(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明およびその利点は、添付図面と照らしあわせて以下の説明を参照することによって、最もよく理解される可能性がある。
図面において、類似の構造要素を示すために類似の参照番号を使用することがある。また図面の描写は略図であり、正確な縮尺ではないことを理解すべきである。
【0026】
本発明は、一般に、熱力学的効率および燃料効率を向上させるように内燃機関の運転を制御するための方法および構成に関する。本発明のさまざまな態様は、このようなエンジン制御を利用する原動機付き自動車に関するとともに、このような制御の実現に適したエンジン制御ユニットに関する。
【0027】
ほとんどの内燃機関は、使用者が要求するエンジン出力に基づき、またはその時々に必要とされるエンジン出力に基づき、シリンダ(または他の作動チャンバ)に送出する空気量および燃料量のうちの少なくとも一方を変化させるように構成されている。しかし、一定の大きさのシリンダの熱力学的効率は、すべての空気/燃料レベルで同じというわけではない。むしろ、最適の空気量および燃料量をシリンダに送出して最大許容圧縮および最適な燃焼効率を実現するときに熱力学的効率は最高になる。内燃機関はいろいろな互いに異なる負荷の下で作動できる必要があるため、最終的には、最適な圧縮または最適な空燃比よりも悪い圧縮または空燃比でエンジンが作動する傾向があるため、ほとんど常に効率が悪い状態で作動する傾向がある。本発明は、内燃機関の作動チャンバ(たとえばシリンダ)が、それらの最適な熱力学的効率に近い条件の下でほとんど常に作動するように、内燃機関の動作を制御することを開示する。
【0028】
理論的見地から言うと、単にシリンダの最適効率でシリンダを点火するのみによって、その後、不要な作動周期をスキップすることによって、内燃機関の熱力学的効率を向上できる。たとえばエンジンが、そのシリンダのすべてをシリンダの最大圧縮および最適空燃比で作動させることで出力されるパワーの30%を一時に必要とするとき、そのパワーは、エンジンの作動周期の30%を作動周期の最適効率で作動させるとともに、利用できる作動周期の残りの70%に対してシリンダに燃料を供給しないことによって、最も効率的に生成できる。この方法の一般的な利点は、特許文献1でフォルスターら(Forster et al.)によって認識されていた。
【0029】
特許文献1は、いくつかの作動周期をそれらの最大効率で作動させるとともに、他の作動周期をスキップすることの一般的な利点を認識していたが、記載された方法は、いかなる商業的成功も収めなかったことは明らかである。このことは、このようなエンジンの動作を制御することに固有の困難さに部分的に起因していると考えられる。本願は、エンジンの作動周期の一部が、それらの最大効率で、または最大効率付近で作動できるとともに、他の作動周期をスキップすることができるようにする方法でエンジンの動作を効果的に制御して、エンジンの全体的な燃料効率を向上させるための多くのエンジン設計および制御装置を説明する。上述のさまざまな実施形態は、(a)既存のエンジンの改造、(b)現在の設計に基づく新規のエンジンまたは(c)他の開発を取り入れた新規のエンジン設計または上述の作動周期最適化の利点を増強するように最適化された新規のエンジン設計のいずれかにおいて用いるのによく適している実施態様を含んでいる。
【0030】
上述の方法を用いてエンジンの熱力学的効率を向上させることによって、内燃機関の燃料効率を大幅に向上できる。コンピュータシミュレーションモデルは、上述の技術を実現して自動車の既存のエンジン制御ユニット(ECU)と協働する点火制御コプロセッサを
取り付けることによって、または前記ECUを、上述の技術を実現するECUに取り換えることによって、今日路上にある既存の保有車両の燃料噴射型の自動車用ガスエンジンの燃料効率を約20〜50%ほど向上させる可能性があると予想する。燃料噴射プロファイルを制御できる空気流およびターボチャージされた(またはスーパーチャージされた)空気流またはそのいずれか(この空気流は、現在路上にある、自動車の一部で可能である)を提供できる用途では、および上述の技術を利用するようにエンジンおよびそのコントローラ(または点火制御コプロセッサ)が特別に設計される用途では、より劇的な改善が起こり得る。
【0031】
またエンジンのシリンダ(または他の作動チャンバ)の中の運転条件を厳密に制御する能力が、大きく変動する負荷の下でシリンダを作動させる必要性があるため今日では実際的ではない従来の内燃機関において、互いに異なる燃料および互いに異なる燃料組成のうちの少なくとも一方を利用する可能性をも開く。またシリンダをそれらの最適効率で作動させることは、エンジンの運転中に生成される窒素酸化物(NO
x)などの反応種および他の汚染物質の全体的な排ガスレベルを低減する潜在的利点を有している。
【0032】
上述の方法を用いて達成できる効率向上の理解を助けるために、典型的な内燃機関の効率を検討することが役立つ。この例示のために、我々はオットーサイクルエンジン(このエンジンは、今日路上にあるほとんどの乗用車で使用されているエンジン形式である)を検討できる。しかし、本発明の利点は、ディーゼルサイクル、デュアルサイクル、アトキンスサイクル、ミラーサイクル、2サイクル火花点火(SI)エンジンサイクル、2サイクル圧縮点火(CI)エンジン、ハイブリッドエンジン、星形エンジン、複合サイクルエンジン、ヴァンケルエンジン、および他の種類のロータリーエンジンなどを用いて作動するエンジンを含む他のさまざまな内燃機関にも等しく関連している。
【0033】
図1Aおよび
図1Bは、代表的な4サイクルのオットーサイクルエンジンの熱力学的作動周期を示すPV(圧力−体積)線図である。
図1Aは、スロットルを全開にした状態でのシリンダの性能を示し、シリンダをその最大効率で使用している(すなわち最適燃料量をシリンダに送出している)。
図1Bは、パーシャルスロットルにおけるシリンダの性能を示している。オットーサイクルは4サイクルであるため、シリンダのそれぞれ作動周期に対してピストンは2往復(クランクシャフトの720°の回転)する。従って、それぞれ作動周期はPV線図において事実上2つのループを形成する。水平軸は体積を示している。体積軸に沿ったそれぞれループの範囲は、TDC(上死点)として示される最小体積から、BDC(下死点)として示される最大体積まで延びている。一般に、上方ループ(A、A’)によって境界付けされた面積は、シリンダに点火することによって生成される仕事量を表し、他方、下方ループ(B、B’)によって境界付けされた面積は、シリンダの中に空気を送り込み、およびシリンダから空気を排出するために経験するエネルギー損失を表している(これらの損失はポンプ損失と呼ばれることが多い)。エンジンによって出力される全仕事は、上方ループの面積と下方ループとの面積の間の差である。
【0034】
フルスロットルで運転するシリンダとパーシャルスロットルで運転するシリンダとのPV線図を比較すると、パーシャルスロットルで運転するシリンダの全体的効率が、フルスロットルで運転するシリンダの効率を下回っている(はるかに下回っている場合が多い)ことが分かる。作動効率に影響を及ぼす多くの要因があるが、最大の要因の1つはスロットル自体の位置に基づく。スロットルが部分的に閉じているときには、シリンダに少ない空気しか供給されない。従って、吸気弁が閉じるときのシリンダの中の圧力は、大気圧よりも著しく低い虞がある。シリンダの中の始動圧力が大気圧よりも著しく低いとき、そのエンジンサイクルの間のシリンダの有効圧縮を抑制し、そのことが燃焼行程の間に増加する圧力を大幅に低下させ、シリンダの点火によって生成される仕事量を減少させる。このことは、フルスロットルで運転するシリンダによって生成される仕事であるループAの面
積と、パーシャルスロットルで運転するシリンダによって生成される仕事であるループA’の面積とを比較することによって分かる。さらに、スロットルが部分的に閉じているという事実は、シリンダの中に空気を吸い込むことをより困難にして、その結果、ポンプ損失が増加する。このことは、フルスロットルで運転するシリンダが経験するポンプ損失であるループBの面積と、パーシャルスロットルで運転するシリンダが経験するポンプ損失であるループB’の面積とを比較することによって分かる。AからBを引き、A’からB’を引くことによって、パーシャルスロットル運転は、より少ない燃料を使用するという事実を補償するために調整を行う場合でさえ、フルスロットルで運転するエンジンによって生成される正味の仕事が、パーシャルスロットルで運転するエンジンによって生成される正味の仕事よりもかなり大きいことが分かる。
【0035】
上述した比較はオットーサイクルエンジンに対するものであるが、他の熱力学的サイクルで運転する内燃機関が、それらの最適効率(この最適効率は、熱力学的に最適の空燃比での燃焼と相まって、通常、実質的に絞っていない空気送出に比較的密接に対応している)よりも低い効率で運転されるとき、内燃機関は同様の種類の効率損失を経験することを理解すべきである。
【0036】
本発明のさまざまな実施形態では、内燃機関を可変排気量モードで運転することによって、内燃機関の熱力学的効率を向上させ、この可変排気量モードでは、作動チャンバの一部を、それらの最適の熱力学的効率で(または最適の熱力学的効率付近で)運転するとともに、不要な作動周期をスキップする。
【0037】
(点火制御ユニット)
図2(a)は、本発明の一実施形態に基づきエンジンを運転するのに適した制御ユニットを図式的に示す機能ブロック図である。最初に説明する実施形態では、制御されるエンジンはピストンエンジンである。しかし、上述の制御は、他のエンジン設計にも等しく適用可能である。図示の実施形態では、点火制御ユニット100が、駆動パルス発生器104とシーケンサ108とを含んでいる。所望エンジン出力を示す入力信号113を駆動パルス発生器104に供給する。駆動パルス発生器104は、適応予測制御を使用して、所望出力を得るにはシリンダにいつ点火する必要があるかを一般に示す駆動パルス信号110を動的に計算するように構成されることができる。詳細に後述するように、コントローラはエンジン回転速度(入力信号116)に同期して、絶えず変化する可能性がある現在のエンジン回転速度で要求されるパワーを送出するために、生成される駆動パルスパターンが適切であるようにしてもよい。その後、駆動パルス信号110を、最終的なシリンダ点火パターン120を供給するようにパルスに命令するシーケンサ108に供給してもよい。一般に、シーケンサ108は、エンジンの中での過度のまたは不適当な振動を防ぐのを助けるように点火パターンに命令するように構成されている。エンジン設計分野において周知のように、シリンダに点火する命令は、多くのエンジンの中の振動に対して大きな影響を及ぼす虞がある。従って、詳細に後述するように、シーケンサ108は、エンジンの運転によって生じる振動が設計許容範囲の中にあることを確保するのを助けるように設計されている。特定のエンジンが任意の点火パターンを用いて運転できる(すなわち過度の振動を生成せずに、任意のパターンでシリンダに点火できる)場合には、シーケンサ108を潜在的に取り去る可能性があり、駆動パルス信号110を使用して点火パターンを命令する可能性がある。
【0038】
第1実施態様では、点火されるそれぞれシリンダは、最適の熱力学的効率で、または最適の熱力学的効率付近で運転される。すなわち単位燃焼燃料当たりシリンダから最も多くの仕事を得ることができる量の空気および燃料をシリンダの中に導入するが、それにもかかわらず依然としてエンジンにかかわる他の制約(排ガス要件、燃焼がエンジン寿命に与える影響など)を満たしている。スロットルを備えたほとんどのエンジンでは、これは最
も多くの空気をシリンダに導入できる「フルスロットル」位置にほぼ対応している。多くの自動車は、(数ある中でも、特に)所望空燃比と、それぞれシリンダ点火に対して噴射される予定の燃料量とを決定するエンジン制御ユニット(ECU)を含んでいる。ECUは、現在のさまざまな周囲条件(気圧、温度、湿度などを含む)に基づき多くの互いに異なる運転条件(たとえば互いに異なるスロットル位置、エンジン回転速度、吸気流量など)に対して所望空燃比および燃料噴射量のうちの少なくとも一方を特定するルックアップテーブルを有している場合が多い。このような自動車では、連続可変排気量モードにおいて点火制御ユニットがそれぞれシリンダの中に噴射するように仕向けた燃料量は、現在の条件下で最適の方法でシリンダを運転するために燃料噴射ルックアップテーブル内に保存された値であってもよい。
【0039】
所望出力信号113は、所望エンジン出力の妥当な代理と見なすことができる任意の好適な供給源に由来してもよい。たとえば入力信号は、アクセルペダル位置センサから直接的または間接的に取り込んだ単なるアクセルペダル位置を示す信号であってもよい。あるいは、電子式アクセル位置センサは有していないが、スロットルは有している自動車では、所望のスロットル位置を示す信号をアクセル位置信号の代わりに使用してもよい。車速設定装置機能を有する自動車では、車速設定装置機能が動作中であるときには入力信号113は車速設定装置に由来してもよい。さらに他の実施形態では、入力信号113は、アクセル位置に加えて数個の変数の関数であってもよい。運転状態を固定している他のエンジンでは、特定の運転設定に基づき入力信号113を設定してもよい。一般に、所望出力信号は、現在制御中の自動車またはエンジンで利用できる任意の好適な供給源に由来してもよい。
【0040】
駆動パルス発生器104は、一般に、エンジンの現在の運転状態および運転条件を前提として所望の出力を生成するのに必要なシリンダ点火の個数および一般的なタイミングを決定するように構成されている。駆動パルス発生器104は適応予測制御などのフィードバック制御を使用して、所望エンジン出力を送出するために、シリンダにいつ点火しなければならないかを決定する。このようにして、駆動パルス発生器104によって出力された駆動パルス信号110は、所望エンジン出力を送出するためにエンジンが要求する瞬間排気量を事実上示している。エンジンが要求する排気量は、運転条件によって変化するとともに、過去に起こったことと、近い将来に予測されることとの両方に基づく可能性がある。さまざまな実施形態では、駆動パルス発生器104は、所望出力を送出するためにクランクシャフトの1回転当たりに要求されるシリンダ点火の個数の変動を、やむを得ず制限することは一般的には行わない。従って、点火時期ごとに、どのシリンダを点火するか、およびどのシリンダを点火しないかを選択することによって、エンジンの実効排気量を絶え間なく変化させることができる。これは、互いに異なる排気量と、著しく異なるシリンダ点火パターンとの間の急速な変動を好ましくないと見なす(たとえば特許文献2を参照すること)従来の市販の可変排気量エンジンとは非常に異なっている。エンジンの実効排気量を絶え間なく変化させるこの能力を、本明細書では連続可変排気量運転モードと呼ぶことがある。
【0041】
さまざまな互いに異なる制御スキームを駆動パルス発生器104の中に実現できる。一般に、制御スキームは、アナログ構成要素を用いて、またはハイブリッド手法を用いて、デジタル処理で、アルゴリズム的に実現してもよい。駆動パルス発生器104は、プロセッサ上に、FPGAのようなプログラマブルロジック上に、ASICのような回路内に、デジタル信号プロセッサ(DSP)上に、アナログ構成要素または他の任意の適切なハードウェア部品を用いて実現してもよい。
【0042】
駆動パルス発生器104において用いるのに特によく適しているコントローラの1つの種類は、適応予測コントローラである。制御理論に詳しい人には明らかなように、適応予
測コントローラは、それらがフィードバックを利用して、適応予測コントローラの出力信号と所望出力信号との差に基づき適応予測コントローラの出力信号の性質を適合させまたは変化させるという点で適応的であり、適応予測コントローラは、それらが積分的であり、入力信号の過去の挙動が将来の出力信号に影響を与えるようになっているという点で予測的である。
【0043】
所望出力を供給するのに必要なチャンバ点火を計算するために、さまざまな互いに異なる適応予測コントローラを使用してもよい。この用途で特にうまく機能する適応予測コントローラの1つの種類は、シグマデルタコントローラである。シグマデルタコントローラは、サンプルデータシグマデルタ構成、連続時間シグマデルタ構成、アルゴリズムに基づいたシグマデルタ構成、差動シグマデルタ構成、ハイブリッドアナログ/デジタルシグマデルタ構成、または他の任意の適切なシグマデルタインプリメンテーションを利用してもよい。いくつかの実施形態では、シグマデルタコントローラのクロック信号が、エンジン回転速度に比例して変化するように構成されている。他の実施態様では、パルス幅変調(PWM)コントローラ、最小二乗平均(LMS)コントローラ、および再帰的最小二乗(RLS)コントローラを含む他のさまざまな適応予測コントローラを使用して、所要のチャンバ点火を動的に計算してもよい。
【0044】
駆動パルス発生器104は、所望エンジン出力を送出するには駆動パルスはいつが適切であるかを決定する際に、フィードバック制御を使用することが好ましい。フィードバックの構成要素が、
図2(b)に一般的に示すように、駆動パルス信号110のフィードバックおよび実際のシリンダ点火パターン120のフィードバックのうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。作動チャンバ点火はいつが適切であるかを駆動パルス信号110が示しているため、駆動パルス信号110を、要求された点火を示す信号と一般に考えてもよい。その後、シーケンサ108は、要求された点火の実際のタイミングを決定する。要求される場合には、実際の点火パターン120からフィードバックされる情報は、点火パターン自体を示す情報、点火のタイミング、点火の規模および駆動パルス発生器104が要求するまたは駆動パルス発生器104にとって有用なシリンダ点火についての他の任意の情報あるいはそのいずれかを含んでいてもよい。また一般に、駆動パルス信号110がエンジンに一般的に同期できるように、駆動パルス発生器104にエンジン回転速度116の指示を提供することも好ましい。
【0045】
またさまざまなフィードバックをシーケンサ108に要望通りに提供してもよい。たとえば
図2(c)に図式的に示すように、実際の点火タイミングおよび実際の点火パターン120のうちの少なくとも一方を示すフィードバックまたはメモリは、それによって、エンジン振動の低減を促進するようにシーケンサ108が実際のシリンダ点火を配列することが可能になるので、シーケンサ108にとって有益である可能性がある。
【0046】
(シグマデルタ制御回路)
図3を参照して、シグマデルタ制御に基づく駆動パルス発生器104の一実施態様を説明する。駆動パルス発生器104は、シグマデルタコントローラ202とシンクロナイザ240とを含んでいる。シグマデルタコントローラ202は、一種のオーバーサンプリング変換であるシグマデルタ変換の原理を利用している。(またシグマデルタ変換はデルタシグマ変換とも呼ばれる。)シグマデルタ変換の基礎理論は、非特許文献3や非特許文献4に掲載されている。
【0047】
図示のシグマデルタ制御回路202(a)は、リッチー(Richie)アーキテクチャとして知られているアーキテクチャに一般的に基づくアナログ三次シグマデルタ回路である。シグマデルタ制御回路202(a)は、所望出力(この所望出力は、所望の仕事出力または所望のトルクと考えられるかもしれない)を示すアナログ入力信号113を受信
する。図示の種類のシグマデルタコントローラは一般的に知られており理解されているため、下記の説明では好適なコントローラの一般的アーキテクチャを記述する。しかし、特定の実施態様に対して非常にうまく機能するように構成できるさまざまな互いに異なるシグマデルタコントローラがあることを理解すべきである。
【0048】
図示の実施形態では、入力信号113はアクセルペダル位置を示している(しかし、上述のように、所望出力を示す他の適切な入力信号または所望出力の代理もまた同様に使用してもよい)。入力信号113はシグマデルタ制御回路202(a)に、特に第1積分器204に、正入力として与えられる。積分器204の負入力は出力の関数であるフィードバック信号206を受信するように構成され、シグマデルタ制御回路202(a)の動作が適応的であるようになっている。後述するように、フィードバック信号206は、実際は2つ以上の出力段階に基づくコンポジット信号であってもよい。また積分器204は、詳細に後述するディザー信号207などの他の入力を受信してもよい。さまざまな実施態様では、積分器204への入力の一部を、積分器204に入力する前に一緒にしてもよく、または積分器への複数の入力を直接行ってもよい。図示の実施形態では、ディザー信号207は、加算器212によって入力信号113と混合され、混合された信号は正入力として使用される。フィードバック信号206は、シグマデルタ制御回路および制御されるシステムの出力からのフィードバックの混合であり、このフィードバック信号206は、図示の実施形態では、駆動パルスパターン110もしくは点火の実際のタイミングのどちらかを表すフィードバックとして、または両方からのフィードバックの混合として、示されている。
【0049】
シグマデルタ制御回路202(a)は2つの付加的な積分器、すなわち積分器208および積分器214、を含んでいる。シグマデルタ制御回路202(a)の「次数」は3であり、この次数3は積分器の個数(すなわち積分器204、208、および214)に対応している。第1積分器204の出力は、第2積分器208に供給され、また第3積分器214にもフィードフォワードされる。
【0050】
最後の積分器214の出力は、1ビット量子化器として機能する比較器216に供給される。比較器216は、クロック信号217に同期している1ビット出力信号219を供給する。一般に、非常に高品質の制御を保証するために、クロック信号217(従って、比較器216の出力ストリーム)が最大期待点火時期割合の何倍もの周波数を有することが好ましい。アナログシグマデルタ制御回路では、比較器216の出力に対して所望の駆動パルスレートを少なくとも約10倍オーバーサンプリングすることが通常好ましく、少なくとも約100のオーバーサンプリング係数が特によく機能する。すなわち比較器216の出力は、エンジン点火時期が生じる割合の少なくとも10倍、および多くの場合少なくとも100倍の割合であることが好ましい。比較器216に供給されるクロック信号217は任意の好適な供給源に由来してもよい。たとえば
図3に示す実施形態では、水晶発振器218がクロック信号217を供給している。
【0051】
これらのクロックレートは実際には最新のデジタル電子装置としては比較的遅いため、容易に入手できて使用可能であることを理解すべきである。たとえば制御されるエンジンが4サイクル作動周期を用いて作動する8シリンダエンジンであるとき、期待される最大点火時期割合は、およそ8,000rpm×8シリンダ×1/2あたりである可能性がある。係数1/2を掛けている理由は、通常運転中の4サイクル機関では、それぞれシリンダはエンジンクランクシャフトが2回転するたびに1度だけ点火時期を有しているためである。従って、点火時期の最大期待周波数は、毎分約32,000または毎秒約533である可能性がある。この場合、約50kHzで動作するクロックは、点火時期の最大期待割合の約100倍を有しているであろう。従って、50kHz以上のクロック周波数を有する固定クロックは、その用途で非常によく機能するであろう。
【0052】
他の実施形態では、比較器216を駆動するのに使用されるクロックは、エンジン回転速度に比例して変化する可変クロックであってもよい。シグマデルタコントローラに可変速度クロックを使用することは、従来のシグマデルタコントローラ設計とは異なっていると考えられる。可変速度クロックを使用すると、比較器216の出力がエンジン回転速度と、従って、点火時期と、よりよく同期することが保証されるという利点がある。クロックは、エンジン回転速度指示(たとえば回転速度計信号)によって駆動されるフェーズロックループを利用することによってエンジン回転速度と容易に同期できる。エンジン回転速度に基づく可変速度クロックを使用する利点のいくつかについては、
図7に関してさらに後述する。
【0053】
比較器216から出力される1ビット出力信号240は、積分器214の出力と基準電圧とを比較することによって生成される。出力は、事実上、クロックの周波数で出力される1と0の列である。比較器216の出力240(この出力240は、シグマデルタ制御回路202(a)の出力である)は、駆動パルス信号110を生成するように構成されたシンクロナイザ222に供給される。図示の実施形態では、シグマデルタ制御回路202(a)およびシンクロナイザ222は一緒になって駆動パルス発生器104(
図2)を構成する。
【0054】
シンクロナイザ222は、一般に、駆動パルスをいつ出力すべきかを決定するように構成されている。駆動パルスは点火時期の周波数に合致するように構成されていることが好ましく、それぞれ駆動パルスが作動チャンバの特定の作動周期を実行すべきかどうかを一般に示すようになっている。駆動パルス信号110をエンジン回転速度に同期させるために、
