(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067327
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】扁平管製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 53/06 20060101AFI20170116BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20170116BHJP
F28F 1/42 20060101ALI20170116BHJP
B21D 51/16 20060101ALI20170116BHJP
B21D 5/01 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
B21D53/06 Z
F28F1/02 A
F28F1/42 A
B21D51/16 Z
B21D5/01 Q
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-237552(P2012-237552)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-87804(P2014-87804A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石森 崇
(72)【発明者】
【氏名】岡野 雅行
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−122778(JP,A)
【文献】
特開平11−063872(JP,A)
【文献】
特開2003−136142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 53/02−53/08
B21D 51/16
B21D 5/01
F28F 1/02
F28F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外面に凹凸形状を備えた扁平管を製造する方法であって、金属製の薄板に扁平管の展開形状の切り込みを入れ且つその切り込みを入れる際に前記扁平管の展開形状における幅方向の中途部を前記薄板と接合させたまま残しておき、前記扁平管の展開形状の範囲内に凹凸形状を加工してから、上下段の金型を用いて前記扁平管の展開形状の範囲を前記未切除の中途部が起こす範囲に挟まれた状態で前記薄板から切り起こし片として切り起こし、その切り起こし片の先端部同士を閉じ合わせて全体を扁平管として成形し、上下段の金型を用いて前記扁平管の展開形状の範囲を前記薄板から起こす工程の後で、前記未切除の中途部を前記薄板から切り離して扁平管を得ることを特徴とする扁平管製造方法。
【請求項2】
未切除の中途部を薄板から切り離す前に切り起こし片の先端部同士の閉じ合わせ部分を接合することを特徴とする請求項1に記載の扁平管製造方法。
【請求項3】
未切除の中途部を薄板から切り離した後に切り起こし片の先端部同士の閉じ合わせ部分を接合することを特徴とする請求項1に記載の扁平管製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平管製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、シェルアンドチューブ型の熱交換器等においては、複数本の伝熱管をシェルにより抱持して、伝熱管内を流れる一次媒体と、シェル内を流れる二次媒体とを熱交換させるようにしているが、前記伝熱管の外周面側をスパイラル溝として凹ませることで反転形状として内周面側にスパイラル突起を形成し、伝熱管内を流れる一次媒体を旋回流として該一次媒体の伝熱管内周面に対する接触頻度や接触距離を増加させて熱交換効率を向上することが下記の特許文献1や特許文献2等として既に提案されている。
【0003】
一方、このような複数本の伝熱管を平行に並べてシェル内に収容する構造では、単位体積当たりの交換熱量が小さいために熱交換器の全体構造が大きくなり、機器類への搭載性が悪くなるという課題があったため、
図7に一例を示す如く、複数本の円管を互いに近接させて平面状に並べ且つその相互間の近接部位を連通部として接続した如き形状の扁平管aを形成し、該扁平管aの前記円管に相当する円管部bの内周面に該円管部bの中心軸Oと同心の螺旋軌道に沿うように旋回流形成突起cを形成し、前記各円管部bに個別に媒体dの旋回流を形成し得るように構成することも検討され始めている(特願2011−220778号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−345925号公報
【特許文献2】特開2001−254649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の如き
