特許第6067635号(P6067635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067635
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20170116BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20170116BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20170116BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20170116BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20170116BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20170116BHJP
【FI】
   B60R21/00 628D
   B62D6/00
   G08G1/16 C
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D119:00
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-186798(P2014-186798)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-60234(P2016-60234A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山下 智久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】立花 裕之
(72)【発明者】
【氏名】三好 英彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 優
(72)【発明者】
【氏名】浅井 貴友
(72)【発明者】
【氏名】大林 幹生
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 宏亘
(72)【発明者】
【氏名】尾山 啓介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 清志
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−076496(JP,A)
【文献】 特開2007−161119(JP,A)
【文献】 特開2011−126337(JP,A)
【文献】 特開2008−030704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00
B62D 6/00
G08G 1/16
B62D 101/00
B62D 113/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺領域に駐車可能領域を検出する検出部と、
前記車両の現在位置から前記駐車可能領域に含まれる駐車目標位置に前記車両を誘導するための駐車誘導経路を算出する経路算出部と、
前記駐車誘導経路にしたがって前記車両を前記駐車目標位置に誘導すると共に、前記車両が、前記駐車可能領域に所定姿勢で収まり前記駐車目標位置に到達した場合に前記誘導を完了させる一方、前記駐車可能領域に前記所定姿勢で進入している場合であって前記駐車目標位置に到達する前に前記車両が停止した場合に、当該車両の停止態様に応じて前記車両の誘導を完了させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記車両の停止態様に応じて前記車両の誘導を完了させるまでの完了猶予期間を異ならせる、駐車支援装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記完了猶予期間の長さを、前記車両の停止態様が車両停止操作を伴う第1停止態様の場合より、前記車両停止操作を伴わない第2停止態様の場合を長く設定する請求項に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両の誘導を完了させる場合、完了の是非をユーザに確認する確認報知を実行する請求項1または請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両が前記駐車可能領域に所定量進入したときに、前記車両が前記駐車誘導経路から車幅方向に所定距離以上ずれていた場合、または前記車両の前後方向の中心軸が前記駐車誘導経路に基づく誘導方向に対して所定角度以上ずれていた場合、の少なくともいずれか一方の場合、前記所定姿勢を満たしていないと判定し、前記車両の停止による誘導の完了を保留する一方、誘導のずれを修正するように前記経路算出部に駐車誘導経路を再算出させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記経路算出部が前記駐車誘導経路の再算出を実行した場合、当該再算出した駐車誘導経路に対する前記車両の車幅方向の距離のずれ及び誘導方向に対する前記車両の前後方向の中心軸のずれの許容値を修正する請求項4に記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された各種センサによって、自車両が駐車できる駐車スペースを探して、その駐車スペースに設定した駐車目標位置までの最適な車両軌道を算出して、その車両軌道にしたがって自車両を誘導することにより、ドライバにおける駐車操作の負担を軽減する駐車支援装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第09/063710号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサによって検出した駐車スペースに自車両を誘導する場合、目標となる駐車スペース(目標駐車スペース)に自車両が完全に収まることで車両の誘導処理または案内処理を終了させている場合がある。しかしながら、目標駐車スペースに自車両が完全に収まる前に車両が停車してしまう場合がある。例えば、駐車スペースの路面状態によって車両の走行が妨げられて停止してしまう場合やユーザ自らの判断で誘導の途中で停車させる場合がある。しかし、このような場合、設定された駐車目標位置に至る誘導経路の終端まで車両が到達した訳ではないので、誘導の終了条件が満たされない。その結果、駐車支援装置は誘導を継続してしまう場合がある。つまり、車両が停止しているにも拘わらず誘導が継続されて、ユーザに煩わしさや違和感を与えてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる駐車支援装置は、例えば、車両の周辺領域に駐車可能領域を検出する検出部と、前記車両の現在位置から前記駐車可能領域に含まれる駐車目標位置に前記車両を誘導するための駐車誘導経路を算出する経路算出部と、前記駐車誘導経路にしたがって前記車両を前記駐車目標位置に誘導すると共に、前記車両が、前記駐車可能領域に所定姿勢で収まり前記駐車目標位置に到達した場合に前記誘導を完了させる一方、前記駐車可能領域に前記所定姿勢で進入している場合であって前記駐車目標位置に到達する前に前記車両が停止した場合に、当該車両の停止態様に応じて前記車両の誘導を完了させ制御部と、を備え、前記制御部は、前記車両の停止態様に応じて前記車両の誘導を完了させるまでの完了猶予期間を異ならせる。この態様によれば、例えば、駐車目標位置に到達する前に車両が停止した場合でも、その停止態様に応じた完了猶予期間の経過後に車両の誘導を完了させる。その結果、駐車支援を完了させるタイミングを調整することが可能になり、その調整により従来の煩わしさや違和感が軽減できる。
【0007】
また、実施形態にかかる駐車支援装置の前記制御部は、例えば、前記完了猶予期間の長さを、前記車両の停止態様が車両停止操作を伴う第1停止態様の場合より、前記車両停止操作を伴わない第2停止態様の場合を長く設定するようにしてもよい。この態様によれば、駐車目標位置に到達する前に車両が停止した場合でも、車両停止操作を伴う停止、すなわちユーザの意志に基づく停止の際は速やかに誘導が完了するので、従来の煩わしさや違和感を軽減できる。また、車両停止操作を伴わない停止、すなわちユーザの意志による停止ではない場合、誘導停止までの猶予期間が、ユーザの意志に基づく停止の場合より長くなり、意図しない状況で誘導が停止した場合でも、ユーザにその後の対応の機会を提供できる。
【0008】
また、実施形態にかかる駐車支援装置の前記制御部は、例えば、前記車両の誘導を完了させる場合、完了の是非をユーザに確認する確認報知を実行するようにしてもよい。この態様によれば、駐車目標位置に到達する前に車両が停止した場合でも、そこで誘導を完了させてよいかユーザに判断させるので、誘導の完了をユーザに納得させることができると共に、ユーザが車両の停止後に誘導の再開を望む場合には、速やかに誘導の再開に移行できる。
【0009】
