(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067516
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0271 20160101AFI20170116BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20170116BHJP
H01M 8/0202 20160101ALI20170116BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20170116BHJP
【FI】
H01M8/02 S
H01M8/02 E
H01M8/02 B
H01M8/02 R
!H01M8/10
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-181340(P2013-181340)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-50054(P2015-50054A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】高崎 文彰
(72)【発明者】
【氏名】栗原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 研二
(72)【発明者】
【氏名】板倉 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】門野 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次
(72)【発明者】
【氏名】林 宏和
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−054118(JP,A)
【文献】
特開2012−243580(JP,A)
【文献】
特開2001−332277(JP,A)
【文献】
特開2006−244765(JP,A)
【文献】
特開2004−281089(JP,A)
【文献】
特開2007−220686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟持する一対のセパレータと、を有する燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池であって、
前記一対のセパレータ間の周縁部に配置された接着性を有する接着シール部材と、
前記燃料電池セルの間に配置され前記燃料電池セルのセパレータと当接する面が非接着性とされたガスケットとを備え、
隣接する前記燃料電池セルの一方の燃料電池セルにおける前記接着シール部材の一部が他方の燃料電池セルのセパレータに接触していることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記燃料電池セルを積層方向に見たときに、隣接する前記燃料電池セルの隣接する前記セパレータのうち、一方のセパレータの外周端が、前記接着シール部材の外周端よりも内側に位置することにより、前記接着シール部材が前記隣接する燃料電池セルにおける他方のセパレータに接触していることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記セパレータは、前記膜電極接合体に対向する位置に形成されたガス流路と、当該セパレータに貫通形成されて前記ガス流路の一端にガスを導入して他端からガスを排出する複数のマニホールドと、を備え、
前記周縁部は、前記マニホールドよりも外側に位置しており、
前記周縁部における前記マニホールド側に位置する一方の前記セパレータの外周端が、前記周縁部における前記マニホールド側に位置する前記接着シール部材の外周端よりも当該周縁部の内側に位置することにより、一方の燃料電池セルの前記接着シール部材が、隣接する他方の燃料電池セルのセパレータに接触していることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記マニホールドと前記ガス流路との間から前記マニホールドの間の領域まで延在して形成されている凸部とを備えていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記凸部は、前記マニホールドと前記ガス流路との間に位置する部分に他の部分よりも幅の広い拡幅部を備え、前記拡幅部の内部に前記接着シール部材が充填されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルを複数積層して構成された燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の燃料電池セルを積層したセル積層体を箱状のケースの内側に収容した燃料電池が知られている。各燃料電池セルは、一般的に、一対の電極が電解質膜の両側に配置された膜電極接合体(以下MEA;Membrane Electrode Assemblyと呼ぶ。)と、MEAの両側に配置された一対のセパレータとを備えている。各セパレータに形成されたガス流路を介して酸化ガス又は燃料ガスが各電極に供給されることで、燃料電池セルの発電が行われる。
