【氏名又は名称】ザ フェデラル ステート オートノマス エヅケーショナル インスティチューション オブ ザ ハイヤー プロフェッショナル エデュケーション “ナショナル ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー “エムアイエスアイエス”
【氏名又は名称原語表記】THE FEDERAL STATE AUTONOMOUS EDUCATIONAL INSTITUTION OF THE HIGHER PROFESSIONAL EDUCATION NATIONAL UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY MISIS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の顎部およびこれに対向する前記第2の顎部のそれぞれの前記内側延在部が、それぞれ前記第1のアームおよび前記第2のアームに向かって湾曲する内側端を有する、請求項1に記載のクリップ。
前記基体部ならびに前記第1のアームおよびこれに対向する前記第2のアームに沿った前記クリップの外側表面が、略平滑である、請求項1または請求項2に記載のクリップ。
前記基体部を加熱することにより前記基体部の形状記憶が活性化されると、前記基体部が、前記第1の顎部および前記第2の顎部を閉鎖位置に強制する、請求項6に記載のクリップ。
前記第1の顎部および前記第2の顎部が、略平坦な内側係合表面の少なくとも一部に沿って形成された起伏部を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のクリップ。
前記クリップマニピュレータの前記少なくとも1つのアームは、各前記顎部上に1つの前記熱電変換器が配置された対向する顎部の遠位対を備え、前記対向する顎部が、前記クリップの前記基体部を掴むと同時にそれに温度変化を付与して使用可能である、請求項14に記載のキット。
【背景技術】
【0003】
いくつかの状況において、例えば流体が管状構造を通してそれ以上流動しないようにするために、管状構造を閉鎖することが必要となる。これは、例えば、血管または他の管状構造が一時的または永久的に閉鎖されることが必要な外科手術において、望ましくなる。クリップまたはクランプ装置を、この目的において使用することができる。
【0004】
管状構造の閉鎖が一時的であることが必要な状況が数多くあり、その場合、血管については、再び開放されたら、血液が再び正常に管を通って流動させるようにすることが重要となる。また、その閉鎖中、例えば過度の圧縮、粗さ、または穿孔による、血管に対する損傷を回避することができるといった効果がある。
【0005】
1つの先行技術は、腹腔鏡吻合術のための方法(ロシア特許第2241391号、2004年12月10公開)に関し、クリップ顎部をV字型に開き、その後方の突起を用いて固定することにより、冷却された無菌クリップが輸送器の内腔内にセットされる。クリップが送達され、押し出す者の支援と共に輸送器の牽引力でそれを緩めることにより、準備された穴に設置される。クリップは、加熱されると、その顎部を閉鎖し、中空器官の壁を圧縮する。この方法の欠点は、その機能性が制限されていること、すなわち、管状中空弾性器官(「管」)内の血流を回復することができないことである。
【0006】
別の技術は、弾性管状構造をクリップする方法(ロシア特許第2213529号、2003年10月10日公開)に関するものである。この方法は、片側および可逆的な形状記憶効果を有する生物学的に不活性な合金で作製されたクリップにより、器官を圧縮することで実行される。適用前、クリップは、設置が容易な形状とするために、移植温度未満の温度で変形される。組織は、クリップの尖った端で縫合され、クリップは、管の内腔(空洞)を閉鎖するように、適用部位に位置付けられる。クリップが部分的に開いたら、クリップは、移植温度未満の温度で取り外される。
【0007】
この方法の欠点は、クリップが体温近くの温度に到達すると、クリップの顎部が閉鎖されるため、クリップの操作および設置のために残された時間が限られていることである。さらに、クリップを確実に固定するために、クリップの尖った端での組織の穿孔が必要であり、これは、薄い管に対する手術には許容されない。また、この方法は、クリップを取り外すために、クリップが適用される身体組織を極端に冷却することが必要であることを意味しており、これは、深刻な結果をもたらす、または実践が困難である。
【0008】
別の技術としては、中空器官の吻合のためのクリップを備えている(ロシア特許第2285468号、2006年10月20日公開)。クリップは、長い二重コイルワイヤを備える。螺旋は、圧縮相互作用を確実とするためにその全長にわたって固く締められ、螺旋の1つの端に緩いワイヤ端を有し、これは、形状記憶効果および超弾性を有するニッケル−チタン合金(NiTi)で形成されている。螺旋の第2の端において大部分が、螺旋の各コイルのワイヤは両方とも直線状であり、互いに閉じられて互いに接触し、線形ワイヤを形成する。その結果、広範囲の穴を形成して損傷をもたらす、またはその生理機能を侵害することなく、微細中空器官の吻合により適用領域が拡張される。
【0009】
これらのクリップの欠陥は、結紮を使用した組織の追加的穿孔が必要であるため、吻合手順の侵襲性である。また、外傷を追加せずにクリップを取り外すための手順がない。
【0010】
別の技術は、単一および可逆的な形状記憶効果を有する生物学的に不活性な材料で形成されたクリップ(ロシア特許第2213529号、2003年10月10日公開)を備え、これは、管および管状器官のクリップと同時に、縫合による組織の固定を可能とする。クリップは、空洞および腹腔鏡手順の場合のように、後に必要に応じて取り外すことができる。クリップは、一方側が円形または楕円形のループを形成し、他方側が互いに近接した2つの平行な顎部を形成するように湾曲した、曲線的または扁平な顎部を備え、平行な顎部の少なくとも1つは、スキー板の形態の湾曲耳部を有する。顎部の内側には切り欠きがあり、フレーム上のクリップの信頼性のある自己ロック機構を提供する。
【0011】
これらのクリップの欠陥は、管状器官上に確実な固定をすることができない、器官の拍動中にスリップする、または、誤って手術器具と機械的に接触してしまう、といった本質的に伴うリスクがある。他の欠点は、その適用および取り外しのための手順の複雑性に本質的に伴うものである。
【0012】
別の技術は、外科マニピュレータ(ロシア特許第2109488号、1998年4月27日公開)であり、マニピュレータの作用端が、一対の顎部を動かし、それらを開閉する能力を有する。マニピュレータの反対の端にはガイドノードが移動可能に装着され、固定および移植機構のトランスミッションと相互作用することができる。マニピュレータの管状フレームは、電気絶縁層で被覆され、冷却構成部のための空洞を有している。マニピュレータは、フレームの空洞内に埋め込まれる熱構成部を設け、これは、熱電ペルチェ効果により作動し、熱機械的形状記憶を有する圧縮構成部を冷却する。
【0013】
この装置の欠点は、設計の困難さにあり、装置の侵襲性および縫合構成部を取り外すことができないことである。送達および解放の時点でその弾性状態を保持するために縫合構成部の永久的な低温を維持するために、ペルチェ素子が使用される。このような設計は、ペルチェ素子に急速な過熱をもたらし、縫合構成部がリセットされる前に形状記憶効果が早期に解放される可能性をもたらす。この装置の別の欠点は、形状記憶素子が1度しか使用できないことであり、また、結合組織に不適切に適用された場合、一旦適用されると調節が不可能である、または少なくとも実用的ではないことである。
【0014】
別の技術は、保持クリップを適用するための装置(ロシア特許第2362498号、2009年7月27日公開)を備えており、これは、作用枝状部を有する軸部、可動性カバーの形態の供給機構、フレームを有するトランスミッション、および、内側表面上に枠を有し、高さがクリップの長さの倍数であるプレートを備えている。枠を有するプレートは、スポンジを有する軸部の追加的表面の遠位端に固定される。プレートは、軸部に対して移動することができる。また、プレートは、他方側で可動性カバー内にバネ留めされる。可動性カバーは、トランスミッション側でスポンジを有する軸部に追加して設置されたバネによりバネ留めされる。固定されたスリーブがバネの間に設置され、可動性スリーブが遠位端に設置される。可動性スリーブの寸法は、可動性フレームの内側表面上に形成された突起との相互作用を確実とするように選択される。プレートの最初の設置のための溝および枠の形態の装着面は、可動性フレームの遠位端に設置される。
【0015】
この装置の欠点は、縫合構成部が一度しか使用できず、外傷なしに取り除くことが困難であることである。また、外傷の増加および出血のリスクにより、この装置を管のクリップに使用することは実用的ではない。
【0016】
別の技術は、保持ステープルを適用するための装置(ロシア特許第2052979号、1996年1月27日公開)であり、これは、ステープル貯蔵部のための装着面を有するフレーム、作用スポンジ、トランスミッションおよび供給機構を備えている。供給機構は、ガイドスロットおよびそれらのスロット内に設置されたバネ留めされたハンドルによりフレームに接続される。ハンドルは、支持面および覗き穴を有するカバーの内側に配置される筐体に設けられる。可動性の蓋がカバーの端に設置され、その内側表面上には枠があり、その高さはステープルの長さの倍数である。枠は、支持面および覗き穴と相互作用することができる。カバーの外側表面上には、保持ステープルの計数機構が設置される。供給機構のフレームは、スポンジを回転させることができる末端クランプ面を装備する、トランスミッションの可動性部品として設計される。