また、実施形態にかかる駐車支援装置の前記制御部は、例えば、前記車両が前記駐車可能領域に所定量進入したときに、前記車両が前記駐車誘導経路から車幅方向に所定距離以上ずれていた場合、または前記車両の前後方向の中心軸が前記駐車誘導経路に基づく誘導方向に対して所定角度以上ずれていた場合、の少なくともいずれか一方の場合、前記所定姿勢を満たしていないと判定し、前記車両の停止による誘導の完了を保留する一方、誘導のずれを修正するように前記経路算出部に駐車誘導経路の再算出させるようにしてもよい。この態様によれば、例えば、誘導にずれが生じて、車両駐車目標位置に誘導し難い場合は、駐車のための誘導を完了させる前に、駐車誘導経路の再算出を行い駐車をスムーズに完了させることができる。
【0010】
また、実施形態にかかる駐車支援装置の前記制御部は、例えば、前記経路算出部が前記駐車誘導経路の再算出を実行した場合、当該再算出した駐車誘導経路に対する前記車両の車幅方向の距離のずれ及び誘導方向に対する前記車両の前後方向の中心軸のずれの許容値を修正するようにしてもよい。この態様によれば、例えば許容値を厳しい側に修正する場合、目標駐車位置への誘導を高精度で行うことができる。逆に、許容値を緩い側に修正する場合、駐車誘導経路を再算出が繰り返し実行されることが抑制され、駐車誘導経路が再算出された場合でも誘導を迅速完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態の車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。
図2図2は、実施形態の車両の例示的な平面図である。
図3図3は、実施形態の車両のダッシュボードの一例であり、車両後方からの視野での図である。
図4図4は、実施形態の駐車支援システムの構成の例示的なブロック図である。
図5図5は、実施形態の駐車支援システムのECUの構成の例示的なブロック図である。
図6図6は、実施形態の駐車支援システムの駐車支援処理を説明するフローチャートである。
図7図7は、実施形態の駐車支援システムの駐車誘導処理を説明するために、駐車場における車両の挙動と駐車可能領域の検出の様子を説明する図である。
図8図8は、実施形態の駐車支援システムの駐車誘導処理を説明するために、駐車場において、車両が駐車目標位置に到達する前に輪留めによって停止した例を説明する図である。
図9図9は、実施形態の駐車支援システムの駐車誘導処理を説明するために、駐車場において、車両が駐車目標位置に到達する前に停止した例を説明する図である。
図10図10は、実施形態の駐車支援システムの駐車誘導処理を説明するために、駐車場において、車両が駐車目標位置に到達する前に姿勢を修正している様子を説明する図である。
図11図11は、図6の誘導制御処理の詳細を説明するフローチャートである。
図12図12は、実施形態の駐車支援システムにおいて、誘導に関する情報を表示する表示装置の画面の一例であり、駐車支援中の表示例を示す図である。
図13図13は、実施形態の駐車支援システムにおいて、誘導に関する情報を表示する表示装置の画面の一例であり、誘導中に車両が停止した場合の表示例を示す図である。
図14図14は、実施形態の駐車支援システムにおいて、誘導に関する情報を表示する表示装置の画面の一例であり、誘導完了を案内する場合の表示例を示す図である。
図15図15は、実施形態の駐車支援システムにおいて、誘導に関する情報を表示する表示装置の画面の一例であり、駐車誘導経路の再算出を行い、駐車支援を再開した場合の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0013】
本実施形態において、駐車支援装置を搭載する車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
【0014】
図1に例示されるように、車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としての運転者の座席2bに臨む状態で、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。操舵部4は、例えば、ダッシュボード24から突出したステアリングホイールであり、加速操作部5は、例えば、運転者の足下に位置されたアクセルペダルであり、制動操作部6は、例えば、運転者の足下に位置されたブレーキペダルであり、変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等は、これらには限定されない。
【0015】
また、車室2a内には、表示出力部としての表示装置8や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(liquid crystal display)や、OELD(organic electroluminescent display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置で手指等で操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。これら表示装置8や、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード24の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。モニタ装置11は、スイッチや、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができるし、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から、音声を出力することができる。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。
【0016】
また、車室2a内には、表示装置8とは別の表示装置12が設けられている。図3に例示されるように、表示装置12は、例えば、ダッシュボード24の計器盤部25に設けられ、計器盤部25の略中央で、速度表示部25aと回転数表示部25bとの間に位置されている。表示装置12の画面12aの大きさは、表示装置8の画面8a(図3)の大きさよりも小さい。この表示装置12には、主として車両1の駐車支援に関する情報を示す画像が表示されうる。表示装置12で表示される情報量は、表示装置8で表示される情報量より少なくてもよい。表示装置12は、例えば、LCDや、OELD等である。なお、表示装置8に、表示装置12で表示される情報が表示されてもよい。
【0017】
また、図1図2に例示されるように、車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成されうる。図4に例示されるように、車両1は、少なくとも二つの車輪3を操舵する操舵システム13を有している。操舵システム13は、アクチュエータ13aと、トルクセンサ13bとを有する。操舵システム13は、ECU14(electronic control unit)等によって電気的に制御されて、アクチュエータ13aを動作させる。操舵システム13は、例えば、電動パワーステアリングシステムや、SBW(steer by wire)システム等である。操舵システム13は、アクチュエータ13aによって操舵部4にトルク、すなわちアシストトルクを付加して操舵力を補ったり、アクチュエータ13aによって車輪3を転舵したりする。この場合、アクチュエータ13aは、一つの車輪3を転舵してもよいし、複数の車輪3を転舵してもよい。また、トルクセンサ13bは、例えば、運転者が操舵部4に与えるトルクを検出する。
【0018】
また、図2に例示されるように、車体2には、複数の撮像部15として、例えば四つの撮像部15a〜15dが設けられている。撮像部15は、例えば、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部15は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。撮像部15は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向には例えば140°〜190°の範囲を撮影することができる。また、撮像部15の光軸は斜め下方に向けて設定されている。よって、撮像部15は、車両1が移動可能な路面や車両1が駐車可能な領域を含む車体2の周辺の外部の環境を逐次撮影し、撮像画像データとして出力する。
【0019】
撮像部15aは、例えば、車体2の後側の端部2eに位置され、リヤトランクのドア2hの下方の壁部に設けられている。撮像部15bは、例えば、車体2の右側の端部2fに位置され、右側のドアミラー2gに設けられている。撮像部15cは、例えば、車体2の前側、すなわち車両前後方向の前方側の端部2cに位置され、フロントバンパー等に設けられている。撮像部15dは、例えば、車体2の左側、すなわち車幅方向の左側の端部2dに位置され、左側の突出部としてのドアミラー2gに設けられている。ECU14は、複数の撮像部15で得られた画像データに基づいて演算処理や画像処理を実行し、より広い視野角の画像を生成したり、車両1を上方から見た仮想的な俯瞰画像を生成したりすることができる。なお、俯瞰画像は、平面画像とも称されうる。
【0020】
また、ECU14は、撮像部15の画像から、車両1の周辺の路面に示された区画線等を識別し、区画線等に示された駐車区画を検出(抽出)する。