図3に示す実施形態のシンクロナイザ222は、エンジン回転速度に基づく可変クロック信号230を用いて作動する。フェーズロックトループ234を提供して、クロックをエンジン回転速度に同期させてもよい。クロック信号230は、出力された駆動パルス信号110の所望周波数に等しい周波数を有していることが好ましい。すなわちクロック信号230は点火時期の割合に合致するように同期させることが好ましい。
【0055】
シグマデルタ制御回路の出力信号240は、一般に、シグマデルタ制御回路202(a)によって受信されるアナログ入力信号113のデジタル表現である。(a)入力信号が所望出力として、または所望の仕事出力として、事実上扱われるために、および(b)一般に知られている比較的一定の仕事量をそれぞれエンジン点火によって発生させるように作動チャンバの中の燃焼を制御するために、シグマデルタ制御回路202(a)からのデジタル出力信号240が一定数の「高」シンボルを含んでいるときには、正の駆動パルスを生成すること(すなわち作動チャンバの点火を命令すること)が適切である。従って、概念的に言えば、シンクロナイザ222の目的は、出力信号内の高シンボルの個数を数えて、十分なシンボル数に達すると、エンジン回転速度に同期している駆動パルスを送信することであると考えることができる。実際には、本当に正確に数える必要はない(しかし、いくつかの実施態様では正確に数える可能性がある)。
【0056】
この種類のエンジン制御用途で使用されるときには高いオーバーサンプリングレートを有する上述のシグマデルタ制御回路の出力の他の特性は、コントローラは、その後に低信号のブロックが続く高信号の長いブロックを出す傾向があることである。出力信号240のこの特性を使用して、シンクロナイザ222の設計を単純化できる。一実施態様では、シンクロナイザは、出力信号240内に出てくる高信号のブロックの長さ(すなわち時間または周期)を単に測定する。高信号のブロックの長さが指定した閾値を超えたとき、駆動パルスを生成する。高信号のブロックの長さが閾値を超えないときには、高信号のそのブロックに基づいた駆動パルスは生成されない。使用する実際の閾値は、特定の設計の要求を満たすために大きく変化させることができる。たとえばいくつかの設計では、閾値は
、(クロックがエンジン回転速度に同期しているため)駆動パルスパターン110のデューティサイクルと、作動チャンバ点火時期の間の平均遅延とに対応しているクロック信号230の周期である可能性がある。この構成では、高信号のブロックの長さが1デューティサイクルよりも短いときには、ブロックに対応する駆動パルスは生成されず、ブロックの長さが1デューティサイクルを超え、かつ2デューティサイクルよりも短いときには、1駆動パルスを生成し、ブロックの長さが2デューティサイクルを超え、かつ3デューティサイクルよりも短いときには、連続した2つの駆動パルスを生成し、以下同様である。
【0057】
この構成では、エンジン回転速度が遅いときに駆動パルスを誘発するために必要な、シグマデルタ制御回路からの高出力のバーストの「長さ」または継続時間は、エンジン回転速度が速いときに駆動パルスを誘発するために必要なバーストの長さよりも長くなければならないであろうということを理解すべきである。その理由は、エンジン回転速度が遅いときには、駆動パルス信号のデューティサイクルが、より長くなるためである。
【0058】
他の実施態様では、別の角度から、閾値を設定してもよい。たとえば駆動パルス信号のデューティサイクルの指定された何らかの割合(たとえば80または90%)を超える長さを有する高出力の任意のブロックは駆動パルスを生成させ、他方、より短いパルス長は事実上切り捨てられるように、閾値を設定する可能性がある。
【0059】
最初の再検討で、上述の方法においてパルスの一部を無視することによって、制御システムの性能を容認できないレベルにまで低下させる可能性があるように思われるかもしれない。しかし、多くのエンジンに対して、高い頻度の点火時期および制御システムの応答性によって、一般に、このような簡単なシンクロナイザを使用することが完全に許容される。もちろん、他のさまざまな同期方式もまた同様に使用できることを理解すべきである。
【0060】
上述したように、シグマデルタ制御回路は、第1積分器にフィードバックを提供するように構成されている。図示の実施形態では、フィードバック信号206は、(a)比較器216の出力240からのフィードバックと、(b)シンクロナイザ222によって出力された駆動パルスパターン110および(c)実際の点火パターン120との混合、あるいはそのいずれかの混合である。コンバイナ245は、フィードバック信号を所望の比率で混合するように構成されている。第1積分器204にフィードバックされるさまざまなフィードバック信号に与えられる相対的な比率または重みは、所望の制御を提供するように変化させてもよい。
【0061】
比較器出力と、駆動パルス信号と、実際の点火パターンとは、すべて関連しているが、それらのタイミングは変化し、比較器出力の一般的な大きさは残りの2つとは異なっていてもよいことを理解すべきである。実際のエンジン挙動を反映するという点から見て最も正確なフィードバックは点火パターンであるが、比較器216の出力と、作動チャンバの実際の点火との間には著しい時間遅延(シグマデルタ制御回路202の見地から)がある可能性がある。実際のエンジン挙動を反映するという点から見て次に最もよいフィードバックは駆動パルス信号である。従って、多くの実施態様では、駆動パルス信号および点火パターンのうちの少なくとも一方に向かうフィードバックに強く重み付けすることが好ましいであろう。しかし、実際には、比較器出力信号240の一部をフィードバックすることによって、シグマデルタコントローラの性能を向上できる場合が多い。一例として、いくつかの実施態様では、全フィードバック信号206の15〜25%の範囲で比較器出力信号240のフィードバックに重み付けして、残りのフィードバックは駆動パルス信号または点火パターン、または2つの混合の反映であるようにすることで、適切に機能するはずである。もちろん、これらの比率はあくまで例を示したに過ぎず、適切で好ましく最適なフィードバック割合は、点火制御ユニット100および関連するエンジンの特定の実施
態様に従って変化するであろう。
【0062】
いくつかの実施形態では、入力信号113およびフィードバック信号206をアンチエイリアス処理フィルタにかけることが好ましい可能性がある。アンチエイリアス処理機能はシグマデルタ制御回路202の一部として提供でき、またはアンチエイリアス処理機能はシグマデルタ制御回路の前に置くアンチエイリアス処理フィルタとして提供してもよく、または他の任意の適切な形態で提供してもよい。
図3に示す三次のアナログ連続時間シグマデルタ制御回路202(a)では、第1積分器204がアンチエイリアス処理機能を提供する。すなわち第1積分器204は低域フィルタとして事実上機能する。
【0063】
シグマデルタコントローラの他の既知の特性は、シグマデルタコントローラが「トーン」を生成する場合があることであり、この「トーン」とは入力信号に対する出力信号の周期変動である。このようなトーンは、アナログ入力信号113がゆっくり変化するときに特に顕著であり、このようなアナログ入力信号113のゆっくりとした変化は、走行中および他の多くのエンジン制御用途においてよくあることである。比較器出力信号240の中のこのようなトーンの存在を、エンジン点火パターンに反映してもよい。いくつかの状況では、駆動パターンにおけるこのような周期変動は、好ましくない振動パターンを生成する可能性がある好ましくない共振を、エンジンの中に生成するというリスクがある。極端な場合には、トーンは、駆動エネルギーにおける顕著な変動を示す可能性さえある。従って、このようなトーンの防止および消滅のうちの少なくとも一方を促進するために、さまざまな構成を提供してもよい。
【0064】
シグマデルタコントローラ出力におけるトーンの防止および消滅のうちの少なくとも一方を促進できる1つの選択肢は、コントローラに雑音信号を導入することであり、この雑音信号は長い時間で見るとゼロに平均化するが、この雑音信号の局所変化はシグマデルタコントローラの出力信号におけるトーンを消滅させる傾向がある。信号処理用途では、このような雑音信号は「ディザー」と呼ばれることが多い。ディザー信号は、制御ループの中のほとんどいかなる位置にも導入できる。
図3に示す実施形態では、加算器212が入力信号113と、このようなディザー信号246とを混合する。しかし、他の都合のよい位置でも同様にディザー信号を導入してもよい。たとえばシグマデルタコントローラでは、ディザーは量子化器の前の最後の段階に導入されることが多い(たとえば
図3に示す実施形態では積分器214に導入される)。
【0065】
図示の実施形態では、擬似ランダムディザー発生器(PRD)226を採用してディザー信号を生成するが、他のさまざまな方法を用いても同様にディザーを導入できることを理解すべきである。ディザーは、ソフトウェアを用いてアルゴリズム的に生成してもよく、または離散的なディザーロジックブロックまたは他の適切な手段によって生成してもよく、またはコントローラに利用できる他の任意の適切な供給源から取り込んでもよい。
【0066】
シンクロナイザ222の出力は、
図2に関して上述した駆動パルス信号110である。上述したように、駆動パルス信号110は、所望エンジン出力を供給するのに必要なシリンダ点火(または瞬間実効エンジン排気量)を事実上特定する。すなわち駆動パルス信号110は、所望のまたは要求されたエンジン出力を供給するにはシリンダにいつ点火するのが適切であるかを一般に示しているパルスパターンを提供する。理論上、シンクロナイザ222によって出力される駆動パルス信号110のタイミングを用いてシリンダに直接点火する可能性がある。しかし、多くの場合、パルスパターン110と正確に同じタイミングでシリンダに点火することは賢明ではなく、その理由は、そうすることでエンジンの中に好ましくない振動を生成する可能性があるためである。従って、駆動パルス信号110を、適切な点火パターンを決定するシーケンサ108に供給してもよい。シーケンサ108は、過度の振動を生じずにエンジンが滑らかに作動できるように、要求されるシリン
ダ点火を分配するように構成されている。シリンダ点火を配列するためにシーケンサ108が使用する制御ロジックを大きく変化させてもよく、シーケンサの高度化は、特定用途の必要性に主に依存するであろう。
【0067】
(シーケンサ)
図4を参照して、多くの用途に適したシーケンサ108の比較的簡単な実施形態の動作を説明する。今日使われているピストンエンジンは、それらのシリンダを一定の順番で運転する。説明のために、標準的な4気筒エンジンを検討する。エンジンの「通常」運転(すなわちエンジンの作動周期をスキップするような制御を行わない運転)においてシリンダが点火されるであろう順番に従って、4個のシリンダに「1」、「2」、「3」、および「4」と名前をつける。この順番は、エンジン内のシリンダの物理的構成と一致しなくてもよく、かつ一般に一致しないことを理解すべきである。簡単なシーケンサ108(a)は、通常運転においてシリンダが点火されるであろう順番と正確に同じ順番でシリンダに点火するように構成してもよい。すなわちシリンダ#1が点火されると、次に点火されるシリンダは#2であり、その後、#3、#4、#1、#2、#3、#4、#1などと続く。
【0068】
図4は、シーケンサ108に入力される、起こり得る駆動パルス信号110(a)と、シリンダのそれぞれに対してシーケンサ108によって出力される対応する点火パターン120(a)(1)、120(a)(2)、120(a)(3)、および120(a)(4)と、シーケンサ108によって出力される合成点火パターン120(a)とを示すタイミング図である。信号はすべてシリンダ点火時期の割合で計時され、このシリンダ点火時期の割合は4気筒4サイクルのエンジンではrpmの2倍である。
図4に示すパターンでは、入力された駆動パルス信号は、第1シリンダ点火D1、その後、2つのスキップ(S1、S2)、第2点火D2、他のスキップ(S3)、第3点火D3、もう2つのスキップ(S4、S5)、第4点火D4、およびもう3つのスキップ(S6、S7、S8)を要求する。第1点火D1が要求されたときにはシリンダ#1が利用できるため、パターン120(a)(1)のF1で示すようにシリンダ#1が点火される。次の2つの点火時期(シリンダ#2および#3)は、入力パルスパターン110(a)のスキップS1およびS2に従ってスキップされる。シリンダ#4だけが利用できるときに第2点火D2が要求されるが、指定された(たとえば通常のまたは従来の)順番でシリンダに点火するようにシーケンサ108(a)が設計されていると仮定すると、パターン120(a)(2)で分かるように次回シリンダ#2が利用できるとき(これは全体の点火時期の#6に対応する)にシーケンサ108(a)はシリンダ#2に点火する。その結果、シリンダ#2が利用できるまでD2は事実上遅延させられ、パターン120(a)(2)の点火F2で分かるように追加の点火が要求されているかどうかにかかわらず、シリンダ#2がめぐって来るまで他のシリンダには点火されない。
【0069】
駆動パルス入力信号110(a)は、第6点火時期に第3点火D3を要求した。シーケンサ108は、この点火を、まだ利用できないシリンダ#3に割り当て(そのとき、シリンダ#2だけが利用できる)、その結果、シリンダ#3が利用可能になるまでF3は遅延させられ、シリンダ#3が利用可能になるのは、図示の実施例では、次の点火時期である。シーケンサ108(a)は可変排気量モードでの運転中を通じて、この方法を用いて動作し続ける。シーケンサ108(a)によって命令された点火Fの個数は、受信された駆動パルスDの個数と同じであるが、エンジンのバランスをとるのを支援するとともに、シリンダのそれぞれを時間に対してより一様に利用するのを支援するために、タイミングだけは、わずかに変化させていることを理解すべきである。この非常に簡単なシーケンサロジックでさえ、シグマデルタコントローラによって生成される駆動パルス信号110の疑似ランダム性のおかげで、上述のシグマデルタ制御回路202を利用する多くの実施態様において適切にエンジンのバランスをとるために十分であると考えられる。このことは、
妥当なディザーをコンバイナ212に供給するときには特に正しい。点火パターン120が、駆動パルス発生器104によって生成された駆動パルス信号110と正確に同じではないという事実は、駆動パルス発生器104によって生成される恐れがあるトーンの消滅をさらに促進する可能性がある。
【0070】
駆動パルスに対してシリンダ点火を遅延させると、理論的に、駆動パルスを使用してシリンダ点火を直接制御する場合に比べて、アクセルペダル位置の変化に対するエンジンの応答性をわずかに悪くすることが分かる。しかし、実際には、この遅延は取るに足らないものである可能性がある。たとえば3000rpmで運転する4気筒エンジンでは、毎分6000回、すなわち毎秒100回の点火時期がある。従って、最大遅延、すなわち3点火周期は、約100分の3秒であろう。シリンダ燃焼速度と、1回の点火によって供給されるエネルギーに対する自動車の全質量とを考慮すると、この範囲の遅延は、自動車用途における運転者にとって一般に感知できないものであろう。
【0071】
上述のシーケンサ108の第1実施形態の制約は、点火時期がスキップされるときでさえ、シリンダが一定の順番で点火されることである。しかし、これはすべてのエンジン設計における要求事項ではない。多くの用途では、変化する点火順序を有していることを完全に許容できる可能性がある。たとえばいくつかの実施態様では、シーケンサ108を特定の「後続パターン」に制約することが適切である可能性がある。すなわち特定のシリンダが点火された後には、次に、指定されたシリンダの組だけに点火してもよい。たとえば8シリンダエンジンでは、シリンダ1の後にシリンダ2またはシリンダ6が続くこと、およびシリンダ2の後にシリンダ3またはシリンダ7のどちらかが続くことなどが、完全に許容できる可能性がある。(実際には、さらにもっとさまざまな後続パターンが効果的に機能できる場合が多い)。シーケンサロジックが、これらの種類の決められた点火順序の制約を可能にするように容易に構成できることを理解すべきである。一例として、
図5は、シーケンサ108の第2実施形態によって生成された、シリンダ1またはシリンダ3の後にシリンダ2またはシリンダ4が続くことができ、逆もまた同様である点火パターン120(b)を示している。点火パターン120(b)は、
図4に示したのと同じ駆動パルス信号110(a)から生成されている。両方の実施形態で同じ個数のシリンダ点火を生成しているが、シーケンサロジックの違いによって、それらそれぞれのタイミングが互いに異なる可能性があることが分かる。特定のエンジンにふさわしい実際の後続パターンは、エンジン設計の送出(たとえばVブロックまたはインライン、シリンダ数、ピストンの回転オフセットなど)に大きく依存するであろうし、これらの決定を行うのに必要な振動解析は、よく理解されている。
【0072】
もちろん、シーケンサ108は、より高度な後続パターンを組込むように設計できる。たとえば次にどのシリンダが点火に使用できるかを決定する際に、最後の2つ、3つ、またはより多くの点火を考慮することができる。また他の実施形態では、後続パターンは、エンジン回転速度および他の要因の係数のうちの少なくとも一方であってもよい。
【0073】
さらに他の実施形態では、シーケンサ108は特定の後続パターンに制約される必要はない。むしろ、点火パターンは、現在制御中のエンジンにふさわしい任意の基準を用いて決定または計算できる。シーケンサ108は、より高度な解析を促進するためのメモリを含んでいてもよく、およびシーケンサ108は、エンジン動作に好ましくない振動を導入することが分かっている、または好ましくない振動を導入する可能性が高い好ましくない点火パターンを認識して中断するように適合され、またはプログラムされてもよい。もしくは、シーケンサ108は、より高度な解析を促進するためのメモリを含んでいてもよく、またはシーケンサ108は、エンジン動作に好ましくない振動を導入することが分かっている、または好ましくない振動を導入する可能性が高い好ましくない点火パターンを認識して中断するように適合され、またはプログラムされてもよい。あるいは、または加え
て、シーケンサ108はリアルタイム振動解析を採用してもよく、このリアルタイム振動解析によって、たとえばエンジンの回転速度、スキップされた作動周期または部分的なエネルギー作動周期の存在および影響のうちの少なくとも一方などを含む、適切と考えられる可能性があるさまざまな要因を考慮して、必要なシリンダ点火を適切に配列することができる。
【0074】
またシーケンサ108は、特定のエンジンにとって重要または好ましいと考えられる他の任意の設計基準に対応するように設計できる。たとえばエンジン寿命を延ばすのを助けるためには、作動チャンバのすべてが可変排気量モードでの運転中の長い間に実質的に同じ回数だけ点火されるようにシーケンサ108を設計することが好ましい可能性がある。
【0075】
電子制御の経験のある人には明らかなように、上述のシーケンサ108のロジックは、デジタルロジックで、アルゴリズム的に、アナログ構成要素を用いて、またはこれらの方法のさまざまな組合わせで、非常に容易に実現できる。ほんのいくつかのシーケンサロジックを説明したが、シーケンサ108のロジックは、任意の特定の実施態様の要求を満たすために非常に大きく変化させてもよいことを理解すべきである。
【0076】
(最適化された点火および空燃比)
多くのエンジンが、互いに異なるエンジン回転速度、互いに異なる負荷、および他の運転条件におけるエンジンの特性をモデル化するエンジン性能マップによって特徴付けられる。上述の制御の特徴は、それぞれチャンバ点火の間に送出される燃料量が、エンジン性能マップ上の任意の所望のポイントに合致するように構成されることができることである。いくつかの状況では、薄い空燃比を提供することが好ましい可能性があるが、他の状況では、濃い空燃比を提供することが好ましい可能性がある。
【0077】
ほとんどの従来のエンジンでは、作動チャンバに送出される実際の空気量および燃料量は、エンジンの現在の運転状態の関数である。特定の作動周期の間に作動チャンバに送出される燃料量は、作動チャンバに供給される空気量に大きく依存するであろう。また特定の作動周期の間に作動チャンバに送出される燃料量は、所望の空燃比にも部分的に依存するであろう。特定の作動周期の間にチャンバに送出される実際の空気量は、吸気圧力(この吸気圧力はスロットル位置によって影響を受ける)、現在のエンジン回転速度、バルブタイミング、吸気温度などの運転要因および環境要因に応じて変化するであろう。一般に、特定のスロットル位置でシリンダに送出される空気量は、エンジン回転速度が速いときの方が、エンジン回転速度が遅いときよりも少ないが、その理由の1つは、エンジンを高rpmで運転しているときには、吸気弁が短い期間だけ開く傾向があるためである。
【0078】
最新のエンジン制御ユニットは、エンジン制御ユニット(ECU)がエンジンの運転状態を監視できるようにする多くのセンサから入力を受信する。一例として、センサは、空気質量流量センサ(MAFセンサ)、周囲空気温度センサ、エンジン冷媒温度センサ、吸気圧(MAP)センサ、エンジン回転数センサ、スロットル位置センサ、排気ガス酸素センサなどを含んでいてもよい。ECUは噴射される予定の適切な燃料量を計算するためにセンサ入力を解釈して、燃料および空気流量のうちの少なくとも一方を操作することによってエンジン動作を制御する。実際に噴射される燃料量は、エンジン温度および周囲温度、エンジン回転速度およびエンジン仕事量、吸気圧、スロットル位置、排気ガス組成などの変数を含むエンジンの運転状態および環境条件に依存する。一般に、互いに異なる運転条件の下でシリンダに供給される予定の最適のまたは所望の燃料量を決めるために大変な努力および解析が行われる。これらの努力は、個別の運転条件に対して噴射されるべき適切な燃料量を規定する多次元マップの開発につながる場合が多い。ECU内に保存されるルックアップテーブルに燃料噴射マップを反映する場合が多い。その後、ECUはルックアップテーブルを使用して、エンジンの現在の運転状態に基づき作動チャンバ内に噴射す
る適切な燃料量を決定する。
【0079】
燃料噴射マップを開発するとき、シリンダに導入された所与の空気量に対して送出する最適の(またはそうでなければ、所望された)燃料量を決定する際に、さまざまな要因を考慮してもよい。これらの要因は、燃料効率、パワー出力、排ガス制御、燃料点火などへの影響を含んでいてもよい。これらの解析は、正確には分かっていない、または制御できない可能性がある関連要因(たとえば燃料のオクタン含量またはエネルギー含量などの燃料特性)に関するいくつかの推定および仮定のうちの少なくとも一方を必然的に行わなければならない。従って、所与の空気量に対して送出される「最適化された」燃料量および最適化された空燃比のうちの少なくとも一方は、固定された値ではない。むしろ、それらの最適化された燃料量および最適化された空燃比のうちの少なくとも一方はエンジンごとに互いに異なる可能性があり、および同じ1つのエンジンであっても、そのエンジンまたは運転状態にとって重要と考えられる性能パラメータに基づき、そのエンジンの運転状態によって互いに異なる可能性があり、またはそのいずれかの可能性がある。これらの設計選択は、ECUによって利用される燃料噴射マップに通常反映される。さらに、多くのECUは、排気ガスラムダ(酸素)センサなどのさまざまなセンサから受信するフィードバックに基づき空燃比を動的に調節するように設計されている。
【0080】
連続可変排気量モードで運転するときに、同じ問題を考慮に入れてもよい。いくつかの実施態様では、連続可変排気量モードでのスロットル位置を実質的に固定している(たとえば全開状態、またはほぼ全開状態にしている)であろう。しかし、これは常に当てはまるとは限らず、エンジンの運転状態および環境条件の違いのせいで、空気送出を絞っていないときでさえ作動チャンバ内に導入される実際の空気質量が常に同じであるとは限らないことを理解すべきである。たとえばエンジン回転速度が速いときには、エンジン回転速度が遅いときにシリンダに入るであろう空気よりも少ない空気が特定の作動周期の間に同じシリンダに実際に入る可能性がある。同様に、海抜ゼロ地点では、同じエンジン回転速度で高地にて起こるであろうよりも多くの空気がシリンダに通常入るであろう。バルブタイミングおよび他の要因もまた同様に、シリンダに導入される空気量に影響を与えるであろう。任意の特定の作動周期の間に燃料をどれだけ送出するかを決定するときに、これらの要因を考慮することが好ましい。さらに、送出する燃料量を決定するときに、所望の空燃比などの要因を考慮してもよい。また所望の空燃比はエンジンの運転状態に基づき動的に変化する可能性がある。いくつかの状況では、薄い空気/燃料混合気を使用することが好ましい可能性があるが、他の運転状態では、濃い空気/燃料混合気を利用することが好ましい可能性がある。