【0017】
この装置の欠点は、縫合構成部が一度しか使用できず、外傷なしに取り除くことが困難であることである。また、外傷の増加および出血のリスクにより、この装置を管のクリップに使用することは実用的ではない。
【0018】
本明細書に含まれているいかなる文献、動作、材料、装置、物品等についての考察も、これらの問題のいずれかまたは全てが、本発明の各請求項の範囲の優先日以前に存在した、従来技術の基盤の一部を形成すること、または本発明に関連する分野における共通の一般的知識であるという自認として取られるべきではない。
【0019】
本明細書中で、「備える」という用語、または「備える(三人称)」もしくは「備えている」等の変化形は、述べられた要素、完全体もしくはステップ、または要素、完全体もしくはステップの集合を含むことを暗示するが、任意の他の要素、完全体もしくはステップ、または要素、完全体もしくはステップの集合を除外することを暗示するものではないことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
記載される実施形態は、一般的に、外科用クリップ等の金属クリップ、および該クリップのための操作装置に関するものである。そのような実施形態は、一般的に、切開および内視鏡的(腹腔鏡的)手術に適用することができる。実施形態は、管における組織クリップまたはクランプを必要とする、胆嚢摘出術、虫垂切除術、胃切除術、半結腸切除術、噴門形成術、心臓血管およびその他の手術等の手術に使用することができる。
【0043】
本明細書中において使用される、「近位」という用語は、操作装置の操作者により近い場所、方向または位置を指すことを意図する相対的用語である。したがって、本明細書中に記載のクリップに適用される場合、「近位」という用語は、クリップの基端部または「耳部」に近い、または隣接したクリップの部分を示すことを意図する。一方、「遠位」という用語は、「近位」とは反対の意味を有し、操作装置の操作者から離れる(または離れて延在する)場所、方向または位置を指すことを意図する相対的用語である。本明細書中に記載のクリップに適用される場合、「遠位」という用語は、クリップの基端部または「耳部」から遠くに離れたクリップの部分を示すことを意図する。
【0044】
図1中の医療用クリップ100は、耳部101、一対の顎部102、アーチ103、顎部の近位端104、一対の顎部作用面105、一対のペルチェ素子(への導電接続用の)顎部の遠位端106、および光信号装置111を備える。
【0045】
図4および5には、上部顎部107、下部顎部108、遠位端109、ペルチェ素子110、光信号装置110、強制加熱ボタン112、強制加熱マイクロスイッチ113、強制冷却ボタン114、強制冷却マイクロスイッチ115、顎部固定機構116、スラストウェッジ117、スライダ118、ガイド溝119、スライダのガイド120、電源121、ネジ接続122、配線用の溝123、電気接続124、電気ソケット125、近位端126、モードを切り替えるためのフットペダル(図示せず)に繋がる電気ケーブル127を備える、外科用マニピュレータ151が示されている。
【0046】
図7には、一対の顎部128、ペルチェ素子129および第1の接続ノード130ならびに絶縁された導線133を備える、内視鏡マニピュレータ152の遠位端が示されている。
【0047】
図6には、マニピュレータの遠位端152、中空弾性ロッド131、引張ロッド132、導電線133、回転機構134、ハンドル135、前部ハンドル136、後部ハンドル137、第2の接続ノード138、ラック機構139、ラック機構用の枠140、ラック機構用の圧力プレート141、前部ハンドルにおける貫通穴142、後部ハンドルにおける装着溝143、装着ロッド144、前部ハンドルにおける指用の穴145、ペルチェ素子のブロックを切り替えるためのボタン146、電力供給部147、電気コネクタの近位先端148、電気コネクタ用のソケット149、電力供給部、信号灯および/または音声装置(図示せず)を装備した、ペルチェ素子のブロックを切り替えるためのフットペダル(図示せず)に繋げられ得る給電部150を備える、内視鏡マニピュレータ161が示されている。
【0048】
記載される実施形態は、一般的に、中空管状器官においてその内部構造の完全性を保持しながら人為的な信頼性のある止血を行うための、新たな方法および新たなツールに関する者である。実施形態は、過度の血栓形成を低減または排除し、人為的止血に暴露された中空管状体内の血流の回復を可能とすることを目的とする。それぞれの実施形態は、特定の組の医療上の問題を解決することができる。
【0049】
具体的には、1種以上の記憶形状合金から形成されたクリップは、止血の信頼性の増加を補助することができ、誤ってクリップが中空管状器官からスリップするリスクを低減することができ、クリップを使用する際の外傷を低減することができる。
【0050】
さらに、外科用マニピュレータおよび内視鏡マニピュレータ151、161は、以下により、さらなる技術的問題に対応することができる。
クリップ100の送達、操作、適用、取り外しおよび抜き取りを単一の装置で実行することができ、複数のツールを使用する必要性が排除されるため、外科用マニピュレータ151および内視鏡マニピュレータ161の機能性を改善する。
マニピュレータ151/161を扱っている際の労働集約度および外傷を低減すると共に、マニピュレータ151/161を単純化し、その信頼性を改善する。
【0051】
管状弾性器官において止血を行い、血流を回復する方法、およびこの方法を実践するための装置(医療用クリップ100、外科用マニピュレータ151および内視鏡マニピュレータ161)を、以下で説明する。
【0052】
管状弾性器官153における止血および血流の回復は、マニピュレータ151/161で適用部位に送達される(および随意にそこから取り外される)クリップ100を用いて行うことができる。マニピュレータ151/161は、クリップの耳部101により、マニピュレータの作用面(上部顎部107および下部顎部108)との機械的な接触を介してクリップ100を保持する。接触は、マニピュレータの顎部107/108の遠位端に位置する少なくとも1つのペルチェ素子110となされる必要がある。この方法は、管状弾性器官153が、クリップの顎部102の作用面の対抗移動による圧力下で変形されることを意味する。顎部102は、クリップの耳部101の材料におけるマルテンサイト変態の開始温度(変態温度)未満の温度で事前に広げられている。
【0053】
複数のクリップ100は、例えば10個、15個、20個または30個のクリップ100を収容する、金属またはプラスチック製カートリッジ(図示せず)内に一緒に格納され得る。カートリッジ内にある時は、クリップ100は開放位置にあり、好ましくは、クリップがカートリッジ本体にクランプせず、カートリッジから取り出すことができるように、そのマルテンサイト変態温度未満の温度に冷却されている。この冷却は、マニピュレータ151/161を使用することにより、またはカートリッジを冷却チャンバ内に保管することにより達成することができる。
【0054】
圧力は、クリップの耳部101を介して、クリップの顎部102に力モーメントを伝達することにより生成される。
【0055】
クリップ100により生成されるこのクランプ/クリップ圧力は、形状記憶合金に依存して維持されるわけではない。クリップ100が適所に配置されると、クリップ100の機械的な強度は、閉鎖位置に保持されるのに十分であり、すなわち、クリップの耳部101をその転移温度を超える温度に維持するための温度の印加に依存しない。
【0056】
事前に加熱されたペルチェ素子110の作用面との熱的接触によりクリップの耳部101の温度が上昇すると発生する形状記憶合金効果の結果として、クリップ100の材料において反応圧力が生成される。クリップの耳部101とペルチェ素子110の作用面との間の直接的接触が取り除かれ、クリップの耳部101が体温に達するまで冷えると、管状弾性器官153の適用部位において止血を支援するのに十分な圧縮が維持される。さらに、血流は、管状弾性器官153内に内腔を形成することにより回復される。この内腔は、クリップの顎部102からの圧力が降下し、顎部が部分的に開放すると形成されるが、これは、クリップの耳部101の材料の温度がマルテンサイト変態の開始温度(変態温度)未満に降下した結果であり、これは、クリップの耳部101が冷却モードに切り替えられたペルチェ素子110の作用面に接触すると生じる。クリップの耳部101が十分に冷却されると、クリップ100は少なくとも部分的に開放するが、閉鎖前に以前に開放されてた場合は、再び開放しない可能性がある。
【0057】
クリップの顎部102の事前の開放は、20℃未満の温度で行われる。クリップの耳部101の材料における形状記憶効果は、35℃より高い温度で約0.1〜10秒の時間枠以内に生じる。管状弾性器官153内の内腔が形成されると、完全または部分的な血流の回復が行われる。クリップの顎部102の部分的開放は、約20℃未満の温度で約0.1〜10秒の時間枠以内に血流を回復する。
【0058】
医療用クリップ100は、生体組織に適合する生物学的に不活性な材料か形成され、端が2つのアーチ103を介して2つの顎部102に接続される耳部101を含む。顎部の近位端104は、アーチ103の間の空間に位置する。クリップの耳部101は、形状記憶合金で作製される。
