特許第6067620号(P6067620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067620
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20170116BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20170116BHJP
   A61B 5/1459 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61M1/36 100
   A61M1/16 111
   A61B5/14 321
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-121259(P2014-121259)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-125(P2016-125A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 将弘
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 明
(72)【発明者】
【氏名】村上 智也
(72)【発明者】
【氏名】縣 麻華里
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−208162(JP,A)
【文献】 特開2006−198141(JP,A)
【文献】 特開2008−048804(JP,A)
【文献】 特開2004−097782(JP,A)
【文献】 特開2006−015072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61B 5/1459
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、
該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、
前記動脈側血液回路に配設され、当該動脈側血液回路の一部を送液方向に扱くしごき型ポンプから成り、駆動によって当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで血液を流動させ得る血液ポンプと、
前記血液回路の所定位置に取り付けられ、当該所定位置の流路を流れる液体の所定指標を検出し得る指標検出手段と、
を具備した血液浄化装置において、
前記血液ポンプを駆動させて前記血液回路にて液体を流動させつつ当該血液ポンプの脈動の有無に基づく前記指標検出手段の検出値の変化を検出することにより、前記指標検出手段に前記血液回路が取り付けられていることを判定し得ることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記血液ポンプを駆動させて前記血液回路にて液体を流動させた状態で前記指標検出手段による検出値を複数回に亘って逐次取得するとともに、その検出値の差分を順次求め、当該差分の絶対値を累積して累積値を取得し得る累積値取得手段と、
該累積値取得手段により取得された累積値に基づき、前記指標検出手段が前記血液回路に取り付けられているか否かを判定し得る判定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記指標検出手段は、前記血液回路における前記所定位置の流路に光を照射可能な発光手段と、該発光手段からの光の反射光を受信可能な受光手段とを有するとともに、当該受光手段で受光した反射光に基づいて当該流路を流れる血液の所定指標を検出し得ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記指標検出手段は、前記血液回路における前記所定位置の流路に光を照射可能な発光手段と、該発光手段からの光の透過光を受信可能な受光手段とを有するとともに、当該受光手段で受光した透過光に基づいて当該流路を流れる血液の所定指標を検出し得ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記指標検出手段は、前記血液回路を流れる血液の濃度に関するパラメータを検出し得る濃度センサから成ることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記指標検出手段は、
前記血液回路の一部を嵌合し得る嵌合溝が形成された本体部と、
該本体部に対して開閉可能とされ、閉状態にて前記嵌合溝に嵌合した血液回路の一部を挟持可能とされた蓋部と、
該蓋部の開閉状態を検知する検知スイッチと、
を具備するとともに、前記累積値取得手段による累積値の取得は、当該検知スイッチによる閉状態の検知を条件として行われることを特徴とする請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記指標検出手段による検出値に基づいて、前記血液ポンプを駆動して前記血液回路に患者の血液を導く際の脱血不良を検出し得ることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透析治療を行うための血液透析装置は、通常、患者の血液を体外循環させるための動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成る血液回路と、動脈側血液回路及び静脈側血液回路にそれぞれ接続され、体外循環する血液を浄化するための血液浄化器としてのダイアライザと、該ダイアライザを流れる血液中の余剰水分を除去して除水し得る除水ポンプとを具備しており、血液回路で体外循環する血液を除水しつつ血液浄化治療が可能とされている。
