特許第6067263号(P6067263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067263
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】患者漏れ電流制限
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/02 20060101AFI20170116BHJP
   A61B 5/04 20060101ALI20170116BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H04B3/02
   A61B5/04 Q
   G08C19/00 K
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-156215(P2012-156215)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2013-21694(P2013-21694A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】13/181,875
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル・フェルドッチテイン
【審査官】 野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−265987(JP,A)
【文献】 特開2008−022187(JP,A)
【文献】 特表2008−500087(JP,A)
【文献】 特開2007−319686(JP,A)
【文献】 特開2009−118149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/02
A61B 5/04
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド受信器であって
絶縁装置であって、ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号によって変調された局部発振器信号を該絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号を該絶縁装置の出力ポートに生成するように構成された、絶縁装置と、
前記変調された出力局部発振器信号を前記局部発振器信号で復調することによって前記ベースバンド信号を復元するように構成された復調器と、
を含む、受信器。
【請求項2】
前記絶縁装置が、2次コイルからガルバニック絶縁された1次コイルを有する変圧器を含む、請求項1に記載の受信器。
【請求項3】
前記絶縁装置が、出力ポートからガルバニック絶縁された入力ポートを有する光電変換器を含む、請求項1に記載の受信器。
【請求項4】
前記入力ポートに結合されたアナログ・ディジタル変換器(ADC)と、前記出力ポートに結合されたディジタル・アナログ変換器(DAC)と、を含み、前記ADC及びDACが前記光電変換器に接続された、請求項3に記載の受信器。
【請求項5】
前記受信されたベースバンド信号が入力基準レールを基準とし前記局部発振器信号が前記入力基準レールを基準とする、請求項に記載の受信器。
【請求項6】
前記局部発振器信号が前記復調器へ入力され、出力基準レールを基準とし、前記復元されたベースバンド信号が前記出力基準レールを基準とする、請求項に記載の受信器。
【請求項7】
前記復調器に結合されベースバンド周波数より高い周波数を阻止するように構成された低域通過フィルターを含む、請求項1に記載の受信器。
【請求項8】
前記復調器からの前記復元されたベースバンド信号を受信し、該復元されたベースバンド信号を、前記ヒト患者に対する電気信号伝送及び前記ヒト患者からの電気信号受信の少なくとも1つを行うように構成されたモジュールに供給するように構成された、受信器出力ポートを含む、請求項2に記載の受信器。
【請求項9】
前記モジュールが、前記ヒト患者からの追跡信号を受信して前記ヒト患者内のプローブを追跡するように構成された追跡モジュールを含む、請求項に記載の受信器。
【請求項10】
前記復調器からの前記復元されたベースバンド信号と前記受信器入力ポートで受信される前記ベースバンド信号を関連づけるパラメーターを格納するように構成されたプロセッサを含み、
前記パラメーターは、出力信号y、変圧器の2次側からの搬送波信号出力の振幅A’、変圧器による信号出力とこの変圧器への信号入力との間の位相差φ、及び定数kを含み、
前記プロセッサは、前記追跡モジュールを制御するように構成されている、請求項に記載の受信器。
【請求項11】
前記モジュールが、アブレーション電力を前記ヒト患者に伝送して前記組織をアブレーションするように構成されたアブレーションモジュールを含む、請求項に記載の受信器。
【請求項12】
前記復調器に結合され直流(DC)レベルを阻止するように構成された電子装置を含む、請求項1に記載の受信器。
【請求項13】
アブレーション電力をアブレーション周波数で前記ヒト患者に伝送するように構成されたアブレーションモジュールを含み、該モジュールが、前記局部発振器信号を前記アブレーション周波数で前記復調器に供給するように構成された局部発振器を含む、請求項に記載の受信器。
【請求項14】
ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号によって変調された局部発振器信号を絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号を前記絶縁装置の出力ポートに生成することと、
