特許第6067518号(P6067518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎化工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000002
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000003
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000004
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000005
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000006
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000007
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000008
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000009
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000010
  • 特許6067518-洋式便器用手摺り 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067518
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】洋式便器用手摺り
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/02 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   A47K17/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-184425(P2013-184425)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-51072(P2015-51072A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年9月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年4月18日〜4月20日インテックス大阪において開催されたバリアフリー2013にて公開
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000245830
【氏名又は名称】矢崎化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【弁理士】
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】古澤 繁
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−059430(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3091571(JP,U)
【文献】 特開平02−285144(JP,A)
【文献】 特開2011−106174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 17/02
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺り部を備えた左右一対の側枠が洋式便器の左右両側位置配置され、洋式便器の前面側に配置され連結桟洋式便器の両側面部を挟み付けて固定する固定手段とを備える洋式便器用手摺りにおいて、
前記固定手段は、洋式便器の側面部に対して軸孔が略直交する配置に固定された支持部と、前記支持部の軸孔へ軸方向への移動可能であるが、回転は不可の構成で挿入された1本のねじ軸と、前記ねじ軸へねじ込まれて前記支持部において洋式便器と対向する端面へ当接する配置とされたナットと、
前記ねじ軸の先端部に洋式便器の側面部へ押し付け可能な配置取り付けられた押当て部とで構成され、
記ナットを正転させることによってねじ軸を前進させ押当て部を洋式便器の側面へ押し付けて洋式便器用手摺りの位置を固定することができ、同ナットを逆転させて緩めることにより洋式便器から洋式便器用手摺りを撤去可能に構成されていることを特徴とする、洋式便器用手摺り。
