特許第6067342号(P6067342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6067342-シート状化粧料 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067342
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】シート状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20170116BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20170116BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/02
   A61Q15/00
   A61K8/34
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-252491(P2012-252491)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2014-101284(P2014-101284A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】岩井 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】東城 武彦
(72)【発明者】
【氏名】甘利 奈緒美
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/031620(WO,A1)
【文献】 特表2009−543900(JP,A)
【文献】 特開2005−035910(JP,A)
【文献】 特表2005−534716(JP,A)
【文献】 特開2004−285052(JP,A)
【文献】 特開2006−312615(JP,A)
【文献】 特表2012−526815(JP,A)
【文献】 特開2008−174528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状化粧料であって、シートを構成するポリマーがメタクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステルコポリマーを70質量%以上含み、該アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1〜4であり、該シートに殺菌剤が包含されてなるシート状化粧料。
【請求項2】
前記シートを構成する前記ポリマーと、前記殺菌剤との質量比が50:1〜1:1である請求項1に記載のシート状化粧料。
【請求項3】
単位面積当たりに包含される前記殺菌剤の量が0.2〜2.5μg/cmである請求項1又は2に記載のシート状化粧料。
【請求項4】
前記シートに更に制汗成分が包含されており、該制汗成分の割合が前記シート状化粧料において5〜20質量%である請求項1ないしのいずれか一項に記載のシート状化粧料。
【請求項5】
前記シートに更に消臭成分が包含されており、該消臭成分の割合が前記シート状化粧料において0.01〜5質量%である請求項1ないしのいずれか一項に記載のシート状化粧料。
【請求項6】
請求項1に記載のシート状化粧料の製造方法であって、
メタクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステルコポリマーを含むシート形成ポリマー及び殺菌剤を含む溶液を調製し、その溶液から液媒体を除去することでシート状に形成する工程を有するシート状化粧料の製造方法
【請求項7】
メタクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステルコポリマーを含むシート形成ポリマー及び前記殺菌剤から形成されてなるナノファイバを、ランダムに堆積させてなるナノファイバシートからなる請求項1ないしのいずれか一項に記載のシート状化粧料。
【請求項8】
メタクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステルコポリマーが5.5以上のpHで水に溶解するものである請求項1ないし5及び7のいずれか一項に記載のシート状化粧料。
【請求項9】
メタクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステルコポリマーがメタクリル酸/メタクリル酸メチル又は、メタクリル酸/アクリル酸エチルである請求項1ないし5、7及び8のいずれか一項に記載のシート状化粧料。
【請求項10】
メタクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステのモル比((メタ)アクリル酸アルキルエステル/メタクリル酸)が0.5以上2.5以下である請求項1ないし5及び7ないし9のいずれか一項に記載のシート状化粧料。
【請求項11】
請求項1ないし5及び7ないし10のいずれか一項に記載のシート状化粧料を肌に貼着し、使用する使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば体表に貼付されて使用されるシート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