【0081】
任意の特定の最適化された点火の間に供給する燃料量の決定は、今日使用されているのと同じ(またはさらに単純化した)種類の燃料噴射マップを使用することによって容易に達成できる。スロットルを備えたエンジンに対する差異が、そのただ1つ(または限られた数)のスロットル位置であることを考慮する必要があるであろう。既存のエンジンを改造するとき、既存の燃料噴射マップを、この目的のために通常使用できる。もちろん、技術が発展するとともに、連続可変排気量モードでの運転に特に合わせた燃料噴射マップを開発すること、もしくは解析方法または計算方法を利用して、供給する適切な燃料量を決定することが好ましい可能性がある。
【0082】
従って、それぞれ作動周期の間に噴射される実際の燃料量は、一般的には、確かな固定された数値ではない(しかし、その確かな固定された数値は、いくつかの実施態様では起こり得るとともに実に好ましい)ことを理解すべきである。むしろ、それぞれ作動周期の間に噴射される実際の燃料量は、エンジンの現在の運転状態に対して最適化された量であることが好ましい。上述したように、我々が「最適化された」燃料量について言及するときには、我々は、その燃料量が任意の特定の変数(たとえば燃料効率、パワー、熱力学的
効率、環境問題など)に対して最適化されていることを必ずしも意味していない。むしろ、その燃料量は、特定の運転状態にふさわしいと考えられる燃料量である可能性がある。最適化された燃料量は、ルックアップテーブルに提供してもよく、動的に計算してもよく、または他の任意の適切な方法で決定してもよい。ルックアップテーブルが提供されると、ルックアップテーブルによって与えられる値に対して、ECUによって受信された排ガスまたは他のフィードバックに基づき、送出される実際の燃料量を調節してもよい。
【0083】
またいくつかの実施態様では、シリンダに導入される空気量を、より積極的に制御することが好ましいであろう。シリンダに送出される空気量を制御する利点の一部の説明を助けるために、
図14に示す典型的な従来の乗用車に対する性能マップを参照する。
図14は、正味燃料消費率(BSFC)とエンジン出力の両方を、正味平均有効圧(BMEP)およびピストン速度(このピストン速度はエンジン回転速度に直接対応する)の関数として示している。燃料消費量(BSFC)が少ないほど、エンジンの燃料経済性がよい。グラフから分かるように、
図14に示すエンジンの最適燃料効率は、グラフ上で50と示された動作範囲内にある。この動作範囲は、フルスロットルよりもわずかに絞ったスロットル位置にあり、比較的狭いエンジン回転速度範囲の中でエンジンが作動している状態であることが分かる。従って、特定のエンジンの最適運転条件はフルスロットルのときではない可能性があることを理解すべきであり、従って、スロットルを備えたエンジンでは、よりよい燃料効率を得るために、または他の所望の性能特性を得るために、スロットル設定をフルスロットルよりもいくらか絞った状態に調節することが好ましい可能性がある。
【0084】
図14は、典型的な自動車エンジンの正味燃料消費率(BSFC)を示していることが分かる。BSFCは、従来の方法で運転されるスロットルを備えたエンジンに対する燃料効率の従来の尺度である。エンジンをスキップファイアモードで運転しているときには、BSFCとは対照的に図示燃料消費率(ISFC)に対して最適化することが好ましい場合が多いであろう。図示燃料消費率は熱力学的効率と反比例関係を有しているため、最大の熱力学的効率に対する最適化は、最小の図示燃料消費率に対する最適化と同じであると理解される。BSFCとは対照的にISFCを示す性能マップは、BSFC性能図にかなり似ている可能性があることが分かるが、しかし、最適化された領域は多少異なっている可能性がある。
【0085】
当業者には明らかなように、多くの要因がエンジンの全体的効率および性能に影響を及ぼすであろう。1つの重要な要素はシリンダに実際に送出される空気量である。スロットルを備えたエンジンでは、シリンダに送出される空気量はスロットルを用いて調節できる。またいくつかのエンジンはバルブタイミングの動的調整を可能にし、この動的調整は、能動作動周期の間にシリンダに送出される空気量のさらなる制御を提供する。さらに他のエンジンは、ターボチャージャ、スーパーチャージャ、または他の機構を組込んで、特定の作動周期の間にシリンダに送出される空気量をさらに増加させたり、またはそうでなければ、変更したりする。要求され、かつ利用できる場合は、シリンダへの空気送出に影響を与えるスロットル、バルブタイミング、または他の装置のいずれか1つまたは組合わせを取り付けたり、最適化したり、または制御したりして、シリンダ点火を最適化するのを支援してもよい。また燃料効率が最も高い(またはそうでなければ、最適化された)スロットルの設定、バルブタイミングの設定などは、エンジンの運転条件に基づき変化する可能性があることを理解すべきである。従って、エンジン性能をさらに向上させるためにエンジンの運転中に設定(たとえばスロットル設定など)を調節することが好ましい場合があるかもしれない。たとえばいくつかのエンジンでは、最も効率的なスロットル位置が、エンジンの回転速度および他の要因によってわずかに変化する可能性があることが分かる。このようなエンジンでは、エンジン回転速度または他の適切な要因の関数としてスロットル位置をわずかに調節することが好ましい可能性がある。一例として、吸気圧が任意の特定のシリンダ点火の効率に著しい影響を有していることがよく分かっている。従って、
実質的に一定の吸気圧を保持するようにスロットルを制御することが好ましい可能性がある。
【0086】
この種類のスロットル調節は、スロットルを備えたエンジンの従来の運転中に利用されるスロットル調節とは、まったく異なっていることが分かる。従来の運転では、スロットルはエンジン出力を調節するのに使用する主要機構である。スロットルをさらに開けて付加的なパワーを供給し、スロットルをさらに閉じてエンジン出力を減少させる。対照的に、上述のスロットル位置の調整は点火の最適化を支援するために使用され、エンジンのパワー出力は、本明細書に記載するスキップファイア技術を用いて主として制御される。
【0087】
空気および燃料送出の最適化に加えて、エンジンの性能に影響を与える他の変数がある。たとえば火花点火エンジンでは、スパークプラグ点火のタイミングが、シリンダ点火の熱力学的効率と、対応する排ガスプロファイルとの両方に影響を与えることができることがよく分かっている。多くの自動車エンジンは、エンジンの運転中にスパークプラグ点火のタイミングを調節できる。またこのような制御が利用できる場合には、スパークプラグ点火のタイミングを調節して、点火の最適化を促進することもできる。当業者には明らかなように、エンジンが冷えているときにはスパークを進ませ、エンジンが温まっているときにはスパークを遅らせることが一般に好ましい。またスパークタイミングは、エンジンの回転速度および他の要因のうちの少なくとも一方によっても変化する可能性がある。
【0088】
本願の他の所で検討するように、エンジンをスキップファイアモードで運転するときには、それぞれの特定のシリンダの点火履歴のような要因が原因で、互いに異なるシリンダの温度に大きなバラツキがある可能性がある。またさまざまな理由で、任意の特定の作動周期の間に送出される(または送出されると期待される)実際の燃料必要量にバラツキがある可能性がある。必要に応じて、その特定のシリンダの点火履歴と、スパークタイミングに関連すると考えられる他の要因とに基づき、点火ごとに、それぞれ作動チャンバ点火のスパークタイミングを最適化しようと試みるようにスパークタイミングコントローラまたは制御アルゴリズムを設計できる。
【0089】
他の実施例では、いくつかのエンジンは、カム位相器、電子弁制御、またはバルブタイミングを変化させるのに使用してもよい他の機構を有している。いくつかの機構(たとえば電子弁)は、シリンダについて、シリンダ/作動周期を単位として、作動周期に基づき、制御を促進してもよい。他の機構(たとえば機械的カム位相器)は、エンジンの運転中のバルブタイミングの動的制御を促進してもよいが、しかし、個々のシリンダごとに行うのではない。バルブタイミングを変化させるのに利用できる機構に基づき、適切なレベルであればいかなるレベルであってもバルブタイミングを制御するようにコントローラを設計できる。
【0090】
ほんのいくつかの運転変数(たとえば空気、燃料、およびスパークタイミング)の最適化を説明したが、エンジンの運転中に制御可能であり、エンジンの運転に影響を与える任意の変数を選択的に要望通りに調節して、シリンダ点火の最適化を促進してもよいことを理解すべきである。またその際、多くの変数を最適化できる可能性があるが、考えられるすべての変数を最適化する必要はなく、任意の変数を、それらの最大の熱力学的効率を達成するように、または任意の特定の排ガス特性を達成するように、最適化する必要もない。むしろ、空気および燃料の一般的に最適化された必要量を用いるエンジンの、上述のスキップファイア式の運転の利点は、シリンダ点火の熱力学的効率に影響を与える機構(たとえば燃料噴射器、バルブリフタ、スロットル、スパークタイミングなど)のさまざまな互いに異なる具体的な設定を介して獲得することができる。
【0091】
エンジンの運転中の、その時々に使用される具体的な設定の決定は、任意の好適な方法
で行ってもよい。たとえば設定は、エンジンの運転中にエンジンの現在の運転状態に基づきリアルタイムで動的に計算してもよい。あるいは、適切な設定は、所定のエンジン性能マップに基づきルックアップテーブル内に保存してもよい。さらに他の実施態様では、計算されたり、または取り出されたりした値は、排ガスプロファイル、または触媒コンバータの現状などの現在の運転パラメータに基づき修正できる。もちろん、他のさまざまな従来の、または非従来的な方法を使用して、最適化された点火に対する具体的なパラメータを決定してもよい。
【0092】
(燃料リッチ駆動パルス)
(たとえばエンジンの排ガス出力を触媒コンバータに、より良く合致させるために)所望の排ガスプロファイルを提供するためには、または他の何らかの目的のためには、通常の/完全な駆動パルスよりも濃い空気/燃料混合気を作動チャンバに送出することが好ましい時があるかもしれない。事実上、これは、最適と考えられ、化学量論的燃料量よりも多い燃料量よりも多くの燃料をシリンダに供給することを要求する。背景として、多くの実施態様では、特定の運転状態に使用される「最適化された」燃料量は、わずかに薄い混合気に対応するであろう。すなわち化学量論的燃料量よりもわずかに少ない燃料量を、点火されたそれぞれ作動チャンバに導入する。薄い燃料でエンジンを運転する場合に時々生じる可能性がある問題は、シリンダの排ガスプロファイルが、常に、触媒コンバータの能力の範囲に入るとは限らないということである。同じ種類の問題は、従来モードでエンジンを運転する場合でも生じる。この問題に対処するために、いくつかの従来のエンジンは、触媒コンバータの良好な動作を促進するように排ガスプロファイルを調節するために、短期間だけ燃料リッチモード(すなわち化学量論的燃料量よりもわずかに多い燃料量を供給する)で定期的に運転される。
【0093】
この問題の性質は、種々の空燃比における代表的オットーサイクルエンジンの選択された排ガス特性を示している
図10を参照することで理解できる。
図10から分かるように、排ガス内の一酸化炭素(CO)量は、混合気が濃くなるにつれて増加する傾向があり、化学量論的混合気よりも濃い混合気では非常に大幅に増加する。酸化窒素(NO)量は、化学量論的混合比付近で最も増加し、空燃比が薄くなるか、または濃くなるにつれて比較的迅速に低下する傾向がある。また排ガス内の炭化水素(HC)量も、混合比が化学量論的条件を超えて増加するとともに一般的に比較的迅速に増加する傾向がある。多くの触媒コンバータは、効率的に作動するために、ある特定量の一酸化炭素の存在を必要とする。エンジンが薄い燃料で作動する場合、触媒コンバータは劣化するようになり、一酸化炭素不足が原因で効率的に動作しない可能性がある。これらの問題に対処するために、いくつかの既存のECUは、触媒コンバータを補給するために短期間だけ濃い燃料混合気でエンジンを定期的に運転するように設計されている。
【0094】
触媒コンバータ劣化問題は、燃料リッチ点火を定期的に利用することによって、上述のスキップファイア可変排気量モードにおいて容易に対処できる。必要に応じて、駆動パルス発生器104は最適燃料量よりも多い燃料量の送出を要求する「燃料リッチ」駆動パルスを時々出力するように構成でき、またはシーケンサ108は必要に応じて、選択されたシリンダに過剰な燃料量を時々供給するように構成されていてもよい。あるいは、所望の効果を得るために、シーケンサ108、もしくは燃料プロセッサまたはエンジン制御ユニットの中の他のロジックは、燃料噴射ドライバに、特定の点火または1組の点火において送出される燃料量を増加させるように命令するように構成されていてもよい。
【0095】
シグマデルタコントローラ202を少なくとも部分的に利用して燃料リッチパルスのタイミングを決定する実施態様では、
図8を参照して後述するようなマルチビット比較器216(c)の状態のうちの1つを使用して、燃料リッチパルスを指定してもよい。シグマデルタコントローラ202を使用して燃料リッチパルスのタイミングを指定できるが、そ
の必要はない。むしろ、燃料リッチ点火のタイミングおよび生成は、排気ガス監視センサおよびECUのうちの少なくとも一方から受信される信号に呼応して、さまざまな構成要素によって決定してもよい。一例として、さまざまな実施態様では、所望の効果を得るために、燃料リッチパルスまたは1組の燃料リッチパルスを導入する決定は、シンクロナイザ222、シーケンサ108、ECU、または燃料プロセッサの中の他のロジックによって独立に行ってもよい。燃料リッチ点火は、点火によって生成されるパワーに通常大きな影響を与えることはないであろうということが分かる。すなわち燃料リッチ点火から引き出されるエネルギー量は、通常の/最適化された点火から引き出されるエネルギーに通常比較的近いであろう。従って、制御の見地から言うと、燃料リッチ点火の間に送出されている付加的な燃料に基づきシグマデルタ制御回路へのフィードバックを変更する必要は通常ない。しかし、必要に応じて、フィードバックを別の方法で推定したり、または点火の実際のエネルギー出力を反映するようにフィードバックを調節したりすることができる。
【0096】
(パーシャル駆動パルス)
上述したほとんどの実施形態では、実際に点火されるシリンダのすべては、それらの最適効率付近で、たとえば一定の、またはほぼ一定の燃料供給を行う、実質的に絞っていない運転条件で(スロットルを備えたエンジンでは、たとえば「フルスロットル」で、または「フルスロットル」付近で)運転される。しかし、それは必要条件ではない。いくつかの状況では、より正確なエンジン出力の制御および円滑化のうちの少なくとも一方などの特定の短期間の必要性に対応するために、もしくは排ガス問題に対処するために、作動周期の一部を、それらの最適効率よりも低い効率で運転することが好ましい可能性がある。上述の駆動パルス発生器104は、必要であれば、スキップされない作動周期のうちのある割合(またはすべて)を、それらの最適効率よりも低い効率で運転させるように容易に構成できる。さらに具体的に述べると、生成される駆動パルスの一部が、抑制したエネルギー出力シリンダ点火を要求するパーシャル駆動パルスであるように駆動パルス発生器104を構成してもよい。パーシャル駆動パルスは、すべて同じエネルギー出力レベル(たとえば1/2エネルギー)を有していてもよく、または複数の個別的なエネルギー出力レベル(たとえば1/2および1/4エネルギー)を有していてもよい。もちろん、任意の特定の実施態様で使用される互いに異なるエネルギー出力レベルの個数と、それらの相対的な大きさとは、大きく変化してもよい。
【0097】
シーケンサ108がパーシャル駆動パルスを受信すると、シーケンサ108はパーシャル駆動パルスに対応して点火されるシリンダに少ない燃料量を噴射するように準備する。エンジンで使用される燃料が、希薄環境でも点火できる場合には、パーシャル駆動パルスに対してスロットルを調節せずに、その結果、シリンダに送出される空気量がパーシャル駆動パルスによって影響を受けないようにすることで、特定の点火に対して送出される燃料量を低減できる可能性がある。しかし、ほとんどのガソリンエンジンは非常に希薄な環境ではガソリン燃料に連続して確実に点火することができない。従って、このようなエンジンでは、パーシャル駆動パルスで点火するように指定されたシリンダに導入される空気量を減少させることもまた必要であろう。ほとんどのスロットルの応答時間が比較的遅いことを理解すべきである。従って、スロットルを備えたエンジンでは、パーシャル駆動パルスの間に完全駆動パルスが散在している状況では、完全駆動パルスとパーシャル駆動パルスの間でスロットル位置を切替えることが困難である可能性がある。このようなエンジンでは、特定のエンジン内で制御できる他の任意の技術を用いて、たとえば電子弁では通常そうであるようにバルブタイミングが制御可能である場合には、弁が開くタイミングを変更することによって、シリンダに供給される空気を減少させることが好ましい可能性がある。
【0098】
パーシャル駆動パルスを使用する場合には、パーシャル駆動パルスに反映された比例駆動エネルギー量を供給するように、シリンダに送出される空気量および燃料量を測定する
ことが好ましい。たとえばパーシャル駆動パルスが全エネルギーの2分の1を要求するとき、供給される燃料量は全駆動エネルギーの2分の1を送出すると見込まれる燃料量であるが、この燃料量は、最適効率で運転するのに必要な燃料の1/2よりも通常多くなり、その理由は、シリンダを準最適条件下で運転するときにはシリンダの熱力学的効率が低くなるためである。
【0099】
部分的エネルギー作動周期によって送出される正味のエネルギーを、パーシャル駆動パルスによって要求されるエンジン出力と比較的正確に関連付けることが好ましいが、それが常に必要とは限らないことを理解すべきである。特にパーシャル駆動パルスが全駆動パルス数のうちの比較的小さな割合(たとえばおよそ10または15%未満)を占めているとき、エンジンが送出する全駆動エネルギーへの累積影響は特に大きなものではないため、近似は依然として適切に機能する可能性がある。たとえば2分の1の駆動パルスは、完全駆動パルスで送出される燃料の2分の1(またはたとえば65%などの他の一定割合)の送出に関連付けられる可能性がある。
【0100】
パーシャル駆動パルスは多くの方法で役立つ可能性がある。上述したように、パーシャル駆動パルスはエンジン出力の円滑化を促進するために使用できる。この円滑化は、いかなるエンジン回転速度でも有用である可能性があり、エンジン回転速度が遅いとき(低rpm)に特に顕著である。パーシャル駆動パルスが好ましい場合がある他の理由は、エンジン振動のさらなる低減の促進のためである。上述したように、上述のシグマデルタ制御回路202などの多くのコントローラはトーンを生成しやすく、このトーンは、いくつかの条件では、共振振動または他の好ましくない振動パターンを引き起こす可能性がある。コントローラにディザーを導入することができ、これらのパターンの一部を消滅させるのを支援するようにシーケンサ108を適切に設計できる。しかし、多くの用途では、パターンの消滅を促進する他の機構およびエンジン振動をより能動的に制御する他の機構のうちの少なくとも一方を提供することが好ましい可能性がある。パーシャル駆動パルスは、本明細書で検討する他のパターン制御手段に加えて、および他のパターン制御手段の代わりに使用してもよく、あるいは、本明細書で検討する他のパターン制御手段に加えて、または他のパターン制御手段の代わりに使用してもよく。
【0101】
パーシャル駆動パルスを提供するさらに他の理由は、エンジンの排ガスプロファイルを変化させるためである。たとえばいくつかの自動車の、いくつかの運転条件では、最適化された完全駆動パルスだけの排ガスプロファイルの処理に、触媒コンバータが、うまく適合しない可能性がある。このような状況では、点火されるシリンダのいくつかに送出される燃料量を変化させて、エンジンの排ガス出力を触媒コンバータに、より良く適合させてもよい。
【0102】
上述の簡単なシンクロナイザ222は、パーシャル駆動パルスを処理するように容易に構成できる。一実施態様では、シグマデルタ制御回路からの高出力のバースト長が指定された範囲内にあるときにはいつでも、シンクロナイザは半エネルギーパルスを生成するように構成されている。たとえば高出力のバースト長が駆動パルス周期の半分よりも長く、完全駆動パルス周期よりも短いとき、半パルスを生成できる。もちろん、特定の用途の要求を満たすように実際のトリガーポイントを変更できる(たとえば駆動パルス周期の45〜90%または他の適切な範囲のバースト長を設定して、パーシャル駆動パルスの生成を誘発してもよい)。
【0103】
複数のパーシャル駆動パルスレベルが提供される場合には、それぞれレベルは、関連する範囲を有するバースト長で誘発するように構成できる。たとえば駆動パルス周期の25〜49%のバースト長は、4分の1駆動パルスの生成を引き起こしてもよく、駆動パルス周期の50〜99%のバースト長は、半駆動パルスの生成を引き起こしてもよい。この場
合も先と同様に、これは単なる実施例に過ぎず、パーシャル駆動パルスを誘発する実際の範囲および条件は大きく変化してもよいことを理解すべきである。
【0104】
また好ましい場合には、バースト長が駆動パルス周期よりも大幅に長いが、他の完全駆動パルスを誘発するほどには長くないときにパーシャル駆動パルスも使用できる。たとえばバーストの残り(すなわち駆動パルスの整数倍を超えたバースト長)が指定された範囲に入るときにパーシャル駆動パルスを誘発してもよい。
【0105】
エンジンが許容排ガスレベルの範囲内で効率的に作動することを保証するために、多くの用途では、駆動パルス発生器104によって出力されるパーシャル駆動パルスの個数を制限することが好ましい可能性がある。たとえばパーシャル駆動パルスを、駆動パルス発生器104によって生成される駆動パルスのうちのある割合(たとえば最大10または20%)に制限することが好ましい可能性がある。また必要に応じて、許容される駆動パルスの割合はエンジン回転速度の関数であってもよい。たとえばエンジンが非常にゆっくり作動しているとき(たとえばアイドリング)には、より多く(またはすべて)の駆動パルスがパーシャル駆動パルスであることを許すことが好ましい可能性がある。
【0106】
駆動パルス発生器104は、パーシャル駆動パルスを提供するように、およびパーシャル駆動パルスの利用度、個数、およびタイミングのうちの少なくとも一方に関して適切な条件または制限を設定するように容易に構成してもよい。一例として、シグマデルタコントローラと、複数レベルの駆動パルスの生成に適した対応する駆動パルス発生器104とを、
図8を参照して後述する。
【0107】
(パーシャルスロットル運転)
スロットルを備えたエンジンの、さらに他の実施形態では、スキップファイア式の可変排気量モードで、全開状態よりも実質的に絞っているスロットル位置で(すなわちパーシャルスロットルで)、エンジンを運転できる場合がある。これらの実施形態では、たとえ作動周期を最適化していなくてもエンジンは依然として連続可変排気量モードに留まっている。すなわちそれぞれシリンダ/作動チャンバに送出される空気量および燃料量は最適化された点火に対して減らされるが、シリンダに実際に送出される空気量に対して、送出される実際の燃料量を最適化してもよい(たとえば化学量論的比率で)。作動周期が反最適化された状態にてパーシャルスロットルで作動するエンジンの燃料効率はフルスロットルでの燃料効率ほど一般に良くはないが、それでもパーシャルスロットルスキップファイア運転モードは、所与のエンジン回転速度/パワー出力で、従来の方法で絞った状態でのエンジンの運転よりも良い燃料効率を一般に提供でき、その理由は、能動作動周期が、すべてのシリンダが点火されているときの作動周期よりも効率的であるためである。
【0108】
このパーシャルスロットルスキップファイア運転は、比較的低いパワー出力が要求されるときおよびエンジン回転速度が遅いときまたはそのいずれかのとき、たとえばエンジンがアイドリングしているとき、自動車がブレーキをかけているときなどの用途を含む、さまざまな用途で役立つ可能性がある。特にパーシャルスロットルスキップファイア運転は、滑らかなエンジン動作およびエンジン回転速度が遅いときの制御のうちの少なくとも一方を促進する傾向がある。またパーシャルスロットル運転を使用して、より良いエンジン制動を提供し、排ガス特性を向上させるなどを行ってもよい。いくつかの実施態様では、コントローラは、エンジンが所定の運転状態にあるときには、スキップファイア式可変排気量モードで運転し続けながら、低スロットル設定に自動的に調節するように構成されていてもよい。たとえば制動時およびエンジンが完全に温まる前、あるいは制動時またはエンジンが完全に温まる前に、エンジン回転速度が指定された閾値(たとえば2000rpm、1500rpmなど)よりも低下したときには、制御ユニットはスロットル設定を下げてもよい。
