特許第6067382号(P6067382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067382
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】凸部を有する油性固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20170116BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20170116BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K8/92
   A61Q1/04
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-8890(P2013-8890)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2014-141417(P2014-141417A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小坂 仁美
(72)【発明者】
【氏名】岡 宗清
(72)【発明者】
【氏名】宮本 國寛
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−326908(JP,A)
【文献】 特開2006−271371(JP,A)
【文献】 特開2011−121897(JP,A)
【文献】 特開2011−006349(JP,A)
【文献】 特開2002−154930(JP,A)
【文献】 特開2014−114258(JP,A)
【文献】 特開2014−129270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/02
A61K 8/92
A61Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を備えるシリコーン樹脂製のモールドに第1の油性固形化粧料を充填し、前記凹部以外のモールド面に付着した第1の油性化粧料を除去し、前記モールドの第1の油性固形化粧料を充填した側に枠を乗せて、前記枠内に溶解状態の第2の油性固形化粧料を充填して固化させた後に、前記モールドを外して得られる2層以上かつ凸部を有し、さらに、第1の油性固形化粧料と第2の油性固形化粧料の色調が異なることを特徴とする油性固形化粧料の製造方法。
【請求項2】
凹部を備えるモールドの当該凹部の深さが0.5〜1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の油性固形化粧料の製造方法。
【請求項3】
第1の油性固形化粧料及び第2の油性固形化粧料が口紅である請求項1及び2のいずれかに記載の油性固形化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、凸部を有する油性固形化粧料に関する。具体的には、凸部が模様や文字等であり、視覚的にインパクトのある油性固形化粧料に関する。より具体的には凸部とそうでない部の油性固形化粧料の色調や触感等の性質が異なり、そのために凸部の模様等がより引き立つ油性固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アイシャドウ、ファンデーションといった固形粉末化粧料に関して、その露出した表面に凹凸模様を施したものが知られている。このような模様の形成手法の一つとして、例えば、特許文献1には、化粧皿に充填された粉末化粧料の表面を薄葉紙で覆った上で、模様が凹凸状に刻まれた弾性型で圧縮打型する油性固形化粧製品の製法が開示されている。また、別の手法として、圧縮打型によって成形された固形化粧料の表面をレーザ等で部分的に剥離することによって、凹凸模様を表面に形成する手法も知られている。
【0003】
油性固形化粧料の加飾には、パール剤噴霧、凹凸模様等があるが、複雑な模様を付けようとすると、きれいな模様転写が行い難いという不都合がある。なぜなら、油性固形化粧料は、その表面が崩れやすく、また、油性のためにベタつきやすいという特徴があるからである。
【0004】
また凸模様を引き立たせようとすると、そうでない箇所と色調を異なるようにしなければならないが現状の公知技術では困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−154732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、油性固形化粧料の表
面に対する凸模様の形成を、簡単かつ低コストで、見栄えよく行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本願発明者等は、凹部を備えるシリコーン樹脂製のモールドに第1の油性固形化粧料を充填し、前記モールドの凹部以外に付着した第1の油性化粧料を除去し、第1の油性固形化粧料を充填した側の前記モールドに枠を乗せ、前記枠内に溶解状態の第2の油性固形化粧料を充填して固化させた後に、前記凹部を備えるモールドを外すことにより、視覚的にインパクトのある2層以上かつ凸部を有する油性固形化粧料が得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、2層以上かつ凸部を有する油性固形化粧料の表面に対する模様の形成を、簡単かつ低コストで、見栄えよく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】発明に係る凹部を有するシリコーン樹脂製モールドの斜視図。
図2図1のシリコーン樹脂製モールドの凹部に第1の油性固形化粧料を充填し、前記凹部以外のモールド面に付着した油性化粧料を除去した斜視図。
図3】発明に係る凹部に第1の油性固形化粧料を充填した後のモールドにプラスティック製枠を乗せた状態を示す斜視図。
図4】前記図3に第2の油性固形化粧料を充填した状態を示す斜視図。
図5】前記図1のモールドを外して、上下逆さにした状態の斜視図。第1の油性固形化粧料が凸部として存在している。このまま容器に装着することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明は凹部を備えるシリコーン樹脂製のモールドに第1の油性固形化粧料を充填し、前記モールドの凹部以外に付着した第1の油性化粧料を除去し、第1の油性固形化粧料を充填した側の前記モールドに枠を乗せ、前記枠内に溶解状態の第2の油性固形化粧料を充填して固化させた後に、前記モールドを外して得られる2層以上かつ凸部を有し、さらに、第1の油性固形化粧料と第2の油性固形化粧料の色調が異なることを特徴とする油性固形化粧料である。
