(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1で塗装するアルミニウム箔あるいは銅箔は、リチウムイオン電池用電極に用いられるものであり、その厚さが10〜20μm程度の薄膜である。
このような薄膜は、それ自体の強度が低く、特許文献1においても張力が過剰になった場合に破断する可能性がある。
さらに、特許文献2のように、長い領域にわたってハウジング内にさらされた場合、ハウジング内の気流によって破断する可能性もある。
このため、特許文献1の静電塗装装置における粉体供給装置の簡素化を図るために、特許文献2を導入しようとしても、リチウムイオン電池用電極に用いられるアルミニウム箔や銅箔のような数十μm単位の薄膜に適用することが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、薄膜の静電塗装を安全に行えかつ構成を簡素にできる薄膜静電塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薄膜静電塗装装置は、ウェブ状の基材を表面に保持可能なコンベアベルトを上流側から下流側へと送るベルトコンベア装置と、前記コンベアベルトの上流側に前記基材を供給する基材供給装置と、前記コンベアベルトの下流側から前記基材を回収する基材回収装置と、前記コンベアベルトの中間部を包囲しかつ前記コンベアベルトに沿って延びるハウジングと、前記ハウジングの一方の端部から他方の端部へと粉体を供給する粉体供給装置と、前記ハウジングの内部に設置されて前記粉体を前記コンベアベルトの表面に保持された前記基材に定着させる電極と、を有することを特徴とする。
【0010】
このような本発明では、コンベアベルトの上流側に基材供給装置からウェブ状の基材が供給され、供給された基材はコンベアベルトの表面に保持されてコンベアベルトの移動に伴って下流側へと搬送される。そして、ハウジング内を通過する間に、粉体供給装置からの粉体が電極により基材に定着され、これにより基材の静電塗装が行われる。粉体が静電塗装された基材は、コンベアベルトの下流側から基材回収装置に回収される。
この際、ハウジング内で塗装される基材が厚さ10〜20μm程度の薄膜で強度が低くても、コンベアベルトの表面に保持された状態で搬送されるため、過剰な張力により損傷等されることがない。また、ハウジング内においても、コンベアベルトで裏打ちされて補強されているため、ハウジング内の気流によって損傷等されることもない。
従って、本発明により、薄膜の静電塗装を安全に行うことができ、かつ薄膜静電塗装装置として特殊な構成等を用いることもなく、構成を簡素にすることができる。
【0011】
本発明において、ベルトコンベア装置としては、コンベアベルトとして上流側ローラと下流側ローラとの間に掛け渡されたエンドレスベルトを用いることができる。あるいは、エンドレスでないコンベアベルトを上流側ロールから引き出して下流側ロールに巻き取るような構成としてもよい。
ベルトコンベア装置における基材の搬送方向、つまり基材が保持されるコンベアベルトの表面の向きは、水平方向とすることが望ましい。これにより、重力で基材がコンベアベルト表面に押し付けられ、安全に保持される。
ベルトコンベア装置の搬送方向は、垂直方向あるいは他の傾斜方向であってもよい。このような場合、基材がコンベアベルト表面で確実に保持されるように、コンベアベルトの反対側から負圧吸引する保持補助手段を適宜設けるようにしてもよい。
【0012】
本発明において、基材供給装置および基材回収装置としては、印刷機あるいは金属薄板製造装置で用いられる着脱式のコイル支持装置を用いることができる。
基材供給装置および基材回収装置とベルトコンベア装置との間には、ウェブ状の基材の張力を適切に保つための駆動装置や調整装置を適宜設置してもよい。例えば、ベルトコンベア装置から引き出された基材の張力を適切に維持するために、弛みを調整する装置を設置したり、あるいは弛みを検出してベルトコンベア装置その他の駆動状態を調整する制御装置を設置したりしてもよい。
【0013】
本発明において、粉体供給装置としては、静電塗装するための粉体を気流に乗せてハウジング内に供給するものであればよく、既存の静電塗装装置の粉体供給部分を流用することができる。この際、粉体の成分調整あるいは粉体の形状処理も併せて行えることが望ましい。
粉体供給装置は、ハウジングの下流側から粉体を供給し、コンベアベルト表面の基材と逆向きに移動する粉体の流れを生成するものであってもよいし、ハウジングの上流側から粉体を供給し、コンベアベルト表面の基材と同じ向きに移動する粉体の流れを生成するものであってもよい。
【0014】
本発明において、ハウジングの粉体供給装置から粉体が供給される側とは反対側の端部には、余剰の粉体を回収する粉体回収装置を設置することが望ましい。
本発明において、ハウジングの下流側には、基材に定着された粉体を固定するための加熱装置やプレス装置を設置することが望ましい。
【0015】
本発明において、前記ハウジングの内部には、前記ハウジングの内部のガスを攪拌する攪拌手段が設置されていることが望ましい。
このような本発明では、粉体供給装置から粉体がハウジングの一方の端部に供給され、他方の端部に向かう気流に乗って、コンベアベルト表面に支持された基材に一部の粉体が接触しつつハウジング内を通過してゆく。この際、ハウジング内を通過する粉体は、それぞれ自重によって徐々に沈降し、ハウジングの他端まで到達しなくなる可能性がある。これに対し、攪拌手段によりハウジング内のガスを攪拌することで、粉体を巻き上げて沈降を防止することができる。
【0016】
本発明において、前記攪拌手段は、前記ハウジングの長手方向に延びる攪拌用ダクトと、前記攪拌用ダクトの内部に加圧ガスを供給するガス供給装置と、前記攪拌用ダクトの内部のガスを前記ハウジングの内部に噴射する多数の噴射ノズルとを備えていることが望ましい。
このような本発明では、ダクト内に供給された加圧ガスが、噴射ノズルからハウジング内に噴射され、これによりハウジング内のガスを攪拌することで、粉体を巻き上げて沈降を防止することができる。
