特許第6067277号(P6067277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和化成工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000002
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000003
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000004
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000005
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000006
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000007
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000008
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000009
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000010
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000011
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000012
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000013
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000014
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000015
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000016
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000017
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000018
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000019
  • 特許6067277-車両用ドアの防水構造 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067277
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】車両用ドアの防水構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   B60J5/00 501E
   B60J5/00 501B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-177971(P2012-177971)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-34355(P2014-34355A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 準弥
(72)【発明者】
【氏名】岩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−203339(JP,A)
【文献】 実開平05−050120(JP,U)
【文献】 特開2004−176897(JP,A)
【文献】 特開2002−321570(JP,A)
【文献】 特開2006−076343(JP,A)
【文献】 特開2007−290589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーパネルに開けられているサービスホールを塞ぐためのカバー部材が、クリップによってインナーパネルに脱着可能に取付けられた車両用ドアの防水構造であって、
カバー部材が、インナーパネルに対向する外側においてクリップを取付けることが可能に設けられた座部と、座部と対応する箇所において両面に貫通し、かつ座部とは反対の内側から工具を挿入してクリップをインナーパネルから外すための工具用孔とを備え、クリップは、該クリップがカバー部材の座部に取付けられた状態で、この座部の側からカバー部材の工具用孔の周面に接触してシール機能を果たす皿と、皿の端面側に設けられた工具差込み部とを備え、カバー部材の座部は、工具用孔に対して庇のように位置し、ドア内部に浸入してカバー部材の外側から工具用孔に向かって落下する水の進路を変えるように構成されている車両用ドアの防水構造。
【請求項2】
インナーパネルに開けられているサービスホールを塞ぐためのカバー部材が、クリップによってインナーパネルに脱着可能に取付けられた車両用ドアの防水構造であって、
