特許第6067286号(P6067286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6067286車両、荷役システム、制御装置、荷役方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067286
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】車両、荷役システム、制御装置、荷役方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20170116BHJP
   B60G 17/018 20060101ALI20170116BHJP
   B60G 13/10 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   B60G17/015 C
   B60G17/018
   B60G13/10
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-190493(P2012-190493)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-46764(P2014-46764A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田近 秀騎
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−047836(JP,A)
【文献】 特開2010−235223(JP,A)
【文献】 特開2001−121938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上輸送用コンテナを積載する車両であって、エアサスペンションを構成するエアベローズを有し、前記エアベローズ内の空気圧を調整することで車高を一定に保つように制御する車両において、
コンテナヤードに設けられた路側装置から積載するコンテナの重量情報を受信する受信手段と、
受信したコンテナの重量情報からコンテナが積載されたときの前記エアベローズにかかる荷重の増加分を空積時に推定する荷重増加分推定手段と、
前記荷重増加分推定手段が荷重の増加分を推定したときの車高よりも車高が高くならないように車高の高さを制限する車高制限手段と、
前記車高制限手段により車高の高さを制限しつつ前記荷重増加分推定手段により推定された荷重の増加分を支持可能な空気圧となるように前記エアベローズ内の空気圧を調整する空気圧調整手段と、
を有し、
前記車高制限手段は、前記コンテナが積載されると車高の高さの制限を解除する、
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両において、
前記車高制限手段は、荷重がかかるシャーシに取り付けられ、車高の増減と共に伸縮するショックアブソーバの伸長を抑制する、
ことを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項2記載の車両において、
前記車高制限手段は、前記ショックアブソーバが伸長を抑制する際の抑制力の減少を検知して前記コンテナの積載を検知する、
ことを特徴とする車両。
【請求項4】
海上輸送用コンテナを車両に積載するコンテナヤードに、
前記コンテナを車両に積載する荷役装置と、
前記コンテナを積載する車両に路車間通信によって前記コンテナ積載前に積載するコンテナの重量情報を送信する路側装置と
を備え、
前記コンテナを積載する車両は、
エアサスペンションを構成するエアベローズと、
コンテナヤードに設けられた路側装置から積載するコンテナの重量情報を受信する受信手段と、
受信したコンテナの重量情報からコンテナが積載されたときの前記エアベローズにかかる荷重の増加分を空積時に推定する荷重増加分推定手段と、
前記荷重増加分推定手段が荷重の増加分を推定したときの車高よりも車高が高くならないように車高の高さを制限する車高制限手段と、
前記車高制限手段により車高の高さを制限しつつ前記荷重増加分推定手段により推定された荷重の増加分を支持可能な空気圧となるように前記エアベローズ内の空気圧を調整する空気圧調整手段と、
を有し、
前記車高制限手段は、前記コンテナが積載されると車高の高さの制限を解除する、
ことを特徴とする荷役システム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両に搭載され、
前記荷重増加分推定手段の演算機能と、
前記車高制限手段の制御機能と、
前記空気圧調整手段の制御機能と、
を有する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
海上輸送用コンテナを積載する車両であって、エアサスペンションを構成するエアベローズを有し、前記エアベローズ内の空気圧を調整することで車高を一定に保つように制御する車両の制御装置が実行する制御方法において、
