特許第6067514号(P6067514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6067514インク式デジタル印刷方法およびこれに用いる湿し水
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067514
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】インク式デジタル印刷方法およびこれに用いる湿し水
(51)【国際特許分類】
   B41N 3/08 20060101AFI20170116BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   B41N3/08 101
   B41M1/06
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-178930(P2013-178930)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-46694(P2014-46694A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2016年8月24日
(31)【優先権主張番号】13/601,803
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・レストレンジ
(72)【発明者】
【氏名】サントク・エス・バデシャ
(72)【発明者】
【氏名】マンダキニ・カナンゴ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ジェイ・ジェルヴァシ
(72)【発明者】
【氏名】マリナ・オナツカ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エム・ケリー
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−064362(JP,A)
【文献】 特開昭49−012908(JP,A)
【文献】 特開2012−096538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 3/08
B41M 1/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク式デジタル印刷の方法であって、
画像形成プレートの表面に湿し水を塗布するステップであって、前記湿し水がインク拒絶性主要成分および離型剤補助成分を含むステップと、
レーザ画像形成によって前記画像形成プレートの前記表面を露光するステップであって、それによって前記主要成分が画像形成データに従って前記画像形成プレートの前記表面の一部から除去され、前記画像形成プレートの表面上には補助成分の層が残るステップと、を含み、
前記主要成分が、オクタメチルシクロテトラシロキサンを含み、前記離型剤補助成分が、アミノシリコーンオイルを含む、方法。
【請求項2】
前記画像形成プレートの前記表面にインクを塗布してインク画像を形成するステップであって、前記インクが前記露光後の前記主要成分を有する前記画像形成プレートの表面の一部において前記主要成分によって拒絶されるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インク画像を印刷可能基板に転写するステップであって、それによって補助成分で構成された前記層が分離するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記湿し水が、オクタメチルシクロテトラシロキサンに対して体積混合物で0.1%から1%のアミノシリコーンオイルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記インクがデジタル印刷に有用である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記露光するステップが、前記主要成分を蒸発させて、該主要成分を前記画像形成データに従って前記画像形成プレートの前記表面の前記一部から除去するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
オクタメチルシクロテトラシロキサンとアミノシリコーンオイルとを混合して前記湿し水を生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