前記変調された出力局部発振器信号を前記局部発振器信号で復調することによって前記ベースバンド信号を復元することと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記絶縁装置が、2次コイルからガルバニック絶縁された1次コイルを有する変圧器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記絶縁装置が、出力ポートからガルバニック絶縁された入力ポートを有する光電変換器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記受信されたベースバンド信号が入力基準レールを基準とし、前記ベースバンド信号を変調する前記局部発振器信号が前記入力基準レールを基準とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記変調された出力局部発振器信号を復調する前記局部発振器信号が出力基準レールを基準とし、前記復元されたベースバンド信号が前記出力基準レールを基準とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ベースバンド信号を変調する前記局部発振器信号を、前記変調された出力局部発振器信号を復調する前記局部発振器信号から、電気的に絶縁することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記復元されたベースバンド信号を、前記ヒト患者に対する電気信号伝送及び前記ヒト患者からの電気信号受信の少なくとも1つを行うように構成されたモジュールに供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記モジュールが、前記ヒト患者からの追跡信号を受信して前記ヒト患者内のプローブを追跡するように構成された追跡モジュールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記復元されたベースバンド信号と前記受信されたベースバンド信号を関連づけるパラメーターをプロセッサに格納することを含み、
前記パラメーターは、出力信号y、変圧器の2次側からの搬送波信号出力の振幅A’、変圧器による信号出力とこの変圧器への信号入力との間の位相差φ、及び定数kを含み、
前記プロセッサは、前記追跡モジュールを制御するように構成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記モジュールが、アブレーション電力を前記ヒト患者に伝送して前記組織をアブレーションするように構成されたアブレーションモジュールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
アブレーションモジュールからアブレーション電力をアブレーション周波数で前記ヒト患者に伝送することを含み、前記モジュールが、前記変調された出力局部発振器信号を復調するための前記局部発振器信号を前記アブレーション周波数で供給するように構成された局部発振器を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは医療処置中に見られる漏れ電流に関し、より具体的には、生じ得る漏れ電流を許容レベルに制限することに関する。
【背景技術】
【0002】
医療処置、特に患者の心臓に対して施される処置中には、想定外の電流が患者を通して流れることのないようにすることが不可欠である。このような電流は、典型的には、患者に直接又は間接的に接続され得る機器からの漏れによって生ずるが、悲劇的な結果を招く恐れがある。いずれのシステムでも、患者を通して生じ得る漏れ電流を低減することは大惨事の可能性をも低減することになる。
【0003】
参照により本特許出願に組み込まれる文書は、いずれかの用語が、それらの組み込まれた文書内で、本明細書で明示的又は暗黙的に行なわれる定義と相反するように定義される場合を除き、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、次のものを含むベースバンド受信器を提供する。
ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号を受信するように構成された受信器入力ポート、
ベースバンド信号で局部発振器信号を変調するように構成された変調器、
絶縁装置であって、変調された局部発振器信号をこの絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号をこの絶縁装置の出力ポートに生成するように構成された、絶縁装置、及び
変調された出力局部発振器信号を局部発振器信号で復調することによってベースバンド信号を復元するように構成された復調器。
【0005】
典型的には絶縁装置は、2次コイルからガルバニック絶縁された1次コイルを有する変圧器を含む。
【0006】
あるいは絶縁装置は、出力ポートからガルバニック絶縁された入力ポートを有する光電変換器を含む。アナログ・ディジタル変換器(ADC)が入力ポートに結合され、ディジタル・アナログ変換器(DAC)が出力ポートに結合され、これらADC及びDACが光電変換器に接続されてもよい。
【0007】
受信器は、局部発振器信号を生成するように構成された局部発振器を含んでもよい。典型的には、受信されたベースバンド信号が入力基準レールを基準とし、変調器によって変調された局部発振器信号はこの入力基準レールを基準とする。局部発振器信号が復調器へ入力され、出力基準レールを基準としてよく、復元されたベースバンド信号はこの出力基準レールを基準とし得る。
【0008】
開示した一実施形態では、受信器は、変調器へ入力された局部発振器信号を復調器へ入力された局部発振器信号から電気的に絶縁するように構成された絶縁変圧器を含む。
【0009】
更なる開示実施形態においては、受信器は、復調器に結合されベースバンド周波数より高い周波数を阻止するように構成された低域通過フィルターを含む。
【0010】
更に別の開示実施形態では受信器は、復調器からの復元されたベースバンド信号とともに受信器入力ポートで受信されるベースバンド信号を関連づけるパラメーターを格納するように構成されたプロセッサを含む。
【0011】
代替的な実施形態は、受信器出力ポートであって、復調器からの復元されたベースバンド信号を受信し、この復元されたベースバンド信号を、ヒト患者に対する電気信号伝送及びヒト患者からの電気信号受信の少なくとも1つを行うように構成されたモジュールに供給するように構成された、受信器出力ポートを含む。典型的には、このようなモジュールとして、ヒト患者からの追跡信号を受信して患者内のプローブを追跡するように構成された追跡モジュールを含む。代替的又は追加的に、モジュールは、アブレーション電力をヒト患者に伝送し、組織をアブレーションするように構成されたアブレーションモジュールを含む。
