【実施例】
【0022】
図1は、本発明の実施の形態1及び2に係る容量制御弁を装着した容量可変型圧縮機を示す断面図である。
容量可変型圧縮機Mは、吐出室11、制御室(クランク室ともいう。)12、吸入室13、複数のシリンダ14、シリンダ14と吐出室11とを連通させ吐出弁11aにより開閉されるポート11b、シリンダ14と吸入室13とを連通させ吸入弁13aにより開閉されるポート13b、外部の冷却回路に接続される吐出ポート11c及び吸入ポート13c、吐出室11と制御室12とを連通させる吐出側通路としての連通路15、前述の吐出側通路としての役割及び制御室12と吸入室13とを連通させる吸入側通路としての役割を兼ねる連通路16、吸入側通路としての連通路17等を画定するケーシング10、制御室(クランク室)12内から外部に突出して回動自在に設けられた回転軸20、回転軸20と一体的に回転すると共に回転軸20に対して傾斜角度を可変に連結された斜板21、各々のシリンダ14内に往復動自在に嵌合された複数のピストン22、斜板21と各々のピストン22を連結する複数の連結部材23、回転軸20に取り付けられた被動プーリ24、ケーシング10に組み込まれた本発明の容量制御弁V等を備えている。
また、容量可変型圧縮機Mには、制御室(クランク室)12と吸入室13とを直接連通する連通路18が設けられており、該連通路18には固定オリフィス19が設けられている。
さらに、この容量可変型圧縮機Mには、吐出ポート11c及び吸入ポート13cに対して冷却回路が接続され、この冷却回路には、コンデンサ(凝縮器)25、膨張弁26、エバポレータ(蒸発器)27が順次に配列して設けられている。
【0023】
〔実施の形態1〕
図2は、本発明の実施の形態1に係る容量制御弁を示す断面図である。
容量制御弁Vは、金属材料又は樹脂材料により形成された弁ハウジング30、弁ハウジング30内に往復動自在に配置された弁体40、弁体40を一方向に付勢する感圧体50、弁ハウジング30に接続されて弁体40に電磁駆動力を及ぼすソレノイド60等を備えている。
【0024】
ソレノイド60は、弁ハウジング30に連結されるケーシング62、一端部が閉じたスリーブ63、ケーシング62及びスリーブ63の内側に配置された円筒状の固定鉄芯64、固定鉄芯64の内側において往復動自在にかつその先端が弁体40に連結されて連通路44を形成する駆動ロッド65、駆動ロッド65の他端側に固着された可動鉄芯66、第1弁部41を開弁させる方向に可動鉄芯66を付勢するコイルスプリング67、スリーブ63の外側にボビンを介して巻回された励磁用のコイル68等を備えている。
【0025】
弁ハウジング30は、吐出側通路として機能する連通路31、32、33、弁体40の連通路44と共に吸入側通路として機能する連通路33、34、吐出側通路の途中に形成された第1弁室35、吸入側通路の途中に形成された第2弁室36、弁体40をガイドするガイド通路37、吐出側通路及び吸入側通路の制御室12寄りに形成された第3弁室38等を備えている。また、弁ハウジング30には、第3弁室38を画定すると共に弁ハウジング30の一部を構成する閉塞部材39が螺合により取り付けられている。
【0026】
すなわち、連通路33及び第3弁室38は、吐出側通路及び吸入側通路の一部を兼ねるように形成され、連通路32は、第1弁室35と第3弁室38とを連通させると共に弁体40を挿通させる(流体が流れる隙間を確保しつつ弁体40を通す)弁孔を形成している。なお、連通路31、33、34は、それぞれ周方向に放射状に配列して複数(例えば、90度の間隔をおいて4個)形成されている。
そして、第1弁室35において、連通路(弁孔)32の縁部には、弁体40の第1弁部41が着座する座面35aが形成され、又、第2弁室36において、固定鉄芯64の端部には、弁体40の第2弁部42が着座する座面36aが形成されている。
【0027】
弁体40は、略円筒状に形成されて一端側に第1弁部41、他端側に第2弁部42、第1弁部41を挟んで第2弁部42と反対側に後付けにより連結された第3弁部43、その軸線方向において第2弁部42から第3弁部43まで貫通し吸入側通路として機能する連通路44等を備えている。
第3弁部43は、第1弁室35から第3弁室38に向かって縮径した状態から拡径された形状をしており、縮径部43aが連通路(弁孔)32に挿通されると共に、拡径部43bにおいてアダプタ53と対向するテーパ状の係合面43cが形成されている。