【0003】
かかる除水時において除去すべき水分量(除水速度)は、除水ポンプの駆動を制御することにより行われるのであるが、急激或いは過度の除水を行うと、患者の循環血液量を過剰に減少させ、それによって血液低下やショック等を引き起こす虞がある一方、除水速度が遅いと、治療時間全体が延びてしまい却って患者に負担を強いる虞があった。そのため、例えば動脈側血液回路に血液濃度センサ等を配設し、治療中において体外循環している血液の濃度、特に血球の体積分率であるヘマトクリット値を逐次測定して監視することで、効率的且つ安全な治療を行うことができる。
【0004】
このような血液濃度センサとしてのヘマトクリット値を測定するためのヘマトクリットセンサが用いられている。かかるヘマトクリットセンサは、例えば特許文献1にて開示されているように、血液回路の所定位置に取り付けられて可撓性チューブを挟持する挟持手段を具備するとともに、体外循環する血液に赤外線等の光を照射し、その反射光を受光する際に生じる受光電圧とヘマトクリット値との関係(直線関係)を利用するものとされている。そして、治療中において、ヘマトクリットセンサによって逐次血液濃度の指標であるヘマトクリット値が測定されるとともに、その測定されたヘマトクリット値を用いて、例えば循環血液量の変化率(ΔBV)を求めることができ、除水速度や除水量の目安としている。
【0005】
また、挟持手段は、血液回路を構成する可撓性チューブを嵌合し得る嵌合溝と、嵌合溝に嵌合した可撓性チューブを上下から挟持し得る蓋部とを有しており、嵌合溝には、当該可撓性チューブの挟持を検出するための検出スイッチが配設されている。この検出スイッチは、押しボタンスイッチから成り、嵌合溝に可撓性チューブを嵌合させつつ蓋部にて挟持させると、当該可撓性チューブを介して押圧されてスイッチがオンするよう構成されており、可撓性チューブのセット忘れや蓋部の閉じ忘れを検出し得るようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−97782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、そのヘマトクリットセンサ(指標検出手段)に対する血液回路を構成する可撓性チューブのセット忘れや蓋部の閉じ忘れを検出するための検出スイッチが必要とされているので、その検出スイッチの分、指標検出手段全体が大型化してしまうとともに、検出スイッチの感度(例えば、スイッチをオンするために必要とされる押圧力等)が不十分であると、血液回路を構成する可撓性チューブのセット忘れや蓋部の閉じ忘れを精度よく検出することができないという問題があった。
【0008】
すなわち、血液回路を構成する可撓性チューブには、種々径のものがあり、且つ、温度によって径が変化する場合もあるので、検出スイッチによる可撓性チューブの検出を常に精度よく行わせるのが困難となっているのである。また、複数の可撓性チューブを挟持手段にて挟持させる場合、その嵌合溝毎に検出スイッチが必要となり、装置の大型化がより顕著になってしまうという不具合もある。なお、かかる不具合は、ヘマトクリットセンサに限らず、血液回路の所定位置に取り付けられて、当該所定位置の流路を流れる血液の他の所定指標を検出し得るものでも同様に生じる虞がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、指標検出手段の大型化を回避できるとともに、血液回路を構成する流路が指標検出手段に取り付けられていない状態を精度よく検出することができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路から成るとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、前記動脈側血液回路に配設され、当該動脈側血液回路の一部を送液方向に扱くしごき型ポンプから成り、駆動によって当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで血液を流動させ得る血液ポンプと、前記血液回路の所定位置に取り付けられ、当該所定位置の流路を流れる液体の所定指標を検出し得る指標検出手段とを具備した血液浄化装置において、前記血液ポンプを駆動させて前記血液回路にて液体を流動させつつ当該血液ポンプの脈動の有無に基づく前記指標検出手段の検出値の変化を検出することにより、前記指標検出手段に前記血液回路が取り付けられていることを判定し得ることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記血液ポンプを駆動させて前記血液回路にて液体を流動させた状態で前記指標検出手段による検出値を複数回に亘って逐次取得するとともに、その検出値の差分を順次求め、当該差分の絶対値を累積して累積値を取得し得る累積値取得手段と、該累積値取得手段により取得された累積値に基づき、前記指標検出手段が前記血液回路に取り付けられているか否かを判定し得る判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記指標検出手段は、前記血液回路における前記所定位置の流路に光を照射可能な発光手段と、該発光手段からの光の反射光を受信可能な受光手段とを有するとともに、当該受光手段で受光した反射光に基づいて当該流路を流れる血液の所定指標を検出し得ることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記指標検出手段は、前記血液回路における前記所定位置の流路に光を照射可能な発光手段と、該発光手段からの光の透過光を受信可能な受光手段とを有するとともに、当該受光手段で受光した透過光に基づいて当該流路を流れる血液の所定指標を検出し得ることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記指標検出手段は、前記血液回路を流れる血液の濃度に関するパラメータを検出し得る濃度センサから成ることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項2記載の血液浄化装置において、前記指標検出手段は、前記血液回路の一部を嵌合し得る嵌合溝が形成された本体部と、該本体部に対して開閉可能とされ、閉状態にて前記嵌合溝に嵌合した血液回路の一部を挟持可能とされた蓋部と、該蓋部の開閉状態を検知する検知スイッチとを具備するとともに、前記累積値取得手段による累積値の取得は、当該検知スイッチによる閉状態の検知を条件として行われることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記指標検出手段による検出値に基づいて、前記血液ポンプを駆動して前記血液回路に患者の血液を導く際の脱血不良を検出し得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、血液ポンプを駆動させて血液回路にて液体を流動させつつ当該血液ポンプの脈動の有無に基づく指標検出手段の検出値の変化を検出することにより、指標検出手段に血液回路が取り付けられていることを判定し得るので、指標検出手段の大型化を回避できるとともに、血液回路を構成する流路が指標検出手段に取り付けられていない状態を精度よく検出することができる。すなわち、血液ポンプを駆動させて血液回路にて液体を流動させた状態においては、指標検出手段の検出値が血液ポンプの脈動の有無に基づいて変化するので、その脈動の有無に基づく変化を検出することによって、指標検出手段に血液回路が取り付けられていることを判定することができるのである。
【0018】
請求項2の発明によれば、血液ポンプを駆動させて血液回路にて液体を流動させた状態で指標検出手段による検出値を複数回に亘って逐次取得するとともに、その検出値の差分を順次求め、当該差分の絶対値を累積して累積値を取得し得る累積値取得手段と、累積値取得手段により取得された累積値に基づき、指標検出手段が血液回路に取り付けられているか否かを判定し得る判定手段とを備えたので、血液ポンプの脈動に基づく変化をより精度よく検出することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、指標検出手段は、血液回路における所定位置の流路に光を照射可能な発光手段と、該発光手段からの光の反射光を受信可能な受光手段とを有するとともに、当該受光手段で受光した反射光に基づいて当該流路を流れる血液の所定指標を検出し得るので、反射光に基づいて血液の所定指標を検出し得る指標検出手段を具備する血液浄化装置において、指標検出手段に血液回路が取り付けられているか否かを判定することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、指標検出手段は、血液回路における所定位置の流路に光を照射可能な発光手段と、該発光手段からの光の透過光を受信可能な受光手段とを有するとともに、当該受光手段で受光した透過光に基づいて当該流路を流れる血液の所定指標を検出し得るので、透過光に基づいて血液の所定指標を検出し得る指標検出手段を具備する血液浄化装置において、指標検出手段に血液回路が取り付けられているか否かを判定することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、指標検出手段は、血液回路を流れる血液の濃度に関するパラメータを検出し得る濃度センサから成るので、濃度センサから成る指標検出手段を具備する血液浄化装置において、指標検出手段に血液回路が取り付けられているか否かを判定することができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、指標検出手段は、血液回路の一部を嵌合し得る嵌合溝が形成された本体部と、該本体部に対して開閉可能とされ、閉状態にて嵌合溝に嵌合した血液回路の一部を挟持可能とされた蓋部と、該蓋部の開閉状態を検知する検知スイッチとを具備するとともに、累積値取得手段による累積値の取得は、当該検知スイッチによる閉状態の検知を条件として行われるので、蓋部が開状態のとき、指標検出手段が血液回路に取り付けられているか否かを判定手段が判定するのを防止できる。
【0023】
請求項7の発明によれば、指標検出手段による検出値に基づいて、血液ポンプを駆動して血液回路に患者の血液を導く際の脱血不良を検出し得るので、指標検出手段に血液回路が取り付けられているか否かの判定に加え、脱血不良も検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図2】同血液浄化装置における気泡検出手段を示す側面図
図3】同気泡検出手段を示す正面図
図4図3におけるIV−IV線断面図
図5】同気泡検出手段における挟持手段に配設された血液判別手段を示す断面図(図2におけるV−V線断面図)
図6】同気泡検出手段(挟持手段による挟持がなされていない状態)を示す断面図(図2におけるVI−VI線断面図)
図7】同気泡検出手段(挟持手段による挟持がなされた状態)を示す断面図
図8】同血液浄化装置における指標検出手段を示す正面図
図9図8におけるIX−IX線断面図
図10図8におけるX−X線断面図
図11】同指標検出手段による検出値(血液回路が取り付けられた状態)を示すグラフ
図12】同指標検出手段による検出値(血液回路が取り付けられていない状態)を示すグラフ
図13】同指標検出手段による検出値の差分の絶対値を累積した状態(血液回路が取り付けられた状態)を示すグラフ
図14】同指標検出手段による検出値の差分の絶対値を累積した状態(血液回路が取り付けられていない状態)を示すグラフ
