特許第6067345号(P6067345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067345
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】読書灯装置
(51)【国際特許分類】
   B61D 29/00 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   B61D29/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-256372(P2012-256372)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-101102(P2014-101102A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100084261
【弁理士】
【氏名又は名称】笹井 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】池田 薫
(72)【発明者】
【氏名】秦泉寺 敬
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4268420(JP,B2)
【文献】 特開2009−202752(JP,A)
【文献】 特開2010−006284(JP,A)
【文献】 実開平01−173042(JP,U)
【文献】 特開平10−157619(JP,A)
【文献】 米国特許第04951560(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
客室内にて向きを反転可能な横並びの座席と、天井側に配されて各座席それぞれに光照射可能な読書灯と、自座席用の読書灯を操作する各座席それぞれに備えた操作部とを有し、前記座席の反転動作以前と以後とに係らず自座席に備えられた前記操作部で自座席用の読書灯を操作するようにした読書灯装置において、
前記座席の反転動作を検出する反転検出部と、前記操作部の操作を受けての前記読書灯の点灯および消灯ならびに前記反転検出部が検出する反転動作にしたがって前記読書灯の点灯状態を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記座席が反転動作される以前に通常の点灯状態にある読書灯に対して、前記座席が反転動作中は、前記読書灯を前記通常の点灯状態とは異なる状態にし、前記座席が反転動作を終了した後は、前記読書灯を消灯することを特徴とする読書灯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記通常の点灯状態とは異なる状態にした前記読書灯を前記座席の反転動作中から消灯することを特徴とする請求項1に記載の読書灯装置。
【請求項3】
前記通常の点灯状態とは異なる状態とは点滅状態であり、
前記制御部は、前記座席が反転動作中に、前記読書灯を所定時間の点滅状態を経て消灯することを特徴とする請求項1に記載の読書灯装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記座席が反転動作を終了した後、前記読書灯を所定時間の点滅状態または点灯状態を経て消灯することを特徴とする請求項1,2または3に記載の読書灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客列車等の客室にて反転可能な横並びの座席と、天井側に配されて各座席それぞれに光照射可能な読書灯と、自座席用の読書灯を操作する各座席それぞれに備えた操作部とを有し、座席の反転動作以前と以後とに係らず自座席に備えられた操作部で自座席用の読書灯を操作するようにした読書灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄道用車両の客室内には、乗客が座席に着座した状態で読書等をする際に手元を照明するための読書灯を荷棚等の天井側に備えたものがある。ところで、鉄道車両用の2座または3座繋がりの横並びの座席には乗客が車両の進行方向および反進行方向の何れかに向いて座れるように反転可能なものがある。座席がこのように反転可能なものである場合には、座席の反転動作の前後で窓側の座席と通路側の座席とが入れ替わる。このため、自座席用の読書灯の操作をする操作装置を各座席毎に備えた場合には、座席を反転させた後に自座席の操作装置を操作すると他座席用の読書灯を操作してしまうことになるという問題が生じる。
【0003】