インク式デジタル印刷に有用な湿し水であって、
オクタメチルシクロテトラシロキサンを含む主要成分と、
アミノシリコーンオイルを含む補助成分と、
を含み、
前記主要成分が前記補助成分よりも低い沸点を有する、湿し水。
【請求項9】
前記主要成分と前記補助成分とが混和可能であり、前記補助成分が、前記主要成分と前記補助成分とを含む前記前記湿し水の、体積で0.1%から10%の量である、請求項8に記載の湿し水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、インク式デジタル印刷に関する。詳しくは、本明細書は、多成分、多機能湿し水を用いたインク式デジタル印刷用方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルインク式印刷システムは、典型的な印刷用インクで印刷するのに用いることができる。デジタルインク式印刷工程は、画像形成プレートの表面に湿し水を塗布するステップを含むことができる。画像形成プレートは、画像形成シリンダの外面部分に配列することができる。画像形成シリンダは、画像形成プレート表面の領域が隣接サブシステムのそばを通過するように回転可能とすることができ、湿し水を塗布する吸収材と、画像形成プレートの選択領域から湿し水を画像形成するまたは画像通りに蒸発させるレーザと、画像形成プレート表面にインクを塗布するインク塗布器と、ステーションであって、同ステーションから印刷可能媒体へインク画像が転写された転写ステーションと、画像プレートの表面から残留物を除去し、改めて工程を開始するために表面を用意するクリーナとを含むことができる。湿し水を塗布した後、高出力レーザを用いて、表面の選択領域から湿し水を画像通りに蒸発させることができる。レーザを用いて、デジタル画像データに一致する選択表面領域において湿し水を蒸発させることができる。インクは、インク塗布器によって塗布することができ、画像形成プレートから湿し水が蒸発した領域に堆積することができる。反対に、インクは、湿し水が残存する画像形成プレート表面の領域によって拒絶することができる。結果として生じる画像は、転写ステーションにおいて圧力によって紙または他の適切な媒体へ転写される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
転写用画像形成プレートの表面から紙などの印刷可能媒体へインクを放出する効率は、画像形成プレートの表面上または表面内のインク離型剤の存在に依存している。例えば、シリコーン画像形成プレートのバルクは、インク転写ステップ中にインク離型剤として機能する遊離シリコーンオイルを含むことができる。画像形成プレートのバルク内の遊離シリコーンオイル量が限られているので、インク転写効率は、シリコーンオイルの予備が枯渇するにつれて低下することになる。遊離シリコーンオイルは、外部の放出オイル管理システムを介して補充することができる。しかしながら、放出オイル管理システムは、新たなコストおよび複雑性を追加し、離型剤層の均一性と関連した潜在的故障モードを加える。
【課題を解決するための手段】
【0004】
インク拒絶性成分およびインク放出成分を両方とも有する湿し水、ならびにインク式デジタル印刷用に前記湿し水を塗布するように構成されたシステムが、望まれる。一実施形態において、デジタルインク式印刷システムは、画像形成プレートと、インク式デジタル印刷用画像形成プレートの表面に、多成分湿し水を塗布するように構成された外部液体塗布器とを含むことができる。
【0005】
システムは、主要な、インク拒絶性成分および補助の、インク離型剤成分を含む多成分湿し水を含み、主要成分は補助成分よりも低い沸点を有することができる。主要成分は、オクタメチルシクロテトラシロキサンを含むことができる。補助成分は、アミノシリコーン液を含むことができる。主要成分と補助成分は混和可能とすることができ、時間的に安定した溶液を形成することができる。湿し水は、オクタメチルシクロテトラシロキサンに対して体積混合物で0.1%から10%のアミノシリコーンオイルを含むことができる。一実施形態において、画像形成プレートは、シリコーンを含むことができる。例えば、プレートは、シリコーン系エラストマーから形成することができる。シリコーンプレートは、VITONなどのゴムおよび/またはフルオロヒドロ重合体エラストマーを含む外側層を含むことができる。
【0006】
