(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067615
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】自動テープ巻き機
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20170116BHJP
B65B 27/00 20060101ALI20170116BHJP
B65B 13/24 20060101ALI20170116BHJP
B65B 13/12 20060101ALI20170116BHJP
H01B 13/26 20060101ALI20170116BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
H01B13/012 Z
B65B27/00 C
B65B13/24
B65B13/12
H01B13/26 Z
H01B7/00 301
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-90876(P2014-90876)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-210905(P2015-210905A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514106465
【氏名又は名称】株式会社ジーエスエレテック九州
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】道添 剛
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−208618(JP,A)
【文献】
特開平10−139010(JP,A)
【文献】
特開昭57−153822(JP,A)
【文献】
特開2008−168925(JP,A)
【文献】
特開平07−101641(JP,A)
【文献】
特開平06−329118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 13/00
B65B 13/00
B65B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線材を粘着テープで束ねるテープ巻き機であって、
複数の線材を横方向に伸ばした状態で固定する線材固定手段と、
線材を導入するスリットが形成され、線材が面を貫通するように前後方向に立設された回転円盤部材、該回転円盤部材に取り付けられた粘着テープ本体保持部材、及び前記回転円盤部材のスリットの上下に沿って取り付けられ、後方から導入された粘着テープの先部を配置すると共に導入された線材をガイドするガイド部材を具備するテープ巻回手段と、
該テープ巻回手段のガイド部材間に導入された線材を上から押圧して線材を粘着テープ先端に固着する線材・テープ固着手段と、
線材に巻回された粘着テープを粘着テープ本体から切断するテープ切断手段と、
該テープ切断手段により切断した粘着テープが粘着テープ本体側に後退しないよう、粘着テープを前記ガイド部材の所定位置に保持するテープ安定化手段と、
を備えたことを特徴とするテープ巻き機。
【請求項2】
テープ巻回手段が、回転円盤部材を凹状収納部に収納して上下から回転円盤部材を保持する円盤保持部材を具備すると共に、該回転円盤部材が、その表面外周に所定間隔をあけて設けられた複数のガイドローラを具備し、
前記回転円盤部材のガイドローラが円盤保持部材の凹状収納部の側部突出部と係合していることを特徴とする請求項1記載のテープ巻き機。
【請求項3】
回転円盤部材のガイドローラが、駆動源に接続されたスプロケットと係合して回転円盤部材を回転させることを特徴とする請求項1又は2記載のテープ巻き機。
【請求項4】
テープ安定化手段が、真空吸着機構であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のテープ巻き機。
【請求項5】