【請求項2】
前記連結桟は、各側枠との取合部に設けた固定部材により水平軸回りに回転可能な構成で支持されていることを特徴とする、請求項1に記載した洋式便器用手摺り。
【請求項3】
固定部材は、連結桟を水平軸回りに回転可能に支持する凹部を内側面に設けた挟持部材で支持され、前記挟持部材は各々の共通位置に設けたねじ孔へねじ込んだボルトを締め込むことにより強固に固定され、同ボルトを緩めることにより、各側枠との取合部を中心に水平軸回りに回転可能に構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した洋式便器用手摺り。
【請求項4】
固定手段の押当て部は、ねじ軸部を中心に上下方向へ回転変位させることが可能とされ、便器への押し付け角度と位置を調整できる構成であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した洋式便器用手摺り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洋式便器へ後付けで設置する据え置き型の便器用手摺りの技術分野に属し、更に言えば、大きさや形状が異なる様々な便器へ簡単に取り付け設置することができ、固定状態の安定性が高く使用者の信頼性と安全性を高めた便器用手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高齢者や体の不自由な人は、一人で洋式便器の立ち座り動作を行うことが困難な場合が多い。そのため、高齢者や体の不自由な人が、介助者の手を借りずに一人で洋式便器の立ち座り動作ができる補助器具として、洋式便器へ後付けで設置する据え置き型の便器用手摺りが、開発されている。
従来の便器用手摺りの基本構造は、概して、上端に手摺り部を備えた左右一対の側枠が、洋式便器の左右両側位置に設置され、前記の側枠が便器の前面側に配置された連結桟で連結されており、前記側枠の後部側に取り付けられた固定手段を用いて洋式便器へ固定する構成である。
特に、使用者が高齢者や体の不自由な人であることを考えると、一部に集中して荷重が掛かって、使用者が使用中に誤って転倒することがないように、高い安全性と安定性が要求される。よって、使用中に不用意に位置ずれが起きたり、或いはガタつきが起きたりしないように、洋式便器の外面へしっかりと強固に固定して、使用上の安全性を確保しなければならない。更に、主に家庭や病院等のトイレに設置する場合が想定されるので、専門技術や工具等が不要で、誰でも簡単に取り付け又は取外しができる構造が望まれており、例えば下記特許文献1〜3に示したように種々開発され、既に実用に供されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された手摺付洋風便器は、洋式便器の左右両側位置に左右一対で設置された側枠が金属管を矩形に屈曲させた形状であり、前記各側枠の下方には板状又は管状の横桟が取り付けられ、該横桟に設けられた複数の固定棒取付用ねじ孔にそれぞれ固定棒がねじ込まれており、該固定棒の先端を洋式便器の側面へ強く押圧させることで、本体を便器に固定させる。
【0004】
下記特許文献2に開示された便器用手摺りは、固定部材が手摺本体(側枠)の左右両側から洋式便器の幅方向の中央部に向かい斜め上方に立ち上がって、洋式便器の左右両側の湾曲した上部外表面を斜め下方から押圧する一対の固定アームを備えた構成である。
左右の側枠を連結する連結部材は、洋式便器の前面から両側部に亘ってその周囲を取り囲むように床面に載置させるU字部材と、該U字部材と側枠とを相互に連結するストレート部材とで構成されている。
つまり、前記連結部材のU字部材で洋式便器の前面周囲を抱え込んで便器用手摺りを洋式便器へ嵌め込んだ状態で、左右の固定アームを便器の側面へ斜め上方に押圧させて固定する構成である。
【0005】
下記特許文献3に開示された便器用手摺りは、洋式便器の左右両側位置に左右一対で設置された側枠、又は該左右一対の側枠を連結する連結枠へ、左右一対で成る固定アームが便器の後方に向かって回動可能に差し出されており、前記連結枠には便器の前面部に当接する当接部が設けられた構成である。
前記固定アームを内側へ回転させて、洋式便器の左右側面部を固定アームで左右後寄りから抱え込むとともに、連結枠の当接部を便器の前面部に当接させることによって、左右の固定アームと連結枠の当接部による抱え込み、三点支持で便器用手摺りを洋式便器に安定させた状態で固定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−23997号公報