また、攪拌手段が加圧ガスを噴射する構成であれば、機械的な可動部分がないため、粉体が接触する状態でも安定した動作を維持することができ、保守性を高めることができるとともに、機構的にも簡略で設備コストも低減できる。
なお、本発明においては、前述した加圧ガス噴射式の攪拌手段以外にも、ハウジング内で回転する羽根車、揺動する攪拌板、振動式の攪拌部材などを利用してもよい。
【0017】
本発明において、一連の前記基材の途中に複数の前記ハウジングが設置され、複数の前記ハウジングにそれぞれ前記粉体供給装置および前記電極が設置されていることが望ましい。
このような本発明では、一連の基材に対して複数の静電塗装を行うことができる。このため、同じ粉体による静電塗装を複数回繰り返すことで、塗膜の厚膜化を行うことができる。また、異なる粉体による静電塗装を順次行うことで、基材に複層塗膜を形成することもできる。
なお、ベルトコンベア装置は、一連のベルトコンベア装置の途中に複数のハウジングを設置してもよいし、ハウジング毎に設置してもよい。複数のベルトコンベア装置を用いる場合、上流側のベルトコンベア装置から取り出された基材を下流側のベルトコンベア装置に載せ替えるようにすればよい。
【0018】
本発明において、一連の前記基材の途中に複数の前記ベルトコンベア装置が設置され、複数の前記ベルトコンベア装置にはそれぞれ前記ハウジング、前記粉体供給装置および前記電極が設置されているとともに、複数の前記ベルトコンベア装置はそれぞれ水平に配置され、前記ベルトコンベア装置の何れかが他の前記ベルトコンベア装置の上方に設置されていることが望ましい。
このような本発明では、ベルトコンベア装置を上下方向に重ねることにより、設備としての占有床面積を抑制することができる。また、ベルトコンベア装置が水平に配置されることで、コンベアベルトによる基材の保持を自重により安全に行うことができる。
【0019】
本発明において、一連の前記基材の途中に複数の前記ベルトコンベア装置が設置され、複数の前記ベルトコンベア装置にはそれぞれ前記ハウジング、前記粉体供給装置および前記電極が設置されているとともに、複数の前記ベルトコンベア装置はそれぞれ縦方向に配置され、各々が互いに隣接して平行に設置されていることが望ましい。
このような本発明では、ベルトコンベア装置が縦方向に配置されることで、設備としての占有床面積をさらに抑制することができる。
【0020】
本発明において、一連の前記基材の途中に少なくとも2つの前記ベルトコンベア装置が設置され、上流側の前記ベルトコンベア装置を通過した前記基材が反転して下流側の前記ベルトコンベア装置に導入されるように配置されていることが望ましい。
このような本発明では、基材は、上流側のベルトコンベア装置のハウジングで表面側を静電塗装される。そして、上流側のベルトコンベア装置から引き出されたのち反転されることで、下流側のベルトコンベア装置で搬送される間に裏面側がハウジング内で静電塗装される。これにより、2つのベルトコンベア装置を通過した基材には、その表裏に粉体の静電塗装を行うことができる。
このような基材を反転させて順次静電塗装する構成は、前述した2つのベルトコンベア装置を上下に重ねる配置または縦方向に並べる配置を利用して簡単に実現できる。
【0021】
本発明において、前記ハウジングにはマスキング装置が設置され、前記マスキング装置は前記基材の表面をマスキングするマスキングベルトを有し、前記マスキングベルトには前記基材の表面を前記ハウジングの内部に露出させる塗装パターンが形成されているとともに、前記マスキングベルトは、前記基材を挟んで前記コンベアベルトの表面に沿って張られ、前記コンベアベルトと同期して移動されることが望ましい。
このような本発明では、マスキングベルトが基材およびコンベアベルトの表面側に沿って同期移動することで、基材のうち特定の領域だけが塗装パターンからハウジング内に露出した状態とされる。従って、ハウジング内での粉体の静電塗装は、基材のうち塗装パターンから露出する領域だけに対して行われる。
その結果、ハウジングを通過した基材には、マスキングベルトの塗装パターンに対応した粉体の塗膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ウェブ状の基材が厚さ10〜20μm程度の薄膜で強度が低くても、コンベアベルトの表面に保持された状態で搬送されるため、過剰な張力により損傷等されることがない。また、ハウジング内においても、コンベアベルトで裏打ちされて補強されているため、ハウジング内の気流によって損傷等されることもない。
従って、本発明により、薄膜の静電塗装を安全に行うことができ、かつ薄膜静電塗装装置として特殊な構成等を用いることもなく、構成を簡素にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1から
図4には、本発明の第1実施形態が示されている。
図1から
図3に示す本実施形態の薄膜静電塗装装置1は、
図4に示すウェブ状の基材9の表面に静電塗装による塗膜8を形成し、塗膜つき基材7を製造するものである。
【0025】
基材9は、例えばリチウムイオン電池用電極などの基材となる薄膜であり、厚さ10〜20μm程度のアルミニウム箔あるいは銅箔とされる。
塗膜8は、前述したリチウムイオン電池用電極の電極層となるものであり、活物質(導電助材を含む)の粉末と結着材の粉末とを混合し、得られた混合粉末を粉体6(
図2および
図3参照)として静電塗装することにより基材9の表面に定着させ、さらに加熱およびプレスすることで基材9に固定される。
【0026】
薄膜静電塗装装置1は、
図1に示すように、水平方向に延びるベルトコンベア装置10を有する。
ベルトコンベア装置10は、前述した基材9を上面に保持するコンベアベルト11を有する。
コンベアベルト11は、ステンレス製のエンドレスベルトなどであり、フレーム12に支持された上流側ローラ13(図中右側)と下流側ローラ14(図中左側)との間に掛け渡されており、基材9を保持する上面が水平に配置されている。
【0027】
