(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式図である。
図1に示すように、プラズマ処理装置1には、処理容器2、プラズマ発生部20、排気部21、プロセスガス導入部22、載置部18、除去ガス供給部28が設けられている。
【0009】
処理容器2は、略円筒形状を呈している。処理容器2は、大気よりも減圧された雰囲気を維持可能とされている。また、処理容器2は、ステンレスやアルミニウム合金などの金属材料で形成されている。
【0010】
処理容器2の側壁には被処理物Wを処理容器2の内部に搬入、搬出するための搬入搬出口10が設けられている。また、搬入搬出口10に対向してロードロック室11が設けられている。ロードロック室11には、搬入搬出口10に連通する開口部11aが設けられ、開口部11aを気密に閉止することができるゲートバルブ12が設けられている。また、ゲートバルブ12を昇降させることで開口部11aの開閉を行う開閉手段12aが設けられている。
【0011】
被処理物Wは、例えば、リソグラフィ用石英基板やシリコンウェーハなどの半導体ウェーハなどとすることができる。リソグラフィ用石英基板としては、例えば、位相シフトマスク(PSM;phase shifting mask)、モリブデン・シリコン(OMOG;opaque MoSi on glass)マスク、ナノインプリントリソグラフィー(NIL;nanoimprint lithography)マスク、極端紫外線リソグラフィ(EUV;extreme ultraviolet lithography)マスクなどに用いられる石英基板を例示することができる。ただし、被処理物Wは、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0012】
プラズマ発生部20は、処理容器2の内部にプラズマPを発生させる。この場合、プラズマ発生部20は、被処理物Wの上方(重力に逆らう方向)にプラズマPを発生させる。 プラズマ発生部20には、誘電体窓3、導波管4、マイクロ波発生部23が設けられている。
誘電体窓3は、処理容器2の上部に設けられた開口部に備えられている。誘電体窓3は、石英ガラスあるいは酸化アルミニウムなどの誘電体材料で形成されている。また、処理容器2の開口部と誘電体窓3との間には図示しないOリングなどのシール部材が設けられ、気密が維持できるようになっている。
【0013】
導波管4は、誘電体窓3を含む処理容器2の上部に設けられている。導波管4の断面は矩形状を呈している。そして、誘電体窓3に対向する面(H面)がマイクロ波Mの電界方向に垂直な面となっている。また、H面に対して垂直方向に伸びる面(E面)がマイクロ波の電界方向に平行な面となり、マイクロ波Mの進行側に設けられH面およびE面に対して垂直な面が反射面(短絡面;R面)となっている。また、H面には、スリット(アンテナ手段)5がE面に沿って開口している。
【0014】
マイクロ波発生部23は、導波管4に接続されており、導波管4の内部にマイクロ波Mを放射する。マイクロ波Mの周波数は、例えば、2.45GHzとすることができる。導波管4の内部に放射されたマイクロ波Mは、導波管4により伝播され、スリット5を介して処理容器2の内部に導入される。
【0015】
排気部21には、排気手段24、排気管25が設けられている。
排気手段24は、処理容器2の内部を排気する。排気手段24は、例えば、真空ポンプなどとすることができる。
排気管25の一方の端部は、処理容器2の底面に設けられた排気口7に接続されている。排気管25の他方の端部は、排気手段24に接続されている。
また、排気口7と排気手段24との間には図示しない開閉バルブやAPC(Auto Pressure Controller)バルブのような圧力制御バルブなどを設けることができる。
排気部21は、排気手段24と、図示しない開閉バルブや圧力制御バルブなどと、により処理容器2の内部を排気して、処理容器2の内部を所定の圧力まで減圧する。そして、所定の圧力まで減圧された処理容器2の内部の雰囲気を維持する。
【0016】
プロセスガス導入部22は、処理容器2の内部に流量が制御されたプロセスガスGを導入する。
プロセスガス導入部22には、供給部26、配管27が設けられている。