【0011】
本願発明における凹部を備えるモールドの材質は、凹部を備えていれば特に限定はされないが例えば、金属、プラスティック、シリコーン樹脂製、ゴム製、木製等があげられる。好ましくは凹部から第1の油性固形化粧料を残存なく離型させるために伸展性が好ましく、例えばゴム製またはシリコーン樹脂が好ましい。さらに好ましくはシリコーン樹脂である。
【0012】
シリコーン樹脂としては、モールドメイキング用に使用されているものが好ましく、例えば信越シリコーン製のKE―1241(硬化剤CLA−9)、KE−1416(硬化剤CX−32−1714)等がある。シリコーン樹脂には硬化速度をコントロールするために硬化促進剤、硬化遅延剤を添加してもよい。また作業条件等から硬化後の物性を大きく変えない希釈剤を添加してもよい。
【0013】
伸展性があると離型させるために、冷却を過度に行う必要がない。
【0014】
本願発明に用いられる枠の材質は特に限定されないが、プラスティック製、金属製、紙製、ゴム製、シリコーン製等があげられる。枠ごと化粧容器に装着する場合には、重量、変形性の点からプラスティック製が好ましい。
【0015】
本願発明に用いられる枠は、そのまま化粧コンパクト容器に装着することができる。また2層以上かつ凸部を有する油性固形化粧料を枠から外して、中皿に装填してから化粧コンパクト容器に装着することも可能である。
本願発明に用いられる第1の油性固形化粧料と第2の油性固形化粧料は、油性固形化粧料であれば特に限定されない。それらは同一でも構わないが、色調や硬度等を変更すると視覚的や触感的に変化があり好ましい。本願発明における「視覚的や触感的の変化」の表現は消費者が色や触感の違いを視覚的、触覚的に認識できれば足りる程度という意味で用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、例えばパール剤等を加えたものと、そうでないものとは、「異なる色」である。
【0016】
本願発明でいう、2層以上かつ凸部を有する油性固形化粧料は油性で固形である化粧料であれば特に限定されないが、具体的には例えばリップカラー、リップスティック、油性チークや油性ファンデーション等があげられる。
【0017】
本願発明で用いられるモールドに備えられる凹部の形状は特に限定されない。文字や幾何学模様、絵も可能である。
本願発明で用いられるモールドに備えられる凹部の深さは特に限定されないが、第1の油性固形化粧料を効率よくモールドから外す(型離れ)ことを考慮すると、0.1〜3mm、好ましくは0.3〜2mm、より好ましくは0.5〜1mmである。
【0018】
本願発明の2層以上かつ凸部を有する油性固形化粧料は、メイクアップ化粧料、スキンケア化粧料、頭髪化粧料に応用することができ、目的に応じて種々の形状、製品形態とすることができる。形状としては、スティック状、皿状、ペンシル状等が挙げられ、製品形態としては、口紅、リップグロス、リップクリーム、ヘアワックス等が挙げられる。好ましくはリップスティック、リップクリームであり、より好ましくは皿状口紅である。
【0019】
本発明の2層以上かつ凸部を有する油性固形化粧料は、本願発明の効果を損なわない範囲で、各種成分、例えば、油性成分、粉体、界面活性剤、紫外線吸収剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0020】
油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、固形油、液体油の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられ、基剤やエモリエント成分等として用いられる。
【0021】
粉体成分としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられ感触調整や着色等の目的で用いられる。
【0022】
界面活性剤としては、化粧品一般に用いられている界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、粉体分散や感触調整等に用いられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。
【0023】
紫外線散乱剤としては、特に制限されないが、例えば酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸チタン、ケイ酸亜鉛、無水ケイ酸及びケイ酸セリウム等の無機化合物や、それらの無機化合物をマイカやタルク等の無機粉体に被覆したり、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂粉体に複合化したもの、さらにシリコン油や脂肪酸アルミニウム塩等で処理したものが挙げられる。また有機系紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル、メトキシケイ皮酸オクチル、メトキシケイ皮酸エトキシエチル、ジメトキシケイ皮酸モノエチルヘキサン酸グリセリル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ブチルメトキシベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン等が挙げられることができる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本願の油性固形化粧料及び製造方法を限定するものではない。
【0025】
実施例1
1.予め調製された油性固形化粧料1を深さ1mmの凹部を備えるシリコーン製モールドに充填し、(図2参照)
2.前記凹部以外のモールド面に付着した油性化粧料をゴム製ヘラで除去し、
3.前記モールドの第1の油性固形化粧料を充填した側にプラスティック製枠を乗せて、(図3参照)
4.前記プラスティック製枠内に、予め調製された溶解状態の第2の油性固形化粧料を充填し、冷凍庫にて冷却固化させた後に、(図4参照)
5.前記モールドを外して2層かつ凸部を有する油性固形化粧料が得られた。(図5参照)
【符号の説明】
【0026】
(1)凹部を有するモールド
(2)凹部
(3)第1の油性固形化粧料が充填された凹部
(4)枠
(5)第2の油性固形化粧料

図1
図2
図3
図4
図5