【特許文献2】特許第2981182号公報
【特許文献3】特許第4491374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された便器用手摺りは、細長い固定棒の先端を洋式便器の湾曲側面に押し当てる構成なので、押付力が逃げ易い。また、しっかりと強固な固定が難しく、安定性に欠けるため、使用中に不用意に位置ずれが起きたり、或いはガタつきが起きる懸念が大きい。また、人が屈んだ姿勢のままで、固定棒取付用ねじ孔へねじ込まれた長ねじで成る複数本の固定棒を比較的長い間隔分を回し続けて便器へ当てがい、更にそれから便器に向かって押圧させなければならないため、固定作業が非常に面倒で至極不便である。
【0008】
その点、上記特許文献2に開示された便器用手摺りは、連結部材のU字部材で洋式便器の前面周囲を抱え込み、更に左右の斜め上方に立ち上げられた固定アームを便器のせり出す湾曲側面に押圧させて固定する構成なので、上記特許文献1の便器用手摺りの構成に比べるとそれなりの固定作用が期待できる。
しかし、せり出す湾曲側面がない便器には固定が行えない。また、左右一対で成るアームの二点支持で固定する構成なので、手摺り本体に回転方向の力が加わった場合にはその固定が外れるおそれがあり、安全且つ安心して使用できる構造とは言えない。
【0009】
上記特許文献3に開示された便器用手摺りは、左右の固定アームと連結枠とで洋式便器を抱え込み三点支持により固定する構成なので、しっかりと強固に固定させることができ、安全に安心して使用できると認められる。
しかし、前記便器用手摺りは、固定アームを水平方向へ回動して固定する構成であって、固定作業の作業性は良い。しかし、他の各構成要素は自在に変化させる構成ではないため、大きさ、形状の異なる様々な洋式便器への適用範囲が狭く、また使用者の使い勝手の良い位置へ微調整可能に設置できる構成でもない。
【0010】
また、上記特許文献1〜3の便器用手摺りを、水捌けを良くするために緩い勾配のついた床面に設置された洋式便器、或いはタイル張りの床面に設置された洋式便器へ取り付ける場合には、便器用手摺りを床に置いてから側枠のガタツキを防止するために、同側枠の底部に付くアジャスター部材の高さを調整する作業が必要であり、一作業増えて手間がかかる。
更に、前記手摺りの設置位置は、便器の前後方向や左右方向に微調整できないので、例えば洗浄機付きの洋式便器へ設置しようとしたときに、同洗浄機の操作盤に手摺りが干渉して洗浄機の操作性を阻害する場合も考えられる。
【0011】
本発明の目的は、洋式便器へしっかりと強固に取り付けて固定することができ、固定作業が簡単で作業性が良く、位置ズレやガタつきを防止でき、高齢者や体の不自由な人が安全に、安心して使用できる構成の便器用手摺りを提供することである。
本発明の次の目的は、大きさや形状の異なる様々な洋式便器に対応でき、しっかりと強固に取り付けて固定し設置できる便器用手摺りを提供することである。
本発明の更なる目的は、熟練した技術や知識、あるいは専門工具を必要とせず、誰でも簡単に且つ迅速に洋式便器へ取り付けることができ、更に設置後に取り付け位置の調整を簡単に行うことができる、便器用手摺りを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る洋式便器用手摺りは、
手摺り部を備えた左右一対の側枠が洋式便器の左右両側の位置に配置され、同洋式便器の前面側に配置された連結桟と、洋式便器2の両側面へ固定する固定手段5とを備える洋式便器用手摺りにおいて、
前記固定手段5は、洋式便器2の側面部に対して軸孔50aを略直交する配置で側枠3へ固定された支持部50と、前記支持部50の軸孔50aへ軸方向への移動可能であるが、回転は不可の構成で挿入された1本のねじ軸51と、前記ねじ軸51へねじ込まれて前記支持部50における洋式便器2の側面部と相対向する端面へ当接する配置とされたナット52と、
前記ねじ軸51の先端部に洋式便器2の側面部へ押し付け可能な配置で取り付けられた押当て部53とで構成され、
記ナット52を正転させることによってねじ軸51を前進させ押当て部53を洋式便器2の側面部へ押し付けて洋式便器用手摺りの位置を固定することができ、同ナット52を逆転させて緩めることで洋式便器2から洋式便器用手摺りを撤去可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載した発明は、請求項に記載した洋式便器用手摺りにおいて、
