特許第6067388号(P6067388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067388
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】パルスシャワー装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20170116BHJP
   B05B 1/08 20060101ALI20170116BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20170116BHJP
   A61H 9/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A47K3/22
   B05B1/08
   B05B1/18 101
   A61H9/00
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-11554(P2013-11554)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-140548(P2014-140548A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100089440
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】小牧 秀征
(72)【発明者】
【氏名】西村 正紀
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−135606(JP,A)
【文献】 特開平11−087901(JP,A)
【文献】 特開2000−061632(JP,A)
【文献】 特開2001−223468(JP,A)
【文献】 特開昭49−064006(JP,A)
【文献】 特開2001−314467(JP,A)
【文献】 特開平11−047211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/28
A61H 9/00
B05B 1/08
B05B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面から外面へ貫通した複数のシャワー孔を備えた散水板と、
該散水板の内面の上流側に設けられ、水流を羽根に当てることで軸周りに回転運動する羽根車と、
を含み、該羽根車には、散水板内面側の下流部位において該散水板内面に沿って所定周長に亘り延びる形態で設けられ、前記シャワー孔を覆うシャワー孔遮断部と、該散水板内面に向けて開放された形態のシャワー孔開放部と、を周方向に交互に備え、
前記羽根車の回転により該シャワー孔遮断部及びシャワー孔開放部を前記軸周りに回動運動させて、前記シャワー孔を断続的に遮断及び開放し、該シャワー孔からパルス状に断続吐水するパルスシャワー装置において、
前記羽根車には、前記散水板内面に向って開口した複数の保持穴を設けて該保持穴にボールを保持させ、該散水板内面に対し該ボールを転動させつつ該羽根車を回転させるようになし、
前記シャワー孔開放部は、前記羽根と羽根との間の空間の大きさが平面視で該ボールの外径よりも大きくしてあることを特徴とするパルスシャワー装置。
【請求項2】
請求項1において、前記保持穴に前記ボールを保持した状態の前記羽根車と、前記散水板若しくは該散水板の内面構成部材とを結合部で結合して1つの組付体としてのユニットとなしてあることを特徴とするパルスシャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシャワー装置に関し、詳しくはシャワー孔からシャワー水をパルス状に断続的に吐水するパルスシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャワー孔を断続的に遮断及び開放することによって、シャワー孔からシャワー水をパルス状に断続吐水するパルスシャワー装置が公知である。
従来において、この種のパルスシャワー装置としては、内面から外面へ貫通した複数のシャワー孔を備えた散水板と、散水板の内面の上流側に設けられ、水流を羽根に当てることで軸周りに回転運動する羽根車とを含み、また羽根車には、散水板内面側の下流部位において散水板内面に沿って所定周長に亘り延びる形態で設けられ、シャワー孔を覆うシャワー孔遮断部と、散水板内面に向けて開放された形態のシャワー孔開放部とを周方向に交互に備え、羽根車の回転によりシャワー孔遮断部及びシャワー孔開放部を軸周りに回動運動させて、シャワー孔を断続的に遮断及び開放し、シャワー孔からパルス状に断続吐水する構造のものが一般的である。
【0003】