コンテナヤードに設けられた路側装置から積載するコンテナの重量情報を受信する受信ステップと、
受信したコンテナの重量情報からコンテナが積載されたときの前記エアベローズにかかる荷重の増加分を空積時に推定する荷重増加分推定ステップと、
前記荷重増加分推定ステップの処理が荷重の増加分を推定したときの車高よりも車高が高くならないように車高の高さを制限する車高制限ステップと、
前記車高制限ステップの処理により車高の高さを制限しつつ前記荷重増加分推定ステップの処理により推定された荷重の増加分を支持可能な空気圧となるように前記エアベローズ内の空気圧を調整する空気圧調整ステップと、
を有し、
前記車高制限ステップの処理は、前記コンテナが積載されると車高の高さの制限を解除するステップを有する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
情報処理装置に、請求項記載の制御装置の機能を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、荷役システム、制御装置、荷役方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、バスなどの旅客車両に限らず貨物車両にもエアサスペンションが普及している。エアサスペンションは、複数のエアベローズによって構成され、エアベローズ内の空気圧を調整することによって、車高を調整することができる。そこでエアサスペンションを有する貨物車両では、空積時と定積時とでエアベローズの空気圧を変えることにより、車高を一定に保つように制御している。
【0003】
また、特許文献1では、貨物車両に積載されていたコンテナが貨物車両から降ろされる際に、貨物車両の急激な車高の変化を抑えるために、荷台とこれを支えるフレームとの間にショックアブソーバを配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−11132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、エアサスペンションを有する貨物車両では、積載重量に応じてエアベローズの空気圧を調整し、車高を変えているが、車高の変更には、所定の時間を要する。たとえば、海上輸送用などのコンテナを積載して陸送する貨物車両では、コンテナの積み降ろしに伴って、コンテナの重量分の変化がごく短時間のうちに発生する。このようなごく何時間のうちに発生する貨物の重量変化に対し、エアベローズ内の空気圧の調整は追いつかない。
【0006】
たとえば、多数のコンテナを次々に多数の貨物車両に積載するコンテナヤードなどの荷役作業では、効率良く多数の貨物車両への積載を短時間に完了したい。それにも係わらず、先に貨物の積載を完了した貨物車両が車高調整を行っている間は、次の貨物車両は順番を待たざるを得ない状況である。
【0007】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、貨物を積載する際の車高調整に要する時間を短縮し、荷役作業の効率化を図ることができる車両、荷役システム、制御装置、荷役方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの観点は車両であり、海上輸送用コンテナを積載する車両であって、エアサスペンションを構成するエアベローズを有し、エアベローズ内の空気圧を調整することで車高を一定に保つように制御する車両において、コンテナヤードに設けられた路側装置から積載するコンテナの重量情報を受信する受信手段と、受信したコンテナの重量情報からコンテナが積載されたときのエアベローズにかかる荷重の増加分を空積時に推定する荷重増加分推定手段と、荷重増加分推定手段が荷重の増加分を推定したときの車高よりも車高が高くならないように車高の高さを制限する車高制限手段と、車高制限手段により車高の高さを制限しつつ荷重増加分推定手段により推定された荷重の増加分を支持可能な空気圧となるようにエアベローズ内の空気圧を調整する空気圧調整手段と、を有し、車高制限手段は、コンテナが積載されると車高の高さの制限を解除するものである。
【0009】
たとえば、車高制限手段は、荷重がかかるシャーシに取り付けられ、車高の増減と共に伸縮するショックアブソーバの伸長を抑制するものである。
【0010】
また、このときに、車高制限装置は、ショックアブソーバが伸長を抑制する際の抑制力の減少を検知してコンテナの積載を検知できる。
【0012】
本発明のさらに他の観点は荷役システムであり、海上輸送用コンテナを車両に積載するコンテナヤードに、コンテナを車両に積載する荷役装置と、コンテナを積載する車両に路車間通信によってコンテナ積載前に積載するコンテナの重量情報を送信する路側装置とを備え、コンテナを積載する車両は、エアサスペンションを構成するエアベローズと、コンテナヤードに設けられた路側装置から積載するコンテナの重量情報を受信する受信手段と、受信したコンテナの重量情報からコンテナが積載されたときのエアベローズにかかる荷重の増加分を空積時に推定する荷重増加分推定手段と、荷重増加分推定手段が荷重の増加分を推定したときの車高よりも車高が高くならないように車高の高さを制限する車高制限手段と、車高制限手段により車高の高さを制限しつつ荷重増加分推定手段により推定された荷重の増加分を支持可能な空気圧となるようにエアベローズ内の空気圧を調整する空気圧調整手段と、を有し、車高制限手段は、コンテナが積載されると車高の高さの制限を解除するものである。
