特許第6067362号(P6067362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067362
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】トイレ用小動物用尿吸収材
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   A01K1/015 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-275480(P2012-275480)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-117236(P2014-117236A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】山本 準
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−246905(JP,A)
【文献】 特開2000−103776(JP,A)
【文献】 特開2002−142599(JP,A)
【文献】 特開平09−067750(JP,A)
【文献】 特開平09−137095(JP,A)
【文献】 特開2002−045067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
A01K 23/00
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基成分を含有し、以下の方法で測定されたpHが7.5以上9以下であり、抗菌性を有し、かつ板状又はシート状をしたトイレ用小動物用尿吸収材であって、
前記塩基成分が、トリスヒドロキシメチルアミノメタンであり、
第四級アンモニウム塩を抗菌剤として含む、トイレ用小動物用尿吸収材
〔pHの測定方法〕
前記小動物用尿吸収材と、その質量の50倍の質量の塩化ナトリウム濃度0.9質量%の生理食塩水とを混合撹拌して得られた液の25℃におけるpHを測定する。
【請求項2】
前記塩基成分に加えて強酸を含有するpHの緩衝系をなしている請求項1に記載のトイレ用小動物用尿吸収材。
【請求項3】
未漂白パルプを含有し、該パルプの含有量が90質量%以上である請求項1又は2に記載のトイレ用小動物用尿吸収材。
【請求項4】
トイレ本体を液透過性の簀の子により上層部分及び下層部分に区画して、前記上層部分に粒状の排泄物処理材が収容可能であり、前記下層部分に液保持性の尿吸収材が収容可能である小動物用トイレにおける該尿吸収材として用いられる請求項1ないしのいずれか一項に記載のトイレ用小動物用尿吸収材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物が排泄する尿の吸収に用いられる吸収材に関する。
【背景技術】
【0002】
小動物が排泄する尿からは、それに含まれる尿素が微生物によって酵素分解されアンモニアが発生する。しかしアンモニアの発生は、尿が排泄されてから数日が経過した後であり、尿の排泄と同時に発生するわけではない。アンモニア臭への対策としては、抗菌剤によって微生物の増殖を抑えたり、酸性物質を用いてアンモニアを中和したりするなどの対策が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ペット用シーツの吸水体が、有機酸及びその塩を配合し、pHが4.0〜6.5である消臭剤組成物を含有することが記載されている。この消臭剤組成物は、その100質量部に対して1mol/Lのアンモニア水溶液をpHが7.0になるまで添加したときの該アンモニア水溶液の添加量が8 質量部以上になるように緩衝能が調整されている。特許文献2には、ペットのトイレ用吸液シートの吸収層が、カチオン系界面活性剤を含有することにより付与される抗菌性を有する抗菌層と、有機酸を含有することにより付与される制菌性を有する制菌層とが互いに接することにより形成された抗菌制菌層を備えることが記載されている。特許文献3には、吸収体と、該吸収体上に配置された親水性のトップシートとを備えたペットシートにおいて、両性の高分子溶液でpHが酸性を示すものを、該吸収体及び該トップシートに固定することが記載されている。特許文献4には、ペット用シーツの吸水体に予め抗菌剤を染み込ませた吸着剤を含有させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−158930号公報
【特許文献2】特開2005−6604号公報
【特許文献3】特開2002−10718号公報
【特許文献4】実用新案登録第3044091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、排泄直後の尿、例えば猫の尿からは、悪臭物質として知られている脂肪酸、硫黄化合物、窒素化合物及びケトン類が混在して揮散する。特にオスの猫の尿は、悪臭の程度の高い物質である脂肪酸及び硫黄化合物の揮発の程度が高い。排泄直後の尿から発生するこれらの悪臭物質への対策としては、これまでは香料を用いた悪臭のマスキング等による対策が施されているに過ぎず、その対策は十分であるとは言えない。
【0006】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る小動物用の尿吸収材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塩基成分を含有し、以下の方法で測定されたpHが7以上9以下であり、抗菌性を有し、かつ板状又はシート状をした小動物用尿吸収材を提供するものである。
〔pHの測定方法〕