【0109】
必要に応じて、複数の互いに異なるパーシャルスロットル設定を採用して、特定用途の要求を満たしてもよい。たとえば一実施態様では、4つの互いに異なるスロットル状態を採用する可能性がある。1つの状態はフルスロットル位置に一般に対応し、第2状態は半スロットル位置に対応し、第3状態は4分の1スロットル位置に対応し、第4状態はアイドリングおよび制動スロットル位置のうちの少なくとも一方に対応している。運転状態間の移行を引き起こすのに使用される条件は、特定用途の要求に従って大きく異なる可能性がある。
【0110】
スロットル位置は、互いに異なるパーシャルスロットル運転状態において完全に固定されている必要はない。むしろ、二次的考察が、任意の特定の運転状態において任意の特定の時間に使用される具体的なスロットル設定に影響を及ぼす可能性がある。たとえばアイドリング状態に対する実際のスロットル位置は、エンジンがどれくらい温かいか、または冷たいかに基づき多少変化する可能性がある。他の実施例では、「フルスロットル」状態に対する実際のスロットル位置は、上述のように燃料効率を最適化するために変化する可能性がある。もちろん、他の考察も同様に、具体的なスロットル設定に影響を及ぼす可能性がある。
【0111】
(可変排気量運転モード)
エンジンの運転中には、上述の連続可変排気量運転モードでエンジンを運転することが好ましくない可能性がある時がある。こうした時には、今日運転されているのと同じ方法で、すなわち通常の、または従来の運転モードで、もしくは適切と考えられる他の任意の方法で、エンジンを運転できる。たとえばエンジンを常温始動するときには、シリンダのうちのいずれかを、それらの最適効率で、すぐに運転することは好ましくない可能性があり、たとえパーシャルスロットルスキップファイアモードであっても、それは同様である。他の例は、エンジンがアイドリングしているときおよびエンジン回転速度が遅くかつエンジンにかかる負荷が低いとき、あるいはそのいずれかのときである。このような条件では、シリンダをそれらの最適効率で作動させることが好ましくない可能性があり、たとえパーシャルスロットルスキップファイアを用いても、それは同様であり、その理由は、エンジンの円滑な運転を確保することおよび振動を制御すること、またはそのいずれかが困難である可能性があるためである。問題を説明するために、大きな外部負荷のない状態(たとえば自動車がニュートラル状態になっている)にて600rpmでアイドリング中の4気筒エンジンを検討する。このような状態では、1分ごとに合計1200回の点火時期(すなわち1シリンダあたり300回の点火時期)、つまり1秒ごとに20回の点火時期があるであろう。しかし、ニュートラル状態では、エンジンから見た負荷は、主として、クランクシャフトの回転を維持するのに関連した摩擦損失であろう。この負荷は非常に小さいので、最適化された連続点火の間に1秒以上が経過する可能性がある。点火の間のこのような遅延は、多くのエンジンにおいて乱れた動作および好ましくない振動を引き起こす可能性がある。同様に、運転者がブレーキをかけているとき、およびエンジンにかかる負荷が非常に小さい他の状況では、作動周期の最適化を継続することが好ましくない可能性がある。
【0112】
これらの種類の状況に対処するために、スキップファイア運転が好ましくないときにはいつでも、エンジンを従来モードで運転できる。運転モードをいつ切替えるのが適切かを決定するために、さまざまなトリガーを使用できる。たとえば本明細書に上述の最適制御を組込んであるエンジン制御ユニットが、始動後、常に、一定期間の間、またはエンジンが所望運転温度に達するまで、従来モードで運転するように構成されることができる。同様に、エンジンが所定範囲外の速度で作動しているときにはいつでも、たとえばエンジンがアイドリング中、またはそうでなければ、エンジン回転速度の閾値(たとえば1000または2000rpmなど)以下で作動しているときにはいつでも、エンジン制御ユニッ
トは従来モードで運転するように構成されていてもよい。また低いエンジン回転速度でエンジンが作動しているときが最も心配であるが、必要に応じて、または適切な場合には、指定された閾値以上のエンジン回転速度(約6000rpmを上回る)で、可変排気量モードの最適制御を切ることもできる。これは、高いエンジン回転速度で付加的なパワーを提供する場合に、または最大エンジン出力が必要なときに、好ましい可能性がある。他の実施例では、エンジンが特定範囲内のエンジン回転速度(たとえば2000〜4000rpm)で作動しているときにだけ、エンジンを可変排気量モードで運転する可能性がある。他の実施例では、可変排気量モードをオンオフするためのトリガー閾値がヒステリシスを示してもよい。たとえば可変排気量モードをオンにするための第1閾値(たとえば2500rpmを上回っての運転)を提供するとともに、可変排気量モードをオフにするための第2閾値(たとえば2000rpmを下回っての運転)を提供することが好ましい可能性がある。閾値をズラして幅をもたせることが、互いに異なる運転モードの間で頻繁に切替わる可能性を低減するのを助ける。
【0113】
他の特定の実施例では、(a)自動車がブレーキをかけているとき、(b)エンジンに好ましくない振動または他の感覚的に分かる問題を見つけたとき、(c)エンジンにかかる負荷が指定された閾値よりも小さいときおよび(d)アクセルペダル位置が、指定された閾値よりも下にあるかまたは上にあるとき、あるいはそのいずれかのときに可変排気量モードを切ることができる。さらなる実施例では、連続点火の間に、指定された期間(たとえば0.2秒など)よりも大きな時間遅延があるとき、または連続点火の間に、指定された点火時期の数よりも多い間隔があいているとき、可変排気量モードを切ることができる。さらに他の実施形態では、モード間の移行に何らかのヒステリシスまたは遅延を設けることが好ましい可能性がある。またたとえばエンジン回転速度が2000rpmを下回ったときに、エンジンが可変排気量モードから従来の運転モードに移行するように閾値を設定する場合、モードを移行する前に、ある期間(たとえば少なくとも3秒など)の間、エンジンが2000rpm以下で作動するように要求することが好ましい可能性がある。このような待機期間は、ギアチェンジのような、まったく一時的な事象がモード切替えを誘発する可能性を低減するのを助ける。
【0114】
これらは、あくまで、連続可変排気量モードを止めることが好ましい可能性がある状況の例に過ぎないことと、可変排気量モードを切る正当な理由となるかもしれない他のさまざまな状況がある可能性があり、および可変排気量モードを切ることを開始するのに使用されるかもしれないさまざまなトリガーがある可能性があること、あるいはそのいずれかの可能性があることを理解すべきである。上述の状況およびトリガーは、あくまで例に過ぎず、これらは、それぞれ単独で、もしくは任意の所望の組合わせで使用することができ、またはまったく使用しないことも可能である。上述の最適化を組込んであるエンジン制御ユニット、点火制御ユニット、点火制御コプロセッサ、および他の装置のさまざまな実施形態は、適切であると考えられるときにはいつでも、および連続可変排気量モードでの運転が不適当であると考えられるときにはいつでも、あるいはそのいずれかのときにはいつでも、連続可変排気量モードを切るように構成されることができる。
【0115】
(フィードバック制御)
本明細書の議論では、我々は、所望出力を提供するためのエンジン制御に言及する場合が多い。簡単なアナログ手法では、点火時期間の周期に対応する期間の間、一般的に一定のレベル(「高さ」)で、点火または駆動パルスを示すフィードバックを提供してもよい。この種類のフィードバックを提供する場合、エンジンはアクセルペダル位置(または他の入力信号)の関数である所望出力を提供するように制御され、ペダル位置は決められたトルクまたはパワー値には対応していないことを理解すべきである。従って、任意の所望出力レベルでエンジンによって送出される実際のパワーは、現在のほとんどの自動車制御システムがそうであるように、エンジンの現在の運転状態と、現在の環境条件との関数で
ある。さらに具体的に述べると、それぞれの作動チャンバ点火から得られる実際の駆動エネルギー量またはパワー量は、多くの変数の関数として変化するであろうということを理解すべきである。たとえば高地において高rpmで作動するエンジンの最適化された点火は、低rpmで最適化された点火よりも少ないパワーを提供する可能性が高いであろう。同様に、排ガス問題に合わせて最適化された点火は、主として燃料効率に合わせて最適化された点火とは、わずかに異なるパワー量を提供する可能性がある。
【0116】
上述したコントローラは、いかなる条件下でも、うまく機能し、今日の多くの自動車で見られる種類の応答を実に模擬する傾向がある。しかし、所与のスロットル位置に対してエンジンによって送出される実際のパワー量は、環境条件および運転条件のうちの少なくとも一方の関数として、わずかに変化する可能性がある。コントローラは、要求される場合には、互いに異なる制御挙動を提供するように容易にセットアップできることを理解すべきである。たとえば所望出力信号を、エンジンからの指定パワー出力量に対する要求として取扱うように制御をセットアップしてもよい。このような一実施形態では、非常に単純化して言えば、シリンダのそれぞれ点火は、特定の仕事量を提供することと考えることができ、フィードバックは、この概念に基づく可能性がある。すなわちそれぞれのフィードバックされた点火時期は、シグマデルタコントローラに対して同じ量の負のフィードバックを送出する。
【0117】
実際のエンジンでは、特定のシリンダの点火から実際に得られる仕事量、パワー量、およびトルク量のうちの少なくとも一つが、常に同じになるとは限らないことを理解すべきである。多くの要因が、特定の点火から得られる熱力学的エネルギーに影響を及ぼす。これらの要因は、質量、シリンダに導入される空気の温度および圧力、燃料量、燃料の空燃比およびエネルギー含量、エンジン回転速度などを含んでいる。さまざまな実施形態では、フィードバックを調節して、およびフィードフォワードを使用して、あるいはそのいずれかによってコントローラの中で使用されるフィードバックが、それぞれ点火から期待される実際の仕事量(またはトルクまたはパワー)をより正確に反映するようにしてもよい。特定の実施形態では、点火の間のバラツキを説明するために、エンジンの運転条件の変化とともに、および適切な情報が入手できたときに、あるいはそのいずれかのときにフィードバックを調節できる。点火の間のバラツキは、以下の要因、すなわちシリンダに送出される燃料必要量(たとえば希薄な、濃い、通常の燃料必要量の間のバラツキなど)のような制御された要因、互いに異なるシリンダに互いに異なる空気量を導入する結果になる吸気マニホールドランナーの形状の差異などの固有要因、現在のエンジン回転速度、点火履歴などのような運転要因、および周囲空気温度および圧力などのような環境要因に起因する可能性がある。
【0118】
ほとんどの最新の自動車エンジンが、任意の特定の点火によって得られる実際のエネルギー量の推定を支援するために使用できる、エンジン制御ユニットで利用できるようにされたさまざまなセンサを有している。一例として、吸気圧(MAP)、質量空気流量、給気温度、カムタイミング、エンジン回転速度(rpm)、噴射タイミング、スパークタイミング、排気酸素レベル、排気背圧(特にターボチャージャ付きエンジンにおいて)、排気ガス再循環、および特定のエンジンで利用できる可能性がある他の任意の入力などの入力変数は、すべてが、現在の点火から期待される有用な仕事量の推定を支援するために使用できるとともに、制御回路へのフィードバックを適切に調整するために使用できる。従って、コントローラに提供されるフィードバックは、これらの要因を組合わせたもの、またはそれぞれ単独の要因のいずれかの関数として変化するように構成されていてもよい。フィードバックのこのような微調整は、いくつかの用途では好ましいかもしれないが、このような微調整が、すべての用途で必要なわけではないことを理解すべきである。
【0119】
実際には、任意の特定の点火から得られる実際の仕事は、特定のエンジンで利用できる
限られた数の入力(たとえば供給される燃料量だけ、供給される空気量および燃料量ならびにエンジン回転速度だけなど)に基づき推定してもよい。もちろん、出力を推定する他の方法もまた同様に使用できる。これらの推定値は、運転中に動的に計算でき、コントローラによってアクセス可能なルックアップテーブル内に提供でき、または他のさまざまな方法を用いて決定できる。
【0120】
さらに、エンジンによって出力されるパワーまたはトルクが同じレベルになり始める領域で、または減少し始める領域で、エンジンが作動し始めたとき、運転状態を認識して、適切に応答するように駆動パルス発生器104を設計できる。いくつかの実施形態では、これは、連続可変排気量モードを単に切って、従来の制御を用いて運転することによって達成してもよい。他のいくつかの実施形態では、駆動パルス発生器104は、出力された駆動パルスを適宜に調節するように適合されてもよい。もちろん、他のさまざまな方法もまた同様に、これらの状況に対処するために使用できる。パーシャル駆動パルス/スロットル点火を行う状況では、フィードバックを拡大縮小して、抑制した燃料点火によって生成された抑制したエネルギーをより正確に反映するようにしてもよい。
【0121】
入力信号を、所望パワー出力の指示として取扱うように設計されているコントローラでは、それぞれ点火に関連するフィードバック量を拡大縮小して、それぞれ点火から得られるエネルギー量を反映するようにしてもよい。いくつかの位置からフィードバックを取り込むコントローラでは(たとえば
図3に示すように)、それぞれ供給源からのフィードバックを適切な比率で拡大縮小して、全体のフィードバックが、特定の点火によって供給されるパワーを比較的正確に反映するようになっている。デジタルシステムでは、特定の点火から期待されるパワーを反映するように、提供されるフィードバック量を適切に設定してもよいことが分かる。アナログシグマデルタシステムでは、フィードバックパルスの「幅」がエンジン回転速度を示し、全体のフィードバック量が、関連する点火から得られるエネルギーに対応するように、フィードバックパルスの「高さ」が拡大縮小される。
【0122】
上述の実施形態のほとんどでは、駆動されるシステムからのフィードバック(たとえばシンクロナイザ222によって出力される駆動パルスパターン110および実際の点火パターン120のうちの少なくとも一方)が、明確なフィードバック信号に基づくことを想定している。しかし、いくつかの実施形態では、コントローラに利用できる可能性がある他の信号から、必要な情報を得ることができることを理解すべきである。たとえば作動チャンバのそれぞれの実際の点火は、エンジン回転速度に何らかの影響を及ぼすであろう(すなわち作動チャンバのそれぞれの実際の点火は、エンジン回転速度を増加させるであろう)。その変化は、駆動される機械システムに及ぼす影響の点から見ると非常に小さいかもしれないが、このような変化は、最新の電子信号処理技術を用いて容易に検出できる可能性がある。従って、その要求があり、かつ回転速度計信号が十分正確であるときには、実際の点火パターンフィードバックを、必要に応じて回転速度計(エンジン回転速度)信号から得ることができる。一般に、フィードバックは、その情報の中に点火パターンが埋め込まれている兆候がある情報を有し、コントローラに利用できる任意の信号供給源から得てもよい。
【0123】
図18を参照して、点火パターンを決定する際にフィードバックとフィードフォワードとの両方を利用する本発明の他の実施形態を説明する。この実施形態では、コントローラ600が、それぞれ点火によって供給される駆動エネルギーのバラツキを相殺するように構成されている。また
図18は、上述のエンジンコントローラのいずれかによって制御される可能性がある点火に加えて、他のエンジン制御の一部を説明している。図示の実施形態では、アクセルペダル位置の指示を、ペダル位置信号を前処理するように構成されたプリプロセッサ181に供給する。上述のように、ペダル位置信号は、エンジンの所望出力の指示として取扱われる。プリプロセッサ181の目的は、下記のプリプロセッサ段階と
名付けた項で、さらに詳細に説明する。前処理されたペダル信号を乗算器601に供給し、この乗算器601は、ペダル信号に、点火によって供給される駆動エネルギーのバラツキを相殺するのに適切な係数を掛ける。これは、運転中に生じるバラツキに合わせてコントローラを調節するためにフィードフォワードを使用する実施例である。係数処理した所望出力信号を、駆動パルス信号110を生成する駆動パルス発生器104に供給する。駆動パルス信号110を、上述のように実際の点火パターン120を決定するシーケンサ108に供給する。点火パターン120を使用してエンジン604のシリンダ点火を制御する。
【0124】
またエンジンコントローラ600は、スロットル位置、スパークタイミング、および噴射器などの他のエンジン変数を制御するように構成されている。図示の実施形態では、エンジン制御ブロック620が、構成要素コントローラに命令して、エンジンの効率的または最適化された運転を促進する形で、構成要素コントローラに関連する構成要素を制御させるように構成されている。エンジン制御ブロック620は、エンジンが効率的に運転できるように、さまざまな制御可能構成要素のいずれかに対する所望の設定を決定するように構成されている。一般に、適切な設定は、適切なルックアップテーブルから入手できるであろう。しかし、要求される場合には、現在の運転条件および環境条件のうちの少なくとも一方に基づき適切な設定を動的に計算できる。
【0125】
図示の実施形態では、エンジン制御ブロック620は、スロットルコントローラ621と、スパークタイミングコントローラ624と、噴射コントローラ627とを含んでいる。他の実施形態では、エンジン制御ブロックは、特定のエンジンまたは自動車の他の制御可能構成要素を制御するのにふさわしい付加的なデバイスドライバを含んでいてもよい。このような例の1つは、自動変速機を制御する変速機コントローラである。さらに他の実施形態では、ストックECUを使用して、エンジン制御ブロックのこれらの機能を処理することができる。
【0126】
エンジン制御ブロック620は、現在のエンジン回転速度(rpm)、吸気圧(MAP)、車輪速度、利用可能な環境センサなどを含む多くのセンサ入力を受信する。またエンジン制御ブロック620は、現在の条件に基づき所望の(たとえば最適化された)点火を提供するために所望の設定を保存するひと続きのルックアップテーブルを有している。簡単なシステムでは、これらの変数は、所望の燃料必要量と、スパークタイミングと、吸気圧とを含む可能性がある。ルックアップテーブルは、エンジンの回転速度、現在の環境条件およびエンジンの運転状態の他の態様のうちの少なくとも一方などの要因に基づく多次元マップであってもよい。その後、所望の点火を得るために、個別のコントローラが、それらの関連する構成要素を制御する。既存のエンジンコントローラ技術は、これらの構成要素の制御を処理するのに非常によく適しているため、このような機能をエンジン制御ブロックに容易に組込むことができることを理解すべきである。またこれらの制御は、排ガス制御などの他の問題に対応するために実際の設定(たとえば燃料必要量など)の一部を変更してもよい。さまざまな構成要素コントローラで使用される個別の制御スキーム、アルゴリズム、および優先順位付けは、任意の特定用途の要求を満たすために大きく変更してもよいことを理解すべきである。たとえば上述のように、いくつかの状況では、比較的一定の吸気圧を保持することが好ましい可能性がある。具体的な運転条件に対する所望吸気圧を、噴射マップ内のルックアップテーブルの一部として保存できる。この情報を、現在の吸気圧、現在のエンジン回転速度(たとえばrpm)などの利用できる適切なセンサ入力を受信するスロットルコントローラに伝えてもよい。これらの入力に基づき、スロットルコントローラは所望吸気圧を供給するようにスロットルを制御するように構成されていてもよい。
【0127】
またエンジンの設定および現在の運転条件に基づき、エンジン制御ブロック620は、
標準的な点火が公称駆動エネルギーに対して供給することになる駆動エネルギー量を決定できる。その後、点火の期待される駆動エネルギーと、点火の公称駆動エネルギーとの間の差を相殺するために、乗算器601に供給する適切な乗数を計算できる。たとえば点火から期待される駆動エネルギーが公称駆動エネルギーの95%であるときには、乗算器はペダル入力に95%の逆数を掛けるように構成されていてもよい。最適化された点火の間にこのように乗算器を使用することによって、コントローラはアクセルペダル位置を、所望パワーに対する要求として事実上取扱うことができる。
【0128】
また上述のように、スキップファイア可変排気量モードのままで、パーシャルスロットルで運転することが好ましい時もある。乗算器は、このようなパーシャルスロットル運転もまた同様に促進するために使用できる。たとえば半エネルギー点火を利用する決定が下されると、エンジン制御ブロック620は、それぞれ点火が駆動エネルギーの約半分を供給するようにスロットルおよび燃料必要量を適切に設定してもよい。またその際、乗算器に供給する乗数を「2」と設定してもよい。これは駆動パルス発生器104に、所望出力を供給するには2倍多い点火が必要であることを事実上伝えている。乗算器をこのように使用することで、ほとんどいかなる所望レベルのパーシャルスロットル運転でも容易に行うことができることを理解すべきである。
【0129】
図18に示すエンジンコントローラアーキテクチャが、たった1つの好適な実施態様を模式的に示していることと、所望機能を実行するために、および制御可能エンジン構成要素に対して適切に命令するために、エンジンコントローラのアーキテクチャを大きく変更してもよいこととを理解すべきである。またいかなる所与の実施態様においても、所望パワーに基づく制御と、パーシャルスロットル運転との両方、またはそれらの機能のうちの1つだけを促進するために、上述の乗算器を使用してもよいことを理解すべきである。
【0130】
いくつかの実施態様では、車速設定装置と併用して上述のスキップファイア運転モードを利用することが好ましいであろう。一般に、上述のように車速設定装置と併用して同じ点火制御ユニットを使用して、ちょうど今日の車速設定装置が動作するように車速設定装置が入力信号113を供給してもよい。
【0131】
さらに他の実施形態では、車速設定装置機能を駆動パルス発生器104に組込むことさえできるが、入力信号113の解釈およびコントローラへのフィードバックを適切に変更する必要がある。通常、車速設定装置は、一定のパワー出力とは対照的に、一定の自動車速度を維持しようとする。車速設定装置として機能するために、アクセルペダル位置の指示の代わりに所望速度の指示を入力信号113として使用してもよい。所望の速度入力信号は、車速設定ユニットからまたは他の任意の適切な供給源から、直接的または間接的にもたらされてもよい。このような実施態様では、駆動パルス発生器104に供給されるフィードバックは、特定の点火とは対照的に、自動車の現在速度を示している。所望速度の指示は任意の好適な供給源から来てもよく、たとえば1つ以上の車輪速度センサ、速度計、または他の適切な供給源から来てもよい。自動車が車速設定装置から移行するとき、入力信号およびフィードバックは、必要に応じて、それぞれ所望出力信号および点火を示すフィードバックに復帰することができる。あるいは、自動車が車速設定装置から移行するときに存在する状態がスキップファイア運転には適さない場合、シリンダのすべてが常に点火されている従来の運転モードに自動車を移行させることができる。
【0132】
本明細書の記述では、多くの互いに異なるフィードバックおよびフィードフォワード方法を説明している。これらの方法のどれも、具体的な用途で適切に動作するように実行できる。使用する方法の選択がエンジンの性能および効率に影響を及ぼすことになり、特定のフィードバック方法の選択がエンジンの所望の性能特性に基づいていてもよい。
【0133】
(現在のエンジンの改造)
現在市販されている可変排気量エンジンでは、多くの場合、列をなしている、選択されたシリンダを閉鎖し、残存シリンダを、それらの通常運転モードで使用する。シリンダの一部を閉鎖しているときには少ないシリンダだけが作動しているため、残存シリンダは、シリンダのすべてが作動しているときよりも効率的な条件で作動する。しかし、残存シリンダは、まだ依然として、それらの最適効率では作動していない。
【0134】
従来の可変排気量エンジンの選択されたシリンダが閉鎖されると、それらのシリンダに関連する弁は通常閉じ、エンジンの運転中、閉じたままである。電子弁を有していないエンジンでは、これを実現するには、カムシャフトから弁を選択的に切り離すための、より複雑な機械的構造および協調努力を必要とする。その結果、市販の可変排気量エンジンは、互いに異なる排気量の間を迅速に行き来するようには設計されていない。
【0135】