カバー部材が、インナーパネルに対向する外側および反対の内側の両面に貫通して開けられたクリップの取付け孔と、カバー部材の内側において取付け孔を囲うように設けられた水受けと、この水受けの内部からカバー部材の外側に通じる水抜き孔とを備え、クリップは、カバー部材に取付けられた状態において取付け孔をシールすることができるシール部を備え、カバー部材の水受けは、取付け孔を通過してカバー部材の内側に浸入する少量の水を受止めて水抜き孔からカバー部材の外側に排出するように構成されている車両用ドアの防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの防水構造に関し、詳しくはインナーパネルに開けられているサービスホールを塞ぐためのカバー部材が、クリップによってインナーパネルに脱着可能に取付けられた車両用ドアを対象とした防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアにおいては、インナーパネルとアウターパネルとの間の空間に各種の機器や機構が配線類と共に組込まれている。これらの機器等は、インナーパネルに開けられた作業用のサービスホールを利用して組込まれる。そして、サービスホールは、組込み作業の完了後にカバー部材によって塞がれる。
このような構造の車両用ドアを対象とした防水構造の一例が、特許文献1に開示されている。この技術では、サービスホールを塞ぐ樹脂製プレートがインナーパネルにインサート成形されている。この樹脂製プレートの役割は、インナーパネルとアウターパネルとの間のドア内部に入ってきた雨水などがサービスホールを通って車内側に浸入するのを防ぐ防水性能はもちろんのこと、サービスホールの透過音を遮音する防音性能、同じくサービスホールを通る塵埃を遮蔽する防塵性能などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−359131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インナーパネルのサービスホールを塞ぐためのカバー部材は、ドア内部の補修作業を行うために取外し可能であるのが好ましいが、特許文献1のインサート成形された樹脂製プレートは、その脱着について配慮されていない。
一方、カバー部材の取外し可能とした場合、前述したサービスホールの防水性能、防音性能および防塵性能を確保するために、カバー部材にパッキンが必要となり、その分、コストが高くなる。
また、カバー部材をインナーパネルに対してクリップを用いて脱着可能に取付ける構成では、通常はクリップをインナーパネルから外す際に用いる工具をクリップに向けて差込むための工具用孔がカバー部材に開けられる。そうすると、このカバー部材の工具用孔についても、インナーパネルのサービスホールと同様に防水性能、防音性能、防塵性能などの対策が必要になる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、インナーパネルに対してカバー部材をクリップによって脱着可能とし、それにもかかわらずシール用のパッキンを不要とし、かつ、カバー部材に開けられた工具用孔の防水性能、防音性能、防塵性能を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、インナーパネルに開けられているサービスホールを塞ぐためのカバー部材が、クリップによってインナーパネルに脱着可能に取付けられた車両用ドアの防水構造であって、カバー部材が、インナーパネルに対向する外側においてクリップを取付けることが可能に設けられた座部と、座部と対応する箇所において両面に貫通し、かつ座部とは反対の内側から工具を挿入してクリップをインナーパネルから外すための工具用孔とを備えている。クリップは、該クリップがカバー部材の座部に取付けられた状態で、この座部の側からカバー部材の工具用孔の周面に接触してシール機能を果たす皿と、皿の端面側に設けられた工具差込み部とを備えている。カバー部材の座部は、工具用孔に対して庇のように位置し、ドア内部に浸入してカバー部材の外側から工具用孔に向かって落下する水の進路を変えるように構成されている。
【0007】
第2の発明は、インナーパネルに開けられているサービスホールを塞ぐためのカバー部材が、クリップによってインナーパネルに脱着可能に取付けられた車両用ドアの防水構造であって、カバー部材が、インナーパネルに対向する外側および反対の内側の両面に貫通して開けられたクリップの取付け孔と、カバー部材の内側において取付け孔を囲うように設けられた水受けと、この水受けの内部からカバー部材の外側に通じる水抜き孔とを備えている。クリップは、カバー部材に取付けられた状態において取付け孔をシールすることができるシール部を備えている。カバー部材の水受けは、取付け孔を通過してカバー部材の内側に浸入する少量の水を受止めて水抜き孔からカバー部材の外側に排出するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明では、カバー部材においてクリップを取付ける座部が工具を挿入するための工具用孔に対して庇のように位置し、クリップの皿が工具用孔のシール機能を果たすことから、ドア内部に入ってきた水のうち、カバー部材の工具用孔に向かって落下する水は、座部によって落下方向が変えられてドアの下部から外へ排出され、かつ、クリップの皿によって工具用孔のさらなる防水性が高められ、加えて工具用孔の防音性および防塵性が確保される。したがって、インナーパネルに対してカバー部材をクリップによって脱着可能に取付ける構成であっても、カバー部材が防水用のパッキンを不要とし、かつ、工具用孔の防水性はもちろんのこと、防音性および防塵性を保持することができる。
