【実施例1】
【0021】
以下に、本発明に係る
洋式便器用手摺りを図示した実施例に基づいて説明する。
図1〜10に示した本発明に係る
洋式便器用手摺りは、洋式便器2へ後付けで設置する据え置き型の
洋式便器用手摺り1であり、高齢者や体の不自由な人が、介助者等の手を借りずに一人で洋式便器2の立ち座り動作ができるように、主に家庭や病院等のトイレの洋式便器2に設置される補助器具である。
前記
洋式便器用手摺り1は、
図1に示したように、手摺り部32を備えた左右一対の側枠3、3が洋式便器2の左右両側位置に設置され、該左右の側枠3、3は洋式便器2の前面側に配置された連結桟4で相互に連結され、前記の各側枠3には同側枠3を
洋式便器2
(以下、単に便器と略す場合がある。)の後部へ固定する固定手段5が設けられた構成である。
【0022】
上記
の各側枠3は、
図1及び2に示したように、トイレの床面に接する基部30から上方へ垂直に立ち上がる管状側部31の中空
部内へ、略T字形状を成す手摺り部32の垂直部32aが、上下方向へスライド可能に挿入された構成である。前記手摺り部32は、垂直部32aを上下方向へスライド移動させて、使用者の使い勝手の良い高さ位置に調整した後、管状側部31の後面側に設けられたノブボルト31aによってその位置がしっかりと固定される。因みに、前記手摺り部32の垂直部32aの前面側には高さ目盛りが表記されており、使い易さを考慮している。
前記各側枠3
、3の管状側部31の前面側には、上記連結桟4の端部を挟持して固定する固定部材6が設けられている。
この固定部材6は、二つの挟持部6a、6b(
図4及び5を参照)で構成され、二つの挟持部6a、6bの凹部で連結桟4の端部を挟み付け、前記ノブボルト60を締め付けることにより、前記連結桟4が側枠3、3へしっかりと強固に固定される。
前記連結桟4で連結された
左右の側枠3、3は、
図2に示したように、固定部材6のノブボルト60の締結力を緩めて固定部材6の狭持力を解除することで、前記連結桟4を回転すること及び軸方向へ変位させることが可能である。因みに、前記連結桟4には目盛りが表記されており、各側枠3、3は前記目盛りに基づいて左右の変化量を一致させて変位させることができる。
よって、使用者の体格や使用状況、或いは洋式便器2の形状、大きさに合わせて左右の側枠3、3の横幅を左右バランス良く適宜に調整することでき、使い勝手に優れている。
【0023】
前記連結桟4は、洋式便器2の前面形状に沿うように中央部が前方に突き出る湾曲状に形成されており、
図4に示したように、前記固定部材6を構成する挟持部6a、6bの狭持力を解除することで、各側枠3、3との取合部を中心に水平軸回りに回転可能となり、洋式便器2への当接位置を自在に変更し又は選択することができる。つまり、連結桟4が洋式便器2へ当接する位置によって、手摺り部32を便器2の前後方向において自在に変位させることができるから、使用者は使い勝手の良い位置に前記手摺り部32を配置することができる。
また、見方を変えれば、側枠3が連結桟4へ回転可能に連結している関係になるから、前記固定部材6を構成する挟持部6a、6bの挟持力を解除することで、左右別個に前記左右の側枠3、3の基部30を床面それぞれの勾配に合わせた設置が可能であり、アジャスター部材を用いることなく、ガタツキを防止して便器用手摺り1をしっかりと固定し設置することができる。もちろん、アジャスター部材を用いれば、更に安定した設置が可能となることは言うまでもない。
【0024】
上記固定手段5は、
図3に示したように側枠3、3に取り付けれた、角軸孔50aを有する筒状の支持部50と、該支持部50の角軸孔50a内へ、先端部が洋式便器2の
側面部に向かって
略直交する向きに挿入
された角軸によるねじ軸部51
(図10を参照)と、前記ねじ軸部51へ回転可能にねじ込まれたナット52と、前記ねじ軸部51の
先端部に
、洋式便器2の側面部へ当接して後方側へ向かって延びる配置で設けられた押当て部53とで略L字形に構成され
ている。
【0025】
上記支持部50は、図
3〜図9に示したように、外周を覆うカバー部材50cと、該カバー部材50cに取り付けられたノブボルト50b(特には