【0003】
上記のような燃料電池において、燃料電池セルの外周部には、燃料ガス又は酸化剤ガスを供給するためのマニホールドが複数設けられている。そして、アノード側に供給される燃料ガスやカソード側に供給される酸化剤ガス、冷却水の混合や漏れを防止するために、MEAやマニホールドの周囲には、シール部材が配置され、燃料電池セルを積層する際には、シール部材を介して燃料電池セルを組立てることが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
下記特許文献1に記載された燃料電池では、接着性を有する接着シール部材と弾接シール部材(ガスケット)を備えている。接着シール部材は、燃料電池セルのセパレータ間外周部を接着し、弾接シール部材は、燃料電池セル間の外周部を接着している。このように、燃料電池セルの外周部を、それぞれ接着性を有する部材によってシールして燃料電池セルを複数積層しているため、車両衝突時等における燃料電池セル間のずれ(
図9参照)を抑えることができる。
【0005】
ところで、燃料電池セルの組立て時において一部の燃料電池セルもしくはセパレータを交換する必要が生じた場合に、その部位に対応するシール部材を剥がして分解しなければならない。しかしながら、下記特許文献1に記載の燃料電池は、接着シール部材と弾接シール部材共に接着性を有し、セパレータと強く張り付いているため、一部の燃料電池セルを抜き取る際に弾接シール部材を破壊してしまうおそれがある。このため、下記特許文献1に記載の燃料電池は、燃料電池セルごとに分解して再組立することが難しいという問題があった。
【0006】
一方、下記特許文献2に記載された燃料電池は、一対のセパレータ間には、反応ガスの漏れを防止するために接着性シールを設け、隣接する単位燃料電池の隣接するセパレータ間には、非接着性シールを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−243580号公報
【特許文献2】特開2001−332277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2に記載された燃料電池は、非接着性シールを設けて一方のセパレータとこれに積層される他方のセパレータとを容易に剥がすことができるので、上記特許文献1の燃料電池セルごとに分解して再組立することの難しさを解消しているものと思われる。しかしながら、一対のセパレータ間には接着性シールを設けているものの、隣接する燃料電池セルの隣接するセパレータ間には非接着性シールを設けているため、隣接する燃料電池セル間の接着力が弱く、車両衝突時に燃料電池セル間にずれが発生するおそれがある。上記特許文献1、2に記載された燃料電池のように、従来の燃料電池においては、燃料電池セルごとに分解して組立する再組付け性と車両衝突時における燃料電池セル間のずれの抑制について、同時に成立させることが困難であった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両衝突時の燃料電池セル間ずれを抑制しつつ、燃料電池セルごとに分解して組立する再組付け性を容易とする燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池は、電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟持する一対のセパレータと、を有する燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池であって、前記一対のセパレータ間の周縁部に配置された接着性を有する接着シール部材と、前記燃料電池セルの間に配置され前記燃料電池セルのセパレータと当接する面が非接着性とされたガスケットとを備え、隣接する前記燃料電池セルの一方の燃料電池セルにおける前記接着シール部材の一部が他方の燃料電池セルのセパレータに接触していることを特徴とする。
例えば、前記燃料電池セルを積層方向に見たときに、隣接する前記燃料電池セルの隣接する前記セパレータのうち、一方のセパレータの外周端が、前記接着シール部材の外周端よりも内側に位置することにより、前記接着シール部材が前記隣接する燃料電池セルにおける他方のセパレータに接触していてもよい。
【0011】
