【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例を示す鉄道列車の最適停止判定における運転士支援システムのブロック図、
図2はその鉄道列車の最適停止判定フローチャートである。
【0013】
図1において、1はCPU(中央処理装置)、2はメモリ、3は入力インターフェース、4は出力インターフェース、5は鉄道列車の走行速度情報入力部、6は鉄道列車の走行位置情報入力部、7は鉄道軌道の地点リスクDB(DBはデータベースを意味する)、8は鉄道軌道の衝撃脱線リスクDB、9は鉄道列車の最適停止位置判定部、10は鉄道列車の最適制動時期判定部、11は鉄道列車の最適制動強度判定部、12は鉄道列車運転士への情報表示部である。
【0014】
本発明の鉄道列車の最適停止判定フローチャートを参照しながら説明する。
【0015】
(1)まず、鉄道列車は車外、車内のハザード検知の有無をチェックする(ステップS1)。
【0016】
(2)次に、ハザードを検知すると、鉄道列車の速度の有無をチェックする(ステップS2)。
【0017】
(3)次に、速度がある場合には、鉄道列車の走行に関する情報をチェックする(ステップS3)。ここで走行に関する情報としては、走行速度、走行位置、制動能力が挙げられる。
【0018】
(4)次に、各種リスクに関する情報をチェックする(ステップS4)。ここで各種リスクとしては、地点リスク、衝撃脱線リスクが挙げられる。
【0019】
(5)次に、鉄道列車の最適停止位置の判定を行う(ステップS5)。
【0020】
(6)次に、鉄道列車の制動内容の判定を行う(ステップS6)。ここで、制動内容としては、最適制動時期、最適制動強度が挙げられる。
【0021】
(7)そこで、上記ステップS1〜S6を踏まえて、鉄道列車運転士への情報呈示を行う(ステップS7)。
【0022】
以下、各具体的事例について概要を説明する。
【0023】
図3は本発明の実施例における鉄道列車の最適停止判定における地点リスク分布の模式図である。
【0024】
この図において、20は鉄道列車、21は高架、22は平地で道路と隣接している場所(リスクは低い)、23は橋梁(リスクは高い)、24はトンネル(リスクは高い)、25は山の中、26は駅(リスクなし)であり、地点リスク(停止した地点のリスク)はハザード種別ごとに決定される。
【0025】
ここで、地点リスクとしては、(1)避難リスク:そこから避難するリスク、(2)待機リスク:そこに溜まるリスク、(3)再力行不可リスク:固着や停電等で移動できないリスクが考慮される。
【0026】
図4は本発明の実施例における衝撃脱線リスク分布(ハザードが遠方の場合)の模式図、
図5はその衝撃脱線リスク分布(ハザードが近方の場合)の模式図である。
【0027】
図4において、30は右から左へ走行している鉄道列車、31は停止不可区間、32は車外ハザード(障害物、風雨規制など)、33は衝撃脱線リスク、34は障害物の移動や制動距離の増加による衝撃脱線リスクのマージン、35は最高速度で衝撃した際の最大の衝撃脱線リスク値を示している。
【0028】
図5において、40は右から左へ走行している鉄道列車、41はハザードが近方にある場合の衝撃脱線リスクを示している。
【0029】
図4及び
図5において、各リスクの大きさはハザードと速度により決定される。ここで、衝撃脱線リスクは、(1)衝撃や脱線で乗客を傷害させたり機器を破損させたりするリスクであり、(2)それは速度が高いほど大きく、(3)障害物への衝撃であれば障害物が大きいほど乗客数が多いなど大きく、(4)脱線であれば、線路外の構造物が大きいほど、列車の両数や乗客数が多いほど、線路と線路外との落差が大きいほど大きくなる。
【0030】
次に、鉄道列車の停止位置判断について説明する。
【0031】
図6は本発明の実施例として、車外ハザードに対する鉄道列車の停止位置判断の模式図である。
【0032】
この図において、50は右から左へ走行している鉄道列車、51は地点リスク、52は衝撃脱線リスク、53は総合リスク、54は最適停止位置を示している。