【0012】
更なる代替的実施形態は、復調器に結合されて直流(DC)レベルを阻止するように構成された電子装置を含む。
【0013】
本発明の一実施形態により、次のものを含むベースバンド受信器が更に供給される。
絶縁装置であって、ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号によって変調された局部発振器信号を、この絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号をこの絶縁装置の出力ポートに生成するように構成された、絶縁装置、及び
変調された出力局部発振器信号を局部発振器信号で復調してベースバンド信号を復元するように構成された復調器。
【0014】
典型的には絶縁装置は、2次コイルからガルバニック絶縁された1次コイルを有する変圧器を含む。
【0015】
受信機は、アブレーション電力をアブレーション周波数でヒト患者に伝送するように構成されたアブレーションモジュールを含んでよく、このモジュールは、局部発振器信号をアブレーション周波数で復調器に供給するように構成された局部発振器を含む。
【0016】
本発明の一実施形態により、次のステップを含む方法が更に提供される。
ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号を受信すること、
ベースバンド信号で局部発振器信号を変調すること、
変調された局部発振器信号を絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号を絶縁装置の出力ポートに生成すること、及び
変調された出力局部発振器信号を局部発振器信号で復調してベースバンド信号を復元すること。
【0017】
本発明の一実施形態により、次のステップを含む方法が更に提供される。
ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号によって変調された局部発振器信号を、絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号を絶縁装置の出力ポートに生成すること、及び
変調された出力局部発振器信号を局部発振器信号で復調してベースバンド信号を復元すること。
【0018】
本開示は、以下の発明を実施するための形態を、以下の図面と併せ読むことによって、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による、ベースバンド信号を測定するためのシステムの概略図。
図2】本発明の一実施形態によるシステムの特徴を示す概略図。
図3】本発明の一実施形態による受信器の概略回路図。
図4】本発明の一実施形態による絶縁装置の実施例を示す。
図5】本発明の代替的実施形態による受信器の概略回路図。
図6】本発明の一実施形態による、2つのベースバンド受信器の直列接続を示す概略図。
図7】本発明の一実施形態による、2つのベースバンド受信器の代替的な直列配列を示す概略図。
図8】本発明の一実施形態による、多数のモジュールに接続されたベースバンド受信器を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
概論
本発明の一実施形態は、受信器であって、ベースバンド信号を受信器の入力ポートで受信し、復元されたベースバンド信号を受信器の出力ポートから出力する受信器を提供する。受信器の入力及び出力ポートは相互に電気的に絶縁されることで、受信器は、入力ポート及びそこに入力されるベースバンド信号を、出力ポート及びそこから出力される復元されたベースバンド信号から電気的に分離するように機能する。
【0021】
受信器の入力ポートで受信されるベースバンド信号は、ヒト患者の組織の電気的活動から得られる。典型的にはこのベースバンド信号は、心電計(ECG)信号及び脳波計(EEG)信号の少なくとも1つを含むが、ヒト患者から得られる他の任意の信号、例えば患者の眼筋によって生成される信号であってもよい。
【0022】
受信されたベースバンド信号が受信器のモジュラー内の局部発振器(LO)信号で変調されることにより、変調されたLO信号が生成される。変調は典型的には振幅変調である。変調されたLO信号は、絶縁装置、典型的には変圧器に伝達され、変調されたLO信号が変圧器の1次コイルの入力となる。変圧器の2次コイルは1次コイルからガルバニック絶縁され、変調された出力LO信号を生成する。
【0023】
変調された出力LO信号は復調器に伝達されるが、この復調器はLO信号をも受信する。しかしながら、復調器へのLO信号は典型的には絶縁変圧器を介して得られることから、変調器へのLO信号と復調器へのLO信号とは、相互に電気的に絶縁された別々の基準レールを基準とし得る。
【0024】
復調器は変調された出力LO信号をLO信号で復調することによってベース信号を、典型的には他の周波数を有する他の信号とともに、復元する。復調器出力を低域通過フィルターを通してフィルタリングすることで、ベースバンド信号のみを復元し得る。
【0025】
この復元されたベースバンド信号を入力ベースバンド信号から電気的に絶縁すること、及び信号が存在するポート間を絶縁することで、受信器に接続された患者内で生成され得るいずれの漏れ電流も、著しく低減される。
【0026】
システムの説明
ここで、本発明の実施形態によるベースバンド信号を測定するためのシステム20の概略図である、図1を参照する。ベースバンド信号はヒト患者22の身体組織内の電気的活動に応じて生成され、約0Hz〜約1kHzの範囲の周波数を含むものと、想定する。システム20は、信号を測定することに加えて、この信号を利用する装置から患者を絶縁する。ここでは例として、ベースバンド信号は心電計(ECG)信号からなるものと、想定する。しかしながら、本発明の実施形態により測定されるベースバンド信号は、例えば脳波計(EEG)信号など、患者22から生ずる任意のベースバンド信号からなってよいことは当然である。