例えば下記特許文献1には、噴水孔(シャワー孔)(74)を備えたキャップ(散水板)(70)と、その上流側の羽根車(56)とを含み、その羽根車(56)には半周に亘ってシャワー孔遮断部としての覆い板(60)を、また残りの半周に亘ってシャワー孔開放部を備え、羽根(57)への水流の作用により羽根車(56)を回転運動させてシャワー孔遮断部としての覆い板(60),シャワー孔開放部を軸周りに回動運動させ、シャワー孔を断続的に遮断及び開放し、シャワー水をパルス状に断続吐水する点が開示されている。
【0004】
また下記特許文献2には、シャワー孔(118)を備えた散水板(58)と、その上流側の羽根車(124)とを含み、その羽根車(124)には半周に亘ってシャワー孔遮断部(130)を、また残りの半周に亘ってシャワー孔開放部を備え、羽根車(124)の回転によりシャワー孔遮断部(130),シャワー孔開放部を軸周りに回動運動させてシャワー孔(118)を断続的に遮断及び開放し、シャワー水をパルス状に断続吐水する点が開示されている。
【0005】
特許文献2にはまた、図6及び図9に、水流の作用で回転する回転体(96)に保持穴(112)を設けてそこにボール(114)を保持させ、そのボール(114)を散水板内面に対し転動運動させつつ回転体(96)を回転させることにより、シャワー孔を断続的に遮断及び開放する例が開示されている。
【0006】
そこでこれを羽根車に適用し、散水板内面に向って開口した保持穴を羽根車に設けてその保持穴にボールを保持させ、散水板内面に対しボールを転動させつつ羽根車を回転させるようにすることが考えられる。
このようにすることで、羽根車をボールのベアリング作用により円滑に回転させることが可能となる。
【0007】
しかしながらこの場合、パルスシャワー装置を組み付けるに際し、各保持穴のそれぞれにボールを1つ1つ入れる作業に多大な手間と時間がかかる上、同作業中にボールが誤ってシャワー孔開放部の羽根と羽根との間の空間に嵌り込んでしまったりすると、これをその空間から取り外す作業が必要となる。
またたとえ各保持穴にボールを上手く入れたとしても、取扱い中に羽根車が傾いたり、或いは何かの拍子で引っ繰り返ったりしてしまうと、せっかく保持穴に入れたボールが保持穴から抜け出てしまう。このため保持穴にボールを入れる作業が煩雑な作業となって、パルスシャワー装置の組付性を悪くしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−115520号公報
【特許文献2】特開2012−135606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、羽根車をボールのベアリング作用によって円滑に回転運動させることができ、且つ組付けの作業性も良好なパルスシャワー装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1のものは、内面から外面へ貫通した複数のシャワー孔を備えた散水板と、該散水板の内面の上流側に設けられ、水流を羽根に当てることで軸周りに回転運動する羽根車と、を含み、該羽根車には、散水板内面側の下流部位において該散水板内面に沿って所定周長に亘り延びる形態で設けられ、前記シャワー孔を覆うシャワー孔遮断部と、該散水板内面に向けて開放された形態のシャワー孔開放部と、を周方向に交互に備え、前記羽根車の回転により該シャワー孔遮断部及びシャワー孔開放部を前記軸周りに回動運動させて、前記シャワー孔を断続的に遮断及び開放し、該シャワー孔からパルス状に断続吐水するパルスシャワー装置において、前記羽根車には、前記散水板内面に向って開口した複数の保持穴を設けて該保持穴にボールを保持させ、該散水板内面に対し該ボールを転動させつつ該羽根車を回転させるようになし、前記シャワー孔開放部は、前記羽根と羽根との間の空間の大きさが平面視で該ボールの外径よりも大きくしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記保持穴に前記ボールを保持した状態の前記羽根車と、前記散水板若しくは該散水板の内面構成部材とを結合部で結合して1つの組付体としてのユニットとなしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0012】
以上のように本発明は、散水板の内面に向って開口した複数の保持穴を羽根車に設けて、その保持穴にボールを保持させ、散水板内面に対しボールを転動させつつ羽根車を回転させるようにパルスシャワー装置を構成し、そしてシャワー孔開放部は、羽根と羽根との間の空間の大きさを平面視でボールの外径よりも大きく形成したものである。
尚ここでシャワー孔開放部は、同一円周上において全周長に対する周方向長の比率が0.04以上のものを意味し、それよりも比率の小さなものは含まない。
【0013】