従来の市販の可変排気量エンジンにおいて、閉鎖されたシリンダの弁を閉じたままにする1つの理由は、スキップされたシリンダの弁がそれらの通常回数開閉するとき、閉鎖されたシリンダで本質的に生じるポンプ損失の低減を促進するためである。上述の連続可変排気量モードで運転しているときに弁がそれらの通常回数開閉すると、同じ種類のポンプ損失が生じるであろう。従って、弁の開閉の選択的制御を有しているエンジンで使用されるとき、スキップされるシリンダの吸気弁および排気弁を閉じることが好ましい可能性がある。しかし、スキップされたシリンダの弁がそれらの通常回数開閉する場合でさえ、エンジンの燃料効率および熱力学的効率が実質的に向上するであろう。
【0136】
閉鎖されたシリンダに関連する弁を閉じることが必要だと分かると、既存の固定排気量内燃機関を可変排気量エンジンに転用することは非現実的であるとの印象につながったかもしれない。本発明の1つの非常に大きな利点は、適切なコントローラを多くの既存エンジン上に容易に取り付けて、それらの既存エンジンを改造して、それらの燃料効率を大幅に向上させることができることである。スキップされたシリンダの弁を閉じることができない、または現実的ではない場合、これは既存エンジンの大部分に当てはまるが、このような場合でさえ、上述のことは正しい。エンジン制御ユニット(エンジン制御モジュールと呼ばれることも多い)を、本発明の制御を組込んだ改良したエンジン制御ユニットと交換することによって、本発明の制御を組込んだ点火制御コプロセッサまたはコプロセッシングユニットを、既存エンジン制御ユニットに接続することによって、または他の方法で上述の制御を既存エンジン制御ユニットに組込むことによって、改造することができる。
【0137】
従来の可変排気量エンジンにおいて、閉鎖されたシリンダに関連する弁を閉位置に保持する他の理由は、スキップされ燃料供給のないシリンダに関連する弁が通常通り開閉した場合に排気ガス流内に存在するであろう非常に大きな酸素量のせいで、排ガス制御ユニットがエンジンの運転を変化させようとしないことを保証するためである。具体的に言うと、空気がシリンダの中に吸引されて、シリンダから排出される前に燃焼しないときには、排出されるガスは、燃料をシリンダの中に噴射して燃焼したとき(存在する酸素の大部分を消費する効果を有しているであろう)に存在しているであろうよりも劇的に多くの酸素を有しているであろう。多くのエンジンは、排気ガス流内に存在する酸素量を検出するために排気ガス酸素センサを有している。酸素センサは排ガス制御ユニットに情報を提供し、この排ガス制御ユニットはその情報を利用してエンジン動作の管理を促進し、排気ガス排出が最小になって環境規制に適合することを保証する。連続可変排気量モードで運転しているときに、スキップされたシリンダの弁が従来通りに開閉できる場合、排気ガスは、排ガス制御ユニットが予想するよりもはるかに多い酸素を有しているであろう。従って、排気ガス酸素センサを有するエンジンを、スキップされたシリンダの弁が通常の方法で開閉できるように運転するときには、酸素センサ信号を調節するか、もしくは無効にすること、または排気ガス中の酸素レベルに基づく任意の制御を調節して、排気中に予想される
余分な酸素を明らかにすること、が通常好ましいであろう。他の用途では、酸素センサを、エンジン制御ユニットまたは点火制御コプロセッサに連動する広帯域ラムダセンサと交換することが好ましいか、または必要である可能性がある。さらに、上述のように、排気される排ガスが触媒コンバータの良好な運転に適していることを保証するために、それぞれ点火で提供される燃料量を最適化すること、および部分的または燃料リッチ燃料必要量を定期的に供給すること、あるいはそのいずれかが、場合によっては好ましい可能性がある。
【0138】
現在のエンジンを改造するときに考慮することが好ましい可能性がある他の要因は、改造後に、エンジンを運転する(たとえば制御されるエンジンを含む自動車を運転する)「感覚」が、はっきり感じ得るほどには変わらないことを確かめようと試みることである。すなわち改造の前後でエンジンの感覚が同様であることが好ましい可能性がある。これを達成するのを支援する1つの方法は、エンジンを運転する感覚が大きく変化するかもしれないと気付いたときにはいつでも、エンジンを連続可変排気量モードから、スロットルを調節してシリンダをスキップしない「通常」運転モードに移行させることである。他の実施態様では、特定の状況で、可変排気量モードの制御を変更して、通常運転中に経験するであろう感覚に近い感覚を提供するようにしてもよい。
【0139】
一例として、アクセルペダルを解放したとき、多くの自動車(トラック、車などを含む)は顕著な「エンジンブレーキ」を経験する。連続可変排気量モードでは、作動チャンバに最大の空気を供給できるようにして、それによって、エンジンの熱力学的効率の最適化を促進するために、スロットルを全開付近に通常保持している。しかし、スロットルが全開のときには、エンジンが経験するポンプ損失が減少するため、使用者が感じるエンジンブレーキ量も目に見えて減少する可能性がある。いくつかの状況では、改造前の運転中に知覚されるエンジンブレーキ感覚を、より厳密に模擬しようと試みることが好ましい可能性がある。この場合も先と同様に、この試みは、アクセルペダルを解放するか、またはブレーキをかけるときにはいつでも、連続可変運転モードから通常運転モードにエンジンを移行させることによって達成できる。あるいは、依然として、連続可変排気量モードにおいて選択された点火をスキップする状態のままで、スロットルを部分的にまたは完全に閉じる(たとえば通常運転時に閉じるであろう程度までスロットルを閉じる)可能性もある。このような方法を使用してエンジンブレーキを促進するときには、スロットルが閉じているか、または部分的に閉じているせいで減少した、シリンダに供給されるであろう空気量に見合うように、点火される作動チャンバの中に導入される燃料量も調節されるであろう。
【0140】
既存エンジンの改造の議論に関連してエンジンブレーキの概念を検討しているが、たとえ新規のエンジンであっても、特定のエンジンの設計目標において、全開のスロットルで提供されるであろうエンジンブレーキよりも効果的なエンジンブレーキを要求する可能性があることを理解すべきである。従って、点火制御ユニット100は、スロットル位置を調節して、要望通りに所望のエンジンブレーキを提供するように構成されていてもよい。あるいは、または加えて、弁の開閉の選択的制御を促進するエンジン(たとえば電子弁を有しているエンジン)では、スキップされたシリンダの弁の開および閉、あるいは開または閉を調節して、改善されたエンジンブレーキを提供できる可能性がある。
【0141】
エンジンブレーキは、可変排気量モードでの運転時に再現することが好ましいかもしれないエンジンの「通常」の感覚のほんの一面に過ぎないことを理解すべきである。点火制御ユニット100は、エンジンの運転感覚の他の所望の態様もまた同様に再現するように設計されていてもよい。
【0142】
(排気および排ガスシステム)
自動車エンジン設計に詳しい人には明らかなように、多くの既存エンジンの排気システムは、排気ガスの予想される化学的性質および温度に合わせてある。連続可変排気量モードで運転しているときに、スキップされたシリンダの弁が従来の方法で開閉できる場合には、空気は点火されなかったシリンダを介して効果的に送り込まれる。このことは、スキップファイア運転の下で出力される排気ガスが、エンジンの通常運転時に予想される排気ガスとは非常に異なるプロファイルを有するという結果につながる。最も注目すべきなのは、点火されなかったシリンダを介して空気が送り込まれるときには、排気ガスは、エンジンの通常運転時に存在しているであろう酸素よりも多くの酸素(多くの場合、はるかに多い酸素)を有するだろうことである。またスキップされたシリンダを介して送り込まれた未燃焼空気は、点火されたシリンダから排出された排気ガスに比べて、はるかに冷たい。従来の多くの排ガスシステムは、点火されなかったシリンダを介して空気を送り込む場合に特有の冷たい酸素または余分な酸素のどちらも処理できない。従って、多くの用途において(特に点火されなかったシリンダを介して空気を送り込む用途において)、排気および排ガスシステムが、スキップファイア手法を用いて出力される排気ガスを処理できることを確認することが重要になる。
【0143】
問題の性質は、高い排ガス基準を満たすように要求され、パワーを調節するために作動チャンバへの空気送出を絞るように設計されたエンジン(たとえばほとんどの非ディーゼル自動車エンジン)において特に深刻である。このようなエンジンで利用される排気システムは触媒コンバータを有している場合が多く、この触媒コンバータは、スキップされたシリンダを介して空気を送り込む場合には本質的に存在する大量の酸素または比較的冷たい空気を処理するようには設計されていない。
【0144】
ほとんどのオットーサイクルエンジンとは異なり、ほとんどの市販のディーゼルエンジンはスロットルを絞らずに作動し、エンジン出力を制御するためにシリンダに送出される燃料量を調節する。従って、ディーゼルエンジンは、排気ガス中の酸素量が大きく変化する傾向がある。そのため、ディーゼルエンジンの排気システムは、多くのオットーサイクルエンジンで使用される排気システムよりも、はるかに幅広い排ガスの化学的性質を一般に処理するように構成されている。一例として、いくつかの自動車ディーゼルエンジンは排気ガスをきれいにするために洗浄システムを使用する。このような洗浄システムは、スキップされたシリンダを介して空気を送り込む場合に特有の酸素リッチパルスとさまざまな温度とを有する排気ガスを処理するのによく適している。もちろん、他のさまざまな排ガスシステムが、スキップファイア運転中に出力される排気ガスのプロファイルを処理できる場合には、それらの排ガスシステムもまた同様に使用してもよい。
【0145】
新規のエンジンを設計するときには、任意の特定の設計の要求を満たすように排気および排ガスシステムを容易に設計できる。しかし、上述の可変排気量モードで作動するように既存エンジンを改造するときには、多くの場合、排ガスおよび排気問題もまた同様に考慮する必要があるであろう。点火されないシリンダの弁をエンジンが閉じることができる場合には、既存の排気および排ガスシステムは、可変排気量モードでの運転中に生成された排気を通常処理できる。排気プロファイルの任意の所要の微調整は、上述のように点火時期の間に送出される燃料必要量を燃料プロセッサまたはエンジンコントローラ内のファームウェアまたはソフトウェアが適切に設定し、かつ時々変化させることによって、あるいはそのいずれかによって、通常達成できる。
【0146】
多くの既存エンジンは複雑な排ガスシステムを有していないため、それらの既存排気システムが、使用されないシリンダを介して空気を送り込むときに排気流中に存在する余分な酸素によって悪影響を受けることはない。これらのエンジンでは、より一貫した燃焼室条件で、より効率的にエンジンが作動していることで、より良好な排ガスプロファイルを提供するように燃料必要量を容易に調整できるため、排ガスは可変排気量モードでの運転
によって通常改善されるであろう。
【0147】
他の多くの既存エンジンは、点火されないシステムを介して送り込まれる余分な酸素を処理できない排ガスシステムを採用している。このようなエンジンでは、排気を通り抜ける余分な酸素および比較的冷たい空気のバーストを処理できるように排気および排ガスシステムのうちの少なくとも一方を変更する必要がある可能性がある。いくつかの用途では、これは、排気および排ガスシステムを、排気流を処理できるシステムと取り換えることを必要とする可能性がある。
【0148】
さらに他の実施形態では、点火された作動チャンバから排出される排気ガス用と、点火されなかったシリンダを介して送り込まれる空気用と、の2つの平行な排気経路を事実上提供することが好ましい可能性がある。これは、通常の排気および排ガスシステムに排気ガスを誘導する第1位置と、通常の排ガス装置を迂回させるとともに、その一方で、点火されなかったシリンダを介して送り込まれる空気を処理するのに必要である可能性がある任意の排ガス装置を有している他の排気経路に排気ガスを誘導する第2位置と、の2つの位置の間で切替えることができるフローディレクタを排気経路内に(たとえば排気マニホールド内に)挿入することによって、理論上達成できる。この構成によって、燃料プロセッサは、排気フローディレクタ(図示せず)を制御して、排気ガスを適切な経路に誘導する位置の間で交互に切替えることができる。このような制御は非常に簡単に実現できることを理解すべきであり、その理由は、それぞれ点火がいつ行われるかは燃料プロセッサには分かっており、点火と、その点火に対応してフローディレクタに到達する排気ガスと、の間の遅延が、エンジンの形状と現在の回転速度とに基づき比較的容易に決まるためである。
【0149】
さらに他の実施態様では、吸気マニホールドに(または吸気流路内の他の適切な位置に)1つ以上の高速弁を理論上挿入して、スキップされたシリンダに空気を送出するのを(すなわち空気がシリンダの吸気弁に到達する前に)妨げるように高速弁を制御する可能性がある。これは、点火されないシリンダを介した空気の送り込みを実質的に低減し、または無くすであろうとともに、それに対応して、既存の排気および排ガスシステムのうちの少なくとも一方の変更の必要性を無くすであろう。もちろん、他の実施形態では、エンジンに対して他の適切な変更を行って、(1)使用されないシリンダを介して空気を送り込まないこと、または(2)使用されないシリンダを介して送り込まれた任意の空気を排気および排ガスシステムが処理できること、のどちらかを保証できる。
【0150】
(壁濡れ問題)
従来の内燃機関で使用されるさまざまな互いに異なる燃料噴射方式がある。ポート噴射と呼ばれる1つの一般的な技術は、燃料吸気マニホールドの吸気ポートの中への燃料噴射を想定している。その後、燃料は、空気/燃料混合気をシリンダの吸気弁の開口部からシリンダの中に導入する前に、吸気マニホールド内の空気と混ざる。ほとんどのポート噴射方式では、燃料噴射特性(噴射器ターゲッティング、噴射時期、噴射噴霧エンベロープ、および噴射燃料液滴直径を含む)を最適化して、エンジン排ガスを減らし、性能を向上させ、および燃料経済性を改善するため、あるいはそのいずれかのために相当努力している。しかし、このようなエンジンをスキップファイアモードで運転するときには、異なる噴射特性が好ましい可能性がある。
【0151】
ポート噴射方式に対する既知の問題は、壁濡れと呼ばれている。特に燃料を吸気マニホールドの中に噴射して、若干の燃料が吸気マニホールドの側壁に衝突し、その結果、吸気マニホールド側壁上に燃料の薄膜が形成されるときに、壁濡れが発生する。マニホールドの側壁を覆う燃料量は、(a)噴射器からの燃料噴霧の、吸気弁に対する方向を含む噴射器ターゲッティングと、(b)噴射器からの燃料噴霧の幅を含む噴射噴霧エンベロープと
、(c)燃料滴径と、(d)弁が開閉する回数に対する燃料噴射の開始時間および終了時間を含む噴射時期とを含む多くの要因に基づき変化する。(吸気弁が閉じた後も噴射が続くと、閉じている弁に燃料が衝突して、吸気マニホールドの側壁の方に噴霧がはね返ってくるであろうということに注目すること)。
【0152】
点火されないシリンダを介して空気を送り込むスキップファイアモードでエンジンを運転する場合、壁濡れは、いくつかの特有の意味合いを有している。最も注目すべきことは、特定のシリンダが点火された後に、その特定のシリンダに隣接する吸気マニホールドの側壁が燃料で覆われ、しかもその特定のシリンダが次の点火時期の間には点火されないとき、吸気マニホールドの濡れた部分を通り過ぎる空気は、シリンダの側壁を濡らしている燃料膜の一部を通常蒸発させるであろう。吸気マニホールドの側壁を濡らしている燃料のこのような蒸発は、いくつかの潜在的影響を有している。1つの潜在的影響は、蒸発した燃料が、点火されないシリンダを介して排気へ送り込まれる可能性があることである。これは排気中の炭化水素レベルを高めて、燃料効率を減少させる。排気中に未燃焼炭化水素が存在している場合、それらは触媒コンバータによって消費される可能性が高くなる。排気容器内のあまりに多くの炭化水素は、やがて触媒コンバータの寿命を縮める可能性がある。壁濡れ蒸発の他の影響は、シリンダ用の燃料の一部が吸気マニホールドの側壁を事実上「再び濡らす」ために使われる可能性があるため、スキップされたシリンダが、この次に点火される予定のときに、シリンダが、より少ない燃料しか利用できない可能性があることである。
【0153】
壁濡れ損失の影響を減らすために、たとえば噴射の噴射時期または他の特性を変更することによって、噴射プロファイルを、壁濡れに左右されにくいプロファイルに変更することが好ましい可能性がある。また任意の特定のシリンダ点火において送出される燃料量を調節して、スキップされたシリンダが点火される時までに起こったと予想される蒸発濡れ壁損失を相殺することが好ましい可能性もある。もちろん、任意の所与の点火にふさわしい実際の追加燃料量はエンジンの運転状態によって大きく変化するであろうし、任意の適切な補正を使用してもよい。
【0154】
壁濡れに詳しい人には明らかなように、いくつかの既存エンジン設計では、吸気マニホールドの側壁上に存在している燃料量は、任意の1つのシリンダ点火の間に噴射される燃料量とほぼ同量か、または潜在的には任意の1つのシリンダ点火の間に噴射される燃料量よりもさらに多い可能性がある。スキップされた数周期の後に通常の燃料必要量を噴射すると、噴射される燃料のほとんどすべてが吸気マニホールドの側壁を「再び濡らす」ために使われるかもしれないというリスクと、適切に点火するのに十分な燃料をシリンダが受け取れないかもしれないという好ましくないリスクと、がある。これらの種類の状況において噴射される燃料量を調節することが特に好ましいことを理解すべきである。
【0155】
上述の実施形態のいくつかでは、シリンダの点火を事実上ランダムに選んでいる。壁濡れ損失または類似の種類の損失の影響を受けやすい燃料送出技術を有するエンジンでは、シリンダ点火においてこのようなランダム化を行うと、壁濡れ損失のせいで燃料効率の何らかの低下を本質的に経験するであろう。従って、適切な場合には、つい最近使用されたシリンダを優先するように点火を配列することが好ましい可能性がある。これは、シーケンサ108において適切なシリンダ点火優先順位付けアルゴリズムを用いて容易に実現できる。
【0156】
一例として、多シリンダエンジン用に設計された簡単なシーケンサ108は、指定数よりも多い要求された点火(たとえば2つ以上の要求された点火、または2つの要求された点火)がシーケンサ108の待ち行列に入っている場合を除いて、そのシリンダの前回の点火時期の間に点火されたシリンダだけを点火するようにプログラムしてもよい。あるい
は、前回のラウンドで点火されたシリンダを点火することによって、それを満たすことができるとき、シーケンサ108は点火時期の回数が指定回数になるまで(たとえば2回または3回の点火時期まで)の間、要求された点火を遅延させるようにプログラムしてもよい。これらの実施形態は、あくまで配列ロジックの開発に通じる可能性がある検討事項の種類の例を意図しているに過ぎない。適切なロジックは、互いに異なるエンジンの間で、および互いに異なる設計優先事項に基づき、大きく変化してもよいということを理解すべきである。もちろん、かなり高性能なロジックが配列アルゴリズムに組込まれていてもよく、通常組込まれているであろう。一般に、壁濡れ損失の低減を目指す実施形態では、点火のうちの実際の点火の大多数が、それらの作動チャンバの前回の作動周期の間に点火された作動チャンバで行われることを確保するようにシーケンサ108を設計することが好ましい。一例として、作動チャンバのうちの50%未満しか実際に点火されないときでさえ、点火のうちの少なくとも75%が、それらの作動チャンバの前回の作動周期の間に点火された作動チャンバで行われることを確保することが好ましい可能性がある。
【0157】
ここでは、壁濡れ損失と、それに対応する排出量の増加とを抑制する他の点火制御方法を説明する。この実施形態では、シリンダのすべてをランダム化する代わりに、1つのシリンダだけ(またはシリンダの小さい部分集合)が、その時々にランダム化される。他のシリンダは常に点火されるか、またはまったく点火されないかのどちらかである。説明のために、最適化された効率で(たとえばそれらの最大圧縮および最適空燃比で)作動する2つと半分(2+1/2)のシリンダの出力を要求するように6気筒エンジンを運転しているシナリオを検討する。理論上、シリンダのうちの2つに常に点火して、第3気筒に半分の時間だけ点火することによって、適切な量のパワーを送出する可能性がある。比較的少量の追加パワーが要求されているときには、第3気筒を制御して、より多めの時間割合で点火し、エンジンのパワー出力を増やして要求を満たすようにしてもよい。少し低めのパワーが要求されているときには、より少ない時間割合だけ第3気筒を点火して、エンジンの低減した出力要件を満たすようにしてもよい。3つのシリンダに常に点火することによって送出できるパワーよりも多くのパワーが要求されているときには、3つのシリンダに常に点火してもよく、他のシリンダ(たとえば第4気筒)を制御して、要求される追加パワーを送出するようにしてもよい。より多くのパワーが要求されているときには、点火されるシリンダセットに追加シリンダを加えてもよい。より少ないパワーが要求されているときには、点火されるシリンダセットからシリンダを取り除いてもよい。この配列方法は、本明細書では単シリンダ変調スキップファイア手法と一般に呼んでいる。
【0158】
単シリンダ変調スキップファイア手法の1つの利点は、壁濡れ損失、対応する燃料効率の低下、およびある特定の種類のエンジン(たとえばポート噴射式エンジン)で生じる排ガス問題の増大を大幅に抑制する傾向があることである。副次的な利点は、単シリンダ変調スキップファイア手法は良好な振動特性を有する傾向がある(すなわちその手法は他の多くの点火パターンよりも振動発生が少ない傾向がある)ことである。これは、点火パターンの変動の頻度が減少する(たとえばエンジンが有しているシリンダ数に等しい係数だけ減少する)という事実に起因すると考えられる。
【0159】
上述の単シリンダ変調スキップファイア手法は、さまざまな互いに異なる構成を用いて実現できる。たとえば上述のシーケンサ108は、このような点火パターンを送出するように容易に構成できる。単シリンダ変調スキップファイア手法は、アルゴリズム的に、または上述の他の実施形態のいずれかに従って駆動パルス発生器104を用いながらシーケンサ108内のロジックで、実現できる。あるいは、利用可能なシリンダの部分集合だけの点火を制御する専用の駆動パルス発生器104を組込んだ互いに異なる制御アーキテクチャを利用してもよい。一例として、単シリンダ変調スキップファイアを提供するのに特によく適合している他のコントローラアーキテクチャを、
図12を参照して後述する。
【0160】
壁濡れ問題に詳しい人には明らかなように、直接噴射エンジンにはポート噴射エンジンが経験する壁濡れ問題のほとんどを回避する傾向がある(しかし、直接噴射エンジンでさえ、シリンダ側壁上に燃料のわずかな膜の形成を経験する可能性がある)。従って、上述のスキップファイア可変排気量エンジンの利点の一部は、ポート噴射エンジンよりも直接噴射エンジンにおいて、より顕著である。しかし、壁濡れ問題の管理をうまく行えば、ポート噴射システムは、直接噴射システムで得られている効率に近い効率を達成できる。
【0161】
(燃料制御プロセッサ)
上述の制御は、さまざまな互いに異なる方法で実現できる。上述の制御は、デジタルロジックを用いて、アナログロジックを用いて、アルゴリズム的に、または他の任意の適切な方法で、達成できる。いくつかの実施形態では、連続可変制御ロジックは、エンジン制御ユニット(ECU。ECUはECM(エンジン制御モジュール)とも呼ばれることがある)に組込まれるであろう。他の実施形態では、連続可変排気量モード制御ロジックは、既存のエンジン制御ユニットに連動して作動するように構成された点火制御コプロセッサまたはコプロセッシングユニットに組込むことができる。
【0162】
技術が発展するとともに、連続可変排気量モード制御ロジックは、新規の自動車またはエンジンに搭載されるエンジン制御ユニットに組込まれるであろうと予想される。これは特に有利であり、その理由は、連続可変排気量モード制御ロジックによって、連続可変排気量モードを用いてエンジン性能を向上させるために利用できるエンジンの機能のすべてをECUが容易に利用できるようになるためである。
【0163】
また今日、路上にある自動車用に(ならびに他の既存のエンジンおよびエンジン設計用、あるいは他の既存のエンジンまたはエンジン設計用に)連続可変排気量モードを組込んだ新規のECUも開発できる。このようなECUを開発すると、単に既存のECUを、可変排気量モードを組込んだ改良されたECUに取り替えるだけで既存エンジンを容易に改造できる。
【0164】