【0027】
システム20は、患者22の心臓25により生成されるECG信号を、患者に取り付けられたリード26を介して受信する、ベースバンド受信器24を含む。受信器24の第1の基準レール21が第1の受信器接地電極28に接続されている。患者22は患者接地電極23に結合され、この接地電極は電極28を介して第1の基準レールに接続されている。受信器24はまた、第2の基準レール27を含み、このレールは第2の受信器接地電極29に接続される。第1及び第2の基準レールの特性を含む受信器24の特性を以下に説明する。
【0028】
本発明の実施形態は、ベースバンド信号の測定にのみ用いられ、場合によっては、ただ1つのベースバンド信号の測定にのみ用いられる。これらの実施形態では、ただ1つの装置、すなわち受信器24のみが、患者22にガルバニック接続される。あるいは受信器24以外に、他の装置もまた患者22にガルバニック接続されてもよい。そのような他の装置は、患者に電気信号を伝送し、又は患者から電気信号を受信し得る。このようなその他の装置の信号はベースバンド信号及び/又は非ベースバンド信号であり得る。
【0029】
以下の説明においては例として、医療専門家30がプローブ追跡モジュール32を用いて患者22に処置を施すものと、想定する。モジュール32は、モジュール接地電極34により(受信器接地電極29を介して)第2の基準レール27に接続される。追跡モジュールは典型的には患者22内のプローブ38の遠位端の位置と方向を追跡する。場合によってはモジュール32は、患者内のプローブ38の他の部分を追跡する。追跡モジュールは、当該技術分野において既知であるいずれのプローブ追跡方法を用いてもよい。例えば、モジュール32が患者の近傍において磁界伝送器を動作させることで、プローブ38内のコイルがモジュールに供給される信号を生成し、この信号から、プローブの位置及び方向が見出されるようにすることができる。(簡単にするために、このような伝送器は図1には示していない。)Biosense Webster(Diamond Bar,CA)により生産されるCarto(登録商標)システムはこのような追跡方法を用いている。代替的又は追加的に、追跡モジュール32は、プローブ上の1つ以上の電極と、患者22に取り付けられた接地電極23及び/又は他の電極(図示せず)との間のインピーダンスを測定することによって、プローブ38を追跡してもよい。Biosense Websterにより生産されるCarto3(登録商標)システムは、磁界伝送器及びインピーダンス測定器の両方を追跡に用いている。
【0030】
患者22に施される処置には通常、追跡モジュールに加えて、他の装置も必要とされる。例えば処置は、高周波アブレーションを含むことがあり、その場合、追跡モジュール32とともに、アブレーションを供給するアブレーションモジュール35、またアブレーションのレベル算定のための算定モジュール37(アブレーションモジュールとは別個であり得る)を備える。特に明記した場合を除き、アブレーションモジュール35は、アブレーション接地電極39によって第2の基準レールに接続されるものと、想定する。モジュール内に含まれる高周波発振器41が、モジュールの電力出力ポート43に、アブレーションのための高周波電力を供給する。
【0031】
特に明記した場合を除き、以下の説明においては、(受信器24は別として、)処置中に使用され、患者に接続されると想定される唯一の他の装置は追跡モジュール32であると、想定する。
【0032】
システム20、及び追跡モジュール32をはじめとする他の装置は、メモリ44と情報のやりとりをする処理装置42を含むシステムプロセッサ40によって制御され得る。プロセッサ40は典型的にはコンソール46内に搭載され、このコンソール内に含まれる操作制御装置を用いて、専門家30がプロセッサと情報をやりとりする。プロセッサは、メモリ44内に格納されたソフトウェアを用いてシステム20を操作する。プロセッサ40によって実行される操作の結果は、画面48上で専門家に提示される、この画面は、典型的にはグラフィックユーザインタフェース及び/又は処置が施されている組織の画像を操作者に表示する。ソフトウェアは、例えばネットワークを通して電子形式でプロセッサ40にダウンロードされてもいいし、あるいは代替的又は追加的に、磁気、光学、又は電子的メモリ等の持続的な有形媒体に提供及び/又は格納されてもよい。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態によるシステム20の特徴を示す概略図100である。図100にそれぞれの記号で示すように、患者の接地電極23及び受信器の接地電極28が第1の基準レール21に接続される。加えて、受信器の接地電極29及び追跡モジュールの接地電極34が第2の基準レール27に接続される。追跡モジュール32は受信器24から接続部102を介して得られる信号を用いるものと、想定する。このような用い方は、例えば追跡モジュールがプローブ38の位置データをECG信号に応じてゲート制御する場合に生ずる。
【0034】
矢印104及び106によって示されるように、電極23を介して、受信器24及びモジュール32の両方から患者22を通して流れるリターン電流経路が存在し得る。各経路内の実際の電流の流れは、少なくとも部分的には第1及び第2の基準レール間の絶縁性に依存し、絶縁性が低下するほど、経路内の電流は増大する。受信器24及びモジュール32が個々にはそれぞれの仕様の定格漏れ電流を超えない場合でも、接地電極23を通る多重電流によって、患者を通る漏れ電流が許容できる値を超えてしまう恐れがある。(典型的には、受信器24及びモジュール32の漏れ電流の基準は、International Electrotechnical Commission(Geneva,Swetzerland)発行のIEC60601標準によって規定される。)本発明の実施形態では、第1及び第2の基準レールとこれら2つのレールに結合されたそれぞれの構成要素との間の絶縁性が十分に高くなるようにすることで、この問題を克服する。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態による受信器24の概略回路図である。実施形態によっては、2つ以上のリード26が受信器に接続され、リードからのそれぞれの信号が多重化される。多重化信号は受信器24の構成素子を通して伝達され、多重分離されてそれぞれの出力信号となる。簡単にするために、図には1つのベースバンド信号を有する1つの入力リード26のみを示すが、当業者であれば、本明細書における説明を多重入力リード26及びそれに関連する多重化及び多重分離に適合できよう。