図3を参照)を備えている。また、
図5に示したように、前記支持部50の角軸孔50a内には、樹脂製のスリーブ50dが設けられている。
一方、前記支持部50が取り付けられた側枠3の管状側部31には、
図3及び
図6に示したように、後面側に上下方向に沿って横断面形状が略C字形の溝部33が形成されており、該溝部33内へスケーター34が上下方向へスライド可能に嵌め込まれている。前記スケーター34には、前記支持部50のノブボルト50bのねじ軸をねじ込むねじ孔34aが設けられている
(図6を参照)。
図5及び
図6に示したように、カバー部材50cをスケーター34へ被せ、該スケーター34のねじ孔34aへノブボルト50bのねじ軸をねじ込むことで、支持部50が側枠3の管状側部31
における、前記固定部材6の設置位置とは反対側の側面部へ取り付けられている。
即ち、前記支持部50は、ノブボルト50bを回転させて締め付けるとスケーター34が溝部33にぴったり引き寄せられて摩擦力が生じるし、押当て部53が洋式便器2へ押圧されると、その反力として支持部50にこじる力を生じさせ、その位置でしっかりと固定される。そして、前記ノブボルト50bを逆回転させて緩めると支持部50と側枠3との締結状態が解除されるので、支持部50をスケーター34と共に管状側部31の溝部33内を上下移動させることできる。
したがって、前記支持部50は、側枠3に対し上下方向への変位が可能なので、洋式便器2の大きさや形状に合わせて、上記固定手段5の押当て部53を洋式便器2へ押し付ける高さ位置を自在に調整することができる。
【0026】
上記支持部50の角軸孔50aへ挿入されるねじ軸部51は、
図5及び7に示したように、角軸孔50a内で周方向へ回転しないように、角鋼で構成されており、各角部にはナット52が回転移動するねじが切られている。
【0027】
上記左右の固定手段5の押当て部53は、
図10に示した洋式便器2を平面方向から見た場合、便器2の湾曲側面に沿って同便器2を抱え込むようにハの字形状に構成されており、
図4に示したように、ねじ軸部51を中心に上下方向へ回転変位させることが可能とされ、洋式便器2を抱え込みし易い当て位置に調整できる。
前記押当て部53を上下方向へ回転可能とする構成の具体例として、
図7に示した実施例では、前記押当て部53がねじ軸部51へボルト51aで接合されており、該ボルト51aの締結力を緩めることにより、前記押当て部53を上下方向へ回転変位させることが可能となる。
或いは、
図8に示した実施例では、側枠3に設けた支持部50に、基本形が角軸孔50aで、その内周面に、ねじ軸部51を一定のピッチで回転させたに等しい凹凸部50a’が形成され、そのいずれかの凹凸部50a’へねじ軸部51の先端を合致させて嵌めることにより、押当て部53を上下方向への回転変位さることでも良い。
なお、詳細に図示することは省略したが、前記ねじ軸部51の先端の形状をスプライン軸とし、支持部50の角軸孔50aを前記スプライン軸が嵌め込み可能なスプライン孔とした構成で実施することもできる。前記ねじ軸部51を周方向に回転させて、スプライン軸で成る先端部を支持部50のスプライン孔へ嵌め込んで合致させることで、押当て部53を上下方向への回転変位させることもできる。
【0028】
図9に示したように、上記支持部50の軸孔50aが丸孔であり、ねじ軸部51が丸鋼で構成されている場合には、該ねじ軸部51の側面に軸方向の溝部51bを設け、更に前記支持部50の外周面に軸孔50aに向かって貫通するピン孔50e…を複数個設けた構成とし、前記支持部50の軸孔50aへ通したねじ軸部51の溝部51bへ向かって、支持部50のピン孔50eからピン51cを通すことにより、ねじ軸部51が軸孔50a内で周方向に回転しない構成としても良い。
【0029】
したがって、出荷時の設置位置で固定するのでは不安がある便器の場合には、押当て部53の洋式便器2への当て位置を調整することにより、上下方向にも押付力を分散できるので、大きさや形状の異なる様々な洋式便器、或いは勾配のある床面に設置された洋式便器であっても、しっかりと強固に取り付け固定し設置できる。
【0030】
便器用手摺り1
を洋式便器2