前記小動物用尿吸収材と、その質量の50倍の質量の塩化ナトリウム濃度0.9質量%の生理食塩水とを混合撹拌して得られた液の25℃におけるpHを測定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排泄直後の尿臭、及び排泄からの時間経過による尿臭が効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の尿吸収材の一例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の尿吸収材を有する小動物用トイレの一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の吸収材は小動物が排泄する尿を主として吸収するために用いられるものである。本発明においては、体重が約15kg以下である動物を主として対象とする。そのような小動物としては、例えば犬及び猫などの非ヒトほ乳類が挙げられるが、これらに限られない。
【0011】
本実施形態の吸収材は、尿を吸収保持し得る吸水材料を含んで構成されている。吸水材料としては、木材又は非木材からなる植物繊維等の親水性繊維、粘土鉱物系材料、高分子吸収材料などを用いることができる。これらの吸水材料はそれぞれ単独で用いてもよく、あるいはこれらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。尿吸収材は例えば、これらの吸水材料を所定の厚みに堆積させた堆積体の状態となっているか、あるいは該堆積体を圧縮してなる成形体の状態となっている。
【0012】
吸水材料としては、特にパルプ等の親水性繊維を用いることが好ましい。とりわけ吸収材は未漂白パルプを含有し、該未漂白パルプの含有量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0013】
尿吸収材は、対向する一対の主吸水面を有する板状又はシート状をしている。尿吸収材が板状であるか、それともシート状であるかは該吸収材の剛性に依存する。例えば尿吸収材を、その主吸水面を水平面内に位置させて片持ちしたときに、該主吸水面が水平面内を維持し得る程度の剛性を有している場合には、尿吸収材は板状であると言える。一方、主吸水面が水平面内を維持できない場合には、尿吸収材はシート状であると言える。
【0014】
尿吸収材は、それ単独でトレー等の浅底の容器内に設置して用いてもよい。あるいは図1に示すとおり、尿吸収材1を液透過性の表面シート2と、液不透過性ないし液難透過性の裏面シート3との間に配置して用いてもよい。この場合、表面シート2側の面が主吸水面として用いられる。
【0015】
尿吸収材は塩基成分を含有している。それによって尿吸収材は塩基性を呈している。具体的には、尿吸収材はpHが7以上、好ましくは7.5以上、更に好ましくは8.0以上である。また尿吸収材はpHが9以下、好ましくは8.8以下、更に好ましくは8.5以下である。例えば尿吸収材のpHは7以上9以下であり、好ましくは7.5以上8.8以下であり、更に好ましくは8.0以上8.5以下である。尿吸収材のpHをこの範囲内に設定することによって、尿に含まれる尿臭の原因物質である酸性成分が中和されるので尿臭を効果的に消臭することができる。
【0016】
尿吸収材のpHは以下の方法で測定される。すなわち尿吸収材と、その質量の50倍の質量の生理食塩水(塩化ナトリウムの濃度0.9質量%の水溶液)とをビーカー内で混合撹拌し、得られた液のpHを測定する。撹拌はマグネットスターラーを用いて、回転子が十分回転する設定回転数(例えば800rpm)で行う。pHの測定は25℃で行う。pHの測定に用いられる尿吸収材の質量に特に制限はないが、測定のしやすさの点から、例えば2g以上20g以下とすることが好ましい。
【0017】
尿吸収材に含有されている前記塩基成分としては、該尿吸収材のpHを前記範囲内とし得るものであればその種類に特に制限はないが、弱塩基を用いることが好ましい。特に、その酸解離定数pKaが、アンモニアのpKaよりも小さい弱塩基を用いることが好ましい。そのような弱塩基を用いることで、該弱塩基がアンモニアよりも優先的に解離するようになるので、アンモニアの発生を効果的に抑制できるからである。
【0018】
塩基成分の具体例としては、例えばトリスヒドロキシメチルアミノメタン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアミン類、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩などを用いることができる。これらの塩基成分はそれぞれ単独で用いることもでき、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの塩基成分のうち、特にトリスヒドロキシメチルアミノメタンを用いることが、緩衝能の有効範囲や使用する動物への安全性が比較的高く無臭である点から好ましい。
【0019】
塩基成分は、上述の方法で測定される尿吸収材のpHが上述の範囲となるような量が、該尿吸収材に含有されていればよい。
【0020】
尿吸収材は、塩基成分に加えて強酸を含むことが、該塩基成分と該強酸との緩衝系によるpHの調整及びその安定化が図れる点から好ましい。緩衝系を構成する強酸としては、例えば塩酸などを用いることができる。特に、塩基成分として上述したトリスヒドロキシメチルアミノメタンを用いる場合には、強酸として塩酸を用いることが、緩衝能の発現やpH調整能の点から好ましい。
【0021】