このような問題を解決するための一つの提案として特許文献1のようなものがある。この特許文献1に開示されている技術は、読書灯も含めて映像提供装置など各座席毎のサービスを提供するサービス機器の操作を座席方向によらず自座席の操作装置によって操作できるようにしたものである。すなわち、自座席が反転されると、反転された自座席の自座席用操作装置と反転前の自座席用サービス機器との接続を解除すると共に、反転された自座席に対応する自座席用サービス機器に対して自座席用操作装置を再接続するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4268420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような従来の技術においては、横並びの座席の反転中および反転後の読書灯の状態について何らの提案もないが、本願の発明者は、横並びの座席の反転中および反転後それぞれにおける読書灯の状態について、実際の使用状態に則した改善点を見出した。
【0006】
本発明は、このような従来の技術が有する改善点に着目してなされたもので、横並びの座席の反転中および反転後における読書灯の制御を実際の読書灯の使用状態に則したものにすると同時に省エネルギーにも貢献できるようにした読書灯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]客室内にて向きを反転可能な横並びの座席(10)と、天井側に配されて各座席(10a,10b)それぞれに光照射可能な読書灯(60)と、自座席用の読書灯(60a,60b)を操作する各座席(10a,10b)それぞれに備えた操作部(18)とを有し、前記座席(10)の反転動作以前と以後とに係らず自座席(10a,10b)に備えられた前記操作部(18)で自座席用の読書灯(60a,60b)を操作するようにした読書灯装置(1)において、
前記座席(10)の反転動作を検出する反転検出部(62)と、前記操作部(18)の操作を受けての前記読書灯(60)の点灯および消灯ならびに前記反転検出部(62)が検出する反転動作にしたがって前記読書灯(60)の点灯状態を制御する制御部(61)とを備え、
前記制御部(61)は、前記座席(10)が反転動作される以前に通常の点灯状態にある読書灯(60)に対して、前記座席(10)が反転動作中は、前記読書灯(60)を前記通常の点灯状態とは異なる状態にし、前記座席(10)が反転動作を終了した後は、前記読書灯(60)を消灯することを特徴とする読書灯装置(1)。
【0008】
[2]前記制御部(61)は、前記通常の点灯状態とは異なる状態にした前記読書灯(60)を前記座席(10)の反転動作中から消灯することを特徴とする[1]に記載の読書灯装置(1)。
【0009】
[3] 前記通常の点灯状態とは異なる状態とは点滅状態であり、
前記制御部(61)は、前記座席(10)が反転動作中に、前記読書灯(60)を所定時間の点滅状態を経て消灯することを特徴とする[1]に記載の読書灯装置(1)。
【0010】
[4]前記制御部(61)は、前記座席(10)が反転動作を終了した後、前記読書灯(60)を所定時間の点滅状態または点灯状態を経て消灯することを特徴とする[1],[2]または[3]に記載の読書灯装置(1)。
【0011】
前記本発明は次のように作用する。
旅客列車の客室内に配設されている、向きを反転可能な横並びの座席(10)は、始発駅を出発前に進行方向を向いていない座席(10)を反転させて進行方向を向くように向きを揃えられる。このように向きを揃えられた座席(10)は、乗客が任意に反転させて対面着座できるようにすることができる。
【0012】
この反転可能な座席(10)に着座して読書等をする際には、座席(10a,10b)毎に光照射可能な読書灯を点灯させることができる。この読書灯(60)の点灯や消灯は、座席(10a,10b)それぞれに備えた操作部(18)の操作によって行うことができる。
【0013】
座席(10)の反転以前に自座席(10a,10b)を光照射していた読書灯(60a,60b)では反転後の自座席(10a,10b)に光照射することができないので、反転の以前と以後とでは自座席(10a,10b)に備えた操作部(18)によって点灯および消灯できる読書灯(60a,60b)が切り替えられる。
【0014】
すなわち、反転以前に窓側に有った座席(10a)は、自座席(10a)に備えた操作部(18)によって窓側座席用の読書灯(60a)の点灯および消灯操作が可能であり、通路側に自座席(10a)が移った反転後には、自座席(10a)に備えた操作部(18)によって、通路側の座席用の読書灯(60b)の点灯および消灯操作が可能に各操作部(18)と各読書灯(60a,60b)との接続関係が切り替えられる。