連結桟4は、各側枠3との取合部を中心に水平軸回りに回転可能な構成で支持されていることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載した発明は、請求項1又は2に記載した洋式便器用手摺りにおいて、
固定部材は、連結桟を水平軸回りに回転可能に支持する凹部を内側面に設けた挟持部材で支持され、前記挟持部材は各々の共通位置に設けたネジ孔へねじ込んだボルトを締め込むことにより強固に固定され、同ボルトを緩めることにより、各側枠との取り合い部を中心に水平軸回りに回転可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した洋式便器用手摺りにおいて、
固定手段5の押当て部53は、ねじ軸部51を中心に上下方向へ回転変位させることが可能とされ、便器2への押し付け角度と位置を調整できる構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜4に記載した発明に係る様式便器用手摺りによれば、
固定手段5を構成する左右の押当て部53、53は、各々1本のねじ軸部51で支持された構成であり、このねじ軸51を支持する支持部50の軸孔50aへ、洋式便器2の側面部に対して直交する配置で軸方向へ移動可能なねじ軸51が、ナット50を回転して前進され、先端の押当て部53を洋式便器2の側面部に押し付けて固定する構成であるから、操作が簡単である。そして、前記ねじ軸51の押し付け力の反作用力は、丁度連結桟4の作用と釣り合いが保たれるから、全体のバランスが良く、安定して平衡が保たれるので、使用時の安定性、安全性に優れた洋式便器用手摺りを提供できる。
【0018】
とりわけ請求項に記載した発明に係る便器用手摺りによれば、固定手段が、最初からナット52の回転に伴うねじ送り作用でねじ軸部51を送り込むのではなく、固定バー5のねじ軸部51の端部を支持部50の軸孔50aへ予め差し込んで置き、押当て部53が便器2の表面に当接する位置まで一気にねじ軸部51を摺動させてから、ナット52を支持部50の端部へ突き当てて回転させることによりねじ軸部51を送り込む。すると、左右の押当て部53、53が洋式便器2の側面へ押し付けられ、連結桟4と併せて、左右の押当て部53、53で便器2を挟み付けて側枠3、3を便器2へ固定する構成なので、固定作業の作業性が良い。その上、便器2の前面及び左右側面の3点をしっかりと強固に支持した状態に固定できる。
前記押当て部53は、ナット52を回転させてねじ軸部51を伸縮させることで、簡単に便器2の側面へ押し付けたり、その押し付け状態を解除することができるので、使い勝手に優れている。
請求項に記載した発明に係る便器用手摺りによれば、固定手段5の支持部50は、側枠3に対し上下方向への変位が可能に取り付けられており、固定手段5の押当て部53を便器2へ押し付ける高さ位置を調整可能に構成されているから、様々な大きさや形状の洋式便器2、或いは勾配の付いた床面に設置された便器2等でも、しっかりと強固に取り付けて固定し設置できる。
請求項に記載した発明に係る便器用手摺りによれば、固定手段5の押当て部53は、ねじ軸部51を中心に上下方向へ回転変位させることが可能とされ、便器2への押し付け位置を調整できる構成なので、上下方向にも押付力を伝達でき、様々な大きさや形状の便器へしっかりと強固に取り付けて固定できる。
したがって、本発明に係る便器用手摺りは、位置ズレやガタつきを防止し、高齢者や体の不自由な人でも安全に、安心して使用できるし、熟練した技術や知識、あるいは専門工具を必要とせず、誰でも簡単に且つ迅速に取り付け・取外し作業を行うことができ、更に設置後に取り付け位置の調整を自在に容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】便器用手摺りの全体を示した斜視図である。
図2】便器用手摺りの特徴を分かり易く示した斜視図である。
図3】便器用手摺りを後部側から示した分解斜視図である。
図4】便器用手摺りを洋式便器へ取り付けた状態を示した側面図である。
図5】側枠へ取り付けた支持部とねじ軸部の関係を一部破断して示した拡大斜視図である。
図6】側枠と支持部との取り付け状態を示した水平断面図である。
図7】ねじ軸部と押当て部を分解して示した説明図である。
図8】支持部と角鋼で構成したねじ軸部の関係を示した説明図である。
図9】支持部と丸鋼で構成したねじ軸部の関係を示した説明図である。
