若干押されながらテコ(17)の流出口側延長部(176)を押すようになる(
図4では図示の便宜及び理解を容易にするために、この過程に対する図示を省略してテコ(17)の回動状態のみ図示した)。これにより、テコ(17)は、回転軸(172)を中心に時計回りに回動してテコ(17)の流出口側延長部(176)は、下方にそしてテコ(17)の流入口側延長部(174)は、上方に移動するようになる(
図4の“c”の状態)。そして、上方に移動するテコ(17)の流入口側延長部(174)は、膜状部材(15)の流入口側部分(153)を圧迫するようになり、テコ(17)の流入口側延長部(174)によってあげられて圧迫される膜状部材(15)の流入口側部分(153)は、伸張・変形され、対応する上部ハウジング(12)の下面に密着して薬物流入孔(184)を塞ぐことにより、薬物の流入が遮断される(
図4の“d”状態)。
【0046】
前記のように、薬物の流入が遮断されると、
図5に示すように薬物が薬物流動通路(186)及び薬物流出孔(194)を介して、それ以上流出されず、これにより薬物の流出による上部ハウジング(12)の下面と膜状部材(15)の流出口側部分(154)の上面との間で膜状部材(15)上に伝達される薬物圧力もなくなり弾性プレート(16)に加わる薬物圧力も解除される。これにより、弾性プレート(16)は、弾性復元力により膜状部材(15)に対して上方に力が作用しながら下に位置するテコ(17)の流出口側延長部(176)に加えられた力も解除される(
図5の“a”表示参照)。このとき、テコ(17)の流出口側延長部(176)が流入口側延長部(174)より短いため、シーソーの原理によってテコ(17)は、回転軸(172)を中心に反時計回りに回動してテコ(17)の流入口側延長部(174)は下方に、そして流出口側延長部(176)は上方に移動するようになって、テコ(17)の流入口側延長部(174)によって、膜状部材(15)の流入口側部分(153)を圧迫する力も解除される(
図5の“b”状態)。
【0047】
そして、
図6のように流入口(18)から薬物が流入すると、膜状部材(15)の流入口側部分(153)は、薬物が流入される力によって元の位置及び形状に復帰するようになり、薬物は、
図3のように正常に注入される。もし再び薬物が過量に注入されると、
図4、
図5及び
図6の段階を繰り返すようになって、薬物の流入遮断及び流入再開を繰り返して薬物が一定の流量で流れるようにすることができる。
【0048】
一方、
図7及び
図8には、本発明の一実施例による薬物注入用レギュレータ装置(10)が適用された事例が示されている。
【0049】
たとえば、国際公開特許公報WO2010/120051A2号に示されているような薬物注入装置(100)のシリンダ(110)内の薬物保存空間(120)と末端部キャップ(160)を連結するチューブ(150)との間に本発明の薬物注入用レギュレータ装置(10)を提供すると、ピストン(140)の後方に配置されてピストン(140)を前方に押す気体を供給する気体供給部(130)に気体圧力調節のための別途の圧力調節弁の提供がなくてもピストン(140)によってシリンダ(110)内の薬物保存空間(120)から押し出される薬物の流量を一定にすることができる(
図7参照)。
図7では、本発明の薬物注入用レギュレータ装置(10)の流入口(18)は上流側チューブ(151)と連結され、流出口(19)は下流側チューブ(152)と連結されている。
【0050】
また、国際公開特許公報WO2005/105183A1号に図示されたようなリンゲル連結装置(40)とマルチフロー装置(50)との間に、本発明の薬物注入用レギュレータ装置(10)をマルチフロー方式に適合するように適用すれば、マルチフロー装置(50)内の流量調節ユニット(70)の回転によって選択された流量で流出される薬物についても、その流量の変動を最小化することができる(
図8参照)。つまり、本発明の薬物注入用レギュレータ装置(10)の流入口(18)とリンゲル連結装置(40)の薬液入口(28)を連結し、流出口(19)と連結された分岐チューブ(552)を別途提供して、このような分岐チューブ(552)を毛細管部材(60)内の毛細管チューブ(62)と連結すれば、流量調節ユニット(70)の回転により流量選択だけでなく、選択された流量の変動を最小化することができる。一方、
図8に図示されたリンゲル連結装置(40)とマルチフロー装置(50)に提供される部品は、先行技術である国際公開特許公報WO2005/105183A1号に記載されているものであって、当業者であれば容易に本発明に適用して構成することができるため、その部品に対する説明及びこれに関連する図面符号の説明は省略する。
【0051】
以上、本発明を前記実施例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲をはずれることなく修正、変更を行うことができ、これらの修正と変更も本発明に属するものであることがわかるであろう。