図15】本実施形態に係る血液浄化装置における制御内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、透析治療を行うための透析装置から成り、図1に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の間に介装されて血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化手段)と、血液ポンプ4と、静脈側血液回路2に配設されたエアトラップチャンバ5と、ダイアライザ3に透析液を供給し得る透析装置本体6と、気泡検出手段7と、血液判別手段8と、指標検出手段10とから主に構成されている。
【0026】
動脈側血液回路1には、その先端に動脈側穿刺針aがコネクタを介して接続可能とされるとともに、途中にしごき型の血液ポンプ4が配設されている一方、静脈側血液回路2には、その先端に静脈側穿刺針bがコネクタを介して接続可能とされるとともに、途中にエアトラップチャンバ5が接続されている。エアトラップチャンバ5には、空気層が形成されており、液体内の気泡を捕捉し得るとともに、濾過網(不図示)が配設されており、例えば返血時の血栓等を捕捉し得るようになっている。
【0027】
血液ポンプ4は、動脈側血液回路1に配設されたしごき型ポンプから成り、正転駆動及び逆転駆動可能とされるとともに、血液回路内の液体を駆動方向に流動させ得るものである。すなわち、動脈側血液回路1には、当該動脈側血液回路1を構成する他の可撓性チューブより軟質かつ大径の被しごきチューブ(動脈側血液回路1の一部)が接続されており、血液ポンプ4には、この被しごきチューブを送液方向にしごくためのローラが配設されているのである。そして、血液ポンプ4を駆動させると、そのローラが回動して被しごきチューブを送液方向に扱き、内部の液体を駆動方向(ローラの回転方向)に流動させることができるのである。
【0028】
しかして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ4を正転駆動(図中左回転)させると、患者の血液は、動脈側血液回路1を通ってダイアライザ3に至った後、該ダイアライザ3によって血液浄化が施され、エアトラップチャンバ5で除泡がなされつつ静脈側血液回路2を通って患者の体内に戻る。すなわち、患者の血液を血液回路の動脈側血液回路1の先端から静脈側血液回路2の先端まで体外循環させつつダイアライザ3にて浄化するのである。また、血液ポンプ4を逆転駆動(図中右回転)させると、血液回路(動脈側血液回路1における先端と血液ポンプ4の配設位置との間)の血液を患者に返血することができる。
【0029】
ダイアライザ3は、その筐体部に、血液導入ポート3a、血液導出ポート3b、透析液導入ポート3c及び透析液導出ポート3dが形成されており、このうち血液導入ポート3aには動脈側血液回路1が、血液導出ポート3bには静脈側血液回路2がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート3c及び透析液導出ポート3dは、透析装置本体6から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0030】
ダイアライザ3内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0031】
一方、透析装置本体6には、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って複式ポンプ等の送液手段が配設されているとともに、当該送液手段をバイパスするバイパスラインにはダイアライザ3中を流れる患者の血液から水分を除去するための除水ポンプが配設されている。さらに、透析液導入ラインL1の一端がダイアライザ3(透析液導入ポート3c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインL2の一端は、ダイアライザ3(透析液導出ポート3d)に接続されるとともに、他端が図示しない排液手段と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザ3に至った後、透析液排出ラインL2を通って排液手段に送られるようになっている。
【0032】
なお、エアトラップチャンバ5には、モニタチューブを介して圧力センサが接続されており、当該エアトラップチャンバ5内の液圧(静脈圧)を計測し得るようになっている。また、エアトラップチャンバ5の上部(空気層側)からは、オーバーフローラインが延設されており、その途中に電磁弁が配設されている。そして、電磁弁を開状態とすることにより、オーバーフローラインを介して、血液回路中を流れる液体(プライミング液等)をオーバーフローし得るようになっている。
【0033】
さらに、静脈側血液回路2における静脈側穿刺針bの近傍(静脈側血液回路2の先端近傍であってエアトラップチャンバ5と静脈側穿刺針bとの間)には、気泡検出手段7、血液判別手段8及びクランプ手段9(例えば、電磁弁等)がそれぞれ配設されている。これら気泡検出手段7、血液判別手段8及びクランプ手段9は、共通の挟持手段Hを具備している。かかる挟持手段Hは、静脈側血液回路2の先端部に配設されたユニットから成り、本体部Haと、蓋部Hbとを有して構成されているとともに、本体部Haには、静脈側血液回路2を構成する可撓性チューブを嵌合させ得る嵌合溝Haaが形成されている。また、蓋部Hbは、揺動軸Lを介して本体部Haに対して揺動自在に取り付けられており、当該揺動軸Lを中心とした揺動によって開閉可能とされている。
【0034】