【0021】
また、図1図2に例示されるように、車体2には、複数の測距部16,17として、例えば四つの測距部16a〜16dと、八つの測距部17a〜17hとが設けられている。測距部16,17は、例えば、超音波を発射してその反射波を捉えるソナーである。ソナーは、ソナーセンサ、あるいは超音波探知器とも称されうる。ECU14は、測距部16,17の検出結果により、車両1の周囲に位置された障害物等の物体の有無や当該物体までの距離を測定することができる。すなわち、測距部16,17は、物体を検出する検出部の一例である。なお、測距部17は、例えば、比較的近距離の物体の検出に用いられ、測距部16は、例えば、測距部17よりも遠い比較的長距離の物体の検出に用いられうる。また、測距部17は、例えば、車両1の前方および後方の物体の検出に用いられ、測距部16は、車両1の側方の物体の検出に用いられうる。
【0022】
また、図4に例示されるように、駐車支援システム100では、ECU14や、モニタ装置11、操舵システム13、測距部16,17等の他、ブレーキシステム18、舵角センサ19、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等が、電気通信回線としての車内ネットワーク23を介して電気的に接続されている。車内ネットワーク23は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。ECU14は、車内ネットワーク23を通じて制御信号を送ることで、操舵システム13、ブレーキシステム18等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク23を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、測距部16、測距部17、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等の検出結果や、操作入力部10等の操作信号等を、受け取ることができる。
【0023】
ECU14は、例えば、CPU14a(central processing unit)や、ROM14b(read only memory)、RAM14c(random access memory)、表示制御部14d、音声制御部14e、SSD14f(solid state drive、フラッシュメモリ)等を有している。CPU14aは、例えば、表示装置8,12で表示される画像に関連した画像処理や、車両1の移動目標位置(駐車目標位置)の決定、車両1の移動経路(駐車誘導経路)の演算、物体との干渉の有無の判断、車両1の自動制御、自動制御の解除等の、各種の演算処理および制御を実行することができる。CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15で得られた画像データを用いた画像処理や、表示装置8で表示される画像データの合成等を実行する。また、音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、音声出力装置9で出力される音声データの処理を実行する。また、SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がオフされた場合にあってもデータを記憶することができる。なお、CPU14aや、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(digital signal processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(hard disk drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。
【0024】
ブレーキシステム18は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(anti-lock brake system)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:electronic stability control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(brake by wire)等である。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差などからブレーキのロックや、車輪3の空回り、横滑りの兆候等を検出して、各種制御を実行することができる。ブレーキセンサ18bは、例えば、制動操作部6の可動部の位置を検出するセンサである。ブレーキセンサ18bは、可動部としてのブレーキペダルの位置を検出することができる。ブレーキセンサ18bは、変位センサを含む。
【0025】
舵角センサ19は、例えば、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量を検出するセンサである。舵角センサ19は、例えば、ホール素子などを用いて構成される。ECU14は、運転者による操舵部4の操舵量や、自動操舵時の各車輪3の操舵量等を、舵角センサ19から取得して各種制御を実行する。なお、舵角センサ19は、操舵部4に含まれる回転部分の回転角度を検出する。舵角センサ19は、角度センサの一例である。
【0026】
アクセルセンサ20は、例えば、加速操作部5の可動部の位置を検出するセンサである。アクセルセンサ20は、可動部としてのアクセルペダルの位置を検出することができる。アクセルセンサ20は、変位センサを含む。
【0027】
シフトセンサ21は、例えば、変速操作部7の可動部の位置を検出するセンサである。シフトセンサ21は、可動部としての、レバーや、アーム、ボタン等の位置を検出することができる。シフトセンサ21は、変位センサを含んでもよいし、スイッチとして構成されてもよい。
【0028】
車輪速センサ22は、車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサである。車輪速センサ22は、検出した回転数を示す車輪速パルス数をセンサ値として出力する。車輪速センサ22は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。ECU14は、車輪速センサ22から取得したセンサ値に基づいて車両1の移動量などを演算し、各種制御を実行する。なお、車輪速センサ22は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、ECU14は、車輪速センサ22の検出結果をブレーキシステム18を介して取得する。
【0029】
なお、上述した各種センサやアクチュエータの構成や、配置、電気的な接続形態等は、一例であって、種々に設定(変更)することができる。
【0030】
また、図5に示されるように、ECU14は、CPU14aと当該CPU14aでの演算で用いられる、あるいはCPU14aでの演算で算出されたデータを記憶する記憶部30を備える。また、CPU14aは、ROM14b等の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、それを実行することで実現される各種モジュールを備える。例えばCPU14aは、検出部32、操作受付部34、目標位置決定部36、経路算出部38、誘導制御部40、出力情報決定部42、ブレーキセンサ受付部44、アクセルセンサ受付部46、シフトセンサ受付部48、舵角センサ受付部50、車輪速センサ受付部52等を備える。
【0031】
検出部32は、撮像部15、測距部16,17から提供される情報に基づいて、車両1の周囲に障害物や路面の枠線、区画線等を検出する。また、検出部32は、検出した障害物や枠線、区画線等に基づき、車両1の周辺領域に駐車可能領域を検出する検出部としても機能することができる。操作受付部34は、操作部14gの操作入力による信号を取得する。操作部14gは、例えば、押しボタンやスイッチ等であり、駐車支援の要求やキャンセルを行うことができる。目標位置決定部36は、車両1の移動目標位置、言い換えれば、駐車目標位置を決定する。経路算出部38は、車両1の現在位置から駐車可能領域に含まれる駐車目標位置に車両1を誘導するための移動経路または駐車誘導経路を算出する。誘導制御部40は、車両1が移動経路または駐車誘導経路に沿って移動目標位置または駐車目標位置へ移動するよう、車両1の各部を制御する。出力情報決定部42は、表示装置12,8や、音声出力装置9等で出力する情報や、当該情報の出力態様等を決定する。
【0032】