腋臭は、汗に含まれているタンパク質が皮膚常在菌によって分解されて生じる分解物に起因している。したがって、発汗を抑制したり、殺菌したり、菌代謝を阻害したりすれば、腋臭を抑制することができる。そのような目的として用いられる腋の下の制汗・デオドラント剤としては、例えばスプレータイプのもの、スティックタイプのもの、ロールオンタイプのもの及びシートタイプのものなど、様々な剤型のものが知られている。しかし、これらいずれの剤型のものも、効果の持続性が十分とは言えず、日中にわたり効果を持続させるためには複数回の使用が必要となる。
【0003】
ところで昨今、繊維径が数nmないし数百nmであるいわゆるナノファイバを構成繊維とするシート、すなわちナノファイバシートに化粧料成分や殺菌成分を包含させ、該ナノファイバシートをヒトの肌などに貼着することで、該化粧料成分や該殺菌成分を肌に付与する技術が提案されている。例えば特許文献1には、アクリル酸系ポリマーのナノファイバシートからなる網目状構造体に、化粧料や化粧料成分を包含させてなる化粧用シートが記載されている。特許文献2には、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶性基材からなる水溶性電界紡糸シートが殺菌成分を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179629号公報
【特許文献2】国際公開第2009/031620号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1及び2には、これらの文献に記載のナノファイバシートを腋の下に貼り付けて、腋の下の制汗・デオドラントを図ることについては言及されていない。また、これらの文献に記載のナノファイバシートを腋の下に貼り付けたとしても、長時間にわたる制汗・デオドラントは持続しないと考えられる。
【0006】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るシート状化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シート状化粧料であって、シートを構成するポリマーがメタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを含み、該シートに殺菌剤が包含されてなるシート状化粧料に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート状化粧料を構成するシート基材が、汗のpH範囲で溶解する高分子材料を含んでいるので、発汗が起きて初めて該シート状化粧料の溶解が始まり、殺菌剤を放出することができる。したがって、長時間にわたって殺菌効果が持続し、ひいては長時間にわたってデオドラント効果が持続する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、エレクトロスピニング法に好適に用いられる装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のシート状化粧料は、好ましくは水溶性シートを主たる構成体とし、該水溶性シートに殺菌剤が包含されてなるものである。殺菌剤は、例えばシート中に含有されていてもよく、あるいはシートの表面に存在していてもよい。
【0011】
本発明において、シート状化粧料が水溶性であるとは、1気圧・23℃の環境下において、シート状化粧料100μgを秤量した後に、NaOHの添加でpH8に調整した10gのイオン交換水に浸漬し、1時間経過後、浸漬したシート状化粧料が50μgを超えて水に溶解する性質を有することをいう。
【0012】
本発明のシート状化粧料は、それを構成するシートの素材に特徴の一つを有する。詳細には、シートは、その構成材料としてメタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを含んでいる。メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、メタクリル酸と、炭素数1〜4のアルキル基を含むメタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルとをコモノマー成分の一つとして含む共重合体である。メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、それを構成するコモノマー成分の種類に応じて若干の違いがあるものの、汗が呈するpH以上のpHで水に溶解する性質を有する。汗のpHは一般に5.5以上の弱酸性ないしアルカリ性である。これに対して皮膚のpHは4.5程度であり、汗よりもpHが低い。したがって、本発明のシート状化粧料を体表に貼着しただけではpHが低いので、該シート状化粧料は溶解しないか、又は溶解速度が非常に遅く、その結果、該シート状化粧料に包含されている殺菌剤は放出されないか、又は放出されたとしてもその量は僅かである。これに対して、発汗の量がある程度多量になると、汗が呈するpHに起因して本発明のシート状化粧料の溶解が速やかに始まる。該シート状化粧料が溶解すると、それに包含されていた殺菌剤が放出されて、汗中に拡散する。その結果、皮膚常在菌が殺菌剤によって殺菌され、臭いの原因物質の生成が抑制される。このように、本発明のシート状化粧料は、発汗と殺菌剤の放出とのタイミングが同期しているので、長時間にわたってデオドラント効果が持続するものとなる。また、本発明のシート状化粧料は、シートという薄手の形態のものなので、ヒトの体表に貼付してもそれに起因する違和感が発生しづらい。
【0013】
メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーが、汗が呈するpH以上のpH範囲で首尾よく溶解するようにするためには、該メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、5.5以上のpHで溶解することが好ましく、6以上のpHで溶解することが更に好ましく、7以上のpHで溶解することが一層好ましい。メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーが、これらのpHで溶解するようにするためには、例えばコモノマー成分として(イ)メタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルを含むものを用いることが好ましい。また(ロ)メタクリル酸とアクリル酸アルキルエステルを含むものを用いることが好ましい。
【0014】
前記の(イ)及び(ロ)のいずれであっても、アルキルエステルを構成するアルキル基としては、炭素数1〜4の低級アルキル基を用いることが、水溶性を高める点から好ましい。特にメタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、メタクリル酸をコモノマー成分の一つとして含み、かつ他方のコモノマー成分として、アクリル酸エチル又はメタクリル酸メチルを含むものであることが好ましい。更には、(イ)はメタクリル酸/メタクリル酸メチルであり、(ロ)はメタクリル酸/アクリル酸エチルであることが好ましい。
【0015】
メタクリル酸コポリマーとして前記の(イ)のものを用いる場合には、メタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルのモル比は、メタクリル酸アルキルエステル/メタクリル酸の値が0.5以上、更には0.67以上であることが好ましい。このモル比の上限値は、2.5以下、更には2以下であることが好ましい。このモル比は、例えば0.5〜2.5であることが好ましく、0.67〜2であることが更に好ましい。
【0016】
メタクリル酸コポリマーとして前記の(ロ)のものを用いる場合には、メタクリル酸とアクリル酸アルキルエステルのモル比は、アクリル酸アルキルエステル/メタクリル酸の値が0.33以上、特に1以上であることが好ましい。このモル比の上限値は、2以下、特に1.5以下であることが好ましい。このモル比は、例えば0.33以上2以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることが更に好ましい。
【0017】
前記の(イ)及び(ロ)のいずれの場合であっても、メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーにおけるコモノマー成分は、交互共重合していてもよく、ランダム共重合していてもよく、グラフト共重合していてもよい。
【0018】
メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、水溶性を示す限りその分子量に制限はない。メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、上述した各種のコモノマー成分を用い、公知の重合方法によって製造することができる。
【0019】
メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーとしては市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、ドイツのEvonik Rohm GmbH社から入手可能なメタクリル酸コポリマーであるオイドラギットL100−55(pH5.5以上で溶解)(メタクリル酸:アクリル酸エチル=1:1)、オイドラギットL100(pH6以上で溶解)(メタクリル酸:メタクリル酸メチル=1:2)、オイドラギットS100(pH7以上で溶解)などが挙げられる。
【0020】
メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを含むシートは、該メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーのみから構成されていてもよく、あるいはメタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーに加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば水難溶性ポリマー、水溶性ポリマーなどが挙げられる。水難溶性ポリマーや水溶性ポリマーは、水溶性シートの水溶性の程度をコントロールするために用いられるものである。水難溶性ポリマーとしては、例えばシート形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することでシート形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ツエイン(とうもろこしタンパク質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテフタレート樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いることができる。水溶性ポリマーとしては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、ペクチン、キシラン、グルコマンナン、ガラクツロン、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、変性コーンスターチ、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(後述する架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子等を用いることができる。十分な水溶性を発現する観点から、シートを構成するポリマー中に、メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーが70質量%以上含まれることが好ましく、85質量%以上含まれることが更に好ましい。メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーの含有割合の上限値はもちろん100質量%である。