【0028】
感圧体50は、ベローズ51及びアダプタ53等を備えている。ベローズ51は、その一端が閉塞部材39に固定され、その他端(自由端)にアダプタ53を保持している。
アダプタ53は、第3弁部43に先端が係合する断面が略コ字状をした中空円筒形部を有し、中空円筒形部の先端に第3弁部43のテーパ状の係合面43cと対向して係合及び離脱する環状の座面53aを備えている。
感圧体50は、第3弁室38内に配置されて、その伸長(膨張)により第1弁部41を開弁させる方向に付勢力を及ぼすと共に周囲(第3弁室38及び弁体40の連通路44内)の圧力増加に伴って収縮して第1弁部41に及ぼす付勢力を弱めるように作動する。
【0029】
上記の容量制御弁において、本発明では、ソレノイド60の固定鉄芯64の内面に凹部70が形成され、該凹部70に駆動ロッド65の外周に接触する摩擦部材71が固定されている。摩擦部材71は、駆動ロッド65に接触することで摩擦(フリクション)を発生させ、駆動ロッド65の動きに対して適度なブレーキ力を付与するためのものである。
なお、摩擦部材71は、シールをするためのものではないため、摩擦部材71の感圧体50側と可動鉄芯66側とでの差圧はない。
【0030】
〔摩擦部材の第1の例〕
図3は、本発明の実施形態1及び2に係る容量制御弁に装着される摩擦部材の第1の例を示す斜視図である。
摩擦部材71は、ゴム材料から形成され、断面形状が隅部が面取りされた略矩形状をしたリングにより構成されており、該ゴムリング72の内径側には、周方向に等配に複数の突起73が設けられている。この突起73は、駆動ロッド65に対して過剰なブレーキ力が作用しないようにするためのものであり、その数及び形状は、特に限定されないが、形状については駆動ロッド65の往復動に適応できるようなものが望ましい。例えば、
図3では、半球状の突起が4個等配に設けられている。ゴムリング72の直径は、突起73が駆動ロッド65の外周面に適度な圧力で接触し変形する程度に設定される。
【0031】
また、ゴムリング72の突起73の設けられた箇所は、外径側の部分が削がれた肉薄部74とされている。この肉薄部74は、冷媒によりゴムリング72が膨潤しても、駆動ロッド65に対して過剰なブレーキ力が作用しないようにするためのものであり、外径側において突起73の径方向の中心線の両側から中心に向かって滑らかに深くなるように側面視で円弧状に削ぎ落とされている。
【0032】
ゴムリング72を形成するゴム材料としては、特段限定されるものではないが、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、ふっ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)及びウレタンゴム(AU)が適している。
【0033】
〔ゴムリングの装着形式の一例〕
図4は、
図3に示す摩擦部材としてのゴムリング72の装着形式の一例を示す要部断面図である。
固定鉄芯64の内面の凹部70は、断面略矩形状をなし、ゴムリング72の両側面を挟着する幅を有し、ゴムリング72の径方向の厚みとほぼ同じか僅かに大きい深さを有するように設定されている。ゴムリング72が凹部70に装着された場合、突起73の内面が駆動ロッド65の外周面に接触するとともに、肉薄部74の部分を除いてゴムリング72の両側が固定鉄芯64の凹部70で挟着支持されるようになっている。このように、ゴムリング72の両側が挟着支持されるため、軸方向への振れが抑制され、駆動ロッド65に対する摩擦が与えられ易いものとなっている。また、摩擦部材71を構成するゴムリング72は、突起73だけが駆動ロッド65の外周面に接触するので、摩擦部材71の感圧体50側と可動鉄芯66側との間で差圧が発生することはなく、可動鉄芯66側に高圧の背圧が溜まるような事態を防止できる。
【0034】
〔ゴムリングの装着形式の他の例〕
図5は、
図3に示す摩擦部材としてのゴムリング72の装着形式の他の例を示す要部断面図である。
