特許第6067444号(P6067444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067444
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】手動変速機のシフト機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/20 20060101AFI20170116BHJP
   F16H 61/34 20060101ALI20170116BHJP
   F16H 63/32 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   F16H63/20
   F16H61/34
   F16H63/32
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-60031(P2013-60031)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185670(P2014-185670A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592058315
【氏名又は名称】アイシン・エーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 学
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】二宮 良介
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−071325(JP,A)
【文献】 特開昭61−223358(JP,A)
【文献】 特開平11−173414(JP,A)
【文献】 実開昭59−028717(JP,U)
【文献】 特開2006−029507(JP,A)
【文献】 特開平06−221432(JP,A)
【文献】 特開平06−101758(JP,A)
【文献】 米国特許第05146806(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/20
F16H 61/34
F16H 63/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケース内に収納され、シフトレバーのシフト操作及びセレクト操作により回動及び軸方向移動可能なシフトセレクトシャフトと、前記シフトセレクトシャフトに固定されたインナレバーと、前記インナレバーと係合するシフトヘッドと、前記シフトヘッドに固定されるとともに軸方向移動可能なフォークシャフトとを備える手動変速機のシフト機構において、
前記変速機ケースには、前記フォークシャフトと軸方向に沿って対向する第1ストッパ部と、前記シフトセレクトシャフトと軸方向に沿って対向する第2ストッパ部とが設けられ、
前記第1ストッパ部と前記フォークシャフトとの間のクリアランスは、前記第2ストッパ部と前記シフトセレクトシャフトとの間のクリアランスよりも小さく形成され、
前記シフトセレクトシャフトと前記フォークシャフトとの間に設けられるシフト操作力を伝達する構成部品の剛性は、前記第1ストッパ部の剛性よりも小さいことを特徴とする手動変速機のシフト機構。
【請求項2】
請求項1に記載の手動変速機のシフト機構において、
前記シフトレバーのシフト操作により前記フォークシャフトが前記第1ストッパ部に当接した後に、前記シフトセレクトシャフトが前記第2ストッパ部に当接する際に、前記シフト操作力を伝達する構成部品が軸方向に撓むように構成されていることにより、前記シフト操作力を伝達する構成部品の剛性が前記第1ストッパ部の剛性よりも小さいことを特徴とする手動変速機のシフト機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の手動変速機のシフト機構において、
前記シフトセレクトシャフトと前記フォークシャフトとの間に設けられる前記シフト操作力を伝達する構成部品は、前記インナレバー及び前記シフトヘッドを含み、
前記インナレバー及び前記シフトヘッドは、前記第1ストッパ部の剛性よりも小さいことを特徴とする手動変速機のシフト機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動変速機のシフト機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手動変速機のシフト機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された手動変速機のシフト機構は、シフト操作力を受けて揺動するインナレバーを備えている。インナレバーには、シフト操作方向に変位するシフトヘッドが係合している。シフトヘッドは、シフトフォークと一体的に形成されている。シフトフォークは、シフト方向に変位可能なシフトフォークシャフトに取り付けられている。
【0004】