このように、接着シール部材の一部を積層方向に隣接する燃料電池セルのセパレータに接触させることにより、接着シール部材と隣接する燃料電池セルのセパレータとの間を接着することができる。その結果、隣接する燃料電池セル間を接着することができるので、車両衝突時に発生する燃料電池セル間のずれを抑制することができる。また、燃料電池セル間に、非接着性のガスケットを用いて燃料電池セルを積層しているので、ガスケットと隣接する燃料電池セルのセパレータとの張り付き力(タック力)を小さくすることができる。その結果、一部の燃料電池セルを交換する必要が生じた場合に、その部位に対応する燃料電池セルを容易に抜き出すことができるため、ガスケットを破壊することなく燃料電池セルの分解再組立を容易に行うことができる。なお、非接着性とは、接着性を有しないもののみならず、低接着性を有するものをも含む。この低接着性とは、ガスケット全体あたりの接着成分(例えば、レゾルシノール系化合物およびメラミン系化合物と、シランカップリング剤と、の少なくとも一方からなる接着成分)が2%以下、好ましくは1%以下であることを意味する。
【0012】
また本発明に係る燃料電池において、前記セパレータは、前記膜電極接合体に対向する位置に形成されたガス流路と、当該セパレータに貫通形成されて前記ガス流路の一端にガスを導入して他端からガスを排出する複数のマニホールドと、を備え、前記周縁部は、前記マニホールドよりも外側に位置しており、前記周縁部における前記マニホールド側に位置する一方の前記セパレータの外周端が、前記周縁部における前記マニホールド側に位置する前記接着シール部材の外周端よりも当該周縁部の内側に位置することにより、一方の燃料電池セルの前記接着シール部材が、隣接する他方の燃料電池セルのセパレータに接触していてもよい。
【0013】
この態様では、一対のセパレータ間周縁部におけるマニホールド側においても、一方の燃料電池セルの接着シール部材を、隣接する他方の燃料電池セルのセパレータに接着させることができるので、接着シール部材と隣接する燃料電池セルのセパレータとの間に好適なタック力を発現させることができる。その結果、車両衝突時に発生する燃料電池セル間のずれをより一層効果的に抑制することができる。
【0014】
また本発明に係る燃料電池においては、前記マニホールドと前記ガス流路との間から前記マニホールドの間の領域まで延在して形成されている凸部を備えていてもよい。
【0015】
この態様では、凸部がマニホールドとガス流路との間からマニホールドの間の領域まで延在して形成されているので、貫通形成されたマニホールドとマニホールドとの間の領域における剛性を上げることができる。その結果、車両の衝突時においても、セパレータの端部よりも内側の領域における変形を抑制することができる。
【0016】
また本発明に係る燃料電池において、前記凸部は、前記マニホールドと前記ガス流路との間に位置する部分に他の部分よりも幅の広い拡幅部を備え、前記拡幅部の内部に前記接着シール部材が充填されていてもよい。
【0017】
この態様では、凸部に拡幅部を設けて、その内部に例えばゴム製材料からなる接着シール部材を充填させることにより、ガス流路の一端又は他端とマニホールドとの間の領域が何らかの原因で破損した場合であっても、ガスがセパレータの長手方向へ流れて凸部表面を通過し、燃料電池セルの外部に流出するガスリークを防止してシール性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接着シール部材と隣接する燃料電池セルのセパレータとの間を接着することができるので、車両衝突時に発生する燃料電池セル間のずれを抑制することができる。また、ガスケットは、その隣接する燃料電池セルのセパレータと当接する面を非接着性の材料で形成しているため、燃料電池セルごとに交換作業を行うことができ、分解再組立てを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池の構造について示す全体概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る燃料電池が備える燃料電池セルを示す断面図である。
【
図4】
図2に示した燃料電池セルの周縁部における厚さと燃料電池セルの電極部材における厚さを示す断面図である。
【
図5】燃料電池セルのセパレータにおける長手方向端部を示す拡大平面図である。
【
図6】変形例における燃料電池が備える燃料電池セルのセパレータを示す拡大平面図である。
【
図7】
図6に示した変形例における領域γが決壊した場合のセパレータの長手方向に流れるガスの流れを示す拡大平面図である。
【
図8】変形例における燃料電池が備える燃料電池セルのセパレータを示す拡大平面図である。
【
図9】従来の燃料電池における車両衝突時の燃料電池セルのずれを示す全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しながら説明する。なお、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略する。
【0021】
(第1実施例)
図1は、本発明の実施形態における燃料電池の全体構成を示した図である。