【0013】
本発明のさらに他の観点は制御装置であり、本発明の車両に搭載され、荷重増加分推定手段の演算機能と、車高制限手段の制御機能と、空気圧調整手段の制御機能と、を有する制御装置である。
【0014】
本発明のさらに他の観点は制御方法であり、海上輸送用コンテナを積載する車両であって、エアサスペンションを構成するエアベローズを有し、エアベローズ内の空気圧を調整することで車高を一定に保つように制御する車両の制御装置が実行する制御方法において、コンテナヤードに設けられた路側装置から積載するコンテナの重量情報を受信する受信ステップと、受信したコンテナの重量情報からコンテナが積載されたときの前記エアベローズにかかる荷重の増加分を空積時に推定する荷重増加分推定ステップと、荷重増加分推定ステップの処理が荷重の増加分を推定したときの車高よりも車高が高くならないように車高の高さを制限する車高制限ステップと、車高制限ステップの処理により車高の高さを制限しつつ荷重増加分推定ステップの処理により推定された荷重の増加分を支持可能な空気圧となるように前記エアベローズ内の空気圧を調整する空気圧調整ステップと、を有し、車高制限ステップの処理は、コンテナが積載されると車高の高さの制限を解除するステップを有するものである。
【0015】
本発明のさらに他の観点はプログラムであり、情報処理装置に、本発明の制御装置の機能を実現させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貨物を積載する際の車高調整に要する時間を短縮し、荷役作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る連結車の全体構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る荷役システムの全体構成図である。
図3図1の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4図3のステップS2の推定式を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る連結車1を図1に示す。連結車1は、図1に示すように、牽引車2と被牽引車3とがカプラ4を介して連結された車両である。牽引車2は、不図示のエンジンを運転室下部に搭載し、非駆動輪である前輪5を有し、駆動輪である後輪6を牽引車シャーシ7に有する。被牽引車3は、2軸の車輪8,9を荷台としての被牽引車シャーシ10の後方に有し、被牽引車3の前方は、カプラ4を介して牽引車シャーシ7に脱着自在に連結されている。
【0019】
なお、本実施の形態では、車両の一例としてコンテナを積載するための連結車1を例示したが、これは貨物がコンテナであり、貨物の積み降ろし時間よりも車高調整時間の方が長い時間を要する好例であるためである。よって、本発明の適用範囲を連結車1に限定するものではない。本発明の主旨は、貨物車両における車高調整時間の短縮であるので、車高調整機能を有するあらゆる貨物車両に本発明は適用できる。
【0020】
連結車1は、エアサスペンションを構成するエアベローズ11を有する。エアベローズ11は、空気圧センサ12を有する。エアベローズ11は、不図示の牽引車2の下部フレームに取り付けられたサポートビーム13上に配置される。下部フレームは、後輪6の車軸等の構成部材を支えるフレーム部材である。サポートビーム13上には、エアベローズ11の他に、ショックアブソーバ14およびハイトセンサ15が配置されている。
【0021】
ショックアブソーバ14は、下部フレームに取り付けられたサポートビーム13に一端が固定され、カプラ4等の構成部材を支える牽引車シャーシ7を構成する不図示の上部フレームに他端が固定される。ショックアブソーバ14によれば、車高の変化に際し、牽引車シャーシ7とサポートビーム13との間の距離が急激に変化するのを避けることができる。ショックアブソーバ14の内部機構は、たとえばショックアブソーバ14の内部に充填されたオイルがショックアブソーバ14の内部を流動する際の粘性流動抵抗によって伸長方向または伸縮方向の動きが緩和されるものである。
【0022】
また、ショックアブソーバ14は、外部からの制御によって、伸長方向への伸びを抑制する機構を有する。このような機構は、たとえば、ショックアブソーバ14の内部に充填されたオイルの流動を、電磁弁を閉じることなどによって抑制することで実現することができる。
【0023】