線材が電線であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のテープ巻き機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載のテープ巻き機を用いた結束線材の製造方法であって、
複数の線材を線材固定手段に固定する線材固定工程と、
該固定した線材をテープ巻回手段のガイド部材に導入し、該導入された線材を上から押圧して線材を粘着テープ先端に固着する線材・テープ固着工程と、
テープ巻回手段を回転させ、粘着テープ先端が固着された線材に粘着テープを巻回固着するテープ巻回工程と、
線材に巻回された粘着テープを粘着テープ本体から切断するテープ切断工程と、
を有することを特徴とする結束線材の製造方法。
【請求項7】
線材が電線であり、機器用ワイヤハーネスを製造することを特徴とする請求項6記載の結束線材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線等の線材を粘着テープで自動的に束ねるテープ巻き機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線等の線材を粘着テープを用いて束ねて結束線材とすることが行われているが、手作業で行われているのが一般的である。しかしながら、手作業で行う場合、品質が一定でない等の種々の問題がある。
【0003】
そこで、品質を一定に保つためのテープ巻き機が提案されており、その1つとして、バッテリケーブルの外周に保護テープを巻き締めるテープ巻き機であって、本体カバーと、前記本体カバー内で前記バッテリケーブルの両端をそれぞれ固定支持する第1及び第2の固定装置と、前記第1及び第2の固定装置を固定支持し且つ前記本体カバーに対して水平移動自在とされた移動支持台と、前記移動支持台を前記バッテリケーブルの線軸方向に水平移動させる水平移動装置と、前記本体カバーに固定されて予め環状に巻かれた粘着テープを前記水平移動装置により水平移動される前記バッテリケーブルに巻き締める巻き締め装置と、前記粘着テープの巻き締め終了後に当該粘着テープを切断する切断装置とを備え、前記巻き締め装置は、前記バッテリケーブルを遊貫するための円孔状の遊貫孔が形成されて前記本体カバーに固定支持された支持体と、前記支持体の前記遊貫孔内に回転自在に嵌入された環体と、前記粘着テープの両側面を挟持した状態で前記環体の回転に伴い前記粘着テープを前記バッテリケーブルの周囲に周回させるように前記環体に取り付けられたテープ挟持部と、前記環体を前記支持体に対して回転駆動する回転駆動部とを備え、前記テープ挟持部は、予め環状に巻かれて提供される前記粘着テープの中央孔に挿入されて当該環状の粘着テープを軸支するよう前記環体に固定されたロッドと、当該ロッドに回転可能に軸支される環状の前記粘着テープの両側に当接して所定の摩擦力を発生させ、前記粘着テープの先端の引っ張り力が弱いときには当該粘着テープの回転を前記所定の摩擦力で阻止するとともに、前記所定の摩擦力を越えて前記粘着テープの先端が引っ張られたときにのみ当該粘着テープが回転するようにする挟持手段とを備えるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、線条体をテープで束ねる場合において、モータ取付けベースにモータを設け、該モータの回転軸には3つの傘歯車が設置され、モータに隣接して設けた下部カバーに軸支された、複数の回転保持具により保持された回転体が、前記傘歯車の1つに設置されたベルトを介して回転するように設置され、前記回転体とこの回転体の一部は、被処理材を載置する処理材受けが形成されると共に、前記回転体には軸支された回転自在に設けられたテープ巻取り軸を有し、前記テープ巻取り軸に小径テープ巻が設置された後小径テープの一端を線条体に貼付後回転体が線条体の周囲を回転することによりテープ巻付けする一方、ベースの上部に設けられた上部カバーには作業用棒を固設し、作業用棒の上面には前記モータの回転を始動、停止するためのスイッチを設けたテープ巻付機が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2記載のテープ巻付機は、いずれもテープ巻き付け時に、人が巻き付け作業の一部に関与するものであり、必ずしも品質を一定に保つことができるものではない。
【0006】