また、シフト機構は、ケース内に収容されており、このケース内には、シフトフォークシャフトとシフト方向(軸方向)に沿って対向するストッパ部が設けられている。シフトフォークシャフトがシフト方向に沿って所定のシフトストローク分変位した際に、シフトフォークシャフトとストッパ部とが当接することにより、シフト操作が完了することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−071325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手動変速機のシフト機構では、シフトストロークを決定するストッパ部が1か所のみ設定されており、比較的大きなシフト操作荷重が入力された際には、比較的大きいシフト操作荷重は、シフトレバーからストッパ部までの間に設けられるシフト操作力を伝達するシフトコントロール系の構成部品を介してストッパ部において全て受けてしまう構造となっている。このため、比較的大きなシフト操作荷重が入力される際に、ストッパ部の強度を確保することが困難であるという問題点がある。
【0007】
また、シフト操作時の比較的大きな操作荷重の入力に対して、シフトコントロール系部品の強度耐久性を確保するために、シフトコントロール系の構成部品の大型化や強度耐久性に優れた材料を使用することとなり、シフト機構全体の質量増大、スペースの成立性、コスト増大などの不都合を伴う場合もある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、比較的大きなシフト操作荷重が入力される際に、ストッパ部の強度を確保することが可能な手動変速機のシフト機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するための手段として、本発明による手動変速機のシフト機構は、以下のように構成されている。
【0010】
すなわち、本発明による手動変速機のシフト機構は、変速機ケース内に収納され、シフトレバーのシフト操作及びセレクト操作により回動及び軸方向移動可能なシフトセレクトシャフトと、前記シフトセレクトシャフトに固定されたインナレバーと、前記インナレバーと係合するシフトヘッドと、前記シフトヘッドに固定されるとともに軸方向移動可能なフォークシャフトとを備える構成を前提とするものである。また、本発明による手動変速機のシフト機構は、前記変速機ケースには、前記フォークシャフトと軸方向に沿って対向する第1ストッパ部と、前記シフトセレクトシャフトと軸方向に沿って対向する第2ストッパ部とが設けられ、前記第1ストッパ部と前記フォークシャフトとの間のクリアランスは、前記第2ストッパ部と前記シフトセレクトシャフトとの間のクリアランスよりも小さく形成され、前記シフトセレクトシャフトと前記フォークシャフトとの間に設けられるシフト操作力を伝達する構成部品の剛性は、前記第1ストッパ部の剛性よりも小さいことを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成を備える手動変速機のシフト機構によれば、シフトレバーからシフト操作荷重が入力された際には、フォークシャフトと軸方向に沿って対向する第1ストッパ部によりシフトストロークが管理され、入力されたシフト操作荷重が比較的大きい場合には、シフトセレクトシャフトと軸方向に沿って対向する第2ストッパ部を作用させることができる。これにより、入力荷重が大きい場合のシフトセレクトシャフトの変位を第1ストッパ部及び第2ストッパ部により制限する(分担する)ことができる。その結果、比較的大きなシフト操作荷重が入力される際に、第1ストッパ部の強度を容易に確保することができる。
【0012】
本発明の具体的な構成として、以下の複数のものが挙げられる。
【0013】
本発明による手動変速機のシフト機構において、好ましくは、前記シフトレバーのシフト操作により前記フォークシャフトが前記第1ストッパ部に当接した後に、前記シフトセレクトシャフトが前記第2ストッパ部に当接する際に、前記シフト操作力を伝達する構成部品が軸方向に撓むように構成されていることにより、前記シフト操作力を伝達する構成部品の剛性が前記第1ストッパ部の剛性よりも小さいことを特徴とする。このように構成すれば、シフトレバーから入力されるシフト操作荷重が比較的大きい場合には、フォークシャフトがスライドして第1ストッパ部に当接することによりストロークが完了した後に、シフトセレクトシャフトとフォークシャフトとの間に設けられるシフト操作力を伝達する構成部品が軸方向に撓むことにより、さらにシフトセレクトシャフトを第2ストッパ部に向かってスライドさせることができる。
【0014】
また、本発明による手動変速機のシフト機構において、好ましくは、前記シフトセレクトシャフトと前記フォークシャフトとの間に設けられる前記シフト操作力を伝達する構成部品は、前記インナレバー及び前記シフトヘッドを含み、前記インナレバー及び前記シフトヘッドは、前記第1ストッパ部の剛性よりも小さいことを特徴とする。このように構成すれば、シフトレバーから入力されるシフト操作荷重が比較的大きい場合には、フォークシャフトがスライドして第1ストッパ部に当接することによりストロークが完了した後に、インナレバー及びシフトヘッドが第2ストッパ部に向かって軸方向に撓むことにより、さらにシフトセレクトシャフトを第2ストッパ部に向かってスライドさせることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明による手動変速機のシフト機構によれば、比較的大きなシフト操作荷重が入力される際に、ストッパ部の強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による手動変速機のシフト機構の全体構成を示す概略図である。