【0059】
具体的には、クリップ100の耳部101は、医療用ニッケル−チタン合金(NiTi)からなる。クリップの耳部101は、
図3A、3B、3C、3Dおよび3Eに示されるように、半円形、楕円形、U字形状、またはジグザグ状等の様々な形態をとることができる。開放された顎部102の最大許容角およびクリップの平均圧縮力のレベルは、クリップの耳部101の形状およびサイズにより決定される。
【0060】
顎部の近位端104は、クリップのアーチ103と耳部101との間の空間に配置されている。クリップの顎部102は両方とも、等しい長さまたは約2mmから50mmの範囲のサイズの異なる長さを有することができる。2つのクリップ顎部102の厚さもまた、同じまたは異なってもよい。
【0061】
顎部102および耳部101の厚さを変えることにより、異なるレベルの圧縮機械力を達成することができ、器官の異なるサイズおよび強度に合わせて異なるクリップを設計することができる。顎部102の長さもまた、クリップされる器官のサイズ、形状および強度に依存して変えることができる。クリップの各実施形態において、様々なサイズが企図され、外科医は、処置に好適なサイズのクリップを選択することができる。
【0062】
顎部102の作用面105の少なくとも一部が、直線平滑面もしくは波形平滑面、または波形粗面正面形状を有する。顎部102の作用面105全体、または局所的部分のみが、直線または角度の付いた切り込みを有する。顎部102の作用面105の少なくとも一部が、平坦面または角度の付いた突起を有する面である。
【0063】
クリップのアーチ103の長さは、それぞれのクリップの顎部102の長さを超えず、アーチ103の厚さおよび幅は、クリップの耳部101の厚さおよび幅に依存する。
【0064】
顎部102の近位端104が、
図1に示される。図示された実施形態において、端104は湾曲して丸みが付けられ、耳部101の内側曲面内で外向きに面している。近位端104のこの湾曲した形態において、管状器官153が内部近位端104により捕捉または引っ掛けられる可能性が最小限となる。これは、クリップ100が適所に配置されれば問題ではないかもしれないが、クリップ100の取り外しにおいて、器官153が顎部104の近位端に向かって延在する可能性があり、また近位端104が丸みが付けられるのではなく鋭い場合には、管状器官153がクリップ100により捕捉される、または巻き込まれる可能性がある。
【0065】
顎部102の作用面105(すなわち、管状器官153に係合して圧縮する面)は、クリップの用途に依存して、様々な異なるパターンの凹凸、隆起部または歯を有する。これらは、
図1において、顎部102の作用面105上に示されているのがわかる。これらの凹凸、隆起部または歯は、共に横方向および水平方向における追加的な摩擦または掴み力を設けることにより、クリップ100を補助する(クリップ100により印加される主な機械力は垂直方向である)。この追加的な摩擦は、手術器具により、または管状器官153自体の拍動によりクリップ100が適所から移動するのを防止する上で有利となる。
【0066】
顎部102の作用面105の輪郭は、作用面105の長さの全てまたは大部分にわたる機械的な荷重の概して均一な圧力拡散を提供すること、ならびに管状器官153のいかなる局所領域に対しても点荷重およびピンポイントの圧力を回避することを意図する。耳部101が閉鎖し始め、その記憶された形状を取ると、アーチ103は、その移動を顎部102に伝達し、顎部105の作用面は、互いに向かって移動する。作用面105が管状器官153に接触すると、器官は圧縮を開始し、クリップ101との表面接触を増加させる。クリップ100が閉鎖すると、アーチ103が顎部102に移行する部分で、顎部102の僅かな屈曲が生じる。管状器官153への不均一な荷重分布は、器官153の一部に損傷をもたらすため、クリップの形状および寸法は、作用面105が、閉鎖形態において、離間した概して平行な構成を取り得るように選択される。これは、生じる器官153の挟み圧迫を軽減することを意図する。
【0067】
いくつかの実施形態において、クリップ100は、
図1に示されるように、各アーチ103が顎部102に遠位方向に移行する、円形または曲線状の切欠き154を有する。切欠き154は、顎部の作用面105に隣接して、一部が顎部102に、一部がアーチ103に形成される。この切欠きは、クリップ100の製造のための成形上の利点を有し、また、各顎部102の中間に過度に厚い部分を有することを回避することにより、不均一な荷重分布の可能性を低減することができる。切欠き154が存在しない場合、顎部102の端が比較的堅い中央部およびより可撓性の端を有することになり、したがって、顎部104の近位端における器官153の過度の荷重の可能性を増加させる。
【0068】
クリップ100の横方向の幅(すなわち、
図1に示されるように、ページを進める方向)は変動し得るが、一般に、クリップ100がクランプする組織への切断効果を有するのを回避する、または少なくとも最小限化するために、十分広く、および/またはその横方向の縁において十分丸みが付けられるべきである。この切断効果はまた、顎部102を完全に閉鎖させず、代わりに閉鎖位置においてその間に僅かな間隔を設ける形状記憶をクリップ100に設置することにより、最小限化することができる。
【0069】
クリップの顎部102の長さに沿った圧縮力の分布のレベルは、アーチ103のサイズ、および顎部102との接触場所を変化させることにより制御される。
【0070】
クリップ100全体は、必要に応じて、クリップ100を管状器官153上に長期間または制限されない期間設置したままとする、生物学的に不活性な形状記憶合金材料で形成することができる。代替として、短期間の腐食問題を低減または排除するために、生物学的に不活性なコーティングが、反応性形状記憶合金材料に塗布されてもよい。クリップ100は、手術の性質(接触される身体領域)、およびクリップ100が器官153との接触を維持する期間に依存して、異なるサイズ、材料および形状の実施形態で生成することができる。
【0071】
外科用マニピュレータ151は、互いに隣接して間隔を空けて配置され、その近位端により相互接続された上部107および下部弾性顎部108を備える。上部107および下部弾性顎部108の少なくとも遠位部の表面は、生物学的に不活性な材料から形成される。また、いくつかの実施形態において、弾性顎部107および108の一部に、生物学的に不活性なコーティングが塗布されてもよい。
【0072】
これらの顎部の横寸法は、その縦寸法よりも小さい。顎部107/108の少なくとも1つの遠位端に、ペルチェ素子110が位置する。これらの素子110は、ペルチェ素子110の少なくとも1つの三位(加熱/冷却/どちらでもない)切替ブロック112/114を介して、弾性顎部107/108に沿って配置された電気絶縁された導線123を通して電力供給部121に接続される。
【0073】
さらに、上部107および下部顎部108の近位端は、接続点または領域122において、ネジ、溶接、半田付けまたは接着により結合されている。
【0074】
上部107および下部顎部108は、いくつかの実施形態において、「ピンセット」状に結合され、それにより、外科医の手に最も近い近位端が互いに永久的に結合され、可撓性ヒンジ点を設け、外科医は、必要に応じて片方の手で、顎部107および108の遠位端を互いに相対的に操作(すなわち開閉)することができる。上部および下部顎部107、108は、好ましくは、それらが若干離れる位置を取るように付勢され、したがってこの解放された開放状態において、顎部がクリップ100の耳部101の周囲に位置付けられ、次いで互いに優しく押し付けられて内側に圧縮された位置を取り、クリップ100を所望通りに適用するように、耳部101を掴むことができる(顎部102はマニピュレータから離れて遠位に延在する)。
【0075】
上部107および下部顎部108の横(幅)寸法は、その長さ全体に沿って変動する値となる。
【0076】
ペルチェ素子110は、半田付けまたはネジにより固定される。ペルチェ素子110を取り付ける好ましい方法は、それらを顎部107および/または108に永久的に半田付けまたはネジ留めすることであるが、例えば、接着剤、溶接、ピンまたは釘等の他の取り付け方法で¥あってもよい。
【0077】
電力供給部121機構は、交流または直流電流を供給する。マニピュレータ151、161のいずれにおける電力供給部121も、外部交流または直流源から得てもよく、随意に、ペルチェ素子の直流制御のために、マニピュレータ151、161内の回路により直流供給部に変換されてもよい。
【0078】
ペルチェ素子のモードの切替ブロックは、顎部107/108の1つの顎部の中央に設置された強制加熱ボタン112および強制冷却ボタン114としてなり、それらの反対側(他方の顎部上)には、上部顎部107の遠位端に設置された電力供給部121機構に接続された強制加熱のマイクロスイッチ113および強制冷却のマイクロスイッチ115がある。
【0079】
顎部107/108の一方側にボタンを、また反対の顎部の内部表面上にマイクロスイッチを位置付けることにより、外科医は、2つの顎部107および108を互いに押し付けることにより、優しく細かい動きで前記スイッチを作動させることができる。これらの動きの優しく細かい動作は、外科的処置の間は好ましいが、これは、いかなる突発な動きまたは急な引張動作も管状器官153に外傷をもたらすためである。