このような本発明のパルスシャワー装置では、装置を組み付けるに際して、羽根車の保持穴の1つ1つにボールを入れる作業を簡単に行えるようになる。
具体的には、例えば容器の中にボールを沢山入れておいて、そこに羽根車を、保持穴の開口が上向きとなる状態で差し込み、その後これを引き抜くことで保持穴の1つ1つにボールを入れ込むことができる。
このとき、シャワー孔開放部の羽根と羽根との間の空間にボールが嵌り込んで、羽根と羽根とによりボールが挟み込まれていたりすると、その後においてその空間からボールを取り出さなければならなくなるが、本発明ではシャワー孔開放部の羽根と羽根との間の空間の大きさが平面視でボールの外径よりも大きくしてあるため、容器内で羽根車によりすくい上げられたボールは、シャワー孔開放部の羽根と羽根との間の空間を通り抜けて下方に落下する。
即ち本発明によれば、ボールが羽根と羽根との間に挟まれて保持されてしまうのを防ぐことができる。そしてこれにより羽根車の各保持穴へのボールの装填の作業性を良好とすることができる。
【0014】
ところでシャワー装置が大型であって羽根車が大径である場合、羽根車の中心側から外周側に延びる羽根も長くなることから、シャワー孔開放部において、周方向に延びるリブ状の連結部を設けて、その連結部にて羽根と羽根とを連結しておくことが望ましい。
またその連結部は羽根車の径方向において複数個所に設けておくことが望ましい。
【0015】
この場合には、周方向に隣接した羽根と連結部との間に形成される空間の大きさを平面視でボールの外径よりも大きくしておく。
このようにすることで、シャワー孔開放部が周方向に隣接した羽根と連結部とによって複数の小空間に区画された場合であっても、その空間にボールが挟まれる状態に嵌り込んで保持されてしまうのを防ぐことができる。
【0016】
ところで、上記のようにして羽根車の1つ1つの保持穴にボールを入れ込むことができたとしても、前述したように取扱い中に羽根車を傾けてしまったり、或いは何かの拍子で羽根車を引っ繰り返してしまったりすると、せっかく保持穴に入れ込んだボールが保持穴から抜け出てしまう。
【0017】
ここにおいて請求項2のものは、保持穴にボールを保持した状態の羽根車と、散水板若しくは散水板の内面構成部材とを結合部で結合して1つの組付体としてのユニットとしたもので、この請求項2によれば、保持穴にボールを入れ込んだところで、これを上記のユニットとして組み付けておくことで、その後において羽根車を傾けたり或いは引っ繰り返してしまった場合であっても、ボールを羽根車の保持穴に保持した状態に維持しておくことができ、保持穴からのボールの脱落を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態のシャワーヘッドを示した図である。
図2図1のシャワーヘッドの内部構造を示した図である。
図3図2の要部を更に拡大した図である。
図4図2のシャワーヘッドの構成部品を分解して示した斜視図である。
図5図4で示したシャワーヘッドの構成部品の断面図である。
図6図4の羽根車ユニットを更に分解して示した図である。
図7】同羽根車ユニットを組付状態で示した図である。
図8図4の旋回流生成部材を異なった方向で示した図である。
図9】(A)図6における羽根車の上面の形状を示した図である。(B)同羽根車の底部の下面の形状を示した図である。
図10】(A)図2のイ−イ断面図である。(B)図2のロ−ロ断面図である。
図11】同実施形態の羽根車ユニットの組付方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はシャワーヘッド(パルスシャワー装置)で、12はその握り部、14は頭部、16は頭部14に設けられた散水板である。
散水板16には、その内面から外面(下面)へ貫通した多数のシャワー孔18が、4重の同心円をなすように設けられている。
図中18-1は最外周のシャワー孔を、18-2はその次の内周側のシャワー孔を、18-3は更にその次の内周側のシャワー孔を、18-4は最内周のシャワー孔をそれぞれ示している。
【0020】
図2に、シャワーヘッド10における頭部14の内部構造が具体的に示してある。
図2に示しているようにシャワーヘッド10の頭部14は、上ケース20と、上ケース20の図中下端の開口部を閉鎖する下ケースとしてのキャップ22とを有している。
上ケース20は円筒形状の周壁部24を有しており、そこに雌ねじ部が設けられている。
一方キャップ22は円筒形状の立上り部26を有しており、そこに雄ねじ部が設けられている。
キャップ22は、それら雄ねじ部と雌ねじ部とにより、上ケース20に対してねじ結合されている。
【0021】
図2図5に頭部14の内部構造が詳しく示してある。
図2図4及び図5に示しているように、頭部14の内部にはノズルシート28,リング状のパッキン30,羽根車ユニット32及び旋回流生成部材34が組み込まれている。