固定鉄芯64の内面の凹部75は、ゴムリング72の奥側の面76が当接できる受面77を有し、入口側が開放された形状をしており、ゴムリング72の径方向の厚みとほぼ同じか僅かに大きい深さを有するように設定されている。そして、凹部75の入口側にはバックアップリング78が装着され、ゴムリング72を受面77との間で挟着するようになっている。ゴムリング72が凹部75に装着された場合、ゴムリング72の突起73の内面が駆動ロッド65の外周面に接触するとともに、肉薄部83の部分を除いてゴムリング72の両側が凹部70の受面77とバックアップリング78とで挟着支持されるようになっている。このように、ゴムリング72の両側が挟着支持されるため、軸方向への振れが抑制され、駆動ロッド65に対する摩擦が与えられ易いものとなっている。また、凹部75の入口側が開放された形状をしているため、ゴムリング72の装着が容易でり、さらに、ゴムリング72に対する挟着の強さをバックアップリング78で調節できる。
【0035】
〔摩擦部材の第2の例〕
図6は、本発明の実施形態1及び2に係る容量制御弁に装着される摩擦部材の第2の例を示す正面図であり、
図7は、
図6のA−A断面図である。
摩擦部材としてのリング81は、合成樹脂材料から形成され、外径側と内径側との中間部には側方に開口するリング状溝82が形成され、断面形状が略コ字状(
図7参照。)をしたリングにより構成されている。リング状溝82は、合成樹脂製リング81が温度変化を受けた場合、その温度変化による
図7の矢印で示す径方向内方への寸法変化を緩和するためのものである。
【0036】
断面形状が略コ字状の合成樹脂製リング81の駆動ロッド65の外周面に接触する内径側リング部83は、
図6に示すように、周方向に等配に設けられた複数の切欠部84により周方向において分断されている。切欠部84は、内径側リング部83が駆動ロッド65に対して過剰なブレーキ力が作用しないようにするためのものであり、その数及び形状は、特に限定されないが、形状については、例えば
図6に示すように、内径側リング部83の切り欠かれない残りの部分が正面から見て扇形になるようにしてもよい。
図6では、略砲弾形の切欠部84が内径側リング部83から半径方向外方の外径側リング部86まで延びており、正面から見て扇形の4個の内径側リング部83が形成されている。ゴムリング81の直径は、内径側リング部83の内面が駆動ロッド65の外周面に適度な圧力で接触し変形する程度に設定される。
【0037】
また、合成樹脂製リング81の外径側リング部86には、前記の円周溝82の開口側と反対側に開口するようにもう1つのリング状溝87を形成してもよい。リング状溝87を設けることで、合成樹脂製リング81が温度変化を受けた場合のフランジ部85による寸法変化の影響を取り除くことが可能となる。
【0038】
〔実施の形態2〕
図8は、本発明の実施の形態2に係る容量制御弁を示す縦断面図である。
図8において、
図2に記載された符号と同じ符号は
図2と同じ部材を指しており、詳しい説明は省略する。
図2に示す実施形態1においては、摩擦部材に接触する往復動部材がソレノイドの駆動ロッド65であり、静止側部材が固定鉄心64であるのに対し、
図8に示す実施の形態2では、摩擦部材に接触する往復動部材が弁体40であり、静止側部材が弁ハウジング30である点で
図2に示す実施形態1の場合と相違するものである。
【0039】
弁ハウジング30の内面に凹部90が形成され、該凹部90に弁体40の外周に接触する摩擦部材91が固定されている。摩擦部材91は、弁体40に接触することで摩擦(フリクション)を発生させ、弁体40の動きに対して適度なブレーキ力を付与するためのものである。なお、摩擦部材91は、シールをするためのものではないため、摩擦部材91の感圧体50側と可動鉄芯66側とでの差圧はない。
【0040】
摩擦部材91の形状としては、
図3に示すゴムリング71、及び、
図7に示す合成樹脂製リング81のいずれの形状でもよい。
また、摩擦部材91の装着形式も、
図4及び
図5に示す装着形式のいずれでもよい。
【0041】
次に、この容量制御弁Vを備えた容量可変型圧縮機Mが、自動車の空調システムに適用された場合の動作について説明する。