【0009】
第2の発明では、カバー部材の内側において、水受けが取付け孔を囲っているとともに、クリップのシール部が取付け孔のシール機能を果たしていることから、ドア内部に入ってきた水のほとんどはクリップのシール部によって取付け孔を通過することが阻止され、仮に取付け孔を少量の水が通過したとしても、その水はカバー部材の水受けで受止められて水抜き孔からカバー部材の外側に流出する。また、クリップのシール部によって取付け孔の防音性および防塵性が確保される。これにより、インナーパネルに対してカバー部材をクリップによって脱着可能に取付ける構成であっても、カバー部材が防水用のパッキンを不要とし、かつ、取付け孔の防水性はもちろんのこと、防音性および防塵性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1におけるカバー部材の外形を表した平面図。
図2図1の一部を拡大して表した斜視図。
図3図1のA−A矢視方向の拡大断面図。
図4】実施の形態1におけるクリップを表した斜視図。
図5】同じくクリップを表した正面図。
図6】同じくクリップを表した側面図。
図7】同じくクリップを表した平面図。
図8】同じくクリップを表した底面図。
図9】実施の形態1のカバー部材をインナーパネルに取付けた状態の断面図。
図10】実施の形態1のクリップとクリップ孔との関係を表した概略図。
図11】実施の形態2におけるカバー部材の一部を表した斜視図。
図12図10を反対側から見た斜視図。
図13】実施の形態2におけるカバー部材の一部を表した断面図。
図14】実施の形態2におけるクリップを表した斜視図。
図15】同じくクリップを表した正面図。
図16】同じくクリップを表した側面図。
図17】同じくクリップを表した平面図。
図18】同じくクリップを表した底面図。
図19】実施の形態2のカバー部材をインナーパネルに取付けた状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
まず、本発明における実施の形態1を図1〜図10によって説明する。
図1および図9に示されている車両用ドアのインナーパネル30は、アウターパネル(図示省略)との間の空間に対する各種の機器や機構の組込み、またはメンテナンスを行うための複数もしくは単数のサービスホール32を有する。このサービスホール32は、その防水性、防音性および防塵性を保つためにカバー部材10によって塞がれる。また、インナーパネル30には、サービスホール32の周囲において4個のクリップ孔34が開けられている(図1)。これらのクリップ孔34は長方形で、後述するクリップ20のアンカー部24が結合される。
なお、図1において仮想線で示されているインナーパネル30は、カバー部材10よりも図面の手前側に位置しており、かつ、その外形は便宜的に示したもので、実際の形状とは異なる。
【0012】
カバー部材10は樹脂製の成形品であり、図9においてインナーパネル30と対向する外側の面には、インナーパネル30の各クリップ孔34と対応する箇所(四隅)においてクリップ20を取付けるための座部12がそれぞれ一体に成形されている(図1)。これらの座部12は、ドアの下方側が開放された形状になっており、その前面部にはクリップ20の基部22を取付けるための取付け孔12bがそれぞれ設けられている。この取付け孔12bは、丸孔形状で座部12の下側に向けてスリットで開放されている。
また、座部12における前面部の表面には、複数個(4個)の凸部12cが設けられている。これらの凸部12cは、後述のように座部12に取付けられたクリップ20の軸線回りの回転を規制する。
【0013】
カバー部材10は、各座部12と対応する箇所において両面に貫通する工具用孔14を有する。これらの工具用孔14は、座部12の取付け孔12bと同軸線上に位置しているとともに、座部12とは反対の内側から所定の工具を挿入することができる。なお、カバー部材10における外側面の周囲には、インナーパネル30との間のシール機能を果たすためのエプトシーラー16が設けられている。
【0014】
クリップ20は樹脂製であり、図4図8で示す外観形状をしている。このクリップ20の構成は、カバー部材10の座部12に取付ける基部22と、インナーパネル30のクリップ孔34に結合するアンカー部24とに大別される。
基部22は、平面形状が長方形の第1フランジ22aと、平面形状が円形の第2フランジ22bと、これらの間に位置する円柱形の頸部22cと、第2フランジ22bの端面側に設けられた皿22dとを有する。そして、皿22dが位置する側の基部22の端面中心には、六角レンチ等の工具を使用することができる工具差込み部22eが設けられている(図8)。第1フランジ22aと第2フランジ22bとの間隔は、座部12の前面部の板厚よりも僅かに大きい寸法に設定されている。また、頸部22cの外径は、座部12の取付け孔12bの内径よりも僅かに小さい寸法に設定されている。
【0015】