供給部26は、例えば、高圧のプロセスガスGを収納した圧力容器などとすることができる。
配管27の一方の端部は、処理容器2の側壁上部に設けられたガス導入口6に接続されている。配管27の他方の端部は、供給部26に接続されている。
この場合、ガス導入口6は、誘電体窓3の下方に位置するプラズマPの発生領域に向けてプロセスガスGを導入することができるような位置に設けられている。
また、ガス導入口6と供給部26との間には図示しない開閉バルブや流量制御弁などが設けられている。
【0017】
プロセスガスGは、プラズマ処理の種類などにより適宜選択される。例えば、プラズマ処理がエッチング処理である場合には、プロセスガスGは、酸素ガス単体、あるいは酸素ガスにCF
4、NF
3、SF
6などのフッ素系ガスを添加した混合ガス、これらのガスに水素ガスを添加したガスなどとすることができる。
例えば、プラズマ処理がアッシング処理(レジストの除去)である場合には、プロセスガスGは、酸素ガス単体、窒素ガス単体、水素ガス単体、あるいはこれらの少なくとも1種を含む混合ガス、これらのガスに添加ガスを添加したガスなどとすることができる。
なお、プロセスガスGは例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0018】
載置部18には、台座8、支持部13、昇降板15、昇降部16が設けられている。
台座8は、被処理物Wの下方(重力の方向)に設けられている。
台座8は、基部8a、支柱8bを有する。基部8aは、処理容器2の内部に設けられている。支柱8bは柱状を呈し、一方の端部が基部8aの下端面に接続されている。支柱8bの他方の端部は、処理容器2の底面を貫通し、処理容器2の外部に延びている。
【0019】
台座8の内部には温度制御部8cが設けられている。温度制御部8cは、被処理物Wの温度を制御する。例えば、温度制御部8cは、ヒータなどの加熱装置とすることもできるし、チラーなどの冷却装置とすることもできる。また、温度制御部8cは、加熱装置の機能と冷却装置の機能を併せ持つものとすることもできる。
【0020】
台座8の上面よりは下方であって台座8の外周には、整流板9が設けられている。整流板9には複数の孔が設けられている。整流板9は、被処理物Wの処理面Waにおけるガスの流れを制御する。
【0021】
支持部13は、被処理物Wの周縁部分を支持する。この場合、支持部13は、被処理物Wの処理面Waを下方に向けて、被処理物Wを支持する。
図2は、支持部13を例示するための模式図である。
なお、
図2(a)は支持部13を例示するための模式斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)におけるA部の模式断面図である。
図2(c)は他の実施形態に係るA部の模式断面図である。
【0022】
図2(a)に示すように、支持部13には、受け部13a、軸部13bが設けられている。
受け部13aは、円環状を呈している。ただし、受け部13aの形態は円環状に限定されるわけではなく、例えば、被処理物Wの外形形状に応じて適宜変更することができる。例えば、円板状の被処理物Wの場合には円環状の受け部13aとすることができるし、矩形状の被処理物Wの場合には矩形状の受け部13aとすることができる。
【0023】
図2(b)に示すように、受け部13aの中心側に面する側には、傾斜面13a1が設けられている。傾斜面13a1は、下端側が上端側よりも受け部13aの中心側に位置するように傾斜している。また、傾斜面13a1の下端は、被処理物Wの周端面よりも受け部13aの中心側に位置している。そのため、受け部13aの上方から被処理物Wを傾斜面13a1上に受け渡すことができ、傾斜面13a1上に支持されている被処理物Wを上方に搬出することができる。
【0024】
また、
図2(c)に示すように、受け部13aの中心側に凹部13a2を設けることもできる。凹部13a2の上端は、受け部13aの上端面に開口している。凹部13a2の開口寸法は、被処理物Wの外形寸法よりも僅かに長くなっている。また、凹部13a2の底面の寸法は、被処理物Wの外形寸法よりも短くなっている。そのため、受け部13aの上方から被処理物Wを凹部13a2の内部に受け渡すことができ、凹部13a2の内部に支持されている被処理物Wを上方に搬出することができる。
【0025】
この場合、