尿吸収材は、そのpHが上述の範囲であることによって、尿臭の原因物質である酸性成分を中和する作用を有していることに加えて、抗菌性を有している。これによって微生物の繁殖が抑制されて、尿の腐敗に起因して生じる物質であるアンモニアの発生が効果的に抑制される。尿吸収材に抗菌性を付与するためには、各種の抗菌剤を該尿吸収材に含有させることが有利である。抗菌剤としては、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の第四級アンモニウム塩、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ジデシルメチルアンモニウム、ポリフェノール類、銀、銅などを用いることができる。これらの抗菌剤はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの抗菌剤のうち、特に塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム塩を用いることが、殺菌性が高くかつ安全性が高く、無臭である点から好ましい。
【0022】
尿吸収材に含まれる抗菌剤の割合は、使用する抗菌剤の種類に応じて調整する必要があるが、例えば抗菌剤として塩化ベンザルコニウム塩を用いる場合には、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることが更に好ましい。また、尿吸収材に含まれる抗菌剤の割合は、例えば塩化ベンザルコニウム塩であれば、0.5質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましい。例えば抗菌剤の割合は、0.001質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.05質量%以下であることが更に好ましい。
【0023】
尿吸収材は、例えば上述した塩基成分や、必要に応じて用いられる強酸及び抗菌剤等を含む水溶液を、上述した吸水材料からなる堆積体やその圧縮成形体に含浸させ、次いで乾燥等の手段によって水を除去することによって得ることができる。
【0024】
尿吸収材は、それ単独で小動物の尿を吸収するために用いることができる他、トイレ本体を液透過性の簀の子により上下に区画して、上層部分に粒状の排泄物処理材が収容可能であり、下層部分に液保持性の吸収材が収容可能である小動物用トイレにおける該吸収材として用いることができる。例えば図2に示すトイレ10に用いることができる。同図に示すトイレ10は、トイレ本体11と、小動物の尿を透過可能な簀の子12を備えた内容器13と、簀の子12の下方に配置され簀の子12を透過した尿を収容するトレー14とを備えている。簀の子12はトイレ本体11内を上層部分と下層部分とに区画する。簀の子12を備えた内容器13はトイレ本体11の上層部分に位置し、かつ粒状の排泄物処理材(図示せず)を収容可能になっている。排泄物処理材としては、例えば本出願人の先の出願に係る特開2002−84909号公報に記載のもの等を用いることができる。トレー14は、トイレ本体11の下層部分に位置し、かつ尿吸収材1の収容が可能になっている。トレー14は、トイレ本体11から引き出し可能になっている。
【0025】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の小動物用尿吸収材を開示する。
<1>
塩基成分を含有し、以下の方法で測定されたpHが7以上9以下であり、抗菌性を有し、かつ板状又はシート状をした小動物用尿吸収材。
〔pHの測定方法〕
前記小動物用尿吸収材と、その質量の50倍の質量の塩化ナトリウム濃度0.9質量%の生理食塩水とを混合撹拌して得られた液の25℃におけるpHを測定する。
【0026】
<2>
前記塩基成分の酸解離定数pKaがアンモニアのpKaよりも小さいものである前記<1>に記載の小動物用尿吸収材。
<3>
前記塩基成分に加えて強酸を含有することで前記pHを7以上9以下の範囲内とした前記<1>又は<2>に記載の小動物用尿吸収材。
<4>
前記塩基成分が、トリスヒドロキシメチルアミノメタンである前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<5>
抗菌剤を含むことで前記抗菌性が発現している前記<1>ないし<4>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<6>
前記抗菌剤が第四級アンモニウム塩である前記<5>に記載の小動物用尿吸収材。
【0027】
<7>
未漂白パルプを含有し、該パルプの含有量が90質量%以上である前記<1>ないし<6>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<8>
トイレ本体を液透過性の簀の子により上層部分及び下層部分に区画して、前記上層部分に粒状の排泄物処理材が収容可能であり、前記下層部分に液保持性の吸収材が収容可能である小動物用トイレにおける該吸収材として用いられる前記<1>ないし<7>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<9>
前記pHが7以上、好ましくは7.5以上、更に好ましくは8.0以上であり、そして9以下、好ましくは8.8以下、更に好ましくは8.5以下である前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<10>
前記塩基成分として弱塩基を用いる前記<1>ないし<9>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<11>
前記強酸として、塩酸を用いる前記<3>ないし<10>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
【0028】
<12>