ブレーキセンサ受付部44は、ブレーキセンサ18bから出力される信号、すなわち制動操作部6、例えばブレーキペダルの操作入力に基づく信号を取得する。ブレーキセンサ受付部44は、運転者(ユーザ)の減速や駐停車の意志確認信号を取得する意志確認部として機能する。なお、ブレーキセンサ受付部44は、図示しないパーキングブレーキの操作入力を取得してもよく、この操作入力に基づき、運転者の駐停車の意志確認信号を取得するように機能してもよい。アクセルセンサ受付部46は、アクセルセンサ20から出力される信号、すなわち加速操作部5、例えばアクセルペダルの操作入力に基づく信号を取得する。アクセルセンサ受付部46は、運転者の走行や加速や意志確認信号を取得する意志確認部として機能する。シフトセンサ受付部48は、シフトセンサ21から出力される信号、すなわち変速操作部7、例えばシフトレバーの操作入力に基づく信号を取得する。シフトセンサ受付部48は、「Dポジション」を示す信号の受付により、運転者の前進走行の意志確認信号を取得し、「Rポジション」を示す信号の受付により運転者の後進走行の意志確認信号を取得する意志確認部として機能する。同様に、「Pポジション」を示す信号の受付により、運転者の駐停車の意志確認信号を取得する意志確認部として機能する。舵角センサ受付部50は、舵角センサ19から出力される信号、すなわち操舵部4、例えばステアリングホイールの操作入力に基づく信号を取得する。舵角センサ受付部50は、車両1の操舵状態を取得すると共に、運転者の操舵の意志を示す意志確認信号を取得する意志確認部として機能する。車輪速センサ受付部52は、車輪速センサ22から出力される信号を取得し、車両1の走行状態または停止状態を車速に基づいて判定する情報を取得すると共に、駐車のために自動で誘導する場合の誘導状態の良否判定を行う場合の情報の取得部として機能する。なお、上述した各モジュールは、機能ごとに分けて構成する例を示したが、2つの機能またはそれ以上の機能を統合した構成にしてもよい。例えば、ブレーキセンサ受付部44、アクセルセンサ受付部46、シフトセンサ受付部48、舵角センサ受付部50、車輪速センサ受付部52はセンサ受付部として統合してもよい。
【0033】
図6は、本実施形態の駐車支援システム100の駐車支援処理の概略を説明するフローチャートである。まず、CPU14aの検出部32は、撮像部15や測距部16,17から提供される情報に基づいて、車両1の周囲に障害物や路面の枠線、区画線等を検出する(S100)。なお、撮像部15や測距部16,17は、車両1の電源スイッチがONになっているときに全てについて常時機能させるようにしてもよいし、一部を選択的に機能させるようにしてもよい。例えば、通常走行モードと駐車支援モード等に分けて、撮像部15や測距部16,17を使い分けてもよい。また、例えば、通常走行モードと駐車支援モード等で、検出周期や検出領域、検出精度を切り替えるようにしてもよい。CPU14aは、操作受付部34を介して駐車支援開始を要求する操作入力の受付を待つ。入力操作の受付が確認されない場合(S102のNo)、S100に戻り、周囲状況の検出を行い情報の構築を行う。一方、S102において、操作入力の受付が確認された場合(S102のYes)、つまり、ユーザが駐車する意志を示し、駐車場所を探すことを要望した場合、目標位置決定部36による目標位置の決定処理が開始される(S104)。詳細は後述するが、目標位置決定部36は、撮像部15や測距部16,17等から入力される情報に基づいて、車両1の大きさを考慮して、車両1が駐車できる空間、すなわち駐車可能領域を探すと共に、その空間に車両1を誘導するための目標となる駐車目標位置を決定する。駐車目標位置が決定すると、経路算出部38は、車両1の現在位置から駐車可能領域に含まれる駐車目標位置に車両1を誘導するための駐車誘導経路を決定する(S106)。なお、駐車誘導経路の算出は、既知の種々の経路算出手法が利用可能であり、ここでの詳細な説明は省略する。駐車誘導経路が決定すると、CPU14aの誘導制御部40は、操舵システム13による自動操舵及びクリープを用いた走行による誘導制御処理を実行する(S108)。誘導制御処理の詳細は後述する。なお、車両1が電気自動車やハイブリッド自動車等の場合、モータ制御により車両1を低速走行させて誘導するようにしてもよい。上述した誘導制御の開始に先立ち、CPU14aの出力情報決定部42は、駐車支援の開始及び支援中にユーザに要求する操作、例えばシフトレバー操作による前進後進の切り替えや速度調整に関する表示を行う。
【0034】
図6のS108の誘導制御処理の説明に先立ち、図7を用いて、駐車支援システム100を搭載する車両の駐車場における挙動と駐車可能領域の検出の様子を説明する。なお、図7に示す例では、駐車場60は、平面路に描かれた複数の区画線62によって駐車区画が1台分ずつに区分されている。図7には、例えば3台分の駐車区画が示されている。また図7の場合、3区分の左右にそれぞれ隣接駐車車両64(左隣接車両64a、右隣接車両64b)が存在する例が示されている。また、各隣接駐車車両64(64a,64b)は、輪留め66に後輪が接触して駐車されている例である。なお、駐車支援を行う場合、隣接駐車車両64との駐車バランスを考慮して、車両先端を揃えて駐車するように制御する場合がある。図7は、駐車支援中に駐車目標位置に到達する前に自車両68が停止してしまう場合、例えば後輪70が輪留め66に接触してそれ以上後退できないような状況が生じる一例を説明する図である。この場合、図7において左右の隣接駐車車両64は、例えば軽自動車であるとする。つまり、本実施形態の駐車支援システム100を搭載する自車両68より隣接駐車車両64は車両前後方向の長さが短いものとする。自車両68は、図1図3で説明した車両1と同等であり、図4で説明した駐車支援システム100を搭載するものとする。本実施形態の場合、自車両68は、例えば後退走行で駐車区画のうち駐車可能として検出した駐車可能領域に進入し駐車するように誘導する場合を説明する。
【0035】
自車両68は、駐車場60に進入すると、低速走行を行いつつ自車両68の周辺領域に駐車可能領域となり得る駐車区画またはスペースが存在するか否かを検出部32を用いて検出する。この場合、検出部32は、前述したように撮像部15及び測距部16,17を用いて駐車可能領域の探索を行う。例えば、自車両68は、駐車場60内を区画線62の配列方向に沿って矢印R方向に低速で走行する間に、測距部16,17を用いて、自車両68を駐車のために誘導する際に障害物となる物体、例えば他車両等の位置や大きさを検出する。この場合、図2における車両左側面側の測距部16a,16d等により隣接駐車車両64等が検出されることになる。また、図2における主として車両左側面側の撮像部15dによって、測距部16,17で検出し難い区画線62等の位置や間隔、また区画線62の奥行き等を検出する。検出部32は、障害物の間、図7の場合は2台の隣接駐車車両64の車幅方向の離間距離が、自車両68の車幅に車側両側に確保すべき所定の余裕距離を加算した値より大きいと判定した場合に、このスペースを駐車可能領域の候補として検出する。このような駐車可能領域の候補は、複数検出してもよく、複数検出した中から一つを例えばユーザに選択させるようにしてもよいし、検出した候補の中から最も条件のよい駐車可能領域を駐車支援システム100が選択するようにしてもよい。また、最初に駐車可能領域が検出された時点で検出を終了し、そこを誘導する駐車可能領域としてもよい。
【0036】
駐車可能領域が決定されると、目標位置決定部36は、自車両68を誘導するための駐車目標位置を決める。本実施形態の場合、自車両68は、例えば左右の後輪70を連結する車軸の略中央部に誘導基準点72を設けている。誘導基準点72の位置は車軸上に限定されるものではなく、自車両68のいずれの位置に設定してもよい。この誘導基準点72を、誘導開始に先立ち決定した駐車可能領域に設定した駐車目標位置に略一致するように誘導することで、自車両68の駐車可能領域への駐車を支援する。前述したように、駐車目標位置を決める場合、目標位置決定部36は、例えば隣接駐車車両64との駐車バランスを考慮して駐車目標位置を決めることができる。例えば自車両68の走行路側の突出程度を隣接する車両に合わせて駐車する。そのために、目標位置決定部36は左右の隣接駐車車両64の走行路側先端を結ぶ基準線74を設定して、基準線74に自車両68の走行路側先端が略一致するような駐車枠76を決定する。自車両68の前端部から誘導基準点72までの距離は、自車両68において構造上一義に定まっているので、駐車枠76が決定すれば、対応する駐車目標位置78は定まる。もし、隣接駐車車両64が自車両68と同様の大きさの車両の場合、基準線74は図7に示す状態より走行路側に設定される。その結果、駐車枠76及び駐車目標位置78も走行路側にシフトすることになる。
【0037】
図7に示すように、経路算出部38が、誘導基準点72を駐車目標位置78に略一致させるように自車両68を誘導する駐車誘導経路Lを既知の手法により算出する。そして、誘導制御部40がクリープによる走行と共に自動操舵制御を実行することにより良好な駐車支援が実現できる。このような駐車支援の場合、ユーザは基本的には走行操作を行わずに、自車両68の誘導基準点72が駐車目標位置78に到達して誘導が完了するのを待つことになる。しかしながら、設定した駐車枠76に自車両68が完全に収まる前、つまり、誘導基準点72が駐車目標位置78に到達する前に自車両68が停止してしまう場合がある。例えば、後輪70が輪留め66に接触してしまったような場合である。このような場合、自車両68が停止しているにも拘わらず誘導制御部40による誘導及び出力情報決定部42による案内表示等の出力が継続して実行されるため、ユーザに煩わしさや違和感を与えてしまう場合がある。
【0038】