【0080】
また、ペルチェ素子のモードの切替ブロックは、電力供給部121を備え、上部および下部顎部107/108の近位端上に装着された電気ソケット125を通して外科用マニピュレータ151に接続された、フットペダルスイッチとして形成することができる。
【0081】
フットペダルスイッチ作動器により、外科医は、マニピュレータ161上のスイッチに気を取られたり潜在的に干渉されることなく、外科用マニピュレータ161をさらに制御することができる。
【0082】
顎部107/108の位置の固定のための機構は、外科用マニピュレータ151の中間に設置される。この機構は、移動スライダ118、下部顎部108に強固に接続され、上部顎部における穴を自由に通過するスラストウェッジ117、移動スライダ118のガイド120、および上部顎部108内に設置されるガイド溝119からなる。移動スライダ118は、ガイド溝119の内側に設置され、その下部分120に強固に接続される。
【0083】
固定機構116により、上部顎部107および下部顎部108の位置が互いに対して適所に固定される。これにより、外科医は、顎部107/108を解放し、まだペルチェ素子110と接触している間にクリップ100の制御を維持することができる。
【0084】
外科用マニピュレータ151は、信号灯111および/または音声装置を装備することができる。
【0085】
音声/視覚信号は、使用者に、強制冷却から強制加熱への変更について警告する、例えば、変更が行われた際に警告する、および/または不慮の変更が開始された可能性がある際に警告するために使用することができる。信号灯111は、異なる状態を示すために異なる色を、例えば、冷却状態を示すために青色灯を、または加熱状態を示すための赤色灯を発することができる。
【0086】
図6および7に示される内視鏡マニピュレータ161は、少なくとも1つが移動可能に設けられた2つの弾性顎部128を有する。弾性顎部128は、マニピュレータの遠位端152に装着され、その表面は生物学的に不活性な材料から形成される。顎部128の少なくとも1つの自由端に、ペルチェ素子129が固定される。これらの素子は、回転機構134を有する弾性中空ロッド131内に配置された電気絶縁導線133を通して電力供給部147に接続され、回転機構は、ロッドの近位端とそのハンドル135との間に装着される。ペルチェ素子129は、少なくとも1つの三位切替ブロックを介して接続される。弾性顎部128の他端は、中空弾性ロッド131の遠位端52に設置される第1の接続ノード130で交差する。第1の接続ノード130は、弾性中空ロッド131を通過して後部ハンドル137に作動可能に接続される引張ロッド132に結合され、後部ハンドルは、第2の接続ノード138を介して前部ハンドル136に作動可能に接続される。ラック機構139の一方の端は、後部ハンドル137に装着され、前部ハンドル136における穴142を通過し、ラック機構の他端は、圧力プレート141を備える。
【0087】
回転機構134は、前部ハンドル136の上部分に接続される。また、前部ハンドル136は、指用の穴145を有する。
【0088】
回転機構134により、クリップ100の配向を、内部手術部位への侵入/内部手術部位からの引き抜きのための適切な位置を取るため、さらに実際のクリップ100の取り付けに対する柔軟性のために調節することができる。外科医は、顎部128に対してクリップ100を再配向させるために、必要に応じて、手術中にクリップ100を解放することができる。しかしながら、顎部128が機構134を使用して回転され、クリップがそのまま顎部128により保持されるのが好ましい。
【0089】
引張ロッド132の後部ハンドル137との柔軟な接続は、第2の接続ノード138の上の後部ハンドル137の上に配置される装着ソケットを利用してなされる。引張ロッド132の頭部は、このノード138に挿入される。
【0090】
ペルチェ素子129の三位切替ブロックは、ハンドルの前136または後ろ137に装着され、電力供給部150に接続された、強制加熱マイクロスイッチ(113と同様)および強制冷却マイクロスイッチ(115と同様)として設計され、ハンドル136に設置される。
【0091】
また、ペルチェ素子129の三位切替ブロックは、電力供給部を備え、ハンドルに装着された電気ソケット149を通して内視鏡マニピュレータ161に接続された、フットペダルスイッチとして構成される。
【0092】
内視鏡マニピュレータ161は、ペルチェ素子129がどちらの設定となっているか、すなわち加熱または冷却となっているかを使用者に伝えるための、信号灯および/または音声装置を備える。
【0093】
弾性管状器官153における血流を回復するための信頼性のある、および損傷のない止血は、特殊器具、すなわち外科用マニピュレータ151および/または内視鏡マニピュレータ161と共に医療用クリップ100を使用することにより達成することができる。
【0094】
実施形態は、管等の弾性管状器官の、押下による変形、およびある特定期間のそのような圧縮位置の固定等の機械的な動作の原理に基づくものである。同時に、前に圧縮された弾性管状器官内に内腔を復元することが可能である。この可能性は、外科医の作業を大きく容易化し、おそらくは手術期間を短縮する。
【0095】
換言すれば、血管等の弾性管状器官153の押下、およびクリップ100を使用したある期間の管の圧縮位置での固定は、管内の一時的な止血をもたらす。しかしながら、管内の血流は、クリップ100を取り外すと回復される。さらに、クリップ100およびマニピュレータ151または161を使用して、圧縮された弾性管状器官が自然に自ら復元され得るように、圧縮された器官に対する大きな損傷を回避することが可能である。この能力は、外科医にとって大きな利点であり、おそらくは手術の期間を短縮する。
【0096】
弾性管状器官153の変形は、ヒト組織に適合する生物学的に不活性な材料で完全に形成された、または単にその安定なコーティングを有する医療用クリップ100を利用して行われる。そのような材料の使用は、身体に対するクリップ100のいかなる生化学的な(毒性、発癌性の)健康への影響も最小限化するために必要であり、これは、クリップ100が長期間適用される場合には特に重要である。
【0097】
クリップの耳部101またはクリップ100全体は、医療用ニッケル化チタン合金(NiTi)等の形状記憶合金から形成される。その使用は、医療用クリップ100の特定の機械的(弾性−塑性、熱弾性および強度)特性を満たすために必要であり、この特性は、弾性管状器官153における信頼性のある、および確実な止血を達成し、また前に適用されたクリップ100の安全な(および乱暴な力を用いることのない)取り外しにより血流を回復するために必須である。
【0098】
クリップ100の取り外しにおけるいかなる力の使用も、一時的止血部位において器官153に対するさらなる損傷をもたらすため、クリップ100が可能な限り優しく取り外されることが好ましい。
【0099】
医療用クリップ100の動作原理は、形状記憶効果に基づくものである。その効果は、以下のように説明される。形状記憶合金は、一般に、その元の、または冷間成形形状(記憶形状)を記憶し、材料は変形され機械的にねじられるが、熱を印加すると、その記憶形状に戻る。この変態が生じる温度は、変態温度、または内部材料相の変化に起因するマルテンサイト変態の温度と呼ばれる。クリップ100がその塑性領域を超えて弾性変形まで過度に変形されると、クリップ100の形状記憶特性が損なわれ、または失われる可能性があり、クリップは、熱エネルギーの印加または除去によりその開放位置と閉鎖位置との間で変化できなくなる。形状記憶効果の下での変形は、一般に材料特性の塑性領域内に維持されるため、形状記憶効果を損なう過度の変形の種類は、クリップの通常の使用によっては生じない。
【0100】
クリップ100は、形状記憶合金のシートから切り出され、次いで熱処理に供される。これは、クリップ100に、塑性変形により達成される、正しい場所への移送および適用に好適な形態を与える。すなわち、クリップは、その低温(開放)形態で適用部位に移送することができ、クリップ耳部101に熱が印加されると、その閉鎖(記憶形状)位置に戻る。効果的に圧縮し器官における止血を維持するために必要なサイズおよび機械力に依存して、クリップ100を生成するために様々なシート厚を使用することができる。加熱されると、クリップ100はまず、図(2B)に示されるような閉鎖した顎部102の特定された形態(記憶形状)を取り、弾性管状器官153を押下する。クリップ耳部101が冷却されると、クリップ顎部102は、
図2Cに示されるように部分的に開放し、これにより、外傷のないクリップ100の取り外し、または、必要に応じて、クリップ100の再適用が可能となる。
【0101】
医療用クリップ100を器官153に適用する前に、クリップ100は、起きた(開放)状態にされる。クリップの耳部101は、事前に疑似塑性的に変形され、顎部102を低温(20℃未満)で広げ、
図2Aに示されるような、器官153への適用に好適な形状を与える。
【0102】
疑似塑性は、材料のオーステナイト相が応力を受けてマルテンサイト相を誘導する効果である。応力荷重が解除されると、マルテンサイト相はそのオーステナイト状態に戻り、その記憶形状に変化して戻る。このマルテンサイト相にある間、合金は高レベルの応力を維持することができる。
【0103】