先ず、エンジンの回転駆動力により、伝達ベルト(不図示)及び被動プーリ24を介して回転軸20が回転すると、回転軸20と一体となって斜板21が回転する。斜板21が回転すると、斜板21の傾斜角度に応じたストロークでピストン22がシリンダ14内を往復動し、吸入室13からシリンダ14内に吸入された冷媒ガスが、ピストン22により圧縮されて吐出室11に吐出される。そして、吐出された冷媒ガスは、コンデンサ25から膨張弁26を介してエバポレータ27に供給され、冷凍サイクルを行いながら吸入室13に戻るようになっている。
ここで、冷媒ガスの吐出量は、ピストン22のストロークにより決定され、ピストン22のストロークは、制御室12内の圧力(制御室圧力Pc)により制御される斜板21の傾斜角度によって決定される。
ピストン22の圧縮の際、ピストン22とシリンダ14間のクリアランスからのブローバイガスが制御室12へ常時流れ込み、制御室12の圧力Pcを上昇させようとする。しかし、固定オリフィス19が設けられているため、連通路(吸入側通路)33、44、34が閉じているときでも、制御室12から吸入室に一定量の放圧が行われ、制御室12内の圧力を適正に維持することができる。
【0042】
最大吐出量の運転状態では、ソレノイド60(コイル68)が所定電流値(I)で通電されて、可動鉄芯66及び駆動ロッド65は、感圧体50及びコイルスプリング67の付勢力に抗して、第1弁部41が座面35aに着座して連通路(吐出側通路)31,32を閉塞し、第2弁部42が座面36aから離れて連通路(吸入側通路)34,44を開放した状態となる位置に弁体40が移動する。
【0043】
また、通常制御時(最大容量運転と最小容量運転の間)では、ソレノイド60(コイル67)への通電の大きさを適宜制御して電磁駆動力(付勢力)を変化させる。すなわち、電磁駆動力で弁体40の位置を適宜調整して、所望の吐出量となるように第1弁部41の開弁量と第2弁部42の開弁量が制御される。
【0044】
また、最小容量の運転状態では、ソレノイド60(コイル68)は非通電とされて、可動鉄芯66及び駆動ロッド65は、コイルスプリング67の付勢力により後退して休止位置に停止すると共に、第1弁部41が座面35aから離れて連通路(吐出側通路)31、32を開放し、第2弁部42が座面36aに着座して連通路(吸入側通路)34,44を閉塞した状態となる位置に弁体40が移動する。これにより、吐出流体(吐出圧力Pd)が連通路(吐出側通路)31,32,33を経て制御室12内に供給される。そして、斜板21の傾斜角度は最も小さくなるように制御され、ピストン22のストロークを最小にする。その結果、冷媒ガスの吐出量は最小になる。
【0045】
上記の運転状態において、ソレノイド60(コイル67)への通電がなされている間、容量制御弁VはPWM制御の入力信号、特に400〜500Hzの入力信号によって微振動を生じる。このため、連通路32の開度が小さい時には、座面35aと弁体40との相対距離が小さいため、座面35aと弁体40とが無数に繰り返し衝突しようとする。 しかし、本発明においては、摩擦部材71、91であるゴムリング72または合成樹脂製リング81が設けられているため、ゴムリング72、合成樹脂製リング81に接触される往復動部材である駆動ロッド65または弁体40に対して摩擦によるブレーキ力が作用させられるため、座面35aと弁体40との繰り返し衝突が抑制され、ノイズを低減することができる。また、座面35aと弁体40との衝突によって発生する開度の変化も抑制することができる。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機等の吐出量を圧力負荷に応じて制御する容量制御弁を例にして説明しているが、これに限らず、自動車用オートマチックトランスミッション等に用いられるソレノイドバルブであってもよい。
【0048】
また、例えば、前記実施例では、ソレノイドの駆動により直接駆動される往復動部材として、ソレノイドの駆動を第一に受ける駆動ロッド、及び、駆動ロッドに一体的に連結された弁体について説明したが、これに限定されず、例えば、駆動ロッド及び弁体に連結されて駆動ロッドの変位を弁体に伝達する中間部材が用いられる場合にはその中間部材も往復動部材に包含される。
【0049】
また、摩擦部材の形状については、
図3及び
図6、7に示すものに限らず、例えば、断面略円形のリングに
図3に示す突起及び薄肉部を設けたり、または、断面略円形のリングに
図6及び
図7に示すようなリング状溝及び内径側リング部への複数の切欠部を設けたものでもよい。