そこで、本実施形態の駐車支援システム100の誘導制御部40は、駐車支援の完了パターンを複数種類備えている。例えば自車両68が、駐車枠76に所定姿勢で収まり駐車目標位置78に到達した場合に誘導を完了させる通常完了パターンを備える。この場合、誘導基準点72と駐車目標位置78とが一致した場合に、誘導を完了するようにすることができる。また、駐車誘導制御を行う場合、撮像部15及び測距部16,17によって設定される駐車目標位置78の誤差を考慮して、例えば、駐車目標位置78を基準に走行路側に第1猶予範囲α、例えば0.3mオフセットさせた第1完了領域を設定してもよい。つまり、駐車目標位置78を基準に設定した第1完了領域に誘導基準点72が到達したら、駐車目標位置78と誘導基準点72とが一致したと見なす。つまり、駐車誘導処理が完了したと見なして、誘導や案内画面の表示を終了してもよい。この場合、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、速やかに誘導及び誘導に伴う案内表示等を終了して駐車支援制御を完了させる。その結果、過剰な誘導や画面表示によりユーザが煩わしさや違和感を与えてしまうことを軽減または抑制できる。
【0039】
また、誘導制御部40は、自車両68が駐車枠76に所定姿勢で進入している場合であって、駐車目標位置78に到達する前に自車両68が停止した場合は、車両の誘導を完了させるまでの完了猶予期間を異ならせる特殊完了パターンを備える。この場合、例えば、駐車目標位置78を基準に第1猶予範囲αより走行路側に近い、第2猶予範囲β、例えば駐車目標位置78から1.0mオフセットさせた第2完了領域を設定してもよい。第2完了領域を規定する第2猶予範囲βは、もしその状態で駐車支援が完了してしまった場合でもユーザが後退走行のみで容易に自車両68の駐車を完了させられると見なせる限界点を規定する値である。つまり、駐車目標位置78を基準に設定した第2完了領域に誘導基準点72が到達し、そこで自車両68の実質的な停止が生じた場合、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、自車両68の駐車枠76への誘導が完了した、または完了と見なしてもよいと判定する。つまり、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、駐車誘導処理を完了したとして誘導や案内画面の表示を終了してもよい。このように、本実施形態の場合、自車両68が所定の姿勢で駐車枠76に所定量進入していれば、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、駐車目標位置78に到達する前に自車両68の停止に基づいて誘導及びそれに伴う案内表示等の出力を終了するようにしている。ところで、誘導途中で自車両68が停止する場合の理由は2つある。つまり、ユーザが意図して停止させる場合と意図しないで停止してしまう場合である。ユーザが意図した停止とは、例えば、自車両68の後輪70が輪留め66に接触して、ブレーキペダルを踏み込んで停止させる場合である。このような状況は、例えば、図8に示すように、隣接駐車車両64の走行路側先端を基準にして設定した駐車枠76に基づく駐車目標位置78の決定が適当でなかった場合に発生しうる。また、図9に示すように、ユーザ自らが納得して、この位置で駐車してもよいと判断して、輪留め66に接触する前や駐車目標位置78に到達する前にブレーキペダルを踏み込んで停止させた場合に発生しうる。
【0040】
逆にユーザが意図しない停止とは、ユーザの操作入力を伴わない停止であり、例えば、駐車場60の路面が輪留め66側に向かって上り坂になっていて、上り坂の勾配とクリープによる走行時の駆動力が釣り合って止まってしまう場合がある。また、駐車場60の路面の凹凸が存在する場合、その凹凸により後輪70が止まり停止してしまう場合等がある。自車両68の後輪70の位置と輪留め66の関係や誘導基準点72と駐車目標位置78との関係は、図9の場合と同様である。ユーザが意図した停止のときと意図しない停止のときで、同じタイミングで誘導及び案内表示等を終了してしまうと、ユーザに違和感を与えてしまう場合がある。例えば、意図した停止の場合に、誘導や案内表示がなかなか終わらない場合、煩わしさを与えてしまう場合がある。逆に、意図しない停止の場合に、誘導や案内表示がすぐに終わってしまう場合、誘導の期待に反することになり違和感を与えてしまう場合がある。そこで、本実施形態の駐車支援システム100では、駐車枠76(駐車可能領域)に自車両68が所定姿勢で進入している場合であって、駐車目標位置78に到達する前に自車両68が停止した場合に、当該自車両68の停止態様に応じて自車両68の誘導を完了させるまでの完了猶予期間を異ならせている。ここで、自車両68の停止態様とは、前述したように、例えば、ユーザの意志で自車両68を停止させた車両停止態様(第1停止態様)とユーザの意志とは関係なく停止した車両停止態様(第2停止態様)である。したがって、例えば、駐車支援中にブレーキペダルを踏み込んだことを示す操作入力が検出された場合、ユーザの意志で停止したと見なせる。また、シフトレバーを「Rポジション」から「Pポジション」に移動させたことを示す操作入力やパーキングブレーキを有効にしたことを示す操作入力が検出された場合等もユーザの意志で停止させたと見なすことができる。逆に、駐車支援中に、前述した操作入力が検出されない状態で、自車両68が停止した場合、ユーザの意志で停止させたのではないと見なすことができる。
【0041】
本実施形態において、ユーザの意志で自車両68を停止させたと見なせる場合、自車両68の停止後、完了猶予期間として、例えば2秒が経過したときに駐車支援を完了させる。このとき、誘導の案内表示等も終了させる。この場合、ユーザの駐車の意志と駐車支援の完了のずれが少なくなるので、自車両68の停止後に誘導や案内表示等が継続してしまう場合に比べ、ユーザに煩わしさや違和感を与えてしまうことが軽減または抑制できる。一方、ユーザの意志で自車両68が停止したのではないと見なせる場合、自車両68の停止後、完了猶予期間として、例えば5秒が経過したときに駐車支援を完了させる。このとき、誘導の案内表示等も終了させる。この場合、ユーザに何らかの原因で自車両68が停止して駐車支援が中止(完了)したと判断させやすくなり、ユーザに違和感を与えてしまうことが軽減または抑制できる。
【0042】
なお、本実施形態の場合、駐車支援が開始された後でも、自車両68が駐車可能領域(駐車枠76)に所定量進入していない場合、例えば、図9において2点鎖線で示すような位置に自車両68が存在する場合に、ユーザによりブレーキペダルが操作されて自車両68が停止してしまう場合がある。例えば、歩行者が接近してきた場合等である。このような場合は、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、上述したような完了猶予期間の変更を伴う制御は実行しない。つまり、ブレーキペダルの操作が解除された後、それまでの駐車支援制御を復帰させて自車両68の誘導を継続させる。なお、自車両68が第2完了領域に進入している状態で、自車両68の周囲に歩行者等を発見したことによりブレーキペダルの操作入力が行われる場合がある。このような場合、自車両68の姿勢は、既に区画線62で区切られたスペースに対してほぼ真っ直ぐであると見なせるので、駐車支援制御が完了してもユーザにその後の単純な後退走行を委ねるようにしてもよい。つまり、第2完了領域、すなわち第2猶予範囲βの設定は、自車両68が区画線62で区切られたスペースに対してほぼ真っ直ぐな姿勢になる前に駐車支援が完了してしまうことを回避するために設定された閾値であるともいえる。
【0043】
ユーザによりブレーキペダルの操作が行われる別の例として、例えば誘導時の速度超過等が原因で駐車誘導経路Lから逸脱してしまった場合が考えられる。例えば、図10に示すように、自車両68の実際の移動奇跡L1が駐車誘導経路Lに対してずれてしまう場合がある。このような場合、自車両68は、区画線62で区切られたスペースに所定量、例えば、駐車目標位置78に対して設定された第2猶予範囲βを超えて進入するころには、駐車に適した姿勢から駐車に不適切な姿勢になってしまうことがある。例えば、自車両68が駐車誘導経路Lから車幅方向に所定距離以上ずれてしまう場合、すなわち自車両68が片方の区画線62に所定許容値を超えて偏ってしまう場合がある。また、自車両68の前後方向の中心軸が駐車誘導経路Lに基づく誘導方向に対して所定角度以上ずれてしまう場合、すなわち自車両68が区画線62で区切られたスペースに対して所定許容値を超えて斜めに傾いてしまう場合がある。自車両68を良好な姿勢で駐車するためには、自車両68が区画線62で区切られたスペースにある程度進入している状態で、自車両68の姿勢は後退方向に対してほぼ真っ直ぐになっている必要がある。このような駐車動作の後半において、自車両68の姿勢が傾いていたり、偏っていたりした場合、ユーザは、駐車支援中でもブレーキペダルを踏み込み、自車両68を停止させようとすることがある。この場合、誘導制御部40及び出力情報決定部42がユーザの意志で駐車を完了させた、つまり駐車をしてよい状態になったと判定して駐車支援を完了させてしまうと、ユーザに違和感を与えてしまう場合がある。つまり、車両姿勢に違和感を感じてブレーキペダルを操作したユーザは、駐車支援の継続を期待しているにも拘わらず駐車支援が完了してしまうと、さらなる違和感を感じてしまう場合がある。そこで、本実施形態では、駐車可能領域(駐車枠76)に所定姿勢で進入していない場合には、制御を実行する条件の一つである自車両68の姿勢が所定姿勢を満たしていないと判定し、自車両68の停止による誘導の完了を保留する。つまり、誘導制御部40及び出力情報決定部42はブレーキペダルの操作入力があっても上述した完了猶予期間の変更を伴う制御は実行しない。このような場合、本実施形態において、経路算出部38は、再経路L2,L3を含む駐車誘導経路の再算出を行い、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、車両姿勢の修正を行いつつ、自車両68の誘導を実行する。なお、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、前述したように駐車支援中に自車両68の姿勢について、傾き角度や偏り量が予め定めた基準の所定閾値を超えたため経路算出部38により再算出が実行された場合、傾き角度や偏り量の許容値を変更してもよい。例えば許容値を厳しい側に修正する場合、駐車誘導経路の再算出が発生し易くなるものの、駐車目標位置78への誘導を高精度で行うことができる。逆に、許容値を緩い側に修正する場合、駐車誘導経路の再算出が繰り返し実行されることが抑制され、誘導を速やかに完了させ易くなる。