顎部102の開放は、耳部101の材料が、マルテンサイト変態の温度間隔(変態温度範囲)に近い温度に達するように、低温(20℃未満)で行われる。この温度では、材料は可撓性となり、その弾性率は大きく低下し、その塑性変形は、塑性変形の蓄積の可逆的な機構に起因して、すなわち、外力による指向性の構造−相転移に起因して、ある特定の限度まで蓄積する。
【0104】
ニチノールは、金属合金であり、したがって本来可撓性である。ニチノールは、物理的特性および機械的な特性の利点を有する組み合わせを提供する。その生体適合性(ステンレススチールの耐腐食性と同様の耐腐食性)の他に、ニチノールは可撓性であり(約75GPaの低いヤング率)、高いUTS(最大抗張力)(約750〜960MPa)を有し、偏った剛性特性を示し(圧縮下で剛性および引張下で可撓性)、人間の身体と同様の温度範囲において超弾性挙動を示す。
【0105】
ニチノールの構造は、オーステナイト相において立方結晶格子配置であり、極めて強固である。オーステナイト構造は、構造が変態温度未満に冷却されると単斜晶構造に変化し、マルテンサイトがニチノール内で双晶となる。単斜晶構造に荷重が加わると、マルテンサイトがニチノール内で非双晶化してニチノールが塑性変形する。次いで変形されたニチノールに熱が印加されると、結晶立方配置は再配列し、ニチノールを冷間成形、すなわち記憶形状に戻す。この全体的な荷重および除荷サイクルは、機械的な変形が塑性変形の限度内に維持されると仮定すると反復可能である。
【0106】
ニチノールの加熱および冷却反応ならびにマルテンサイト構造とオーステナイト構造との間の複雑な結合および変態に起因して、ニチノール構造には4つの転移温度、すなわち、ニチノールが冷却された際のオーステナイト相内のマルテンサイト形成の開始および終了、ならびにニチノールが加熱された際の完全マルテンサイト相内のオーステナイト形成の開始および終了が存在する。これらの特性により、ニチノールは、金属およびプラスチックの利点の多くを1つの材料に統合し、腐食のリスクを最小限としながら、材料を適所に柔軟に操作することを可能にする。
【0107】
手術前に、クリップ100は、法律で定められた期間、溶液中で滅菌されるか、またはガス滅菌器内で処理される。滅菌プロセスは、クリップ100の所望の特性を変化させず、繰り返し行うことができる。
【0108】
代替として、医療用クリップ100は、特殊容器(カートリッジ)内で、30℃を超えない温度で無菌状態で保管することができる。起きた(開放)状態において、クリップ100は、クリップ100の使用が必要となるまで、手術の期間起きた状態で1つまたはいくつかのクリップを保管するように設計されたカートリッジのソケット内に配置される。
【0109】
保管中、カートリッジ内の温度を30℃を超えないように維持することは、クリップ顎部102が閉鎖しないことを確実とするために必要であり、これは、耳部101が約35℃以上の温度に達すると生じる。
【0110】
顎部102が広がる(
図1に示されるように)最大許容角は、クリップの耳部101の形状および寸法により決定される。
図3Aから3Eは、様々な例示的代替耳部形状および構成101a、101b、101c、101d、101eを示す。耳部101の幅が小さいほど、およびプロファイルの全長が大きいほど、顎部の作用面105が広がる最大許容角は大きい(
図1参照)。
【0111】
クリップ100を閉鎖するには圧縮力が必要であるが、この力は、クリップ100のサイズ、形状、材料および厚さに依存する。耳部の幅を増加させることは、耳部101の厚さを変えるよりも、クリップ100を閉鎖するために必要な圧縮力に大きく影響する。
【0112】
圧縮力のレベルもまた、耳部101のサイズおよび形状に依存する。耳部の幅(より大きな効果)または耳部101の厚さを増加させると、平均圧縮力のレベルを増加させることができる。
【0113】
手術中、クリップ100を可撓性管状器官153に適用する前に、クリップは以下の様式でカートリッジから抜き取られる。
【0114】
クリップ100は、その耳部101で掴まれ、外科用マニピュレータ151の顎部107/108または内視鏡マニピュレータ161の顎部128の遠位端に配置されたペルチェ素子110または129と接触した、作用面または顎部107/108または128の両側で圧縮される(手術の種類に依存して)。クリップ100をまだ保持している間に、クリップは開放位置で無菌保管カートリッジから引き出される。
【0115】
カートリッジ内のクリップ100は無菌であり、手術室においてすぐに使用できる開放位置で保管されていることに留意する必要がある。カートリッジは、所与の処置に必要な複数の所与のサイズ、形状およびスタイルのクリップまたはクリップの混合を格納する。
【0116】
外科用マニピュレータ151を使用する際、耳部101をクランプするために上部および下部顎部107/108を閉鎖位置に保持するために、顎部107/108の中間部が外科医の手により押される。
【0117】
外科医が手を動かし、顎部107/108に対する圧力を変化させ、グリップを変え、または外科用マニピュレータ151を完全に解放することができるように、外科用マニピュレータ151の上部107および下部顎部108を適所に設定することができる利点がある。顎部107/108を適所に設定するために、固定機構116が使用される。機構116は、スライダ118およびスライダガイド119、複数のガイド120ならびにスラストウェッジ117を備える。
【0118】
顎部107/108の位置は、スライダ118がガイド溝119に沿って移動される際、固定機構116を介して保持される。この動きは、スラストウェッジ117を持ち上げ、これにより顎部107/108が閉鎖される。
【0119】
内視鏡マニピュレータ161を使用する場合、クリップの耳部101を保持する顎部128の閉鎖位置は、ハンドル(前部ハンドル136および後部ハンドル137)が互いに引き寄せられると伸長する引張ロッド132により達成される。この動きは、外科医の手により行われ、互いに押し付けられた位置は、ハンドル136および137の相対的位置を固定する、ラック機構139およびその関連した枠140により保持することができる。
【0120】
外科医は、指穴145に指を挿入し、同じ手の人差し指を圧力プレート141に置く。これにより、ハンドル135の2つの部分を互いに優しく押し付けることができ、ラック機構139は穴142に通される。ラック機構139は、後部ハンドル137の内側の面上の装着溝143で、後部ハンドル137に取り付けられる。次いで、ラック機構は、穴142を通して設けられ、外科医の指が置かれる圧力プレート141で終端される。ラック枠140は、顎部128を現在の場所に固定するために使用することができ、これにより外科医は、顎部128およびそのクリップ100のグリップに影響することなく、手の位置の掴みを調節することができる。
【0121】
マニピュレータ151/161により保持された起きた位置でのクリップ100は、クリップすることが意図される管153等の適切な部位に導かれる。
【0122】
内視鏡マニピュレータ161を使用する場合、特別な回転機構134により、クリップ100が装置(マニピュレータ161)により保持されている間にクリップ100を操作(回転)させ、関連領域に適用することができる。
【0123】
クリップされる器官の領域153は、(
図1および2に示されるように)顎部102の作用面105の間に位置付けられ、その後、医療用クリップ100を領域153に適用することができる。
【0124】
クリップ100は、塑性変形圧力下に置くことなく適用することができる。代わりに、クリップ耳部101の構造要素の1つに+35℃を超える強制制御ポイント加熱が行われる。耳部101は、クリップされる組織153と直接接触しない。
【0125】
クリップ100は、クリップ耳部101のいかなる機械的な荷重もなしに適用することができる。約+35℃を超える温度へのクリップの耳部101の制御された加熱は、耳部101のその記憶位置(閉じた位置)への形状記憶を引き起こすように実行される。耳部101は、過度の熱の直接的印加により領域にさらなる外傷がもたらされる可能性があるため、好ましくは管状器官153に直接接触しない。
【0126】
耳部101の加熱は、外科用マニピュレータ151の強制加熱ボタン112を押すことにより作動(始動)される。これは、強制加熱マイクロスイッチ113に影響する。内視鏡マニピュレータ161のハンドル135上のペルチェボタン146を押した場合、またはマニピュレータの1つのペダル装置上の適切な強制加熱のペダルを押した場合(約0.1〜10秒間押したままとするべきである)も、同様のことが生じる。
【0127】
上述のようなボタンまたは他の要素の押下(加熱または冷却を作動させるため)は、電源121/147からの電気回路の短期間(0.1〜10秒)の閉鎖をもたらす。その結果、特定の極性の電流が光111および/または可聴警告装置111に印加され、ペルチェ素子110/129の作用面を加熱する。
【0128】
ペルチェ素子110の作用面と接触するクリップの耳101も、同様に加熱される。耳部101の材料における温度が約+35℃超に達すると、形状記憶効果が生じて反応応力が生成される。
【0129】
本質的に、熱の印加により、ニチノールがその純粋なオーステナイト立方結晶配置に復帰することを開始するため、クリップ100はその閉鎖位置に復帰する。
【0130】