図2】本実施形態による手動変速機のシフト機構におけるシフトセレクトシャフト変位量と入力荷重との関係を示すグラフである。
図3】フォークシャフトと第1ストッパ部とが当接するとともに、シフトセレクトシャフトと第2ストッパ部とが離間している状態を示す図である。
図4】フォークシャフトと第1ストッパ部とが当接するとともに、シフトセレクトシャフトと第2ストッパ部とが当接している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る手動変速機のシフト機構の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1を参照して、本発明の一実施形態による手動変速機のシフト機構100の構成について説明する。なお、本実施形態では、周知の6速トランスミッションに本発明のシフト機構100を適用した例について説明する。
【0019】
本実施形態によるシフト機構100は、図1に示すように、その大部分が収納される変速機ケース1を備えている。変速機ケース1の外部には、運転者のシフト操作及びセレクト操作によりシフト操作荷重が入力されるシフトレバー2が配置されている。
【0020】
変速機ケース1内には、シフト操作荷重が伝達されるようにシフトレバー2と接続されるシフトセレクトシャフト3が配置されている。また、シフトセレクトシャフト3の矢印X1方向側の一方端部3aは、変速機ケース1内に設けられたケース軸受部4により支持されている。シフトセレクトシャフト3の矢印X2方向側の他方端部3bは、変速機ケース1内に設けられたケース軸受部5により支持されている。また、シフトセレクトシャフト3は、シャフトの軸線回りに回動自在に支持されているとともに、シャフトの軸線方向に移動自在に支持されている。
【0021】
なお、上記シフト操作およびセレクト操作を、周知の6速マニュアルミッションに設けられたシフトレバー2を例に挙げて説明すると、例えば、シフト操作は、シフトレバー2を車両が前進/後退する方向と同方向へ移動させる操作であり、その操作力がシフト操作力となる。また、セレクト操作は、シフトレバー2を車両が前進/後退する方向と直交する方向(車幅方向)へ移動させる操作であり、その操作力がセレクト操作力となる。また、本実施形態では、図1に示すように、シフトレバー2をシフトセレクトシャフト3の軸線方向(X方向)に移動させる操作をシフト操作と呼ぶものとする。
【0022】
シフトセレクトシャフト3の一方端部3a側の近傍には、径方向に延在したインナレバー6が固設されている。このインナレバー6は、シフトセレクトシャフト3の外周部に固定された基部6aと、基部6aから径方向に延在したアーム部6bとを有している。
【0023】
また、シフト機構100は、4本のフォークシャフト7、8、9及び10を備えている。これらのフォークシャフト7〜10は、互いに平行に配置されているとともに、変速機ケース1に対して個々にその軸線方向(X方向)へシフト操作可能に支持されている。
【0024】
フォークシャフト7〜10のうち、フォークシャフト7とフォークシャフト8とは、隣接して配置されている。フォークシャフト8の一方側には、フォークシャフト9が隣接して配置されている。フォークシャフト9の一方側には、フォークシャフト10が隣接して配置されている。また、フォークシャフト7〜9は、略同じ長さに形成されている。フォークシャフト10は、フォークシャフト7〜9よりも短く形成されている。
【0025】
フォークシャフト7〜10の両端部は、それぞれ、変速機ケース1内に設けられたシャフト軸受部11及びシャフト軸受部12に支持されている。また、変速機ケース1内には、各フォークシャフト7〜10と軸線方向に沿って対向する第1ストッパ部1aが設けられている。
【0026】
また、シフトレバー2のシフト操作及びセレクト操作が行われていない状態(例えば、ニュートラル状態)においては、各フォークシャフト7〜9の両端部と、第1ストッパ部1aとの間には、所定のクリアランス(間隔)L1が設けられている。
【0027】
具体的には、フォークシャフト7の一方端部7a及び他方端部7bと、変速機ケース1の第1ストッパ部1aとの間には、クリアランスL1が設けられている。また、フォークシャフト8の一方端部8a及び他方端部8bと、変速機ケース1の第1ストッパ部1aとの間には、クリアランスL1が設けられている。また、フォークシャフト9の一方端部9a及び他方端部9bと、変速機ケース1の第1ストッパ部1aとの間には、クリアランスL1が設けられている。
【0028】
フォークシャフト10の一方端部10aと、変速機ケース1の第1ストッパ部1aとの間には、クリアランスL1が設けられている一方、フォークシャフト10の他方端部10bと、第1ストッパ部1aとは、接触(当接)するように配置されている。
【0029】