図10】便器用手摺りを洋式便器へ取り付けた状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る便器用手摺りは、洋式便器2の両側面へ固定する固定手段5として、洋式便器2の側面部に対して軸孔50aを略直交する配置に固定された支持部50と、前記支持部50の軸孔50a内へ、軸方向への移動は可能であるが、回転は不可の構成で1本のねじ軸51が挿入され、前記のねじ軸51へねじ込まれたナット52が前記支持部50における洋式便器2の側面と対向する端面へ当接する配置とされ、
前記ねじ軸51の先端部に洋式便器2の側面部へ押し付け可能な配置で取付けられた押し当て部53とで構成され、
前記ナット52を正転させることによってねじ軸51を前進させ、押し当て部53を洋式便器2の側面部へ押しつけて洋式便器用手摺りの位置を固定することができ、同ナット52を逆転させて緩めることで洋式便器2から洋式便器用手摺りを撤去可能に構成されている。
【実施例1】
【0021】
以下に、本発明に係る洋式便器用手摺りを図示した実施例に基づいて説明する。
図1〜10に示した本発明に係る洋式便器用手摺りは、洋式便器2へ後付けで設置する据え置き型の洋式便器用手摺り1であり、高齢者や体の不自由な人が、介助者等の手を借りずに一人で洋式便器2の立ち座り動作ができるように、主に家庭や病院等のトイレの洋式便器2に設置される補助器具である。
前記洋式便器用手摺り1は、図1に示したように、手摺り部32を備えた左右一対の側枠3、3が洋式便器2の左右両側位置に設置され、該左右の側枠3、3は洋式便器2の前面側に配置された連結桟4で相互に連結され、前記の各側枠3には同側枠3を洋式便器2(以下、単に便器と略す場合がある。)の後部へ固定する固定手段5が設けられた構成である。
【0022】
上記各側枠3は、図1及び2に示したように、トイレの床面に接する基部30から上方へ垂直に立ち上がる管状側部31の中空部内へ、略T字形状を成す手摺り部32の垂直部32aが、上下方向へスライド可能に挿入された構成である。前記手摺り部32は、垂直部32aを上下方向へスライド移動させて、使用者の使い勝手の良い高さ位置に調整した後、管状側部31の後面側に設けられたノブボルト31aによってその位置がしっかりと固定される。因みに、前記手摺り部32の垂直部32aの前面側には高さ目盛りが表記されており、使い易さを考慮している。
前記各側枠3、3の管状側部31の前面側には、上記連結桟4の端部を挟持して固定する固定部材6が設けられている。この固定部材6は、二つの挟持部6a、6b(図4及び5を参照)で構成され、二つの挟持部6a、6bの凹部で連結桟4の端部を挟み付け、前記ノブボルト60を締め付けることにより、前記連結桟4が側枠3、3へしっかりと強固に固定される。
前記連結桟4で連結された左右の側枠3、3は、図2に示したように、固定部材6のノブボルト60の締結力を緩めて固定部材6の狭持力を解除することで、前記連結桟4を回転すること及び軸方向へ変位させることが可能である。因みに、前記連結桟4には目盛りが表記されており、各側枠3、3は前記目盛りに基づいて左右の変化量を一致させて変位させることができる。
よって、使用者の体格や使用状況、或いは洋式便器2の形状、大きさに合わせて左右の側枠3、3の横幅を左右バランス良く適宜に調整することでき、使い勝手に優れている。
【0023】
前記連結桟4は、洋式便器2の前面形状に沿うように中央部が前方に突き出る湾曲状に形成されており、図4に示したように、前記固定部材6を構成する挟持部6a、6bの狭持力を解除することで、各側枠3、3との取合部を中心に水平軸回りに回転可能となり、洋式便器2への当接位置を自在に変更し又は選択することができる。つまり、連結桟4が洋式便器2へ当接する位置によって、手摺り部32を便器2の前後方向において自在に変位させることができるから、使用者は使い勝手の良い位置に前記手摺り部32を配置することができる。
また、見方を変えれば、側枠3が連結桟4へ回転可能に連結している関係になるから、前記固定部材6を構成する挟持部6a、6bの挟持力を解除することで、左右別個に前記左右の側枠3、3の基部30を床面それぞれの勾配に合わせた設置が可能であり、アジャスター部材を用いることなく、ガタツキを防止して便器用手摺り1をしっかりと固定し設置することができる。もちろん、アジャスター部材を用いれば、更に安定した設置が可能となることは言うまでもない。
【0024】