また、テープ巻き付け時に、人が巻き付け作業に関与しないテープ巻付機も提案されており、例えば、回転中心より所定長さ隔てた部位にロール状に巻かれたテープを装着するホルダ部を設けた回転板、この回転板を所定方向に回転させる駆動源、及び回転板の回転量を検知して駆動源を停止させる制御部から構成されるテープ巻き機(特許文献3参照)や、物品を支持する支持台と、ロール状に巻回したテープを繰り出し自在に保持するテープ保持機構と、該テープ保持機構を端部近傍に備えた回転アームと、該回転アームを回転駆動して前記テープを繰り出す駆動手段とを有するテープ巻き機の巻付力調節機構であって、前記回転アームには前記テープを案内する案内ローラと、該案内ローラに摩擦力を調節自在に付与する摩擦力付与手段とを設けたことを特徴とするテープ巻き機の巻付力調節機構(特許文献4参照)が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3及び特許文献4記載のテープ巻付機は、粘着テープの巻き付けが困難な細長い線材ではなく、一般の物品を対象としたものである。
【0008】
また、線材にテープを巻き付けるものとしては、例えば、回転可能に支持された回転ドラムと、前記回転ドラムの周縁の一部に形成され、被結束体を前記回転ドラムの回転中心から径方向に外れた位置で保持する支持部と、前記回転ドラムにおける前記支持部よりも回転方向前方側に設けられてテープの端部が保持される保持部と、前記テープに対して常に所定の張力を付与する張力付与機構とを備え、前記支持部に前記被結束体が保持された状態で前記回転ドラムが回転することで、前記保持部に端部が保持された前記テープに前記張力付与機構で所定の張力を付与しつつ前記テープを前記被結束体に巻き付けるテープ巻付機が提案されている(特許文献5参照)。
【0009】
この特許文献5のテープ巻付機は、回転ドラムを回転させてその回転ドラムの回転に伴って回転する被結束体に粘着テープを巻き付ける構成としており、被結束体の周囲でテープを回転させて線材に粘着テープを巻き付けるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−203966号公報
【特許文献2】特開2013−172549号公報
【特許文献3】特開平11−227708号公報
【特許文献4】特開2000−247305号公報
【特許文献5】特開2013−184734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、粘着テープ巻き付け時に人の関与がなく、自動で線材にテープを巻き付けることが可能なテープ巻き機及びかかるテープ巻き機を用いた結束線材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、線材に粘着テープを巻き付けて結束線材を製造する際、人の手によって行われると必ずしも品質を一定に保つことができないことから、テープ巻き付けの際に人が関与せず、一定の品質で自動的にテープの巻き付けを行うことができる装置の開発に取り組み、この開発に成功した。
【0013】
すなわち、本発明は、複数の線材を粘着テープで束ねるテープ巻き機であって、複数の線材を横方向に伸ばした状態で固定する線材固定手段と、線材を導入するスリットが形成され、線材が面を貫通するように前後方向に立設された回転円盤部材、該回転円盤部材に取り付けられた粘着テープ本体保持部材、及び前記回転円盤部材のスリットの上下に沿って取り付けられ、後方から導入された粘着テープの先部を配置すると共に導入された線材をガイドするガイド部材を具備するテープ巻回手段と、該テープ巻回手段のガイド部材間に導入された線材を上から押圧して線材を粘着テープ先端に固着する線材・テープ固着手段と、線材に巻回された粘着テープを粘着テープ本体から切断するテープ切断手段と、該テープ切断手段により切断した粘着テープが粘着テープ本体側に後退しないよう、粘着テープを前記ガイド部材の所定位置に保持するテープ安定化手段とを備えたテープ巻き機に関する。
【0014】
本発明のテープ巻き機は、好ましくは、テープ巻回手段、線材・テープ固着手段、テープ切断手段及びテープ安定化手段を具備する装置本体を横方向に移動する本体左右移動手段をさらに備えている。
【0015】