【0036】
リード26は受信器の入力ポート118に接続され、この入力ポートが、入力ベースバンド信号m(t)をモジュラー120へと伝える。実施例によっては受信器内に局部発振器122が組み込まれてよく、この局部発振器が、レール21を基準とする、局部発振器信号
【数1】
を生成する。典型的にはこの局部発振器信号は、数百kHzの程度の周波数ωを有する。以下の説明では簡単にするために、局部発振器は約500kHzで発信するものと、想定する。局部発振器信号は、本明細書において搬送波信号とも称されるが、振幅A及び周波数ωを有し、変調器120の入力となる(搬送波の位相は0であると、想定する)。信号m(t)が搬送波を変調し、等式(1)によって与えられる振幅変調された信号x(t)を変調器出力に生成する。
【数2】
ここでCは搬送波の振幅に関連する数である。
【0037】
信号x(t)は振幅変調された信号であり、局部発振器の周波数、すなわち約500kHzを有する。信号x(t)は絶縁装置124の入力ポート123に伝達され、絶縁装置の入力接地ポート127を介して基準レール21を基準とする。図4に関して以下に説明するように、実質的にx(t)と同一の信号が装置124の出力ポート125に生成される。出力ポート125の信号は絶縁装置124の出力接地ポート129を介して基準レール27を基準とする。絶縁装置124の実施例を図4との関連で以下に説明する。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態による絶縁装置124の実施例を示す。実施例の説明において、装置が共通の場合、各装置は、装置及び装置の構成部品に付加した添え字を有することによって区別される。したがって、装置124Aは入力ポート123Aを有し、装置124Bは入力ポート123Bを有する。
【0039】
絶縁装置124Aは、1次コイル150及び2次コイル152を有する変圧器を含む。これら2つのコイルは相互にガルバニック絶縁されている。1次コイル150は、入力ポート123Aとして機能する第1の1次コイル端と、入力接地ポート127Aとして機能する第2の1次コイル端とを有する。2次コイル152は、出力ポート125Aとして機能する第1の2次コイル端と、出力接地ポート129Aとして機能する第2の2次コイル端とを有する。図に示されるように、入力接地ポート127Aは基準レール21に接続され、出力接地ポート129Aは基準レール27に接続されている。例として、1次コイル150の巻数が2次コイル152の巻数と同一であれば、出力側のポート125Aと129Aとの間の出力信号は入力側のポート123Aと127Aとの間の入力信号と実質的に同一となる。
【0040】
上述したように、装置124Aへの入力信号は、局部発振器の周波数、例として約500kHzと想定された周波数を有する、振幅変調された信号である。典型的には装置124Aは、このような高周波を伝達するがその他の周波数は阻止するように構成されることから、この装置は局部発振器の周波数における高周波用帯域通過フィルターとして機能する。したがって装置124Aは、50Hz又は60Hzの信号のような、通常、患者22からの漏れ電流を構成する低域周波数を、効果的に阻止する。
【0041】
絶縁装置124Bは、アナログ・ディジタル変換器(ADC)160及びディジタル・アナログ変換器(DAC)164を含む。光アイソレーター162が、ADC 160のディジタル出力をDAC 164のディジタル入力に接続する。ADC 160への入力は入力ポート123Bと入力接地ポート127Bとの間にあって、入力接地ポートは基準レール21に接続されている。DAC 164からの出力は出力ポート125Bと出力接地ポート129Bとの間にあって、出力接地ポートは基準レール27に接続されている。光アイソレーター162は、装置124Bの入力ポートと出力ポートとが相互に確実にガルバニック絶縁されるようにする。装置124Aについては、出力側のポート125Bと129Bとの間の出力信号が入力側のポート123Bと127Bとの間の入力信号と実質的に同一である。
【0042】
装置124Aについては、絶縁装置124Bを、局部発振器周波数に近い周波数を有する信号を通過させるがこの周波数よりも低域及び高域の周波数を阻止する帯域通過フィルターとして、構成し得る。
【0043】
図3に戻って、明確にするために、入力側のポート123と127との間の信号を絶縁装置124の1次信号、出力側のポート125と129との間の信号を絶縁装置の2次信号と呼ぶ。上述したように、絶縁装置124は、局部発振器122の周波数付近の周波数帯域を通過させ、この帯域外の周波数を阻止する帯域通過フィルターとして構成し得る。(更に、入力ポート123と出力ポート125との間、またレール21と27との間には、高い電気的DC抵抗、典型的にはギガオーム、又は時にはテラオームの程度にも至る抵抗が存在する。)出力側のポート125及び129からの2次信号が、復調器126への入力となる。
【0044】
復調器126はまた、局部発振器122から絶縁変圧器128を介して、局部発振器信号又は搬送波信号
【数3】
を受信する。(A’は変圧器128の2次側からの搬送波信号出力の振幅を表し、φは変圧器128による信号出力とこの変圧器への信号入力との間の位相差を表す。)変圧器128は絶縁装置124A(図4)と実質的に同様で、相互にガルバニック絶縁された1次コイル及び2次コイルを有する。図3に示すように、(また装置124Aについて説明したように、)変圧器128の1次コイルの入力接地ポートがレール21に接続され、変圧器128の2次コイルの出力接地ポートがレール27に接続されている。
【0045】