【0021】
シートに包含されている殺菌剤としては、化粧品や医薬品の分野でこれまで用いられてきたものと同様のものを特に制限なく用いることができる。殺菌剤としては、例えばイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン(5−クロロ−2−[2,4−ジクロロフェノキシル]フェノール)、塩化リゾチーム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、3,4,4‘−トリクロロカルバニド、銀担持無機粒子などが挙げられる。この中で好ましいものは、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン(5−クロロ−2−[2,4−ジクロロフェノキシル]フェノール)、塩化ベンザルコニウムである。これらの殺菌剤は1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明者らの検討の結果、殺菌剤は、非晶質の状態でシートに包含されていると、殺菌効果が高くなることが判明した。殺菌剤を非晶質の状態でシートに包含させるには、例えば後述するシート状化粧料の製造方法において、エレクトロスピニング法を採用すればよい。
【0023】
殺菌剤の使用量は、本発明のシート状化粧料の単位面積当たり0.2μg/cm2以上とすることが好ましく、0.5μg/cm2以上とすることが更に好ましい。上限値は2.5μg/cm2以下とすることが好ましく、2μg/cm2以下とすることが更に好ましい。殺菌剤の使用量は、例えば0.2〜2.5μg/cm2とすることが好ましく、0.5〜2μg/cm2とすることが更に好ましい。殺菌剤の使用量をこの範囲内に設定することで、肌に過度の刺激を与えることを防止しつつ、十分な殺菌能を発現させることができる。
【0024】
殺菌剤の使用量は、シートを構成するポリマーの使用量とも関係している。詳細には、シートを構成するポリマーと、殺菌剤との質量比は、ポリマーの質量/殺菌剤の質量で表して1以上が好ましく、5以上がより好ましく、とりわけ10以上であることが更に好ましい。上限値は50以下が好ましく、30以下がより好ましく、とりわけ20以下であることが更に好ましい。例えば、ポリマーと殺菌剤との質量比は、50:1〜5:1が好ましく、特に30:1〜5:1がより好ましく、20:1〜10:1とすることが更に好ましい。殺菌剤とポリマーとをこの比率で使用することで、本発明のシート状化粧料は、発汗に伴い、効率的に殺菌剤を放出でき、デオドラント効果が持続させることができる。
【0025】
本発明のシート状化粧料を構成するシートには、上述した殺菌剤に加えて制汗成分が更に包含されていてもよい。制汗成分が包含されていることで、発汗が抑制され、その結果、臭い物質の発生が一層抑制される。本発明のシート状化粧料における制汗成分の割合は、該シート状化粧料において5質量%以上であることが好ましく、7.5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが一層好ましい。制汗成分の割合の上限値は、20質量%以下であることが好ましく、17.5質量%以下であることが更に好ましく、15質量%以下であることが一層好ましい。制汗成分の割合は、例えば5〜20質量%であることが好ましく、7.5〜17.5質量%であることが更に好ましく、10〜15質量%であることが一層好ましい。
【0026】
制汗成分としては、当該技術分野においてこれまで用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えばアルミニウムヒドロキシクロライド、パラフェノールスルホン酸亜鉛、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウムなどが挙げられる。なかでも、アルミニウムヒドロキシクロライド、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレートを用いることが好ましい
【0027】
制汗成分に加えて、又はこれに代えて、本発明のシート状化粧料を構成するシートには、消臭成分が更に包含されていてもよい。消臭には一般に4つのタイプ、すなわち化学的消臭法、物理的消臭法、生物的消臭法、感覚的消臭法がある。化学的消臭法を利用した消臭成分としては、例えば酸化亜鉛などの金属酸化物、金属酸化物で表面を被覆した粉体、アルキルジエタノールアミド、銀カンクリナイト、銀ゼオライト、抽出物などのポリフェノール誘導体、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等のpH緩衝液などが挙げられる。物理的消臭法を利用した消臭成分としては、例えばヒドロキシアパタイト、活性炭、茶抽出物などが挙げられる。生物的消臭法を利用した消臭成分としては、例えば酸化防止剤、キハダ、オレイン酸などが挙げられる。感覚的消臭法を利用した消臭成分としては、例えば香料などが挙げられる。これらの消臭成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明のシート状化粧料における消臭成分の割合は、該シート状化粧料において0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましい。消臭成分の割合の上限値は、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることが更に好ましく、3.5質量%以下であることが一層好ましい。制汗成分の割合は、例えば0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜4質量%であることが更に好ましく、0.5〜3.5質量%であることが一層好ましい。