本発明のテープ巻き機は、好ましくは、テープ切断位置までテープ巻回手段を後方に移動させる第1前後移動手段と、該第1前後移動手段によりテープ巻回手段を後方に移動させる際、粘着テープと共に線材が後退するのを防止する線材後退防止手段とをさらに備えている。
【0016】
本発明のテープ巻き機は、好ましくは、テープ巻回手段が、回転円盤部材を凹状収納部に収納して上下から回転円盤部材を保持する円盤保持部材を具備すると共に、該回転円盤部材が、その表面外周に所定間隔をあけて設けられた複数のガイドローラを具備し、前記回転円盤部材のガイドローラが円盤保持部材の凹状収納部の側部突出部と係合している。
【0017】
本発明のテープ巻き機は、好ましくは、回転円盤部材のガイドローラが、駆動源に接続されたスプロケットと係合して回転円盤部材を回転させる。
【0018】
本発明のテープ巻き機は、好ましくは、テープ安定化手段が真空吸着機構である。
【0019】
本発明のテープ巻き機で対象とする線材は、好ましくは電線である。
【0020】
また、本発明は、上記テープ巻き機を用いた結束線材の製造方法であって、複数の線材を線材固定手段に固定する線材固定工程と、該固定した線材をテープ巻回手段のガイド部材に導入し、該導入された線材を上から押圧して線材を粘着テープ先端に固着する線材・テープ固着工程と、テープ巻回手段を回転させ、粘着テープ先端が固着された線材に粘着テープを巻回固着するテープ巻回工程と、線材に巻回された粘着テープを粘着テープ本体から切断するテープ切断工程とを有する結束線材の製造方法に関する。
【0021】
本発明の結束線材の製造方法においては、好ましくは、テープ巻回工程における線材に対する粘着テープの巻回固着が、固着部を横方向に移動させながら行われる。
【0022】
本発明の結束線材の製造方法においては、好ましくは、線材が電線であり、機器用ワイヤハーネスを製造する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のテープ巻き機によれば、テープ巻き付け時に人の関与がなく、自動で線材に粘着テープを巻き付けることができ、高品質な結束線材を安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明のテープ巻き機の概略斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明のテープ巻き機の装置本体の概略斜視図であり、
図2(b)は本発明のテープ巻き機のテープ巻回手段の部分図である。
【
図3】
図3は、本発明のテープ巻き機の装置本体の他の方向からの概略斜視図である。
【
図4】
図4(その1)は、本発明のテープ巻き機の動作を説明する動作説明図である。
【
図5】
図4(その2)は、
図4(その1)に続く本発明のテープ巻き機の動作を説明する動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のテープ巻き機としては、複数の線材を粘着テープで束ねるテープ巻き機であって、複数の線材を横方向に伸ばした状態で固定する線材固定手段と、線材を導入するスリットが形成され、線材が面を貫通するように前後方向に立設された回転円盤部材、該回転円盤部材に取り付けられた粘着テープ本体保持部材、及び前記回転円盤部材のスリットの上下に沿って取り付けられ、後方から導入された粘着テープの先部を配置すると共に導入された線材をガイドするガイド部材を具備するテープ巻回手段と、該テープ巻回手段のガイド部材間に導入された線材を上から押圧して線材を粘着テープ先端に固着する線材・テープ固着手段と、線材に巻回された粘着テープを粘着テープ本体から切断するテープ切断手段と、該テープ切断手段により切断した粘着テープが粘着テープ本体側に後退しないよう、粘着テープを前記ガイド部材の所定位置に保持するテープ安定化手段とを備えている装置であれば特に制限されるものではなく、線材としては、例えば直径10mm以下程度の線材を挙げることができ、具体的には電線や光ファイバー等を例示することができる。本発明のテープ巻き機においては、この線材を複数本程度束ねて、例えば、自動車用ワイヤハーネス等の機器用ワイヤハーネスなどを製造することができる。
【0026】