クリップ20のアンカー部24は、インナーパネル30のクリップ孔34に対して挿入可能な角柱形状をしているとともに、一対の弾性爪26を有する。アンカー部24の外形は、図10(A),(B)で示すように平断面における対角線上の二箇所に円弧部27を有する形状になっている。そこで、クリップ孔34に挿入されたアンカー部24を、図10(A)の状態から左右いずれか一方向(図面では時計回り方向)へほぼ90°回転させて図10(B)の状態にすることができる。
両弾性爪26は、図10(B)で示すようにクリップ孔34に対してその長辺と平行に位置した状態では自由に通過でき、図10(A)で示すように短辺と平行に位置した状態では挿入のみ可能である。つまり、両弾性爪26がクリップ孔34に対して図10(A)で示す状態で挿入されると、両弾性爪26はクリップ孔34に対して押し撓められながら通過した後、長辺側の孔縁に係合し、そのままではクリップ孔34からアンカー部24を抜取ることが不能となる。
【0016】
つづいて、インナーパネル30のサービスホール32をカバー部材10で塞ぐ手順について説明する。
まず、カバー部材10の各座部12にクリップ20をそれぞれ取付ける。具体的には、座部12の取付け孔12bに対し、スリットを通じてクリップ20における基部22の頸部22cを図面(図1、2等)の下方から差込む。これにより、座部12における前面の表側に第1フランジ22aが位置し、内側に第2フランジ22bが位置する(図9)。このときの第1フランジ22aは、座部12において図面(図1、2等)の上下に2個ずつ配置された凸部12cの間に位置している。これにより、座部12に対するクリップ20の軸線回りの回転が規制され、クリップ20は図9で示す回転位置、つまりアンカー部24の両弾性爪26がクリップ孔34の短辺と平行な位置に保持される。
また、座部12にクリップ20が取付けられた状態では、基部22の皿22dがカバー部材10の工具用孔14を被っている(図9)。これにより、工具用孔14の防水性はもちろんのこと、防音性および防塵性能が確保されている。
【0017】
つぎに、カバー部材10の各座部12に取付けられたクリップ20のアンカー部24をインナーパネル30の各クリップ孔34に挿入する。これにより、前述のようにアンカー部24の両弾性爪26がクリップ孔34を通過した後、長辺側の孔縁に係合する。その結果、カバー部材10がインナーパネル30に対してサービスホール32を塞いだ状態で取付けられる(図9)。なお、インナーパネル30に取付けられたカバー部材10のエプトシーラー16は、インナーパネル30の表面に押付けられてカバー部材10とインナーパネル30との間のシールを果たしている。
【0018】
ドア内部に組込まれている機器類のメンテナンスなどに際しては、カバー部材10をインナーパネル30から取外してサービスホール32を開放することが必要となる。その場合には、ドアトリムボード(図示省略)を外した後、カバー部材10の工具用孔14から挿入した六角レンチ等の工具をクリップ20の工具差込み部22eに嵌め合わせる。この工具によってクリップ20をその軸線回りに回転操作すると、基部22の第1フランジ22aが座部12の凸部12cを乗り越えるとともに、前述のようにアンカー部24を図10(A)の状態から左右いずれか一方向へほぼ90°回転させることができる。これにより、図10(B)で示すようにアンカー部24の両弾性爪26がインナーパネル30のクリップ孔34に対してその長辺と平行に位置する。そこで、アンカー部24をクリップ孔34から抜取り、カバー部材10をインナーパネル30から取外す。
【0019】
インナーパネル30のサービスホール32をカバー部材10で塞いだ状態において、ドア内部に入ってきた雨水などは、カバー部材10とインナーパネル30との間のエプトシーラー16を通過してカバー部材10の工具用孔14に向かって落下することがある。しかしながら、この落下する水は図9において点線の矢印で示すように座部12の外面12aに沿って落下方向が変えられ、工具用孔14に向かうことなくドアの下部から外へ排出される。また、工具用孔14はクリップ20における基部22の皿22dによってシールされていることから、この工具用孔14の防水性はもちろんのこと、防音性および防塵性が保持され、車内側への水の浸入、あるいは騒音や塵埃が入り込むことが防止される。
【0020】
つぎに、本発明における実施の形態2を図11図19によって説明する。
本実施の形態2におけるカバー部材10についても、前述した実施の形態1と同様にドアのインナーパネル30に開けられているサービスホール32を塞ぐためのものである。したがって、図11および図12で示す外形は簡略化したものであり、実際の形状とは異なる。また、実施の形態2のカバー部材10も、その複数箇所に取付けられるクリップ50によってドアのインナーパネル30に脱着可能に取付けられるとともに、インナーパネル30と対向する外側面の周囲には、実施の形態1で説明したエプトシーラー16が設けられる。
【0021】
本実施の形態2のカバー部材10には、インナーパネル30と対向する外側および反対の内側の両面に貫通する取付け孔40が開けられている。この取付け孔40は、カバー部材10にクリップ50の基部52を取付けるためのもので、大径孔40aと小径孔40bとを狭いスリットで連通させた形状になっている(図12)。
カバー部材10の内側には、取付け孔40を囲うように水受け42が一体に成形されている。この水受け42は、上方が開放された箱形状に設定されているとともに、取付け孔40の小径孔40bと同軸線上において工具用孔44が開けられている。この工具用孔44により、カバー部材10の内側から取付け孔40に向けて所定の工具を挿入することができる。
