【実施例】
【0009】
<1>全体の構成
本発明の釜場の構造は、外側の外筒1と、外筒1の内部に設置する有底のらせん水路3と、らせん水路3の中央に形成したポンプ設置部2とで構成する。
【0010】
<2>外筒
周囲の水が集まりやすいように低く掘り込んだ釜場に埋設するのが外筒1である。
この外筒1は、上面を開放し、底部には外筒底板11を備えた有底の円筒である。
この外筒1が、掘り込んだ釜場に設置してあるので、後述するように内部のらせん水路3を取り出しても周囲の土砂が崩壊してくることがない。
そのために掘り込んだ場所に外筒1を一度設置すれば、外筒1はそのまま残っているので周囲が崩壊して土砂が流れ込むことがなく、従来のように沈降土砂の排出後に再度掘削するような作業が不要である。
なお釜場を設置する地盤によっては、外筒1に底板を設けず、単なる円筒を採用することもできる。
あるいは外筒1と底板とをボルトなどの簡単な構造で連結し、両者を容易に分離できる構造を採用することもできる。
【0011】
<3>らせん水路
らせん水路3は板体を平面視、らせん状に形成し、かつ底部には水路底板31を備えた水路である。
らせん状とは、曲面板で構成するだけでなく、平面状の板体を連続して折り曲げた状態で構成することもできる。
すなわちらせん水路3は平面視、曲線または直線の板体の連続よりなる、らせん状の壁を備えた水路である。
らせん状に形成した板体が、らせん水路3の壁板となる。
らせん水路3の板体の素材は、耐水性があり、らせん形状を維持できるものであればどのような素材でも採用することができるが、例えば鋼、アルミニュウム、その合金、合成樹脂などを用いて形成することができる。
なお、釜場を設置する地盤によっては、らせん水路3に底板31を設けず、単なるらせん状の筒体を採用することもできる。
あるいはらせん水路3と底板31とをボルトなどの簡単な構造で連結し、両者を容易に分離できる構造を採用することもできる。
【0012】
<4>らせん水路の分割
らせん水路3の板体を一体で製造するだけでなく、分割して製造することもできる。
その場合には、平面視が曲線または直線の板体を分割して製造しておき、現場などでジョイントを介して組み立ててらせん水路3を構成する。
【0013】
<5>外周路の形成(
図8)
らせん水路3の始端を外筒に接触させずに離して、水路間隔を維持する構造を採用することができる。
すると外筒の内側面に沿って外周路6を形成することができる。
このように外周路6を形成すると、外周を回る流れを形成することができ、その流れに遠心力が発生する。
みかけ上でポンプの羽を痛める粒子は遠心力と重力が作用するから、外周路6の定常的な円形流の内側かららせん水路3に水を導入することは重力のみが作用する環境で上澄みを採取する状態に近いものとなる。
したがってすべての粒子をらせん水路3に導入する場合と比較して、らせん水路3への粒子の流入量を低減することが可能となる。
【0014】
<6>ポンプ設置部
らせん水路3のほぼ中心は、円筒状、角筒状に形成してポンプ設置部2として構成する。
このポンプ設置部2には、その内部に水中ポンプ5を設置して排水ホース51を接続して排水するので、ポンプ設置部2の内径は、市販の水中ポンプ5の外径より大きく構成する。
【0015】
<7>越流用の切欠き
らせん水路3の端部、すなわちらせん水路3と中央のポンプ設置部2との境界の壁面には越流用の切欠き32を形成する。
この越流切欠き32は、らせん水路3の壁面の一部を切り欠いて壁面高さを低くした部分である。
そのために、らせん水路3を流れた泥水はらせん水路3の端部までは壁面の頂部を乗り越えることなく、らせん水路3の端部において越流用の切欠き32の部分からポンプ設置部2に流入することになる。
ここでらせん水路3の「端部」とは、らせん水路3のもっともポンプ設置部2に近い側の端部を意味する。
また「切欠き32」とは
図4に示すように、矩形の切欠きだけでなく、三角形の切欠き、穴、スリットも含めて切欠きと称する。
【0016】
<8>切欠きの面積の変更(
図3)
切欠き32の開口面積は一定でもよいが、さらにその面積を変更することができるように幕板32aを設けることできる。
そのために水門のように、越流用の切欠き32の両側に溝32bを形成する。