図2(b)に例示をしたような傾斜面13a1を有する受け部13aとすれば、受け部13aと被処理物Wの処理面Waとが接触するのを抑制することができる。
一方、
図2(c)に例示をしたような凹部13a2を有する受け部13aとすれば、被処理物Wの支持を安定させることができる。
【0026】
また、被処理物Wの処理面Waとは反対側の面WbがプラズマPの発生領域に向くようにして、被処理物Wを受け部13aに支持させる。すなわち、処理面Waを下方に向けて、被処理物Wを受け部13aに支持させる。
【0027】
レジストなどの除去対象物の表面や内部に除去が困難な異物がある場合がある。異物としては、例えば、イオン注入によりレジストの表面に形成された変質層などを例示することができる。この様な場合に、処理面Waを上方に向けてプラズマ処理を行うと、異物が処理面Wa上に残るおそれがある。そして、異物が処理面Wa上に残ると、プラズマ処理における熱で異物が処理面Wa上に焼き付き、その後の除去が非常に困難となるおそれがある。
【0028】
本実施の形態においては、処理面Waを下方に向けているので異物を落下させて除去することができる。
【0029】
この場合、処理面Wa側を支持することになるが、傾斜面13a1や凹部13a2により被処理物Wの周縁部分を支持するようにしている。そのため、処理面Wa側に設けられた回路やパターンなどにダメージが発生するのを抑制することができる。
【0030】
また、処理面Waとは反対側の面WbがプラズマPの発生領域に向くようにしているので、プラズマPの発生領域において生成されたイオンなどの荷電粒子が処理面Waに入射するのを抑制することができる。そのため、イオンなどの荷電粒子が衝突することで、処理面Wa側に設けられた回路やパターンなどにダメージが発生するのを抑制することができる。
この場合、処理面Wa側は中性活性種による化学的な処理が施されることになる。そのため、レジストの除去だけではなく、例えば、等方性エッチングなどを行うこともできる。
なお、処理面Waとは反対側の面Wbにはイオンなどの荷電粒子が入射することになるが、一般的には、面Wb側には回路やパターンなどが設けられていないためダメージの発生が問題となることはない。
【0031】
軸部13bは、柱状を呈し、一方の端部が受け部13aの下端面に接続されている。また、台座8には軸部13bを昇降自在に移動させることができる貫通孔が設けられている。そして、軸部13bの他方の端部は、台座8を貫通し昇降板15と接続されている。軸部13bは、等間隔に複数設けることができる。この場合、軸部13bの数を3つ以上とすれば、被処理物Wの支持を安定させることができる。
被処理物Wを安定して保持できるならば、支持部13は、軸部13bのみによって構成されていてもよく、受け部13aは必ずしも必要ではない。すなわち、受け部13aによって被処理物Wを保持するのではなく、軸部13bによって被処理物Wを保持してもよい。この場合、軸部13bの一方の端部(被処理物Wを保持する側の端部)は傾斜面や凹部を有するものとすることができる。
【0032】
昇降板15は、台座8と処理容器2の底面との間に設けられている。
昇降部16は、昇降板15を昇降させる。そのため、昇降部16は、昇降板15と軸部13bを介して受け部13aの昇降位置、ひいては支持部13に支持された被処理物Wの昇降位置を変化させることができる。
【0033】
また、振動部32をさらに設けることができる。
振動部32は、被処理物Wに振動を加えて異物を落下させやすくする。振動部32は、例えば、超音波振動装置などとすることができる。この場合、振動部32は、上下方向の振動を被処理物Wに加えるものとすることができる。振動部32は、例えば、昇降板15に設けるようにすることができる。
なお、昇降部16により被処理物Wに振動を加えることもできる。その場合には、昇降部16が振動部32となる。
【0034】
除去ガス供給部28は、台座8の被処理物Wが支持されている側に除去ガスG1を供給する。
除去ガス供給部28には、ガス供給部29、制御部30、配管31が設けられている。 ガス供給部29は、例えば、高圧の除去ガスG1を収納した圧力容器などとすることができる。除去ガスG1は、プラズマ処理に対する影響が少ないものであれば特に限定はない。除去ガスG1は、例えば、窒素ガスや、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの希ガスなどとすることができる。