復調器126はその2つの入力信号を乗じて、レール27を基準とする出力信号y(t)を与える。y(t)の式は等式(2)によって与えられる。
【数4】
【0046】
式(2)は次のように書き換えることができる。
【数5】
【0047】
等式(3)は更に次のように書き換えることで、y(t)の式を3つの別々の項で示すことができる。
【数6】
ここで、上述のA’、C、及びφは一定の値を有する。
【0048】
等式(4)を見ると、次のようなことが分かる。
等式右辺の第1項、
【数7】
は、一定の値のみからなる。この第1項はy(t)のDC成分を表す。
等式右辺の第3項
【数8】
は搬送波周波数ωの2倍の周波数成分を有する。
第2項
【数9】
は定数項A’及びφと、ベースバンド信号m(t)との関数である。
【0049】
3項すべてにより与えられる値はレール27を基準とする。
【0050】
第2項は関係式(5)を用いて次のように書き換えることができる。
【数10】
ここでkは、
【数11】
に等しい定数である。
【0051】
典型的には、高容量キャパシタ130がy(t)のDC成分、すなわち等式(4)の第1項を阻止する。なお、一実施形態ではキャパシタ130は1,000μFの程度である。あるいは、DC成分は当該技術分野において既知の他のシステムによって阻止される。このようなシステムは1つ以上の他の電子装置を含むが、これに限定はされない。低域通過ファルター(LPF)はベースバンド周波数を通過させるが第3項で表されるような高域の周波数は阻止するように構成される。第3項がベースバンド周波数より著しく高い周波数(1MHzの程度)を有することから、LPF 132を、ベースバンド周波数、すなわち1kHzまでの周波数を効率的に通過させるが第3項の周波数のような高域の周波数は阻止するように、構成することができる。つまりフィルター132は、信号k・m(t)、すなわち入力信号m(t)の一次関数としてのレベルを有し、したがってベースバンド周波数のみを有する信号だけを、通過させる。信号k・m(t)は受信器の出力ポート134からの出力である。受信器24が、図2で上述したように接続部102を介して追跡モジュール32に接続されていれば、信号k・m(t)が接続部に伝送される。
【0052】
等式(5)に関して上述したように、kは定数である。当業者には明らかであるように、所与の受信器24についてのkの値は、既知のベースバンド信号をポート118に入力し、この既知の信号をポート134に生成される出力信号と比較することによって、求め得る。
【0053】
このkの値はメモリ44に格納され、処理装置42からの求めに応じて使用され得る。代替的又は追加的に、kの値を受信器24の専用メモリに格納し、これを受信器の専用プロセッサにおいて使用することによって出力ポート134にm(t)の値を生成するようにしてもよい。簡単にするために、受信器専用メモリ及び受信器専用プロセッサのいずれも、図には示していない。
【0054】
図3及び以上の説明を考察すれば、受信器24は、患者22から受信するベースバンド信号を測定することに加えて、電気的「分離装置」としても機能する。入力ポート118を含む受信器の前端が、出力ポート134を含む受信器の残りの部分から電気的に絶縁されているからである。患者22に直接接続されない受信器を電気的分離装置として利用する実施例を図6、7、及び8を参照して以下に説明する。
【0055】
図5は、本発明の代替的実施形態による受信器224の概略回路図である。以下に説明する差異を除き、受信器224の動作は受信器24(図1〜4)の動作とほぼ同様であり、受信器24及び224の双方において同じ参照番号によって示される要素はほぼ同様の構成及び動作を有する。受信器24とは異なり、受信器224は局部発振器122、絶縁変圧器128、又は変調器120を含まない。更に受信器24とは異なり、受信器224は入力ポート118においてベースバンド信号m(t)を受信しない。
【0056】
代わりに、受信器224は入力ポート118において、ベースバンド信号m(t)によって変調された搬送波信号を受信する。このタイプの変調された搬送波信号は、例えば患者22の組織の高周波アブレーションの最中に発生する。以下の説明においては、アブレーションモジュール35(図1)を用いて患者22にアブレーションが施されているものと、想定する。モジュールからの高周波アブレーションは、周波数ω(これは局部発振器122によって供給される周波数ωにほぼ等しい)を供給すると想定される発振器41を用いて実行される。この発振器からの高周波アブレーション電力が、プローブ38内の1つ以上の電極(図1には示さず)を介して患者22に印加される。高周波電力を患者の組織に印加することにより、(患者22の組織内の電気的活動に応じて生成される)ベースバンド信号が、アブレーション周波数信号を変調する。
【0057】
変調されたアブレーション周波数信号(本明細書ではこれをx’(t)で表す)がリード26に生じるが、これは受信器24の変調された信号x(t)に対応する。等式(1)に対応するx’(t)の式が、等式(6)で与えられる。
【数12】
ここでC’は、患者22に印加されるアブレーション電力の振幅に関連する数である。
【0058】
図5及び以下の説明において、受信器224のパラメーターy’(t)、A”、φ’、及びk’は、それぞれ受信器24のパラメーターy、A’、φ、及びkに相当する。
【0059】
受信器224の入力接地ポート228がレール27に接続され、このポートはまた、アブレーションモジュール接地電極39に接続される。したがって、アブレーションモジュールからの信号はレール27を基準とする。復調器126が入力搬送波信号ポート226から、典型的には電力出力ポート43から減衰を利用して得られる搬送波信号
【数13】
を受信する。受信器24について上述したように、復調器128からの信号y’(t)がキャパシタ130へと移動し、信号k’・m(t)(実質的にk・m(t)と同様)がポート134に出力される。
【0060】
受信器224において、k’の値は、パラメーターkを求める場合について上述したとほぼ同一の方法により決定し得る。典型的には、受信器224についてのk’の値は、アブレーション処置をシュミレーションすることによって、つまり、模擬組織を用い、既知の模擬ベースバンド信号を模擬組織に印加することによって、見出し得る。