一実施形態において、方法は、画像形成プレートの表面に湿し水を塗布するステップであって、湿し水はインク拒絶性主要成分および離型剤補助成分を含むステップと、レーザ画像形成によって画像形成プレートの表面を露光するステップであって、それによって主要成分は画像形成データに従って画像形成プレートの表面の一部から除去されて画像形成プレートの表面上に補助成分の層を残すステップと、主要成分のレーザによる蒸発が発生した領域にある画像形成プレートの表面にインクを塗布してインク画像を形成するステップであって、インクは露光後の主要および補助成分を両方とも有する画像形成プレートの表面の一部において主要成分によって拒絶されるステップとを含む、インク式デジタル印刷を含むことができる。方法は、インク画像を印刷可能基板に転写するステップであって、それによって補助成分層は分離するステップを含むことができる。
【0007】
一実施形態において、方法は、オクタメチルシクロテトラシロキサンを含む主要成分を含むことができる。方法は、例えばアミノ、メルカプト、ヒドロなどの機能的シリコーン放出液を含む補助成分を含むことができる。方法は、オクタメチルシクロテトラシロキサンに対して体積混合物で0.1%から10%のシリコーン放出液を含む湿し水を含むことができる。方法は、デジタルインク式印刷に有用なインクを含むことができる。
【0008】
一実施形態において、方法は、主要成分のレーザによる蒸発を含み、デジタル画像データに従って画像形成プレートの表面の一部から主要成分を除去することができる。方法は、オクタメチルシクロテトラシロキサンとアミノシリコーンオイルを混ぜ合わせて、湿し水を生成するステップを含むことができる。
【0009】
一実施形態において、デジタルアーキテクチャ印刷を用いたインク式印刷に有用な湿し水は、主要成分および補助成分を含み、主要成分は補助成分よりも低い沸点を有することができる。一実施形態において、主要成分は、オクタメチルシクロテトラシロキサンを含むことができる。補助成分は、アミノシリコーンオイルを含むことができる。主要成分と補助成分は混和可能であり、その溶液は、オクタメチルシクロテトラシロキサン内に体積で0.1%から1%の量の補助成分を含むことができる。
【0010】
典型的な実施形態が本明細書で説明される。しかしながら、本明細書で説明される装置およびシステムの特徴を組み込んだ任意のシステムが、典型的な実施形態の範囲および趣旨によって包含されることが想像される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、デジタルアーキテクチャ印刷システムおよび工程の概略図である。
図2A図2Aは、デジタルリソグラフィ印刷工程の画像形成前ステップにおける画像形成プレートの概略側面断面図である。
図2B図2Bは、デジタルリソグラフィ印刷工程の画像形成後ステップにおける画像形成プレートの概略側面断面図である。
図2C図2Cは、インク式デジタル印刷工程のインク塗布後ステップにおける画像形成プレートの概略側面断面図である。
図2D図2Dは、インク転写後における画像形成プレートの概略側面断面図である。
図3A図3Aは、紙上のデジタルインク印刷の画像である。
図3B図3Bは、紙上のデジタルインク印刷の画像である。
図4図4は、インク拒絶性テストから生じる、紙上のデジタルインク印刷の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
デジタルアーキテクチャ印刷システムは、デジタルインク式印刷に用いることができる。図1は、印刷用インクを用いて紙などの媒体上に印刷するためのデジタルアーキテクチャ印刷システム100を示す。システム100は、シリンダ101などの画像形成部材を含むことができる。画像形成シリンダ101は、シリンダ101の外面部分に形成された画像形成プレート102を含むことができる。プレートは、シリコーンから形成することができ、光エネルギを吸収するように構成することができる。プレートは、ゴムおよびVITONなどのフルオロ重合体(フッ素重合体)エラストマーを含む外側層を含むことができる。
【0013】
画像形成シリンダ101は、画像形成プレート102表面の領域が隣接サブシステムのそばを通過するように回転可能とすることができ、湿し水105を塗布する吸収材または湿し水塗布システム103と、画像形成プレート102の選択領域107から湿し水105を画像通りに蒸発させる画像形成レーザ(図示せず)と、画像形成プレート102表面にインク115を塗布するインク塗布器111と、ステーションであって、同ステーションから印刷可能媒体121へインク画像が転写された転写ステーション117と、画像形成プレート102の表面から残留物を除去し、改めて工程を開始するために画像形成プレート102表面を用意するクリーナ125とを含むことができる。