【0044】
図11は、図6のフローチャートにおけるS108の誘導制御処理の詳細を示すフローチャートである。まず、CPU14aの誘導制御部40は、既に誘導制御が開始済みかを確認し、まだ誘導制御が開始されていない場合(S200のNo)、開始処理として、例えば、出力情報決定部42及び音声制御部14e等を介して音声出力装置9等から誘導開始のメッセージ等を提供する(S202)。そして、誘導制御部40は、操舵システム13による自動操舵を実行すると共に、クリープを用いた走行による誘導制御を実行する(S204)。なお、S200において、誘導制御が開始済みの場合(S200のYes)、S202の処理をスキップする。
【0045】
図12は、誘導制御の実行開始時または実行中に表示装置12に示される画面12aの例を示している。画面12aは、駐車支援制御中の制御状態やユーザへの操作指示を表示する第1表示領域80及び第2表示領域82を備える。駐車支援制御中には、第1表示領域80に例えば「駐車支援中」と表示される。この表示は、ユーザの注意を喚起するために、点滅表示や赤色等の強調色で表示してもよい。また、第2表示領域82には、後退による誘導を開始することを示すと共に、ユーザにシフトレバーの操作を促すように例えば「シフト→R」と表示される。この場合もユーザの注意を喚起するために、点滅表示や強調色で表示するようにしてもよい。この他、自動操舵制御中であることを示すステアリングシンボル84や自車両68の周囲に注意すべき障害物が存在するか否かを示す周囲検出シンボル86、駐車支援完了までのおおよその期間を示す完了インジケータ88が表示されている。ステアリングシンボル84は、誘導制御部40による操舵制御が実行されている場合に、自動操舵の実行を通知するように点灯する。また、ステアリングシンボル84は、実際の操舵角度と対応した回転角度で表示するようにしてもよい。周囲検出シンボル86は、車両シンボルの周囲に個別シンボルが配置された構成で、検出部32の検出結果に基づき予め設定された警告距離以内に障害物が存在する場合に、その存在方向を示す個別シンボルが点灯するように構成することができる。また、個別シンボルは、定常時に例えば「青色」を表示させ、警告すべき障害物が検出された場合に、「青色」から「赤色」に変化させるようにしてもよい。完了インジケータ88は、単位期間を示す個別ブロックの点灯数が増減して誘導完了までの期間を示すインジケータ88aと、誘導完了を示す目標シンボル88bとを有する。なお、画面12aの表示内容は一例であり、必要に応じて、表示項目を変更したり、表示態様を変更したりしてもよい。
【0046】
図11に戻り、誘導制御が実行中の場合、誘導制御部40はユーザによって駐車支援をキャンセルするキャンセル操作が入力されるか否か常時監視している(S206)。例えば、誘導支援を要求する操作スイッチが「ON」から「OFF」に切り替えられるか否か監視する。キャンセル操作の受付がない場合(S206のNo)、誘導制御部40は、自車両68が所定姿勢で駐車可能領域(駐車枠76)に進入しているか否か判定する。この判定は、撮像部15及び測距部16,17から提供される情報や駐車誘導経路Lに対する誘導基準点72の移動状況を確認することにより判定できる。そして、自車両68が駐車枠76に所定姿勢で進入している場合(S208のYes)、自車両68が駐車目標位置78に対して第1猶予範囲α、例えばα=0.3m以内か否か判定する。自車両68が駐車目標位置78に対して第1猶予範囲α以内に到達していない場合(S210のNo)、誘導制御部40は、自車両68が停止しているか否か確認する。そして、自車両68が停止している場合(S212のYes)、その停止位置が駐車目標位置78を基準に第1猶予範囲αより走行路側に近い、第2猶予範囲β以内か否か判定する。自車両68の停止位置が第2猶予範囲β、例えばβ=1.0m以内である場合(S214のYes)、誘導制御部40は、駐車操作信号を受け付けたか否か判定する。駐車操作信号とは、例えば、ブレーキセンサ受付部44を介して取得されるブレーキペダルの操作入力信号やパーキングブレーキの操作入力信号等である。また、シフトレバーの位置が「Pポジション」に移動したことを示す操作入力信号等である。これらの操作入力信号を受け付けた場合(S216のYes)、誘導制御部40は、ユーザが意図的に駐車支援を完了させようとして操作を行ったものと判定する。そして、出力情報決定部42は、駐車操作信号の受付に基づき、図13に示すような画面12aを表示するように表示制御部14dに信号を出力する。この場合、第1表示領域80に、例えば「停車しました」のような、自車両68の状態を示すメッセージを表示させ、第2表示領域82には、「A秒後に誘導を完了します」という、これから誘導を完了する旨の誘導完了通知(予告メッセージ)を表示する(S218)。
【0047】
一方、S216において、自車両68が停止しているにも拘わらず、駐車操作信号を受け付けていない場合(S216のNo)、誘導制御部40は、今回の車両停止はユーザが意図的に駐車支援を完了させようとしたのではないと判定する。そして、出力情報決定部42は、図13に示す画面12aのうち、第2表示領域82に、「B秒後に誘導を完了します」という、少し期間を空けてから誘導を完了する旨の誘導完了通知(予告メッセージ)を表示する(S220)。
【0048】
誘導完了通知に続き、出力情報決定部42は、今回の自車両68の停止により、本当に駐車支援を完了させてしまってよいか否か、つまり完了の是非をユーザに確認するための完了確認報知を画面12aに表示する(S222)。この場合、出力情報決定部42は、例えば、図14に示すような画面12aを表示するように表示制御部14dに信号を出力する。この場合、第1表示領域80に、例えば「誘導を完了します」のような、自車両68の制御状態を示すメッセージを表示させ、第2表示領域82には、「再誘導しますか?」という、ユーザに今後の操作意志を確認するメッセージを表示する。なお、第2表示領域82に表示する「再誘導しますか?」は所定期間経過後、例えば5秒後に非表示としてもよい。このように画面12aの表示を第1表示領域80の「誘導を完了します」のみとすることにより、ユーザに駐車支援が完了することを明確に認識させやすくなる。なお、第2表示領域82の「再誘導しますか?」の非表示と共に、第1表示領域80の表示を「誘導を完了しました」に変更してもよい。この場合、ユーザにより明確に駐車支援の完了を認識させやすくなる。また、S218の処理を経た場合は、S222の完了確認報知の表示を省略してもよい。つまり、ユーザが意図的に駐車支援を完了させた場合には、確認することなく駐車支援処理を完了させてもよい。この場合、完了時の表示がシンプルになり、さらに迅速に処理が完了したという印象をユーザに与えやすくなる。
【0049】
このように、ユーザにS218における誘導完了報知を短い第1完了猶予期間、例えば2秒で終了し、S222の完了確認通知を提供することにより、意図的な自車両68の停止後、速やかに駐車支援が完了したことをユーザに認識させやすくできる。また、このように、駐車支援の完了に関する案内表示が短時間の第1完了猶予期間でテンポよく表示されることにより、ユーザの意志による停止に対応して駐車支援システム100がスムーズに反応しているという印象を与えやすく、制御終了時、ユーザに違和感を与え難くすることができる。一方、ユーザにS220における誘導完了報知を短い第1完了猶予期間より長い第2完了猶予期間、例えば5秒で終了し、S222の完了確認通知を提供することにより、意図しない自車両68の停止後、ユーザに次の操作を考える余裕時間を提供可能になる。例えば、アクセルの踏み込みにより、勾配等による停止を解消して、S204に移行して誘導制御を継続させることができる。その結果、ユーザの意志に反して駐車支援が完了されようとしても、それを回避して駐車支援継続や他の操作に導き易くなり、ユーザに駐車支援がいつの間にか完了してしまうという違和感を抱かせ難くすることができる。