【0033】
総合リスクは地点リスクと衝撃脱線リスクを加算したものである。ただし、停止不可区間は除外する。次駅までの間でこの総合リスクが最も小さい地点が最適停止位置と判定される。
【0034】
図7は本発明の実施例として、近位置で障害物を発見した場合のシミュレーション結果を示した図であり、横軸は路線位置、縦軸はリスクの大きさを示している。
【0035】
この図において、鉄道列車61は、路線位置29を走行中、路線位置22に障害物を検知し、最適な停止位置を判定したところ路線位置19であり、その場で最大の制動をかけるように情報呈示される。なお、鎖線は衝撃脱線リスク、点線は地点リスク、太線は総合リスクを示している。
【0036】
図8は本発明の実施例として、中位置で障害物を発見した場合のシミュレーション結果を示した図であり、横軸は路線位置、縦軸はリスクの大きさを示している。
【0037】
この図において、鉄道列車62は、路線位置39を走行中、路線位置22に障害物を検知し、最適な停止位置を判定したところ路線位置20であり、通常の制動をかけて低速で停止位置まで進むように情報呈示される。なお、鎖線は衝撃脱線リスク、点線は地点リスク、太線は総合リスクを示している。
【0038】
図9は本発明の実施例として、遠位置で障害物を発見した場合のシミュレーション結果を示した図であり、横軸は路線位置、縦軸はリスクの大きさを示している。
【0039】
この図において、鉄道列車63は、路線位置43を走行中、路線位置22に障害物を検知し、最適な停止位置を判定したところ路線位置33から31であり、最大かやや小さい制動をかけて停止するように情報呈示される。なお、鎖線は衝撃脱線リスク、点線は地点リスク、太線は総合リスクを示している。
【0040】
図10は本発明の実施例として、車内ハザードに対する鉄道列車の停止位置判断の模式図である。
【0041】
この図において、70は鉄道列車、71は車内ハザード(脱線、台車の振動、地震、火災など)、72は停止不可区間、73は地点リスク、74は衝撃脱線リスク、75は総合リスク、76は最適停止位置を示している。
【0042】
車内ハザードは、衝撃脱線リスクは走行する距離が大きいぼど大きく、速度が高いほど大きい。次駅までの間にこの総合リスクがもっとも小さい地点が最適停止位置と判断される。
【0043】
図11は本発明の実施例として、リスクが大きな車内ハザードを検知した場合のシミュレーション結果を示した図であり、横軸は路線位置、縦軸はリスクの大きさを示している。
【0044】
この図において、鉄道列車81は、路線位置46を走行中、車内ハザードを検知し、最適な停止位置を判定したところ路線位置19であり、通常の制動をかけて低速で停止位置まで進むように情報呈示される。なお、鎖線は衝撃脱線リスク、点線は地点リスク、太線は総合リスクを示している。
【0045】
図12は本発明の実施例として、リスクが中程度の車内ハザードを検知した場合のシミュレーション結果を示した図であり、横軸は路線位置、縦軸はリスクの大きさを示している。
【0046】
この図において、鉄道列車82は、路線位置46を走行中、車内ハザードを検知し、最適な停止位置を判定したところ路線位置19であり、通常の制動をかけて低速で停止位置まで進むように情報呈示される。なお、鎖線は衝撃脱線リスク、点線は地点リスク、太線は総合リスクを示している。
【0047】
図13は本発明の実施例として、リスクが小さな車内ハザードを検知した場合のシミュレーション結果を示した図であり、横軸は路線位置、縦軸はリスクの大きさを示している。
【0048】
この図において、鉄道列車83は、路線位置46を走行中、車内ハザードを検知し、最適な停止位置を判定したところが路線位置であり、通常通り駅に停止するように情報呈示される。なお、鎖線は衝撃脱線リスク、点線は地点リスク、太線は総合リスクを示している。
【0049】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。