特許第6067540号(P6067540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6067540-防蟻性能試験用器具 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067540
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】防蟻性能試験用器具
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/46 20060101AFI20170116BHJP
   E04B 1/72 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   G01N33/46
   E04B1/72
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-230890(P2013-230890)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-90337(P2015-90337A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100177714
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昌平
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】矢辺 茂昭
(72)【発明者】
【氏名】牧田 悟
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−50245(JP,A)
【文献】 実開昭63−71671(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3115318(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/46
E04B 1/72
B27K 3/02
A01M 1/00
A01N 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試験体を収容するための空洞を有する、防蟻処理していない木材からなる筐体であって、該筺体の上部上面に上記空洞の開口部を有し、底部の少なくとも1つの側面がテーパー状である、試験体の防蟻性能を試験するための器具。
【請求項2】
さらに、底部又は底部とその上方に水抜きのための小孔又はスリットを有することを特徴とする請求項1に記載の防蟻性能を試験するための器具。
【請求項3】
筐体の形状が四角柱状である、請求項1又は2に記載の防蟻性能を試験するための器具。
【請求項4】
さらに、該筺体の上部上面の開口部を覆うことのできる蓋を有することを特徴とする請求項1又〜3のいずれかに記載の防蟻性能を試験するための器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蟻性能試験用器具に関し、特に、本発明は、土壌中で容易かつ高精度な試験を実施することができる防蟻試験用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
防蟻剤の注入処理した木材片の野外試験の方法は、日本工業規格JIS K1571「木材保存剤−性能基準及びその試験方法」に規定されている。具体的には、スギ、クロマツ又はアカマツの辺材を、木口面30mm×30mm、長さ350mmとし、一端を約50mm削って杭状としたものを、試験地に深さ0.3mまで垂直に地下に埋め込み、一年経過毎に試験地から抜き取り、地中部の状態を観察し評価する。
【0003】
しかし、上記以外の木材、またその他の材質からなる建材については、指定された方法はない。
特に、紙や、ポリウレタン、ポリスチレン等の発泡プラスチック等、強度に乏しい材料からなる建材は、木材と同様に杭状の形状にして地中に打ち込むことはできず、地中への埋め込みには穴を掘って埋め込む方法しかない。
さらにこれらの建材には、植物の根が食い込んで、これを破壊したり、白蟻の食痕と区別できない状態を形成したりすることがあるため、上記の木材片試験法に準じた方法は用いることができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本工業規格JIS K1571「木材保存剤−性能基準及びその試験方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、木材以外の材料にも適用可能な、防蟻性能試験用器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはこの課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、試験対象材料(以下、試験体ともいう。)を木材からなる筺体に収納することにより、確実な防蟻性能試験が行えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)内部に試験体を収容するための空洞を有する、防蟻処理していない木材からなる筐体であって、該筺体の上部上面に上記空洞の開口部を有し、底部の少なくとも一部の側面がテーパー状である、試験体の防蟻性能を試験するための器具、
(2)さらに、底部又は底部とその上方に水抜きのための小孔又はスリットを有することを特徴とする上記(1)に記載の防蟻性能を試験するための器具、
(3)筐体の形状が四角柱状である上記(1)又は(2)に記載の防蟻性能を試験するための器具、及び、
(4)さらに、該筺体の上部上面の開口部を覆うことのできる蓋を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の防蟻性能を試験するための器具に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の試験器具を用いて試験を行えば、白蟻が試験器具の木材を穿孔して内部に進入した後、内部の試験体を、その防蟻性能の程度に応じて食害することになる。試験器具の木材は容易に穿孔されるため、試験体を土中に直接埋めた場合とほとんど同等の結果を得ることができる。しかも、試験体を直接埋める場合に比較して、操作は簡便であり、植物の根による破壊が防げるので根の影響と白蟻の食痕との判別も確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の防蟻性能を試験するための器具の一実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の防蟻性能を試験するための器具は、以下の構成を有する。その一実施形態を図1に示す。