ベルトコンベア装置10において、下流側ローラ14には駆動モータ15が接続され、この駆動モータ15で下流側ローラ14を回転させることで、コンベアベルト11が送られ、上流側ローラ13も一体に回転する。なお、駆動モータ15による駆動は、上流側ローラ13および下流側ローラ14の何れかまたは両方であってもよい。
駆動モータ15でコンベアベルト11を送ることで、その上面に保持されたウェブ状の基材9が上流側(図中右側)から下流側(図中左側)へと送られる。
【0028】
ベルトコンベア装置10の上流側には、基材9を供給する基材供給装置20(
図1右端)が設置されている。
ベルトコンベア装置10の下流側には、基材9を回収する基材回収装置30(
図1左端)が設置されている。
ベルトコンベア装置10の途中には、ハウジング40および加熱装置50が設置されている。
ベルトコンベア装置10と基材回収装置30との間には、弛み検出器60およびプレス装置70が設置されている。
【0029】
基材供給装置20は、ウェブ状の基材9が巻かれたコイル21を有し、このコイル21から引き出した基材9をコンベアベルト11の上流側に供給する。
コイル21は着脱式とされ、基材9が全て引き出されたコイル21を取り外し、基材9が巻かれたコイル21を装着することで、基材9の供給を継続することができる。
コイル21には駆動モータ22が接続され、基材9の送り出しに適した回転速度となるようにコイル21の回転を制御することができる。
このような基材供給装置20は、類似の機能を有する印刷機あるいは金属薄板製造装置で用いられる着脱式のコイル支持装置を参照して適宜構成すればよい。
【0030】
基材回収装置30は、ウェブ状の基材9(稼働時には塗膜つき基材7)が巻かれるコイル31を有し、コンベアベルト11の下流側から引き出された基材9を巻き取って回収する。
コイル31は着脱式とされ、基材9が所定量巻き取られたコイル31を取り外し、新たな空のコイル31を装着することで、基材9の回収を継続することができる。
コイル31には駆動モータ32が接続され、基材9の巻き取りに適した回転速度となるようにコイル31の回転を制御することができる。
このような基材回収装置30は、類似の機能を有する印刷機あるいは金属薄板製造装置で用いられる着脱式のコイル支持装置を参照して適宜構成すればよい。
【0031】
ハウジング40は、コンベアベルト11の中間部を包囲するハウジング本体41を有する。
図2および
図3に示すように、ハウジング本体41は、コンベアベルト11に沿って延びる箱状とされ、一面が開口されるとともに、この開口をコンベアベルト11が塞ぐように配置されている。従って、コンベアベルト11の上面に保持された基材9は、ハウジング40を通過する際に、ハウジング本体41の開口から内部空間に露出される。
【0032】
ハウジング本体41の下流側には粉体供給装置42が設置されている。
ハウジング本体41の上流側には粉体回収装置43が設置されている。
ハウジング本体41の内部には静電塗装用の電極44が複数配列されている。
ハウジング本体41の内部には、前述した開口に沿ってハウジング本体41の長手方向に延びる攪拌用ダクト45が設置されている。
【0033】
粉体供給装置42は、ハウジング40の一方の端部から他方の端部へと粉体を供給するものであり、本実施形態ではハウジング本体41の下流側(基材9を保持したコンベアベルト11が出て行く側)に設置されている。
粉体供給装置42は、内部に粉体6を貯留するタンク421と、このタンク421からハウジング本体41の下流側端部に連続する供給ダクト422と、タンク421内の粉体6を搬送ガスで巻き上げて供給ダクト422へと送り出す送出ポンプ(図示省略)とを備えている。
【0034】
これにより、粉体供給装置42は、粉体6を搬送ガスとともに送り出し、供給ダクト422からハウジング本体41の下流側端部に供給することができ、ハウジング本体41内には下流側から上流側に向けて静電塗装するための粉体6を含む搬送ガスの気流が生成される。
なお、粉体供給装置42は、既存の静電塗装装置の粉体供給部分を適宜流用することができ、粉体6の貯留に先立って粉体6の成分調整あるいは粉体6の形状処理も併せて行えるようにしてもよい。
【0035】
粉体回収装置43は、ハウジング40の上流側(基材9を保持したコンベアベルト11が導入される側、粉体供給装置42が設置された下流側と反対側)の端部に設置され、ハウジング本体41内を上流側まで流れてきた余剰の粉体6を回収するものである。
粉体回収装置43は、内部に粉体6を貯留するタンク431と、このタンク431からハウジング本体41の上流側端部に連続する回収ダクト432とを有し、タンク431には回収ダクト432を通してハウジング本体41の上流側から余剰の粉体6を含む搬送ガスを吸引する吸引ポンプ(図示省略)が設置されている。
【0036】
これにより、粉体回収装置43は、ハウジング本体41の上流側の搬送ガスおよび余剰の粉体6を回収ダクト432から回収することができ、ハウジング本体41内に生成される下流側から上流側に向かう粉体6を含む搬送ガスの気流を維持することができる。
なお、粉体回収装置43は、既存の静電塗装装置の粉体回収部分を適宜流用することができ、回収した粉体6および搬送ガスの再利用、排出にあたっての塵埃濾過処理なども併せて行えるようにしてもよい。
【0037】
電極44は、粉体6を帯電させてコンベアベルト11に保持された基材9の表面に吸着させ、所期の厚さで定着させるものである。
このために、電極44は、基材9が露出されるハウジング本体41の開口に沿って、縦横に複数が配列されている。
それぞれの電極44には、電源装置441が接続され、粉体6に対する帯電が行われるように構成されている。
【0038】
攪拌用ダクト45は、ハウジング本体41内をその下流側から上流側へと流れる粉体6を含む搬送ガスを攪拌することで、粉体6を巻き上げてその沈降を防止するものである。
攪拌用ダクト45は、ハウジング本体41の開口の辺縁のうちハウジング本体41の長手方向に沿った両側の辺縁に一対で配置されている。
攪拌用ダクト45には、外部の加圧ガスを供給するガス供給装置451が接続されているとともに、攪拌用ダクト45内のガスをハウジング本体41内に噴射する多数の噴射ノズル452が設置されている。