【0014】
インク式デジタル印刷工程は、計量システムまたは吸収材を用いて、画像形成プレート102の表面にインク拒絶性剤成分および離型剤成分を含有する、多成分、多機能湿し水を塗布するステップを含むことができる。湿し水105を塗布した後、高出力レーザを用いて、表面の選択領域107から湿し水のインク拒絶性成分を画像通りに蒸発させて、離型剤成分を後に残すことができる。インク115は、インク塗布器111によって塗布することができ、画像形成プレート102から湿し水105のインク拒絶性成分が蒸発した領域に付着することができる。反対に、インク115は、蒸発ステップ後に湿し水のインク拒絶性成分が残存する画像形成プレート表面の領域によって拒絶することができる。結果として生じる画像は、転写ステーション117において圧力によって紙または他の適切な媒体へ転写される。
【0015】
転写用画像形成プレートの表面から紙などの印刷可能媒体へインクを放出する効率は、画像形成プレートの表面上または表面内のインク離型剤の存在に依存している。例えば、先行技術システムにおいて、シリコーン画像形成プレートのバルクは、インク転写ステップ中にインク離型剤として機能する遊離シリコーンオイルを含むことができる。しかしながら、画像形成プレートのバルク内の遊離シリコーンオイル量が限られているので、インク転写効率は、シリコーンオイルの予備が枯渇するにつれて低下する。遊離シリコーンオイルは、外部の放出オイル管理システムを介して補充することができる。放出オイル管理システムの欠点は、新たなコストおよび複雑性であり、離型剤層の均一性と関連した潜在的故障モードを加えることである。
【0016】
容易に入手可能な液体であるD4−シロキサンまたはオクタメチルシクロテトラシロキサンが、効果的なインク拒絶性を示すことが見いだされている。D4−シロキサンは、他のインク拒絶性液体に比べて費用効率の高い代替策である。シリコーン画像形成プレートとすることができる画像形成プレート102とD4−シロキサンとの化学的特性の類似性により、プレート102のバルク内への吸収が可能となり、それによってプレートを著しく膨張させることになる。VITONなどの画像形成プレート材料が、D4−シロキサンによって引き起こされる膨張に対して耐性を示すように見いだされているが、同材料は、高表面エネルギを有し、同材料のバルク内でインク離型剤として機能するための遊離液体を欠いている。このような材料のインク放出効率は、容認しがたいほどに低く、例えば約50%であるように見いだされている。
【0017】
方法およびシステムは、1)効果的なインク拒絶特性および比較的低沸点を有する成分であって、インク式デジタル印刷工程の画像形成ステップまたは蒸発ステップ中に同成分が実質的に蒸発することを可能にする主要成分と、2)効果的なインク放出特性および比較的高沸点を有する成分であって、蒸発ステップ後に画像形成プレート表面上に同成分が残存することを可能にする、補助のまたはより低濃度の成分とから成る、少なくとも2つの成分を含む湿し水を用いる。蒸発ステップ後、薄膜の離型剤は、画像形成プレートの選択画像形成領域上に残存することになる。インク塗布ステップにおいて、インク塗布器は、画像形成プレートにインクを塗布し、同インクは、湿し水の主要成分が蒸発した画像形成プレート表面の領域に付着し、かつインク拒絶性主要成分が残存する画像形成プレート表面の選択画像形成領域から拒絶される。離型剤は、媒体への効率的なインク転写を可能にする分割媒体として機能する。
【0018】
図2A図2Dは、方法の一実施形態を概略断面側面図によって示す。図2Aは、湿し水が塗布された画像形成プレートを示す。湿し水は、インク拒絶性剤である主要成分221を含む。適切なインク拒絶性主要成分は、D4オクタメチルシクロテトラシロキサンを含むことができる。湿し水は、離型剤である補助成分227を含む。適切な離型剤は、アミノシリコーンオイルを含むことができる。主要成分221および補助成分227は、浮遊状態にあるように描写されるが、これらの成分は混和可能であり、湿し水混合ステップにおいて組み合わせて時間的に安定した混合物を形成する。湿し水は、湿し水塗布ステップにおいて塗布することができ、湿し水は、外部液体塗布器によって画像形成プレートの表面に塗布される。図2Aは、湿し水塗布ステップにおいて湿し水がプレート表面に塗布された後の画像形成前ステップにおける画像形成プレートおよび湿し水を示す。
【0019】