図1に示すように、燃料電池1は、複数の燃料電池セル2が積層され、両端に位置する燃料電池セル2の外側に順次、出力端子5付きの集電板6、絶縁板7及びエンドプレート8を各々配置して構成されている。燃料電池1は、例えば、両エンドプレート8間を架け渡すようにして設けられたテンションプレート(図示せず)が各エンドプレート8にボルト固定されることで、燃料電池セル2の積層方向に所定の圧縮力がかかった状態となっている。以下に示す実施形態においては、燃料電池セル2を積層する方向が積層方向に、積層方向に略垂直な方向が面方向に、それぞれ対応している。
【0022】
図2は、燃料電池セル2の断面図を示している。なお、
図2は、燃料電池セルの断面構造を明確化するために、2つの燃料電池セルを積層した状態で示している。また、説明の容易化のために、電極部材3におけるカソード側のセパレータ12aの冷媒流路及び酸化ガス流路を省略して示している。
【0023】
図2に示すように、燃料電池セル2は、電極部材3と、一対のセパレータ12a、12bと、接着シール部材26と、を備え、燃料電池セル2の外周部にはガスケット13が設けられている。電極部材3は、MEA(膜電極接合体)11と、アノード多孔質層23aと、カソード多孔質層23bと、を備えている。アノード多孔質層23a、カソード多孔質層23bは夫々「多孔質層」に含まれる。MEA11を挟持する一対の各セパレータ12a、12bは、略平面状の部品であり、平面視矩形の形状を有している。MEA11の外形は、各セパレータ12a、12bの外形よりも小さく形成され、各セパレータ12a、12bの周縁部を除いた位置に配置されることとなる。
【0024】
MEA11は、高分子材料のイオン交換膜からなる電解質膜21と、電解質膜21を両面から挟んだ一対の電極22a、22b(カソード及びアノード)とで構成され、全体として積層形態を有している。電解質膜21には、各電極22a、22bが例えばホットプレス法により接合されている。
【0025】
電極22a,22bは、白金などの触媒を結着した例えば多孔質のカーボン素材で構成されている。一方の電極22a(カソード)には、空気や酸化剤などの酸化ガスが供給され、他方の電極22b(アノード)には、燃料ガスとしての水素ガスが供給される。この二つのガスによってMEA11内で電気化学反応が生じ、燃料電池セル2は起電力を得る。
【0026】
各セパレータ12a,12bは、ガス不透過の導電性材料で構成されている。導電性材料としては、例えばカーボンや導電性を有する硬質樹脂のほか、アルミニウムやステンレス等の金属(メタル)が挙げられる。
【0027】
セパレータ12aは、MEA21のカソード側に対向するように配置されている。セパレータ12aには、電極22aに面する部分をプレス成形することによって、あるいは、電極22aに面する部分の表裏面に溝及び/又は突起を形成することによって、表裏各面に複数の凹凸が形成されている。この複数の凸部および凹部は、それぞれ一方向に延在しており、酸化ガスのガス流路や冷却水流路を画定している。
【0028】
具体的には、セパレータ12aの電極22a側となる内側の面には、MEA21に対向する位置にストレート状の酸化ガスのガス流路が複数形成され、その反対側の外側の面には、ストレート状の冷却水流路が複数形成されている。
【0029】
セパレータ12bは、MEA21のアノード側に対向するように配置されている。セパレータ12bは、例えば、MEA21側の表面が溝のない略平坦な平板によって形成されたフラット型セパレータで構成しても良い。セパレータ12bをフラット型セパレータで構成した場合には、ガス流路をセパレータ12bから分離し、ガス流路をエキスパンドメタル等の金属多孔体から形成した多孔体流路(図示せず)を配置してMEA21に燃料ガス又は酸化ガスを提供するように構成しても良い。なお、セパレータ12bをプレス型セパレータで構成した場合には、セパレータ12bの電極22b側となる内側の面には、ストレート状の水素ガスのガス流路が複数形成され、その反対側の外側の面には、ストレート状の冷却水流路が複数形成される。
【0030】
セパレータ12a,12bの長辺方向の端部周辺には、酸化ガスの入口側のマニホールド41(41a)、水素ガスの入口側のマニホールド41(41b)、および冷却水の入口側のマニホールド41(41c)が矩形状に貫通形成されている。セパレータ12a,12bの長辺方向他端部には、酸化ガスの出口側のマニホールド51(51a)、水素ガスの出口側のマニホールド51(51a)、および冷却水の出口側のマニホールド51(51b)が矩形状に貫通形成されている。
【0031】
接着シール部材26は、矩形枠状を呈し、接着成分(例えば、レゾルシノール系化合物およびメラミン系化合物と、シランカップリング剤と、の少なくとも一方からなる接着成分)を2%以上含有することによって接着性を有しているソリッドゴムからなる。接着シール部材26は、一対のセパレータ12a、12a間及び電極部材3周縁に形成され、接着シール部材26を介して一対のセパレータ12a、12b、電極部材3を接着している。このため、接着シール部材26により、電極部材3を外部から封止することが可能になっている。なお、