ここで羽根車ユニット32は、図2及び図3に示しているように羽根車36と、これを内部に収める羽根車ハウジング38とを有している。
また羽根車ハウジング38は、ノズルシート押えを兼ねたハウジング本体40と、蓋体42とから成っている。
【0022】
この実施形態において、ノズルシート28,パッキン30を除く他の各部材、詳しくは上ケース20,キャップ22,羽根車ユニット32における羽根車36,羽根車ハウジング38及び旋回流生成部材34の何れもが硬質の樹脂製とされている。
【0023】
この実施形態において、散水板16は、キャップ22の底部44と、これに重ねられたノズルシート28のシート部46と、更にこれに重ねられたハウジング本体40の底部48との3重積層構造で構成されている。
【0024】
ノズルシート28はゴム製(他のエラストマー材料から成るものであっても良い)であり、このノズルシート28はシート部46と、シート部46から下向きに突き出した多数のノズル部50とを有しており、各ノズル部50が、樹脂製のキャップ22の底部44に形成された挿通孔52を挿通して、それぞれの先端部が下向きに突き出している。
これら複数のノズル部50は、内部にノズル孔18Aを有しており、それらノズル孔18Aによってシャワー孔18の下部を形成している。
ここでノズル孔18Aは孔径がφ0.8mmである。
【0025】
ノズルシート28のシート部46は、図3及び図4に示しているように図中下面が下向きに凸、図中上面が下向きに凹となるような湾曲形状をなしており、そしてその下面から直角に立下る形状で、各ノズル部50がシート部46に一体に形成されている。
これに対応して上記のノズル押えを兼ねたハウジング本体40は、その下面がノズルシート28におけるシート部46の凹曲面に対応した凸曲面を成している。
ハウジング本体40の底部48には、ノズル孔18Aと連通し、上記のシャワー孔18の上部を形成する多数の連通孔18Bが底部48を貫通して設けられている。
【0026】
図2において、上ケース20にはその中央部に円筒部54が設けられており、その内部に有底円筒形状をなす樹脂製の水路形成部材56が組み込まれている。
円筒部54にはまた、旋回流生成部材34の中央部において上向きに立上る円筒部58が挿入されており、それら水路形成部材56と円筒部58とによって、その内側に水路60からの水を流入させる流入室62が形成されている。
【0027】
旋回流生成部材34は、中心側から外周側に向って下向きに穏やかに傾斜した後、軸線と直交方向(軸直角方向)に平坦形状で拡がる上壁部64と、上壁部64の外周端で下向きに立下る円筒形状の周壁部66とを有しており、それら上壁部64と羽根車ハウジング38の蓋体42との間に、旋回流を生成させるための水室68を形成している。
【0028】
この旋回流生成部材34には、その上壁部64から立下り、内周端から外周端に向って部分螺旋形状で延びる固定羽根70が設けられており、その固定羽根70が、羽根車ハウジング38における蓋体42の上面に当接せしめられている。
旋回流生成部材34は、水路60から流入室62内に流入し、更に流入室62を図中下向きに軸方向に流れた水を軸直角方向の流れに変えて、これを外周側へと流動させる。
【0029】
その際に、部分螺旋形状をなす固定羽根70の整流及び案内作用によって、外周側に向って軸直角方向に流れる水の流れを旋回流として、これを円筒形状の周壁部66へと当接させる。
周壁部66へと当接した水の流れは、その後、流れの向きが反転されて軸直角方向内方への流れとなり、羽根車ユニット32における羽根車ハウジング38の内部へと勢い良く流入する。
【0030】
羽根車ユニット32は、羽根車ハウジング38の内側に水室72を形成しており、そこに羽根車36を回転可能に収容している。
羽根車ハウジング38は、上記のようにハウジング本体40と蓋体42とに分かれている。ハウジング本体40は散水板16の内面構成部材であって、上記のようにノズル押えを兼ねて構成されている。
ハウジング本体40は、円筒状の周壁部74と底部48とを有し、上端が開放された形状の部材で、その上端の開放部が蓋体42にて閉鎖されている。
このハウジング本体40には、底部48の中心部にこれを貫通する結合部としての固定孔76が設けられている。
【0031】
一方蓋体42には、その中心部から立下る軸部78が設けられている。この軸部78には、更にその下側に結合部としての弾性掛止爪80が設けられており、この弾性掛止爪80が、ハウジング本体40の上記の固定孔76に挿入されて固定孔76に弾性掛止されている。そして固定孔76に対する弾性掛止爪80の掛止によって蓋体42とハウジング本体40とが結合され、組み付けられている。
【0032】