【0015】
前記[1]に記載の読書灯装置(1)によれば、座席(10)を反転させると、その反転動作を反転検出部(62)が検出する。座席(10)が反転動作中は、制御部(61)が点灯していた読書灯(60)を反転動作以前の通常の点灯状態とは異なる状態にする。そして、座席(10)が反転動作を終了した後は、通常の点灯状態とは異なる状態となっていた読書灯を消灯する。なお、反転動作以前の読書灯(60)の状態が点灯状態にないとき、即ち消灯している場合は、そのまま消灯の状態を継続させる。
【0016】
列車の進行方向に向けられた座席(10)を反転させると、最後列の座席(10)以外は反転した座席(10)と、当該座席(10)の一列後の座席(10)とが対座する。したがって、列車の進行方向に向けられた座席(10)に着座している状態から座席(10)を反転させる場合は、対座した座席(10)の乗客と会話等のコミュニケーションを取る場合がほとんどである。このため、座席(10)の反転以前に読書灯(60)を点灯させて読書等をしていた場合でも、座席(10)の反転以後は読書を継続しない場合がほとんどである。
【0017】
また、座席(10)の反転前後に乗客が自座席にそのまま着座する場合、例えば座席(10)の反転以前に窓側座席(10a)に着座していた乗客が座席(10)の反転後には通路側となった自座席(10a)にそのまま着座する場合、窓側座席用の読書灯(60a)は、新たに窓側の座席の着座者となった別の乗客を光照射することになる。この新たに窓側の座席の着座者となった別の乗客が座席(10)の反転後に読書を開始するという場合は多くはない。
【0018】
したがって、反転動作を終了した後は読書灯(60)を消灯することが、実際の使用状態に則したものとなる。さらに、座席(10)の反転動作を終了した後に読書灯(60)を消灯するので、反転動作後に読書をしない場合に読書灯(60)の消し忘れによって読書灯(60)が点灯し続けることによる無駄な電力消費を防止することができる。
【0019】
また、座席(10)の反転後に読書を継続したり、読書を開始したりする場合は皆無ではないので、座席(10)の反転動作の途中では読書灯(60)を座席(10)の反転動作以前の点灯状態とは異なる状態にすることによって乗客に読書灯(60)に対する注意を向け易くすることができる。これにより、乗客の利便性の向上を図ることができる。
【0020】
前記[2]に記載の読書灯装置(1)によれば、制御部(61)は、座席(10)が反転動作中から読書灯(60)を消灯する。したがって、反転動作が開始するとそれまで点灯していた読書灯(60)が直ぐに消灯され、反転動作の終了後もそのまま消灯状態が維持されるので、読書灯(60)を無駄に点灯させることがなく、よりいっそう無駄な電力消費を防止することができる。
【0021】
前記[3]に記載の読書灯装置(1)によれば、制御部(61)は、座席(10)が反転動作中に、読書灯(60)を所定時間の点滅状態を経て消灯する。これにより、乗客に読書灯(60)に対する注意を向け易くすることができる。
【0022】
前記[4]に記載の読書灯装置(1)によれば、制御部(61)は、さらに座席(10)が反転動作を終了した後、所定時間の点滅状態または点灯状態を経て消灯する。これにより、乗客は、読書灯(60)に対する注意がよりいっそう喚起させられることになり、座席(10)の反転直後から読書をするときに忘れずに読書灯(60)を点灯してより快適に読書をすることができ、以って乗客による読書灯(60)の使用状態に則した利便性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る読書灯装置によれば、点灯状態にあった読書灯を座席の反転動作が終了した後に消灯させるので、実際の使用状態に則するとともに無駄な電力消費を防止することができる。
【0024】
また、座席の反転動作の途中においては、読書灯を座席の反転動作以前の点灯状態とは異なる状態にすることにより、乗客に読書灯に対する注意を喚起させることができる。これにより、乗客の利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態に係る読書灯装置を備えた旅客列車の車両の一部を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る読書灯装置の操作ボタンを備えた座席を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る読書灯装置の概略構成図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る読書灯装置の反転検出手段を示す模式図である。