【0022】
クリップ50は、実施の形態1のクリップ20と同様に樹脂製であり、図14図187で示す外観形状をしている。このクリップ50は、カバー部材10の取付け孔40に取付ける基部52と、インナーパネル30のクリップ孔34に結合するアンカー部56とを備えている。
基部52は、平面形状が長方形のシール部52aと、平面形状が円形のフランジ52bと、これらの間に位置する円柱形の頸部52cと、アンカー部56の基端側に位置する皿52dとを有する。また、フランジ52bの端面側に、工具用ブロック54が設けられている。この工具用ブロック54は、その端面中心に設けられて六角レンチ等の工具を嵌め合わせることができる差込み部54aと、外周面に設けられてスパナ等の工具に対応できる六角部54bとを有する(図18)。
【0023】
基部52において、シール部52aとフランジ52bとの間隔は、カバー部材10の板厚よりも僅かに大きい寸法に設定されている。ただし、フランジ52bのシール部52aと対向する面には一対の突起52eがあり(図15および図16)、後述のように基部52をカバー部材10の取付け孔40に取付けたときに、突起52eの弾性によりシール部52aをカバー部材10の外側面に密着させる。
また、シール部52aはカバー部材10の取付け孔40を塞ぐ大きさに設定され、フランジ52bおよび工具用ブロック54は取付け孔40の大径孔40aを通過でき、小径孔40bは通過できない寸法に設定されている。また、頸部52cは、取付け孔40の大径孔40aからスリットを通って小径孔40bに移動できる外径に設定されている。
【0024】
クリップ50のアンカー部56は、クリップ20のアンカー部24と同様にインナーパネル30のクリップ孔34に対して挿入可能な角柱形状をしているとともに、一対の弾性爪58を有する。また、アンカー部56においても、その外側面の二箇所に円弧部59を有する形状になっており、このアンカー部56および両弾性爪58とクリップ孔34との関係は、実施の形態1の場合と同様に設定されている。
【0025】
実施の形態2のカバー部材10をインナーパネル30に取付ける場合は、カバー部材10の取付け孔40にクリップ50を取付ける。具体的には、カバー部材10の外側(水受け42の反対側)から取付け孔40の大径孔40aに、クリップ50における基部52のフランジ52bおよび工具用ブロック54を挿入した後、頸部52cを大径孔40aから小径孔40bに移動させる。これにより、基部52のシール部52aとフランジ52bとがカバー部材10をその両側から挟み付けた状態に位置し、かつ、シール部52aは取付け孔40の全体を塞いでカバー部材10の外側面に密着している。
なお、このときのクリップ50は、実施の形態1の場合と同様にアンカー部56の両弾性爪58がクリップ孔34の短辺と平行な位置に保持されている。
【0026】
つぎに、クリップ50のアンカー部56をインナーパネル30のクリップ孔34に挿入すると、両弾性爪58がクリップ孔34の孔縁に係合し、実施の形態1の場合と同様にカバー部材10がインナーパネル30に対してサービスホール32を塞いだ状態で取付けられる。また、クリップ50の皿52dがクリップ孔34の周囲に押付けられて密着し、このクリップ孔34のシールを果たしている(図19)。
【0027】
カバー部材10をインナーパネル30から取外す場合には、カバー部材10における水受け42の工具用孔44から挿入した六角レンチ等の工具を、クリップ50における工具用ブロック54の差込み部54aに嵌め合わせる。そして、実施の形態1の場合と同様に工具によってクリップ50をその軸線回りに90°回転させれば、アンカー部56の両弾性爪58がインナーパネル30のクリップ孔34に対してその長辺と平行に位置するので、アンカー部56をクリップ孔34から抜取り、カバー部材10をインナーパネル30から取外す。
なお、クリップ50を回転させるには、水受け42の上方開放部からスパナ等の工具を差込んで工具用ブロック54の六角部54bに嵌め合わせることでも操作可能である。したがって、場合によっては水受け42の工具用孔44を廃止することもできる。
【0028】
インナーパネル30のサービスホール32をカバー部材10で塞いだ状態において、ドア内部に入った雨水などがカバー部材10の取付け孔40に向かって落下してきても、そのほとんどはクリップ50のシール部52aによって受止められる。したがって、雨水などが取付け孔40を通過してカバー部材10の内側に入ることは阻止される。
仮に少量の水が取付け孔40を通過したとしても、その水は水受け42で受止められて直ぐに水抜き孔46からカバー部材10の外側に流出する。
また、シール部52aによって取付け孔40に対する防音性および防塵性が保持される。したがって、実施の形態2においても、ドア内部に入ってきた水が取付け孔40から車内側に浸入することは防止されるとともに、この取付け孔40の防音性および防塵性が保持される。
【符号の説明】
【0029】
10 カバー部材
12 座部
14 工具用孔
20 クリップ
22d 皿
30 インナーパネル
32 サービスホール
40 取付け孔
42 水受け
46 水抜き孔
50 クリップ
52a シール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19