【0061】
以上の開示では、1つのベースバンド受信器24又は224が患者22に接続され得る、いくつかの異なった構成を説明した。これらの構成は例示を目的としたものであることは当然で、その他の構成も当業者には明らかであろう。このような構成としては、ベースバンド受信器の出力が複数の異なるモジュール、例えば追跡モジュール32、アブレーションモジュール35、及び算定モジュール37に同時に印加される構成が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
更に、2つ以上のベースバンド受信器を直列に、例えば追跡モジュール32及びアブレーションモジュール35と直列に接続することによって、ベースバンド受信器によって実現される電気的絶縁又は分離が強化され得ることも当然である。この場合、第1の受信器が患者と第1のモジュールとの間に接続され、第2の受信器が第1のモジュールと第2のモジュールとの間に接続され得る。図6はこのような構成例を示す。
【0063】
図6は、本発明の一実施形態による、2つのベースバンド受信器の直列接続を示す概略図である。図に示したように、配列100において、第1の受信器24が患者22と追跡モジュール32との間に配置されることで、実質的に図1〜4に関して上述したと同様に、絶縁されたベースバンド信号が追跡モジュールに供給される。モジュール32は、その追跡出力をスクリーン48に供給する。加えて、追跡モジュール32はベースバンド信号を第2の受信器24に伝え、この第2の受信器が、絶縁されたベースバンド信号をアブレーションモジュール35に供給する。(アブレーションモジュール35はこのベースバンド信号を用いて、例えばこのアブレーションモジュールによって患者22に印加されるべきアブレーション電力のレベルを決定し得る。)典型的には、アブレーションモジュール35がレール27と非接続の接地電極39を有することができ、これによって2つのモジュールは完全に絶縁される。要するに、第1の受信器24が追跡モジュール32を患者22から絶縁し、第2の受信器24が追跡モジュール32をアブレーションモジュール35から絶縁する。
【0064】
図7は、本発明の一実施形態による、配列100内のモジュールの代替的な配列120を示す概略図である。配列120においては、アブレーションモジュール35が患者22に直接接続される。ベースバンド信号は、アブレーションモジュールから得られ、第1の受信器24を介して追跡モジュールに伝達されることから、第1の受信器がアブレーションモジュールを追跡モジュールから絶縁・分離する機能を果たす。配列120は、第2の受信器24がベースバンド信号を第3のモジュール122(これは例えばEEG記録計など、患者22に施される処置中に使用される任意のモジュールであってよい)に伝達することを示している。
【0065】
第2の受信器24はモジュール122を任意の先行するモジュール、例えば追跡モジュール32から絶縁する。図7に示した配列は、受信器24を隣接モジュール間に配置することによって、任意の数のモジュールに拡張し得ることは当然である。各受信器24は、それに接続するモジュール間を絶縁・分離する機能を果たす。
【0066】
図8は、本発明の一実施形態による、配列100及び120内のモジュールの更に代替的な配列130を示す概略図である。配列130においては、アブレーションモジュール35が患者22に直接接続され、単一の受信器24によって、すべての後続モジュールから分離されている。上述したように、受信器24はその入力ベースバンド信号を後続のモジュールに伝達する。例として、これらの後続モジュールは追跡モジュール32、モジュール122、及び更なるモジュール132、例えばEEG警報器などであると、想定する。図に示したように、後続モジュールはすべて、単一の受信器24の出力からベースバンド信号を受信するため、いずれもアブレーションモジュール35から絶縁されている。
【0067】
以上に例示したものの他にも、1つ以上の受信器24を絶縁用受信器として用いる配列は当業者には明らかであり、このような配列は本発明の範囲内に含まれるものと、想定される。
【0068】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかとなろう。その逆に、本発明の範囲は、上記に述べた異なる特性のすべてのものの組み合わせ及び一部のものの組み合わせを含み、更に上記の説明文を読むことで当業者によって想到されるであろう、先行技術には開示されていない変形例及び改変例をも含むものである。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) ベースバンド受信器であって、
ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号を受信するように構成された受信器入力ポートと、
前記ベースバンド信号で局部発振器信号を変調するように構成された変調器と、
絶縁装置であって、前記変調された局部発振器信号を該絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号を該絶縁装置の出力ポートに生成するように構成された、絶縁装置と、
前記変調された出力局部発振器信号を前記局部発振器信号で復調して前記ベースバンド信号を復元するように構成された復調器と、
を含む、受信器。
(2) 前記絶縁装置が、2次コイルからガルバニック絶縁された1次コイルを有する変圧器を含む、実施態様1に記載の受信器。
(3) 前記絶縁装置が、出力ポートからガルバニック絶縁された入力ポートを有する光電変換器を含む、実施態様1に記載の受信器。
(4) 前記入力ポートに結合されたアナログ・ディジタル変換器(ADC)と、前記出力ポートに結合されたディジタル・アナログ変換器(DAC)と、を含み、前記ADC及びDACが前記光電変換器に接続された、実施態様3に記載の受信器。
(5) 前記局部発振器信号を生成するように構成された局部発振器を含む、実施態様1に記載の受信器。