あるいは、現在の自動車エンジン制御設計に詳しい人には明らかなように、ほとんどの最新モデルの自動車のエンジン制御ユニットは、サードパーティデバイスがエンジン制御ユニットとインタフェースをとって連動できるように構成されている。これらのインタフェースはエンジン診断を少なくとも部分的に促進するために提供される場合が多いが、しかし、ターボチャージャ、スーパーチャージャなどのさまざまなサードパーティ製品は、製造元の保証を無効にすることなく、このようなインタフェースを利用してエンジンに連動するように設計された制御コプロセッサを含んでいる。これらのインタフェースを使用して、連続可変制御ロジックを組込んだ低価格の点火制御コプロセッサを改造部として取り付けて、今日、路上にある自動車の燃料効率を大幅に向上できる可能性があることは有利である。
【0165】
(点火制御コプロセッサ)
図6を参照して、本発明の一実施形態の点火制御コプロセッサ(場合によっては燃料コプロセッサとも呼ばれる)を含むエンジン制御アーキテクチャを説明する。エンジン制御システム300は、従来のエンジン制御ユニット(ECU)305と、
図2に示すロジックのような連続可変排気量モード制御ロジックを組込んだ点火制御コプロセッサ320とを含んでいる。この設計は、上述の連続可変排気量運転モードを組込むために既存エンジンを改造するのに特によく適合している。
【0166】
当業者には明らかなように、既存のECUと、それらのそれぞれインタフェースとの設計は大きく変化し、従って、点火制御コプロセッサは、エンジンに搭載された特定のECUに連動するように適合され設計されていなければならない。概念的に言えば、ECUは
、ECUによって要求される信号とセンサ入力とを送出する複数の入力ラインを有する入力ケーブル325と、ECUによって供給される制御出力と他の出力とを、他の装置に送出する複数の出力ラインを含む出力ケーブル327とを通常含んでいる。実際には、入出力ケーブルは、単一のケーブル束、もしくは入出力ラインを混ぜた複数の束にまとめてもよく、およびいくつかの二重I/Oラインを含んでいてもよく、あるいはそのいずれかでもよい。
【0167】
ほとんどの最新モデルの自動車エンジン制御ユニット(ECU)は、サードパーティデバイスがECUと相互作用できるようにする外部インタフェースを有している。多くの場合、このインタフェースは診断インタフェースの形態を取る。
図6に示す実施形態のECU300は外部診断インタフェース310を含んでおり、点火制御コプロセッサ320は診断インタフェースを介してECUに通信する。具体的に言うと、ECUバスケーブル331が点火制御コプロセッサ320を診断インタフェース310に接続している。入力ケーブル325は、入力信号をECU305と点火制御コプロセッサ320の両方に送出するスプリッタ333に接続されている。従って、コプロセッサは、コプロセッサが利用できる情報のすべてを有し、この情報はECUも利用できる。連続可変排気量モードで運転するとき、点火制御コプロセッサはECUバスケーブル331を介してECUに通信し、ECUによって計算されたスロットルおよび燃料噴射レベル命令を無効にして、代わりに、点火制御コプロセッサによって適切と判断された点火およびスロットル位置を命令する。またコプロセッサは他の入力(酸素センサ入力など)を必要に応じて無効にして、エンジンのシステムの残部が正確に作動していることを保証する。
【0168】
図11は、他の点火制御コプロセッサの実施形態を示している。図示の実施形態では、エンジン制御システム300(a)は、従来のエンジン制御ユニット(ECU)305と、連続可変排気量モード制御ロジックを組込んだ点火制御コプロセッサ320(a)と、マルチプレクサ342とを含んでいる。この実施形態では、点火制御コプロセッサ320(a)は、(ECU305に加えて)噴射器ドライバのセット(燃料噴射器のそれぞれに1つずつ)を含んでおり、点火制御コプロセッサ自体が燃料噴射器を駆動できるようになっている。この構成では、ECU305および点火制御コプロセッサ320(a)は並行して作動し、それぞれが入力ケーブル325から入力を受信して、両方ともが適切なエンジン制御を判断して、マルチプレクサ342に供給される。エンジンが連続可変排気量モードで作動しているときには、マルチプレクサ342は、点火制御コプロセッサ320(a)から受信した信号だけを燃料噴射器(および点火制御コプロセッサによって制御される他の任意の構成要素)に送出するように命令される。エンジンが可変排気量モードから抜けたときにはいつでも、マルチプレクサ342は、ECUから受信した信号だけを燃料噴射器(および他の構成要素)に送出するように命令される。通常運転モードと可変排気量運転モードの両方でECUによって制御されている任意の構成要素は、常にECUによって直接に制御される。
【0169】
燃料噴射器ドライバは製造するのにいくぶん比較的費用がかかる可能性があることを理解すべきであり、その理由の1つは、それらが(エンジンコントローラとの関連で)比較的高出力のデバイスであるためである。従って、噴射器ドライバの手前での上述の多重化は好ましい特徴である。実際、ロジックレベルで(すなわち高電圧信号または高出力信号がかかわってくる前に)多重化することは特に好ましい。
【0170】
図11の実施形態では、点火制御コプロセッサ320(a)は診断インタフェース310を通じてECUバスケーブル331を介してECUに通信し、エンジンが可変排気量モードで作動する場合には、修正する必要がある任意の入力信号(酸素センサ信号などの)を無効にするように構成されている。
【0171】
図15を参照して、本発明のさらに他の実施形態の点火制御コプロセッサを含む他のエンジン制御アーキテクチャを説明する。先行する実施形態のように、ECU305に向かうことになっているセンサおよび他の入力はスプリッタ337で分割され、燃料コプロセッサ449に同時に供給される。その後、ECU305と燃料コプロセッサ449の両方からの出力制御信号は、マルチプレクサ454に供給される。
【0172】
一実施形態では、燃料コプロセッサ449は、燃料モード制御モジュール450を含んでいる。燃料モード制御モジュール450は、連続可変排気量(スキップファイア)モードでエンジンを運転すべきかどうかを判断する。燃料モード制御モジュール450の出力は、マルチプレクサ454を制御する選択ライン452である可能性がある。
【0173】
図15を参照して説明する実施形態では、マルチプレクサ454はロジックレベルで実施される。すなわち低電圧のデジタル信号ラインが、ECUおよび燃料コプロセッサ449からマルチプレクサ454に直接供給される。選択ライン452は、マルチプレクサ454によって通り抜けることを許されるのはどちらの出力信号のセットかを制御する。このようなデジタルロジックラインの電圧は一般に6Vよりも低い。
【0174】
マルチプレクサ454によって多重化されるべき信号の個数は、実施態様に従って変化する可能性がある。
図15に示す実施例では、スパークと燃料噴射とに対する出力だけが示され、それらのラインの個数もまた特定のエンジンのシリンダ数に従って変化するであろう。選択ライン452の幅は、多重化されている制御ロジックラインの個数に依存するであろう。
【0175】
マルチプレクサ454の出力は、スパークプラグドライバ460および燃料噴射器ドライバ456に供給される。スパークプラグドライバ460は、それらの入力制御信号の出どころが燃料コプロセッサ449なのか、またはストックECU305なのかを知っている必要はない。スパークプラグドライバ460は入力制御信号を使用して、点火される予定のスパークプラグに対する適切な電気インパルスを生成するであろう。同様に、燃料噴射器ドライバ456は、それらの入力制御信号の出どころが燃料コプロセッサ449なのか、またはストックECU305なのかを知っている必要はない。燃料噴射器ドライバ456は入力制御信号を使用して、利用される予定の1つ以上の噴射器を作動させる適切な電気インパルスを生成するであろう。
【0176】
図16は、燃料コプロセッサ449に対する他の構成を示し、ここで
図16を参照しながら説明する。この実施形態では、燃料コプロセッサ449とECU305との出力信号は、最初に、これらの信号で制御されるドライバに供給される。たとえばECU305からの燃料噴射制御信号は燃料噴射ドライバ470に供給され、他方、燃料コプロセッサ449からの燃料噴射制御信号は燃料噴射ドライバ472に供給される。同様に、ECU305からのスパークプラグ制御信号はスパークプラグドライバ476に供給され、他方、燃料コプロセッサ449からのスパークプラグ制御信号はスパークプラグドライバ478に供給される。
【0177】
その後、より高電圧のドライバ制御信号がマルチプレクサ474に供給され、このマルチプレクサ474は上述のように燃料モード制御モジュール450によって選択ライン452を用いて制御される。
【0178】
図17は、実施例の燃料コプロセッサ449の考えられる入出力信号の一部を示している。入力信号の一部は、スキップファイア点火パターンを決定する際に排他的に使用してもよく、いくつかの入力信号は、連続可変排気量モードで運転すべきかどうかを(たとえば燃料モード制御モジュール450によって)判断するために排他的に使用してもよく、
いくつかの入力信号は両方の目的に使用してもよい。さらに他の入力信号は燃料コプロセッサ449に供給されて、エンジン制御ユニットに送出する前に調節されたり、または無効にされたりしてもよい。
【0179】
燃料コプロセッサ449の駆動パルス発生器104に対する入力としてアクセルを使用することについては既に上述している。アクセル入力信号は、ペダル、レバー、または他のアクセル位置センサとして供給できる。いくつかの用途では、アクセルはスロットルと通俗的に呼ばれる可能性があるが、実際のスロットル位置センサは燃料コプロセッサ449への別の入力である。
【0180】
燃料コプロセッサ449に対する他の入力の一部は、酸素センサまたはO
2センサとも呼ばれる1つ以上のラムダセンサと、クランクシャフトおよびカムシャフト角度センサと、冷媒と、吸気および排気ガス温度センサと、バタフライ弁の位置を感知するスロットル位置センサと、質量空気流量センサと、吸気および排気圧センサとを含んでいる。付加的な入力信号は、クラッチセンサと、ブレーキセンサと、車速設定装置センサとを含むことができる。クラッチおよびブレーキセンサは、一般に、これらの車両制御に対するバイナリ状態(作動/停止)を報告する。一般に、これらのセンサの大部分は、感知されたパラメータを時間とともに示すアナログ信号を出力するが、ほとんどのセンサのデジタル実現が可能である。
【0181】
一実施形態では、燃料コプロセッサ449は、燃料噴射ドライバおよびスパークプラグドライバに制御信号を出力する。これらの制御信号を用いて、作動周期ごとに、どの噴射器およびスパークプラグを作動させる予定であるのかを特定して、連続可変排気量モードを実現する。
【0182】
燃料コプロセッサ449の他の出力は、複製したセンサ信号および上書きしたセンサ信号を含むことができる。たとえば燃料コプロセッサ449がECU305と一列に並んでいるときには、入力センサ信号をECU305に供給する必要があるかもしれない。さらに、上述のように、燃料コプロセッサ449によって意図的に生成された条件にECU305が応答しないようにするために、ECU305に供給する前に、いくつかのセンサ示度を上書きしたり、または偽造したりする必要があるかもしれない。
【0183】
燃料コプロセッサ449の他の出力は、連続可変排気量モードで運転すべきかどうかを示す燃料モード制御信号である。
図15および
図16に示すように、この信号を使用して、ECU305と、燃料コプロセッサ449と、からのさまざまな制御ラインの間で選択するマルチプレクサ454を制御できる。
【0184】
さらに、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて燃料コプロセッサ449を実現するとき、燃料コプロセッサ449は、診断と、データ解析と、燃料コプロセッサ449の設定および構成と、ならびに燃料コプロセッサ449の低レベル構成を可能にするFPGAプログラミングインタフェースとを実行するユーザインタフェースのようないくつかの入出力インタフェースを含むことができる。また燃料コプロセッサ449は、付加的な車両周辺機器制御または解析機器の接続を可能にする拡張バスを含むことができる。
【0185】
点火制御コプロセッサは、単一チップソリューション、チップセット、ボードレベルソリューションで実現してもよい。たとえば一実施形態では、点火制御コプロセッサは、マザーボードと、マザーボードに連動するドーターボードとを含んでいてもよい。概念的に言えば、マザーボードは、さまざまな互いに異なるエンジンとともに使用できる比較的一般的なエンジンコントローラであることを目的としている。ドーターボードは、特定のエ
ンジンとともに使用するための専用ユニットであることを目的とし、特定のエンジンとマザーボードとの間の適切なインタフェースを提供するように設計されている。マザーボードおよびドーターボードは、それぞれ単一チップソリューションで実現されることが好ましい。しかし、そのレベルの一体化が実現されないとき、一方または両方をチップセットとして、または回路基板レベルで実現できる。マザーボード/ドーターボードアーキテクチャは、特に中心となる機能を提供するマザーボードは、互いに異なるエンジンとともに使用する際に再設計する必要がないため、互いに異なるエンジン用の燃料プロセッサの、より迅速な開発を促進するという点で有利である。むしろ、特定のエンジンまたは自動車などとともに使用する際、ドーターボードだけを適合させる必要がある。
【0186】
点火制御コプロセッサの具体的な配線を
図6および
図11に示しているが、他のさまざまな配線を利用できることを理解すべきである。たとえば入力信号の一部は点火制御コプロセッサの動作に関連しない可能性があるため、スプリッタ333は入力信号の一部だけを点火制御コプロセッサ320に送出するように設計してもよい。さらに、またはもう1つの方法として、点火制御コプロセッサによって変更される予定の入力信号は、最初にコプロセッサに入力されるように配線してもよく、その後、(潜在的に)変更された信号を点火制御コプロセッサからECUに供給してもよい。すなわち点火制御コプロセッサは入力信号の一部またはすべてを遮断して、それらをECUに送出する前に、必要に応じて、それらの信号の一部を変更してもよい。
【0187】
さらに他の実施形態では、出力ラインの一部またはすべてを、ECUではなく、むしろ燃料プロセッサに接続してもよい。これは、点火制御コプロセッサがエンジンのすべての運転における点火パターンを決定するように設計されている実施態様で特に適切である。
【0188】
上述の点火制御コプロセッサの実施形態のほとんどでは、点火制御コプロセッサはエンジン制御ユニットとは別のデバイスとして作られている。このような構成は多くの用途によく適している。しかし、長い目で見れば、上述のスキップファイア可変排気量制御をECUチップに組込むことが好ましいであろう。上述のスキップファイア可変排気量手法を実現するのに必要なロジックは比較的特化しているが、同じロジックブロックを使用して、さまざまな互いに異なるエンジンを制御できるため、多くの用途では、点火制御コプロセッサブロックを、他のECU機能のすべても含んでいる単一の集積回路ダイに組込むことが好ましい可能性がある。これは、いくつかのマイクロプロセッサチップが数値演算コプロセッサを同じダイに組込む方法に似ている可能性がある。一体化されたECU/点火制御コプロセッサアーキテクチャが、上述のスキップファイアエンジン制御を実現する費用のさらなる低減を促進できる。
【0189】
(電子弁および半周期運転)
従来の4ストローク往復ピストンエンジンでは、それぞれピストンの作動周期は、ピストンのすべての2番目の往復運動の後に(たとえばピストンの0番目、2番目、4番目、6番目、8番目…の往復運動の後に)だけ開始できる。従来のカムシャフトを利用して弁を開閉するエンジンでは、連続可変排気量モードでも同じである。すなわち吸気弁は、1つ以上の作動周期をスキップするときでさえ、クランクシャフトの1つおきの往復運動でのみ開くことができる。しかし、いくつかのより最近のエンジン設計では電子弁(すなわち機械的にではなく、むしろ電子的に開閉する弁)を組込んでいる。このようなエンジンでは、任意の所望の時間に弁を開けることができる。電子弁を有するエンジンを、エンジンの作動周期をスキップする可変排気量モードで運転するとき、作動周期の開始をエンジンの1つおきの往復運動に制限するいかなる固有の必要性も存在しない。従って、整数番目の作動周期(たとえば1番目、2番目、3番目…の作動周期)をスキップするようにコントローラを抑制するのではなく、むしろコントローラは半作動周期(たとえば1/2番目、1番目、1+1/2番目、2番目、2+1/2番目、3番目…の作動周期)でもまた
同様にスキップするように構成されていてもよい。これによってエンジンの正確さおよび応答性の円滑化と改善の両方を促進できる。また半周期で開始する可用性は駆動パルス信号において発現できるパターンの細分化を促進できるため、振動制御の見地からも有利である可能性がある。たとえば
図4に関して上述した簡単なシーケンシャルシーケンサを使用して点火パターンを生成するときには、「次」の作動周期が作動周期の中間時点と通常考えられるであろう時点で開始できるようにシーケンサ108を容易に適合できる。4ストロークピストンエンジンでは、このことは、ピストンの奇数番目の往復運動の後を含むピストンの任意の順番の往復運動の後に作動周期を開始できることを意味する。対照的に、従来の4ストロークピストンエンジンの作動周期は、ピストンの偶数番目の往復運動の後にだけ開始できる。もちろん、同じ原理は、より長い(たとえば6ストロークなどの)作動周期を有するピストンエンジンにも適用される。
【0190】
半周期(または部分的周期)での作動周期の開始手法は、任意の時点に弁を選択的に開閉する能力を有する任意のエンジンで使用できる。電子制御弁を有するエンジンは、現時点でこのような能力を有する唯一の市販のエンジンである。しかし、弁の開閉を制御するための磁気的、電磁的、機械的、または他の好適な技術を利用する他の弁制御技術が開発されたときには、それらもまた同様に容易に使用できる。
【0191】
弁の開閉のタイミングを制御するとき、ほとんどの現在の市販の可変排気量エンジンと同様に、スキップされた作動周期の間、弁を閉じたままにしてもよい。あるいは、通常運転で点火されたシリンダとは互いに異なる順序で弁を開閉してポンプ損失の低減を促進することが好ましい可能性がある。
【0192】
エンジンの任意の往復運動の間に作動周期を開始する能力は、現在のエンジン設計で実行できる運転とは非常に異なっていると考えられることを理解すべきである。
(可変クロックを有するシグマデルタコントローラ)
上述のように、さまざまな互いに異なるシグマデルタコントローラを含むさまざまな適応予測コントローラを駆動パルス発生器104で使用してもよい。上述のように、シグマデルタ制御回路202で可変クロックを使用できる。比較器216に対してエンジン回転速度に基づく可変クロックを用いると、シグマデルタ制御回路の出力をエンジンの動作に、より良く同期できる利点がある。これによって、駆動パルス発生器104のシンクロナイザ部分の全体設計の単純化を促進できる。
【0193】
図7を参照して、可変クロックシグマデルタコントローラ202(b)を組込んだ駆動パルス発生器104の他の実施形態を説明する。駆動パルス発生器104(b)は、
図3を参照して上述した駆動パルス発生器104(a)に非常に似た構造を有している。しかし、この実施形態では、比較器216に供給されるクロック信号217(b)は、エンジン回転速度に基づく可変クロック信号である。クロック信号は、エンジン回転速度の指示(たとえば回転速度計信号など)によって駆動されるフェーズロックループ234を利用することによってエンジン回転速度に一般に同期している。上述のように、シグマデルタコントローラが、サンプリングレート、従って、シンクロナイザ222によって出力される駆動パルスパターンの所望周波数よりも実質的に高い出力信号240(b)周波数、を有することが好ましい。この場合も先と同様に、オーバーサンプリング量が大きく変化する可能性がある。上述のように、所望の駆動パルス周波数の約100倍のオーバーサンプリングレートがうまく機能するため、図示の実施形態では、デバイダ252は、シンクロナイザロジックに供給されたクロック信号230を係数100で分割するように構成され、デバイダ252の出力は、比較器216に対するクロックとして使用される。この構成によって、比較器216の出力は、シンクロナイザ222によって出力される駆動パルスパターンの周波数の100倍の周波数を有することになる。もちろん、他の実施形態では、デバイダ252は、十分なオーバーサンプリングを提供する任意の整数によって信号を
分割するように構成されることができる。その他の点では、シグマデルタコントローラ202の他の構成要素は、
図3に関して上述したものと同じであってもよい。また上述のシンクロナイザ222およびシーケンサ108の設計のうち任意のもの、あるいは上述のシンクロナイザ222またはシーケンサ108の設計のうちの少なくとも一方のうち任意のもの、または他のさまざまなシンクロナイザおよびシーケンサ設計は、可変クロックシグマデルタコントローラ202(b)とともに使用してもよい。シグマデルタコントローラ202の出力をエンジン回転速度に同期させることの1つの利点は、より簡単なシンクロナイザ設計が可能になることである。
【0194】
(マルチビット比較器出力を有するシグマデルタコントローラ)
上述のように、いくつかの実施形態では、抑制したエネルギーシリンダ点火を利用することが好ましい可能性がある。抑制したエネルギー点火は、エンジンによって生成されている好ましくない振動が起こる可能性の低減を促進して、制御の微調整を容易にして、アイドリング中、またはエンジン回転速度が遅いときの運転を容易にすることなどを含むさまざまな目的に使用してもよい。抑制したエネルギー点火を促進するために、駆動パルス発生器104は、駆動パルスパターン内にいくつかのパーシャル駆動パルスを作り出して、抑制したエネルギー点火がいつ要求されているかを示すように構成されていてもよい。
【0195】
図8を参照して、マルチビット信号を出力するシグマデルタコントローラの修正を説明する。図示の実施形態では、シグマデルタコントローラのマルチビット出力はシンクロナイザ222によって使用されて、パーシャル駆動パルスを生成する。この実施形態では、シグマデルタコントローラ202(c)は上述の実施形態のいずれかに似た設計を有していてもよいが、しかし、比較器216(c)はマルチビット信号240(c)を出力するように構成されている。最初に説明する実施形態では、比較器216(c)は2ビット比較器であるため、出力信号240(c)は2ビット信号である。しかし、他の実施形態では、より高いビット比較器を提供してもよく、このより高いビット比較器はより高いビット出力信号240(c)をもたらすであろう。任意の特定用途の要求を満たすために、使用される実際のビット数を変更できる。
【0196】
マルチビット出力信号のさまざまな状態は、それぞれ関連する意味を有するように設定できる。たとえば2ビット比較器では、[0,0]出力信号はゼロ出力を反映する可能性があり、[1,1]出力信号は全信号出力、たとえば1である可能性があり、[0,1]出力信号は1/4信号を表すように構成されている可能性があり、[1,0]出力信号は1/2信号を表すように構成されている可能性がある。もちろん、2ビット比較器は、上述のように0、1/4、1/2、および1レベルとは互いに異なるレベルを表すさまざまな状態を有するように容易に設計されていてもよい。高次の比較器では、さらに多くの状態が利用できるであろう。たとえば3ビット比較器では、8個の状態が利用でき、4ビット比較器では、16個の状態が利用できるであろう、などである。
【0197】
マルチビット比較器シグマデルタ設計に詳しい人には明らかなように、比較器216(c)は、ノンゼロサンプルの何らかの(一般に制御可能な)割合を、中間レベル信号として出力するように構成されていてもよい。これらの中間信号は、部分的エネルギー駆動パルスと、抑制したエネルギー点火とに対する要求に対応するものとして、シンクロナイザ222およびシーケンサ208によって処理できる。たとえばシグマデルタコントローラ202(c)が、シンクロナイザ222(c)に駆動パルスを生成させるほど十分長い2分の1(1/2)レベル出力信号の列を出力するとき、出力される駆動パルスは半エネルギー駆動パルスである可能性がある。半エネルギー駆動パルスは、半エネルギー点火を命令するためにシーケンサ108(c)によって使用される。同じ種類のロジックが、他の(たとえば4分の1)レベルの出力信号に対して使用できる。比較器出力がマルチビット出力であるとき、シンクロナイザおよびシーケンサは、対応するマルチビット信号を容易
に処理して出力するように構成されることができる。
【0198】
マルチビット比較器シグマデルタコントローラは、同じ状態を有する拡張されたシンボル列を通常生成するように構成されていることを理解すべきである。従って、上述の一般的なシーケンサロジックのいずれかを使用して、シンクロナイザ222(c)に供給される信号240(c)と同じ状態を有する駆動パルスを出力できる。すなわちシンクロナイザによって出力される駆動パルスは、駆動パルスを生成させたシンクロナイザへの信号240(c)入力のレベルに合致するように構成されていてもよい。