本発明のテープ巻き機は、さらに、テープ巻回手段、線材・テープ固着手段、テープ切断手段及びテープ安定化手段を具備する装置本体を横方向に移動する本体左右移動手段を備えていることが好ましい。これにより、粘着テープをスパイラル状に巻き付けることが可能となる。また、本発明のテープ巻き機は、線材が電線の場合には、導電検知手段を備えていてもよい。
【0027】
線材固定手段は、例えば、複数の線材の両端を固定して線材を伸ばした状態で水平に保持する手段であって、本発明のテープ巻き機が左右移動手段を備える場合には、装置本体の移動区間の外側で線材を保持する。線材固定手段への線材の固定は、ロボット等を用いて自動で行う構成とすることもでき、人が手作業で行う構成とすることもできる。また、この線材固定手段は、線材をテープ巻回手段のガイド部材に導入すると共に、該ガイド部材から線材を取り出すための前後移動手段を備えていてもよい。さらに、上記本体左右移動手段を用いずに、この線材固定手段が左右に移動する左右移動手段を備える構成とすることもできる。
【0028】
テープ巻回手段は、回転円盤部材、該回転円盤部材に取り付けられた粘着テープ本体保持部材、及び該回転円盤部材にスリットに沿って取り付けられたガイド部材を具備し、その回転により、ガイド部材間に導入された線材に粘着テープを巻回固着する手段である。
【0029】
回転円盤部材は、複数の線材を導入可能なスリットを備えた、例えば金属製の円盤状部材からなり、線材が面を垂直に貫通するように前後方向に立設されていることが好ましい。
【0030】
粘着テープ本体保持部材は、回転円盤部材に取り付けられており、始動時の位置で上部に取り付けられていることが好ましく、回転円盤部材の回転による粘着テープの引っ張り力により自動的にテープが繰り出されるものであってもよいし、駆動源を備えたテープ送り出し機構を備えたものであってもよい。粘着テープ本体保持部材が回転円盤部材に取り付けられることにより、装置をよりコンパクトな構成とし、さらにテープ巻回手段と共に回転し、自動的に粘着テープを繰り出すことが可能となる。また、粘着テープ本体と線材固着部までの距離が短いことから、ゴミの付着等を防止してより強固な固着が可能となる。
【0031】
ガイド部材は、回転円盤部材のスリットに沿って少なくとも上下に取り付けられた部材であり、線材を傷つけないように合成樹脂から構成されることが好ましい。また、このガイド部材は、上下部材間の幅がスリットの幅よりも若干狭くなっていることが好ましく、導入される線材に応じて適宜決定することができる。このガイド部材の下側の部材(下側ガイド部材)は、ガイド部材間に後方から導入される粘着テープの先部を粘着面が上を向いた状態で所定位置に配置する部材として機能する。
【0032】
かかるテープ巻回手段は、回転円盤部材を凹状収納部に収納して上下から回転円盤部材を保持する円盤保持部材を具備すると共に、該回転円盤部材が、その表面外周に所定間隔をあけて設けられた複数のガイドローラを具備し、回転円盤部材のガイドローラが円盤保持部材の凹状収納部の側部突出部と係合していることが好ましく、これにより、テープ巻回手段自体をコンパクトに構成することができ、また、回転円盤部材を確実に保持すると共によりスムーズな回転を可能とする。また、回転円盤部材のガイドローラは、駆動源に直接的又は間接的に接続されたスプロケットと係合(噛合)する構成とすることが好ましく、これにより、テープ巻回手段をよりコンパクトな構成とすることができる。
【0033】
線材・テープ固着手段は、下側ガイド部材上に配置された、粘着面が上を向いた状態の粘着テープに対して、その上方に配置された線材を上から押圧して、線材を粘着テープの先端に固着する手段であって、線材の1か所を押圧して固着する手段であってもよいが、より確実に線材を粘着テープに固着するために、テープ巻回手段の両側に配置された、テープ固着部の両側から線材を押圧する手段であることが好ましい。
【0034】
テープ切断手段は、線材に巻回された粘着テープを粘着テープ本体から切断する手段であり、具体的には、粘着テープを下方から貫通して切断するカッターを例示することができる。このテープ切断手段は、例えば、テープ巻回手段の回転円盤部材に取り付けることができる。
【0035】