さらに、ショックアブソーバ14は、その伸長方向の伸びの抑制力を検知する荷重センサ14aを有する。ショックアブソーバ14は、牽引車シャーシ7に連結されているので、牽引車シャーシ7に荷重が加わると、伸長方向の伸びの抑制力は減ぜられる。荷重センサ14aは、このようにショックアブソーバ14の伸長方向の伸びの抑制力を検知することによって、牽引車シャーシ7の荷重の状態を検知できる。
【0024】
ショックアブソーバ14の伸長方向の伸びの抑制力を検知する具体例を示すと、たとえば、ショックアブソーバ14内のオイルの流動を抑制することで、伸長方向への伸びを抑制する構造であれば、貨物(コンテナ)が被牽引車シャーシ10に積載されたことによって流動が抑制されるので、ショックアブソーバ14の伸長方向の伸びの抑制力は減少する。すなわちオイルの油圧を検知することにより抑制力を検知できる。
【0025】
ハイトセンサ15は、サポートビーム13に一端が固定され、牽引車シャーシ7に他端が固定され、上記一端と上記他端との間の距離を車高として検出する。
【0026】
エアベローズ11には、空気配管16を介して空気タンク17から空気が供給される。なお、空気タンク17には、不図示のコンプレッサから外気が供給され、常時、ほぼ一定の空気圧を保つように不図示のECU(Electric Control Unit)によって、制御されている。
【0027】
空気配管16の途中には、制御装置18によって開状態または閉状態が制御される電磁弁19が配設される。電磁弁19が開状態になると空気タンク17とエアベローズ11との間が連通し、空気タンク17の空気がエアベローズ11に供給される。一方、電磁弁19が閉状態になると空気タンク17とエアベローズ11との間が遮断される。このときに、エアベローズ11に接続されている不図示の排気弁が開状態に制御されると、エアベローズ11内の空気は大気中に放出されてエアベローズ11内の空気の圧力は低下する。
【0028】
制御装置18は、空気圧センサ12、荷重センサ14a、ハイトセンサ15、および車側装置20から伝達される情報を入力し、ショックアブソーバ14の伸長抑制の制御およびエアベローズ11の空気圧の制御を実施する。なお、制御装置18は、情報処理装置の一例であり、予めインストールされている所定のプログラムを情報処理装置が実行することによって、その情報処理装置に制御装置18の機能が実現される。たとえば情報処理装置は、メモリ、CPU(Central Processing Unit)、入出力ポートなどを有する。情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、情報処理装置には、制御装置18の機能が実現される。なお、上述したCPUの代わりにASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などを用いてもよい。
【0029】
車側装置20は、路側装置21と無線信号によって交信する。これにより、車側装置20には、連結車1にこれから積載予定の貨物(コンテナ)の重量の情報が路側装置21から伝達される。
【0030】
図2は、連結車1に対して荷役作業を行う荷役場に設けられる荷役システム30の全体構成図である。荷役場は、入口ゲート31、出口ゲート32、荷役装置33、およびコンテナ置場34を有する。上述した路側装置21は、荷役装置33よりも連結車1の進行方向手前に配置される。荷役装置33は、たとえばクレーンである。このように、荷役システム30は、連結車1に対し、路車間通信によって連結車1に積載貨物の重量情報を送信する路側装置21と、連結車1に貨物を積載する荷役装置33と、を有する。
【0031】
次に、制御装置18の動作を図3のフローチャートを参照しながら説明する。図3のフローチャートにおいて、「START」の条件は、連結車1が運行中であり、制御装置18の機能を実現するためのプログラムを情報処理装置が実行し、制御装置18の機能が情報処理装置に実現されている状態という条件である。このような「START」の条件が満たされると、フローは、ステップS1に進む。
【0032】
ステップS1において、制御装置18は、車側装置20が路側装置21からコンテナ重量の情報を受信したか否かを判定する。ステップS1において、コンテナ重量の情報を受信したと判定されると、フローは、ステップS2に進む。一方、ステップS1において、コンテナ重量の情報を受信していないと判定されると、フローは、ステップS1を繰り返す。
【0033】
ステップS2において、制御装置18は、コンテナ積載後の後輪荷重増加分ΔMrを推定する。すなわち、制御装置18は、所定の重量の貨物が積載されたときのエアベローズ11にかかる荷重の増加分を空積時に推定する。後輪荷重増加分ΔMrは、以下のようにして計算する。以下に示すパラメータの意味は、図4を参照しながら説明する。図4に示すように、
Lwb1:牽引車2の前輪5の車軸の軸心と後輪6の車軸の軸心との間のホイールベース
Lwb2:被牽引車3のカプラ4の中心と車輪8の車軸の軸心と車輪9の車軸の軸心との中間点との間のホイールベース
Lof1:カプラ4の中心と後輪6の車軸の軸心との間のオフセット