図2に示すように、接着シール部材26は、一対のセパレータ12a、12aに形成されたマニホールド41、51よりも面方向外側に位置する、一対のセパレータ12a、12a間周縁部にも形成されている。
【0032】
図3は、
図2の円B内拡大図を示している。本実施形態では、セパレータ12a,12b及び接着シール部材26を積層方向に見たときに、少なくとも一方のセパレータ12a,12bの外周端110(110a、110b)が、接着シール部材26の外周端26aよりも内側に位置することにより、接着シール部材26の一部である接着部70を隣接する燃料電池セル2のセパレータ12a、12bに接触させている。換言すれば、隣接する燃料電池セル2の一方の燃料電池セル2における接着シール部材26の一部を、他方の燃料電池セル2のセパレータ12a、12aに接触させている。
図3では、一例として、一方のセパレータ12aの外周端110a及び接着シール部材26の外周端26aについては、それらが同一面上に存在する位置関係にあるが、他方のセパレータ12bの外周端110bについては、接着シール部材26の外周端26aよりも内側(
図3では右側)に位置することにより、接着シール部材26の一部である接着部70を、隣接する燃料電池セル2のセパレータ12aに接触させている。そして、接着シール部材26が、積層方向に隣接する燃料電池セル2のセパレータ12aに接触した状態で、接着シール部材26が圧縮されることにより、接着シール部材26と隣接する燃料電池セル2のセパレータ12aとの間にタック力を発現させることができる。この結果、車両衝突時に発生する燃料電池セル2間のずれを抑制することができる。
【0033】
また、
図2、3に示すように、本実施形態では、一対のセパレータ12a、12b間周縁部におけるマニホールド41側においても、接着シール部材26の一部である接着部70を、隣接する燃料電池セル2のセパレータ12aに接触させている。具体的には、一対のセパレータ12a、12b間周縁部におけるマニホールド41側に位置するセパレータ12bの外周端110bが、一対のセパレータ12a、12b間周縁部におけるマニホールド41側に位置する接着シール部材26の外周端26bよりも一対のセパレータ12a、12b間周縁部の内側(
図3では左側)に位置することにより、一方の燃料電池セル2の接着シール部材26が、隣接する他方の燃料電池セル2のセパレータ12aに接触するように構成されている。
【0034】
ガスケット13は、MEA11及びセパレータ12a,12bとは別体に成形されたものであって、矩形枠状を呈して燃料電池セル2の周縁部に固定されている。燃料電池セル2はガスケット13を介して複数積層されている。ガスケット13は、EPDMをゴム成分とする非接着性のソリッドゴムで形成されている。
図2、3に示すように、ガスケット13は、セパレータ12bの上面の周縁部に設けられ、燃料電池1を形成する際に、積層方向に隣接する燃料電池セルのセパレータ12aと当接するリップ13aを有している。リップ13aは、燃料電池1を組み立てる際に、隣接する燃料電池セル2へと押し付けられ、環状のシールラインが形成される。このシールラインにより、空気、水素、冷却水の漏れが抑制される。また、ガスケット13は、隣接する燃料電池セルへと当接するリップ13a以外を接着性を有する材料で形成しても良く、例えば、セパレータ12bの上面の周縁部に接着する領域について接着性を有する材料で形成し、積層方向に隣接する燃料電池セル2に当接するリップ13aを非接着性の材料で形成しても良い。
【0035】
このように構成することで、ガスケット13と隣接する燃料電池セル2のセパレータ12bとのタック力を小さくすることができるため、ガスケット13と隣接する燃料電池セル2のセパレータ12bとを容易に剥がすことができる。その結果、燃料電池セル組立て時において、一部の燃料電池セル2を交換する必要が生じた場合に、その部位に対応する燃料電池セル2を容易に剥がすことができるため、ガスケット13を破壊することなく分解再組立を容易に行うことができる。また、ガスケット13のうち、セパレータ12bの上面の周縁部に接着する領域について接着性を有する材料で形成することにより、分解再組立時において、この領域において剥がれを起こすようなことはない。
【0036】
また、ガスケット13自体は接着力を有さないが、ガスケット13の底面13bとセパレータ12bとが当接している部分(土台部分)は、セパレータ12bに接着していることが好ましい。このように土台部分をセパレータ12bに接着することにより、ガス漏れをより確実に抑制することができる。この場合、土台部分は、接着剤(プライマー)を介してセパレータ12bに接着している。
【0037】