【0199】
この場合も先と同様に、任意の特定用途の要求を満たすために、シンクロナイザ222(c)のロジックを最適化でき、および大きく変更できること、あるいは、シンクロナイザ222(c)のロジックを最適化でき、または大きく変更できることを理解すべきである。いくつかの用途では、所望の方法で特定の状況を取扱うために、より高性能のシンクロナイザロジックを提供することが好ましい可能性がある。たとえば互いに異なるロジックを提供して、シンクロナイザに入力された信号240が、より高いレベルから、駆動パルス時間の終わりまで保持される、より低いノンゼロレベルに移行する状況を取扱ってもよい。いくつかの実施態様では、このような状況では、より低いレベルの駆動パルス出力を有することが好ましい可能性がある。同様に、信号が、より低いノンゼロレベルから、より高いノンゼロレベルに移行するとき、このような状況で起こることを命令するために特定のロジックを提供することが好ましい可能性がある。
【0200】
作動チャンバが、それらの最適効率で作動しているとき、エンジンの熱力学的(および燃料)効率は最も良くなることを理解すべきである。従って、あまりに多くの抑制したエネルギー点火を有することは、それらに対する特別な必要性がない限り、一般に好ましくない。しかし、制御の見地から見て、抑制したエネルギー点火が好ましい可能性がある、いくつかの状況がある。一般に、エンジンが適度なエンジン回転速度から、より速いエンジン回転速度までの範囲で作動しているときには、抑制したエネルギー点火の個数は比較的少ない(たとえば20%未満、またはより好ましくは10%未満)ことが好ましい。比較器216(c)は、抑制したエネルギー点火の最終的な個数が所望の範囲内にあることを保証するために、このような割合の中間信号を出力するように容易に設計できる。
【0201】
また比較器およびシンクロナイザロジックのうちの少なくとも一方は、中間的な比較器出力信号および出力するパーシャル駆動パルスのうちの少なくとも一方の割合を決定するとき、エンジン回転速度およびエンジンの運転状態(たとえば常温始動など)のうちの少なくとも一方を考慮するように構成されていてもよい。たとえばエンジンがアイドリングしているとき、または常温始動するとき、それらの状況においてパーシャル駆動パルスだけが生成されるように、中間信号だけを比較器から出力することが好ましい可能性がある。比較器およびシンクロナイザロジックのうちの少なくとも一方は、さまざまな異なった所望の運転規則に適合するように構成されていてもよいことを理解すべきである。
【0202】
(差動シグマデルタコントローラ)
さらに他の実施形態では、差動シグマデルタコントローラを使用してもよい。このような実施形態では、シンクロナイザは、シグマデルタコントローラによって出力される差動信号に基づき駆動パルスパターンを生成するように構成されることができる。さまざまな互いに異なる差動シグマデルタコントローラを使用してもよく、要求される場合には上述のように、それらは可変クロックおよびマルチビット比較器出力機能のうちの少なくとも一方を一般に含んでいてもよい。差動シグマデルタコントローラの1つの利点は、それらが、対応する非差動式のシグマデルタコントローラよりも、さらに滑らかな性能を提供するように構成できる場合が多いことである。
【0203】
いくつかの状況では、我々が黙示的差動シグマデルタと呼ぶモードで運転することが有利である可能性がある。このようなモードでは、シンクロナイザもしくはシーケンサ(または両方とも)に強制して、駆動パルスおよびチャンバ点火のうちの少なくとも一方を一度に1つに制限させる。すなわちこのモードでは、点火されたそれぞれ作動チャンバに強制して、その後にスキップされる点火時期が続くようにさせる(点火されたそれぞれ作動チャンバに強制して、その後にスキップされる点火時期が続くようにさせ、およびそれぞれ駆動パルスに強制して、その後にゼロパルスが続くようにさせる。あるいは、点火されたそれぞれ作動チャンバに強制して、その後にスキップされる点火時期が続くようにさせ、またはそれぞれ駆動パルスに強制して、その後にゼロパルスが続くようにさせる)。この黙示的差動シグマデルタは、所望エンジン出力を送出するために50%を大幅に下回る点火時期が要求されるレベルでエンジンが作動しているときに特に有用であり、その理由は、所要出力が比較的低いときには2つの点火が互いに続いて即座には起こらないことを保証することによって、エンジン出力のさらなる円滑化を促進できるためである。
【0204】
自動車エンジンは、エンジンが送出できるパワーのうちの比較的小さなごく一部(たとえば10〜25%など)だけを必要とする条件の下で運転される場合が多いことを理解すべきである。黙示的差動シグマデルタ手法は、これらの種類の運転条件の下で特に有用である。いくつかの実施態様では、いくつかの運転条件の間、黙示的差動シグマデルタモードで、他の運転条件の間、互いに異なる種類の連続可変排気量モードで、およびさらに他の運転条件の間、従来の運転モードで、エンジンを運転することが好ましい可能性がある。もちろん、さまざまな運転モードの個数および性質は大きく変化する可能性がある。従って、エンジンコントローラは、互いに異なる運転条件の間、さまざまな互いに異なる運転モードで一般に作動するように構成されていてもよいことを理解すべきである。
【0205】
また黙示的差動シグマデルタモードによって供給される制約は大きく変化する可能性がある。たとえば低いエンジン出力が要求される場合、点火パターンに強制して、それぞれ点火の後に少なくとも2つの点火時期をスキップするようにさせることが好ましい例がある可能性がある。他の例では、3つの点火ではなく、2つの点火が互い互いの後に続くことを可能にすることが好ましい可能性がある。さらに他の例では、指定された個数のスキップが互い互いの後に続くときはいつでも、点火を要求することが好ましい可能性がある。一般に、所望エンジン出力を提供するために適切と判断されるさまざまな方法で特定のエンジンに対する点火パターンをシーケンサまたはシンクロナイザによって制約してもよいことを理解すべきである。制約は、エンジンに加えられる負荷、点火とスキップとの全体的な比率、または特定のエンジンの制御に適した他の任意の要因によって変化するように構成されていてもよい。
【0206】
(デジタルシグマデルタコントローラ)
前述したように、デジタルシグマデルタコントローラも使用されることがある。そのような1つの実施形態が
図9で示され、デジタル三次シグマデルタ制御回路202(c)を図示している。この実施形態では、アクセルペダル位置指示信号が第1デジタル積分器304に入力される。第1デジタル積分器304の出力は、第2デジタル積分器308に入力され、第2デジタル積分器308の出力は、第3デジタル積分器314に入力される。第3デジタル積分器314の出力は、アナログシグマデルタ回路に関して上述した単ビットもしくはマルチビット比較器いずれかと同様に動作するために構成できる比較器116に入力される。
図9に図示した実施形態では、第1デジタル積分器304は、アンチエイリアス処理フィルタとして事実上機能する。
【0207】
負のフィードバックが3つのそれぞれ積分器ステージ304、308、および314に設けられる。フィードバックは、比較器116の出力、シンクロナイザロジック222の出力、もしくはシーケンサ126の出力のいずれか1つもしくは任意の組合わせによるこ
とができる。それぞれステージのフィードバックは、L、M、およびNの増倍率をそれぞれ有する。
【0208】
上述のアナログシグマデルタ制御回路のように、デジタルシグマデルタ制御回路への主な入力は、アクセル位置113の指示もしくは他の適当な所望出力の代用とすることができる。前に説明したように、所望の出力信号113は、好ましくないトーンの発生の可能性を低減するために、図示した実施形態にある擬似ランダムディザー信号246と合成される。
【0209】
アナログとデジタルの動作の主な違いは、アナログシグマデルタの積分器が連続的に動作するのに対し、デジタル積分器は通常それぞれクロックサイクルの始めでのみ動作することである。いくつかの実施態様では、様々なアナログシグマデルタ設計に関して上述した、固定および可変クロックによく似た非常に高速なクロックを動作させるのが好ましい可能性がある。しかし、それは必要条件ではない。最終的に必要な出力は、制御されている点火時期と同一の頻度を有しているからであり、クロックはシンクロナイザおよびシーケンサのうちの少なくとも一方の必要性を取り除く(もしくは機能を単純化する)ことができる点火時期に同期させることができる。従って、デジタルコントローラが使われるとき、コントローラの設計は、制御された点火時期の周波数でクロックを動作することによって単純化できる。
【0210】
アナログおよびデジタルのコントローラを説明してきたが、他の実施態様では、ハイブリッドアナログ/デジタルシグマデルタコントローラを設けるのが好ましい可能性があることを理解すべきである。ハイブリッドアナログ/デジタルコントローラでは、シグマデルタコントローラのいくつかのステージがアナログ構成要素で形成することができ、一方他はデジタル構成要素で形成することができる。ハイブリッドアナログ/デジタルシグマデルタコントローラの一例は、アナログ積分器204をコントローラの第1ステージとして利用し、第1デジタル積分器304の代わりとしている。第2および第3積分器は、その後、デジタル構成要素で形成される。もちろん、他の実施形態では、異なった数のステージが使われることがあり、アナログ積分器対デジタル積分器の相対数は変わり得る。さらに他の実施形態では、デジタルあるいはハイブリッド差動シグマデルタコントローラが使われることがある。
【0211】
(単シリンダ変調スキップファイア)
図12を参照して、本発明のさらにもう1つの実施形態に従ったエンジン制御ユニット400を説明する。この実施形態は、上述の単シリンダ変調スキップファイア手法およびその手法の様々な変形を実践で使用するときに、特によく適している。図示された実施形態では、アクセルペダル位置の指示113(もしくは所望出力の他の適切な指示)が、任意の低域フィルタ402に供給される。低域フィルタ(他で記載されたどの実施形態でも利用できる)は、所望の出力信号の中の非常に短い(たとえば高い周波数の)変化を滑らかにすることを目的としている。このような種類の変化は、たとえば道路の振動もしくは他の原因による運転者の足位置の揺れによって起こることがある。低域フィルタは、入力信号113におけるこのような揺れや意図的でない他の高い周波数の変化を低減もしくは除去するために使うことができる。
【0212】
フィルタ処理された所望出力の指示は、次に、入力信号を利用できるシリンダの数で効果的に割る残差計算機404に供給される。たとえばエンジンが6個のシリンダを持っている場合、入力信号は概念的に6で割られる。残差計算機は結果が整数と剰余を含むように調整されてもよい。一般に、整数出力406はいくつのシリンダを常に点火するかの指示としてコントローラで使うことができ、剰余出力407は調整されたシリンダを制御するために効果的に使うことができる。除算器は好ましくは出力がエンジンの所望パワー出
力範囲を提供するように適切に調整される。たとえば概念的に、最大パワーが必要なとき(たとえばアクセルペダルがいっぱいに押されたとき)、除算器がエンジンのシリンダ数に等しい整数を出力し、剰余がないように除算器を調整することができる。もちろん、他の実施態様では、スケーリングは互いに異なる可能性があり、所望の構成要素および他の構成要素のうちの少なくとも一方を調整してスケーリングあるいは他の変化が補償できるように、非線形除算器が使われることがある。
【0213】
図示された実施形態では、残差計算機の整数出力406は噴射コントローラ440に供給され、剰余出力407は調節された作動チャンバコントローラ405に供給される。さらに具体的には、剰余は調節された作動チャンバコントローラ405に含まれるマルチプライヤ410に供給される。マルチプライヤ410は、剰余信号にエンジンで利用できるシリンダ数に等しい係数を掛ける。たとえば標準的な6気筒エンジンでは、マルチプライヤは剰余に係数6を掛ける。マルチプライヤ410の出力は、次に、駆動パルス発生器104の制御入力として使われる。駆動パルス発生器104は、任意の適当な形態をとる。例として図示した実施形態では、駆動パルス発生器104は上述のデジタルシグマデルタコントローラ202(a)と同じような、しかし互いに異なるクロック信号を使用するデジタル三次シグマデルタコントローラの形をとる予測適応コントローラ420を含む。もちろん、他の実施形態では、マルチプライヤは除去することができ、シグマデルタコントローラ420は所望の出力を供給するために適切に調節できる。
【0214】
本実施形態では、マルチプライヤ410の出力は第1デジタル積分器304に入力される。必要であれば、第1デジタル積分器304の前で、任意の擬似ランダムディザーをマルチプライヤの出力に合成することができる。第1デジタル積分器304の出力は第2デジタル積分器308に入力され、第2デジタル積分器308の出力は第3デジタル積分器314に入力される。第3デジタル積分器314の出力は、前に説明したように比較器116に入力される。シグマデルタコントローラ420の設計は
図9を参照して上述した設計に極めて似ているので、同じような特徴の説明は常には繰り返さない。比較器116の出力は、ラッチ430に供給され、ラッチは噴射コントローラ440に駆動信号を送出する。比較器の出力はまた第1デジタル積分器304に負入力としてフィードバックされる。シグマデルタコントローラ420およびラッチ430に供給されるクロック信号は、調節されたシリンダの点火時期に同期される。この構成によって、ラッチ430の出力は調節されたシリンダの駆動パルスパターン442として使用できる。ラッチを含まない実施形態では、比較器116の出力は直接駆動パルスパターンとして使用することができる。これは
図9の実施形態で使用しているようなシンクロナイザの必要性を排除する。
【0215】
これまで説明してきたほとんどの実施形態では、高い周波数のクロックが使われていることを指摘しておく。これに対して、
図12の実施形態は、制御されているシリンダの点火時期の周波数に同期している非常に低い周波数のクロックを使用している。従って、いかなるシグマデルタコントローラ420において1つのシリンダだけを制御している場合であっても、クロックはちょうど1クロック周期が制御されているシリンダのそれぞれ点火を発生するように制御された単一のシリンダの点火時期に同期した周波数となる。他の実施形態では、コントローラ420が2つ以上のシリンダ(たとえば2気筒、3気筒、すべてのシリンダ、など)の点火を制御している場合、クロック周波数はすべての制御されているシリンダの点火時期の周波数に合致させることができる。
【0216】
図示された実施形態では、残差計算機404の整数出力406および駆動パルスパターン442の信号は、ともに噴射コントローラ440に供給される。噴射コントローラ440は、単純化されたシーケンサとして動作し、燃料噴射ドライバ444を制御する。噴射コントローラのロジックは、噴射コントローラの整数出力によって認識されているシリンダ数と同一のシリンダセットを常に点火するように調節される。さらに、1つのシリンダ
は駆動パルスパターン442で決められたパターンで点火される。残りのシリンダセットは点火されない。点火されたシリンダセットの特定のシリンダは、好ましくは良好なエンジン振動および熱管理特性を実現する方法で選択される。多くの実施態様では、噴射コントローラ440を調節して、点火されるシリンダセットの中で時間とともに周期的にシリンダを変えることが望ましい。点火されたシリンダセットの中で特定のシリンダを周期的に変えるのは、いくつかの潜在的メリットがある。一部のエンジン設計で重要視される1つの考慮事項は、エンジンの熱管理である。常に点火されているシリンダと常にスキップされているシリンダの間では、大きな温度差が起きることを理解すべきである。比較的冷たい空気がスキップされたシリンダを介して送り込まれると、その差はさらに大きくなる。温度差は排ガスにも影響を与える可能性がある。従って、許容できる温度バランスをエンジンが確実に維持できるように、スキップされる、および常に点火されるシリンダセットの中で、時々特定のシリンダを変えることは好ましいことがある。
【0217】
点火されているシリンダセットの中で周期的にシリンダを変える理由は他にもある。たとえば時間に対してすべてのシリンダがおおよそ同じだけ点火されていることの確保は好ましいことがある。これは、エンジンの摩耗特性を守ることを助け、また使っていないシリンダをきれいにすることを助ける。様々なシリンダセットの中の特定シリンダは、比較的たびたび(たとえば2〜3分ごとあるいはさらに高い頻度の規模で)、比較的まれに(エンジンが停止されるごと、数時間のエンジン動作ごとの規模、など)、もしくはその間のどこかで変更することができる。
【0218】
記載した手法によって、比較的少ない量の追加パワーの要求が、単一の調整されたシリンダをより頻繁に点火することによって大抵対応できることを理解すべきである。同様に、比較的少ないパワー削減の要求が、単一の調整されたシリンダの少ない点火頻度によって大抵対応できる。しかし、場合によっては追加もしくは削減パワーの要求が、残差計算機404によって計算される整数値の変更に影響を与えることがある。こうした場合に、追加のシリンダが加えられたり、もしくは常に点火されているシリンダセットから取り除かれたりすることがある。いくつかの実施態様では、シグマデルタコントローラ420は、常に点火しているシリンダセットからシリンダを加えたり減じたりすることで推移が生じるとき、エンジンの「感触」に悪影響を与え得る待ちの時間を有することがあるのを理解すべきである。潜在的な問題の性質は、1つのシリンダが常に動作し、第2調節されたシリンダが95%の時間動作している(すなわち残差計算機404の整数出力406が「1」であり、残差計算機404の剰余出力407が事実上0.95である)仮定状況を考慮することによって理解できる。駆動中に、運用者はアクセルペダルを増やし要求パワーをレベル「2.05」にするわずかな調整をすることがあり、それは残差計算機404の整数出力406を「2」に上げ、残差計算機の剰余出力407を5%に下げる。そのままにしておくと、シグマデルタコントローラは最終的には新たな要求パワーレベルに適合する。しかし、コントローラは待ち時間を有するので、推移効果は大きすぎるパワーが短時間に送出されたようになり得る。これは、コントローラがたかだか5%の点火頻度で動作することを目的としながら、あたかも短時間に95%の点火頻度で動作を続けようとしたように思われることがある。
【0219】
常に点火しているシリンダセットの中のシリンダ数を増減する際、コントローラの推移応答を改善するために、調節されたシリンダの点火時期の間の期間に高速のクロック信号の短いバーストをシグマデルタコントローラ420に供給することによって、シグマデルタコントローラを実質上「リセット」できる。これは、調節されたシリンダに要求されたパワーの新しいレベルに、積分器を調整することを許可する。シグマデルタコントローラ420のリセットは、様々な互いに異なる方法で実現できることを理解すべきである。例として、この手法を実施する1つの方法は、調節されたシリンダ点火時期クロック信号423と、残差計算機の整数カウントが増えたり減ったりするたびに残差計算機404から
送られるリセット信号429によって駆動される高い周波数のクロック信号427を多重化する、クロックマルチプレクサ425を設けることである。バーストは点火時期クロック信号423の周期よりも著しく短くすることができ、好ましくはシグマデルタコントローラ420が新しい要求パワーレベルに完全に調整するのに十分な周期を有することが望ましい。単一のシリンダの点火時期は通常100Hzより十分低い周波数であるが、デジタル電子機器は簡単に高速で動作することができるので(たとえばクロックレートがキロヘルツ、メガヘルツ、あるいはさらに高い周波数範囲)、点火時期の間にコントローラ420をリセットするのに十分な時間がある。
【0220】
この実施形態では、ラッチで利用される比較器の出力だけが、調節されたシリンダ点火時期クロック信号423がラッチを誘発するときにアクティブになる比較器出力である。必要であれば、連続した点火時期の間だけにバーストが発生するようにバーストの時期を選ぶことができる。この構成によって、バーストが点火に影響しないように、リセットバーストの中のすべての信号はラッチによって無視される。しかし、これは必要条件ではない。
【0221】
上述の実施形態では、いかなる与えられた時間においても、単一のシリンダのみが調節され、一方他のそれぞれシリンダは常にスキップされるかもしくは常に点火される。しかし、他の実施態様では、エンジンコントローラ400は2つ以上のシリンダ(たとえば2気筒など)の点火を調節するために修正でき、一方他のそれぞれシリンダは常にスキップされるかもしくは常に点火される。
【0222】
残差計算機404が、さらに多いもしくは少ないシリンダが「常に点火される」セットであるべきであると決定するとき、適切な信号が噴射コントローラ440に送られ、適切な調整が行われる。どのシリンダが常に点火されるセットに加えられるか(あるいは取り除かれるか)の詳細は、設計の考え方の多様さおよび特定システムの要求に基づき広く変わり得る。たとえばいくつかの実施態様もしくは状況では、常に点火されるセットにシリンダを追加するとき、現在調整されたシリンダを次の「常に点火される」シリンダとして指定し、スキップされたシリンダセットの中の1つのシリンダを「新たに」調節されるシリンダとして指定するのが好ましいことがある。他の実施態様もしくは状況では、スキップされたシリンダセットの中の1つのシリンダを次の「常に点火される」シリンダとして単純に指定し、同じシリンダを調整し続けるのが好ましいことがある。さらに他の実施態様あるいは状況では、以前の指定に特に従うことなく、常に点火されるシリンダの新たなセットおよび新たに調整されるシリンダを単純に選択するのが好ましいことがある。もちろん、「常に点火される」、「スキップされる」および「調整される」シリンダセットの中でシリンダを割り当てるのに、いろいろな他の要因も同様に考慮される。
【0223】
動作中、残差計算機404は連続的に所望の出力信号113を監視し、連続的に信号を分岐する。実質的には、所望の出力信号113のどのような変化も、調整された作動チャンバコントローラ405に入力される剰余出力信号407に変化をもたらす。コントローラ405は、余剰出力信号407によって指定された出力を送出する駆動パルスパターンを生成する。残差計算機の整数値が変化するときはいつでも、リセット信号がクロックマルチプレクサ425に送られ、マルチプレクサは短い期間にシグマデルタコントローラ420に高い周波数のクロック427を供給し、これによって、シグマデルタコントローラをリセットし、新しい剰余レベルに調整することを許可する。リセット信号は、整数出力が上昇もしくは下降するいかなるときでも誘発できる。
【0224】
上述のように、スキップファイアモードで動作しているときに生じる1つの潜在的な課題は、スキップされたシリンダの動作に関する。スキップされた作動周期の間に弁が開閉する場合、空気がシリンダを介して排気に送り込まれ、排気/排ガスシステムは排気ガス
中の過剰酸素を扱うように設計されなければならない。いくつかのエンジン(たとえば電子弁を有するエンジン)では、弁の開閉は作動周期に基づき作動周期で制御することができる。これは、スキップされたシリンダを閉じたままにできるので、理想的である。しかし、実際には、今日路上には電子制御弁を有する車両はほとんどない(あるいは別の方法で作動周期に基づき作動周期で弁の開閉を制御する能力を有している)。
【0225】
上述のように、ほとんどの市販の可変排気量エンジンは、エンジンの排気量を変えるために、選択されたシリンダを閉鎖するよう設計されている。シリンダが閉鎖されると、エンジンの吸気もしくは排気行程の間、弁は通常開かない。選択されたシリンダは閉鎖することができるが、動作していない機構の応答時間が、作動周期に基づき作動周期でシリンダが動作を始めたり停止したりできないようにすることがある。従来の可変排気量エンジンは、普通のエンジンに比べて向上した効率を示すが、エンジン出力は依然として、能動的シリンダに送出される空気および燃料のうちの少なくとも一方の量を変えることによって制御されている。従って、ここで述べた最適化されたスキップファイア技術を利用することによって、効率はさらに向上できる。
図12を参照して述べたエンジン制御ユニット400も、このような種類の可変排気量エンジンでの使用にとても適している。たとえば特定のエンジンが特定のシリンダもしくは特定の並びのシリンダを閉鎖できるならば、単シリンダ変調スキップファイアモードでの動作中に、使われていないシリンダを閉鎖することができる。これは、制御されたエンジンの排ガス特性をさらに改善することができる。1つには、排気中の過剰酸素の量が低減されるからである。スキップされたシリンダを閉鎖することは、どのシリンダも閉鎖することができないエンジンに比べてポンプ損失も低減することができ、これによって熱力学的効率の向上も同様に促進する。