前記第四級アンモニウム塩が、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムの少なくともいずれか1つである<6>ないし<11>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<13>
前記抗菌剤の含有量が好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である前記<5>ないし<12>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<14>
未漂白パルプを含有し、該パルプの含有量が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<15>
液透過性の表面シートと、液不透過性ないし液難透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置して尿を吸収保持し得る吸水材料とからなる前記<1>ないし<14>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材。
<16>
前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の小動物用尿吸収材の製造方法であって、少なくとも塩基成分を含む水溶液を吸収材料に含浸させる工程と、水を除去する工程とを有する小動物用尿吸収材の製造方法。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0030】
〔実施例1〕
以下の表1に示す組成の水溶液を調製した。なお同表に示すpKaの値は25℃でのものである。水溶液の調製とは別に、吸収材料として、未漂白パルプ100%を積繊して得られた堆積体を製造した。この堆積体は坪量800g/m2であり、平面視での寸法が5cm×5cmであり、1kPa荷重下での厚みが0.4cmのものである。この堆積体に前記の水溶液を表1に示す添加量で均一に添加・含浸させた。この水溶液が含浸された堆積体を乾燥させて水を除去することで、目的とする尿吸収材を得た。この尿吸収材のpH(25℃)を上述の方法で測定したところ、表1に示す値となった。
【0031】
〔実施例2ないし5〕
表1に示す組成の水溶液を調製し、これを実施例1と同様の堆積体に表1に示す添加量で均一に添加・含浸させた。これら以外は実施例1と同様にして尿吸収材を得た。尿吸収材のpHを上述の方法で測定したところ、表1に示す値となった。
なお、アンモニアのpKaは9.25であり(『LANGE‘S HANDBOOK OF CHEMISTRY』Fourteenth Edition)、実施例1ないし5で塩基成分として用いたフタル酸水素カリウム、トリスヒドロキシメチルアミノメタンのpKaはいずれも、アンモニアのpKaよりも小さいものであった。
【0032】
〔比較例1ないし4〕
表1に示す組成の水溶液を調製し、これを実施例1と同様の堆積体に表1に示す添加量で均一に添加・含浸させた。これら以外は実施例1と同様にして尿吸収材を得た。各比較例の尿吸収材のpHを上述の方法で測定したところ、表1に示す値となった。比較例1はブランクであり、堆積体にイオン交換水を添加しただけのものである。比較例2は、酸性水溶液を添加したものである。比較例3は、塩基成分を含有しているものの、酸性のpHを呈している例である。比較例4は、強塩基と弱酸との緩衝系によって酸性のpHを呈している例である。
【0033】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた尿吸収材について、モデル悪臭物質として酢酸を用い、以下の方法で、酢酸水溶液を尿吸収材に添加した後、揮発した酢酸ガスの濃度を測定した。また、以下の方法で尿吸収材に尿を添加した後に、該尿吸収材から生じる臭いを、10分後及び1週間後にパネラーに官能評価させた。それらの結果を表1に示す。
【0034】
〔酢酸ガスの濃度の測定〕
尿吸収材を1リットルのビーカー内に載置し、その上方から酢酸1%水溶液を1cc添加した。25℃下に1時間放置した後に、揮発した酢酸ガスの濃度を、ガス検知管を用いて測定した。
【0035】
〔尿臭の官能評価(10分後)〕
尿吸収材を1リットルのビーカー内に載置し、その上方から猫の尿を0.5cc添加した。25℃下に10分放置した後、3名のパネラーに尿臭の程度を以下の8段階の基準で官能評価させた。3名のパネラーの評価の平均値をもって官能評価の値とした。数値が小さいほど尿臭がしないことを意味する。
0:臭いを感じない
1:やっと感知できる臭い
2:何の臭いか分かる弱い臭い
2.5:2と3の中間
3:容易に感知できる臭い
3.5:少し強い臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
【0036】
〔尿臭の官能評価(1週間後)〕
尿吸収材を1リットルのビーカー内に載置し、その上方から猫の尿を0.5cc添加した。ビーカーの口を密封し、25℃下に1週間放置した後、3名のパネラーに尿臭の程度を、前記の「尿臭の官能評価(10分後)」と同様の基準で官能評価させた。3名のパネラーの評価の平均値をもって官能評価の値とした。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例の尿吸収材(本発明品)は、比較例の尿吸収材に比べて、酸性物質の揮発が抑制されており、尿臭の原因物質である酸性成分が中和されていることが判る。また、尿を吸収した直後、及び尿を吸収してから時間が経過した後のいずれの場合においても尿臭が抑制されていることが判る。
【符号の説明】
【0039】
1 尿吸収材
2 表面シート
3 裏面シート
10 小動物用トイレ
11 トイレ本体
12 簀の子
13 内容器
14 トレー
図1
図2