【0029】
本発明のシート状化粧料は、上述した各種の成分に加えて、必要に応じ該シート状化粧料の各種の効果を一層高める観点から、可塑剤(セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、ポリエチレングリコール)、化粧料成分(保湿剤、美白剤、血行促進剤、抗炎症剤、ビタミン類、湿潤剤、油分、細胞間脂質成分、天然保湿因子)、顔料、香料等を含んでいてもよい。
【0030】
本発明のシート状化粧料におけるシートは、2つの形態に大別される。一つはフィルムの形態であり、もう一つは繊維シートの形態である。フィルムの形態であるシートは、例えばメタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを含む水溶液を流延してキャスト膜を形成し、該キャスト膜から水を除去することで形成される。あるいはメタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを含む水溶液を塗工して塗工膜を形成し、該塗工膜から水を除去することで形成される。
【0031】
一方、繊維シートの形態である場合、該繊維シートは、ナノファイバを構成繊維とし、該ナノファイバがランダムに積繊してなるナノファイバシートであることが、本発明のシート状化粧料の水溶性を高める観点から好ましい。ナノファイバは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10〜3000nm、特に10〜1000nmのものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(ナノファイバの塊、ナノファイバの交差部分、ポリマー液滴)を除き、繊維(ナノファイバ)を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に垂直に線を引き、その繊維径を直接読み取ることで測定することができる。ナノファイバの長さは本発明において臨界的でなく、ナノファイバの製造方法に応じた長さのものを用いることができる。
【0032】
シートがフィルムの形態である場合、本発明のシート状化粧料の坪量は1μg/cm2以上、特に2μg/cm2以上、とりわけ4μg/cm2以上であることが好ましい。坪量の上限値は、40μg/cm2以下、特に30μg/cm2以下、とりわけ25μg/cm2以下であることが好ましい。シート状化粧料の坪量は例えば1〜40μg/cm2であることが好ましく、2〜30μg/cm2であることが更に好ましく、4〜25μg/cm2であることが一層好ましい。厚みに関しては、0.1μm以上、特に0.5μm以上、とりわけ1μm以上であることが好ましい。厚みの上限値は、20μm以下、特に10μm以下、とりわけ5μm以下であることが好ましい。シート状化粧料の厚みは例えば0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることが更に好ましく、1〜5μmであることが一層好ましい。
【0033】
シートが繊維シートの形態である場合、本発明のシート状化粧料の坪量は1μg/cm2以上、特に2μg/cm2以上、とりわけ4μg/cm2以上であることが好ましい。坪量の上限値は、40μg/cm2以下、特に30μg/cm2以下、とりわけ25μg/cm2以下であることが好ましい。シート状化粧料の坪量は例えば1〜40μg/cm2であることが好ましく、2〜30μg/cm2であることが更に好ましく、4〜25μg/cm2であることが一層好ましい。厚みに関しては、1μm以上、特に5μm以上、とりわけ10μm以上であることが好ましい。厚みの上限値は、100μm以下、特に50μm以下、とりわけ25μm以下であることが好ましい。シート状化粧料の厚みは例えば1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることが更に好ましく、10〜25μmであることが一層好ましい。シートは、繊維シートの形態であることが通気性の向上及び殺菌効果の発現の点から好ましい。
【0034】
シートがフィルムの形態であるか、それとも繊維シートの形態であるかを問わず、本発明のシート状化粧料の厚みは、接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(R5mm超硬球面測定子)を使用して測定できる。測定時にシートに加える荷重は0.01Paとする。
【0035】
本発明のシート状化粧料は、それ単独で使用することもでき、あるいは他のシート材料と剥離可能に重ね合わせた状態とすることもできる。特にシートがナノファイバシート等の繊維シートの形態である場合、本発明のシート状化粧料は、いわゆる「コシ」が弱いものなので取り扱いに注意を要するものであるところ、剛性の高い他のシートと剥離可能に重ね合わせた状態にすることで、本発明のシート状化粧料を使用するまでの間の取り扱い性(ハンドリング性)を高めることができる。この観点から、他のシートのテーバーこわさは0.01mNm以上0.4mNm以下、特に0.01mNm以上0.2mNm以下であることが好ましい。テーバーこわさは、JIS P8125に規定される「こわさ試験方法」により測定される。
【0036】