【0039】
攪拌用ダクト45は、断面形状が長方形の管状に形成され、その両端は塞がれている。攪拌用ダクト45の長手方向辺縁のうち、ハウジング本体41の長手方向中心軸線に近い辺縁は切り欠かれており、この開口部分は多数の噴射ノズル452が開口された板材で塞がれている。従って、攪拌用ダクト45の内部にガス供給装置451から加圧ガスが供給されると、このガスは多数の噴射ノズル452からハウジング本体41の内部に噴射され、各噴射ノズル452からハウジング本体41内にジェット453が形成される。
このジェット453により、ハウジング本体41内を流れる搬送ガスが攪拌され、これに含まれる粉体6が巻き上げられてその沈降が防止される。
【0040】
加熱装置50は、ハウジング40内で基材9に粉体6を定着した後、基材9とともに粉体6を加熱して塗膜8として固定するためのものであり、ハウジング40の下流側に設置されている。
加熱装置50は、ハウジング40の下流側でコンベアベルト11を包囲する加熱装置本体51を有する。加熱装置本体51の内部には、コンベアベルト11の表面側上方に基材9の搬送方向に沿ってヒータ(図示省略)が設置され、コンベアベルト11に保持された基材9およびその表面に定着された粉体6の層を加熱する。この加熱により、粉体6のバインダ成分が相互に結合し、塗膜8として基材9の表面に固定され、塗膜つき基材7が形成される。
【0041】
加熱装置50で形成された塗膜つき基材7(粉体6が塗膜8として表面の固定された基材9)は、コンベアベルト11の表面に保持された状態であるが、加熱装置50を通過したのちベルトコンベア装置10の下流側でコンベアベルト11から分離され、単独でベルトコンベア装置10から引き出される。
ベルトコンベア装置10から引き出された基材7は、弛み検出器60およびプレス装置70を順次経由して基材回収装置30に回収される。
【0042】
弛み検出器60は、ベルトコンベア装置10の下流側から基材回収装置30までの間の塗膜つき基材7が単独で送られる区間における弛みを調節するものである。
このために、弛み検出器60は、基材7の搬送方向に並んだ2つのローラ61,62を有し、その間には基材7の搬送方向から外れたローラ63を備えている。
ローラ61,62は、それぞれ周面の最高位置がベルトコンベア装置10のコンベアベルト11の表面と同レベルに配置されている。
【0043】
ローラ63は、本実施形態ではローラ61,62から下方に変位して設置され、揺動式のアーム64を介して軸を支持されており、アーム64の揺動によりローラ63は軸位置が昇降し、ローラ61,62に対する距離が変動する。アーム64には、その揺動を検出する変位検出器65が設置されている。
【0044】
基材7は、ベルトコンベア装置10を出た後、ローラ61で受けられて下方のローラ63に送られ、ローラ63で反転して上方のローラ62に戻り、下流側へ送り出される。このような配置により、基材7の弛みが増加した際にはローラ63が下方に移動し、弛みが減少した際にはローラ63が上方へ移動する。この際のローラ63の上下の変位は、アーム64の揺動として変位検出器65で検出することができる。
【0045】
従って、弛み検出器60においては、変位検出器65で検出されたローラ63の上下変位から基材7の弛みの増減を検出することができ、図示しない制御装置を介してベルトコンベア装置10および下流側のプレス装置70ないし基材回収装置30の回転駆動を調節することにより、基材7の弛みあるいは張力を最適な状態に維持することができる。
【0046】
プレス装置70は、基材7の塗膜8の定着をさらに強固にするために、基材7の表面にロールプレス加工を施すものである。
このために、プレス装置70は、弛み検出器60から送り出された基材7を上下から挟む一対の加圧ロール71,72を有し、下側の加圧ロール72を回転駆動する駆動モータ73を有する。
一対の加圧ロール71,72は、相互の間隔を微調整可能に支持され、この間隔調整により基材7に対する加圧状態を調整することができる。そして、駆動モータ73で加圧ロール72が回転されることで、これに転動する基材7を適切に送ることができる。
【0047】
プレス装置70から送り出された基材7は、基材回収装置30へと送られ、コイル31に巻き取られて回収される。
【0048】
このような本実施形態では、コンベアベルト11の上流側に基材供給装置20からウェブ状の基材9が供給され、供給された基材9はコンベアベルト11の表面に保持されてコンベアベルト11の移動に伴って下流側へと搬送される。
そして、ハウジング40内を通過する間に、粉体供給装置42からの粉体6が電極により基材9に定着され、これにより基材9の静電塗装が行われる。塗膜8が形成された基材7は、コンベアベルト11の下流側から送り出され、基材回収装置30に回収される。
【0049】
本実施形態では、ハウジング40内で塗装される基材9が厚さ10〜20μm程度の薄膜で強度が低くても、コンベアベルト11の表面に保持された状態で搬送されるため、過剰な張力により損傷等されることがない。また、ハウジング40内においても、コンベアベルト11で裏打ちされて補強されているため、ハウジング40内の気流によって損傷等されることもない。
従って、本発明により、薄膜の静電塗装を安全に行うことができ、かつ薄膜静電塗装装置として特殊な構成等を用いることもなく、構成を簡素にすることができる。
【0050】
本実施形態では、ベルトコンベア装置10における基材9の搬送方向、つまり基材9が保持されるコンベアベルト11の表面の向きを、水平方向とした。このため、基材9を重力でコンベアベルト11表面に押し付けることができ、それ自体で安定した保持を行うことができ、機構的に簡略でありながら安全な保持を行うことができる。
【0051】
本実施形態では、基材供給装置20および基材回収装置30として、印刷機あるいは金属薄板製造装置で用いられる着脱式のコイル支持装置を用いたため、塗装前の基材9を巻いたコイルあるいは塗装された基材7を巻き取ったコイルとして搬入搬出の作業を容易にすることができる。