内部に試験体(図1においては(2))を収容するための空洞を有する、防蟻処理していない木材からなる筐体(図1においては(1))であって、
該筺体の上部(図1においては(3))上面に上記空洞の開口部(図1においては(4))を有し、
底部の少なくとも1つの側面がテーパー(図1においては(5))になっている、試験体の防蟻性能を試験するための器具である。
通常、底部を下にして土壌中に筺体の一部又は全体を埋め、一定期間放置した後に該試験器具を発掘して試験体を観察することにより試験体の防蟻性能を測定する。
【0011】
本発明の試験器具の材料である木材は、防蟻処理していないものであれば特に限定されない。具体的には、スギ、クロマツ、アカマツ等の木材を例示することができる。
【0012】
筐体の寸法は特に限定されないが、通常、外径(長手方向に垂直に測定した場合の最大値)が150mm以下、長さが300mm以上、木材の厚みが1mm〜10mmである。
【0013】
筺体を形成する木材は、その全て又は一部が一体となったものであってもよいが、費用や測定時の簡便さの面から、平板状の木材が互いに固着されてなるのが好ましい。
【0014】
固着の程度は、必ずしも全く隙間がない必要はないが、少なくとも、外部から植物の根の侵入を許さない程度に密に固着されている必要がある。より具体的に、隙間の幅は2mm以下であることが好ましい。
【0015】
固着手段は特に限定されないが、接着剤、釘、ボルトとナット等により固着するほか、平板状の木材片を互いにはめこむ等の手段より固定することができる。
【0016】
内部空洞に水が滞留するのを防ぐために、底部又は底部とその上方に水抜きのための小孔(図1においては(6))又はスリットを有することが好ましい。この小孔又はスリットは、底部又はその近傍を構成する木材に穿って形成してもよいし、木材の接着の際に隙間を残してこの隙間を小孔又はスリットとして利用してもよい。なお、本発明において底部とは、底面を下向きにして筺体を垂直にした場合に、テーパーの有る側面と同じ高さにある部分全体を意味する。
水抜きのための小孔又はスリットの形状は特に限定されないが、外部から植物の根の侵入を許さない程度ものである必要があり、その径あるいは幅は2mm以下であることが好ましい。
【0017】
筺体上部には、上面の開口部を覆う蓋(図1においては図示されていない)が設けられていてもよい。該蓋の構造は、特に制限はなく、使用時に開口部を覆うように載置するだけの構造でもよいし、蓋の一部が筐体本体に開閉自在に保持されていてもよい。保持手段としては、特に制限はなく、蝶番(hinge)などの慣用手段が挙げられる。
【0018】
筐体の形状は、三角、四角等の角柱状や、円筒状等、試験体を収納できる形状であって、土壌中に埋めやすい形状であれば、特に制限されないが、底部の側面の少なくとも一部がテーパー状を有し、外形が「杭」として想定し得る杭状の形状であればよい。平板状の木材を互いに接着して用いる場合には、角柱状であることが好ましく、特に四角柱状であるのが好ましい。底部はJIS K1571の規定に準じ、角柱の一端を約50mm削ったもの、すなわち器具の下端から削った部分の上端まで垂直方向に測って約50mmであるものと同等の外形とするのが好ましい。
【0019】
試験体の形状と、試験体を収容するための筐体の内部空洞の形状とは、試験体を収容する際に試験器具との間に無理な力がかからず、かつ収容後に無駄に広い空洞を生じないような形態であれば、特に限定されない。好ましくは、内部空洞及び試験体を筐体の外形に相似した杭状とし、試験体の寸法を空洞よりわずかに小さいものとするのがよい。
【0020】
試験体の試験器具への収納方法としては、試験器具を作製した後に試験体を収容してもよいし、試験体を予め作製し、これを覆うように木材を互いに接着することにより試験器具を作製してもよい。
試験器具を作製した後に試験体を収容する場合には、試験体が、強い力をかけずに内部空洞に収容されるようにする必要がある。
【0021】
本発明で試験体は、通常固体材料であり、固体材料は、粉粒体を除く固体からなる材料である。より具体的には、固体材料の寸法は少なくとも10mm以上である。この寸法であれば白蟻による食害の有無が容易に判断できる。
また、該固体材料は、全体が一体になっていてもよいし、複数の部分に分離したものでもよく、一様な材質でも複数の異なる材質を複合させたものでもよい。
試験体が有する防蟻性とは、具体的には殺虫性、忌避性のいずれに基づくものでもよく、結果的に試験体に対する食害がある程度防止できることが期待できればよい。またこの防蟻性は、試験体の少なくとも一部の材料が元来持つ性質(この場合には類似した材料との比較により防蟻性が評価できる。)でも、少なくとも一部の材料が防蟻性成分で処理(この場合には防蟻性成分処理の有無、程度または方法の比較により防蟻性が評価できる。)されていてもよい。
【0022】
本発明の試験方法は、前記試験器具を、(A)底部を下向きにして垂直に地下に埋める工程、(B)その後一定期間放置した後に発掘する工程、及び(C)試験体を観察する工程を有する。
上記の各工程は、特に限定されないが、JIS K1571に準じた方法、すなわち次の方法で実施することが好ましい。
(a)各試験器具の間隔を0.1〜0.5mの略等間隔、好ましくは0.3mとして格子状に配置し、深さ0.1〜0.5m、好ましくは0.3mまで垂直に地下に埋め込む。
(b)試験期間を1〜5年、好ましくは2年間とし、一定期間、好ましくは1年経過ごとに試験器具を試験地から抜き取る。
(c)抜き取った試験器具から試験体を取り出し、状態を観察する。観察結果を次の基準で評価する。
0:健全
10:表面の一部に浅い食害
30:表面の一部に内部までの食害
50:内部の広い範囲に食害
100:食害によって形が崩れる
(A)の工程は、土壌を掘って試験装置を入れた後に土壌を埋め戻す方法でもよいが、より簡便に、試験器具を打ち込む方法が好ましい。本発明の試験器具はこの打ち込み方法、および(B)の工程における抜き取りに特に適した形状となっている。
(C)の工程では、試験体を試験器具からそのまま抜き取ってもよいが、試験体の形が崩れるのを防ぎながら観察するために、試験器具の固定を外すことにより試験体を取り出してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 筺体
2 試験体
3 上部
4 開口部
5 テーパー部
6 小孔
図1