そして、嵌合溝Haaに可撓性チューブを嵌合させた状態で蓋部Hbを閉状態とすることにより、図7に示すように、本体部Ha及び蓋部Hbにより当該可撓性チューブ(血液回路の一部)を上下から挟持し得るようになっている。また、嵌合溝Haaの所定位置には、スイッチfが形成されており、可撓性チューブを嵌合溝Haaにて正常に挟持させると当該スイッチfがオンするよう構成されている。これにより、可撓性チューブが嵌合溝Haaに正常に挟持されているか否かを検知することが可能とされている。
【0035】
さらに、蓋部Hbには、閉状態で本体部Haと係止し得るロック部Hbaが形成されており、当該ロック部Hbaによるロックにて、可撓性チューブを挟持した状態が確実に保持される。なお、気泡検出手段7、血液判別手段8及びクランプ手段9は、本体部Haにおいて嵌合溝Haaの延設方向に沿って配設されており、挟持手段Hにて挟持した血液回路の一部に対して、気泡検出手段7による気泡の検出、血液判別手段8による血液判別、及びクランプ手段9による流路の開閉を行い得るよう構成されている。
【0036】
クランプ手段9は、開閉動作により、配設された各々の部位における流路(すなわち、静脈側血液回路2の先端部の流路)を閉塞及び開放し得るものである。なお、図4中符号Rは、クランプ手段9に配設されたプッシュロッドを示しており、このプッシュロッドRを嵌合溝Haaに対して進退させることにより、所定位置の流路を閉塞及び開放し得るようになっている。
【0037】
血液判別手段8は、静脈側血液回路2の先端部の流路において血液が流通しているか否かを判別するためのもので、図5に示すように、例えばLEDから成る発光素子A1と、受光素子A2とを具備している。これら発光素子A1と受光素子A2は、嵌合溝Haaを挟んで左右にそれぞれ配設されており、当該嵌合溝Haaで嵌合された静脈側血液回路2を構成する可撓性チューブに向けて発光素子A1から光を照射させ得るとともに、その光を受光素子A2にて受け得るようになっている。
【0038】
この受光素子A2は、その受光量に応じて電圧が変化するよう構成されており、検出される電圧により静脈側血液回路2を流れる血液の有無を判別し得るよう構成されている。すなわち、血液と置換液(本実施形態においては生理食塩液)とでは、発光素子A1から照射される光の透過率が異なる(血液より生理食塩液等の置換液の方が光の透過率が高い)ので、受光素子A2により検出された電圧が所定の閾値を超えたことにより、流動する液体が血液から置換液に置換されたことが検出されるのである。
【0039】
気泡検出手段7は、挟持手段Hにて挟持された部位(所定位置)における静脈側血液回路2を流れる気泡(エア)を検出可能なセンサから成り、図6に示すように、例えば圧電素子から成る超音波振動素子A3(発振手段)と、圧電素子から成る超音波受信素子A4(受信手段)とを具備している。超音波振動素子A3(発振手段)は、本体部Haにおける嵌合溝Haaの下方に配設され、挟持手段Hで挟持した流路に超音波を発振可能とされている。また、超音波受信素子A4(受信手段)は、蓋部Hbにおける所定部位(蓋部Hbが閉状態とされたとき、超音波振動素子A3と対向する部位)に配設され、超音波受信素子A4から発振されて流路を透過した超音波を受信可能とされている。
【0040】
そして、嵌合溝Haaで嵌合された静脈側血液回路2を構成する可撓性チューブに向けて超音波振動素子A3から超音波を照射させ得るとともに、その振動を超音波受信素子A4にて受け得るようになっている。この超音波受信素子A4は、その受信した振動に応じて電圧が変化するよう構成されており、検出される電圧が所定の閾値を超えたことにより静脈側血液回路2に気泡が流動したことを検出し得るよう構成されている。
【0041】
上記構成の気泡検出手段7により、超音波受信素子A4(受信手段)で受信した超音波に基づいて当該流路を流れる液体中の気泡を検出することができる。しかして、本実施形態によれば、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2にて患者の血液を体外循環させつつダイアライザ3にて血液浄化治療を行わせるとともに、血液判別手段8にて所定位置を流動する液体が血液から置換液に置換されたことを検出、或いは気泡検出手段7にて気泡の流動を検出すると、クランプ手段9を閉状態として透析治療や返血を終了又は中断させることができる。
【0042】
指標検出手段10は、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の所定位置に取り付けられ、当該動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2を流れる血液に対して光を照射し、その反射光を受光して得られる受光電圧に基づき血液濃度(ヘマトクリット値(以下、「Ht」なる略号にて表すこともある))を測定し得るものであり、図8〜10に示すように、血液回路における所定位置の流路に光を照射可能な発光素子A5〜A8(発光手段)と、該発光素子A5〜A8からの光の反射光を受信可能な受光素子A9、A10(受光手段)とを有するとともに、当該受光素子A9、A10で受光した反射光に基づいてそれぞれの流路を流れる血液のヘマトクリット値(所定指標)を検出し得るものである。
【0043】
また、本実施形態に係る指標検出手段10は、血液回路の一部を嵌合し得る嵌合溝Ia1、Ia2が形成された本体部Iaと、本体部Iaに対して開閉可能とされ、閉状態にて嵌合溝Ia1、Ia2に嵌合した血液回路の一部を挟持可能とされた蓋部Ibと、蓋部Ibの開閉状態を検知する検知スイッチgとが形成された挟持手段Iを有しており、例えば嵌合溝Ia1に動脈側血液回路1の所定位置及び嵌合溝Ia2に静脈側血液回路2の所定位置をそれぞれ嵌合させ得るようになっている。
【0044】