次に、本発明のシート状化粧料の好適な製造方法について説明する。まず、本発明のシート状化粧料を構成するシートがフィルムである場合の製造方法を説明する。該フィルムはキャスト法によって好適に製造することができる。キャスト法においては、メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマー及び前記殺菌剤を含む原料液を調製する。この原料液には、必要に応じ制汗成分や消臭性分を含有させることができる。原料液の液媒体としては、メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーの溶解が可能なものが用いられる。そのような液媒体としては、例えば水、エタノール等のアルコール類、アセトンなどが挙げられる。この原料液を流延してキャスト膜を製造する。このキャスト膜から液媒体を除去することで、目的とするフィルムを得ることができる。液媒体の除去には、自然乾燥、赤外線の照射による乾燥、各種の熱源を用いた加熱乾燥などを採用することができる。
【0037】
シートが繊維シート、例えばナノファイバシートである場合には、該ナノファイバシートはエレクトロスピニング法(電界紡糸法)によって好適に製造することができる。図1には、エレクトロスピニング法を実施するための装置10が示されている。エレクトロスピニング法を実施するためには、シリンジ11、高電圧源12、導電性コレクタ13を備えた装置10が用いられる。シリンジ11は、シリンダ11a、ピストン11b及びキャピラリ11cを備えている。キャピラリ11cの内径は10〜1000μm程度である。シリンダ11a内には、ナノファイバの原料となる原料液が充填されている。高電圧源12は、例えば10〜30kVの直流電圧源である。高電圧源12の正極はシリンジ11における原料液と導通している。高電圧源12の負極は接地されている。導電性コレクタ13は、例えば金属製の板であり、接地されている。シリンジ11におけるキャピラリ11cの先端と導電性コレクタ13との間の距離は、例えば30〜300mm程度に設定されている。図1に示す装置10は、大気中で運転することができる。運転環境に特に制限はなく、温度20〜40℃、湿度10〜50%RHとすることができる。
【0038】
シリンジ11と導電性コレクタ13との間に電圧を印加した状態下に、シリンジ11のピストン11bを徐々に押し込み、キャピラリ11cの先端から原料液を押し出す。押し出された原料液においては、液媒体が揮発し、溶質であるメタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーが固化しつつ、電位差によって伸長変形しながらナノファイバを形成し、導電性コレクタ13に引き寄せられる。このとき、導電性コレクタ13の表面に基材層(図示せず)となるべきシートを配置しておくことで、該基材層の表面にナノファイバをランダムに堆積させることができる。このようにして形成されたナノファイバは、その製造の原理上は、無限長の連続繊維となる。
【0039】
エレクトロスピニング法に用いられる原料液としては、上述したキャスト法に用いられる原料液と同様のものを用いることができる。この原料液中には、殺菌剤を含有させることができる。また必要に応じ制汗成分や消臭性分を配合することもできる。原料液中に殺菌剤を含有させておき、該原料液を用いてエレクトロスピニング法を行うと、繊維化の過程で急激な液媒体の揮発が生じることに起因して、殺菌剤が非晶質化する。その結果、形成されたナノファイバ中に存在する殺菌剤は非晶質のものとなる。これとは対照的に、先に述べたキャスト法を用いると、液媒体の揮発はエレクトロスピニング法よりも穏やかに進行するので、殺菌剤は非晶質化しづらい。
【0040】
エレクトロスピニング法において、導電性コレクタ13の表面に基材層(図示せず)を配置しておくと、ナノファイバシート、すなわち本発明のシート状化粧料は該基材層の表面に形成される。該基材層として剛性の高いものを用いた場合には、該シート状化粧料をその使用の直前まで該基材層と重ね合わせておくことで、該シート状化粧料の取り扱い性を高めることができる。この基材層としては、先に述べたテーバーこわさを有するものを用いることが好ましい。基材層と重ね合わされたシート状化粧料を使用するときには、該シート状化粧料の表面又は対象物表面を湿潤させた状態下に、該シート状化粧料を該対象物表面に当接させることが好ましい。シート状化粧料を対象物の表面に付着させた後、シート状化粧料から基材層を剥離することで、シート状化粧料のみを対象物の表面に転写することができる。
【0041】
このようにして得られたシート状化粧料は、例えばヒトの体表に貼着して用いることができる。貼着部位としては、例えば腋下、足裏、股間、首筋、背中、腰、腹、大腿などが挙げられる。これらの部位に貼着された本発明のシート状化粧料は、使用者が発汗することによって初めて溶解し、それによって殺菌剤の放出が始まる。そして放出された殺菌剤の作用によってデオドラント効果が発現する。使用者の発汗が低下すると、シート状化粧料の溶解も低下する。それに伴い殺菌剤の放出も低下する。このようなメカニズムによって、本発明のシート状化粧料は、長時間にわたってデオドラント効果が持続するものとなる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0043】
〔実施例1〕