図5】座席を反転させたときの窓側座席用の読書灯および通路側座席用の読書灯の制御パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明を代表する一実施の形態を説明する。
図1図5は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る読書灯装置1は、旅客列車の客室内に設けられるものであり、図1および図2に示した客室内の座席10に着座した乗客が読書等をする際に着座した自座席用の読書灯60a,60bを点灯させて書物等に光照射できるようにしたものである。
【0027】
読書灯装置1は、座席10(10a,10b)それぞれに光照射可能な読書灯60a,60bと、自座席用の読書灯60a,60bを操作する各座席10a,10bそれぞれに具備した操作ボタン18と、座席10の反転動作を検出する反転検出部62と、操作ボタン18の操作を受けての読書灯60(60a,60b)の点灯および消灯ならびに反転検出部62が検出する反転動作にしたがって読書灯60(60a,60b)の点灯状態を制御する制御部61とを有している。
【0028】
座席10は、客室内のフロア上に固定される脚台11に不図示の台枠が支持され、台枠上に2人掛けの座部30および背凭れ40が支持されている。台枠は、脚台11の内部に配設された回転機構を介して脚台11に対して略水平方向に180度回転可能に支持され、前後逆向きに反転させることができる。回転機構は、座席10を前後それぞれの向きに拘束するロック機構を備えており、足踏ペダル13の踏み込み操作でロックを解除するように構成されている。なお、回転機構の構成は周知であるので詳細な説明および図示を省略する。
【0029】
図2に示すように、2つ並んだ座部30の両側には、それぞれ座席側部を覆う袖状のサイドアームレスト14が設けられている。また、各座部30の間には、仕切りと成るコンソール状のセンターアームレスト15が設けられている。各サイドアームレスト14やセンターアームレスト15は、それぞれ前記台枠側に固設されている。この座席10は、背凭れ40の起倒と座部30の前後方向への移動とが可能なリクライニング機能を有するものである。
【0030】
センターアームレスト15の前側の両側壁には、それぞれ操作ボタン16,17,18が設けられている。操作ボタン16は、自座席のリクライニング機能のロックを解除するボタンであり、背凭れ40を後方に倒したり、倒れた背凭れ40を元の起立した初期位置に戻したり等の背凭れ40を位置調整する際に押すものである。操作ボタン17は、自座席のレッグレスト50の位置を電動で調整する際に操作するスイッチである。操作ボタン18は、後述する自座席用の読書灯60(60a,60b)を点灯させたり、消灯させたりするための操作部としてのスイッチである。
【0031】
読書灯60は、客室内の天井側に配されている。図示した例では、荷棚70の下面に窓側座席用の読書灯60aと通路側座席用の読書灯60bとの2つの読書灯60a,60bが配設されている。座席が図示した例とは異なって窓側座席10aと通路側座席10bとの間に中央の座席を有する、3座席横並びのものの場合には、窓側座席用の読書灯60aと通路側座席用の読書灯60bに加えて中央の座席用の読書灯も配設される。
【0032】
これらの読書灯60a,60bの点灯および消灯は、前記の操作ボタン18によって行われる。図2に示したように操作ボタン18は、センターアームレスト15の前側の側壁に配設されている。これにより、座席10の着座者は、他の座席用の読書灯を誤操作することなく確実に自座席用の読書灯を操作することができる。操作ボタン18の操作は、読書灯60が消灯状態のときに1度押すと点灯し、点灯状態から1度押すと消灯状態に戻るようになっている。操作ボタン18は、ON側またはOFF側に押すことによってON−OFFを切り替えるスイッチでもよい。
【0033】
図1において、窓側座席10aの操作ボタン18は、窓側座席用の読書灯60aの点灯および消灯の操作が可能であり、通路側座席10bの操作ボタン18は、通路側座席用の読書灯60bの点灯および消灯の操作が可能であるが、座席10を反転させた後は、各座席10a,10bの操作ボタン18で操作が可能な読書灯60a,60bが、互いに逆となるように切り替わるように設定されている。
【0034】