【0226】
当業者には明らかなように、若干の既存の可変排気量エンジンは、個別もしくは並びのどちらかで、選択されたシリンダを閉鎖することができる。たとえばホンダ(Honda)は2気筒、3気筒、もしくは若干の変更を伴って4気筒を閉鎖することができる6気筒の可変シリンダマネジメントエンジンを現在生産している。他のエンジンは、対で、もしくは他の並びでシリンダを閉鎖するようになっている。単シリンダ変調スキップファイアコントローラ400は、いくつか、あるいは潜在的にはすべての使用されていないシリンダを閉鎖することができ、それによって排気中の過剰酸素とポンプ損失の両方を低減するので、このようなエンジンでの使用にはとても適している。このような構成では、噴射コントローラ440は、エンジン設計に基づき適切になるように、運転状態の間でエンジンを付加的に切替えるように構成することもできる。
【0227】
(可変排気量エンジンでの運転状態の高速調整)
市販の可変排気量エンジンの運転で本発明者が気付いた問題は、エンジンの状態に著しい変化が生じたとき、たとえばより多くのもしくは少ないパワーの要求があった場合、著しい負荷の変動があった場合、などに可変排気量モードを止めてしまうようにこれらのコントローラが設計されているように見えることである。その結果、通常の運転条件下では、エンジンは非常に高い割合の時間でより効率的な排気量削減モードで運転する(もしくはとどまる)傾向がない。その1つの理由は、利用されているシリンダの数によらずアクセルペダルの動きの反応とほぼ同じ「感触」を提供するこの方法で、エンジンを制御するのが難しいからであると考えられている。従って、ほとんどの従来の可変排気量エンジンコントローラは、エンジンの感触が変わってしまうリスクを冒すよりはむしろ、可変排気量モードを止めてしまうように見える。
【0228】
図12を参照して述べたフィードバック制御システムは、いつでも動作中のシリンダ数によらず所望のパワーを供給するのによく適応できるものである。その結果、いかなる特定の時間に使用されているシリンダの数によらず、より多くの(もしくは少ない)パワーの要求に応えて、エンジンは実質的に同じ感触をもたらすことができる。従って、記載さ
れているコントローラは、従来の可変排気量エンジンの使用によく適応でき、より効率的な(たとえば最適化された)点火を使用することによってだけでなく、高い割合の時間で低減されたシリンダの数での運転を促進する能力によって、燃料効率をさらに向上させることができる。少ないシリンダの数で効果的にエンジンを制御する能力があるので、記載されたフィードバック制御システムは、たとえ点火が最適化されていなくても(たとえばエンジンが絞られているとしても)従来の可変排気量エンジンの効率を向上することができる。
【0229】
上述のように、上述した純粋な単シリンダ変調スキップファイア手法を使用して遭遇することがある1つの潜在的な問題は、点火されていないシリンダの弁が閉じた状態を保持できない場合、空気がエンジンに入り込むということである。エンジンの既存の排ガスシステムは、スキップされたシリンダに入り込んだ未燃焼空気を扱うことができないため、この欠点はいくつかのエンジンの費用効率の高い改造を妨げてしまうことがある。
【0230】
可変排気量エンジンが、いくつかの互いに異なる排気量(たとえば2気筒、3気筒、4気筒、もしくは6気筒で動作できるエンジン)を供給するために、互いに異なる並びのシリンダを閉鎖できる場合、点火されていないシリンダに送り込む空気によって生じる問題は、エンジンの互いに異なるモード間の速い変更によって潜在的に排除できる。たとえばエンジンの所望出力が最適に2つのシリンダを常に、および第3気筒を半分の時間点火することによって供給されている場合、概念的にはエンジンのそれぞれ全周期で平均して2.5気筒が点火されているように2気筒動作状態と3気筒動作状態を急速に交互に切替えることで、所望の出力を得ることができる。これが実際にできれば、点火されていないどのシリンダにも空気は送出されない(従って送り込まれない)。この種類の応用の限定要因は、互いに異なる運転状態同士が切替えられる速度である。
【0231】
可変排気量エンジンが比較的速く新しい運転状態に切替えられる場合、エンジンを制御するために
図12に関して上述したコントローラに似たコントローラの使用が可能となることがある。このような実施形態では、噴射コントローラ440は必要に応じて運転状態の間を切替えるために、さらにエンジンに命令するように構成される。次の
図13を参照して、このようなエンジンの動作のための適切な制御スキームを説明する。
図13は、従来の可変排気量エンジンにおいて利用できるパワーをスロットル位置に応じて図示しているグラフである。図示した実施形態では、エンジンは2気筒、3気筒、4気筒、もしくは6気筒を使って動作できるオットーサイクルエンジンである。所望のエンジン出力が、最適な状態の2つのシリンダの動作で送出できるパワー量よりも小さいときは、要求されたパワーは絞られた2気筒運転モードでのエンジン動作によって供給されることがあり、このモードはパワーを調整するために2つの動作シリンダのスロットリングを使用する。これは、今日動作し、スロットルを備えた2つのシリンダのパワー出力を図示している
図13の曲線470でエンジン性能が表される従来の可変排気量エンジンでの方法に、一般的に似ている。要求パワーが、最適なレベルでの2気筒動作によって供給できるパワーの量に等しいかもしくはそれを上回っているとき、エンジンは最適化された(たとえば十分にアンスロットルされた)運転モードに切替えられることができ、そのモードは要求パワーを送出するために
図12に図示したコントローラに似たコントローラを使用する。
図14および他の箇所を参照して上述したように、「最適化」された運転状態は実際には全開したスロットル状態には対応しないことがある。従って、この説明に照らして、「アンスロットルされた」もしくは「実質的にアンスロットルされた」という言葉を使用するときは、スロットルが全開している状態だけを限定して意味するものではないことを理解すべきである。むしろ、シリンダに入れるための比較的完全な必要量の空気を許容するためにスロットルを十分に開けた状態を指すことを意図し、エンジンの出力を調整するための主な機構としては使われていない。
【0232】
要求パワーが、最適レベルで常に動作している2気筒と3気筒で送出できるパワーの間の量であるとき、駆動パルス信号442によって命令されたように、噴射コントローラ440は2気筒モードおよび3気筒モードを交互に切替えるようエンジンに命令する。すなわち駆動パルス信号442が低のとき、噴射コントローラ440はエンジンを2気筒モードにする。また駆動パルス信号442が高のとき、噴射コントローラ440はエンジンを3気筒モードにする。この運転状態では、エンジンは実質的にアンスロットルで動作し、シリンダ点火は前述したように最適化される。従って、駆動パルス信号442は、エンジンが2気筒モードになるべきとき、および3気筒モードになるべきときの指示として効果的に働く。同様に要求パワーが、最適レベルで常に動作している3気筒と4気筒で送出できるパワーの間の量であるとき、駆動パルス信号442によって命令されたように、噴射コントローラは3気筒モードおよび4気筒モードを交互に切替えるようエンジンに命令する。
【0233】
図13では、2気筒モードおよび3気筒モードの間で切替わっているときのエンジン出力を線475で示し、3気筒モードおよび4気筒モードの間で切替わっているときのエンジン出力を線476で示している。これは従来のスロットル方法で3気筒、4気筒、および6気筒それぞれを使用したエンジン出力を図示している線471、472、および473と対比している。2気筒だけで送出できるよりも大きなパワーを送出しているとき、エンジンを実質的にアンスロットルで動作させることは、エンジンの燃料効率を大きく向上できることを理解すべきである。
【0234】
要求パワーが、最適レベルで常に動作している4気筒と6気筒で送出できるパワーの間の量であるとき、噴射コントローラは駆動パルス信号442に基づき、必要に応じ4気筒モードおよび6気筒モードを交互に切替えるようエンジンに命令する。エンジンが4気筒状態から6気筒運転状態に切替わるとき2つの追加シリンダが点火されるという事実の原因となるようエンジンコントローラ400が動作しなければならないことを理解すべきである。この変化は様々な互いに異なる方法で対応できる。説明のために、エンジンのそれぞれ全作動周期で1回だけ運転状態を切替えられるエンジンの実施態様を検討する。すなわちそれぞれ動作シリンダは、エンジンが運転状態を切替えるときに1回点火されなければならない。追加シリンダを補う1つの適切な手法は、4気筒状態および6気筒状態の間をいつ切替えるかを決定するために、噴射コントローラロジックを利用することである。たとえば残差計算機の整数出力407が「4」の場合、噴射コントローラはエンジンの1作動周期に対して6気筒モードに切替える前に2つの「高」駆動パルスの蓄積を必要とし、その後さらに2つの「高」駆動パルスが蓄積されるまで噴射コントローラは4気筒運転状態に戻す切替えを行う。
【0235】
残差計算機の整数出力407が「5」のとき、噴射コントローラはエンジンのそれぞれ全作動周期で積算器に事実上1を加える。これは、エンジンが高い割合の時間で6気筒状態の動作をするための所望の効果をもたらし、それによって所望のパワーを送出する。
【0236】
追加シリンダを補う第2適切な手法は、4気筒状態および6気筒状態がいつ適切かを決定するために、シグマデルタコントローラロジックを利用することである。このような1つの実施態様では、2つのシリンダがただ1つのシリンダの代わりに制御されるという事実の原因となるよう、シグマデルタコントローラへの入力が適切に調整される。これは、残差計算機を「4」シリンダを超える所望の出力信号の量に基づく「剰余」信号を出力するロジックに換え、「高」駆動パルス信号が2つの追加シリンダを点火させるという事実を補うためにその値を係数2で割る、ということを伴う。
【0237】
さらに別の実施態様では、エンジンのモード切替え応答時間が十分に速く、「第5」および「第6」のシリンダの点火時期間でモード切替えができる場合、エンジンコントロー
ラは、必要に応じてシリンダを閉鎖するのに使用される切替えのモードの上述した単シリンダ変調スキップファイアエンジンコントローラとちょうど同じように設定できる。
【0238】
前述の例は単に例示的な性質のものであり、具体的な実施態様の詳細では、制御されている個別の可変排気量エンジンの能力を補うよう調整を要することを理解すべきである。このようなそれぞれ状態で、許容される運転状態の実際の数および利用できるシリンダの実際の数は、エンジンごとに変わる。利用できる状態を活用するためにコントローラは調整される必要がある。さらに、互いに異なる運転状態間の切替え反応時間は、エンジンごとに変わる。運転モード間を切替えるためにエンジンの全1動作周期以上かかるエンジンもあり得る。一方、他のエンジンにはシリンダの点火時期に基づき点火時期のモード間の交互切替えを促進するのに十分速いものもある。このような相違を考慮して、エンジンコントローラのロジックは、エンジンの能力に合わせてカスタマイズされる必要がある。すべての既存の可変排気量エンジンが堅調ではなく、記載されているモード切替え方法でエンジンを滑らかに動かすのに必要な速度でモード間を交互に切替えるのに十分速くはないことを理解すべきである。しかし、この種類のモード切替え方法で、適切に従来通り設定された可変排気量モードを動作することは、空気送り込み問題に取り組む1つの方法であることを理解すべきである。
【0239】
(プリプロセッサ段階)
上述したいくつかの実施形態では、アクセルペダル位置からの信号は、制御システム(たとえば駆動パルス発生器104、エンジン制御ユニット400など)への入力として使われる所望のエンジン出力の指示として扱われる。このような実施形態では、所望のエンジン出力信号113は車両のペダル位置センサから直接取得し、もしくは適切な方法で増幅してもよい。他の実施形態では、ペダル位置センサ信号は、駆動パルス発生器104に供給される前に、他の入力(上述したディザー信号207など)と合成してもよい。さらに他の実施形態では、アクセルペダル位置センサ信号はプリプロセッサ181(たとえば
図3で破線の箱で表したような)に供給してもよい。これは自信号を生成するか、あるいはペダルセンサ信号をいくらかのレベルで処理する。プリプロセッサ181の出力は、駆動パルス発生器104への入力として使用される。特定の設計では適切になるようディザー信号を加えてもあるいは加えなくてもよい。
【0240】
プリプロセッサ181は、アクセルペダル位置センサ信号のどの所望形式の処理を実現するために構成してもよい。たとえば燃料効率が最も良くなるエンジン動作の仕方を助ける方法でアクセルペダル位置信号が前処理される燃料節約モードの提供は、自動車にとって好ましい。他の例では、一般に比較的急速にペダル位置を上下する傾向がある運転者がいることが知られている。このような運転者には、プリプロセッサがいくらかのペダル位置の上下を平均化あるいは平滑化する(たとえばプリプロセッサが
図12を参照して上述した低域フィルタ402を含むかその形をとってもよい)滑らかな運転モードを設ける自動車が好ましいことがある。さらに他の実施態様では、車両には車速設定装置があってもよい。そのような車両では、車速設定装置はプリプロセッサの中に組込まれているか、もしくは車両が車速設定モードにあるとき駆動パルス発生器104の入力信号113の供給源としての役目をしてもよい。さらに他の実施形態では、プリプロセッサ181の中にペダル位置のアンチエイリアス処理フィルタが設けられていてもよい。もちろん、プリプロセッサは、制御されているエンジンおよび車両のうちの少なくとも一方に適切と考えられる他のどのような形式の処理を行うように構成されていてもよい。
【0241】
(変速機制御および連続可変変速機)
エンジン回転速度がエンジンの燃料効率に影響することはよく知られている。この影響は、
図14に示された性能マップのグラフで見ることができる。
図14で示され、また上述されたように、エンジン回転速度、吸気圧などの比較的狭い範囲の中でエンジンが動作
しているときに、エンジンは最も効率が良くなる傾向がある。この理由から、自動変速機を有する多くの車両で使われているエンジン制御ユニット(ECU)は、全体的な燃料効率を向上させるためのエンジン回転速度に少なくとも一部基づき、変速機のギアの変更を制御するように構成されている。燃料プロセッサは、スキップファイア型の可変排気量モードで動作しているとき、同じような方法でギア選択を制御もしくは操作するように構成されていてもよい。
【0242】
既存のいくつかの車両は連続可変変速機を使用している。連続可変変速機の知られている利点は、車両速度の範囲にわたって標準的な変速機よりも最大効率の近くでエンジンが動作できることである。記載したスキップファイアを基とした可変排気量エンジン動作と併せて連続可変変速機を使うことは、ほとんどの時間において最適な熱力学的効率の非常に近いところでエンジンが動作できることを理解すべきである。すなわち記載したスキップファイア手法は、熱力学的効率(もしくは他の所望のパラメータ)についてそれぞれ点火を最適化することを可能にし、連続可変変速機の使用はエンジンが最適エンジン回転速度(rpm)で動作することを可能にする。それによって、ほとんどの時間で最適領域(たとえば
図14の領域50)でのエンジンの動作が可能となる。
【0243】
既存のエンジンコントローラは、効率を向上させるために変速機をたびたび制御しているが、本発明者は、燃料効率もしくは他の所望の基準で最適化された比較的厳格な領域で点火される作動チャンバの動作を確保する方法で、変速機、吸気圧、および作動チャンバ点火を制御できる、いかなる既存のエンジンコントローラも知らない。
【0244】
(ディーゼルエンジン)
上記の多くの例は、記載したスキップファイアを基にした可変排気量手法を、オットーサイクルもしくは作動チャンバへの空気送出を絞ることでパワーを調整する他の熱力学的サイクルを基にしたエンジンに適用することを述べているが、本発明はディーゼルエンジンでの使用にもよく適していることを理解すべきである。確かに、既存の多くのディーゼルエンジンの設計は、記載したスキップファイア手法を使った動作に特によく適応している。たとえば既存の多くのディーゼルエンジンで使われている排気および排出システムは、高酸素含有排気流の使用にすでに適応し、改造および新しいエンジン設計の両方を簡素化できている。またほとんどのディーゼルエンジンは、上述した壁濡れ問題を排除した直接噴射を使用している。さらに、最近は多くのディーゼルエンジンが噴射プロファイリングを採用している。すなわちシリンダへの燃料の噴射は、シリンダ点火の熱力学的効率を向上させるために時期を選んで行われる。このようなプロファイリングは、最適化された点火を使用したときエンジンの効率をさらに向上させる。従って、上述のどのエンジン制御の実施形態も、ディーゼルエンジンと併せて使用できることを理解すべきである。
【0245】
(他の特徴)
本発明のいくつかの実施形態だけを詳細に説明してきたが、本発明の精神あるいは要旨から逸脱しない範囲で、本発明は他の多くの形態で実施してよいことを理解すべきである。上述した例の多くは、自動車での使用に適した4サイクルピストンエンジンに関している。しかし、記載した連続可変排気量手法は、様々な内燃機関での使用にとてもよく適していることを理解すべきである。これらは、実質的に、乗用車、トラック、ボート、飛行機、オートバイ、スクーターなどを含めたあらゆる種類の車両のエンジンも、また発電機、芝刈り機、リーフブロワ、模型などの乗り物でない用途のエンジンも含んでいる。また実質的に内燃機関を利用する他のあらゆる用途も含んでいる。記載したいろいろな手法は、実質的にはあらゆる種類の2サイクルピストンエンジン、ディーゼルエンジン、オットーサイクルエンジン、デュアルサイクルエンジン、ミラーサイクルエンジン、アトキンスサイクルエンジン、ヴァンケルエンジン、および他の種類のロータリーエンジン、複合サイクルエンジン(オットーとディーゼルエンジンの複合など)、ハイブリッドエンジン、
星形エンジンなどを含め、様々な互いに異なる熱力学的サイクルの下で動作するエンジンで機能する。記載した手法は、現在知られている熱力学的サイクルを利用して運転しているか後に開発された熱力学的サイクルを利用して運転しているかにかかわらず、新たに開発された内燃機関でよく機能すると考えられている。
【0246】
上記の例の一部は、通常スロットルを備えていて最大圧縮では動作しないことが多いオットーサイクルエンジンに基づいていた。しかし、本概念は、ディーゼルサイクルエンジン、デュアルサイクルエンジン、ミラーサイクルエンジンなどのスロットルのないエンジンへも同様に適用できる。
【0247】
上述で明示した実施形態の一部では、すべてのシリンダが使われる、あるいは連続可変排気量モードで動作される、と考えられていた。しかし、それは必要条件ではない。特定の用途で必要であれば、要求された排気量がいくつかの指定された閾値を下回るとき、および選択されたシリンダを特定の要求された排気量レベルで常に点火するとき、あるいはそのいずれかのとき、点火制御ユニットは常にいくつかの指定されたシリンダ(作動チャンバ)をスキップするよう容易に設計できる。さらに他の実施態様では、記載されたどの作動周期スキップ手法も、いくつかのシリンダが閉鎖されたモードでの動作を行いつつ従来の可変排気量エンジンに適用できる。
【0248】
記載した連続可変排気量モード動作は、希薄燃焼技術、燃料噴射プロファイリング技術、ターボチャージ、スーパーチャージなどを含む、様々な他の燃料経済性および性能のうちの少なくとも一方の向上技術に容易に使用できる。シリンダの中の条件は点火されたシリンダでは比較的固定されているという事実が、一般的に知られている改良技術を容易に実施できるようにしていると考えられているが、広くは使用されていない(たとえば自動車エンジンにおける複数ステージ噴射の燃料噴射プロファイリングの使用)。さらに、シリンダの中の制御された条件は、従来のエンジンでは現実的でない様々な他の改良も可能にすると考えられる。
【0249】
詳細に上述したほとんどの駆動パルス発生器104の実施形態は、シグマデルタコントローラを利用していた。シグマデルタコントローラはエンジン制御に用いるのにとてもよく適していると考えられているが、様々な他のコントローラ、および特に適応(すなわちフィードバック)コントローラがシグマデルタ制御の代わりに使用あるいは使用に向けて開発できることを理解すべきである。たとえば他のフィードバック制御スキームが、入力された所望のエンジン出力信号113を、エンジンを駆動するのに直接的あるいは間接的に使用できる駆動パルスの流れに変換するために使用できることを理解すべきである。
【0250】
記載された実施形態の一部では、一般にシグマデルタコントローラは、入力された所望のエンジン出力信号を駆動パルスの生成に使用できる信号に変換するために設計される。シグマデルタは、入力信号を表すのに使用できる変換器の1つの種類である。記載されたシグマデルタ変換器の一部はオーバーサンプリング変換を示し、様々な代替実施形態では他のオーバーサンプリング変換器がシグマデルタ変換の代わりに使用できる。さらに他の実施形態では、他の種類の変換器も同様に使用できる。変換器は、様々なパルス幅変調スキーム、パルス高変調、CDMA指向の変調を含む様々な種類の変調スキームを採用することができ、あるいは駆動パルス発生器104のシンクロナイザ構成要素がそれに応じて調整されるならば、入力信号を表すのに他の変調スキームが使用できることを理解すべきである。
【0251】
記載された連続可変排気量手法が既存のエンジン設計と非常によく機能することは前述から明らかである。しかし、記載されたスキップ作動周期制御手法は、エンジンの熱力学的効率をさらに向上するのに使うことができる様々な他の技術を促進もしくは可能にさえ
もすると考えられている。たとえば記載された連続可変排気量手法と組合わせたスーパーチャージャあるいはターボチャージャの使用は、エンジンの効率をさらに向上させることができる。コンピュータシミュレーションモデルは、記載された連続可変排気量制御手法とスーパーチャージャの組合わせが、多くの既存のオットーサイクルエンジンの燃料効率を容易に100%以上向上させる可能性があることを示唆している。
【0252】
自動車のエンジンでこのような著しい向上が可能な1つの理由は、ほとんどの自動車のエンジンが大部分の時間潜在的な馬力の比較的低い割合で動作しているからである。たとえば約200〜300馬力の最大パワー出力を送出するように設計されたエンジンは、ほとんどの時間、たとえば車が時速100キロメートルで走行しているようなとき、20〜30馬力しか必要とされていないことがある。
【0253】
上述では、多くの互いに異なるスキップファイアを基とした制御技術を説明し、多くの互いに異なる改善を説明してきた。多くの場合において、特定のコントローラに関連して改善が説明されてきた。しかし、改善の多くは多くのコントローラと併用できることを理解すべきである。たとえば記載された燃料パルスの変化(たとえば燃料噴射量の最適化、濃い燃料パルス、薄いパルスなど)は記載されたコントローラのいずれとも併用できる。記載されたどの制御方法およびコントローラも、コプロセッサとして、あるいはエンジン制御ユニット自体への組込みなどで、実施することができる。
【0254】
いくつかの実施態様では、たとえば冗長シグマデルタコントローラのような冗長コントローラを設けるのが好ましいことがある。冗長コントローラは、1つが機能しなくなった場合に他が引き継ぐように同時に動作することができる。多くの場合、デジタルシグマデルタコントローラはアナログシグマデルタコントローラよりもより正確に調整できる。同時に、デジタルシグマデルタコントローラはアナログシグマデルタコントローラよりも若干故障しやすいことがある。従って、いくつかの実施態様では、主のコントローラをデジタルコントローラとし第2あるいはバックアップのコントローラをアナログシグマデルタコントローラとして、冗長シグマデルタコントローラを設けるのが好ましいことがある。
【0255】
何年にもわたって、「スキップファイア」モードで特定のエンジンを動作することを意図した多くの提案があったことを指摘しておく。しかし、著しい商業的成功を収めたそのような手法は今までにないというのが本出願人の理解である。支持の欠如の一因となった主な要因は、従来の試みが商業化を収めるほどには、要求されるエンジンの滑らかさ、性能、および運転のしやすさの特性を提供する方法でエンジンを制御できなかったことと考えられる。対称的に、記載されたエンジン制御および動作手法は、様々な互いに異なる用途での使用によく適していると考えられる。
【0256】
従って、本実施形態は例示であり制限的なものではないと考えるべきであり、また本発明はここで示された詳細に限定されるものではなく、添付請求項の範囲内で変更できるものである。