図7の扁平管aに限らず、内外面に凹凸形状を備えた扁平管aを製造するにあたっては、その凹凸形状を潰したり歪ませたりすることなく扁平管aに成形することが難しく、この種の扁平管aを確実に製造しようとするならば、該扁平管aを上下に半割り状に二分割した形状のものを夫々個別に製造して接合する手法が一般的であるが、そのような手法では、扁平管aの幅方向両側に継ぎ目部分が二つできてしまい、両方の継ぎ目部分を夫々溶接等で接合しなければならないことから製造コストの高騰を招くことが懸念されている。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来より製造コストを削減することが可能な扁平管製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内外面に凹凸形状を備えた扁平管を製造する方法であって、金属製の薄板に扁平管の展開形状の切り込みを入れ且つその切り込みを入れる際に前記扁平管の展開形状における幅方向の中途部を前記薄板と接合させたまま残しておき、前記扁平管の展開形状の範囲内に凹凸形状を加工してから
、上下段の金型を用いて前記扁平管の展開形状
の範囲を前記未切除の中途部
が起こす範囲に挟まれた状態で前記薄板から
切り起こし片として切り起こし、その切り起こし片の先端部同士を閉じ合わせて全体を扁平管として成形し、
上下段の金型を用いて前記扁平管の展開形状の範囲を前記薄板から起こす工程の後で、前記未切除の中途部を前記薄板から切り離して扁平管を得ることを特徴とするものである。
【0008】
而して、このようにすれば、切り起こし片の先端部同士の閉じ合わせ部分が一つの継ぎ目部分となるだけで済むので、扁平管を上下に半割り状に二分割した形状のものを夫々個別に製造し且つその幅方向両側の二つの継ぎ目部分を夫々接合するようにしていた従来手法と比較して継ぎ目部分が半減し、該継ぎ目部分を接合する手間が著しく省かれることになり、しかも、全体が扁平管として成形されるまで薄板に部分的に接合させたまま該薄板と共にライン作業で製造工程を段階的に進めて行くことができて製造工程の大幅な効率化が図られる。
【0009】
また、本発明においては、未切除の中途部を薄板から切り離す前に切り起こし片の先端部同士の閉じ合わせ部分を接合しても良いし、未切除の中途部を薄板から切り離した後に切り起こし片の先端部同士の閉じ合わせ部分を接合しても良い。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明の扁平管製造方法によれば、接合しなければならない継ぎ目部分を一つに集約して該継ぎ目部分を接合する手間を著しく省くことができ、しかも、薄板を流しながらライン作業で製造工程を段階的に進めて行くことができて製造工程の大幅な効率化を図ることもできるので、扁平管を上下に半割り状に二分割した形状のものを夫々個別に製造し且つその幅方向両側の二つの継ぎ目部分を夫々接合するようにしていた従来手法よりも製造コストを大幅に削減することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一形態例における第一工程を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一形態例における第二工程を概略的に示す斜視図である。
【
図3】本発明の一形態例における第三工程を概略的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の一形態例における第四工程を概略的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の一形態例における第五工程を概略的に示す斜視図である。
【
図6】本発明の一形態例における第六工程を概略的に示す斜視図である。
【
図7】内外面に凹凸形状を備えた扁平管の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1〜
図6は本発明を実施する形態の一例であって、内外面に凹凸形状を備えた扁平管1を製造する行程を概略的に示している。尚、扁平管1は最終工程を示す
図6で初めて図示されるものであるが、説明の便宜上から
図6を参照することとして序盤の説明から符号を付して説明している。
【0014】
図1は本形態例における扁平管製造方法の第一工程を示すもので、この第一工程においては、金属製の薄板2から扁平管1(
図6参照)の展開形状を打ち抜いて該展開形状の切り込み3を前記薄板2に入れるようにしているが、その切り込み3を入れる際に前記扁平管1の展開形状における幅方向(
図1中の左右方向:薄板2の長手方向)の中間部4(中途部)を前記薄板2と接合させたまま残しておくようにしている。
【0015】
ここで、前記薄板2の金属材料には、例えば、ステンレス鋼を含む鉄鋼材料や、アルミニウム,銅,チタンのような非鉄金属材料や、ニッケル,コバルト,モリブデンのような耐熱金属材料や、鉛,錫のような低融点金属材料や、金,銀,白金のような貴金属材料、及びこれらの合金を採用することが可能である。
【0016】
図2は本形態例における扁平管製造方法の第二工程を示すもので、この第二工程においては、前記扁平管1の展開形状の範囲(切れ込み3で囲まれた範囲)内にプレス加工により内外面に凹凸形状5を加工するようにしており、ここでは概略的に示しているが、例えば、前述の
図7における円管部bや旋回流形成突起c等が形成されることになる。
【0017】
図3は本形態例における扁平管製造方法の第三工程を示すもので、この第三工程においては、上下段の金型6,7を用いて扁平管1の展開形状を前記未切除の中間部4を挟んで前記薄板2から切り起こすようにしている(
図3中の符号の8は薄板2から切り起こした切り起こし片を示す)。
【0018】