形状記憶効果の結果、クリップ耳部101は力モーメントを形成し、これがアーチ103を介して医療用クリップ100の顎部102に伝達される。顎部102の相互移動が管状弾性器官153を変形させるが、これは顎部102の作用面105における圧力の影響下で生じる。耳部の強制加熱の約0.1〜10秒以内で、クリップ100は、管状弾性器官153に適用され、顎部102をクランプすることにより器官内の内腔を閉鎖する(
図2Bに示されるように)。
【0131】
顎部102が完全に閉鎖された後、耳部101は、耳部とペルチェ素子110/129の作用面との間の直接的な熱的接触を取り除くように解放される。これを行うためには、外科用マニピュレータ151を扱っている場合、スライダ118をガイド溝119に沿って元に移動させ、それによりスラストウェッジ117を解放する。
【0132】
内視鏡マニピュレータ161を扱っている場合、ラック機構139の圧力プレート141を押下し、それによりそれを枠140から解放させ、これが、第2の接続ノード138に対する後部ハンドル137の回転運動をもたらし、後部ハンドルを前部ハンドル136に接続する。
【0133】
可撓性管状器官153に対するクリップの適用部位の圧縮は、耳部101の温度が周囲の体温まで冷却される際、止血効果を維持するのに十分である。
【0134】
耳部の断面積が約0.1〜2.0mm
2の範囲内である場合、耳部101は、異なる種類の器官をクリップするために、約0.01〜5kgまたは0.1〜50Nの等価力の必要な圧縮を生成することができる。クリップ100の種類は、管の解剖学的分類(小さい、中程度、中程度から大きい、および大きい直径)に従い、その顎部102は、約2mmから50mmの範囲の長さである。
【0135】
医療用クリップ100の応用としての提案は、耳部101、特殊な幾何学的形状の顎部102(溝、波形等を有する)、作用面105およびアーチ103の存在を想定している。この設計は、管状器官153に適用された場合、管状体の壁に対して、顎部102の作用面105からの高度の均一性を有する圧縮により、緊密な接触が確立され、良好な横方向および縦方向の安定性を提供する。管状弾性器官153が拍動する、および/またはクリップ100が誤って手術器具に接触する際の弾性管状器官内の圧力下で生じる、望ましくないクリップのスリップの可能性が最小限化される。
【0136】
圧縮の均一性は、さらに、望ましくないクリップのスリップの可能性を最小限化し、顎部105の作用面に沿った凹凸または歯と連携する。
【0137】
その結果、クリップ100が適用された後、外科医には、手術の別の段階を実行するのにほぼ無制限の時間が提供される。その後、外科治療に依存して、例えば、クリップが誤った部位に適用されている場合、または手術の他の段階が終了した後、血流が回復される。
【0138】
クリップ100がずれている場合、または調整もしくはさらに完全な取り外しが必要な場合、クリップ100を取り外すことができ、次いで管153内の血流が回復されて、自然に管内腔を再形成することができる。
【0139】
血流の回復は、管状弾性器官153内の内腔を形成することにより行われる。これを行うために、顎部が部分的に開放する際に(
図2Cに示されるように)顎部102の作用面105からの圧力が低減される。これは、クリップ耳部101の約+10℃未満の温度への強制冷却の結果、耳部101の材料においてマルテンサイト変態が発生するために生じる。
【0140】
この場合も、耳部101は、外科用マニピュレータ151の顎部107/108または内視鏡マニピュレータ161の顎部128上(手術の種類に依存する)に配置されたペルチェ素子110または129の作用面の両側により、顎部が互いに向かって移動する際に掴まれる。外科用マニピュレータ151においては、この移動は、外科医の手が顎部107/108の中間部を押した時に達成される。内視鏡マニピュレータ161においては、この移動は、外科医の手がハンドル135を押し、その後部137および前部136が互いに近接して引張ロッド132が伸長した時に達成される。
【0141】
耳部101の強制冷却は、耳部がペルチェ素子110/129の作用面に熱機械的に接触した時に達成される。ペルチェ素子110/129は、外科用マニピュレータ151における強制冷却ボタン114をクリックすることにより冷却モードに移行され、これが強制冷却マイクロスイッチ115の作動をもたらす。内視鏡マニピュレータ161を使用している場合、耳部101の強制冷却は、内視鏡マニピュレータ161のペルチェボタン146をクリックすることにより、またはペダルをペダル制御装置(該当する場合)に押し込み、次いで約0.1〜10.0秒間押したままとすることにより達成される。
【0142】
上述のようなボタン114/146またはペダルの押下は、電源121または147からの電気回路の短時間(約0.1〜10.0秒)の閉鎖をもたらす。その結果、特定の極性の電流が光および/または可聴警告装置111に印加され、ペルチェ素子110/129の作用面が冷却を開始する。
【0143】
耳部101は、ペルチェ素子110/129の冷却された作用面との熱交換により冷却される。耳部101の材料における温度が約+10℃未満に降下すると、マルテンサイト変態が耳部101の材料の軟化をもたらし、顎部102は部分的に開放し始める。これにより、耳部101により保持されている(掴まれている)クリップ100は緩和されており、最終的に手術創部の場所から取り外されるため、最小限の外傷で弾性管状器官153からクリップ100を取り外すことができる。
【0144】
クリップ100は、法律で定められた期間、滅菌溶液で処理される、および/またはガス滅菌器内に保存されれば、再利用することができる。次いで、クリップは、顎部102がいつでも配置できるように開放している、開放状態に戻される。
【0145】
これらの新たな高度医療装置および機器を使用する提案される方法により、手術は、身体の中空管状器官153の素地に対する外傷を最小限とする効果を有するとともに、外科的介入の正確性の向上を提供することができる。これらの装置はまた、外科医の作業を大きく容易化し、手術期間を短縮することができる。
【0146】
本明細書中に記載のように、ペルチェ素子は、熱電変換器または変換素子の1種として機能し、ペルチェ素子に印加された電位を、ペルチェ素子の外側表面での加熱または冷却効果に変換する。
【0147】
図8には、さらなる実施形態によるクリップマニピュレータ851が示されている。クリップマニピュレータ851は、構造および動作の点で、
図4および5に示されるマニピュレータ151と同様である。具体的には、クリップマニピュレータ851は、その遠位端809が離れた開放位置から、遠位端809が互いに閉鎖した、またはクリップ100の基体部/耳部101の側方ランド周辺で閉鎖した閉鎖位置へ柔軟に屈折可能な、2つの対向する顎部またはアーム807、808を有する。アーム807、808は、その形状により、および近位端826でアーム807、808を互いに連結するコネクタ856により、開放位置に付勢されている。クリップマニピュレータ851は、少なくとも1つの、および好ましくは2つの熱電変換器素子810(例えば、ペルチェ素子)を有し、それぞれ1つが、基体部/耳部101に加熱または冷却効果を適用するために、アーム807、808のそれぞれの遠位端809に位置している。
【0148】
クリップマニピュレータ851は、熱電変換器素子810に必要な制御および電流供給を供給するための、電力供給部および熱電変換器素子810に電気的に連結された切り替え制御ユニット820を有する。電力供給部および切替制御ユニット820の電力供給および切替機能は、互いに別個に設けられてもよく、または、単一ユニットもしくは筐体内に設けられる。
【0149】
アーム807、808は、それぞれ、その中間部に、クリップの適用中のマニピュレータ851の容易なグリップおよび操作のためのグリップ部855を有する。図示されていないが、アーム807、808は、それらが閉鎖されるとクリップ100の基体部/耳部101周辺で閉鎖位置に保持され得るように、クランプ機構を有する。
【0150】
本明細書中に記載のマニピュレータの各実施形態において、装置の遠位先端に共に位置するグリップ/保持および温度変化機能を有する、手動操作可能なクリップ送達装置が核として存在する。したがって、装置は、(クリップ100をクランプおよび解放するための)加熱/冷却装置、ならびに掴み/位置付け装置として容易に使用可能である。マニピュレータの実施形態は、いくつかの場合において、顎部またはアームが弾性であるとして説明されるが、これは単に、マニピュレータの顎部またはアームが、その長さに沿った1つのまたは多くの点において、ゴムバンドの意味での弾性ではなく、ある程度の屈曲および/または相対的移動が可能であることを示すことを意図する。マニピュレータの顎部/アームは、比較的強固に形成されるが、クリップ100の基体部分/耳部をグリップおよび保持するために、顎部/アームを互いに相対的に移動させる1つ以上の枢着点および/またはスライダ機構を有する。
【0151】
本明細書中に記載のクリップの実施形態は、以下の点からさらに説明することができる。クリップ100は、少なくとも一部が、ニチノール等の形状記憶合金で形成することができるが、少なくとも基体部101は形状記憶合金で形成される。基体部101は、可撓性の中央部を有し、対向するアーム103が中央部の各側からC字状またはU字状に延在する。中央部は、例えば、
図3Aから3Eにより示されるように、凸状または凹状に湾曲してもよく、または、少なくとも部分的に直線であり得る。最小限、基体部101は、基体部101の材料に、対向するアームを互いに対して移動させ、基体部101の記憶された形状を取るために好適な温度変化が生じると、形状記憶を取るように構成されなければならない。