また、ベルトコンベア装置10と基材回収装置30との間に弛み検出器60を設置し、検出される基材7の弛みに応じてベルトコンベア装置10、プレス装置70および基材回収装置30の回転駆動を制御するようにしたため、ベルトコンベア装置10からプレス装置70までの間の距離が長くても基材7の弛みを適切な状態とすることができる。
【0052】
本実施形態において、ハウジング40において、粉体6を静電塗装により基材9の表面に定着させることができる。
この際、粉体供給装置42によりハウジング40の下流側の端部からハウジング本体41内へと粉体6を供給するようにしたため、上流側の端部に至る長い距離にわたって気流に載った粉体6とコンベアベルト11表面の基材9とを接触させることができる。従って、ハウジング40の全長を有効に利用できるため、ハウジング40の全長を最小限に抑えることができ、装置の小型化にも有効である。
【0053】
本実施形態では、ハウジング40の粉体供給装置42と反対側に、余剰の粉体を回収する粉体回収装置43を設置したため、先にハウジング40内に供給されていた粉体6を適宜回収することで、ハウジング40内への新鮮な粉体6の供給を妨げることがないとともに、ハウジング40の外部への漏れ出し等を未然に防止することができる。
さらに、本実施形態では、ハウジング40の下流側に、基材9に定着された粉体6の塗膜8を固定するための加熱装置50やプレス装置70を設置したため、塗膜8を強固なものとすることができ、基材7を安定しかつ堅牢なものとすることができる。
【0054】
本実施形態では、攪拌手段として、ハウジング40の長手方向に延びる攪拌用ダクト45を設け、ガス供給装置451から加圧ガスを供給し、多数の噴射ノズル452からガスを噴射するようにしたため、ハウジング40内の搬送ガスを攪拌することで、粉体6を巻き上げて沈降を防止することができる。
本実施形態の攪拌手段は、攪拌用ダクト45および噴射ノズル452から加圧ガスを噴射することでハウジング40内の気流を攪拌するものであり、機械的な可動部分をもたないため、粉体6が接触する状態でも安定した動作を維持することができ、保守性を高めることができるとともに、機構的にも簡略で設備コストも低減できる。
【0055】
〔第2実施形態〕
図5には、本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態の薄膜静電塗装装置2は、前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1と同様な構成を含んでいる。このため、同様な構成については同じ符号で示し、重複する説明はこれを省略する。
前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1では、静電塗装を行うハウジング40がベルトコンベア装置10の途中に1つ設置されていた。これに対し、本実施形態の薄膜静電塗装装置2では、ベルトコンベア装置10の途中には2つのハウジング40が直列に設置されている。
【0056】
2つのハウジング40は、それぞれ前述した第1実施形態におけるハウジング40(
図2参照)と同様なものである。
また、薄膜静電塗装装置2の他の構成であるベルトコンベア装置10、基材供給装置20、基材回収装置30、加熱装置50、弛み検出器60およびプレス装置70は、それぞれ前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1における各々と同一である。
なお、ベルトコンベア装置10は、ハウジング40を2つ設置する分、前述した第1実施形態よりも全長が長く形成されている。
【0057】
このような本実施形態では、ベルトコンベア装置10で搬送される一連の基材9に対して、上流側のハウジング40および下流側のハウジング40により2回の静電塗装を順次行うことができる。
このため、同じ粉体6による静電塗装を2回繰り返すことで、基材9に形成される塗膜8の厚膜化を行うことができる。
また、異なる粉体6による静電塗装を順次行うことで、基材9に複層塗膜を形成することもできる。
【0058】
なお、本実施形態では一連のベルトコンベア装置10の途中に複数のハウジング40を設置したが、複数のベルトコンベア装置10を連続して設置し、一連の基材9に対して複数のハウジング40を設置しても同様の効果を得ることができる。
例えば、2つのベルトコンベア装置10を用い、第1のベルトコンベア装置10の下流側に基材9が一連となるように第2のベルトコンベア装置10を設置し、上流側にある第1のベルトコンベア装置10に第1のハウジング40を設置し、下流側にある第2のベルトコンベア装置10に第2のハウジング40および加熱装置50を設置してもよい。また、第1のベルトコンベア装置10に第1のハウジング40および第1の加熱装置50を設置し、第2のベルトコンベア装置10に第2のハウジング40および第2の加熱装置50を設置してもよい。
【0059】
〔第3実施形態〕
図6には、本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態の薄膜静電塗装装置3は、前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1と同様な構成を含んでいる。このため、同様な構成については同じ符号で示し、重複する説明はこれを省略する。
前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1では、静電塗装を行うハウジング40およびベルトコンベア装置10がそれぞれ1つ設置されていた。これに対し、本実施形態の薄膜静電塗装装置3では、ベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50のセットが2組、搬送経路の上流側および下流側となるように直列に設置されているとともに、構造的には各セットが下段および上段となる二段構成とされている。
【0060】
2つのハウジング40は、それぞれ前述した第1実施形態におけるハウジング40(
図2参照)と同様なものである。