Lof2:カプラ4の中心とコンテナ搭載スペースの中心(すなわちコンテナの中心)との間のオフセット
Mcon:コンテナ重量
ΔM5th:第5輪荷重
としてパラメータを設定する。
【0034】
このときに、
ΔMr=〔(Lwb1−Lof1)/Lwb1〕×ΔM5th
ΔM5th=〔(Lwb2−Lof2)/Lwb2〕×Mcon
であるので、
ΔMr=〔(Lwb1−Lof1)/Lwb1〕×
〔(Lwb2−Lof2)/Lwb2〕×Mcon …(1)
として後輪荷重増加分ΔMrを求めることができる。
【0035】
上式(1)によれば、コンテナ重量Mcon以外のパラメータは、その値が予め分かっているので、制御装置18は、
〔(Lwb1−Lof1)/Lwb1〕×〔(Lwb2−Lof2)/Lwb2〕…(2)
の値については、予め計算した結果をメモリ内に格納しておくことができる。たとえば、式(2)の計算結果を「A」とすれば、単に、「A×Mcon」を計算することにより、式(1)の推定結果を得ることができる。
【0036】
このようにして制御装置18は、車側装置20からコンテナ重量の情報を取得することにより、後輪荷重増加分ΔMrを推定する。ステップS2において、後輪荷重増加分ΔMrが推定されると、フローは、ステップS3に進む。
【0037】
ステップS3において、制御装置18は、ショックアブソーバ14の伸長を抑制する。すなわち、連結車1は、貨物の積載前の空積時には、エアサスペンションが車高を既に調整完了している状態であり、被牽引車シャーシ10上の貨物積載面は水平状態を保っている。このときに、制御装置18は、ステップS2で荷重の増加分を推定したときの車高よりも車高が高くならないように、ショックアブソーバ14の伸長を抑制することにより車高を制限する。ステップS3において、ショックアブソーバ14の伸長が抑制されると、フローは、ステップS4に進む。
【0038】
ステップS4において、制御装置18は、電磁弁19を開状態に制御し、空気タンク17の空気をエアベローズ11に供給することで、荷重センサ14aの出力がステップS2で推定した後輪荷重増加分ΔMrとなるまでエアベローズ11内の空気圧を加圧する。すなわち、ステップS3の処理により車高の高さを制限しつつステップS2の処理により推定された荷重の増加分を支持可能な空気圧となるようにエアベローズ11内の空気圧を調整する。ステップS4において、エアベローズ11内の空気圧が後輪荷重増加分ΔMrまで加圧され、制御装置18が電磁弁19を閉状態に制御して加圧を終了すると、フローは、ステップS5に進む。
【0039】
ステップS5において、制御装置18は、荷重センサ14aの出力が減少したか否かを判定する。荷重センサ14aの出力が減少したならば、それはエアベローズ11の圧力によるショックアブソーバ14の伸長方向への抑制力が、貨物(コンテナ)が被牽引車シャーシ10に積載されたことによって減じたことを示すものである。ステップS5において、荷重センサ14aの出力が減少したと判定されると、フローは、ステップS6に進む。一方、ステップS5において、荷重センサ14aの出力が減少していないと判定されると、フローは、ステップS5を繰り返す。
【0040】
ステップS6において、制御装置18は、ショックアブソーバ14の伸長方向への抑制を解除して処理を終了する(END)。
【0041】
このように、所定の重量の貨物が積載されたときのエアベローズ11にかかる荷重の増加分を空積時に推定し、荷重の増加分を推定したときの車高よりも車高が高くならないように車高の高さを制限し、車高の高さを制限しつつ推定された荷重の増加分を支持可能な空気圧となるようにエアベローズ11内の空気圧を調整し、貨物が積載されると車高の高さの制限を解除することにより、貨物を積載する際の車高調整に要する時間を短縮し、荷役作業の効率化を図ることができる。
【0042】
たとえば荷役装置33が連結車1にコンテナを積載する以前に、連結車1は、予めエアベローズ11の空気圧を高めているので、連結車1にコンテナが積載されても連結車1の車高に変化はない。これにより、連結車1は、コンテナが積載された直後に、発進することが可能になる。これによれば、荷役の順番を待つ後続車の待ち時間は、荷役装置33が先行車にコンテナを積載するのに要する時間だけになる。このようにして、荷役作業の効率化を図ることができる。
【0043】
特に、コンテナを被牽引車シャーシ10に積載する際には、被牽引車シャーシ10の積載面が水平であることが要求される。すなわち、コンテナの角部に設けられる隅金具には、被牽引車シャーシ10の積載面に設けられる突起と係合してコンテナを固定するための孔が設けられている。クレーン等によって水平に降ろされるコンテナの隅金具に設けられる孔と、被牽引車シャーシ10の積載面上に設けられる突起とが確実に係合するためには、被牽引車シャーシ10の積載面が水平を保つ必要がある。
【0044】