【0152】
基体部101は、各側方側上の側方ランドを画定し、ランドは、基体部101がその形状記憶の作用下で湾曲および移動する面に略垂直の反対方向外側を向く。これらの側方ランドは、基体部101の平坦側面であり得る。ランドは、クリップ100を位置付ける、加熱する、または冷却する際に、熱電変換器110、129によりクリップ100の各側方側上で掴まれることが意図される。
【0153】
共に、基体部分101およびアーム103は、好ましくは曲線的なC字状またはU字状を有する。アーム103は、クリップ100の開放位置と閉鎖位置との間に鋭角を成し、互いに相対的に移動可能な対向するアームを形成するように、基体部から離れて延在する。アーム103は、例えば、アーム103を基体部101と一体的に形成することにより、または、接着、溶接もしくは機械的な連結等によりアームを基体部に接続することにより、基体部101に連結される。
図1に示されるようなクリップ100は、基体部101とアーム/アーチ103との間、およびアーム/アーチ103と顎部102との間の可能な材料移行または機械的な移行を示唆しているが、クリップ100が一体的に形成される、材料移行または機械的な移行無しにすることができ、これが好ましい。したがって、移行は、物理的ではなく、概念的である。
【0154】
クリップ100の基体部101を近位基準点とすると、アーム103は、少なくとも幾分遠位に延在し、顎部102はアーム103の遠位端に位置する。顎部102は、例えば、顎部102をアーム103と一体的に形成することにより、または顎部をアームに接続することにより、アーム103に連結される。顎部102のアーム103とのそのような接続は、接着、溶接、機械的な接続等によるものである。基体部101、アーム103および顎部102の外側表面およびプロファイルは、概して平滑であり得、随意に、近位端で丸みが付けられ、遠位端の若干丸みが付けられた点に向かってテーパしていてもよい(少なくとも閉鎖された場合)。
【0155】
クリップ100は、クリップ100の若干丸みが付けられている遠位末端に向かってそれぞれ延在する対向する顎部102を有する。したがって、顎部102は、クリップ100の遠位末端に対応する遠位端を有し、また、各顎部102の近位延長部として機能する内側延在部分を有する。顎部102のそれぞれは、クランプされる組織付近を切断する傾向を有さない、十分な横幅および表面積の組織係合表面105を画定する。組織係合表面105は、クランプされた組織を掴むことを支援する起伏部を有し得る。組織係合表面105に沿った起伏部は、クリップ100がクランプされた組織から滑り落ちる可能性を軽減するために、その振幅が変動し、例えば、遠位先端に向かって増加する。顎部102の組織係合表面105は、それ以外は、可能な限り、クリップ100が閉鎖位置にある時にさらなる圧縮がクランプされる組織に印加されるために、起伏部を別にして比較的線形のプロファイルを取る。
【0156】
顎部102は、それらがアーム103に連結される部分から遠位にテーパした形状を有する。しかしながら、顎部102のそれぞれの内側延在部が、顎部102の組織係合表面を近位方向に拡張するように機能する。
図1に示されるように、顎部102の内側延在部とアーム103との間に間隔がある。さらに、内側延在部はまた、基体部101との間隔を画定する。顎部102の内側延在部は、クランプ機能を実行する、または開放位置と閉鎖位置との間を移行する際に、ある程度の屈曲をさせることができるが、顎部102の内側延在部は、一般に、アーム、基体部、または互いに接触しない。クリップ100が閉鎖位置にある時に、クランプされた組織が顎部102の間で概して均一にクランプされている理想的な構成において、組織係合表面105は、
図2Bに示されるように大体平行であり、離間している。そのような位置において、クリップ100は、好ましくは涙形に近似した全体形状を有し、基体部101は、涙形状のより大きな曲線端部に近似する。
【0157】
クリップ100は、基体部101の中心および顎部102の間の中央を通って延在する縦の中心線の周りに略対称である。クリップ100が所望される特定の外科的用途に依存して、クリップ100は、様々な寸法を有するように形成することができる。例えば、その最大寸法であるクリップ100の長さは、例えば、約3ミリメートルから約15〜50ミリメートルであってもよく、例えば、1〜2ミリメートルから約5または10ミリメートルの幅を有してもよく、例えば、クリップ100の厚さは、約1ミリメートルから約4ミリメートルであってもよい。
【0158】
顎部102の内側延在部は、その最も内側近位部に近位フック部分104を有し、基体部101と顎部102の内側延在部の近位端との間の領域に、クランプされた組織を捕捉またはフックするのを回避することを意図した内側湾曲端を効果的に提供することができる。
図1に示されるように、顎部102の内側延在部は、それらが基体部101の近くで外側フック形状で外側に湾曲し始めるまで、近位方向で若干内側にテーパする。
【0159】
クリップ100はまた、基体部101により画定される閉鎖端および顎部102の遠位先端106により画定される開放端を有するものとみなすことができ、顎部102は、概して、閉鎖位置と開放位置との間で、互いに対して例えば0°から45°の間の角度を画定する。クリップ100が、組織がクランプされるには大きすぎる可能性がある場合、または過度のクランプ力が印加される場合を除いて、顎部102は、概して、閉鎖または開放位置において互いに接触しなくてもよい。過度のクランプ力が印加される、またはクリップ100がクランプされる組織には大きすぎる場合、形状記憶は、顎部102を遠位端106に向かって互いに接触させるようになっている。
【0160】
また、顎部102は、必要に応じてクランプ動作を提供するクリップの主機能構成要素として機能することが観察される。したがって、アーム/アーチ103および基体部/耳部101は、対向する顎部102を結合する連結部として機能し得る。この意味で、対向する顎部はそれぞれ、対向する第1および第2の自由端(すなわち、遠位先端106および対向する近位フック部分104)を有し、基体部101およびアーム103により形成される連結部は、各顎部102の対向する自由端の中間の場所で、各顎部102に連結される。したがって、連結部101/103は、形状記憶合金で形成される(少なくとも基体部101において)ため、連結部は、温度変化が形状記憶合金の形状記憶の冷却または加熱作動をもたらすかどうかに依存して、連結部の温度変化に応じた顎部の相対的移動をもたらす。顎部102の相対的移動は、主に、2つの顎部102の間の角度分離の増加または減少である。
【0161】
事例研究1
48歳の患者Bが、慢性有石胆嚢炎を治療するための所定の手術のために外科に入院した。患者は、それまでの5年間この疾患を有しており、1年に約5〜7回、規定食を守らなかった時にいくつかの悪化を経験していた。
【0162】
患者は、既往歴、臨床および検査データ、ならびに腹部の超音波からのデータに基づき胆石と診断されたが、超音波データは、2.3mmに至る肥厚した壁を有し、最大3cmの大量の石を含有する、8×6×5cmのサイズの胆嚢を示した。
【0163】
患者は、腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた。
手術中、腹部領域が検査されたが、他の病変は見られなかった。胆嚢のサイズは、超音波による所見に対応し、すなわち、肥厚した壁を有する8×6×5cmのサイズ、ならびに慢性炎症の兆候および膀胱内の複数の石の存在を示した。また、胆嚢頚部および胆嚢体の周りに癒着が見られた。
【0164】
胆嚢頚部および胆嚢体は、5mmのフック状電極を利用して癒着から分離された。ニチノール製の045°の角度に開放されたクリップ100に類似した医療用クリップを、内視鏡マニピュレータ161に類似した内視鏡マニピュレータで10mmの套管針を通して腹腔内に導入した。次いで、直接視認可能なクリップを、胆嚢管および胆嚢動脈の遠位端に適用し、続いてこれらの器官の近位端を同様にクリップした。耳部を40℃より高い温度に加熱し、胆嚢管および動脈をブロックした。直接観察されるように、いかなる血液または胆汁の漏洩の兆候もなく、信頼性のある脈管のクランプが達成された。
【0165】
套管針により腹腔から胆嚢を取り除いた後、クリップの形状記憶効果を試験した。クリップの耳部を10℃未満に冷却し、顎部を1〜2秒以内開放した。次いで、クリップを容易に胆嚢管から取り外し、再び適用した。この機能は、最初の設置が初めは正しくない場合、または最適な結果のためにいくらかの微調整が必要である場合の、クリップ100の再適用および調節に非常に有用である。
さらに、標準的手順に従い、腹腔鏡下胆嚢摘出術を完了した。
術後の回復は順調であった。患者は4日目に退院した。
【0166】
事例研究2
52歳の患者Lが、両足の静脈瘤の切除のための所定の手術のために外科に入院した。その状態の病歴は、約8年であった。過去2年間、歩行中および徒歩での長距離移動中のふくらはぎの筋肉の疼痛が増加した。静脈血栓症および静脈血栓塞栓症のための年一回の入院も留意された。過去に行われた保存療法は、十分効果的ではなかった。検査中、両下肢の深部静脈内の血流は、ブロックされていなかった。
【0167】
右側静脈切開術(静脈切除)を行った。