また、薄膜静電塗装装置3の他の構成であるベルトコンベア装置10、基材供給装置20、基材回収装置30、加熱装置50、弛み検出器60およびプレス装置70は、それぞれ前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1における各々と同様である。
なお、弛み検出器60は、前述した二段構成とするために、ローラ61,62の配置を変更して高さの違いを出せるように構成されている。
【0061】
本実施形態において、第1のセットのベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50は、下段のフレーム12に支持されている。
また、第2のセットのベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50は、フレーム12の上方に掛け渡された上段のフレーム16に支持されている。
【0062】
フレーム12には、前述した第1のセット(下段のベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50)が支持されるとともに、ベルトコンベア装置10の上流側に基材供給装置20が設置され、ベルトコンベア装置10の下流側に第1の弛み検出器60が設置されている。
第1の弛み検出器60は、入口側のローラ61、変位するローラ63、アーム64および変位検出器65がフレーム12に支持されているが、出口側のローラ62が上方のフレーム16に支持されている。
【0063】
第1の弛み検出器60において、出口側のローラ62は、基材9の表面側(第1のハウジング40で静電塗装される面)に転動とするように配置されている。
このような配置により、第1のセット(下段のベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50)から送り出された基材9は、第1の弛み検出器60で折り返され、第2のセット(上段のベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50)に対し、表裏を反転させた状態で導入される。
【0064】
フレーム16には、前述した第2のセット(上段のベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50)が支持されるとともに、ベルトコンベア装置10の下流側には第2の弛み検出器60が設置されている。
第2の弛み検出器60は、入口側のローラ61がフレーム16に支持されているが、変位するローラ63、アーム64および変位検出器65は下方のフレーム12に支持されている。
第2の弛み検出器60においても、ローラ61,62の配置により、通過する基材9の表裏が反転するように構成されている。
【0065】
第2の弛み検出器60の下流側には、プレス装置70および基材回収装置30が設置されている。
これらのプレス装置70および基材回収装置30は各々前述した第1実施形態と同様である。この際、基材回収装置30は、前述した基材供給装置20に隣接して配置されている。このような配置により、基材9(または塗膜8が形成された基材7)は、下段の第1のセットから上段の第2のセットを経由してループ状に戻るように構成されている。
【0066】
このような本実施形態では、ベルトコンベア装置10で搬送される一連の基材9に対して、第1のハウジング40および第2のハウジング40により基材7の表面および裏面にそれぞれ静電塗装を順次行うことができる。
このため、本実施形態により、表裏何れにも塗膜8が形成された基材9を形成することができる。
【0067】
さらに、第1のセットおよび第2のセットは、それぞれベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50を有するため、ハウジング40による静電塗装の直後にそれぞれ加熱装置50による加熱を行うことができ、塗膜8の定着を確実に行うことができる。
また、第1のセットおよび第2のセットは、上段および下段となる二段構成としたため、それぞれベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50を有するものとしても、設備としての占有床面積を抑制することができる。
そして、第1のセットおよび第2のセットの何れにおいても、ベルトコンベア装置10が水平に配置されることで、コンベアベルト11による基材9の保持を自重により安全に行うことができる。
【0068】
本実施形態では、第1のセットを通過した基材9が反転して第2のセットに導入されるように配置したため、基材9の表裏に粉体6の静電塗装を順次行うことができ、表裏に塗膜8が形成された基材7を形成することができる。
また、基材9の反転に、第1および第2の弛み検出器60のローラ61,62を利用したため、追加的な機構が必要なく、装置を簡略化することができる。
【0069】
〔
参考形態〕
図7には、本発明
に含まれない参考形態が示されている。
本参考形態の薄膜静電塗装装置4は、前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1と同様な構成を含んでいる。このため、同様な構成については同じ符号で示し、重複する説明はこれを省略する。
前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1では、静電塗装を行うハウジング40およびベルトコンベア装置10がそれぞれ1つ設置されていた。これに対し、
本参考形態の薄膜静電塗装装置4では、ベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50のセットが2組、搬送経路の上流側および下流側となるように直列に設置されているとともに、構造的には各セットがそれぞれ縦方向に配置され、各々が互いに隣接して平行に設置されている。
【0070】
本参考形態では、2組のベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50のセットを縦方向に支持するために、櫓状のフレーム17が設置されている。