テープ安定化手段は、テープ切断手段により切断した粘着テープが粘着テープ本体側に後退しないよう、粘着テープを前記ガイド部材(下側ガイド部材)の所定位置に保持する手段であって、例えば、下方から粘着テープを吸引する真空吸引機構や下方から粘着テープを物理的に吸着させて保持させる機構を挙げることができ、より容易かつ的確に粘着テープを保持できることから、真空吸引機構が好ましい。この真空吸引機構による吸引は、少なくとも上記テープ切断手段によるテープ切断時に行われ、常時行われていてもよいが、好ましくは、後述する第1前後移動手段によってテープ巻回手段をテープ切断位置まで後退させる時から、第2前後移動手段によってテープ巻回手段を巻回作業終了位置に移動させる時まで行われる。
【0036】
また、本発明のテープ巻き機は、テープ切断位置までテープ巻回手段を後方に移動させる第1前後移動手段と、該第1前後移動手段によりテープ巻回手段を後方に移動させる際、粘着テープと共に線材が後退するのを防止する線材後退防止手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0037】
第1前後移動手段は、少なくともテープ巻回手段を前後方向に移動させる手段であって、テープ巻回手段を具備する手段(例えば、装置本体)を移動させる手段であってもよい。第1前後移動手段によりテープ巻回手段をテープ切断位置まで後退させる際、粘着テープは繰り出され、粘着テープの切断予定部を切断位置に配置させると共に粘着テープを緊張状態とすることが可能となり、テープ切断手段による粘着テープの切断を容易とすることができる。
【0038】
線材後退防止手段は、テープ巻回終了後、テープ巻回手段を後方に移動させる際に粘着テープと共に粘着テープに固着された線材が後方に移動するのを防止する手段であって、例えば、テープ巻回手段の外側の線材設置位置の後方に設置された当接部材を挙げることができる。かかる当接部材は、前後方向に移動するものであってもよいし、線材設置位置のすぐ後方に固定された部材であってもよい。また、この線材後退防止手段は、線材の1か所で線材の移動を止める手段でよく、これにより、よりコンパクトな設計とすることが可能となる。なお、より確実に後退を防止すべく、テープ巻回手段の両側から線材の移動を止める手段とすることもできる。
【0039】
また、本発明のテープ巻き機は、テープ巻回手段を前方向に移動させ巻回作業開始位置に移動させると共に、テープ巻回手段を後方向に移動させ巻回作業終了位置に移動させる第2前後移動手段を備えていることが好ましい。第2前後移動手段を備えることにより、テープ巻回終了後に線材から離れた位置での横方向への移動が可能となり、粘着テープの巻き付いた線材との干渉を防止することができると共に、巻回終了後にすばやく線材を線材固定手段から取り外すことができる。
【0040】
また、本発明の結束線材の製造方法としては、上記本発明のテープ巻き機を用いた方法であって、複数の線材を線材固定手段に固定する線材固定工程と、該固定した線材をテープ巻回手段のガイド部材に導入し、該導入された線材を上から押圧して線材を粘着テープ先端に固着する線材・テープ固着工程と、テープ巻回手段を回転させ、粘着テープ先端が固着された線材に粘着テープを巻回固着するテープ巻回工程と、線材に巻回された粘着テープを粘着テープ本体から切断するテープ切断工程とを有する方法であれば特に制限されるものではなく、製造される結束線材としては、例えば、自動車用ワイヤハーネス等の機器用ワイヤハーネスを挙げることができる。
【0041】
また、本発明の結束線材の製造方法は、テープ巻回工程における線材に対する粘着テープの巻回固着が、固着部を横方向に移動させながら行われることが好ましく、例えば、本発明のテープ巻き機における左右移動手段を用いてテープ巻回手段を横方向に移動させながらテープを巻き付けていく。
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。本実施形態においては、線材として電線を用いた例を示す。ここで、
図1は、本発明のテープ巻き機の概略斜視図である。また、
図2(a)は、本発明のテープ巻き機の装置本体の概略斜視図であり、
図2(b)は本発明のテープ巻き機のテープ巻回手段の部分図である。
図3は、本発明のテープ巻き機の装置本体の他の方向からの概略斜視図である。
【0043】