【0035】
制御部30は、ガス供給部29から供給された除去ガスG1の流量を制御する。制御部30は、例えば、流量制御弁などとすることができる。
配管31は、ガス供給部29と制御部30との間、および制御部30と台座8に設けられた貫通孔8dとの間を接続する。
【0036】
貫通孔8dは、処理容器2の外部にある支柱8bの端面と、基部8aの受け部13aが設けられる側の端面8a1との間を貫通している。そのため、基部8aの受け部13aが設けられる側に流量が制御された除去ガスG1を供給することができる。
【0037】
後述するように、レジストなどの除去対象物の表面や内部に除去が困難な異物がある場合には、除去がされなかった異物が基部8aの受け部13aが設けられる側の端面8a1上に落下する。除去ガス供給部28は、落下した異物を流出させるために設けられている。この場合、基部8aの受け部13aが設けられる側に供給される除去ガスG1の流量が多すぎると、異物が舞い上がり処理面に付着するおそれがある。また、基部8aの受け部13aが設けられる側に供給される除去ガスG1の流量が少なすぎると、異物を流出させる効果が得られなくなるおそれがある。また、異物を流出させる効果は、異物の重量や大きさ、被処理物Wの処理面Waと基部8aの端面8a1との間の距離などの影響を受ける。そのため、実験やシミュレーションなどにより予め除去ガスG1の流量などを求めるようにすることが好ましい。
【0038】
また、プラズマ処理装置1には、図示しない制御手段が設けられ、プラズマ処理装置1に設けられた各要素の動作や処理条件などが制御できるようになっている。例えば、支持部13の昇降動作、プロセスガスGの導入と停止、プロセスガスGの流量制御、マイクロ波Mの放射と停止、処理容器2内部の圧力制御、温度制御部8cによる温度制御、除去ガスG1の流量制御、ゲートバルブ12の昇降動作などが制御できるようになっている。
【0039】
また、処理容器2の内壁や内部に設けられる要素(例えば、基部8a、受け部13aなど)は、中性活性種が失活し難い材料から形成したり、中性活性種が失活し難い材料からなる膜で覆ったりすることができる。中性活性種が失活し難い材料としては、例えば、石英ガラス、シリコン、フッ素樹脂などを例示することができる。
【0040】
次に、プラズマ処理装置1の作用について例示をする。
まず、ロードロック室11を介して、図示しない搬送手段により被処理物Wを処理容器2の内部に搬入する。続いて、搬入した被処理物Wを支持部13の受け部13aに受け渡す。この際、処理面Waを下方に向けて、被処理物Wを受け部13aに支持させる。その後、図示しない搬送手段を処理容器2の外部に退避させる。続いて、処理容器2がゲートバルブ12により気密に密閉される。
【0041】
気密に密閉された処理容器2の内部が排気部21により所定の圧力まで減圧されるとともに、プロセスガス導入部22によりプロセスガスGが処理容器2の内部に導入される。また、マイクロ波発生部23からマイクロ波Mを放射させ、スリット5を介してマイクロ波Mを誘電体窓3に導入する。マイクロ波Mは誘電体窓3の表面を伝搬して、処理容器2内の処理空間に放射される。このようにして処理空間に放射されたマイクロ波Mのエネルギーにより、プロセスガスGのプラズマPが形成される。プラズマP中の電子密度が、誘電体窓3を透過して導入されるマイクロ波Mを遮蔽できる密度(カットオフ密度)以上になると、マイクロ波Mは誘電体窓3の下面から一定距離(スキンデプス)だけ入るまでの間に反射されるようになる。そのため、マイクロ波Mの定在波が形成されることになる。
【0042】
すると、マイクロ波Mの反射面がプラズマ励起面となって、このプラズマ励起面で安定的にプラズマPが励起されるようになる。このプラズマ励起面で励起された安定的なプラズマP中においては、イオンなどがプロセスガスGの分子と衝突することで励起された原子や分子、遊離原子などの中性活性種(励起活性種)が生成される。生成された中性活性種は、処理容器2内を下方に向けて拡散する。この際、整流板9の作用により、中性活性種の一部が被処理物Wの処理面Waと基部8aの端面8a1との間に導かれる。そして、処理面Waに飛来した中性活性種により、アッシング、等方性エッチング、表面改質などの各種のプラズマ処理が行われる。
