【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コランダム型の結晶構造をもつ下地基板、半導体層および絶縁膜で形成されることを特徴とする半導体装置である。コランダム型の結晶構造を持つ材料のなかには酸化膜が多く含まれ、絶縁膜としての機能を果たすことができることのみならず、下地基板、半導体層および絶縁膜がすべてコランダム型の結晶構造を有していることにより下地基板上に良質な半導体層、絶縁膜を実現することができる。コランダム型の結晶構造を持つ下地基板、半導体層および絶縁膜はCVD成膜等の手段を用いて結晶成長させる。
【0007】
ノーマリーオフ型半導体装置を実現するためには、良質な絶縁膜層の形成のみならず、異なる組成を有する膜との間に、オフ時に電子だまりが形成されないことが要求される。コランダム型の結晶構造をもつ材料は、m軸及びa軸などのc軸に対して垂直な方位では分極が極めて小さいことも知られている。そのため、下地基板、半導体層および絶縁膜の中に存在する異種材料界面に電子だまりが生じることもなく、横方向デバイス形成時の電流リークを生じない。これはGaN系材料で異種材料界面に生じる二次元電子ガスが利用されているのとは全く異なる性質である。
【0008】
コランダム型の結晶構造を持つ材料としては、サファイア(Al
2O
3)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化クロム(Cr
2O
3)、酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化チタン(Ti
2O
3)酸化バナジウム(V
2O
3)、酸化コバルト(Co
2O
3)を含み、更に、これらの複数材料を組み合わせた混晶を含む。
【0009】
下地基板と半導体層を同一の半導体組成で構成するホモエピタキシャル成長により形成した場合には、格子定数のミスマッチに由来する結晶欠陥が生じず、あるいは半導体層の格子定数が下地基板の格子定数の±15%以内の範囲で異なるエピタキシャル成長により形成した場合は、格子定数のミスマッチに由来する結晶欠陥が生じにくい。コランダム型の結晶構造を持つ材料の一部は比較的大きなバンドギャップ値を有しており、不純物種および不純物濃度を制御して半導体層かつ絶縁層として利用した場合、良好な特性を実現できる。格子定数差が5%以内であれば格子定数のミスマッチに由来する結晶欠陥がさらに生じにくい。
【0010】
たとえば、
図1に示すように、α型酸化アルミニウム・ガリウムAl
X1Ga
Y1O
3(0≦X1≦2、0≦Y1≦2、X1+Y1=1.5〜2.5)基板3上に、半導体層として、不純物ドープしたα型酸化アルミニウム・ガリウムAl
X2Ga
Y2O
3膜2(0≦X2≦2、0≦Y2≦2、X2+Y2=1.5〜2.5)を形成し、さらにα型酸化アルミニウム・ガリウムAl
X3Ga
Y3O
3膜1を絶縁膜として形成する。ここで、それぞれのXの値は格子定数の差が15%以内となる条件を満たす必要があるが、X1、Y1、X2、Y2、X3、Y3は、それぞれ、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。X+Yは、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0011】
下地基板と半導体層、半導体層と絶縁膜、あるいは下地基板と半導体層、絶縁膜全てを、コランダム型結晶構造をもつ異なる材料、異なる組成で形成することも可能である。
たとえば、
図2に示すように、下地基板6にα型サファイアAl
2O
3、半導体層5に不純物ドープされたα型In
X1Al
Y1Ga
Z1O
3(0≦X1≦2、0≦Y1≦2、0≦Z1≦2、X1+Y1+Z1=1.5〜2.5)、絶縁膜4にα型Al
X2Ga
Y2O
3(0≦X2≦2、0≦Y2≦2、X2+Y2=1.5〜2.5)を形成することができる。X1、Y1、Z1、X2、Y2は、それぞれ、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。X1+Y1+Z1、X2+Y2は、それぞれ、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよいし、下地基板と半導体層、絶縁膜の3層のうち、1層のみ異なる材料、異なる組成で形成してもよい。
【0012】
下地基板と半導体層とを、コランダム型結晶構造をもつ異なる材料で形成する場合、中間層として、コランダム型結晶構造を持つ結晶性応力緩和層を形成することも可能である。結晶性応力緩和層は、異なる材料間の界面に生じる応力を低減させ、且つ、界面および各層の結晶品質を良好に保つために有効である。さらに下地基板に期待しない電流パスが存在する場合、下地基板由来の電流リークを低減させる効果が期待できる場合もある。一般に下地基板と半導体層との間に緩衝層は低温成長させた低結晶品質膜で形成されることがあるが、結晶性応力緩和層は、半導体層や下地基板と大きく変わらない結晶性を有することを特徴とする。これは一般的な緩衝層は異なる結晶構造を有する
【0013】
たとえば、
図3に示すように、下地基板10にα型サファイアAl
2O
3を用い、結晶性応力緩和層9としてAl量を徐々に低減させたα型Al
X1Ga
Y1O
3(0≦X1≦2、0≦Y1≦2、X1+Y1=1.5〜2.5)膜を形成したのち、半導体層8として不純物ドープされたα型In
X2Al
Y2Ga
Z2O
3(0≦X2≦2、0≦Y2≦2、0≦Z2≦2、X2+Y2+Z2=1.5〜2.5)膜を形成し、さらに、絶縁膜7にα型Al
X3Ga
Y3O
3(0≦X3≦2、0≦Y3≦2、X3+Y3=1.5〜2.5)膜を形成することができる。