蓋部Ibは、揺動軸Mを介して本体部Iaに対して揺動自在に取り付けられており、当該揺動軸Mを中心とした揺動によって開閉可能とされるとともに、閉状態で本体部Iaと係止し得るロック部Ibaが形成されており、当該ロック部Ibaによるロックにて、可撓性チューブを挟持した状態が確実に保持されるようになっている。そして、嵌合溝Ia1、Ia2に動脈側血液回路1の所定位置及び静脈側血液回路2の所定位置における可撓性チューブをそれぞれ嵌合させた状態で蓋部Ibを閉状態とすることにより、本体部Ia及び蓋部Ibにより当該可撓性チューブ(血液回路の一部)を上下から挟持し得るようになっている。
【0045】
検知スイッチgは、本体部Iaにおける嵌合溝Ia1と嵌合溝Ib2との間に形成された押しボタン式スイッチから成り、蓋部Ibが揺動軸Mを中心として揺動し、本体部Iaに対して近接すると、当該蓋部Ibに形成された凸部Ibbで押圧されてオンするよう構成されている。かかる検知スイッチgのオン、オフにより、蓋部Ibの開閉状態を検知することができる。
【0046】
さらに、本体部Iaにおける嵌合溝Ia1、Ia2にはスリットα、βがそれぞれ形成されている。これらスリットα、βは、嵌合溝Ia1、Ia2の底面を切り欠いて形成されたもので、当該嵌合溝Ia1、Ia2の延設方向に所定寸法に亘って形成されている。また、本体部Iaにおけるスリットαより内部側には一対の発光素子A5、A6及び受光素子A9が、スリットβより内部側には一対の発光素子A7、A8及び受光素子A10がそれぞれ形成されており、一対の発光素子A5、A6及び一対の発光素子A7、A8からそれぞれ照射された光がスリットα、βを介して動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2内の液体にて反射され、受光素子A9、A10にてそれぞれ受光し得る構成(所謂反射型センサの構成)とされている。
【0047】
発光素子A5〜A8は、約805±15nmの波長の近赤外線を照射し得るLED(近赤外線LED)から成り、受光素子A9、A10は、フォトダイオードから成るものである。これら発光素子A5〜A8と受光素子A9、A10とは、1つの基板上に所定寸法離間して形成されており、本体部Iaに組み付けられた際に、何れもスリットα、βから外部(即ち、嵌合溝Ia1、Ia2に嵌合された可撓性チューブ、或いは可撓性チューブが嵌合されない場合は、蓋部Ibに形成された反射部Ibc、Ibd)を臨み得るようになっている。
【0048】
また、発光素子A5〜A8、受光素子A9、A10が取り付けられた基板には、受光素子A9、A10からの信号を増幅するための増幅回路が形成されている。これにより、受光素子A9、A10が受光し、その照度に応じた電気信号を出力する際、増幅回路にて増幅することができる。さらに、本実施形態においては、発光素子A5〜A8として近赤外線LEDを使用しているため、ヘモグロビンの光吸収率が変化しない波長の光を照射することができ、当該ヘモグロビンの酸素化状態に影響されないで、常時正確にヘマトクリット値を測定することができる。なお、図中符号Aa、Abは、酸素飽和度等を測定するための発光素子(LED)を示している。
【0049】
しかして、受光素子A9、A10から出力された電気信号に基づき、血液の濃度を示すヘマトクリット値を求めることができる。すなわち、血液を構成する赤血球や血漿などの各成分は、それぞれ固有の吸光特性を持っており、この性質を利用してヘマトクリット値を測定するのに必要な赤血球を電子光学的に定量化することにより当該ヘマトクリット値を求めることができるのである。具体的には、発光素子A5〜A8から照射された近赤外線は、血液に反射する際に、吸収と散乱の影響を受け、受光素子A9、A10にて受光される。その受光した光の強弱から光の吸収散乱率を解析し、ヘマトクリット値を算出するのである。
【0050】
そして、この算出されたヘマトクリット値を用いて、ΔBV(%)=(Ht/Ht−1)×100なる演算式(但し、Htは治療初期のヘマトクリット値、Htは測定時点におけるヘマトクリット値)によって循環血液量の変化率(ΔBV)を求めるものとされ、当該循環血液量の変化率(ΔBV)が除水速度や除水量の目安とされる。このように算出されたヘマトクリット値(又は、そこから更に演算により求められる循環血液量変化率ΔBV等各種パラメータも含む)に基づき、除水ポンプの駆動が制御され、患者の容態に合わせた除水速度や除水量とすることができる。なお、本実施形態においては、測定されたヘマトクリット値に基づいて除水速度や除水量を制御しているが、例えばヘマトクリット値に基づいて透析治療における補液条件や透析液条件などを制御するようにしてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態に係る透析装置本体6内には、例えばマイコン等から成る累積値取得手段11、判定手段12及び報知手段13が配設されている。累積値取得手段11は、血液ポンプ4を駆動させて血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)にて液体を流動させた状態で指標検出手段10による検出値を複数回に亘って逐次取得するとともに、その検出値の差分を順次求め、当該差分の絶対値を累積して累積値を取得し得るものである。
【0052】
すなわち、指標検出手段10(嵌合溝Ia1、Ia2)に動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2が取り付けられた状態で血液ポンプ4を駆動させると、図11のグラフに示すように、指標検出手段10により検出されるヘマトクリット値が血液濃度の変化により推移するとともに、その推移が血液ポンプ4の脈動に伴って小刻みに変化(微小時間あたり上下に変化)するものとされている。したがって、その検出された検出値を複数回に亘って逐次取得するとともに、その検出値の差分(ΔHt)を順次求め、当該差分の絶対値(|ΔHt|)を累積して累積値(Σ|ΔHt|)を得ることにより、図13のグラフに示すように、時間経過と共に上昇する推移を得ることができる。