(6) 前記受信されたベースバンド信号が入力基準レールを基準とし、前記変調器によって変調された前記局部発振器信号が前記入力基準レールを基準とする、実施態様5に記載の受信器。
(7) 前記局部発振器信号が前記復調器へ入力され、出力基準レールを基準とし、前記復元されたベースバンド信号が前記出力基準レールを基準とする、実施態様5に記載の受信器。
(8) 前記変調器へ入力された前記局部発振器信号を前記復調器へ入力された前記局部発振器信号から電気的に絶縁するように構成された絶縁変圧器を含む、実施態様1に記載の受信器。
(9) 前記復調器に結合されベースバンド周波数より高い周波数を阻止するように構成された低域通過フィルターを含む、実施態様1に記載の受信器。
(10) 前記復調器からの前記復元されたベースバンド信号と前記受信器入力ポートで受信される前記ベースバンド信号を関連づけるパラメーターを格納するように構成されたプロセッサを含む、実施態様1に記載の受信器。
【0070】
(11) 前記復調器からの前記復元されたベースバンド信号を受信し、該復元されたベースバンド信号を、前記ヒト患者に対する電気信号伝送及び前記ヒト患者からの電気信号受信の少なくとも1つを行うように構成されたモジュールに供給するように構成された、受信器出力ポートを含む、実施態様1に記載の受信器。
(12) 前記モジュールが、前記ヒト患者からの追跡信号を受信して前記ヒト患者内のプローブを追跡するように構成された追跡モジュールを含む、実施態様11に記載の受信器。
(13) 前記モジュールが、アブレーション電力を前記ヒト患者に伝送して前記組織をアブレーションするように構成されたアブレーションモジュールを含む、実施態様11に記載の受信器。
(14) 前記復調器に結合され直流(DC)レベルを阻止するように構成された電子装置を含む、実施態様1に記載の受信器。
(15) ベースバンド受信器であって、
絶縁装置であって、ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号によって変調された局部発振器信号を該絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号を該絶縁装置の出力ポートに生成するように構成された、絶縁装置と、
前記変調された出力局部発振器信号を前記局部発振器信号で復調することによって前記ベースバンド信号を復元するように構成された復調器と、
を含む、ベースバンド受信器。
(16) 前記絶縁装置が、2次コイルからガルバニック絶縁された1次コイルを有する変圧器を含む、実施態様15に記載の受信器。
(17) アブレーション電力をアブレーション周波数で前記ヒト患者に伝送するように構成されたアブレーションモジュールを含み、該モジュールが、前記局部発振器信号を前記アブレーション周波数で前記復調器に供給するように構成された局部発振器を含む、実施態様15に記載の受信器。
(18) ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号を受信することと、
前記ベースバンド信号で局部発振器信号を変調することと、
前記変調された局部発振器信号を絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号を前記絶縁装置の出力ポートに生成することと、
前記変調された出力局部発振器信号を前記局部発振器信号で復調して前記ベースバンド信号を復元することと、
を含む、方法。
(19) 前記絶縁装置が、2次コイルからガルバニック絶縁された1次コイルを有する変圧器を含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記絶縁装置が、出力ポートからガルバニック絶縁された入力ポートを有する光電変換器を含む、実施態様18に記載の方法。
【0071】
(21) 前記受信されたベースバンド信号が入力基準レールを基準とし、前記ベースバンド信号を変調する前記局部発振器信号が前記入力基準レールを基準とする、実施態様18に記載の方法。
(22) 前記変調された出力局部発振器信号を復調する前記局部発振器信号が出力基準レールを基準とし、前記復元されたベースバンド信号が前記出力基準レールを基準とする、実施態様18に記載の方法。
(23) 前記ベースバンド信号を変調する前記局部発振器信号を、前記変調された出力局部発振器信号を復調する前記局部発振器信号から、電気的に絶縁することを含む、実施態様18に記載の方法。
(24) 前記復元されたベースバンド信号と前記受信されたベースバンド信号を関連づけるパラメーターを格納することを含む、実施態様18に記載の方法。
(25) 前記復元されたベースバンド信号を、前記ヒト患者に対する電気信号伝送及び前記ヒト患者からの電気信号受信の少なくとも1つを行うように構成されたモジュールに供給することを含む、実施態様18に記載の方法。
(26) 前記モジュールが、前記ヒト患者からの追跡信号を受信して前記ヒト患者内のプローブを追跡するように構成された追跡モジュールを含む、実施態様25に記載の方法。
(27) 前記モジュールが、アブレーション電力を前記ヒト患者に伝送して前記組織をアブレーションするように構成されたアブレーションモジュールを含む、実施態様25に記載の方法。
(28) ヒト患者の組織内の電気的活動に応じて生成されるベースバンド信号によって変調された局部発振器信号を、絶縁装置の入力ポートで受信し、それに応じて、変調された出力局部発振器信号を前記絶縁装置の出力ポートに生成することと、
前記変調された出力局部発振器信号を前記局部発振器信号で復調して前記ベースバンド信号を復元することと、
を含む、方法。
(29) 前記絶縁装置が、2次コイルからガルバニック絶縁された1次コイルを有する変圧器を含む、実施態様28に記載の方法。
(30) アブレーションモジュールからアブレーション電力をアブレーション周波数で前記ヒト患者に伝送することを含み、前記モジュールが、前記変調された出力局部発振器信号を復調するための前記局部発振器信号を前記アブレーション周波数で供給するように構成された局部発振器を含む、実施態様28に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8