また、変速機ケース1内には、シフトセレクトシャフト3の一方端部3aと軸方向に沿って対向する第2ストッパ部1bと、シフトセレクトシャフト3の他方端部3bと軸方向に沿って対向する内壁部1cとが設けられている。また、運転者によりシフトレバー2のシフト操作及びセレクト操作が行われていない状態(例えば、ニュートラル状態)においては、シフトセレクトシャフト3の一方端部3aと第2ストッパ部1bとの間には、所定のクリアランス(間隔)L2が設けられている。また、シフトセレクトシャフト3の他方端部3bと内壁部1cとの間には、所定のクリアランス(間隔)L3が設けられている。このクリアランスL3は、クリアランスL2よりも大きく設定されている。また、上記クリアランスL1は、クリアランスL2及びクリアランスL3よりも小さく設定されている。
【0030】
フォークシャフト7の一方端部7a〜フォークシャフト10の一方端部10a近傍には、それぞれ、シフトヘッド13、14、15及び16が固定されている。これらのシフトヘッド13〜16には、インナレバー6のアーム部6bがシフト操作及びセレクト操作に応じて選択的に係合する。
【0031】
また、フォークシャフト7〜10の軸上には、シフトヘッド13〜16の矢印X1方向側にシフトフォーク17が設けられているとともに、矢印X2方向側にシフトフォーク18、19及び20が設けられている。
【0032】
上記の構成により、シフトセレクトシャフト3とフォークシャフト7〜10との間に配置されているシフト操作力を伝達する構成部品(本実施形態では、インナレバー6及びシフトヘッド13〜16等)の剛性を、変速機ケース1の第1ストッパ部1aの剛性よりも小さくすることが可能となる。例えば、フォークシャフト7〜10が矢印X1方向に移動(スライド)して第1ストッパ部1aに当接した後に、インナレバー6及びシフトヘッド13〜16を軸線方向(矢印X1方向)に撓ませることにより、シフトセレクトシャフト3を軸線方向(矢印X1方向)にさらに移動(スライド)させて、シフトセレクトシャフト3を第2ストッパ部1bに当接するまで移動(スライド)させることが可能となる。なお、上記の動作は、以下に詳述する。
【0033】
次に、図1図4を参照して、本実施形態による手動変速機のシフト機構100の動作について説明する。なお、図2では、横軸にシフトセレクトシャフト3の変位量(撓み量)(mm)を示すとともに、縦軸にシフトセレクトシャフト3の入力荷重(N)の大きさを示している。
【0034】
まず、図1に示すように、運転者のシフト操作により、シフトレバー2からシフト操作荷重が入力される。これにより、シフトレバー2に接続されたシフトセレクトシャフト3が軸線方向(X方向)に移動(スライド)することによって、シフトセレクトシャフト3に固設されたインナレバー6がシフトヘッド13〜16のいずれかに選択的に係合する。
【0035】
そして、インナレバー6は、シフトヘッド13〜16のいずれかを介して、シフト操作に応じてフォークシャフト7〜10のいずれかを軸線方向(X方向)に移動(スライド)させる。なお、以下では、フォークシャフト7が矢印X1方向に移動(スライド)する場合について説明する。
【0036】
次に、図3に示すように、フォークシャフト7の一方端部7aが変速機ケース1の第1ストッパ部1a側に移動することによって、フォークシャフト7と第1ストッパ部1aとの間のクリアランスL1(図1参照)が減少する。その後、図3の二点鎖線に示すように、フォークシャフト7の一方端部7aが変速機ケース1の第1ストッパ部1aに当接する(クリアランスL1が0となる)。これにより、フォークシャフト7がストローク完了状態となる。
【0037】
このとき、シフトセレクトシャフト3と第2ストッパ部1bとは、離間した状態である。ここで、図2に示すように、フォークシャフト7の一方端部7aと第1ストッパ部1aとが当接した際におけるシフトセレクトシャフト3の入力荷重(N)をA1とするとともに、シフトセレクトシャフト3の変位量(mm)をB1とする。
【0038】
次に、ハードなシフト操作等(比較的大きなシフト操作荷重が入力された場合等)により、フォークシャフト7のストローク完了状態からさらに荷重が入力された場合には、図4の二点鎖線に示すように、シフトセレクトシャフト3とフォークシャフト7との間に配置されているシフト操作力を伝達する構成部品(インナレバー6及びシフトヘッド13等)が、シフトセレクトシャフト3からの入力荷重と第1ストッパ部1aの反力とを受けて矢印X1方向側に撓むこととなる。
【0039】
すなわち、フォークシャフト7の一方端部7aが変速機ケース1の第1ストッパ部1aに当接してからさらに荷重が入力されることにより、インナレバー6及びシフトヘッド13が矢印X1方向に撓むことにより、シフトセレクトシャフト3が矢印X1方向にさらに移動(スライド)することとなる。このとき、図2のA1とA2との間に示されるように、シフトセレクトシャフト3の入力荷重(N)が大きくなるのに伴って、図2のB1とB2との間に示されるように、シフトセレクトシャフト3の変位量(mm)が大きくなる。
【0040】
その後、図4に示すように、シフトセレクトシャフト3の一方端部3aが変速機ケース1の第2ストッパ部1bに当接することにより、シフトセレクトシャフト3とフォークシャフト7との間に配置されているインナレバー6及びシフトヘッド13は、それ以上撓まなくなる。このとき、図2に示すように、シフトセレクトシャフト3の入力荷重(N)はA2となり、シフトセレクトシャフト3の変位量(mm)はB2となる。
【0041】