【0053】
一方、指標検出手段10(嵌合溝Ia1、Ia2)に動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2が取り付けられていない状態で血液ポンプ4を駆動させると、図12のグラフに示すように、指標検出手段10による検出値に変化がなく推移するとともに、その推移が血液ポンプ4の脈動に伴って小刻みに変化(微小時間あたり上下に変化)することがない。したがって、その検出された検出値を複数回に亘って逐次取得するとともに、その検出値の差分(ΔHt)を順次求め、当該差分の絶対値(|ΔHt|)を累積して累積値(Σ|ΔHt|)を得ることにより、図14のグラフに示すように、時間経過による変化がほとんどない推移を得ることができる。
【0054】
なお、本実施形態に係る累積値取得手段11においては、指標検出手段10により検出されたヘマトクリット値に対して累積値を取得しているが、ヘマトクリット値から更に演算により求められる循環血液量変化率ΔBV等各種パラメータの累積値を取得し、指標検出手段10が血液回路に取り付けられているか否かを判定手段12にて判定させるものとしてもよい。
【0055】
判定手段12は、累積値取得手段11により取得された累積値(Σ|ΔHt|)に基づき、指標検出手段10が血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)に取り付けられているか否かを判定し得るものである。すなわち、図13に示すように、累積値取得手段11により取得された累積値(Σ|ΔHt|)が予め設定した閾値kを所定時間内に超える場合、指標検出手段10(嵌合溝Ia1、Ia2)に動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2が取り付けられていると判定するとともに、図14に示すように、累積値取得手段11により取得された累積値(Σ|ΔHt|)が予め設定した閾値kを所定時間内に超えない場合、指標検出手段10(嵌合溝Ia1、Ia2)に動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2が取り付けられていないと判定することができるのである。
【0056】
報知手段13は、累積値取得手段11により取得された累積値(Σ|ΔHt|)が予め設定した閾値kを所定時間内に超えず、指標検出手段10(嵌合溝Ia1、Ia2)に動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2が取り付けられていないと判定手段12により判定された場合、所定の報知(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2が取り付けられていない旨の報知)を行うものである。
【0057】
このように、本実施形態においては、血液ポンプ4を駆動させて血液回路にて液体を流動させつつ指標検出手段10の検出値の変化を検出することにより、指標検出手段10に血液回路が取り付けられているか否かを判定し得るので、指標検出手段10の大型化を回避できるとともに、血液回路を構成する流路が指標検出手段10に取り付けられていない状態を精度よく検出することができる。すなわち、血液ポンプ4を駆動させて血液回路にて液体を流動させた状態においては、指標検出手段10の検出値が血液ポンプ4の脈動に基づいて変化するので、その脈動に基づく変化を検出することによって、指標検出手段10に血液回路が取り付けられているか否かを判定することができるのである。
【0058】
また、本実施形態によれば、血液ポンプ4を駆動させて血液回路にて液体を流動させた状態で指標検出手段10による検出値を複数回に亘って逐次取得するとともに、その検出値の差分を順次求め、当該差分の絶対値を累積して累積値を取得し得る累積値取得手段11と、累積値取得手段11により取得された累積値に基づき、指標検出手段10が血液回路に取り付けられているか否かを判定し得る判定手段12とを備えたので、血液ポンプ4の脈動に基づく変化をより精度よく検出することができる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る指標検出手段10は、血液回路における所定位置の流路に光を照射可能な発光素子A5〜A8(発光手段)と、発光素子A5〜A8(発光手段)からの光の反射光を受信可能な受光素子A9、A10(受光手段)とを有するとともに、当該受光素子A9、A10で受光した反射光に基づいて当該流路を流れる血液の所定指標(ヘマトクリット値)を検出し得るので、反射光に基づいて血液の所定指標を検出し得る指標検出手段10を具備する血液浄化装置において、指標検出手段10に血液回路が取り付けられているか否かを判定することができる。
【0060】
特に、本実施形態に係る指標検出手段10は、血液回路を流れる血液の濃度に関するパラメータ(ヘマトクリット値)を検出し得る濃度センサ(ヘマトクリットセンサ)から成るので、濃度センサから成る指標検出手段10を具備する血液浄化装置において、指標検出手段10に血液回路が取り付けられているか否かを判定することができる。なお、本実施形態においては、ヘマトクリット値を検出し得るヘマトクリットセンサに適用されているが、血液回路を流れる血液の濃度に関する他のパラメータを検出し得る濃度センサに適用してもよい。
【0061】
さらに、本実施形態に係る累積値取得手段11による累積値の取得(Σ|ΔHt|)は、指標検出手段10の挟持手段Iに形成された検知スイッチgによる閉状態の検知を条件として行われるよう構成されている。かかる構成により、挟持手段Iの蓋部Ibが開状態のとき(すなわち、作業者が一見して指標検出手段10に血液回路が取り付けられていないことが分かるとき)、指標検出手段10が血液回路に取り付けられているか否かを判定手段12が判定するのを防止できる。