詳しくは、後述する保持穴106にボール108を保持した羽根車36を内部に収容する状態で、羽根車ハウジング38のハウジング本体40と蓋体42とが結合され、それらボール108,羽根車36,羽根車ハウジング38のハウジング本体40及び蓋体42が組み付けられて1つの組付体、即ちユニットを構成している。
【0033】
この実施形態において、蓋体42,羽根車36,ハウジング本体40は何れも白色で且つ透光性であり、一方ボール108は暗色、ここでは黒色で且つ非透光性である。
従って、羽根車ハウジング38の内部にボール108を保持した羽根車36を収容した状態の羽根車ユニット32を光に向けてかざすことで、保持穴106内にボール108が保持されていることを光の加減でハウジング外部から目視で確認することが可能である。
【0034】
図6及び図7に示しているように、ハウジング本体40における周壁部74には、その上端部且つ内周側に、外周側の部分に対して段違い形状で図中上向きに突出した、周方向に環状をなす内嵌部82が設けられている。
一方蓋体42には、外周部に図中下向きに曲り形状をなす曲り部84が設けられている。
この曲り部84の外周側の部分は環状の外嵌部86とされており、この外嵌部86がハウジング本体40における上記の内嵌部82に対して外嵌状態に嵌合せしめられている。
【0035】
この蓋体42の曲り部84には、旋回流生成部材34の周壁部66に当接して流れの向きを内向きに反転させた水流を、羽根車ハウジング38内の水室72に向けて通過させる噴射口88が、周方向に一定ピッチで多数設けられている。
これら噴射口88を通過した水流は噴射水流となって水室72内の羽根車36、詳しくはその羽根102に勢い良く当って羽根車36を回転駆動する。
ここで噴射口88は曲り部84の外面で開口している。図7(B)中90はその開口を示している。
【0036】
これら噴射口88は、図10(B)に示しているように蓋体42の曲り部84及びハウジング本体40の周壁部74の周方向に対して傾斜せしめられている。
ここで噴射口88の傾斜の向きは、旋回流を生じながら旋回流生成部材34の周壁部66に当って流れの向きを内向きに反転させた水流を、その旋回流を維持させつつ水室72内の羽根車36に噴射するように定められている。
【0037】
以上の説明から明らかなように、この実施形態では羽根車ハウジング38が、詳しくはその蓋体42が上流部からの水を通過させ、その通過水を噴射水流として羽根車36に衝突させ、羽根車36を回転駆動する水流噴射部材として構成されている。
【0038】
図6に示しているように、蓋体42には周方向に180°隔たった2個所に位置決凸部92が設けられている。
一方ハウジング本体40の周壁部74には、対応する位置に位置決凹部94が設けられている。
蓋体42とハウジング本体40とは、それら位置決凸部92と位置決凹部94との凹凸嵌合により、周方向に位置決めされている。
【0039】
図8に示しているように、旋回流生成部材34にもまた同様に位置決凹部96が設けられており、その位置決凹部96に対する蓋体42の位置決凸部92の凹凸嵌合に基づいて、蓋体42と旋回流生成部材34とが周方向に位置決めされている。即ち羽根車ハウジング38が、旋回流生成部材34に対して周方向に位置決めされている。
【0040】
尚この実施形態では、図2においてキャップ22を上ケース20に上向きにねじ込むと、旋回流生成部材34がリング状のパッキン30を介して図中上向きに押し上げられ、そして上ケース20の円筒部54に当接する状態に固定され、組み付けられる。
またこのとき、羽根車ユニット32における羽根車ハウジング38が旋回流生成部材34の固定の固定羽根70に当って、キャップ22の底部44とともに挟み込まれ、羽根車ハウジング38が固定される。
このときノズルシート28には、その挟み込みの力によってノズル押えを兼ねたハウジング本体40から下向きの力が加わり、ノズルシート28がキャップ22の底部44に対して下向きに押圧される。
【0041】
図4において、リング状のパッキン30には樹脂製のメッシュ材から成る環状シート98が設けられており、組付状態でこの環状シート98が、最外周のシャワー孔18-1を覆う位置で散水板16の内面に、詳しくはノズルシート28におけるシート部46の内面に重ねられている。
【0042】
図9図10に羽根車36の具体的な形状が示してある。
図に示しているように羽根車36は、中心部に円筒状の嵌合部100を有しており、この嵌合部100が、羽根車ハウジング38における蓋体42の中心部の軸部78に嵌合せしめられている(図2図3参照)。
羽根車36は、これら軸部78と嵌合部100との嵌合に基づいて、軸部78周りに回転運動せしめられる。
尚、嵌合部100は他部よりも僅かに図3中下向きに突出せしめられていて、その突出部においてハウジング本体40の内面に当接し、回転時における羽根車36の全体を、後述のボール108とともに支持するようになっている。