フレーム17に支持された第1および第2のセットのベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50は、縦方向に設置されることに伴って一部第1実施形態とは異なる構成とされている。
【0071】
第1のセットのベルトコンベア装置10は、フレーム17の図中左側に支持され、下端が上流側とされている。第1のセットのハウジング40は、ベルトコンベア装置10の中間から下方にかけて設置されている。第1のセットの加熱装置50は、ハウジング40の下流側となるベルトコンベア装置10の上端寄りに設置されている。
第2のセットのベルトコンベア装置10は、フレーム17の中心より図中右寄りに支持され、上端が上流側とされている。第2のセットのハウジング40はベルトコンベア装置10の上方から中間にかけて設置され、第2のセットの加熱装置50はハウジング40の下流側となるベルトコンベア装置10の下端寄りに設置されている。
【0072】
第1のセットのベルトコンベア装置10は、第1実施形態と同様、下流側ローラ14が駆動モータ15で回転駆動されるが、第2のセットのベルトコンベア装置10は、上流側ローラ13が駆動モータ15で回転駆動されている。ただし、機能上の相違は生じない。
【0073】
本参考形態において、第1および第2のセットにおける2つのハウジング40は、それぞれ前述した第1実施形態におけるハウジング40と同様に、ハウジング本体41、粉体供給装置42、粉体回収装置43,電極44および電源装置441を備えている。
本参考形態のハウジング40は、縦方向に設置されて粉体6の沈降はハウジング40の長手方向となるため、攪拌手段である攪拌用ダクト45(
図2参照)等は設置されていない。
ただし、本参考形態は、攪拌手段である攪拌用ダクト45を設定することで、本発明の実施形態となる。
本参考形態において、第1のセットのハウジング40では、内部を流れる粉体6を含む気流がベルトコンベア装置10で搬送される基材9と逆向き(第1実施形態と同様)となるが、第2のセットのハウジング40では、上部から粉体6が供給されて気流に乗って下方へと流れており、ベルトコンベア装置10で搬送される基材9と同じ方向であり、第1実施形態とは反対向きに設定されている。
【0074】
本参考形態において、これらの第1および第2のセットのベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50には、前述した第1実施形態と同様に、基材9が通されて粉体6の静電塗装が順次行われる。
基材供給装置20は、第1のセットのベルトコンベア装置10の下端近傍には、フレーム17に支持されている。
基材供給装置20のコイル21から引き出された基材9は、第1のセットのベルトコンベア装置10のコンベアベルト11の上流側に供給され、コンベアベルト11に保持されて第1のハウジング40および第1の加熱装置50を通過し、第1のベルトコンベア装置10の上端に至る。
【0075】
第1のベルトコンベア装置10から引き出された基材9は、水平に搬送されて第2のベルトコンベア装置10の上端に送られ、コンベアベルト11に保持されて第2のハウジング40および第2の加熱装置50を通過し、第2のベルトコンベア装置10の下端に至る。
第2のベルトコンベア装置10から引き出された基材9(静電塗装された基材7)は、再び水平に送られ、フレーム17の外へ引き出されて弛み検出器60およびプレス装置70を経て基材回収装置30に回収される。
【0076】
本参考形態において、薄膜静電塗装装置4の他の構成である基材供給装置20、基材回収装置30、加熱装置50、弛み検出器60およびプレス装置70は、それぞれ前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1における各々と同様である。
【0077】
このような
参考形態では、ベルトコンベア装置10で搬送される一連の基材9に対して、第1のハウジング40および第2のハウジング40により基材7の表面および裏面にそれぞれ静電塗装を順次行うことができる。
このため、
本参考形態により、表裏何れにも塗膜8が形成された基材9を形成することができる。
【0078】
さらに、第1のセットおよび第2のセットは、それぞれベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50を有するため、ハウジング40による静電塗装の直後にそれぞれ加熱装置50による加熱を行うことができ、塗膜8の定着を確実に行うことができる。
また、第1のセットおよび第2のセットは、それぞれ縦方向に設置され、互いに並列に起立した状態とされるため、それぞれベルトコンベア装置10、ハウジング40および加熱装置50を有するものとしても、各セットはその長さよりも小さな占有床面積でよいから、設備全体を一層小型化することができる。
【0079】
本参考形態では、第1のセットを通過した基材9が反転して第2のセットに導入されるように配置したため、基材9の表裏に粉体6の静電塗装を順次行うことができ、表裏に塗膜8が形成された基材7を形成することができる。
【0080】
なお、
本参考形態においては、第1および第2のベルトコンベア装置10が縦方向に配置されるため、コンベアベルト11への基材9の保持に重力を利用できない。このため、コンベアベルト11を通気性とし、コンベアベルト11の基材9とは反対側に負圧吸引装置を設置するようにしてもよい。
【0081】
〔第
4実施形態〕
図8から
図11には、本発明の第
4実施形態が示されている。
本実施形態の薄膜静電塗装装置5は、前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1と同様な構成を含んでいる。このため、同様な構成については同じ符号で示し、重複する説明はこれを省略する。
前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1では、ベルトコンベア装置10の途中に設置されたハウジング40により、基材9の表面の辺縁余白を除いて全面に塗膜8が形成されていた(