なお、シフトセレクトシャフト3が第2ストッパ部1bに当接した状態からさらにシフト操作荷重が入力された場合には、図2に示すように、シフトセレクトシャフト3の入力荷重(N)はA2からA3へと増加する一方で、シフトセレクトシャフト3の変位量(mm)は入力荷重(N)の大きさに対して小さく(B2からB3)ほとんど変化しない。
【0042】
また、上記実施形態では、フォークシャフト7を矢印X1方向側に移動(スライド)させる例を示したが、フォークシャフト8、9及び10を矢印X1方向側に移動(スライド)させた場合も上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によるシフト機構100によれば、以下に列記するような効果が得られる。
【0044】
本実施形態では、上記のように、第1ストッパ部1aとフォークシャフト7〜10との間のクリアランスL1を第2ストッパ部1bとシフトセレクトシャフト3との間のクリアランスL2よりも小さく形成するとともに、シフトセレクトシャフト3とフォークシャフト7〜10との間に設けられるシフト操作力を伝達する構成部品(インナレバー6及びシフトヘッド13〜16等)の剛性を第1ストッパ部1aの剛性よりも小さくする。これにより、シフトレバー2からシフト操作荷重が入力された際には、フォークシャフト7〜10と軸方向(X方向)に沿って対向する第1ストッパ部1aによりシフトストロークが管理され、入力されたシフト操作荷重が比較的大きい場合には、シフトセレクトシャフト3と軸方向(X方向)に沿って対向する第2ストッパ部1bを作用させることができる。その結果、入力荷重が大きい場合のシフトセレクトシャフト3の変位を第1ストッパ部1a及び第2ストッパ部1bにより制限する(分担する)ことができる。これにより、比較的大きなシフト操作荷重が入力される際に、第1ストッパ部1aの強度を容易に確保することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、シフトレバー2のシフト操作によりフォークシャフト7〜10が第1ストッパ部1aに当接した後に、シフトセレクトシャフト3が第2ストッパ部1bに当接する際に、シフト操作力を伝達する構成部品(インナレバー6及びシフトヘッド13〜16等)が軸方向(X方向)に撓むようにすることにより、シフト操作力を伝達する構成部品の剛性を第1ストッパ部1aの剛性よりも小さくする。これにより、シフトレバー2から入力されるシフト操作荷重が比較的大きい場合には、フォークシャフト7〜10がスライドして第1ストッパ部1aに当接することによりストロークが完了した後に、シフトセレクトシャフト3と第1ストッパ部1aとの間に設けられるインナレバー6及びシフトヘッド13〜16等が軸方向(X方向)に撓むことにより、さらにシフトセレクトシャフト3を第2ストッパ部1bに向かってスライドさせることができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、インナレバー6及びシフトヘッド13〜16等を、第1ストッパ部1aの剛性よりも小さくする。これにより、シフトレバー2から入力されるシフト操作荷重が比較的大きい場合には、フォークシャフト7〜10がスライドして第1ストッパ部1aに当接することによりストロークが完了した後に、インナレバー6及びシフトヘッド13〜16等が第2ストッパ部1bに向かって軸方向に撓むことにより、さらにシフトセレクトシャフト3を第2ストッパ部1bに向かってスライドさせることができる。
【0047】
−他の実施形態−
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0048】
たとえば、上記実施形態では、シフトセレクトシャフト3の他方端部3bと変速機ケース1の内壁部1cとの間のクリアランスL3をシフトセレクトシャフト3の一方端部3aと変速機ケース1の第2ストッパ部1bとの間のクリアランスL2よりも大きくする例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、クリアランスL3をクリアランスL2と略同様の大きさにすることにより、フォークシャフト7、8及び9を矢印X2方向側に移動(スライド)させた場合に、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0049】
また、上記実施形態では、シフトセレクトシャフトとフォークシャフトとの間に設けられるシフト操作力を伝達する構成部品の一例として、インナレバー及びシフトヘッドを示したが、本発明はこれに限られない。例えば、シフトセレクトシャフトとフォークシャフトとの間に設けられるシフト操作力を伝達する構成部品であれば、インナレバー及びシフトヘッド以外の構成部品も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、手動変速機のシフト機構に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 変速機ケース
1a 第1ストッパ部
1b 第2ストッパ部
2 シフトレバー
3 シフトセレクトシャフト
6 インナレバー
7、8、9、10 フォークシャフト
13、14、15、16 シフトヘッド
100 シフト機構
図1
図2
図3
図4