【0043】
また、プラズマ処理中およびプラズマ処理後の少なくともいずれかにおいて、振動部32や昇降部16により被処理物Wに振動を加え、被処理物Wの処理面Waから異物を落下させる。
また、プラズマ処理中およびプラズマ処理後の少なくともいずれかにおいて、除去ガス供給部28により落下した異物を流出させる。すなわち、基部8aの端面8a1に除去ガスG1を流し、基部8aの端面8a1上にある異物を、整流板9を介して処理容器2の外部に排出させる。
【0044】
また、プラズマ処理中およびプラズマ処理前の少なくともいずれかにおいて、昇降部16により、受け部13aの昇降位置、ひいては支持部13に支持された被処理物Wの昇降位置を変化させる。
例えば、被処理物Wの処理面Waと基部8aの端面8a1との間の距離を長くすれば(上昇させれば)、処理面Waに飛来する中性活性種の量を増加させることができる。また、プラズマPからの輻射熱を利用して被処理物Wの温度を上昇させて、アッシング処理の効率を向上させることができる。
また、例えば、被処理物Wの処理面Waと基部8aの端面8a1との間の距離を短くすれば(下降させれば)、プラズマPからの輻射熱の影響を減少させることができる。そのため、温度制御部8cによる被処理物Wの温度制御が容易となるので、被処理物Wの温度制御の精度を向上させることができる。
【0045】
本実施の形態においては、被処理物Wの処理面Waを下方に向けた状態でプラズマ処理を施すようにしている。
プラズマP中においては、イオンなどの荷電粒子も生成されるが、イオンなどの荷電粒子は被処理物Wの周端を回り込むことができない。そのため、イオンなどの荷電粒子は被処理物Wの処理面Waまで到達することができない。
【0046】
その結果、処理面Wa側にイオンなどの荷電粒子が入射するのを抑制することができるので、処理面Wa側に設けられた回路やパターンなどにダメージが発生するのを抑制することができる。また、処理面Wa側は中性活性種による化学的な処理が施されることになるので、例えば、エッチング処理においては等方性エッチングを行うことができる。
なお、被処理物Wの処理面Waとは反対側の面Wbや被処理物Wの周端部(ベベル部)に、除去すべき膜や異物が付着しているような場合は、プラズマPにより生成されたイオンやラジカルなどのプラズマ生成物によって除去を行うことができる。
【0047】
また、レジストなどの除去対象物の表面や内部に除去が困難な異物がある場合には、異物を落下させて除去することができる。
本発明者の得た知見によれば、表面に変質層を有するレジストを除去する場合、処理面Waを上方に向けて処理を行った場合に比べて異物の残数を1/5程度にまで減少させることができた。
【0048】
また、振動部32や昇降部16により被処理物Wに振動を加えれば、異物の残数をさらに減少させることができる。
また、除去ガス供給部28により落下した異物を流出させれば、落下した異物が再び被処理物Wの処理面Waに付着するのを抑制することができる。
【0049】
プラズマ処理が終了した被処理物Wはロードロック室11を介して処理容器2の外部に搬出される。以後、同様にして他の被処理物Wのプラズマ処理を行うこともできる。
プラズマ処理の処理条件の一例を例示すると以下のようになる。
例えば、表面に変質層を有するレジストを除去する場合には、被処理物Wの処理面Waと基部8aの端面8a1との間の距離を0.5mm以上50mm以下、基部8aの温度を100℃以上400℃以下、処理容器2内の圧力を1Pa以上500Pa以下、プロセスガスGを酸素ガス単体、窒素ガス単体、水素ガス単体、あるいはこれらの少なくとも1種を含む混合ガス、これらのガスに添加ガスを添加したガスなどとすることができる。
【0050】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式図である。
図3に示すように、プラズマ処理装置1aには、処理容器2、プラズマ発生部20、排気部21、プロセスガス導入部22、載置部18、処理ガス供給部120が設けられている。すなわち、前述した除去ガス供給部28に代えて処理ガス供給部120が設けられている。
【0051】