図4参照)。
これに対し、本実施形態の薄膜静電塗装装置5では、
図11に示すような矩形の区画に塗膜8が形成された基材7を形成する。このために、本実施形態の薄膜静電塗装装置5では、基材9に粉体6を静電塗装する際に、
図10に示すようなマスクパターン811を有するマスキングベルト81を用いる。
【0082】
本実施形態において、薄膜静電塗装装置5は、前述した第1実施形態と同様なベルトコンベア装置10、基材供給装置20、基材回収装置30、ハウジング40、加熱装置50、弛み検出器60およびプレス装置70を有する。
さらに、本実施形態の薄膜静電塗装装置5は、ベルトコンベア装置10の上面側に、前述したマスキングベルト81を含むベルトコンベア装置80を備えている。
【0083】
なお、基材供給装置20、基材回収装置30、加熱装置50、弛み検出器60およびプレス装置70の各部は、それぞれ前述した第1実施形態の薄膜静電塗装装置1と同様に構成されている。
ベルトコンベア装置10は、基本的に第1実施形態と同様に構成されているが、加熱装置50の上部がベルトコンベア装置80に干渉しないように、下流側の半分が傾斜配置されている。
また、ハウジング40は、
図9に示すように、基本的に第1実施形態(
図2および
図3参照)と同様に構成されているが、ハウジング本体41と基材9との間に、マスキングベルト81が導入されるように構成されている。
【0084】
ベルトコンベア装置80は、
図8に示すように、ベルトコンベア装置10の上方に設置され、前述したマスキングベルト81が掛け渡された4つのローラ82〜85を備えている。
このうち、ローラ82,83は周面の下端がベルトコンベア装置10のコンベアベルト11の水平な表面の延長線上に配置され、これらのローラ82,83の間ではマスキングベルト81がコンベアベルト11の表面に密接するように沿って配置される。
また、ローラ82〜85のうち何れかには駆動モータ(図示省略)が接続され、マスキングベルト81は密接するコンベアベルト11と等速で送られるように駆動される。
【0085】
このようなベルトコンベア装置80では、ベルトコンベア装置10と同期して動作することにより、上流側(ベルトコンベア装置10の上流側ローラ13部分)でコンベアベルト11とマスキングベルト81とが密接し、密接状態のままハウジング40を通過した後、下流側(ベルトコンベア装置10の途中の折れ曲がり部分、加熱装置50の手前)で再び分離される。
【0086】
従って、コンベアベルト11の上流側に基材9が供給されれば、この基材9はコンベアベルト11の表面に保持されるとともに、その表面をマスキングベルト81で覆われた状態(
図8および
図9参照)でハウジング40を通過する。
このため、ハウジング本体41内の空間に曝されるのは基材9の表面のうちマスクパターン811(
図10参照)から露出する部分に限定され、当該部分だけに粉体6が静電塗装され、基材9の表面には同パターンを写した矩形の塗膜8が形成され、これにより基材7とされる(
図11参照)。
【0087】
このような本実施形態では、ベルトコンベア装置10で搬送される一連の基材9に対して、ハウジング40により静電塗装を順次行うことができる。
この際、ハウジング40では、基材9の表面に定着される粉体6がマスキングベルト81で限定され、マスクパターン811に対応した形状の塗膜8を有する基材7を形成することができる。
【0088】
〔変形例〕
本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、ベルトコンベア装置10のコンベアベルト11として、上流側ローラ13と下流側ローラ14との間に掛け渡されたエンドレスベルトを用いたが、エンドレスでないコンベアベルトを上流側ロールから引き出して下流側ロールに巻き取るような構成としてもよい。
【0089】
ベルトコンベア装置10における基材9の搬送方向、つまり基材9が保持されるコンベアベルト11の表面の向きは、前述した第1実施形態等のような水平方向、あるいは前述した第4実施形態のような垂直方向のほか、他の傾斜方向であってもよい。とくに重力が利用できる水平方向の配置以外では、基材9をコンベアベルト11表面に確実に保持されるように、コンベアベルト11の反対側から負圧吸引する保持補助手段等を適宜設けるようにしてもよい。
【0090】
前述した各実施形態では、ベルトコンベア装置10と基材回収装置30との間に、ウェブ状の基材の張力を適切に保つための弛み検出器60を設置したが、基材供給装置20とベルトコンベア装置10との間の距離が長い場合など当該部分に適宜設置してもよい。
前述した実施形態では、弛み検出器60は単に基材7の弛みを検知するものとし、弛みの調節はベルトコンベア装置10、プレス装置70および基材回収装置30の回転駆動を制御することで行うとしたが、弛み検出器60に他のアームおよびローラを設け、弛みに応じてこれらで基材7の張りを調節するようにしてもよい。
【0091】
前述した各実施形態では、粉体供給装置42をハウジング40の下流側に設置し、コンベアベルト11表面の基材9と逆向きに移動する粉体6の流れを生成するようにしたが、ハウジング40の上流側から粉体6を供給し、コンベアベルト11表面の基材9と同じ向きに移動する粉体6の流れを生成するものとしてもよい。
前述した各実施形態では、ハウジング40の下流側に、基材9に定着された粉体6を固定するための加熱装置50やプレス装置70を設置したが、これらは適宜変更ないし省略してもよい。
【0092】
前述した各実施形態では、ハウジング本体41に沿って両側一対の攪拌用ダクト45を設置したが、これは一本であってもよく、4本以上であってもよい。攪拌用ダクト45としては円形のパイプを用い、その周面に噴射ノズル452を形成したものとしてもよい。
さらに、攪拌用ダクト45は必須ではなく、ハウジング本体41の側壁に多数の噴射ノズル452を直接形成し、各々に加圧ガスを供給して噴射させてもよい。
前述した各実施形態では、攪拌手段として加圧ガスを噴射する構成を採用したが、ハウジング40内で回転する羽根車、揺動する攪拌板、振動式の攪拌部材などを利用してもよい。