図4は、燃料電池セル2の周縁部(フランジ部)における厚さと、燃料電池セル2の電極部材3における厚さを示す断面図である。具体的には、非圧縮状態における一対のセパレータ12a,12b間周縁部における一対のセパレータ12a,12b間の距離にガスケット13の積層方向の厚さを加えた距離、換言すれば、燃料電池セル2の周縁部に形成されたガスケット13の底面から、隣接する燃料電池セル2の周縁部に形成されたガスケット13のリップ13aまでの距離をL1、電極部材3の厚さあるいは電極部材3に0.1MPA以上の圧力をかけた場合の厚さをL2と定義したときに、L1がL2よりも大きくなるように形成されている。
【0038】
このように構成することで、積層方向に燃料電池セルを組み立てる際に、締結力により、燃料電池セル2の周縁部を圧縮状態にすることができる。このため、接着シール部材26と少なくとも一方のセパレータ12a、12bとのタック力を発現させることができる。その結果、車両衝突時に発生する燃料電池セル間のずれを抑制することができる。
【0039】
図5は、セパレータ12aの長手方向端部における拡大平面図である。
図5に示すように、セパレータ12aの電極側の面に形成されたガス流路31aとマニホールド51(51a)、51(51b)との間には、ディンプル80(凸部)が設けられている。ディンプル80は、セパレータ12aの表面から突出し、複数配列されている。
【0040】
(変形例)
図6及び
図7は変形例としての燃料電池1が備える燃料電池セル2のセパレータ12aを示す図である。
図6は、セパレータ12aの長手方向端部における拡大平面図である。
【0041】
上述したように、燃料電池セル2間においては、接着シール部材26が隣接する燃料電池セル2のセパレータ12aに接触しているため、セパレータ12aの端部(
図5、6に示すαの領域)に強いタック力が生じ、車両衝突時のずれが抑制されている。しかし、車両の大衝突時においてセパレータ12aの長手方向に生じる衝撃力により、セパレータ12aの端部より内側の領域である、例えばマニホールド51(51a)とマニホールド51(51b)との間の領域β(以下梁部βと呼ぶ)において変形するおそれがある。なお、梁部βの領域は、マニホールド51(51a)とマニホールド51(51b)との間の領域に限定されるわけではなく、その大きさや位置については、セパレータ12aの端部より内側の領域であれば様々なものを含む。
【0042】
変形例としてのセパレータ12aは、
図6に示すように、
図5のセパレータ12aの構造に加えて以下の構造を有している点が異なっている。すなわち、梁部βの近傍に位置するディンプル80が、ガス流路31aとマニホールド51(51a)、51(51b)との間から、梁部βまで延在して形成されている。このようにディンプル80を、梁部βまで延在して形成することにより、梁部βの剛性を上げることができる。その結果、車両の大衝突時においても、セパレータ12aにおける梁部βが座屈変形することを抑制することができる。なお、ディンプル80は、梁部βが座屈変形することを抑制する機能を有していれば良く、その形状や個数等については、各セパレータ12a、12bの形状や厚みによって様々なものが選択されうる。
【0043】
図7は、
図6に示したセパレータ12aの長手方向に流れるガスの流れ90を示す図である。
図7に示すように、ガス流路31aとディンプル80との間の領域γが決壊した場合に、ガス流路31aを流れるガスが、ディンプル80内部を通り、燃料電池セル2の外部へリークする可能性がある。
【0044】
(変形例)
図8は、変形例としてのセパレータ12aを示す拡大平面図である。セパレータ12aは、
図7のセパレータ12aの構造に加えて拡幅部81を有している点が異なっている。
拡幅部81は、ディンプル80の一部の幅を拡大して形成されている。そして、拡幅部81の内部には、例えばゴム製材料から成る接着シール部材が充填されている。このように構成することで、ガス流路31aの一端又は他端とマニホールド41、51との間の領域が何らかの原因で破損した場合であっても、ガスがセパレータの長手方向へ流れてディンプル80表面を通過して燃料電池セル2の外部に流出するガスのリークを防止し、シール性を向上させることができる。なお、拡幅部81は、シール性を向上させる機能を有していれば良く、その形状や大きさ等については、様々なものが選択されうる。
【0045】
以上、本発明の実施例を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発
明の範囲をこの実施例にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の実施例でも実
施することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:燃料電池
2:燃料電池セル
3:電極部材
11:膜電極接合体
12a,12b:セパレータ
13:ガスケット
21:電解質膜
22a,22b:電極
23a:アノード多孔質層
23b:カソード多孔質層
26:接着シール部材
31a:ガス流路
41、51:マニホールド
80:ディンプル
81:拡幅部