そして、その溝32bに沿って越流切欠き32の一部を遮断する幕板32aを嵌合する構造を採用することができる。
複数枚の幕板32aを使用すれば、幕板32aを鉛直方向に壁状に重ねて、越流切欠き32の開口面積を調整することができる。
【0017】
<9>開口面積の変更の目的
幕板32aを使用して切欠き32の面積を変更する目的を説明する。
周囲の斜面から釜場への流入水の多い場合に、切欠き32の高さが高いと中央部への流入量が制限される。
すると、らせん水路3の端部の切欠き32から中央のポンプ設置部2に入る水量よりも周囲からの流入量が多くなり、その結果らせん水路3内に貯留している水量が多くなるから、結果としてらせん水路3から濁水があふれてしまう。
そのような現象の発生を防ぐために、周囲からの濁水の流入量を見ながらその量に応じて幕板32aを挿入したり引きぬいたりして高さの調整、すなわち切欠き32の面積の調整を可能としたものである。
【0018】
<10>堰板
らせん水路には、いずれかの位置に、水路の断面の全部または一部を遮断する堰板4を設けることができる。
この堰板4はらせん水路3の断面の全部を遮断する場合には、堰板4の高さをらせん水路3の壁よりも低い位置に設置して泥水が堰板3を乗り越えるように構成する。
この堰板4を、らせん水路3の壁面に内向きに、すなわちポンプ設置部の側に向けて一部を張り出して設置することができる。
あるいは堰板4を、外向きに、すなわち外筒の側に向けて一部を張り出して設置することができる。
あるいは堰板4を、内外、交互に張り出して設置することもできる。
あるいは堰板4を、らせん水路3の壁面の下部や中間や底部から張り出して設置することもできる。
あるいは堰板4の高さや幅を調整可能に構成することもできる。
その場合の調整は、前記した水門形式の幕板32aと同様に構成することで達成することができる。
堰板4を内、外のいずれかに設置した場合でも、あるいはらせん水路3の下部や中間に張り出して設置した場合(
図6)でも、堰板4に当たった流れにより対流が起こって、流れの速度が落ち、汚泥が堰板4の上流側に沈降する。
堰板4を内外、交互に張り出して千鳥配置にした場合(
図7)には、汚泥がポンプ設置部2へ到達するまでの距離を長くして土砂の沈降を図ることができる。
【0019】
<11>堰板の設置
堰板4とは別に水路3を遮断する状態で網板を設置することもできる。
この網板は、木の葉や木屑などの、らせん水路3内の浮遊物を回収するためのものである。
【0020】
<12>ポンプとの一体化
通常は水中ポンプは、必要に応じてポンプ設置部2の内部に設置し、あるいは引き出して撤去する。
しかし、らせん水路3のポンプ設置部2を水中ポンプと一体に構成することもできる。
その場合にはポンプ設置部2と、その内部の水中ポンプ5との間に連結部材を設けて取り付け、連結部材を介して水中ポンプ5をポンプ設置部2と一体に装着した構造とする。
このようにらせん水路3と水中ポンプを一体化すれば、クレーンなどによる一度のつり込み作業によって、らせん水路3の設置とポンプの設置が同時に行えるから、設置作業が効率的である。
【0021】
<13>らせん水路の頂部の高さ
らせん水路3の頂部の高さと、外筒1の頂部の高さとの関係は、現場の状況に応じて使い分けすることができる。
【0022】
<13−1>らせん水路の頂部が高い構造(
図9)
らせん水路3の頂部を外筒1の頂部より高く構成する構造である。
その場合にも、らせん水路3の頂部が中心に向かって高くなる構造(
図9左図)、すべて同じ構造(
図9の中央)、らせん水路3の頂部が中心に向かって低くなる構造(
図9右図)のいずれかを選択することができる。
いずれの場合にも、らせん水路3の頂部を外筒1の頂部よりも高く構成すると、両者の高さを等しく構成した構造(
図11)よりも多くの汚泥をらせん水路3内に貯めることができ、土砂の除去などの維持管理の介するを低減することができる。
【0023】
<13−2>らせん水路の頂部が低い場合(
図10)
らせん水路3の頂部を外筒1の頂部より低く構成する構造である。
その場合にも、らせん水路3の頂部が中心に向かって高くなる構造(
図10左図)、すべて同じ構造(
図10の中央)、らせん水路3の頂部が中心に向かって低くなる構造(
図10右図)のいずれかを選択することができる。