すなわち、座席10を反転させた後は、反転以前の窓側座席10aは反転後に通路側に位置が変わり、通路側となった窓側座席10aの操作ボタン18により、通路側座席用の読書灯60bの操作が可能になり、座席10の反転後に窓側となった通路側座席10bの操作ボタン18により、窓側座席用の読書灯60aの操作が可能になるように、各座席10a,10bの操作ボタン18と読書灯60a,60bとの接続が逆になるように切り替えられる。このような切り替え自体は、従来のものと同様の周知事項であるので詳細な説明は省略する。
【0035】
図3に示したように、読書灯装置1の操作ボタン18と制御部61とは座席10のセンターアームレスト15に設けられている。制御部61は、操作ボタン18からの操作を受けたときや反転検出部62が検出する座席10の反転動作に基づいて読書灯60(60a,60b)の点灯状態を制御するものである。この制御部61は、操作ボタン18からの操作情報や反転検出部62からの検出情報等を処理するCPU(Central Processing
Unit)や読書灯60の点灯状態を処理するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)等を備えている。
【0036】
制御部61は、座席10が反転動作中は、読書灯60を反転動作以前の点灯状態とは異なる状態にし、座席10が反転動作を終了した後は、読書灯60を消灯するようにプログラムされている。ここで反転動作以前の点灯状態とは異なる状態とは、具体的には例えば、点滅させたり明るさを暗く変化させる等、通常の点灯状態とは容易に異なることを区別することができる状態である。
【0037】
また、制御部61の制御として、座席10の反転動作中から読書灯60を消灯させたりあるいは座席10の反転動作中に、読書灯60を所定時間だけ点滅させてから消灯すること等が考えられる。さらに、制御部61の制御により、座席10が反転動作を終了した後、所定時間の点滅状態または点灯状態を経て消灯するように設定しても良い。
【0038】
制御部61に座席10の反転情報を送る反転検出部62は、例えば図4に示したようにマグネットMと近接スイッチSとからなる磁気近接スイッチを用いることができる。図4においては、近接スイッチSを一箇所だけに設けたように示したが、近接スイッチSを2箇所に設けて反転動作の開始と反転動作の完了とを検出することができる。
【0039】
これにより、制御部61は、座席10の反転動作の途中と反転動作の完了後とで読書灯60(60a,60b)の点灯状態および消灯の制御を異なるものとすることができる。なお、反転検出部62は、磁気近接スイッチに限らず座席10が反転動作していないか、反転動作の途中であるか、反転動作が完了したかを制御部61が判断できる情報を得られるものであるならば、どのような検出手段を用いてもよい。
【0040】
次に、本実施の形態に係る読書灯装置1の作用を説明する。
旅客列車の反転可能な座席10は、着座した乗客が進行方向に向くような向き(以下、「前位側向き」と記す。)に揃えて始発駅を出発する。座席10の窓側座席10aおよび通路側座席10bに着座した乗客は、読書等のために手元を明るくしたい場合には、窓側座席10aおよび通路側座席10bに個別に光照射する読書灯60a,60bを使用することができる。これら読書灯60a,60bを点灯させるためには、座席10のセンターアームレスト15の前側の側壁に配設された操作ボタン18のうち、自座席側にある側壁に設けられた操作ボタン18を操作すればよい。
【0041】
前位側向きにある座席10を反転させて後位側向きにすると、窓側座席10aは通路側になり、通路側座席10bは窓側になる。このため、座席10を反転させると窓側座席10a用の操作ボタン18は、通路側座席用の読書灯60bの操作が可能になり、通路側座席10b用の操作ボタン18は、窓側座席用の読書灯60aの操作が可能になるように操作ボタン18と読書灯60a,60bとの接続が切り替えられる。なお、後位側向きの座席10を再び反転させて前位側向きに戻すと、操作ボタン18と読書灯60a,60bとの接続が再び切り替えられる。
【0042】
図5には、座席10を反転させたときの窓側座席用の読書灯60aおよび通路側座席用の読書灯60bの点灯状態や消灯の変更パターンが例示されている。
座席10を反転させると、その反転動作の開始が反転検出部62によって検出される。座席10が反転動作を開始すると、制御部61は、図5に例示したようなパターンの制御を行う。
【0043】
すなわち、反転動作直前の窓側座席用の読書灯60aと通路側座席用の読書灯60bの双方が消灯していた場合には、パターンAのように、反転動作中はいずれの読書灯60a,60bもそのまま消灯を継続させる。座席10の向きが後位側向きまで反転して反転動作が完了すると、これを反転検出部62が検出して、その情報を制御部61へ送る。反転動作の完了情報を得た制御部61は、座席10の反転動作が完了した後も、窓側座席用の読書灯60aおよび通路側座席用の読書灯60bの消灯を継続させる。