手術は、従来の方法に従った。独特のステップは、ニチノール(ニッケル−チタンNiTi)製のクリップ100に類似した2つのクリップを、腰部の浅大腿静脈に対して、この静脈が深部静脈と交差する直前の領域に位置付けることであった。マニピュレータを利用して、クリップの耳部を40℃より高い温度に加熱して顎部を閉鎖することにより、静脈にクリップを適用した。
ニチノールクリップを脈管の遠位および近位部分に設置して、微小および中程度のサイズの他の脈管もまたクリップした。
【0168】
顎部のそれぞれの波状面、およびその面上に存在する切り欠きが、血管へのクリップの設置を支援した。不適切な適用の場合、クリップは、マニピュレータで耳部を10℃未満に冷却する(クリップの顎部を開放し、続いてクリップを取り外すことができる)ことにより取り外すことができた。処置の間、6つの管(12個のクリップ)をクリップした。管からの出血は観察されなかった。次いで、手術は標準的手順に従った。
術後の回復は順調であった。患者は、手術後2日目に退院した。
【0169】
上述の事例において、クリップ100およびマニピュレータ151、161は、出血を止めるための標準クリッパー、例えばAutosutureおよびStortz、ミニクリップAesculapまたは手作業による縫合の有用な代替物であることが実証された。クリップ100の使用は、手術を大幅に加速させ、一方装置の品質および信頼性は、機械的なクリップまたは手作業による縫合に劣らない。
【0170】
実施形態の元となる説明の多くは、国際出願PCT/RU2010/000735号に含まれており、ロシア語で記述されている。その元の文章の多くは、本明細書中の英語訳の1つのバージョンにおいて再現される。翻訳は、翻訳者の技術に従い主観的に行われるため、請求項の代替の翻訳および元のロシア語文献の請求言語が本明細書中に含まれている。この代替の翻訳は、以下の点から実施形態を説明する。
【0171】
いくつかの実施形態は、マニピュレータホルダ枝状部の遠位端に設置された少なくとも1つのペルチェ熱電対の作用面との機械的な接触を伴うクリップをその中心により機械的に保持するマニピュレータホルダによって、標的の適用点に搬送されたクリップを使用することにより弾性管状体構造において後の血液循環の回復を可能にしつつ確実に止血する方法であって、クリップ中心材料におけるマルテンサイト変態の開始温度未満の温度で事前に引き離されたクリップ枝状部を閉じることによって発生する圧力を印加することにより、弾性管状体構造を変形させる工程を含み、圧力は、加熱モードに切り替えられたペルチェ熱電対の表面との機械的および熱的接触によりもたらされる温度上昇により開始される形状記憶効果に起因する反応応力を生成する材料からなるクリップ中心から、アーチを介して、クリップ枝状部に力のモーメントを伝えることにより生成され、続いて、中心材料とペルチェ熱電対表面との直接的な機械的および熱的接触を中断する一方で、クリップ中心が身体組織温度まで冷却される際にクリップ枝状部の作用面により生成される、適用点における弾性管状体構造に対する止血を確実にするのに十分な圧縮作用を維持する工程含み、その後、中心材料と、冷却モードに切り替えられたペルチェ熱電対の作用面との機械的および熱的接触によって、クリップ中心がクリップ中心材料のマルテンサイト変態開始温度より低くまで冷却された際に、クリップ枝状部の作用面により生成される圧力の低減とクリップ枝状部の部分的な開放によって、弾性管状体構造を開口させることにより、血液循環を回復する工程を含む方法に関するものである。
【0172】
クリップ枝状部の事前の開放は、20℃未満の温度で達成される。クリップ中心材料の形状記憶効果は、35℃より高い温度で0.1〜10秒の間に生じる。弾性管状体構造を開口させることにより、少なくとも一部の血液循環の回復が達成される。血液循環の回復のためのクリップ枝状部の部分的開放は、20℃未満の温度で0.1〜10秒の間に達成される。
【0173】
いくつかの実施形態は、両端が2つのアーチを介して2つの枝状部に接続されるクリップ中心を備え、枝状部の近位端は、クリップアーチの間の空間に位置し、生体組織に適合する生物学的に不活性な材料から形成され、少なくともクリップ中心は、形状記憶効果材料から形成される、医療用クリップに関するものである。
【0174】
前記医療用クリップのクリップ中心は、医療用ニッケル化チタンからなる。前記医療用クリップのクリップ中心は、半円形、楕円形、U字形状またはジグザグ状等の様々な形状から構成されるものである。医療用クリップの最大許容枝状部開放角および平均圧縮力は、医療用クリップ中心の形状およびサイズにより決定されている。枝状部の近位端は、クリップアーチとクリップ中心との間の空間に配置されている。前記医療用クリップの両方の枝状部は、等しい長さまたは2mmから50mmの範囲の異なる長さを有する。前記枝状部は、その長さにわたり変化する厚さまたは一定の厚さを有する。
【0175】
枝状部の作用面の少なくとも一部は、均一な平滑面、または波形の平滑面、または均一な粗面、または波形の粗面のプロファイルを有する。前記医療用クリップ枝状部の作用面の少なくとも一部は、直線または斜行の切り欠きを有する。前記医療用クリップ枝状部の作用面の少なくとも一部は、直線または斜行の隆起部を有する。医療用クリップアーチの長さは、それぞれのクリップ枝状部の長さを超えなくてもよく、前記医療用クリップアーチの厚さおよび幅は、クリップ中心の厚さおよび幅により決定されている。前記医療用クリップ枝状部の長さにわたる圧縮力分布面は、クリップアーチの可変サイズおよび前記枝状部へのクリップアーチ接続の点により決定されている。
【0176】
いくつかの実施形態は、互いに隣接して間隔を空けて位置し、その近位端において接続された頂部および底部弾性枝状部を備え、前記頂部および底部弾性枝状部の少なくとも遠位端の表面は、生物学的に不活性な材料から形成され、前記頂部および底部弾性枝状部の横サイズは、縦サイズよりも小さく、少なくともどちらか一方の枝状部の遠位端は、前記枝状部に沿って延びる電気伝導性の絶縁されたワイヤを介して、少なくとも1つの三位ペルチェ熱電対モード切替ボックスを有する電力ユニットに接続されたペルチェ熱電対を有する、外科用マニピュレータホルダに関するものである。
【0177】
前記頂部および底部弾性枝状部の遠位端は、ネジ、溶接、半田付けまたは接着を用いて互いに取り付けられていてもよい。前記頂部および底部弾性枝状部の横サイズは、枝状部長さにわたり変動している。ペルチェ熱電対は、半田付けまたはネジを用いて取り付けられていてもよい。
電力ユニットは、直流または交流電源である。ペルチェ熱電対モード切替ボックスは、前記枝状部の1つの中央部に設けられた強制加熱ボタンおよび強制冷却ボタンの形態であってもよく、それらの反対側に、強制加熱マイクロスイッチおよび強制冷却マイクロスイッチが、他方の枝状部上に設けられ、前記頂部枝状部の遠位端に設置された前記電力ユニットに接続されている。ペルチェ熱電対モード切替ボックスは、電力ユニットを有し、前記頂部および底部枝状部の遠位端上に設けられた電気ジャッキを介して、前記外科用マニピュレータホルダに接続される、フットスイッチペダルの形態である。
【0178】
前記外科用マニピュレータホルダの中央部は、底部枝状部において、前記頂部枝状部に強固に接続され、開口を自由に通過する停止キーと、頂部枝状部内においてガイド溝と、底部の一部に強固に固定されて設けられるスライダガイドとを備えるスライダ構成している、枝状部クランプを有する。外科用マニピュレータホルダは、可視光および/または可聴アラームを有する。
【0179】
いくつかの実施形態は、遠位端に設けられ、少なくとも一方が可動性であり、表面が、生物学的に不活性な材料で形成される2つの弾性枝状部を備え、少なくとも1つの枝状部の自由端は、中空弾性シャフトおよびハンドピースの近位端の間に設置された回転機構を有する中空弾性シャフトの内側を伸びる電気伝導性ワイヤを介して接続されるペルチェ熱電対を有し、電力ユニットが少なくとも1つの三位ペルチェ熱電対モード切替ボックスを有し、弾性枝状部の他端は、中空弾性シャフトの遠位端に設けられ、第1の接続ユニットに交差し、中空弾性シャフトを通って伸びる引張ロッドに接続させ、第2の接続ユニットを介してハンドピースの前部ハンドルに作動可能に接続されるハンドピースの後部ハンドルに作動可能に接続し、ハンドピースの後部ハンドルは、他端が圧力プレートを有するハンドピースの前部ハンドルにおける貫通開口を介して伸びるラックギア用の接続点を有する、内視鏡マニピュレータホルダに関する。
【0180】
回転機構は、前部ハンドルの頂部に接続されている。前部ハンドルは、指用開口を有する。引張ロッドとハンドピースの後部ハンドルとの間の柔軟な接続は、第2の接続ユニットの上の後部ハンドルの頂部に設けられた、引張ロッドの頭部が固定される締結ソケットを用いてなされる。三位ペルチェ熱電対モード切替ボックスは、前部または後部ハンドル上に設けられ、ハンドピース内に設けられた電力ユニットに接続される、強制加熱および冷却マイクロスイッチの形態である。ペルチェ熱電対モード切替ボックスは、代替的に、電力ユニットを有し、ハンドピース上に設けられた電気ジャッキを介して内視鏡マニピュレータホルダに接続される、フットスイッチペダルの形態である。内視鏡マニピュレータホルダは、可視光および/または可聴アラームを有する。
【0181】
本開示の広範な一般的な範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に数々の変形および/または修正を行うことができることが、当業者によって理解される。したがって、本実施形態は、全ての点において例示的なものとしてみなされ、限定的とみなされない。