図1〜
図3に示すように、本発明のテープ巻き機10は、複数の電線を横方向に伸ばした状態で水平に固定する図示しない電線固定手段と、テープ巻回手段12と、電線・テープ固着手段(押圧部材)14と、テープ切断手段(カッター)16と、テープ安定化手段(真空吸引機構)18と、テープ巻回手段12等を前後方向に移動させる図示しない第1前後移動手段及び第2前後移動手段と、電線後退防止手段(当接部材)20とを備えている。
【0044】
さらに、本発明のテープ巻き機10は、これらテープ巻回手段12、電線・テープ固着手段14、テープ切断手段16、テープ安定化手段18、第1前後移動手段、第2前後移動手段及び電線後退防止手段20を具備する装置本体を横方向に移動させる本体左右移動手段22を備えており、電線固定手段は、この本体左右移動手段22による装置本体の移動範囲の両側で電線を固定している。
【0045】
図2及び
図3に示すように、テープ巻回手段12は、その回転により電線に粘着テープTを巻回固着する手段であり、回転円盤部材24を具備し、この回転円盤部材24は、円盤保持部材30により保持されている。
【0046】
回転円盤部材24は、直径が30cm程度の円盤状部材であって、電線が面を垂直に貫通するように電線に対して垂直に立設されている。かかる回転円盤部材24には、上下方向中央部の前方から円盤中心に向かってスリット32が形成されており、このスリット32に電線が導入されることとなる。
図2に示すように、かかる回転円盤部材24の片面(図面上、左面)には、その表面外周に所定間隔をあけて設けられた12個のガイドローラ34が設けられており、回転円盤部材24のスムーズな回転を可能としている。
【0047】
円盤保持部材30は、回転円盤部材24を凹状収納部に収納して上下から回転円盤部材24を保持する部材であって、回転円盤部材24のガイドローラ34が円盤保持部材30の凹状収納部の片側の突出部36に係合している。これにより、テープ巻回手段12自体をコンパクトに構成することができ、また、回転円盤部材24を確実に保持すると共によりスムーズな回転を可能としている。
【0048】
また、回転円盤部材24のガイドローラ34は、駆動源としてのステッピングモータ38にタイミングベルト40を介して接続されたスプロケット42と係合し、ステッピングモータ38の動力が回転円盤部材24に伝えられる。
【0049】
図3に示すように、回転円盤部材24のガイドローラ34が設けられた面とは反対の面の上部(テープ巻回作業前の状態で)には、粘着テープ本体保持回転体28が設けられ、粘着テープTが取り付けられている。また、回転円盤部材24の上下方向中央部の前方から円盤中心に向かったスリット32に沿って、粘着テープTより若干大きな幅を有する上ガイド部材26a及び下ガイド部材26bからなるガイド部材26が設けられており、回転円盤部材24の回転時に電線をガイドする。また、下ガイド部材26bは、テープ巻回作業前、ガイド部材26間に後方側から挿入される粘着テープT(粘着面が上)を載置した状態で保持する。
【0050】
電線・テープ固着手段14は、テープ巻回手段12の両側に配置され、上方から電線を押圧して、下方に位置する粘着テープの先端に固着させる押圧部材である。押圧部材14は、上下に移動可能となっており、その下面で電線の上部を押圧して、電線の下部を粘着テープの上面(粘着面)に接着させる。
【0051】
テープ切断手段16は、下ガイド部材26bの下方に設けられた、粘着テープを下方から貫通して切断するカッターであり、例えば、回転円盤部材24に取り付けられている。カッター16は、バネにより下方に付勢されており、所定のタイミングでプッシャ44により、上方に突き上げられ、粘着テープを切断する。具体的には、巻回終了後、第1前後移動手段によりテープ巻回手段12(及び電線・テープ固着手段14)を後退させ、粘着テープTを少し後方に移動し、緊張状態の粘着テープTを所定のテープ切断位置で切断する。
【0052】
電線後退防止手段20は、テープ巻回手段12のガイドローラ34側の押圧部材44の下方であって、テープ巻回時の電線設置位置のすぐ後方に、固定配置された当接部材である。上記のように、第1前後移動手段によりテープ巻回手段12が少し後方に移動する際に、電線がこの当接部材20に当接し、電線の後退を防止する。