上記固定手段5は、図3に示したように側枠3、3に取り付けれた、角軸孔50aを有する筒状の支持部50と、該支持部50の角軸孔50a内へ、先端部が洋式便器2の側面部に向かって略直交する向きに挿入された角軸によるねじ軸部51図10を参照)と、前記ねじ軸部51へ回転可能にねじ込まれたナット52と、前記ねじ軸部51の先端部、洋式便器2の側面部へ当接して後方側へ向かって延びる配置で設けられた押当て部53とで略L字形に構成されている。
【0025】
上記支持部50は、図3〜図9に示したように、外周を覆うカバー部材50cと、該カバー部材50cに取り付けられたノブボルト50b(特には図3を参照)を備えている。また、図5に示したように、前記支持部50の角軸孔50a内には、樹脂製のスリーブ50dが設けられている。
一方、前記支持部50が取り付けられた側枠3の管状側部31には、図3及び図6に示したように、後面側に上下方向に沿って横断面形状が略C字形の溝部33が形成されており、該溝部33内へスケーター34が上下方向へスライド可能に嵌め込まれている。前記スケーター34には、前記支持部50のノブボルト50bのねじ軸をねじ込むねじ孔34aが設けられている図6を参照)図5及び図6に示したように、カバー部材50cをスケーター34へ被せ、該スケーター34のねじ孔34aへノブボルト50bのねじ軸をねじ込むことで、支持部50が側枠3の管状側部31における、前記固定部材6の設置位置とは反対側の側面部へ取り付けられている。
即ち、前記支持部50は、ノブボルト50bを回転させて締め付けるとスケーター34が溝部33にぴったり引き寄せられて摩擦力が生じるし、押当て部53が洋式便器2へ押圧されると、その反力として支持部50にこじる力を生じさせ、その位置でしっかりと固定される。そして、前記ノブボルト50bを逆回転させて緩めると支持部50と側枠3との締結状態が解除されるので、支持部50をスケーター34と共に管状側部31の溝部33内を上下移動させることできる。
したがって、前記支持部50は、側枠3に対し上下方向への変位が可能なので、洋式便器2の大きさや形状に合わせて、上記固定手段5の押当て部53を洋式便器2へ押し付ける高さ位置を自在に調整することができる。
【0026】
上記支持部50の角軸孔50aへ挿入されるねじ軸部51は、図5及び7に示したように、角軸孔50a内で周方向へ回転しないように、角鋼で構成されており、各角部にはナット52が回転移動するねじが切られている。
【0027】
上記左右の固定手段5の押当て部53は、図10に示した洋式便器2を平面方向から見た場合、便器2の湾曲側面に沿って同便器2を抱え込むようにハの字形状に構成されており、図4に示したように、ねじ軸部51を中心に上下方向へ回転変位させることが可能とされ、洋式便器2を抱え込みし易い当て位置に調整できる。
前記押当て部53を上下方向へ回転可能とする構成の具体例として、図7に示した実施例では、前記押当て部53がねじ軸部51へボルト51aで接合されており、該ボルト51aの締結力を緩めることにより、前記押当て部53を上下方向へ回転変位させることが可能となる。
或いは、図8に示した実施例では、側枠3に設けた支持部50に、基本形が角軸孔50aで、その内周面に、ねじ軸部51を一定のピッチで回転させたに等しい凹凸部50a’が形成され、そのいずれかの凹凸部50a’へねじ軸部51の先端を合致させて嵌めることにより、押当て部53を上下方向への回転変位さることでも良い。
なお、詳細に図示することは省略したが、前記ねじ軸部51の先端の形状をスプライン軸とし、支持部50の角軸孔50aを前記スプライン軸が嵌め込み可能なスプライン孔とした構成で実施することもできる。前記ねじ軸部51を周方向に回転させて、スプライン軸で成る先端部を支持部50のスプライン孔へ嵌め込んで合致させることで、押当て部53を上下方向への回転変位させることもできる。
【0028】
図9に示したように、上記支持部50の軸孔50aが丸孔であり、ねじ軸部51が丸鋼で構成されている場合には、該ねじ軸部51の側面に軸方向の溝部51bを設け、更に前記支持部50の外周面に軸孔50aに向かって貫通するピン孔50e…を複数個設けた構成とし、前記支持部50の軸孔50aへ通したねじ軸部51の溝部51bへ向かって、支持部50のピン孔50eからピン51cを通すことにより、ねじ軸部51が軸孔50a内で周方向に回転しない構成としても良い。
【0029】
したがって、出荷時の設置位置で固定するのでは不安がある便器の場合には、押当て部53の洋式便器2への当て位置を調整することにより、上下方向にも押付力を分散できるので、大きさや形状の異なる様々な洋式便器、或いは勾配のある床面に設置された洋式便器であっても、しっかりと強固に取り付け固定し設置できる。