本実施例では、ナノファイバシートからなるシート状化粧料を製造した。メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーとして、Evonik Rohm GmbH社から入手可能なメタクリル酸コポリマーであるオイドラギットL100を用いた。オイドラギットL100はメタクリル酸及びメタクリル酸メチルをコモノマー成分として用いて共重合して製造されたものである。メタクリル酸とメタクリル酸メチルとのモル比は1:1である。殺菌剤としてトリクロサン(BASF製)を用いた。これらをエタノールに溶解して、メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーの濃度が15%である原料液を調製した。原料液中におけるメタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーと殺菌剤との割合は、目的とするシート状化粧料における両者の割合が表1に示す値となるようにした。この原料液を用い、図1に示すエレクトロスピニング法の装置10によって、基材層となるべきメッシュシート(東京スクリーン株式会社製のポリエチレンテレフタレートメッシュ、商品名:ボルティングクロス テトロンT-No.120T)の表面にナノファイバシートからなるシート状化粧料を形成した。ナノファイバの製造条件は次のとおりである。また、エレクトロスピニング法は、目的とするシート状化粧料の坪量が表1に示す値となるように行った。
・印加電圧:26kV
・キャピラリ−コレクタ間距離:200mm
・原料液吐出量:1.0ml/h
・環境:25℃、40%RH
【0044】
〔実施例2ないし5〕
シート状化粧料が、表1に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。また、シート状化粧料が同表に示す坪量となるようにエレクトロスピニング法を行った。これら以外は実施例1と同様にしてシート状化粧料を得た。
【0045】
〔比較例1ないし3〕
本比較例は、メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを用いなかった例である。シート状化粧料が、表1に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。また、シート状化粧料が同表に示す坪量となるようにエレクトロスピニング法を行った。これら以外は実施例1と同様にしてシート状化粧料を得た。
【0046】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたシート状化粧料について、人工汗を滴下したときの該シート状化粧料の溶解性及び該シート状化粧料の殺菌能を以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
〔シート状化粧料の溶解性〕
以下の表2に示す成分を、同表に示す量用い、これらを水に溶解させて全量1リットルにした。これを人工汗として用いた。25℃、55%RHの環境下で、この人工汗を、実施例及び比較例で得られたシート状化粧料(2cm四方)に、高さ1cmの位置から2ml滴下して、該シート状化粧料の溶解の速さを以下の基準で評価した。
・2分以内に溶解:A
・2分超5分以内に溶解:B
・5分超30分以内に溶解:C
・30分超で溶解又は不溶:D
【0048】
〔シート状化粧料の殺菌能〕
殺菌効果試験のディスク拡散法を利用して、シート状化粧料の殺菌能を評価した。黄色ブドウ球菌を混釈して作製したSCD寒天培地(日水製薬(株)製)の寒天培地中心部に1cm四方のシート状化粧料を載置した。この寒天培地を恒温槽(温度38℃、湿度75%RH)内で24時間培養した。シート状化粧料の発育阻止帯の大きさに基づき、以下の基準でシート状化粧料の殺菌能を判定した。
・発育阻止帯が認められない‥×(殺菌能なし)
・シート状化粧料と同じ大きさの阻止帯が認められる‥△(やや殺菌能がある)
・シート状化粧料の周辺に幅1cmまでの阻止帯が認められる‥○(高い殺菌能がある)
・シート状化粧料の周辺に幅1cm以上の阻止帯が認められる‥◎(非常に高い殺菌能がある)
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例のシート状化粧料(本発明品)は、人工汗に即座に溶解し、かつ殺菌能の高いものであることが判る。これに対して各比較例のシート状化粧料は、人工汗に溶解せず、そのことに起因して殺菌能の低いものであることが判る。なお表には示していないが、各実施例のシート状化粧料についてX線回折測定を行ったところ、殺菌剤に由来する回折ピークは観察されなかった。したがって殺菌剤は非晶質になっていると推定される。
【0052】
〔実施例6ないし9〕
本実施例では、ナノファイバシートからなるシート状化粧料を製造した。シート状化粧料が、表3に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。また、シート状化粧料が同表に示す坪量となるようにエレクトロスピニング法を行った。これら以外は実施例1と同様にしてシート状化粧料を得た。得られたシート状化粧料について、実施例1と同様の評価を行った。また、シート状化粧料の厚みを、上述の方法で測定した。それらの結果を表3に示す。
【0053】
〔実施例10ないし12〕
本実施例では、キャストシートからなるシート状化粧料を製造した。シート状化粧料が、表3に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。この原料液を流延してキャスト膜を製造し、該キャスト膜を乾燥させて、目的とするシート状化粧料を得た。原料液の流延は、シート状化粧料が同表に示す坪量となるように行った。得られたシート状化粧料について、実施例1と同様の評価を行った。また、シート状化粧料の厚みを、上述の方法で測定した。それらの結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