【0044】
また、座席10を反転させる際に、反転動作直前の窓側座席用の読書灯60aは消灯しており、通路側座席用の読書灯60bが点灯していた場合、制御部61による反転動作中の制御は、パターンBのように、窓側座席用の読書灯60aはそのまま消灯しておき、点灯していた通路側座席用の読書灯60bは点滅させる。座席10の向きが後位側向きまで反転して反転動作が完了すると、制御部61は、反転検出部62からの反転動作の完了情報を得てから窓側座席用の読書灯60aの消灯はそのままで、通路側座席用の読書灯60bも消灯させる。
【0045】
パターンCは、座席10を反転させる際に、反転動作直前の窓側座席用の読書灯60aは点灯しており、通路側座席用の読書灯60bが消灯していた場合のパターンである。このパターンCは、座席10を反転させる際に、反転動作直前の読書灯60a,60bの点灯および消灯の状態がパターンBとは逆になっており、反転動作中の点灯状態および消灯も逆になっている。座席10の反転動作が完了した後は、パターンBと同様に窓側座席用の読書灯60aおよび通路側座席用の読書灯60b双方ともに消灯となる。
【0046】
また、パターンDのように、座席10を反転させる際に窓側座席用の読書灯60aと通路側座席用の読書灯60bの双方がともに点灯していた場合には、反転検出部62から座席10の反転動作の開始の情報を得た制御部61は、座席10の反転動作中に読書灯60a,60bのいずれをも、座席10の反転動作以前の点灯状態とは異なる状態にする。例えば、読書灯60a,60bを点滅させる。そして、反転動作の終了後は消灯させる。これにより、着座者の注意を喚起すると共に読書灯を無駄に点灯させることがなく、電力の無駄な消費を防止することができる。
【0047】
座席10を反転させるときに読書灯60a,60bが点灯していた場合、反転動作中における読書灯60a,60bの制御の他の例として、読書灯60a,60bを所定時間の点滅状態を経て消灯してもよい。これにより、乗客に読書灯60a,60bに対する注意を喚起させることができるので、座席10を反転させた後も読書灯60a,60bを使用するつもりでいる乗客にとって利便性が増すことになる。また、反転動作中には点滅状態に維持して、反転終了後に消灯させても良い。
【0048】
さらに別の例として、座席10が反転動作を完了した後、所定時間の点滅状態を継続させてから消灯してもよい。また、座席10が反転動作を完了した後、所定時間の点灯状態を継続させた後に消灯してもよい。このように座席10の反転動作が途中であるときに、乗客は、読書灯60a,60bに対する注意をさらにいっそう喚起させられることになり、座席10の反転直後から読書をするときに読書灯60a,60bの点灯にほぼ確実に注意を向けさせられる。したがって、乗客による読書灯60a,60bの使用状態に則した利便性を得ることができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、読書灯60a,60bの点滅は、点灯時間と消灯時間の長短、点灯時間と消灯時間の長さの比、あるいは点灯時間と消灯時間の長短や比の変動等をどのようなものにしてもよい。
【0050】
また、座席10の反転の開始を足踏ペダル13の操作を検知することによって検出してもよい。さらに、操作ボタン18の配設位置は、センターアームレスト15の側壁に代えて、センターアームレスト15の上面等やサイドアームレスト14の側壁、上面等にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、旅客列車等の客室における読書灯装置に関するものとして説明したが、横並びの座席を備え、当該座席が反転可能なものであれば広く適用することができる。例えば、回転対座シートを備える乗用車の読書灯装置としても適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
M…マグネット
S…近接スイッチ
1…読書灯装置
10…座席
10a…窓側座席
10b…通路側座席
11…脚台
13…足踏ペダル
14…サイドアームレスト
15…センターアームレスト
16…操作ボタン
17…操作ボタン
18…操作ボタン
30…座部
40…背凭れ
50…レッグレスト
60…読書灯
60a…窓側座席用の読書灯
60b…通路側座席用の読書灯
61…制御部
62…反転検出部
図1
図2
図3
図4
図5