【0043】
図9図10に示しているように羽根車36は、中心側から外周側に向って部分螺旋形状で延びる羽根102を周方向に一定ピッチで多数有している。これら羽根102は、図10に示しているように旋回流生成部材34における上記の固定羽根70とは、平面視で逆方向の部分螺旋形状をなすように設けられている。
羽根車36はまた、周方向に120°ごと異なった3個所にボール保持部104を有している。
これらボール保持部104は、後述のシャワー孔遮断部110に、詳しくはシャワー孔遮断部110B-1,110B-2,110B-3に1つずつ設けられている。
このボール保持部104は、図2及び図3図9(B)に示すように、散水板16内面(即ちハウジング本体40内面)に向けて開口した保持穴106を内側に有していて、そこにボール108を保持している。
【0044】
ボール108は、保持穴106からその下部が僅かに図3中下向きに突出しており、その突出部分において羽根車ハウジング38におけるハウジング本体40の底部48内面(散水板16の内面)に転動可能に当接せしめられている。
ここで保持穴106の内面は略部分球面状をなしている。但しその内面及び図中下端の開口の大きさはボール108よりも僅かに大きい。
【0045】
羽根車36にはその下流部位に、ハウジング本体40の底部48内面に沿って所定周長で延び、羽根車36の図中下面を部分的に閉鎖するシャワー孔遮断部110が設けられている。
シャワー孔遮断部110は底部48の連通孔18B、即ちシャワー孔18を覆ってこれを遮断作用する。
羽根車36にはまた、シャワー孔遮断部110を除いた部分において、ハウジング本体40の底部48内面に向けて開放された(但し羽根102,後述の連結部109,111,113を除く)シャワー孔開放部112が設けられている。
ここでシャワー孔遮断部110に位置する羽根102は、シャワー孔遮断部110の図中上面に設けられている。
【0046】
一方シャワー孔開放部112に設けられている羽根102は、周方向に延びるリブ状の連結部、詳しくは最外周の連結部109,これよりも内周側の連結部111及び更に内周側の連結部113にて互いに周方向に連結されている。
ここで連結部109,111,113は、何れも同心の円弧形状をなしている。
【0047】
この実施形態では、連結部113に対して内周側のシャワー孔遮断部はシャワー孔遮断部110Aの1つだけであるのに対して、これよりも外周側ではシャワー孔遮断部110B-1,110B-2,110B-3の3つのシャワー孔遮断部が設けられている。
同様に内周側のシャワー孔開放部はシャワー孔開放部112Aの1つだけであるのに対して、外周側にはシャワー孔開放部112B-1,112B-2,112B-3の3つのシャワー孔開放部が設けられている。
シャワー孔開放部112に位置する羽根102の一部は、付根側の部分がアーム114とされており、かかるアーム114において中心部の円筒状の嵌合部100に繋がっている。
【0048】
この実施形態において、シャワー孔開放部112A,112B-1,112B-2,112B-3は、周方向に隣接する羽根102と102との間に形成される空間、詳しくはここでは周方向に隣接する羽根102と連結部109,111,113との間に形成される空間(つまりそれらによって区画された空間)kの何れもが、平面視で空間kの中心を通る何れの方向においてもボール108の外径よりも大きくされている。
即ち各空間kは、ボール108が通過可能な大きさとされている。
【0049】
次に本実施形態のパルスシャワー装置の作用を説明する。
本実施形態のパルスシャワー装置では、図2の水路60から流入室62内に流入した水は同図中下向きに軸方向に流れた後、旋回流生成部材34によって軸直角方向外向きの流れにその向きが変えられる。
即ち中心部の軸方向の水流は、旋回流生成部材34の水室68内で軸直角方向外向きの流れとなり、その際に旋回流生成部材34の固定羽根70による作用によって、その外向きの流れが旋回流とせしめられる。
【0050】
その外向きの旋回流は、旋回流生成部材34の周壁部66に当って、今度はその向きを軸直角方向内方へと向け、水流噴射部材として働く羽根車ハウジング38の噴射口88から羽根車36に対してその側方から噴射される。
その噴射水流は、図10のP方向の旋回流を維持しながら、羽根車36における部分螺旋形状の羽根102の凹曲面に向けて当り、羽根車36を回転駆動する。
【0051】
詳しくは、羽根車36を羽根車ハウジング38のおける蓋体42の軸部78周りに回転運動させる。このとき羽根車36は、周方向3個所に設けたボール108によるベアリング作用によって円滑に軸部78周りに回転運動する。
そしてその回転運動によってシャワー孔遮断部110及びシャワー孔開放部112を軸部78周りに回動させ、これによってシャワー孔18を遮断及び開放し、シャワー水をパルス状に断続吐水させる。