連結車1では、エアベローズ11内の空気圧を調整するのに先立って、車高の高さを制限するので、エアベローズ11内の空気圧が上昇しても車高が変わらず、空気圧の上昇以前に保たれている牽引車シャーシ7と、これに連結される被牽引車シャーシ10の水平状態もそのまま良好に保たれる。したがって、上述のように、コンテナを被牽引車シャーシ10に積載する際に、被牽引車シャーシ10の積載面は水平を保ったままの状態にできる。これによりコンテナを被牽引車シャーシ10上の積載面上に確実に固定することができる。また、このことによっても荷役作業の効率化を図ることができる。
【0045】
上述の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り、様々に変更が可能である。たとえば、上述の実施の形態では、ショックアブソーバ14が備える荷重センサ14aによって、貨物の積載状態を検知すると説明したが、貨物の積載状態の検知はどのようにしてもよい。他の例として、たとえば、カプラ4の第5輪荷重を検知するセンサを設けてもよい。または、貨物積載時に生じる牽引車2の振動を検知する振動センサを設けてもよい。あるいは、ハイトセンサ15によって、貨物積載時に生じる牽引車2の振動を、牽引車2の前後または左右の高さが短時間内に頻繁に変化する現象として検知してもよい。もしくは、被牽引車3の側に貨物の積載を検知する手段を設けてもよい。この例として、たとえば、被牽引車シャーシ10の貨物の積載面に、リミットスイッチまたは圧電スイッチのような検出スイッチを設け、貨物の重みによってこのスイッチが押下されたことで貨物の積載を検知してもよい。あるいは、被牽引車シャーシ10の貨物の積載箇所に、光電スイッチまたは近接スイッチのような非接触スイッチを設け、貨物がこれらの非接触スイッチの検知範囲に入ったことで貨物の積載を検知してもよい。もしくは、牽引車2または被牽引車3のいずれかに小型のカメラを取り付け、画像解析によって、貨物が積載されたことを検知してもよい。
【0046】
また、上述の実施の形態では、図3のフローチャートのステップS1で、路車間通信によって、制御装置18が車側装置20から貨物の重量情報を取得する例を説明したが、これは貨物の重量情報が未知である場合の例である。一方、貨物の重量情報が既知である場合には、ステップS1およびステップS2の処理は省略できる。
【0047】
たとえば運搬する貨物の重量が常に同じであれば、制御装置18が貨物の重量情報を新たに取得する必要はなく、制御装置18のメモリに予め貨物の重量情報を記憶しておけばよい。または、運搬する貨物の重量が貨物の識別子によって特定される場合には、制御装置18は、制御装置18のメモリに識別子と積載重量との対応関係を記録したテーブル等を記憶しておけば、貨物の識別子の情報を取得することにより、貨物の重量の情報を間接的に取得することができる。
【0048】
また、路車間通信以外の手段によって、制御装置18が貨物の重量情報を取得してもよい。たとえば個々のコンテナに重量情報が記録されたバーコードまたはICタグなどを貼り付けておき、制御装置18には、これらの読み取り装置を設けるようにしてもよい。または、制御装置18がネットワークを介して通信を行う通信装置を搭載していれば、ネットワークを介して貨物の重量情報を取得することができる。なお、ネットワークとは、インターネット、イントラネット、携帯電話網またはLAN(Local Area Network)などである。
【0049】
また、制御装置18を構成する情報処理装置が実行するプログラムは、制御装置18の出荷前に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、制御装置18の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、プログラムの一部が、制御装置18の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。制御装置18の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されるプログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0050】
また、プログラムは、情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0051】
このように、情報処理装置とプログラムによって制御装置18の機能を実現することにより、大量生産や仕様変更(または設計変更)に対して柔軟に対応可能となる。
【0052】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…連結車、2…牽引車、3…被牽引車、7…牽引車シャーシ、10…被牽引車シャーシ、11…エアベローズ(空気圧調整手段の一部)、12…空気圧センサ、13…サポートビーム、14…ショックアブソーバ(車高制限手段の一部)、15…ハイトセンサ、18…制御装置(荷重増加分推定手段、車高制限手段の一部、空気圧調整手段の一部)、20…車側装置(荷重増加分推定手段の一部)、21…路側装置、30…荷役システム、33…荷役装置
図1
図2
図3
図4