尚、
図3中における左側は楕円断面の扁平管1を製造する場合を、右側は矩形断面の扁平管1を製造する場合を夫々示しているが、この
図3以降の図面において先の
図2で加工した凹凸形状5の図示は図面を見易くする観点から省略している。
【0019】
図4は本形態例における扁平管製造方法の第四工程を示すもので、この第四工程においては、上下段の金型9,10を用いて前記薄板2から切り起こした切り起こし片8を更に立ち上げて直立させるようにしており、更には、
図5の第五工程において、上段の金型11を用いて前記切り起こし片8の先端部同士を内側に倒し込んで閉じ合わせることにより全体を扁平管1として成形するようにしている。
【0020】
即ち、ここに図示している例では、扁平管1の幅方向の一側面を薄板2上に未切除のまま残して他側面側を上方に立ち上げた状態で扁平管1が成形されるようになっており、この他側面が前記切り起こし片8の先端部同士を内側に閉じ合わせることで形作られるようになっている。
【0021】
因みに、扁平管1における
図3や
図4で金型6,7及び9,10で押圧する部分にも凹凸形状を付しておきたい場合には、金型6,7及び9,10自体に凹凸形状を成形するための型形状を付しておいて、薄板2から切り起こし片8を立ち上げる際に凹凸形状5(
図2参照)を付すようにしても良い。
【0022】
尚、
図5の第五工程で上段の金型11を用いて前記切り起こし片8の先端部同士を内側に倒し込んで閉じ合わせるにあたっては、立ち上げた切り起こし片8の内側に上段の金型11の形状に対応した当て板(図示せず)を入れておいて前記上段の金型11を受けるような形式を採用しても良い。
【0023】
また、本形態例における説明では、
図5の第五工程で上段の金型11を用いて前記切り起こし片8の先端部同士を内側に倒し込んで閉じ合わせるようにしているが、例えば、
図3の第三工程の段階で切り起こし片8の先端部を予め曲げ加工しておき、
図4の第四工程で切り起こし片8を更に立ち上げて直立させた際に切り起こし片8の先端部同士が閉じ合うようにさせることも可能である。
【0024】
図6は本形態例における扁平管製造方法の第六工程を示すもので、この第六工程においては、前記未切除の中間部4(
図1〜
図5参照)を前記薄板2から切り離して扁平管1を得るようにしている。ここで、切り起こし片8の先端部同士の閉じ合わせ部分については、第五工程と第六工程の間で未切除の中間部4を薄板2から切り離す前に接合しておいても良いし、第六工程の後で未切除の中間部4を薄板2から切り離してから接合するようにしても良く、何れのタイミングで接合を実施するかについては、溶接作業の行い易さに応じて適宜に選択すれば良いことである。
【0025】
この際、切り起こし片8の先端部同士の閉じ合わせ部分における接合には、特に薄板2の金属材料がアルミニウムである場合等に接着剤を用いることも可能であるが、扁平管1に流す予定の媒体により腐食環境が形成される虞れがある場合等も勘案し、母材を含めた接合部を溶融して接合するようにした溶接を用いることが好ましく、より具体的には、炭酸ガスレーザ溶接、YAGレーザ溶接、エキシマレーザ溶接といったレーザ溶接を用いることが好ましい。尚、切り起こし片8の先端部同士の閉じ合わせ部分は、突き合わせて溶接するようにしても良いし、重ね合わせて溶接するようにしても良い。
【0026】
また、切り起こし片8の先端部同士の閉じ合わせ部分における接合には、ロウ接を用いることも可能であるが、この場合には、全体を加熱室に収容して加熱する必要があるので、未切除の中間部4を薄板2から切り離してから行うことが好ましい。
【0027】
尚、薄板2から切り離された扁平管1の外面や内面には、必要に応じてコーティングやメッキ等の表面処理を施すことも可能である。
【0028】
而して、このようにすれば、切り起こし片8の先端部同士の閉じ合わせ部分が一つの継ぎ目部分となるだけで済むので、扁平管1を上下に半割り状に二分割した形状のものを夫々個別に製造し且つその幅方向両側の二つの継ぎ目部分を夫々接合するようにしていた従来手法と比較して継ぎ目部分が半減し、該継ぎ目部分を接合する手間が著しく省かれることになり、しかも、全体が扁平管1として成形されるまで薄板2に部分的に接合させたまま該薄板2と共にライン作業で製造工程を段階的に進めて行くことができて製造工程の大幅な効率化が図られる。
【0029】
従って、上記形態例によれば、接合しなければならない継ぎ目部分を一つに集約して該継ぎ目部分を接合する手間を著しく省くことができ、しかも、薄板2を流しながらライン作業で製造工程を段階的に進めて行くことができて製造工程の大幅な効率化を図ることもできるので、前述の如き従来手法よりも製造コストを大幅に削減することができる。
【0030】
尚、本発明の扁平管製造方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、扁平管の内外面に付される凹凸形状は図示例に限定されないこと、また、金属製の薄板に扁平管の展開形状の切り込みを入れるにあたり、薄板と接合させたまま残す部分は、扁平管の展開形状における幅方向の中途部であれば良く、必ずしも幅方向の中間部としなくても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 扁平管
2 薄板
3 切り込み
4 中間部(中途部)
5 凹凸形状
8 切り起こし片