【0050】
S222の完了確認報知において、再誘導の要求がユーザによってなされない場合(S224のNo)、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、そのまま駐車支援を完了させて、このフローを終了させる。一方、S222の完了確認報知において、再誘導の要求がユーザによってなされた場合(S224のYes)、S204に戻り、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、駐車支援処理を継続する。この場合、自車両68はクリープによる駆動力と駐車場60の勾配とがつり合って停止した場合等が考えられるので、例えば、誘導制御部40はクリープ時のトルクを一時的に所定量増加するようにしてもよい。
【0051】
S214で、自車両68の停止位置が第2猶予範囲β、例えばβ=1.0m以内ではない場合(S214のNo)、S204に戻る。この場合、自車両68は、所定姿勢で駐車枠76に進入しているが、駐車と見なせる位置までは進入していないと判定できる。このような場合は、S204に戻り以降の処理を実行し誘導を継続する。また、S212において、自車両68の停止が確認されない場合もS204に戻り以降の処理を実行し誘導を継続する。S210において、自車両68が駐車目標位置78に対して第1猶予範囲α、例えば、α=0.3m以内に到達している場合(S210のYes)、S212〜S216の処理をスキップして、S218の処理を実行する。つまり、ユーザが駐車操作した場合と同様な処理を実行して、速やかに駐車支援を完了させる。なお、この場合、図13の第2表示領域82における「A秒後に誘導を完了します」という表示の代わりに、「誘導を完了しました」と表示して、さらに、S222,S224の処理を省略してもよい。この場合、駐車支援による誘導が予定通りに完了した場合、直ちに完了報知を実行できるので、駐車支援をさらにシンプルかつ迅速に終了させることができる。なお、S210の処理で「Yes」となった場合、自車両68が停止しているか否かは問わず、S218の処理等に移行し、自車両68の停止はユーザのブレーキペダルの操作に委ねてもよいし、自動的に制動してもよい。
【0052】
S208において、駐車可能領域(駐車枠76)に自車両68が所定姿勢で進入していないと判定した場合(S208のNo)、誘導制御部40は、駐車枠76へ進入するための駐車誘導経路Lにしたがう旋回が、操舵制御により実施済みか否か判定する。旋回が実施されていない場合(S226のNo)、自車両68はまだ駐車枠76に進入していない、つまり、まだ駐車場60の走行路に存在すると判定して、S204に戻り以降の処理を実行し誘導を継続する。一方、駐車枠76へ進入するための駐車誘導経路Lにしたがう旋回が操舵制御により既に実施済みの場合(S226のYes)、誘導制御部40は自車両68が傾いた状態、または偏った状態で駐車可能領域(駐車枠76)に進入したと判定する。その結果、誘導制御部40は、経路算出部38に駐車誘導経路の再算出(S228)、つまり切り返し等を含む姿勢修正処理を実行させる。姿勢修正処理を実行する場合、出力情報決定部42は、例えば、図15に示すような画面12aを表示するように表示制御部14dに信号を出力する。この場合、第1表示領域80には、例えば「駐車支援中」というメッセージを表示し、自車両68の制御状態が駐車支援状態が継続していることを報知する。また、第2表示領域82には、「姿勢を修正します。シフト→D」というように、姿勢修正を実行するために、シフトチェンジが必要であることを示すメッセージを表示する。なお、再算出された再経路L2,L3を含む駐車誘導経路により誘導を実行するため、自車両68は一時的に前進走行に切り替えられることになる。そのため、完了インジケータ88は、インジケータ88aと目標シンボル88bの位置が図15のように一時的に逆になり、自車両68の進むべき方向がユーザに理解され易いように表示を変化させる。
【0053】
また、駐車誘導経路の再算出が実行されると、自車両68が駐車枠76に進入してから第2完了領域(第2猶予範囲β)に至るまでの車両姿勢に関する姿勢条件を前述したように変更し(S230)、駐車誘導経路Lの再算出による駐車精度や支援時間の調整を行う。その後、S204に戻り以降の処理を実行し誘導を継続する。
【0054】
S206において、ユーザによって駐車支援がキャンセルされた場合(S206のYes)、誘導制御部40は駐車のための誘導を中止する(S232)。また、出力情報決定部42は、誘導が途中で中止されたことを示す誘導中止報知を画面12aの第1表示領域80や第2表示領域82を用いて表示する。例えば、「駐車支援がキャンセルされました。気をつけて運転してください」等の表示を行い(S234)、このフローを一旦終了し、次の駐車支援開始要求に備える。
【0055】
S230で、駐車誘導経路の再算出に対応して姿勢条件の変更を行う例を示したが、再算出された駐車誘導経路の再経路L2の長さによって、姿勢条件の変更内容を決定してもよい。例えば、再経路L2の長さが所定値未満の場合には、自車両68の姿勢を示す傾き角度や偏り量の許容値(姿勢条件)を緩い側に修正する。例えば、駐車可能領域(駐車枠76)の開口幅や駐車場60の走行路幅が狭い場合、切り返しのための前進距離が短く制限される場合がある。同様に、自車両68の周囲に障害物が存在する場合も切り返しのための前進距離が短く制限される場合がある。このような場合、切り返しにより大きな姿勢修正が困難になることがある。このような場合は、傾き角度や偏り量の許容値を緩い側に修正して、駐車完了時間の短縮を優先するように制御することができる。逆に再経路L2の長さが所定値以上の場合には、自車両68の姿勢を示す傾き角度や偏り量の許容値(姿勢条件)を厳しい側に修正する。つまり、切り返しのための前進距離が十分に確保可能であり、切り返しにより大きな姿勢修正が可能になる。このような場合は、傾き角度や偏り量の許容値を厳しい側に修正して、駐車完了時の駐車位置精度、例えば駐車枠76に対して自車両68を真っ直ぐ誘導することを優先するように制御することができる。
【0056】
また、自車両68の姿勢を示す傾き角度や偏り量の許容値(姿勢条件)の初期値は、駐車支援の初期の段階で自車両68の向きを変える旋回動作を伴ったか否かで決定してもよい。駐車支援を実行する場合、例えば走行路幅が十分にある場合等は、自車両68を前進段階から支援して、自車両68を駐車可能領域(駐車枠76)から離れる方向に旋回させて駐車可能領域に進入し易い車両姿勢にしてから後退させる場合がある。このような初期段階で旋回を伴う駐車誘導経路Lを算出している場合は、誘導が容易になるので、姿勢条件の初期値を厳しくして、駐車完了時の駐車位置精度を優先するようにしてもよい。逆に、例えば走行路幅が十分でない場合、上述のような誘導初期段階での旋回ができないことがある。このような場合は、駐車可能領域(駐車枠76)に対して略直角姿勢から後退を始めて駐車枠76に誘導されることになる。このような場合は、切り返し等を含む複雑な誘導になってしまう場合があるので、姿勢条件の初期値を緩くして、駐車誘導経路の再算出が発生することを軽減して駐車完了時間の短縮を優先するようにしてもよい。
【0057】
また、図7等に示すように、駐車場60が区画線62で明確に区画されている場合には、検出部32による検出や目標位置決定部36による駐車目標位置78の決定や経路算出部38による駐車誘導経路Lの算出を区画線62がない場合より高精度に実行することが期待できる。そこで、区画線62が確認できる駐車場60では、上述した姿勢条件の初期値を区画線62が確認できない場合より厳しく設定するようにしてもよい。このように、区画線62の確認の有無によって、姿勢条件の初期値を決定することにより、駐車精度を優先させる制御と駐車完了時間の短縮を優先させる制御とを使い分けて、状況に応じた最適な駐車支援を実行することができる。
【0058】
また、駐車支援にしたがい自車両68を誘導する場合、クリープによる駆動力が一定である場合でも、駐車場60の路面の状態によって自車両68の速度が変化する場合がある。誘導時の自車両68の速度が早い場合、算出した駐車誘導経路Lに対する自車両68の実際の走行軌跡のずれが大きくなってしまう場合がある。そこで、自車両68の誘導時の速度に応じて、自車両68の姿勢を示す傾き角度や偏り量の許容値(姿勢条件)の初期値を決定してもよい。例えば、誘導時の自車両68の速度が所定速度未満の場合は、駐車誘導経路Lに対する自車両68の誘導精度が十分に確保できることが期待できるので、上述した姿勢条件の初期値を所定速度以上の場合より厳しく設定するようにしてもよい。逆に誘導時の自車両68の速度が所定速度以上の場合は、駐車誘導経路Lに対する自車両68の誘導精度が低下する場合があるので、上述した姿勢条件の初期値を所定速度未満の場合より緩く設定するようにしてもよい。このように、自車両68の誘導時の速度に応じて、姿勢条件の初期値を決定することにより、駐車精度を優先させる制御と駐車完了時間の短縮を優先させる制御とを使い分けて、状況に応じた最適な駐車支援を実行することができる。
【0059】