【0052】
この実施形態ではシャワーヘッド10、詳しくはシャワー装置を次のようにして組み付けることができる。
先ずボール108,羽根車36を羽根車ハウジング38を構成するハウジング本体40及び蓋体42とともに組み付けて、それらを予め1つの組付体、即ち羽根車ユニット32とする。
その羽根車ユニット32の組付けは次のようにして行う。
即ち、図11に示しているように先ず羽根車36の保持穴106の1つ1つにボール108を入れてそこに保持させる。
このとき保持穴106にボール108を入れる作業は次のようにして行うことができる。
【0053】
詳しくは、予め容器の中に沢山のボール108を集合状態で入れておき、そこに羽根車36を、保持穴106が上向きとなる状態で差し込む。
集合状態にある多量のボール108内部に羽根車36を差し込むと、3つの保持穴106内部にボール108が自動的に入り込む。
そこで羽根車36を容器外に引き抜くことで、保持穴106の1つ1つにボール108を装填状態とすることができる。
その後、保持穴106を上向きにしたまま、羽根車36を図11に示すように上向きとした蓋体42の内部に挿入する。このとき羽根車36の円筒状の嵌合部100を蓋体42の軸部78に嵌め合せる。
【0054】
続いて上方に配置したハウジング本体40の固定孔76に、蓋体42の軸部78に続く弾性掛止爪80を差込結合する。
ここにおいて保持穴106にボール108を保持した羽根車36と羽根車ハウジング38、即ちハウジング本体40と蓋体42とが、ボール108をハウジング本体40の底部48内面に当接させる状態に結合されて組み付けられ、羽根車ユニット32が構成される。
【0055】
その後、上記の旋回流生成部材34及び羽根車ユニット32を上ケース20内部に位置させるようにして、キャップ22を上ケース20にねじ込むことで、シャワー装置全体を組み付けることができる。
尚このとき、ノズルシート28は予めキャップ22に組み付けておく。
【0056】
以上のような本実施形態によれば、容器の中にボール108を集合状態で沢山入れておいて、そこに羽根車36を、保持穴106の開口が上向きとなる状態で差し込み、その後これを引き抜くことで保持穴106の1つ1つにボール108を容易に入れ込むことができる。
【0057】
その際、本実施形態ではシャワー孔開放部112の羽根102と羽根102との間の空間kの大きさが、平面視でボール108の外径よりも大きくしてあり、容器内で羽根車36によりすくい上げられたボール108は、シャワー孔開放部112の羽根102と羽根102との間の空間kを通り抜けて下方に落下するため、ボール108が羽根102と羽根102との間の空間k内で挟まれて保持されてしまうのを防ぐことができる。そしてこれにより羽根車36の各保持穴106へのボールの装填の作業性を良好とすることができる。
【0058】
また本実施形態では、保持穴106にボール108を入れたところで、羽根車36を羽根車ユニット32として組み付けておくことで、その後において、羽根車36を傾けたり或いは引っ繰り返してしまった場合であっても、ボール108を羽根車36の保持穴106に保持した状態に維持しておくことができ、保持穴106からのボール108の脱落を防ぐことができる。
【0059】
また羽根車ユニット32を構成した後においては、これを光にかざして見ることで、羽根車ハウジング38内においてボール108が保持穴106に保持されていることを外部から目視確認することができる。
【0060】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は、羽根車の羽根をシャワー孔開放部で連結部により連結していない形態のパルスシャワー装置にも適用することが可能である。
また上記実施形態ではボール108を保持した状態の羽根車36と、散水板の内面構成部材であるハウジング本体40とを蓋体42とともに結合しユニット化しているが、場合によってハウジング本体40とボール108を保持した羽根車36とを1つの組付体としてのユニットに構成するといったことも可能であるし、更には散水板が単一の部材にて構成されている場合において、散水板全体と羽根車とを1つの組付体であるユニットとして構成するといったことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0061】
16 散水板
18 シャワー孔
32 羽根車ユニット
36 羽根車
40 ハウジング本体
76 固定孔(結合部)
102 羽根
106 保持穴
108 ボール
109,111,113 連結部
110 シャワー孔遮断部
112 シャワー孔開放部
k 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11