図2Bは、高出力レーザを用いて画像形成プレート表面の選択領域を蒸発させる画像形成ステップ後または蒸発ステップ後の画像形成プレートを示す。画像形成ステップ後または蒸発ステップ後、インク離型剤フィルム235は、選択プレート表面領域において残存する。具体的には、インク拒絶性剤221は除去され、離型剤227は選択領域において残存し、一方で主要成分221および離型剤227を含む多成分混合物は、レーザが当てられていない他の任意の領域において残存する。
【0020】
図2Cは、インク塗布サブシステムにおいてインク塗布ステップ後の画像形成プレートを示す。インク247は、補助成分を含む離型剤フィルムに付着された状態で示される。インク塗布ステップ後、残りの多成分湿し水を有する部分において、実質的にインクは残存しない。図2Dは、転写ステーションにおいて紙などの媒体へインクが転写された転写ステップ後の画像形成プレートを示す。インク剥離層は、紙へのインクの効率的な転写を可能にするインク剥離層の分割を可能にする。湿し水の中には、紙へ転写されるものもあってもよい。
【0021】
実施形態に従う湿し水は、D4またはオクタメチルシクロテトラシロキサンを含む主要成分、およびアミノシリコーンオイル補助成分を含むことができる。D4は、デジタル印刷に用いるインクを効果的に拒絶するように見いだされているが、容易に入手可能であり、費用効率が高い。アミノシリコーンオイルは、電子写真定着システムにおいてトナー離型剤として用いられる液体である。アミノシリコーンオイルおよびオクタメチルシクロテトラシロキサンは、十分に混和可能であり、組み合わせて時間的に安定した混合物を形成する。
【0022】
例えば、D4内に体積混合物で1%のアミノシリコーンオイルが作り出され、手によるインク塗布試験でテストされた。D4とアミノシリコーンオイルとの混合物から成る薄層が、アニロックス計量ロールを用いて、VITON Silicon(VOS)画像形成表面上で計量された。塗布された湿し水が、室温で15分間蒸発することが認められた。湿し水フィルムのD4成分は、その期間にわたって蒸発して、薄層のアミノシリコーンオイルを残した。当初湿し水で塗布された領域と塗布されていない領域との間に観測された光沢差は、残留シリコーンオイル層の存在を確証した。次いでアニロックスインク塗布ロールを組み込んだ、手によるインク塗布立証システムを用いて、VOSサンプル全体がデジタル印刷に有用なインクで塗布された。堆積したインクは、適合した予備ロールを用いて加圧下で紙へ転写された。次いで、紙への第2転写が、白紙を用いて実行されて、紙への第1転写後に残っている残留インク量を決定した。
【0023】
図3Aは、紙への第1転写による印刷物のデジタル画像を示す。図3Aは、湿し水が当初塗布された場所において、インク濃度がより大きかったことを示す。図3Bは、紙への第2転写の画像を示し、湿し水が当初塗布された領域において、より少ない残留インク、またはより低いインク濃度を示す。したがって、湿し水の主要成分が蒸発した後の状態のままである、VOSサンプル上のシリコーン層が、インク放出を高めてインク画像転写効率を高めることになった。
【0024】
別の例では、VOSサンプルは、クリーンにされ、2つの成分の湿し水の新たな層がVOSサンプル表面に塗布された。湿し水の塗布ステップ直後に、手によるインク塗布ユニットを用いて、サンプルがインクで塗布された。図4の画像に示された結果は、D4/アミノシリコーンオイル混合物が、インクを拒絶しかつ画像形成ステップで効率的な画像転写を可能にするのに効果的であり、一方で画像品質不良が低減された印刷物が生成されることを示した。図4は、多成分湿し水で塗布された領域を有するテスト印刷物を示す。
【0025】
多成分湿し水として塗布された離型剤は、インク式デジタル印刷システムを用いて、その場でのアプローチを介して印刷するのに有利である。多成分湿し水は、画像形成部材から成る画像形成プレートのバルク内へ放出液を包含することに関連した困難を克服する。その場での放出液を備えた画像形成プレートは、典型的には製造時に材料のバルク内へ包含された放出液の量に基づいて、限られた寿命を有する。多成分湿し水システムは、画像形成プレートのより長い運用期間を通じて、離型剤が継続されるように構成することができる。さらに、多成分湿し水およびシステムは、不均一な離型剤分布に起因する画像品質不良を減少させるように調整する。多成分システムは、画像形成プレートの年齢に依存しない均一な離型剤フィルムを塗布することができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4