ここで結晶性応力緩和層の異種材料総数は1以上であれば良い。X1、Y1、X2、Y2、Z2、X3、Y3は、それぞれ、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。X1+Y1、X2+Y2+Z2、X3+Y3は、それぞれ、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
半導体層と絶縁膜とを、コランダム型結晶構造をもつ異なる材料で形成する場合、半導体層と絶縁膜との間にはコランダム型結晶構造を持つキャップ層を形成することも可能である。キャップ層は、下地基板と半導体層との間に形成される緩衝層と異なり、半導体層と絶縁膜との間に形成されることを特徴とする。電力用半導体装置として利用される場合、絶縁膜は絶縁膜上部に形成される金属に印加された電圧により生じる電界を効率的に伝えるために膜厚を薄くすることが期待される。そのため、半導体膜と絶縁膜との界面に存在する格子定数のミスマッチにより、絶縁膜中に生じる応力は小さく、応力を緩和する必要性が生じない。さらに、従来は、絶縁膜の結晶構造に着目して、絶縁膜を半導体層と同一の結晶構造で実現することで良質なコランダム型結晶膜を実現することは期待されていなかった。よって、キャップ層で期待される応力緩和や結晶品質を良好に保つ効果を絶縁膜および絶縁膜-半導体膜間の中間層に期待されることはなく、半導体層と絶縁膜との中間層としてキャップ層が形成されることはなかった。
【0015】
本発明において、当該キャップ層は、コランダム型結晶膜の信頼性を向上させる効果をもたらす。半導体層と絶縁膜との間で生じる電流パスを低減させることができる。さらに、コランダム型結晶膜中に存在する小孔を減少できるため、水素原子をはじめとする外因不純物の浸入を防ぐためである。絶縁膜および半導体膜の小さな分極に起因する、絶縁膜と半導体層との間のごくわずかに存在する電子だまりを小さくする効果もあり、これによりノーマリーオフ型半導体装置を実現する効果もある。
【0016】
たとえば、
図4に示すように、下地基板15にα型サファイアAl
2O
3を用い、結晶性応力緩和層14としてAl量を徐々に低減させたα型Al
X1Ga
Y1O
3(0≦X1≦2、0≦Y1≦2、X1+Y1=1.5〜2.5)膜を形成したのち、半導体層13として不純物ドープされたα型In
X2Al
Y2Ga
Z2O
3(0≦X2≦2、0≦Y2≦2、0≦Z2≦2、X2+Y2+Z2=1.5〜2.5)膜を形成し、さらに、キャップ層12としてα型Al量を徐々に大きくしたAl
X3Ga
Y3O
3(0≦X3≦2、0≦Y3≦2、X3+Y3=1.5〜2.5)膜、絶縁膜11にα型Al
X4Ga
Y4O
3(0≦X4≦2、0≦Y4≦2、X4+Y4=1.5〜2.5)膜を形成することができる。ここで結晶性応力緩和層およびキャップ層の異種材料総数は1以上であれば良い。X1、Y1、X2、Y2、Z2、X3、Y3、X4、Y4は、それぞれ、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。X1+Y1、X2+Y2+Z2、X3+Y3、X4+Y4は、それぞれ、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
下地基板と半導体層、あるいは半導体層と絶縁膜とをコランダム型結晶構造をもつ異なる材料で形成する場合、半導体層と絶縁膜、下地基板と半導体層、および結晶性応力緩和層と半導体層、キャップ層と絶縁膜との間にコランダム型結晶構造を持つ構造相転移防止層を形成することも可能である。結晶性応力緩和層、半導体層、キャップ層、絶縁膜を形成するそれぞれの結晶成長温度が当該形成層より下層の結晶構造転移温度より高いときには、構造相転移防止層を形成することで、コランダム型結晶構造から異なる結晶構造に変化することを防ぐことができる。結晶構造の相転移を防ぐために、結晶性応力緩和層、半導体層、キャップ層、絶縁膜の形成温度を低くした場合には、結晶性が低下してしまう。そのため、成膜温度を低下させることで結晶構造の変化をおさえることも困難であり、構造相転移防止層の形成は有効である。
【0018】
たとえば、
図5に示すように、半導体層18にIn
X1Al
Y1Ga
Z1O
3(0≦X1≦2、0≦Y1≦2、0≦Z1≦2、X1+Y1+Z1=1.5〜2.5)膜を形成し、構造相転移防止層17に、Al
X2Ga
Y2O
3(0≦X2≦2、0≦Y2≦2、X2+Y2=1.5〜2.5)膜を形成し、絶縁膜16にAl
X3Ga
Y3O
3(0≦X3≦2、0≦Y3≦2、X3+Y3=1.5〜2.5)膜を形成することができる。この場合、構造相転移防止層17のAl含有率(X2値)は、Al含有率を半導体層中のAl含有率(Y1値)より大きく、絶縁膜中のAl含有率(X3値)より小さい。構造相転移防止層の異種材料総数は1以上であれば良い。X1、Y1、Z1、X2、Y2、Z2、X3、Y3は、それぞれ、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。X1+Y1+Z1、X2+Y2、X3+Y3は、それぞれ、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
下地基板、半導体層、絶縁膜を含むすべての層をコランダム型結晶により形成させたのち、下地基板でない側の面に対し支持基板を貼り付け、その後に下地基板を水素イオン注入や加熱処理等の工程を経て剥離することで、半導体層や絶縁膜はコランダム型結晶であるがコランダム型結晶でない支持基板を利用した半導体製造装置を形成することも可能である。これにより、コランダム型結晶でない基板を支持基板とすることができるので、より放熱性に優れた基板を用いたり、基板コストを低減させることができる。下地基板上に絶縁膜を形成し、そのうえに半導体層を形成するなど、成膜の順番を入れ替えることも可能である。これにより、イオン注入、エッチング、フォトリソグラフィーなどのデバイスプロセスの手順を簡素化することができる。