処理ガス供給部120は、台座8の被処理物Wが支持されている側に中性活性種を含む処理ガスG2を供給する。
処理ガス供給部120には、プロセスガス導入部125、放電管127、導波部128、マイクロ波発生部129が設けられている。
プロセスガス導入部125は、放電管127の一方の端部に接続されている。プロセスガス導入部125は、放電管127の内部に流量が制御されたプロセスガスGを供給する。プロセスガス導入部125の構成は、例えば、プロセスガス導入部22と同様とすることができる。
【0052】
放電管127は、例えば、円筒状を呈し、マイクロ波Mに対する透過率が高くエッチングされにくい材料から形成されている。放電管127は、例えば、石英や酸化アルミニウムなどから形成することができる。放電管127のプロセスガス導入部125が接続される側とは反対の側には、貫通孔8dを有する支柱8bが接続されている。
【0053】
導波部128は、放電管127と略直交するようにして設けられている。導波部128の終端には終端整合器128aが設けられている。また、導波部128の入口側(マイクロ波Mの導入側)にはスタブチューナ128bが設けられている。また、放電管127へ向けてマイクロ波Mを放射する部分にはスリット126が設けられている。
【0054】
マイクロ波発生部129は、導波部128の放電管127が設けられる側とは反対側に接続されている。マイクロ波発生部129は、導波部128の内部にマイクロ波Mを放射する。マイクロ波Mの周波数は、例えば、2.45GHzとすることができる。導波部128の内部に放射されたマイクロ波Mは、導波部128により伝播され、スリット126を介して放電管127の内部に導入される。
【0055】
本実施の形態においては、前述した除去ガスG1に代えて中性活性種を含む処理ガスG2を基部8aの受け部13aが設けられる側に供給することができる。そのため、端面8a1上などにある反応生成物を分解したり、前述した異物を流出させたりすることができる。
また、中性活性種を含む処理ガスG2を基部8aの中央部分から放出させることができるため、処理物Wの処理面Waの中央部分における中性活性種の量を補うことができる。 なお、中性活性種を含む処理ガスG2の流量は、前述した除去ガスG1の場合と同様に、実験やシミュレーションなどにより予め求めるようにすることが好ましい。
【0056】
次に、プラズマ処理装置1aの作用について例示をする。
なお、処理ガス供給部120以外の作用は前述したプラズマ処理装置1の場合と同様のため、ここでは、主に処理ガス供給部120の作用について例示をする。
【0057】
処理容器2の内部が排気部21により所定の圧力まで減圧されると、放電管127の内部も所定の圧力まで減圧されることになる。
また、プロセスガス導入部125によりプロセスガスGが放電管127の内部に導入される。
また、マイクロ波発生部129からマイクロ波Mを放射させ、スリット126を介してマイクロ波Mを放電管127の内部に導入する。
【0058】
すると、導入されたプロセスガスGにマイクロ波Mが作用することでプロセスガスGのプラズマPが励起される。
【0059】
プラズマPにより生成された中性活性種を含む処理ガスG2は、貫通孔8dを介して基部8aの受け部13aが設けられる側に供給される。なお、プラズマP中においては、イオンなどの荷電粒子も生成されるが、イオンなどの荷電粒子は供給途中で失活するため、中性活性種を含む処理ガスG2が供給されることになる。
【0060】
プラズマ処理装置1aの場合にも、前述したプラズマ処理装置1が有する効果を享受することができる。
またさらに、端面8a1上などにある反応生成物を分解したり、前述した異物を流出させたりすることができる。
また、中性活性種を含む処理ガスG2を基部8aの中央部分から放出させることができるため、処理物Wの処理面Waの中央部分における中性活性種の量を補うことができる。
【0061】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の各実施形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、プラズマ処理装置1、1aが備える各要素の形状、寸法、材料、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。