【0062】
また、指標検出手段10による検出値に基づいて、血液ポンプ4を駆動して血液回路に患者の血液を導く際の脱血不良を検出し得るものとしてもよい。すなわち、例えば指標検出手段10による検出値における閾値に上限値を設けることにより、血液ポンプ4の脈動の変化を検出して脱血不良を検出することができるのである。この場合、指標検出手段10に血液回路が取り付けられているか否かの判定に加え、脱血不良も検出することができる。
【0063】
次に、本実施形態に係る血液浄化装置の制御について、図15のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、検知スイッチgがオンしたことを条件として、血液ポンプ4を駆動させるとともに、指標検出手段10により検出される電圧(受光素子A9、A10による受光電圧)を取得し(S1)、その電圧に基づいてヘマトクリット値(血液濃度)を算出する(S2)。その後、算出された検出値の差分(ΔHt=Ht(t)−Ht(t−1))を求め(S3)、当該差分の絶対値(|ΔHt|)を累積して累積値(Σ|ΔHt|)を取得する(S4)。
【0064】
そして、所定時間経過したか否かが判断され(S5)、所定時間経過するまで、S1〜S4が繰り返し行われる。S5にて所定時間が経過したと判断されると、取得された累積値(Σ|ΔHt|)が所定値(例えば閾値k)以上か否かが判断され(S6)、累積値(Σ|ΔHt|)が所定値以上の場合は、指標検出手段10に血液回路が取り付けられていると判定される(S7)とともに、累積値(Σ|ΔHt|)が所定値未満の場合は、指標検出手段10に血液回路が取り付けられていないと判定される(S8)。
【0065】
以上により、一連の制御が終了し、S8による判定がなされた場合、報知手段13による報知が行われる。かかる制御の開始条件として、本実施形態においては、検知スイッチgがオンしたことを条件としているが、例えば、透析運転開始時、脱血時又は血液判別手段8による血液判別時など透析治療が開始されたことを条件としてもよい。また、S4による累積値の算出時、ノイズ除去処理(例えば、所定値以下のΔHtを無視する等)を行ってもよく、或いはS8による血液回路の取り付けられていないと判定された場合、すぐに報知せず、血液ポンプ4の駆動速度を変更する等、指標検出手段10の受光電圧に影響を与える動作を実施して血液回路の取り付けの有無の判定を再び行うようにしてもよい。
【0066】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば適用される指標検出手段として、血液ポンプ4の駆動に伴い生じる脈動を検出し得るものであれば他のセンサを用いることができる。かかる他のセンサとして、例えば気泡検出手段7や血液判別手段8(但し、定量を検出可能なものとする必要がある)を用い、スイッチfを廃止するものとしてもよい。また、指標検出手段は、反射型の光学式のセンサに限らず、他の種々形態(例えば、透過型の光学式センサや気泡検出手段7の如く超音波式のセンサ等)であってもよい。
【0067】
指標検出手段として透過型の光学式センサを用いる場合、血液回路における所定位置の流路に光を照射可能な発光手段と、該発光手段からの光の透過光(血液回路の所定位置の流路を透過した光)を受信可能な受光手段とを有するとともに、当該受光手段で受光した透過光に基づいて当該流路を流れる血液の所定指標を検出し得るものとすることができる。これにより、透過光に基づいて血液の所定指標を検出し得る指標検出手段を具備する血液浄化装置において、指標検出手段に血液回路が取り付けられているか否かを判定することができる。
【0068】
さらに、指標検出手段10は、検知スイッチgを有さないもの、或いは他の形態で蓋部Ibの開閉状態を検知するもの(例えば、発光素子A5〜A8(発光手段)、受光素子A9、A10(受光手段)により光学的に蓋部Ibの開閉状態を検知するもの等)としてもよい。またさらに、本実施形態に係る指標検出手段10は、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2を挟持しつつそれら流路を流れる血液の指標(ヘマトクリット値)を検出するものとされているが、動脈側血液回路1又は静脈側血液回路2を挟持しつつその流路を流れる血液の指標(ヘマトクリット値)を検出するであってもよい。なお、本実施形態においては、透析治療時に用いられる透析装置に適用しているが、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る他の装置(例えば血液濾過透析法、血液濾過法、AFBFで使用される血液浄化装置、血漿吸着装置等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
血液ポンプを駆動させて血液回路にて液体を流動させつつ当該血液ポンプの脈動の有無に基づく指標検出手段の検出値の変化を検出することにより、指標検出手段に前記血液回路が取り付けられていることを判定し得る血液浄化装置であれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 動脈側血液回路
2 静脈側血液回路
3 ダイアライザ(血液浄化手段)
4 血液ポンプ
5 エアトラップチャンバ
6 透析装置本体
7 気泡検出手段
8 血液判別手段
9 クランプ手段
10 指標検出手段
11 累積値取得手段
12 判定手段
13 報知手段
H 挟持手段
I 挟持手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15