へ設置
するには、まず、洋式便器2の形状、大きさに合わせて左右の側枠3、3の横幅の調整及び連結桟4の長さの調整をしながら、床への接地状態を左右にバランス良く適宜調整し、前記支持部50を側枠3に対し上下方向へ変位させて丁度良い位置に設定
した後(通常は出荷時の初期設定位置で問題ない。)、固定手段5を
操作して位置を固定する。その固定手順は、支持部50の角軸孔50a内へ、
ねじ軸部51を洋式便器2の位置側から外側方向に向かって挿入し、押当て部53が便器2の
側面部へ当接する位置まで軸孔50a内を
前進させる。その後、上記ねじ軸部51上のナット52を支持部50の端面へ向かって
ねじ込み、同支持部50の端部へ突き当てる。
更に前記ナット52を
強く回転させて
締め付けることにより、ねじ軸部51を洋式便器2の側面へ向かって強く送り
出す。かくすると図10に示したように、前記押当て部53が洋式便器2
の側面部へ強く押し付けられて、
両側の側枠3、3が洋式便器2の左右位置に固定され
る。
このときねじ軸部51が洋式便器2から受ける反作用としての圧縮軸力は、ナット52から支持部50を通じて側枠33へ伝達されるが、左右の側枠33は、固定部材6で連結桟4を強く固定しているので力の平衡が保たれ、便器用手摺り1の
安定した設置状態を実現できる。
なお、上記設置、固定作業の終了後に、支持部50とナット52とが突き当たる両端部同士を覆うキャップ(図示は省略)を嵌めておくと、ナット52を前記の回転方向とは逆方向に回転させた場合、ねじ軸部51が支持部50の角軸孔50a内へ戻され、押当て部53の押し付け状態が解除される。
【0031】
したがって、本発明に係る便器用手摺り1は、
図10に示したように、連結桟4と、左右の押当て部53、53で洋式便器2を挟み付けて側枠3、3を洋式便器2へ固定する構成なので、洋式便器2の前面及び左右側面の3点をしっかりと強固に支持した状態に固定でき、位置ズレやガタつきを防止し、高齢者や体の不自由な人でも安全に、安心して使用できる。
また、熟練した技術や知識、あるいは専門工具を必要とせず、誰でも簡単に且つ迅速に取り付け・取り外し作業を行うことができ、更に設置後に取り付け位置の調整を自在に容易に行うことができる。
【0032】
上記左右の側枠3、3、連結桟4、及び左右の固定バー5、5の各構成物品は、それぞれ取り外し可能なので、便器用手摺り1は分解して保管することができ、大きな保管場所を必要としない。また、前記側枠3及び固定バー5は左右対
称で構成されているので、左側用、右側用の区別がなくなって構成する部品点数が少なくて済むし、在庫管理の手間が少なくなって保管もし易い。更に、梱包した際に、梱包状態の容積も小さくできるので、経済的である。
【0033】
なお、本発明による便器用手摺りは、上記実施例の限りではない。
詳細に図示することは省略したが、手摺り部32を備えた左右一対の側枠3、3が洋式便器2の左右両側位置に設置され、該左右の側枠3、3は洋式便器2の前面側に配置された連結桟4で連結された便器用手摺り1において、上述した固定手段5を設けることなく、前記連結桟4を、各側枠3、3との取合部を中心に水平軸回りに回転可能とした構成で実施することもできる(請求項1記載の発明)。
【0034】
また、その他の実施形態として、上述した連結桟4が水平軸回りに回転しない従来の構成とし、固定手段5のみを前記側枠3に取り付けられた、角軸孔50aを有する支持部50と、前記支持部50の角軸孔50a内へ先端部が挿入され他端は便器2に向かって突き出す配置とされるねじ軸部51と、前記ねじ軸部51へ回転可能にねじ込まれたナット52と、前記ねじ軸部51の他端側に便器2後方へ向かって延びる配置で取り付けた押当て部53とで略L字形に構成された固定バーとした構成で実施することもできる(請求項2記載の発明)。
【0035】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明の要旨、及び技術思想を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用、変形として種々な態様で実施できることを、ここに念のため申し添える。