表3に示す結果から明らかなとおり、ナノファイバシートとキャストシートとを比べると、ナノファイバシートからなるシート状化粧料の方が、人工汗に対する溶解性が高く、かつ殺菌能の高いものであることが判る。なお表には示していないが、実施例6ないし9のシート状化粧料についてX線回折測定を行ったところ、殺菌剤に由来する回折ピークは観察されなかった。
【0056】
〔実施例13及び14〕
本実施例では、ナノファイバシートからなるシート状化粧料を製造した。シート状化粧料が、表4に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。また、シート状化粧料が同表に示す坪量となるようにエレクトロスピニング法を行った。これら以外は実施例1と同様にしてシート状化粧料を得た。
【0057】
〔実施例15及び16〕
本実施例では、キャストシートからなるシート状化粧料を製造した。シート状化粧料が、表4に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。この原料液を流延してキャスト膜を製造し、該キャスト膜を乾燥させて、目的とするシート状化粧料を得た。原料液の流延は、シート状化粧料が同表に示す坪量となるように行った。
【0058】
〔比較例4及び5〕
本比較例は、メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを用いなかった例である。本比較例では、ナノファイバシートからなるシート状化粧料を製造した。シート状化粧料が、表4に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。また、シート状化粧料が同表に示す坪量となるようにエレクトロスピニング法を行った。これら以外は実施例1と同様にしてシート状化粧料を得た。
【0059】
〔比較例6及び7〕
本比較例は、メタクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを用いなかった例である。本比較例では、キャストシートからなるシート状化粧料を製造した。シート状化粧料が、表4に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。この原料液を流延してキャスト膜を製造し、該キャスト膜を乾燥させて、目的とするシート状化粧料を得た。原料液の流延は、シート状化粧料が同表に示す坪量となるように行った。
【0060】
〔評価〕
実施例13ないし16及び比較例4ないし7で得られたシート状化粧料について、シート状化粧料の溶解性を実施例1と同様に評価した。また、シート状化粧料の厚みを、上述の方法で測定した。更にシート状化粧料の肌への接着性及びシート状化粧料の消臭効果を以下の方法で評価した。それらの結果を表4に示す。
【0061】
〔シート状化粧料の肌への接着性〕
パネラーに、5cm四方の大きさのシート状化粧料を、該パネラーの腋下に接着させた。そのときの接着のしやすさを以下の基準で判定した。
・肌に接着しやすい:○
・肌にやや接着しやすい:△
・肌に接着しにくい:×
【0062】
〔シート状化粧料の消臭効果〕
パネラーに、5cm四方の大きさのシート状化粧料を、該パネラーの腋下に接着させた。6時間経過後の腋下の臭いを専門評価者に判定させた。判定基準は以下のとおりである。
・臭わない:○
・やや臭う:△
・臭う:×
【0063】
【表4】
【0064】
実施例13及び14と実施例15及び16との対比から明らかなとおり、ナノファイバシートとキャストシートとを比べると、ナノファイバシートからなるシート状化粧料の方が、人工汗に対する溶解性が高く、かつ殺菌能の高いものであることが判る。なお表には示していないが、実施例13及び14のシート状化粧料についてX線回折測定を行ったところ、殺菌剤に由来する回折ピークは観察されなかった。
また実施例13及び14と比較例4及び5との対比から明らかなとおり、メタクリル酸コポリマーを含んでいる実施例13及び14のシート状化粧料は、メタクリル酸コポリマーを含んでいない比較例4及び5のシート状化粧料よりも人工汗に対する溶解性が高く、かつ殺菌能の高いものであることが判る。同様の傾向は、実施例15及び16と比較例6及び7との対比からも見て取れる。
【0065】
〔実施例17及び18〕
本実施例では、ナノファイバシートからなるシート状化粧料を製造した。シート状化粧料が、表5に示す組成のものとなるように調製した原料液を用いた。また、シート状化粧料が同表に示す坪量となるようにエレクトロスピニング法を行った。これら以外は実施例1と同様にしてシート状化粧料を得た。得られたシート状化粧料について、厚み、溶解性及び消臭効果を、上述の方法で測定した。更に制汗効果を以下の方法で評価した。それらの結果を表5に示す。
【0066】
〔シート状化粧料の制汗効果〕
パネラーに、5cm四方の大きさのシート状化粧料を、該パネラーの腋下に接着させた。6時間経過後の発汗による肌着腋下の濡れ具合を専門評価者に判定させた。判定基準は以下のとおりである。
・乾いている:○
・やや湿っている:△
・湿っている:×
【0067】
【表5】
【0068】
表5に示す結果から明らかなとおり、実施例17及び18のシート状化粧料は、溶解性が高く、また肌への接着性が高いものであることが判る。更に、消臭効果及び制汗効果も高いものであることが判る。なお表には示していないが、各実施例のシート状化粧料についてX線回折測定を行ったところ、殺菌剤に由来する回折ピークは観察されなかった。したがって殺菌剤は非晶質になっていると推定される。
【符号の説明】
【0069】
10 エレクトロスピニング法を実施するための装置
11 シリンジ
11a シリンダ
11b ピストン
11c キャピラリ
12 高電圧源
13 導電性コレクタ
図1