また、自車両68に乗車している乗員の乗車位置に応じて、自車両68の姿勢を示す傾き角度や偏り量の許容値(姿勢条件)の初期値を決定してもよい。例えば、助手席側に乗員が乗車していない場合、助手席側からの乗員の乗り降りがないと見なせるので、自車両68が多少助手席側に偏って駐車されても不都合は生じ難い。そこで、助手席側に乗員が存在しない場合は、上述した姿勢条件の初期値を助手席側に乗員が存在する場合より緩く設定するようにしてもよい。助手席側に乗員が存在する場合は、上述した姿勢条件の初期値を助手席側に乗員が存在しない場合より厳しく設定するようにしてもよい。乗員の有無は、例えば、各座席に圧力センサを配置したり、ドアの開閉の有無を検出する開閉センサを配置したりすることにより検出できる。また、車室2a内部を撮影する撮像部がある場合には、その撮影結果に基づいて乗員の有無を検出してもよい。このように、自車両68の乗車状態に応じて、姿勢条件の初期値を決定することにより、駐車精度を優先させる制御と駐車完了時間の短縮を優先させる制御とを使い分けて、状況に応じた最適な駐車支援を実行することができる。
【0060】
本実施形態において、図11のS216で、駐車操作信号を受け付けていない場合に完了猶予期間を長くする例を説明したが、自車両68の停止したときに、アクセルペダルが踏まれていた場合には、ブレーキペダルの踏み込みの有無に拘わらず、完了猶予期間を長くするようにしてもよい。例えば、自車両68がブレーキペダルの操作により停止した場合でもアクセルペダルが操作されたことにより、ユーザにより誘導の継続が要求されていると見なすことが可能になり、ユーザの要求に対応した制御が可能になる。
【0061】
また、上述した実施形態においては、左右の隣接駐車車両64の走行路側先端を結ぶ基準線74を設定して、基準線74に自車両68の走行路側先端が略一致するように、駐車枠76を決定する例を示した。別の実施形態では、区画線62の先端を結ぶ基準線74を設定して、基準線74を基準に車両の前後方向の長さと、実際に自車両68を駐車する場合の区画線62の先端からの後退方向のオフセット距離を考慮して駐車枠76を決定してもよい。一般的には、区画線62は大型車が収まる程度に設定されているので、上述したように区画線62を基準に駐車枠76を決定することにより、スムーズな駐車支援が実現できる。ただし、区画線62は劣化や天候により撮像部15での認識精度が変化してしまう場合があるので、駐車場60やそのときの周囲環境に応じて、隣接駐車車両64を基準に基準線74を設定するか区画線62を基準に基準線74を設定するかを選択できるようにしてもよい。選択させる場合、駐車支援システム100が駐車場60やそのときの周囲環境に基づいて自動で選択するようにしてもよいし、ユーザが選択できるようにしてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、図11のフローチャートにおいて、自車両68が停止した場合、S216で駐車操作信号を受け付けたか否かに基づいて、完了猶予期間を選択する例を説明した。別の実施形態では、区画線62の先端部の位置と自車両68の位置(例えば誘導基準点72の位置)に基づいて、完了猶予期間の選択を行うようにしてもよい。例えば、自車両68の前方側の端部2cに配置された撮像部15cによって区画線62の先端部が撮影できていない状況では、自車両68はまだ十分に区画線62で規定されるスペースに進入していない、また輪留め66に接触していないと見なせる。つまり、この状態で、自車両68はブレーキペダル等が操作されて停止したのではなく、別の理由、例えば勾配と駆動力の釣り合い等が理由で停止したと見なせる。したがって、区画線62の先端部が確認されない状態で自車両68が停止した場合、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、駐車操作信号に基づくことなくS220の処理を選択するようにしてもよい。逆に撮像部15cによって区画線62の先端部が撮影できている状況で、自車両68が停止した場合は、自車両68は輪留め66に接触していると見なせる。この場合、誘導制御部40及び出力情報決定部42は、駐車操作信号に基づくことなくS218の処理を選択するようにしてもよい。このように自車両68と周囲の状況とに基づいても本実施形態の制御が可能であり、設計自由度の向上に寄与できる。
【0063】
また、上述の実施形態では、図11のフローチャートにおいて、自車両68が停止した場合、S216で駐車操作信号を受け付けたか否かに基づいて、完了猶予期間を選択する例を説明した。別の実施形態では、駐車操作信号を受け付けた場合でも、ブレーキペダルの操作状態によって、完了猶予期間を選択するようにしてもよい。例えば、駐車支援中で、自車両68が第2猶予範囲に進入した後でも、速度調整のために浅い(弱い)踏み込みでブレーキペダルが操作される場合がある。このような場合は、駐車操作信号を受け付けても駐車の意志は弱いと見なすことができる。したがって、図11のフローチャートのS220を選択するようにしてもよい。逆に深い(強い)踏み込みでブレーキペダルが操作された場合は、駐車の意志が強いと見なすことができる。したがって、図11のフローチャートのS218を選択するようにしてもよい。なお、この場合、明確な停止の意思表示であると見なして、完了猶予期間をさらに短く、例えば1秒としてもよい。このように、ブレーキペダルの操作態様を判定のパラメータとすることで、よりユーザの意志を反映した詳細な制御ができる。また、ブレーキペダルの踏み込み時間の長さに応じて完了猶予期間を選択するようにしてもよい。例えば、ブレーキペダルの踏み込み時間が所定時間未満の場合は、速度調整のための操作であると見なし、駐車操作信号を受け付けても駐車の意志は弱いと見なすことができる。したがって、図11のフローチャートのS220を選択するようにしてもよい。逆にブレーキペダルの踏み込み時間が所定時間以上の場合は、駐車の意志が強いと見なすことができる。したがって、図11のフローチャートのS218を選択するようにしてもよい。この場合もユーザの意志を反映した詳細な制御ができる。
【0064】
なお、駐車目標位置78を決定するために設定した駐車枠76に、自車両68が完全に収まることが駐車支援を完了させる条件とする場合がある。上述したように、第2猶予範囲βに進入して自車両68が停止した場合に、駐車支援を完了しようとする場合、上述の条件を満たさない場合がある。そのような場合は、図11のフローチャートのS218、S220の処理で、設定されている駐車枠76を車両進入方向に拡大するようにしてもよい。例えば、第2猶予範囲βに対応するβ=1.0mだけ拡大することにより、拡大後の駐車枠に自車両68は収まり、上述の完了条件を満たすことができる。その結果、制御の設計バリエーションの向上に寄与することができる。
【0065】
なお、上述した実施形態においては、駐車支援として、誘導制御部40が駐車誘導経路Lの対応する操舵制御を自動で実行すると共にクリープによる駆動力で走行させながら自車両68を駐車目標位置78に誘導する例を説明した。他の実施形態では、駐車支援装置の態様として、例えば算出した駐車誘導経路に沿った誘導を表示や音声による誘導ガイドのみで実行して、自動の操舵制御等を実施しない態様の駐車支援装置も含まれる。つまり、操舵方向や操舵量、アクセルペダルやブレーキペダルの操作量や操作タイミング等を表示や音声でユーザに提供し、実際の走行操作をユーザに委ねるタイプの駐車支援装置の場合でも上述した実施形態を適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0066】
本実施形態の誘導制御部40や出力情報決定部42で実行される駐車支援プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0067】
さらに、本実施形態の誘導制御部40や出力情報決定部42で実行される駐車支援プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態の誘導制御部40や出力情報決定部42で実行される駐車支援プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0068】
本実施形態において、駐車支援のための報知は、表示装置12に表示する画面12aによって実施する例を示したが、他の実施形態においては、音声出力装置9を用いて同様な内容の報知を音声により実施してもよい。画面12aによる情報提供と音声による情報提供を併せて実施するよりユーザに理解しやすい駐車支援を提供することができる。
【0069】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…車両、4…操舵部、11…モニタ装置、12…表示装置、12a…画面、14…ECU、14a…CPU、32…検出部、34…操作受付部、36…目標位置決定部、38…経路算出部、40…誘導制御部、42…出力情報決定部、44…ブレーキセンサ受付部、46…アクセルセンサ受付部、48…シフトセンサ受付部、50…舵角センサ受付部、52…車輪速センサ受付部、60…駐車場、62…区画線、64…隣接駐車車両、66…輪留め、68…自車両、72…誘導基準点、74…基準線、76…駐車枠、78…駐車目標位置、80…第1表示領域、L…駐車誘導経路、82…第2表示領域、100…駐車支援システム。
図1
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