【0053】
テープ安定化手段18は、下方から粘着テープを吸引する真空吸引機構であって、カッター16により切断した粘着テープTが粘着テープ本体側に後退しないように粘着テープを所定の位置に保持する。
【0054】
第2前後移動手段は、電線固定後に、テープ巻回手段12、電線・テープ固着手段14、テープ切断手段16、テープ安定化手段18及び電線後退防止手段20を含む装置本体を前方向に移動させ巻回作業開始位置に移動させると共に、テープ巻回終了後に、装置本体を後方向に移動させる手段である。なお、第2前後移動手段により、テープ巻回終了後に装置本体を後方に移動させる際、第1前後移動手段により、テープ巻回手段12(及び電線・テープ固着手段14)を、テープ切断時に後方に移動した移動距離だけ前方に移動させて、テープ巻回手段12を元の位置に戻す。
【0055】
また、
図1に示すように、本体左右移動手段22は、装置本体を案内する案内レール及びサーボモータ等の駆動源を備えた水平移動機構を備えており、装置本体の水平移動(横方向の移動)を可能としている。すなわち、テープ巻回手段12が回転している間(テープの巻き付けの間)、装置本体を横方向に移動させることによりスパイラル巻を可能とし、また、第2前後移動手段によりテープ巻回手段12が後方に移動した際に、装置本体を横方向に移動させ、複数個所への巻付けを可能としている。さらに、1本の結束電線を製造した後には、元の開始位置まで装置本体を移動させる。
【0056】
上記のようなテープ巻き機10を用いて結束電線の製造方法する際のテープ巻き機10の動作を説明する。
【0057】
図4(a)に示すように、まず、電線を電線固定手段に固定する(電線固定工程)。この時、テープ巻回手段12は、後方で待機している。電線を固定後、
図4(b)に示すように、テープ巻回手段12を前進させて電線をガイド部材26間に導入し、回転円盤部材24の中心部に位置させる。続いて、
図4(c)に示すように、電線・テープ固着手段14により、電線を上から押圧し、下方の粘着テープの先端に電線を貼り付ける(電線・テープ固着工程)。
【0058】
電線を粘着テープに貼り付けた後、
図4(d)及び(e)に示すように、テープ巻回手段12を複数回回転させ、電線に粘着テープを巻き付ける(テープ巻回工程)。この時、本体左右移動手段22により、テープ巻回手段14を含む装置本体を横方向に移動させることにより、スパイラル巻とすることができる。
【0059】
電線に粘着テープを巻き付けた後、
図4(f)に示すように、テープ巻回手段12を少し後方に移動させる。このとき、電線は、電線後退防止手段20に当接して後方に移動するのを防止されると共に、粘着テープは、粘着テープ本体保持回転体28から少し繰り出される。
図4(g)に示すように、テープ巻回手段12を少し後方に移動させた位置で、下方からカッター16が上方に突き上げられ、粘着テープを切断する(テープ切断工程)。このとき、真空吸引機構18により、粘着テープは下方に吸引されているので、粘着テープが本体側に後退することはない。なお、真空吸引機構18による吸引は、
図4(f)〜(h)の作業の間行われる。
【0060】
図4(h)に示すように、テープ巻回手段12をさらに後方に移動させ、作業終了となる。これにより、自動車用ワイヤハーネス等の複数の電線が結束された結束電線を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のテープ巻き機は、自動車用ワイヤハーネス等の機器用ワイヤハーネスを製造することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 テープ巻き機
12 テープ巻回手段
14 電線・テープ固着手段(押圧部材)
16 テープ切断手段(カッター)
18 テープ安定化手段(真空吸引機構)
20 電線後退防止手段(当接部材)
22 本体左右移動手段
24 回転円盤部材
26 ガイド部材
26a 上ガイド部材
26b 下ガイド部材
28 粘着テープ本体保持回転体
30 円盤保持部材
32 スリット
34 ガイドローラ
36 凹状収納部の片側の突出部
38 ステッピングモータ
40 タイミングベルト
42 スプロケット
44 プッシャ
T 粘着テープ