【0030】
便器用手摺り1洋式便器2設置するには、まず、洋式便器2の形状、大きさに合わせて左右の側枠3、3の横幅の調整及び連結桟4の長さの調整をしながら、床への接地状態を左右にバランス良く適宜調整し、前記支持部50を側枠3に対し上下方向へ変位させて丁度良い位置に設定した後(通常は出荷時の初期設定位置で問題ない。)、固定手段5を操作して位置を固定する。その固定手順は、支持部50の角軸孔50a内へ、ねじ軸部51を洋式便器2の位置側から外側方向に向かって挿入し、押当て部53が便器2の側面部へ当接する位置まで軸孔50a内を前進させる。その後、上記ねじ軸部51上のナット52を支持部50の端面へ向かってねじ込み、同支持部50の端部へ突き当てる。更に前記ナット52を強く回転させて締め付けることにより、ねじ軸部51を洋式便器2の側面へ向かって強く送り出す。かくすると図10に示したように、前記押当て部53が洋式便器2の側面部へ強く押し付けられて、両側の側枠3、3が洋式便器2の左右位置に固定される。
このときねじ軸部51が洋式便器2から受ける反作用としての圧縮軸力は、ナット52から支持部50を通じて側枠33へ伝達されるが、左右の側枠33は、固定部材6で連結桟4を強く固定しているので力の平衡が保たれ、便器用手摺り1の安定した設置状態を実現できる。
なお、上記設置、固定作業の終了後に、支持部50とナット52とが突き当たる両端部同士を覆うキャップ(図示は省略)を嵌めておくと、ナット52を前記の回転方向とは逆方向に回転させた場合、ねじ軸部51が支持部50の角軸孔50a内へ戻され、押当て部53の押し付け状態が解除される。
【0031】
したがって、本発明に係る便器用手摺り1は、図10に示したように、連結桟4と、左右の押当て部53、53で洋式便器2を挟み付けて側枠3、3を洋式便器2へ固定する構成なので、洋式便器2の前面及び左右側面の3点をしっかりと強固に支持した状態に固定でき、位置ズレやガタつきを防止し、高齢者や体の不自由な人でも安全に、安心して使用できる。
また、熟練した技術や知識、あるいは専門工具を必要とせず、誰でも簡単に且つ迅速に取り付け・取り外し作業を行うことができ、更に設置後に取り付け位置の調整を自在に容易に行うことができる。
【0032】
上記左右の側枠3、3、連結桟4、及び左右の固定バー5、5の各構成物品は、それぞれ取り外し可能なので、便器用手摺り1は分解して保管することができ、大きな保管場所を必要としない。また、前記側枠3及び固定バー5は左右対で構成されているので、左側用、右側用の区別がなくなって構成する部品点数が少なくて済むし、在庫管理の手間が少なくなって保管もし易い。更に、梱包した際に、梱包状態の容積も小さくできるので、経済的である。
【0033】
なお、本発明による便器用手摺りは、上記実施例の限りではない。
詳細に図示することは省略したが、手摺り部32を備えた左右一対の側枠3、3が洋式便器2の左右両側位置に設置され、該左右の側枠3、3は洋式便器2の前面側に配置された連結桟4で連結された便器用手摺り1において、上述した固定手段5を設けることなく、前記連結桟4を、各側枠3、3との取合部を中心に水平軸回りに回転可能とした構成で実施することもできる(請求項1記載の発明)。
【0034】
また、その他の実施形態として、上述した連結桟4が水平軸回りに回転しない従来の構成とし、固定手段5のみを前記側枠3に取り付けられた、角軸孔50aを有する支持部50と、前記支持部50の角軸孔50a内へ先端部が挿入され他端は便器2に向かって突き出す配置とされるねじ軸部51と、前記ねじ軸部51へ回転可能にねじ込まれたナット52と、前記ねじ軸部51の他端側に便器2後方へ向かって延びる配置で取り付けた押当て部53とで略L字形に構成された固定バーとした構成で実施することもできる(請求項2記載の発明)。
【0035】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明の要旨、及び技術思想を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用、変形として種々な態様で実施できることを、ここに念のため申し添える。
【符号の説明】
【0036】
洋式便器用手摺り
2 洋式便器
3 側枠
32 手摺り部
4 連結桟
5 固定バー(固定手段)
50 支持部
51 ねじ軸部
52 ナット
53 押当て部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10