いずれの場合にも、らせん水路3の頂部を外筒1の頂部よりも低く構成すると、降雨時などの突発的な増水に対してポンプの最大能力まで対応することができる。
その場合に前記の
図9の構造では、らせん水路3の頂部が外筒1の頂部より高いのでポンプの能力に余力があっても一定の時間内にらせん水路3を通過できる水量を超えて水がらせん水路3に流入すると、らせん水路3を通過できない水は周囲に散逸することになる。
【0024】
<14>機能
次に上記した本発明の釜場の機能を説明する。
【0025】
<15>外筒の設置
周囲から水が集まり低い位置を掘削し、外筒底板11を備えた外筒1を設置し、周囲を埋め戻す。
【0026】
<16>らせん水路の設置
外筒1とらせん水路3は別部材であるから、外筒1の内部にらせん水路3をつり降ろして設置する。
らせん水路3の平面視の直径は外筒1の内径とほぼ等しく、あるいはそれよりも小さく構成してあるので、外筒の内部に設置することができる。
らせん水路3の外径を外筒1の内径よりも小さく構成すると、前記したように最外周に外周路を形成することができる。(
図8)
そのように両者の寸法の差が大きい場合には、製造時に高度な技術が不要となり経済的に製造することができるという利点もある。
【0027】
<17>土砂の流入
ポンプ設置部2の内部に水中ポンプ5を設置し、排水ホース51を外部へ引き出す。
水中ポンプ5一体型の場合には、らせん水路3の設置と同時に水中ポンプ5の設置が完了する。
そして水中ポンプ5を駆動する。
釜場を設置した低所は、周囲の地下水や雨水が集中する場所であるから、周囲から継続して土砂交じりの泥水が外筒1の内に流入してくる。
【0028】
<18>土砂の沈降
外筒1の中心では水中ポンプ5によって排水をしているから、外筒1の内部へ流入した土砂交じりの泥水は中央に向けてらせん水路3を移動する。
移動しつつ、土砂をらせん水路3の水路底板31の上に沈降させ、徐々に土砂の混じる比率の低い上水が、らせん水路3を通ってポンプ設置部2に向けて移動する。
特にらせん水路3の内部に堰板4を張り出した構造では、泥水の移動経路が長くなるから、より沈殿効果を期待することができる。
【0029】
<19>越流
泥水は継続的に周囲から外筒1の内部に流れ込むから、らせん水路3の泥水は中央に向けて押し出される。
一方、中央では水中ポンプ5で継続的に排水して水位の低くなっている。
そのために泥水は、らせん水路3の端部に形成した切欠き32を超えてポンプ設置部2に流入する。
このようにらせん水路3の端部の切欠き32を越流するのはほとんどが上水だけであるから、土砂はポンプ設置部2の内部に流入しにくい。
この越流水を水中ポンプ5で排水するが、土砂粒がほとんど混入していないから、水中ポンプ5の羽根を損傷することもない。
【0030】
<20>沈降土砂の排出
ある程度の期間使用したら、らせん水路3に沈降した土砂を排出する必要がある。
【0031】
<20−1>水路底板を設けた場合
その際に、水路底板31を備えたらせん水路3の場合は、底板31と一体のらせん水路3を外筒1の内部から引き揚げる。
引き上げた後にらせん水路3を裏返しにすれば、水路底板31に蓄積した土砂を簡単にらせん水路3から排出することができる。
水路底板31の上の土砂を排出したらせん水路3を、再度外筒1の内部に設置して排水を再開する。
このように、らせん水路3に底板31を取り付けてある場合には、引き揚げ時に大きな重量が加わるという不利な点があるが、土砂の排出は容易である、という利点がある。
【0032】
<20−2>水路底板を設けない場合
水路底板31を備えていないらせん水路3の場合には、いったんらせん水路3だけを外筒1の内部から取り除き、外筒1の底部の堆積した土砂をバキュームポンプで吸引するなどの方法で除去し、その後再度、らせん水路3を外筒1の内部に設置して釜場の使用を再開する。
このように、らせん水路3に底板31を取り付けていない場合には、引き揚げ時に土砂の重量が加わらないから引き上げが容易である、という利点がある。
【0033】
<21>外筒を用いない構造
以上の説明は外筒1の内部にらせん水路3を設置する構造であった。
しかし釜場を設置する地盤の強度によっては、外筒1を用いず、掘削した穴の内部にらせん水路3だけを設置する構造を採用することもできる。